SOREMA -それ、魔!- 63
SOREMA -それ、魔!- 63
揺らぐ記憶
【ノベルウォー現在の動向】
・渋谷
ジャスティン〇 vs サド●
・池袋
莉茉● vs クリスティ●
はるか、村松、TORA合流→白鶯を探す
・上野
唯、百目鬼は単独行動中
美波、描写の書の履術者に
・新宿
・赤坂見附
虎走〇 vs アール・カルマ & 魔者数体●
新宿・赤坂見附組によって、全魔者を除去。
・品川
幸二・三太郎〇 vs ウルフ●
幸二ら、唯を探す。
・東京(結界前)
一善
・皇居周辺
九頭龍坂・岩田
強いマヂカラ反応あり
・上空基地
五百旗頭・ひえり
ヒメ、外へ
第506話 「白鶯現る」
《新宿》
麗美とルカの元に、ひえりから連絡が入る。
ルカ「ひえりちゃん?」
『ひえり:ルカさん!!!大変です!!!』
ルカ「なにがあったの?」
麗美「?」
『ひえり:白鶯が...!』
ルカ「...!!!」
《九段下・武道館前》
岩田「...あの禍々しいオーラ...奴が噂に聞いた...!」
九頭龍坂「間違いない...!」
白鶯「どいつもこいつも使えないゴミだらけだ...力を与えた物達とはいえ、'や'は'り他人は信用するものでは無い...!」ドン!
魔者達が消え去った筈の九段下付近、邪悪なオーラと共に白鶯が姿を表した...!
白鶯「まぁいい...本当の目的はここからだ...」
九頭龍坂「...!アンタが...!」
岩田「魔裁組、この街を脅かす巨悪め...!生きていられると思いなさんな...!」
岩田は岩を全身に纏い、巨大な石像の様な姿になった...!
ゴゴゴゴゴゴゴ...!!!
岩田「悪は我々の手で滅ぼさん...!蒼魔導書赫魔導書第六章...!岩の書・最終奥義...!石司無双(ごくしむそう)...!!」
白鶯「ほう。面白い」
岩田は巨大な姿で、白鶯に殴りかかる...!
九頭龍坂「まるで...巨人!」
岩田「悪霊退散...!緑のエレメント!”勇皇邁進(ゆうおうまいしん)”...!!!」
巨大な岩の拳が白鶯に迫る...!
ゴゴゴゴゴゴゴ!
白鶯「ふっ」
ピタッ
その瞬間、岩田はまるで時が止まったかのように動かなくなった。
九頭龍坂「?!」
白鶯「おい...誰を滅ぼすって?」
バ ァ ン !!!!!!!
その瞬間、岩田の岩の鎧は全て一瞬にして砕け、空中に生身の岩田が現れた!
岩田「?!?!」
白鶯「遅い...」
パッ
白鶯は宙に浮かんだ岩田の背後に移動し、岩田を武道館の屋根に蹴り落とした!!!
ドッカーーーーーーーーン!!!!!!!!
岩田は気絶してしまった。
九頭龍坂「岩田はん!!!!」
白鶯「口程にもない」
九頭龍坂「...!!」
九頭龍坂は、持っていた薙刀を握り返す。
九頭龍坂「アンタ...ようやってくれますなぁ」
白鶯「?」
九頭龍坂「返せよ」
白鶯「?」
九頭龍坂「私の大事な仲間達を返せよ!!!」
白鶯「なんの事だ?」
九頭龍坂は、薙刀にマヂカラを込めながら続ける。
九頭龍坂「簡単に人の命を奪えるアンタにはわからんか。もうこれ以上はやらせん」
第507話 「繋がっていく想い」
《九段下》
九頭龍坂「簡単に人の命を奪えるアンタにはわからんか。もうこれ以上はやらせん」
白鶯「...」
九頭龍坂「伸!!!」
九頭龍坂は、薙刀の鋒を白鶯の顔面まで伸ばす!
白鶯「...」
ピタッ
白鶯は時間を止め、寸前で薙刀を止める。
白鶯が九頭龍坂を襲おうとするが、薙刀は空中に浮いており、持ち手を持っていた筈の九頭龍坂は姿を消していた!
白鶯「?」
その瞬間、白鶯の周りに散らばっていた瓦礫やガラス片が白鶯を囲むように伸び、白鶯を前後左右から突き刺した!!
白鶯「...!」
九頭龍坂は、白鶯の裏に回り込む!
九頭龍坂「ドアホ。アンタがどれだけ強いか知らんけど、'そ'の'能'力、姐さんより使いこなせるわけないやろ」
白鶯「...(なるほど。鬼屋敷の能力のタネはバレてるということか。まぁいい)」
九頭龍坂「死ね!」
九頭龍坂はもう一本の槍で、白鶯の心臓を突き刺す!!!
グサッ!!!
九頭龍坂の攻撃は、心臓に突き刺さり、白鶯は口から吐血した。
しかし、その顔は笑っている。
白鶯「成程。油断したとはいえ、その機動力は賞賛に値する。お前が望むなら、更なる力をお前に与えてもいい。俺に忠誠を誓うならな」
九頭龍坂「アホか(...ちっ。コイツ、不死の書の履術者やった...!心臓突っついても無駄っちゅうわけか!ほんなら!)」
九頭龍坂は、手に魔導書ゲッターを嵌め、白鶯の背中に手を伸ばす!!
九頭龍坂「はぁぁぁぁ!!!」
白鶯「愚か」
グワァァァァァァン!!!!
白鶯から謎のオーラが発出し、九頭龍坂は”眠り”についてしまった...!!
白鶯「折角生き延びるチャンスをやったのに、馬鹿な女だ。くだらん思想に身を切って死ね」
白鶯が九頭龍坂に手をかけようとしたその時...!
カッチーーーーン!!!
白鶯の動きが一瞬フリーズした!
白鶯「...今度は誰だ?」パリィン!
ジャ「とうとう現れたな...白鶯!」
白鶯「...?」
ジャスティンが、渋谷から地下鉄のトンネルをたどって最速で九段下にやってきた!
白鶯「お前は?」
ジャ「名前なんて知らなくていい。ただ1人の人間さ。お前に恨みを持つ数え切れない人間の内のな」
白鶯「ふはっ。逆恨み集団の1人か。それはご苦労」
ジャ「...(理子姉さん。あなたの叶えられなかった願い...僕たちが叶えます...!)」
白鶯「見るからにお前、履術者ではなさそうだが?」
ジャ「あぁ。違うな」
白鶯「話にならん。どうせ胡散臭いエレメントととやらの魔法使い擬きだろう?くだらん」
ジャ「思ってるがいいさ。痛い目見るぜ」
白鶯「ほう?」
ジャ「お前は魔裁組(俺たち)が裁く...!」
第508話 「剣を持った魔導師」
《東京 / 魔導結界・蝕》
白鶯出現から時を遡ること数十分、
一善は単独で結界に足を踏み入れた。
一善「...」
一善の踏み入れた結界は、東京駅舎が緑に覆われ、草木に蝕まれた様な、また、時の流れが止まったような空間だった。
一善「今までの結界とは少し違うな...元いた場所の造形がそのまま基になってる...」
一善は辺りを警戒しながら足を進める。
一善「(魔者はどこだ...?マヂカラが分散して気配が読みづらい...!)」
すると、一善の背後に謎の影が現れ、一善を襲う...!
???「...!!!」
一善「!!!」
一善は、背後に気配を感じ、エレメントの剣を後方に振る!!
すると、謎の影の正体は、その攻撃を後方に飛んで避けた。
一善「...現れたな、魔者」
ダザイ「...」ドン!
現れたのはダザイ。赤く染まった剣を構え、一善を狙っている。
一善「...(ん?気配が魔者と少し違う...魔導師か?人間なら俺よりも若いな)」
2人は間合いを取って睨み合う。
一善「君、魔者?人間?」
ダザイ「...」
一善「人間だよね?」
ダザイ「...だったら?」
一善「いいや。特に関係はない」
一善は、エレメントの剣を握る。
一善「おいで、つのキング」
つのキング「ウォーーーーー!!!」
空の魔法陣からつのキングが飛んでくる。
ダザイ「...」
一善「...!!!!」
一善は、ダザイに斬りかかる!
ダザイは一善の攻撃を剣で受けつつ、つのキングの突進も避ける!
キィン!カァン!キィィン!!カァンン!!スパッ!!!キィン!!
ダザイ「...!!」
ダザイは、一善の首元に剣を振るう!
一善「...!(隙あり!)」
一善はしゃがんで避けるも、ダザイは剣を途中で引っ込める!
ダザイはしゃがんだ一善を足で蹴り飛ばす!!
一善「...!(反応が早い...!!)」
ドゴーーーーーン!!!
ダザイにつのキングが突進する!!
ダザイは、剣でつのキングの攻撃を受ける!!
そして、隙を見て立ち上がった一善が、ダザイに攻撃を加える!
一善「緑のエレメント...!草枕!!!」
ダザイは攻撃を避け、一善とつのキングに返しの一撃を食らわせる!!!
ダザイ「”玄武の構え”」
ドゴーーーーーン!!!
一善「いって...!」
つのキング「ウォーーーーー!!!」
ダザイ「...」
第509話 「追憶の声」
《魔導結界・蝕》
一善は膝をつく。
一善「ハァ...(強い...!一撃の重さもさることながら、何よりもその反応速度...!まるで、こっちの攻撃が”来ることが分かってる”みたいだ)」
ダザイ「...」
ダザイは、素振りで剣を上から振り下ろしながら、一善が立ち上がるのを待つ。
一善「...(相手の反応の速さを見るに、二手から攻めた方がいい。つまりつのキングはこのまま実体を保ち続けたいが、もうすぐつのキングを保つためのマヂカラは切れてしまう...何とか相手の隙を作らないと...!)」
一善は立ち上がる。そして、一度つのキングを解除する。
ダザイ「...」
一善「その足さばき...剣道だよね(つのキングを一度下げて、マヂカラを回復させよう)」
ダザイ「...」
一善「何故白鶯に加担する?」
ダザイ「どうだっていいだろう」
一善「まぁね。悪は滅ぼさないと」
ダザイ「...」
一善「でも君、そんなに強いのに、どうして魔導師になったの?」
ダザイ「お前には関係ない」
一善「...ま、話す気がないならいいよ」
一善は、回復させたつのキングをダザイの背後に召喚する。
一善「ここで死んでくれ」
つのキング「ウォーーーーー!!!!」
つのキングがダザイを背後から襲う!
グシャッ!!!!
ダザイは、ノールックでつのキングの位置を把握し、剣で串刺しにした!!
一善「?!」
ダザイ「...」
ズバッ!!!!
ダザイ「”白虎の構え”」
ダザイは大きく剣を振り下ろし、つのキングを一刀両断した!!!
一善「つのキング!!!(くそ...!一撃でつのキングが...!しばらく召喚出来ない...!)」
一善はダザイが後ろをむいている隙に攻撃を仕掛ける!
一善「”走”!緑のエレメント!潮騒!!」
しかし、ダザイは一善の攻撃を察知し、剣先を一善に振り向けた!
一善「!!」ピタッ
ダザイ「...」
一善「...(全部読まれてる...!何でだ?!)」
一善は一旦退く。
一善「...(おかしい。いくらマヂカラの気配を察知する能力が高いとはいえ、この結界で蔓延するマヂカラの中、相手の攻撃をあそこまでピンポイントに理解するのはかなりの労力がいるはず。それ程の実力者なのか...?)」
一善は考える。そして、辺りを見回す。
一善「...(なにか魔導書の能力で、視界を共有するようなものがあるのか?視界が360°常に展開されているとか...?)」
???”思い出して...!”
その時、一善の脳裏に、一善に馴染みの深い声が木霊する。
一善「??」
冬美”思い出して...!!!”
一善「...お母さん...?!」
それは、一善の母、油木冬美こと、伝説の魔法使い、日暮真理の声だ。
一善「お母さん...?思い出すって...?」
冬美”あの日のこと...思い出して...!”
第510話 「聖夜のこと」
《魔導結界・蝕》
それ以来、冬美の声は聞こえなくなってしまった。
一善「思い出す...あの日のこと...」
ダザイは、剣を振るって、一善が動き出すのを待つ。
一善「...!!!」
一善は思い出した。
あの日...あの3年前のクリスマスの事。
白鶯に殺されたお母さんの事。
その時...白鶯に奪われた、あの時お母さんが持っていた書物の名前!
第四十九章 予知の書!!!
一善「...(そうか、白鶯が持っていたならば、ノベルの誰かが履術していたとしても不思議ではない。もしかしたら、こいつは相手の攻撃を”予知”出来るのかもしれない...!)」
ダザイ「...」
一善「もしかして、君、攻撃を予知できる?」
ダザイ「...」
一善「ねぇ」
ダザイ「答える義理がどこにある」
一善「蒼魔導書第四十九章、予知の書。それが君の力、違う?」
ダザイ「...だったら?」
一善「その本、元々僕たちが拾った本だから、返して欲しいなって思って」
ダザイ「断る」
一善「じゃあ力づくで奪わせてもらう」
ダザイ「...」
一善「お前がその力をどこで、誰に貰ったかは知らないけど、お前のボスはその力を奪うために俺の母親を手にかけたんだ...!」
ダザイ「...!」
一善「緑のエレメント!虞美人草!!」
一善はダザイに迫る!!
グシャッ!!!!
ダザイは、一善の攻撃を受け、右肩に攻撃をもろに食らう!!
一善「?!(当たった...?!)」
ダザイ「...!!」
ダザイは肩を押え、地面に膝をつく。
一善「...?(避けなかった?いや、この動揺ぶり...きっと予知もオートでは無いんだな。つまり、予知の準備が出来てない時に攻撃をしたから、当たった...ということなのか?)」
一善は攻撃を重ねる!!
ダザイは立ち上がり、剣で攻撃を捌く!
キィィン!カァンン!キンッ!!カァン!!ズバッ!
ダザイは、突きの構えをする!
ダザイ「”蒼龍の構え”...!」
一善は右に体を躱す
ダザイ「...!読めてる!」
ダザイは、一善が右に体をずらすと同時に一善の腹部に蹴りを入れ、一善を吹き飛ばす!
ダザイ「...!」
一善「...(くっ...読まれた...!)」
ドゴーーーーーン!!!
一善「ハァ...ハァ...(くそっ...しっかり読まれると厄介だ...どうすれば...!)」
すると、そこへとある少女の声がする。
一善「?!」
ダザイ「...!」
ヒメ「一善!!!!!」
一善「ヒメ!!!!」
第511話 「読めない」
《魔導結界・蝕》
ヒメ「一善!!!!!」
一善「ヒメ!!!!」
ヒメは一善を追って結界の中へ入ったのだった。
ヒメは、一善に抱きついた。一善はそれを迎えて抱きしめる。
ダザイ「...」
一善「ど、どうしてここに...?」
ヒメ「いてもたっても居られなくて...ひえりちゃんに、一善の場所を聞いたから、ここにいるかなって...」
一善「そんな無茶しなくても...」
ヒメ「でもそんなこと行ってられないくらい緊急事態なの...!今近くの援軍も呼んだから!」
一善「ありがとう...!」
すると、ダザイがやって来て、ヒメの顔に剣先を向けた。
ダザイ「おい女。下がれ」
ヒメ「!」
一善が前に立つ。
一善「俺の兄弟に手を出すな。出したら殺す」
ダザイ「...」
ヒメ「...」
ダザイとヒメは睨み合う。
ダザイの剣先は少し震えて見える。
一善「?」
ダザイ「聞こえなかったのか?女。下がれと言っている」
ヒメ「...」
パァン...!
ヒメは剣をグローブのついた手で払った!
ダザイ「...!」
一善「...(あっぶな!)」
そして、ヒメはダザイの頬を強くビンタした!
ペシィン!!
ダザイ「...!」
一善「...!」
ヒメ「...」
ダザイは少しふらつく。
ダザイ「...(なんだ...痛みはそこまで無い...だがこの...なんだ...?記憶が揺さぶられる感覚は...?俺は今、何故ここに?そして、この”謎の記憶”はなんだ...?)」
一善は、ふらついたダザイの隙を攻撃する...!
一善「今だ...!」
一善は、ダザイの腹に魔導書ゲッターを嵌めた手を伸ばす!
ダザイ「!」
ダザイは一善を追い払うように剣を払う!!
ブヲォン!!!!
一善は後ろに退く。
ダザイは動揺しながらも、一善とヒメを前に体勢を整える。
ダザイ「...(ハァ...落ち着け...未来を読め...)」
ダザイは蒼魔導書第四十九章 予知の書の履術者。対象となる人物の少し先の未来を読むことが出来る。
一善「恐らくだけど、あいつはこっちの未来を読める。だから攻撃を避けられる。でも毎回避けられる訳じゃないみたいだ。俺が攻撃を畳み掛けるから、見て指示を出してくれ」
ヒメ「私も戦うわよ」
一善「無理はしないでね」
ヒメ「分かってる」
ダザイ「...(あの男は右から剣を振るう...あの女は...?)」
ダザイがヒメの未来を読もうとするが...
ダザイ「...?!読めない...?!」
第512話 「揺らぐ記憶」
《魔導結界・蝕》
ダザイ「...(なぜだ...あの女の未来だけ...読めない...!!)」
一善は、ダザイが読んだ未来通り、'右'か'ら攻撃をする!
キィン!
ダザイは剣で一善の攻撃を受け止める...!
ダザイ「...(あの女は?!背後か?!)」
ダザイは、一善を払い除け、背中に注意を払う!
しかし、ヒメは一善の裏から、ダザイの真正面に現れた!
ヒメは、ダザイに魔導書ゲッターを伸ばす!
ダザイ「しまった...!」
ダザイはヒメに蹴りを喰らわせようとする...!
しかし、ダザイの脳裏に”謎の記憶”が過る。
ヒメ「...!(蹴られる!)」
ヒメが腹に力を入れた途端、ダザイは何故か足を引っ込めた。
ヒメはバランスを崩すも、魔導書ゲッターを着けた手はダザイに命中。しかしゲッターはダザイと反発し、ヒメは一度退く。
ヒメ「...まだ早かったわね」
一善「もう少し消耗させないと...(今、攻撃を留めた...?なぜ?)」
その後も、ヒメと一善で連携して攻撃するも、一善の攻撃は全て読まれ、ヒメの攻撃はヒットするも、大したダメージは与えられず、膠着状態が続く。
一善「...(俺の攻撃は全て弾かれる...でもヒメの攻撃は当たる...ヒメに攻撃しないのは好都合として、相手はなぜヒメの攻撃を避けようとしないんだ...?)」
ヒメ「...(私の攻撃は当たる...けど十分なダメージを与えられない...”あの人”が来てくれれば...それに私にだっていつ手を出してくるか分からない...慎重にいかないと...!)」
ダザイ「...(ハァ...あの女の攻撃は大したことない...だから男だけ対処しておけば問題はない...だがなんだ...?あの女、未来が読めないのはあいつの能力故か?履術者同士の相性で劣っているということか?それに攻撃される度に記憶がとびとびになる...!吐きそうだ...!)」
ヒメ「あなた、何で私には手を出してこないのかしら」
ダザイ「...」
ヒメ「なんか、舐められてるのかしら?」
ダザイ「...!」
ヒメ「しかも私の攻撃は避けようとしないわよね、」
一善「ちょっとヒメ...!変に刺激したら身が危ないよ?」
ヒメ「そしたら一善が守ってよ」
一善「まぁ。そりゃ守るけども」
ダザイ「......」
ダザイは謎の記憶を見ていた。
”もういいの...温(ゆたか)...”
ダザイ「...!!!」
一善「?」
ヒメ「?」
ダザイ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一善「!!!」
ヒメ「!!!」
第513話 「咲山温」
回想──────
咲山温(さきやまゆたか)という少年がいた。
彼が住んでいたのは、寂れた団地街。
元号が二つ前から変わっていないような街である。
その街は通称”捨てられた街”。行政から見放された街である。街をふらつくヤクザやホテル街に入り浸る怪しい人々、公園を見ればゴミに囲まれたホームレス。街全体が暗い表情をしている。
温の家は、温の実父が過去に夜逃げし、シングルマザー。
母親、キキ(綺姫)。水商売紛いの事をして生計を立て、今は謎の半グレ男、戸倉と同棲している。毒親。
戸倉。キキの恋人。温らの家に住み、暴虐の限りを尽くしている。クズ。
温。高校生の年だが、高校には行かせて貰えていない。毎日アルバイトをして、月に12万を戸倉に渡している。
そしてもう1人、姉の優子。
優子。温とは年子。引きこもり。キキや戸倉の虐待の対象。元々は活発な少女だったが、実父の夜逃げ、キキの虐待、戸倉がやってきたことにより精神を病み、引きこもりになってしまう。戸倉の暴力により、一時は耳が聞こえないほどだったが、温が月に12万を渡すことで、その後直接的な暴力はなくなった。
《団地の一室 / 温の家》
温「これ、今月分です」
戸倉「おん」
戸倉は、温から茶封筒を預かる。
乱暴に封筒を破ると、中から札束と小銭が出てくる。
温「...」
戸倉はお金を数えると、逆上し始めた。
戸倉「はぁ?!てめぇこれ、12万足りねえじゃねえか?!おい、これ約束が違ぇよなぁ?!」
温「今月はシフトがキツキツで、これが俺が稼いだ全額なんだよ...!勘弁してくれ」
温は毎月12万以上稼ぎ、その浮いた分を自分の貯金として足しにしていた。
いつか姉の優子とここを出て、幸せに暮らすための貯金をしていたのだ。
戸倉「そんな事が通用すると思ってんのかなぁ?!おいキキ!!見ろよこれ!!」
キキ「全く。アンタは本当につかえないわねぇ。前の男とおんなじ」
戸倉「おい、あの女呼んでこい」
キキは、奥の襖を開ける。充満した腐敗の香りの中に、ボロボロになった優子が震えて座っていた。
キキ「うわくっさい...ちょっとアンタ!!換気くらいしなさいよ!!」
優子「...お母さん...」
キキ「ちょっと、あの人が呼んでるから!出てきなさい!!!」
キキは、優子の髪を鷲掴みにし、戸倉のいるリビングに連れ出した。
戸倉「相変わらずみすぼらしいなぁ。キキの娘とは思えねぇ...」
ドカッ!!!!
戸倉は優子の腹を思い切り蹴り飛ばす!!
温は、優子に被さるようにして優子を守る。
温「頼むよ...!姉ちゃんにはこれ以上手を出さないでくれ...!来月13万払うよ...!だからそれで勘弁してくれ!!」
戸倉「あぁ?!足りない分上乗せすればそれでチャラってか?!違ぇだろ?!来月は15万だ!!それが出来ねぇなら黙って見てろ!!」
戸倉は温を蹴り飛ばし、優子を更に蹴る。
温「わかった...なんとかするから...!頼むよ!!もうやめてくれ!!!」
ひとまずその場は収まり、2人は温から奪った茶封筒を持って、夜の街へ消えていった。
温「お姉ちゃん...傷...大丈夫...?」
優子「うん...ごめんね...私のせいで...」
優子は、精神はおろか、二人の虐待により手足も自由に動かせなくなっていた。
優子「私も働ければ...もっと温が自由になれるのに...ごめんね...」
温「いいんだよ。俺、頑張るから...!そうだ!これ見てよ!!」
温は、二人に絶対にバレないように、優子の部屋の奥の奥に、貯金箱を置いていた。
温「今はまだ全然だけど...このお金が貯まったら、二人でここを出よう!それで健康に暮らすんだ!」
優子「温...」
温「これは2人だけの内緒ね!俺は姉ちゃんと2人で、外へ出るんだ!」
優子「うん。内緒にするね。ありがとう、温」
温は優子を抱きしめる。
温「俺が姉ちゃんを守るから...ね!」