SOREMA -それ、魔!- 55

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SOREMA -それ、魔!- 55

 

 

「災厄の日」

 

 

────


第449話 「取り合い」

 

────


《研究班ルーム》(回想)

 


京金「ちょっと...アンタね!」

麗美「何よ!」

京金「これは私が打とうとしてたの」

麗美「いや、私が打とうとしてました!」

京金「は?私が先輩なんだから譲りなさいよ」

麗美「いやただの出戻りでしょ?私の方がずっといるんだから優先されるべきだわ!」

京金「ずっといる割には何でずっと打ってなかったのかしら?もしかして、怖かった?」

麗美「は?そんなじゃないから!私はなくても十分やってたわ!」

京金「じゃあいいじゃない。ほら、譲った譲った」

麗美「チッ...ムッかつく...!」

 


東海林「ほらルカルカもレミレミも落ち着いて!」

麗美「やめてくださいそのあだ名本気で」

東海林「...(怖い...!)」

百目鬼「...(早く打ってくんねぇかな...)」

粟生屋「zzz...」

 


五百旗頭「確かに2人とも、赤とは相性が良さそうね。でもごめんなさい。1つしかないのよ」

京金「...」フゥ...

麗美「...」

五百旗頭「ジャンケンで決める?」

京金「...!(そんな!)」

麗美「...!(大事なことを!)」

東海林「...!(まさかの!)」

百目鬼「...!(ジャンケンで!)」

粟生屋「zzz...」

 

 

 

ポン!

 

 

 

麗美「やったー!!!勝ったー!!!」

京金「...クソ!」

五百旗頭「はい。じゃあ空見さん赤ね」

京金「...」

東海林「まぁまぁ...どんまい、ルカルカ...」

京金「...あったまきた!!!もういいわよ!!残りのやつ全部私に頂戴っ!!」

五百旗頭「はへ?」

京金「赤はやるわよあの小娘に!大人の余裕よ!私あの子より強いから!ほら、打ってきなさい。早く早く」シッシッ!

麗美「...」カチン!

百目鬼「...(全く余裕ないんだよなぁ...)」

 

 

 

東海林は緑

百目鬼は紫

麗美は赤

そして京金は、無理やり青と黄色を打った。

 


数時間後──────

 


五百旗頭は、広い部屋に4人を集めた。粟生屋とジャスティンはその様子を見ている。

 


五百旗頭「そしたら、手のひらを上に返して、親指と薬指で輪っかを作って。他の3本の指はピンと伸ばすのよ」

東海林「え、ど、どうやってやるのぉ!」

安西「こうだよ!」

東海林「あ、ありがとうございますっ!」

 


ジャ「打ったんですね、みんな」

粟生屋「なんかね」

ジャ「面白いことになりそうだ...!」

 

 

 

五百旗頭「せーの!」

一同「マ!」

 

 

 

ボワッ!

 

 

 

 

 

 

────


第450話 「絶景」

 

────


《第2支部 / 大部屋》(回想)

 


一同「マ!」

 


ボワッ!

 


麗美「うわぁ!赤い!」

百目鬼「...!(紫色のオーラ...!)」

東海林「!!緑だ!!!」

五百旗頭「3人とも成功ね」

 


京金「!...!...!」

京金は何度やっても炎が上がらない。

東海林「ルカルカ、ちゃんとマ!って言わないとダメだよ?」

京金「言ってるわよ...!(小さい声で)」

東海林「もっと大きな声で言いなよ!」

五百旗頭「彼女の場合、前代未聞の2本打ちだからね...どうなることやら(彼女の場合、体質が体質なだけに命に別状はないとは思うけど)」

 


京金「...やってるわよ!!ん〜〜〜」

東海林「...!」

麗美「...!」

五百旗頭「...!!」

 


京金「んマ!!!!!!」

 

 

 

ボワァァァァァッッッ!!!!

 


五百旗頭「おー」

京金の指先からは、青と黄色の炎が立ち上がった!

 


京金「ふっ。2色。さすが私ね」

五百旗頭「おめでとう、あなたは青と黄の二色使いよ」

京金「これで私も敵無しだわ」

五百旗頭「後は使いこなせるように、エレメントの流れに慣れておくことね」

京金「えぇ」

 


グヲォォォ...!

百目鬼「...(これが...エレメント...!体に力が漲ってくる...!)」

東海林「...!(凄い!なんか、パワーが溢れ出るような!ゾワッて感じ!)」

麗美「...(この力で...私は...もっと強くなる!)」

 


五百旗頭「じゃあ、少し行くところあるから、日の出まで安静にしておくこと。いいわね。後は頼んだわ。犬飼、安西」

犬飼「はい!」

安西「了解!」

 


五百旗頭は、部屋を去った。

 


ジャ「また、エレメントの使い手が増えたね...!」

 

 

 

《第2支部 / とある魔法陣》

 


彼らがエレメントを顕現させたのとほぼ同時刻、ヒメとひえりはとある魔法陣の前に居た。

 


ヒメ「この先が、私達の基地となる場所。準備はいい?」

ひえり「はい...!」

 


ボワァァン

 


2人は魔法陣に入る。

 


するとそこは、驚くべき光景だった!

 


ひえり「...!凄い!!」

 


そこは360°何一つ障壁のない、上空──────!

 

 

 

 

 

 

────


第451話 「千里」

 

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《上空基地》(回想)

 


ひえり「凄い...!これ、床とかないの?浮いてるの?」

ひえりの真下には、東京の街が、目線を前にやると、遠くまで街並みが広がっている。

ヒメ「特殊な方法で作られたバーチャル空間よ。今見えてる街は、リアルタイムの東京と同じ。だから、私達は空に浮いてるも同然よ」

ひえり「私が立ってきたどんなステージよりも高くて...広い...!」

ヒメ「私達はここから、皆に指示を出すの。マヂカラの反応が出たり、メンバーに何かあった時に。ひえりちゃん、あなたのその眼が頼りよ...!」

ひえり「はい!」

 


《浅草》

 


九頭龍坂と虎走は、同時刻、ヒメの依頼で浅草にやって来ていた。

九頭龍坂「ヒメはんに言われて浅草まで来たけど。なにしはるのかしら?」

虎走「ぎゃは!ま、可愛いからいいじゃん!」

 


《上空基地》

 


ヒメは、九頭龍坂に電話する。

ヒメ「はい...ええ。お願いします!」

 


ピッ!

 


ヒメ「ひえりちゃん。今、その眼の能力、使える?」

ひえり「もう使えます。結構長い時間使うのも慣れてきました!」

ヒメ「...(この間履術者になったばかりなのに、吸収が早い...血筋かな...?)」

ひえり「どうしました?ヒメさん?」

ヒメ「あ!ううん!なんでもない!もしなんか見えたら、教えて欲しいなって!」

ひえり「ん!北東方面!浅草の方かな?小町さんと葉月さんがいます!」

ヒメ「...(凄いな...こんなに遠くなのに...百眼千里...かなり重宝するわ...!)」

 


ひえり「2人とも、兄とは仲良くしてくれていたので...今度遊びに行きたいな...一緒に」

ヒメ「そうね...そんな日常が当たり前になったら、いいわね」

ひえり「はい...兄の願いでもあるので...」

ヒメ「...」

 


《浅草》

 


九頭龍坂「これだけでええの?ただ空き缶伸ばしただけやけど?」

虎走「なんだろうね?あ、ヒメちゃんからLINE来た、もう帰っていいって」

九頭龍坂「ほんま、かいらしい顔して人使い荒いなぁ。帰ろ帰ろ」

虎走「ちょっと浅草観光してかない?」

九頭龍坂「あ、ありやなぁ。雷おこし買ってったろ」

 


《上空基地》

ヒメ「うん。ひえりちゃん、凄いよ。明日からまたここで、2人で頑張ろ!」

ひえり「はい!」

 


ボワァァン!

 


五百旗頭「私も仲間に加えてくれるかしら?」

ヒメ「あ、渚さん!」

ひえり「こんにちは...!」

五百旗頭「私も有事の際はここで協力するわ。現場は彼ら(安西、犬飼)が居れば安心だから」

ひえり「はい...!よろしくお願い致します!」

ヒメ「よろしくお願いします!」

五百旗頭「ひえりさん。あなたの体、診てみたいから、これから医療室に来て貰えるかしら」

ひえり「...!分かりました!」

 


3人は、基地を出た。

 


回想終──────

 

 

 

 

 

 

────


第452話 「泣かない」

 

────


《第2支部 / 実働班ルーム》

 


一善「なんか、どんどん皆進歩していってて、凄いね」

ヒメ「そうね。そういえば、あの剣、何だったんだろうね」

一善「うん。一応魔具庫にしまったけど、錆び付いてて、使えるか分からないなぁ」

ヒメ「ルカさんとかに見せてみれば?魔具には詳しいかも」

一善「...そうだね!」

 


ヒメ「...平和な時代もすぐそこだと、思いたいけれど」

一善「これが、絶望への前進じゃないといいけど...」

 


一善は俯いた。

 


ヒメ「怖い?」

一善「...ううん。皆でやれば、きっと...大丈夫...」

一善は、顔をあげずに答えた。

 


ヒメ「一善、辛い?」

一善「そんなこと、」

ヒメ「辛そうだよ」

一善「...ごめん」

 


一善は立ち上がって言った。

 


一善「俺達は、大丈夫...!きっと、やるさ」

ヒメ「...」

 


一善は、座り直した。

ヒメ「...」

一善「ヒメ?」

 


ヒメ「泣いていいんだよ?私の前では」

 


一善「...!」

ヒメ「だって、家族じゃない。私達」

一善「!」

 


ヒメ「私は、少し不安。でも、皆の力を信じてる。それは私が戦わない魔法使いだから言えることで、一善と私は、見えてる物が違う。それは仕方がないことなの」

一善「...」

ヒメ「それに、同じものを見ていたとしても、捉え方は違う。一善が未来を見据えて、不安になってしまうのも、仕方がないこと」

一善「...」

ヒメ「一善は優しいから、皆の前では、士気を下げないようにとか、不安を煽らないように、明るい顔してる。分かるよ?私、ずっと一善のこと、近くで見てるし」

一善「ヒメ...」

ヒメ「でも、私は違うでしょ?だから、言いたいこと、全部言っていいんだよ?私は一善の全てを受け入れてあげられる、たった1人の家族だし...!」

一善「ヒメ...!」

 


ヒメ「でも、平和な時代はきっと来る。私は、本当にそう信じてる」

一善「...」

 


ヒメは、一善の膝に置かれた拳に、手を重ねる。

一善「...!」

ヒメ「一人で背負わないで、一善」

一善「...」

 


一善は、握った拳を解いた。

 


一善「ありがとう。でも、泣かないよ。今は」

ヒメ「...!」

 


一善「嬉し涙。次に流すのは、そんな涙がいい」

 


ヒメ「...一善ったら...!」

一善「え...何?」

ヒメ「そのリリシスト具合、どっから仕入れてきたのよ!」

ヒメは、微笑みを浮かべながら答えた。

一善は頬を赤らめた。

 


ヒメ「まぁでも、私たち、出来ることはそれぞれ違うけど、精一杯やりましょう。お互いに」

一善「...うん!」

 

 

 

 

 

 

────


第453話 「後悔と後悔」

 

────


《第1支部跡地 / 個室》

 


第1支部のあった、東京タワーの魔法陣から繋がる空間。

ここは今も、魔裁組員の宿舎や休憩所として使用されている。

 


東海林は、美波と話をしている。

 


カキカキカキ...

 


美波は、デッサンをしている。

東海林「すごーーい!!!私だぁ!!!」

美波「ありがとうございます...!」

東海林「美波ちゃん絵上手なんだねっ!」

美波「昔から推しをよく書いてたので...」

東海林「おし?」

美波「い、いや!なんでもないです!」

 


東海林「ふーん...てことは、魔裁組のメンバー皆描けるの?!」

美波「まぁ...何となく?」

東海林「すごーい!」

 


東海林は、美波が描いた自画像を高く持ち上げて喜んだ。

 


美波「...唯さん、1つ質問いいですか...?」

東海林「?」

美波「もしするなら、やって後悔と、やらずに後悔、どっちですか?」

東海林「うーん...」

美波「私はずっと、やって後悔を避けて生きてきました。だって、余計なことやっちゃって、面倒になったり、人に迷惑かけたりするの、嫌じゃないですか。迷うくらいのことなら、しない方がいいって」

東海林「...」

美波「よく、やらない後悔はひきずるって言うし、だからやって後悔しろ見たいな風潮あるじゃないですか。別に、1人の話ならいいんですよ。でも、やって後悔した先が、大事な人を曇らせることになるなら、私はしたくない」

東海林「...」

美波「魔裁組(ここ)にいると、よくそういう場面に出会います。私が余計なことをして、戦局を乱してしまったらどうしよう。仲間を傷つけてしまったらどうしようって」

東海林「うんうん...」

 


美波は下を見つめながら続ける。

美波「最初の頃はがむしゃらで、自分が精一杯できることをしていました。でも最近は落ち着いて来て、自分に出来るある程度のことが分かるようになって、何より、凄い仲間が大事だなって、思うようになった」

東海林「......」

美波「でも、今度の敵は、多分今までで一番手強い。私も、きっと無理や背伸びをして戦わないと敵わない。だから、唯さんは、どう考えてるのかな?って...」

 


美波は、東海林の方を見た。すると、東海林は両の目から涙を流していた。

美波「...!唯さん...?」

東海林「グスン...ううん...!ごめん!なんでもない」

美波「どうしたんですか...?」

美波は、東海林の肩をさする。

東海林「いや...なんだろう...羨ましいなって...!」

美波「羨ましい...?」

 


東海林「いや!ごめんごめん!グスン。今のナシ!うん!後悔の話だよね!」

美波「...?」

東海林「私はそれでも、やって後悔を選ぶ。美波ちゃんの立場なら、尚のこと」

美波「?」

 


東海林「私、皆の事見てて思うんだ。それぞれがそれぞれを信頼してて、いいチームだよね。仲間を思いやる気持ち。それを全員が持ってる。これって凄い稀なことで、簡単に出来ることじゃないんだよ。だから、凄い」

美波「は、はぁ...」

東海林「だからね、たくさん迷惑かけていいと思う。悪意から来てないって分かるもん」

美波「...!」

 


東海林「自分の出来ることが分かるようになったって、美波ちゃんは言ったよね?それって、凄く強くなった証拠だと思うの。でもね、」

美波「...?」

 


東海林「成長する時って、出来るか分からないことを、やれた時だと思う」

美波「!!」

 


東海林「魔法使いになりたての時は、とにかく周りに圧倒されまくって、何回も心が折れた。でも周りの皆の強さを盾にして、自分に出来ることを探した。最初は何も出来なくて、何が出来るかなんて事は分からなかったから」

美波「...」

東海林「私の尊敬する人が言ってた。何事も、イメージが大事って」

美波「...!」

 


東海林「だから、やってみたらいいと思う。私ならそうするかな。答えになってる?」

美波「...はい!ありがとうございます!(唯さんて、一見ちゃらんぽらんに見えるけど、凄い深く考えてるんだな...)」

 


そして、東海林は美波に耳打ちした。

東海林「それにね、女の子は、少し迷惑がられる位が可愛いよ♥」

美波「...!」ドキ!

 


美波はよろけた。

東海林「どうしたの?美波ちゃん」

 


美波「めっちゃ...いい匂いしました...」

 

 

 

 

 

 

────


第454話 「予感」

 

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数週間後──────

 


10月7日。この日までは、平穏な日々が続く。

実働班のメンバーは入れ替えでパトロールを行っている。

 


《第2支部 / 実働班ルーム》

 


東海林は休憩中。京金と電話している。

 


東海林「ルカルカーお疲れー!調子はどう?」

『京金 : 特に何もないわ。そっちは?』

東海林「私は今休憩中!」

『京金 : 唯、もしかして今日お休み?』

東海林「ううん!今日お休みは美波ちゃんとジャスティン君じゃない?」

 


実働班のメンバーは、休みを交代で回して毎日パトロールをしている。

 


『京金 : そう』

東海林「私ももうすぐまたパトロール!」

『京金 : ならちょうどすれ違いかもね』

東海林「そっか!」

『京金 : 最近、静かよね』

東海林「うん...このまま何も無かったらいいのになぁ」

『京金 : ...』

 

 

 

《渋谷 / ハチ公前》

ジャスティン、1人で渋谷へ。

 


ジャ「...(今日は、何か嫌なことが起こるような気がする...勘だが)」

 


ジャスティンはハチ公付近を歩く。

 


ジャ「...(百目鬼を信じるなら、俺は'こ'の'力で、ノベルを討つ...!)」

 

 

 

サンシャイン60通り

 


莉茉、パトロール中。

 


子供「うぇーーーん!うぇーーーーん!」

子供が、泣いている。

母親「ほら泣かない泣かない!風船ならまた買ってあげるからね?」

莉茉は遠くからその様子を見る。

莉茉「...(どうしたのかな?あの親子。風船...?)」

 


どうやら、子供は風船を空に放ってしまったらしい。

莉茉は空を見上げる。空には熊の風船が飛んでいた。

莉茉「...(あぁ、あの風船、あの子のだったんだ)」

 


子供「いやだぁ!あのくまさんのふうせんがいいの!!うぇーーーーん!!」

母親「もう...こまったわねぇ...」

莉茉はその親子に近づく。

子供「...?」

莉茉は子供の頭を撫でる。

莉茉「大丈夫だよ。君、お名前は?」

けんと「...けんと」

莉茉「けんと君。待っててね。今お姉さんがくまさん連れて帰ってくるからね?」

けんと「え...?」

母親「え、でも、もう風船は...」

 


莉茉は、空目掛けて手で鉄砲の形を作った。

莉茉「...(本当は魔法をこんな形で使っちゃダメなんだけど...!)」

 


パァン!!!

 


莉茉は風船目掛けて技を放った!

親子には勿論、何も見えていない。

 


ピタッ

 


すると、風船が空で動きを止めた。

 


莉茉「よし、成功!」

 


ヒュッ!!!

 


莉茉はまるで、'長'い'糸'を'引'く'よ'う'にして、風船を手繰り寄せた!

 


けんと「わぁ!!くまさんが帰ってきた!!」

母親「え...!ど、どういう?!あなた、マジシャン?!」

莉茉「ふふっ。実は。内緒ですよ?」

 


親子は目を丸くして、莉茉が持つ風船を見ていた。

 


莉茉「...(これは、青のエレメントで風船の紐目掛けて打った弾丸の軌跡を、桃のエレメントで具現化することによって、長い糸のようにエレメントを操る技...名付けて、チューイングラブ!)」

 


莉茉は、けんとに風船を渡した。

 


莉茉「けんと君よかったねぇ!くまさん戻ってきた!」

けんと「すごい!おねえさん、ありがとう!」

莉茉「もう手、離しちゃダメだよ?」

けんと「うん!」

母親「ありがとうございます...!」

莉茉「いえ!では、私はこれで!」

 


莉茉は、その場を去った。

 

 

 

《上空基地》

 


ひえりは、ヒメと共に東京全域のマヂカラを監視する。そこへ五百旗頭がやってくる。

 


五百旗頭「お疲れ様」

ひえり「お疲れ様です!」

ヒメ「あ、お疲れ様です」

 

 

 

 

 

 

────


第455話 「10月7日」

 

────


《上空基地》

 


五百旗頭「今日はどう?平常かしら」

ヒメ「今の所は何も!」

ひえり「ん?池袋でマヂカラ反応?」

ヒメ「池袋っていうと今日近くをパトロールしてるのは?」

ひえり「多分莉茉さんですね、あの感じは」

五百旗頭「もう完璧に誰のマヂカラか感じ取れるようになったのね。この距離から」

 


ひえりは、目元に手で眼鏡を作り、池袋方面を見る。

 


ひえり「あ、莉茉さんだ」

ヒメ「どうしたのかしら」

ひえり「でも、特に問題は無さそうですね」

ヒメ「それならいっか」

ひえり「はい!」

 


3人は東京の街を眺め続ける。

 


ひえり「東京って、狭いようで広いですよねー。途切れなくずっとビルが見える。これって全部、人が作ったものなんですよね」

ヒメ「そうね」

ひえり「そりゃ、当たり前なんですけど、なんか、凄いことですよね」

ヒメ「うん」

五百旗頭「私たち、今何人の人々を見ているのかしらね」

ひえり「確かに」

 


五百旗頭「今私達が見てる景色の中で、数え切れないほどの尊い命が輝いてる。必死にみんな生きてる」

ヒメ「...」

ひえり「...」

五百旗頭「救いたいわ。全員、一人も漏らさず」

ヒメ「...そうですね!」

ひえり「はい!」

 


三人は遠くの空を真っ直ぐ見つめる。

 


五百旗頭「そういえば、明日の当番の事だけれど...」

 


五百旗頭が話出そうとしたその時だった!

 


ピピッ!

 


ひえりが何かに反応した。

 


ひえり「ん?またマヂカラ反応だ」

五百旗頭「...?」

ヒメ「...?」

 


ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!

 


ひえり「?!何これ!」

 


ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!

 


東京のあちこちで、無数のマヂカラ反応が突如現れた!!

 


五百旗頭「ひえりさん?!」

ヒメ「どうしたの?!ひえりちゃん!」

ひえり「分かりません!でも、至る所からマヂカラ反応が!!それも数え切れないほどの!」

五百旗頭「!!」

ヒメ「!!」

 


ブーーーー!!!ブーーーー!!!

 


ひえり「!!」

ヒメ「何?!」

マヂカラレーダーのブザーが鳴り響く!!

 


無線「東京都台東区上野駅周辺に、かなり強いマヂカラ反応あり!」

無線「東京都港区高輪、品川駅周辺に、かなり強いマヂカラ反応あり!」

無線「東京都千代田区丸ノ内、東京駅付近に、かなり強いマヂカラ反応あり!」

 


ブーーーー!!!ブーーーー!!!

 


アラームは鳴り止むことなく、ひっきりなしに鳴らし続ける!

 


五百旗頭「皆は?!大丈夫かしら?!」

ひえり「ちょっと、マヂカラ反応が多すぎてすぐには分かりません!!」

ヒメは、イヤホン型無線を使って、実働班メンバーに連絡を取る!

 


ヒメ「皆!!パトロール中の人達は連絡ください!!大丈夫ですか?!」

 

 

 

《東京某所》

 


白鶯とセリーヌが、高台から街を見下ろす。セリーヌは自らから無数の”分身”を作り出して、街に放つ!分身達は街を走り回っては、街を破壊し、人を襲っている。

 


白鶯「ふはっ。期待以上だ」

セリーヌ「当然よ。前任がどんな奴だったかはしらないけど、この”鏡像の書”(能力)を誰よりも使いこなせるのは私よ...!」

白鶯「ふっ。終了次第、お前も指定した場所へ行け、祭りの始まりだ」

セリーヌ「ふふっ。楽しみね」

白鶯「今日で物語は終わり、そして新たな章が始まる。歴史が変わる瞬間を、指を咥えて見ているのか、それとも抗うか...どうする?魔法使い達...!」

 

 

 

 

 

 

────


第456話 「災厄の日」

 

────


《渋谷 / スクランブル交差点》

 


電光掲示板では、臨時ニュースが流される。

 


キャスター「緊急事態です、只今東京では、”突風”が吹き荒れ、建物の倒壊が起き、多数の怪我人が出ています」

キャスター「皆様気を付けてください。建物の外を出ないように!」

 


通行人「突風?全然、風なんか吹いてるか?」

通行人「いや、普通じゃね?」

通行人「ニュース何言ってんだ?笑」

 


ジャ「...!」

ジャスティンは、スクランブル交差点のど真ん中で立ち尽くす...!

ジャ「...(突風...?違う!これは...魔者、いや、ノベル(奴ら)だ...!!!)」

 


キャーーーーーーーー!!!!!!

 


ジャ「...!!」

 


ジャスティンは、公園通り方面から人々の悲鳴が上がるのを聴く。

ジャスティンは群衆を掻き分け、QFRONT横を疾走する。すると、渋谷のビル群が次々と倒されていた!!

 


ドガーーーン!!!ボガーーーン!!!!

 


人々は逃げ惑い、悲鳴をあげ、文字通りパニック状態に陥っていた!!!

 


ジャ「...(強いマヂカラ反応...!なのに、見えない...?それ程に早いのか?!)」

 


すると、ジャスティンの後ろに、女性(セリーヌ)の形をした魔者が現れた!

 


ジャ「...?!(魔者?!)」

魔者はジャスティンを襲う!!

 


バッ!!

 


ジャスティンは、攻撃を躱す!

ジャ「白のエレメント...!氷結のアリア!!!」

 


パキィーーーー!!!!

 


魔者は滅びた。

 

 

 

セリーヌの脳内》

 


セリーヌ「チッ。1機やられた、まぁいいか、あと1万機あるし。いや、9999機か」

 


セリーヌは自らの分身を1万機作り、東京各所に放った。それぞれは独立して動くが、本体ほどの強さはない。セリーヌ本体は、分身が潰されるとそれを把握出来る。

 

 

 

《渋谷 / MODI前》

 


ジャスティンは足を進める。

 


ジャ「...(弱い?この魔者はブラフか?)」

 


ドガァーーーン!!ズガァァーーーン!!!

キャーーーーーーーー!!!!

 


ジャスティンの目の前で、ビルが何棟も倒壊していく。

ジャ「これをやってるのはどこだ...出てこい...!!」

ジャスティンは神経を研ぎ澄ます。

ジャ「...(まさかな)」

 


ジャスティンは大きく息を吸う。

 


ジャ「出てこいよ!!!!!ノベル!!!!!お前の相手は俺だ!!!!!」

 


ジャスティンの声は、悲鳴と轟音に掻き消される!

 


ジャ「ちっ...!出てこないなら、仕方ないか...?」

ジャスティンは、手にマヂカラを込める...!

 


すると、ジャスティンの目の前にから、いきなり魔者が現れた!

 


ジャ「...!!!!」

ジャスティンの視線は、一瞬にしてその魔者に釘付けになる。男の姿、緑の顔、そして顔にはガスマスク。

 


ジャ「...!!お前は...!!!!!!」

サド「呼んだかな?魔法使い」ドン!!!!