SOREMA -それ、魔!- 49

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SOREMA -それ、魔!- 49


「破片」

 

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第407話 「Elements of ”Element”」

 

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《第1支部 / 鬼屋敷の部屋》


ジャ「姉さん凄い!戦ってるところ初めてみたかも!」

鬼屋敷「ハッハッハッ!理子ちゃんはねぇ。昔からかなり優秀なのよ〜?」

ジャ「俺もあんな風になれるのかな」

鬼屋敷「ま、簡単ではないわよ?」

善能寺「...」


莉茉は不貞腐れながら、画面を睨みつける。

莉茉「...」

鬼屋敷「あなた、いつまでぶーたれてるのよ。可愛い顔が台無しよ」

莉茉「だって...この人達皆人殺しなのよね」

鬼屋敷「まぁ、そうとも言うわね」

善能寺「あなたのお父さんのことは残念だと思うわ。でも、彼らが居なければ、もっと悲しむ人が増えるの。分かってもらいたいわ」

莉茉「...」

鬼屋敷「ほら!唯ちゃんよ!あなたの恩人!」

莉茉「...恩人?!」

ジャ「...?」

善能寺「...」


莉茉「恩人って何よ!!!あの人は私の父を殺したの!!!なんで...なんで私が...あの人に感謝しないといけないのよ...!!!意味がわからない!!!」

莉茉は泣き崩れた。


ジャ「...」

鬼屋敷「...」

善能寺「...」


すると、ジャスティンがポケットティッシュを差し出した。

莉茉「...?」グスン

ジャ「...大丈夫?」

莉茉「...」

ジャ「俺は昔からお父さんもお母さんも居ないんだ。だから莉茉ちゃんの気持ちはちゃんと分かってあげられないけど...」

莉茉「...」

ジャ「あそこにいる人達はね、皆すごい人たちなんだ。人の為に命を張って、悲しむ人を少しでも減らすために、頑張ってるんだよ」

莉茉「...説教?」

ジャ「あぁ!ごめんごめん...そうじゃないんだ。でも、悪い人じゃ、ないんだよ」

莉茉「...」

ジャ「俺はね、あの人達みたいな魔法使いになりたい。いや、絶対になるんだ。莉茉ちゃんみたいに、優しい子の涙がこれ以上流れないように」

莉茉「...」

ジャ「莉茉ちゃんにも、わかってもらえるように、凄い魔法使いに俺はなる。だから、好きなだけ泣いて、怒って、それを俺にぶつけていいよ?今日から仲間なんだから」

莉茉「...!」

ジャ「俺は折れないよ。誰かの悲しみを背負って、人は強くなるものだから」

莉茉「...」


ジャ「莉茉ちゃんの悲しみも一緒に背負ってくれる人が現れるといいね。俺はその1人目ってことで」

莉茉「...!」


ジャスティンは、莉茉の肩を擦りながら、部屋の外へ出た。


鬼屋敷「ハッハッハッ!ジャスティンだっけ?口だけは一丁前なのねぇ」

善能寺「強い魔法使いには必要な要素よ。心の強さ。彼らが魔裁組の新しい光になることを願っているわ...」

鬼屋敷「...?」

善能寺「彼らは平和な未来への”エレメント”だから...!」

鬼屋敷「...?!」


善能寺は、モニターを消した。

善能寺「そろそろお茶でもしましょ」

鬼屋敷「ハッハッ!いいわねぇ〜」

 

────


第408話 「オリジナル」

 

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《黒の孤島 / 千巣・東海林サイド》

 


シュッ!ビュンッ!キィン!カァンッ!バッ!シュッ!キュッ!ザッ!

 


千巣と東海林は激しく剣を交える!

千巣「中々やるな...!」

東海林「私だって、強くなったんだからっ!」


バッ!


2人は距離をとる。

東海林「行くよ!せんちゃん!」

千巣「来い!」

東海林は高速で千巣に迫る!

東海林「!!!!」

千巣「!!!!」


カ   ァ   ン   ッ!


東海林の2本の刀の内1本が弾かれた!

東海林「...!(やばい...!)」

千巣「...!!!」

千巣は怯んだ東海林目掛けて斬り掛かる!

キィン! キィン! キィン!

東海林は、1本の刀で受ける!


千巣「よくやった。だが...」バッ!

東海林「...!」

千巣は、刀を大きく上に振り上げた!

東海林「!!!」

東海林の刀は折れてしまった。

東海林「刀が...!」

千巣「どうする...?魔法使い特級、東海林唯」

東海林「ふふっ。油断禁物だよ?」

千巣「...?」


ヒュン!!!


千巣「!!!」

すると、千巣目掛けて、最初に転がった刀が襲いかかった!

千巣「...?!(刀が飛んできた...?!)」

東海林「それだけじゃないっっ!!」

千巣「?!?!」

刀は何度も千巣に向かって飛び続ける!

ビュンッ! ビュンッ! ビュンッ!

千巣「何だこの刀...!まるで生きてるみたいに...!」

東海林「私の能力よ。私は、魔力の宿る物全てに翼をさずけることが出来るようになった...!これはその一種。人呼んで...”剣の舞(つるぎのまい)”...!」

千巣「なるほどな...レッドブルかよ...!」

東海林「(本当は2本の刀でやるものなんだけどね...)君には避けきれる?!せんちゃん!!!」

千巣「!!!」


ビュンッ!ビュンッ!キィンッ!!ビュンッ!!ビュンッ!ビュンッ!キィン!!!

刀は何度も千巣に斬りかかる!

千巣「...!(しつこい...!)」

東海林「はぁぁぁぁっっ!!!」

千巣「!!!」

東海林は翼を生やし、空から飛び蹴りを食らわす!!


ドカーーーーーン!!!


千巣「ハァ...ハァ...(油断した...!)」

東海林「どう...!これが私にしか出来ないオリジナルの戦い方...!!」

千巣「...」

東海林「(理子さんと一緒に沢山考えて...沢山練習したんだ...!皆に追いつけるように...!)」

 

────


第409話 「開眼」

 

────


《千巣・東海林サイド》


千巣「なるほど...オリジナルの戦い方ねぇ」

東海林「...」

千巣「...(少しやってみるか...)」

東海林「...?」


千巣は、刀を収めた。

東海林「せんちゃん?」

千巣「東海林、お前が、俺の”新たな力”の第一発見者になるかもな」

東海林「え?せんちゃん?」

千巣「(もっとも、新たな力などではなく、昔から俺が授かった本来の四十六眼(ちから)なのだが。この目は粟生屋の目の劣化などではない。ちゃんと使えば、かなりの戦力になる...!)」

東海林「...?」


千巣「これが俺のオリジナルの戦い方さ...見せてあげよう」

東海林「...(刀しまってるけど...何をする気...?)」

千巣「いや...何も”見る”ことは出来ないだろうが...」

東海林「?!」


千巣「!!!!」キィィィィィィン!!!!

千巣の眼が妖しく輝く!!

東海林「!?!?!」

 

千巣「”烏珠(ぬばたま)”!!!!」

 


東海林「!!!!!!」

東海林の目には、千巣の四十六眼が大きく映る!!

東海林「...(何...この景色...?ん?何?!真っ暗になった...!!何これ...!何も見えない...何も聞こえない...?!ここはどこ...?!)」

千巣は東海林の背後に移動する。

千巣「五感を全て奪わせてもらった...しばらくの間、何も感じない存在となってもらう。目と目が合うことをトリガーに術が発動する...これが烏珠。俺の眼の能力さ...もっとも...もう聞こえてないだろうが」

東海林「?!?!?!?!」

千巣「しばらく眠っているといい...また後で会おう、東海林」


ガッ!!!!


東海林「!!!!」

千巣は、東海林を気絶させ、木の麓に寝かせた。


この”烏珠”、後に”虚”として強化される、千巣家直伝の必殺技である。


千巣「さてと...戻るか」

 

────


《皆藤・白鶯サイド》


時を同じくして、白鶯と皆藤は激闘を繰り広げていた。


白鶯「ハァ...ハァ...」

皆藤「...」ニッ


シュッ!バッ!ダンッ!キンッ!キンッ!バッ!

白鶯「...ハァ...」ズザザ...

皆藤「...」ビュンッ!


白鶯はジリジリと後方に追い詰められていた。かたや皆藤は余裕の笑みで白鶯を追い詰める!

 


シュイン!シュイン!シャキーーーン!!!

 


白鶯「ぐはっ...!」

皆藤「...!」フゥ...


バタッ...


白鶯は、膝をついた。


そこへ、千巣が帰ってくる。


千巣「結構派手にやりましたね」

皆藤「そう?」

皆藤は額の汗を腕で拭う。


皆藤「唯は?」

千巣「ちょっと休んでもらってます」

皆藤「ふっ。なるほど」


すると、白鶯が最後の力を振り絞り2人に突進した!

皆藤「...!!」キィン!

白鶯「!!!!」ゴゴゴゴ!

皆藤「ふっ!!!!」ドカン!

白鶯は、皆藤に腹を蹴られ後ずさりする!

皆藤は筆を走らせた!

皆藤「魔鳥獣戯画!蛙」

数体のカエルが現れる!!

皆藤「降魔百景!!高波!!!」


ザブーーーーン!!!


現れるは、高波──────?!

 

────


第410話 「獲物」

 

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《皆藤サイド》


皆藤の能力で、大きな波が発生した。カエルと共に大きな波が白鶯を襲う!

白鶯「...!」

千巣「やべぇな...」ビュンッ!

皆藤「ゲームオーバー...ね」

 

ザバァァァァァァァァン!!!!!!!!

 

白鶯は、大木に打ちつけられ気を失った。

 

千巣「終わりましたね」

皆藤「少しやりすぎちゃったかしら...」

皆藤はしゃがんで白鶯の頬に手をやる。

そして、再び立ち上がり、千巣の方を見る。


皆藤「後は貴方ね」

千巣「久しぶりですね、理子さんとお手合わせするのわ」チャキッ

千巣は、刀を構える。

皆藤「いつでも来ていいわよ」

千巣「では...!」


すると、上から何者かが現れる!


京金「どけぇぇぇぇ!!!」


千巣「?!?!?!」

皆藤「!!!」

京金は、2人の上空からハンマーを振り下ろす!!

 

ドッカーーーーーーーン!!

 

地面にはクレーターが出来た。


京金「見つけたわ。理子さん」

皆藤「ルカ」

千巣「2体1。これならやれそうだな」

皆藤「ピンチね」

千巣は京金に話しかける。

千巣「てか今味方の俺まで攻撃しましたよね?見てましたよ?」

京金「アンタは引っ込んでなさい」

千巣「?!?!?!」


京金「理子さんは、私1人で倒す...!」


千巣「おいおい、せっかく2人いるんだし」

京金「いいの!私にはこのゲームより大事なものがあるのよ」

千巣「何だそれ」

京金「プライドよ」

千巣「...」

皆藤「...」


千巣「なるほどな...わかったよ。状況把握だけさせてくれ」

京金「粟生屋をやりそこねた。どっかにまだいるわ」

千巣「わかった。白鶯と東海林はノックアウトした。俺は粟生屋を探す」

京金「...頼んだわ」

千巣「ま、武運を祈るよ」

 


ヒュン!

 


千巣は、森の中へ消えていった。


皆藤と京金は静寂の中で2人きりとなる。


皆藤「...」

京金「理子さん。あなたはずっと私の目標だった。憧れだった。でも今日、私は理子さんを超える...!」

皆藤「...」

京金「いきますよ。油断してたら負けますからね...!」

皆藤「...(さっきの大技の連発でマヂカラが戻らない...ひとまずは剣で凌ぐしかないわね)」チャキッ


京金「う゛ぉぉぉぉぉ!!!」

皆藤「...!!(すごい気迫!)」


〜〜〜〜

 

《東海林サイド》


東海林「......!」

東海林は、目が覚めた。

東海林「...(ここは?私は...?どうなったの?)」

東海林は傷だらけの体を起こして当たりを見回す。

東海林「...(ひとまず...白鶯君と合流しないと...)」

 

東海林は森の中を進む。

 

東海林「!!!!」

すると、東海林は木に寄りかかって気絶する白鶯を見つけた!


東海林「白鶯君...!?白鶯君!!!」

 

────


第411話 「キモチ」

 

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《皆藤・京金サイド》


京金は槍を持って皆藤に迫る!!


ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!


皆藤「...(大業魔具、魔槍グングニル...ここまで簡単に使いこなせるなんて...!)」

京金「避けるだけじゃ勝てませんよ...!」

皆藤「...!!」

皆藤は、後ろに大きくバク転する!

京金「なら...!」カチャ!

皆藤「!!」

京金はロケット砲を魔法陣から取り出す!

京金「いきます...!」


ドォン!! ドォン!!


京金は、ロケット砲を数発発射した!

皆藤「...!!(このロケット砲は...追尾レーザー付き...!)」

皆藤は、木々の間をすり抜けて回避する!

京金「人間のマヂカラの匂いを嗅ぎ付けて...何かにぶつかるまで逃がさない...!」

ドォン!! ドォン!!

皆藤「...!!」

皆藤は、木々の中を目まぐるしく逃げ回る!

京金「ふっ...走!!」

ピュン!!

皆藤「!!!」

京金は、逃げ回る皆藤に先回りし、目の前に現れた!!

京金「やっぱこれが一番」

京金は、鎌を取りだした!

 

京金「”焦土”!!!!!!」

 

 

ドガァーーーーーーーン!!!

 


皆藤は、吹き飛ばされ、受身を取る...!


皆藤「ハァ...ハァ...」

京金は、再び皆藤に迫る!!

京金「もう1発!!!」

 


ドガァーーーーーーーン!!!!

 


皆藤は守護で守る!

皆藤「ハァ...(守護でギリギリ...次受けたらまずい...!)」

京金「ハァ...(もう1発打ち込めば...破れる...!)」


皆藤「...なら」

京金「次で決める...!!」


京金は鎌を強く握る...!

京金「くらえぇぇ!!!!!」

皆藤「...!!魔鳥獣戯画!!蛇!!!」


ニュルニュルニュル!!!


京金の足元から蛇が現れる!!!

京金「ちっ!!!」


ガシッ!! ガシッ!!


蛇は京金の脚に絡みつき、両手を開き、縛りつける!!

京金「...!(身動き出来ない...!!)」

京金の手から鎌が落ちた。


皆藤「ハァ...(絞り出した一撃...長くは続かない...早く勝負を決めないと...!)」チャキッ!

京金「...!」

皆藤「いけ!」

ビリビリビリビリ!!!

蛇を伝って電流が流れる!!

京金「うわぁぁぁぁ!!」

シュルルルルッ...

京金は縛られたまま項垂れた。

皆藤「(まだ気を失ってない...)しぶといわね」

京金「ははっ。黙ってやられると思います?」


すると、京金の前面に魔法陣が現れ、爆弾が数個、皆藤に飛んで行った!!


皆藤「...!(こんな芸当まで!!)」

京金「滅!!」


ドッカーーーーーーーン!!!!


皆藤は後ずさりする!


京金「ハァ...ハァ...(この蛇、何とかしないと...)」

 

────

 

《白鶯・東海林サイド》


東海林は、白鶯の傷を癒す。


東海林「白鶯君...良くなりますように...」


ホワホワホワホワホワ...


やがて、白鶯は目を開ける。


東海林「あ...白鶯君...大丈夫?」

白鶯「...」

東海林「傷がすごい...頑張ってくれたんだね。ありがとう」ニコッ

東海林は、ボロボロになりながらも、一生懸命笑顔を作った。

白鶯「...」

東海林「...(そろそろ私もマヂカラが切れる...でも...私が残るより...白鶯君に全部あげた方が...)」

白鶯「...」

東海林「私ね...やっぱり皆には敵わないや...白鶯君は凄いよ...だから、私の残りの力、全部あげるね」

白鶯「...」

東海林「困った時は助け合い、私達、仲間だから...!」ニコッ

白鶯「...」


ホワホワホワホワホワ...


そこへ、粟生屋がやってくる。


粟生屋「あ、見つけちゃった。白鶯君」

白鶯「...」ギロッ

東海林「!!!(やばい!あおやんだ!!)」

 

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第412話 「不快だ」

 

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《東海林サイド》


東海林「あおやん!」

粟生屋「2人揃ってイチャイチャしてんじゃないよ。まったくもう」

東海林「ちっっ違うよっっ!!///」

粟生屋「ははっ。冗談冗談」

東海林「もう!」

粟生屋「東海林。そこをどいてくれないかな」

東海林「どうして」

粟生屋「僕はその男に用があるんだよ」

白鶯「...」

東海林「...(もうすぐ、白鶯君がフルパワーに戻る...!それまで時間を稼がないと)」

粟生屋「話、聞こえた?」

東海林「じゃあ、私を倒してからにしなよ」

粟生屋「ん?」

東海林「私を...倒して...から」クラクラ...

粟生屋「(東海林、まさか己のマヂカラを全て白鶯に...?)」

東海林「...(やばい...意識が...)」

東海林の足元はふらついている。


粟生屋「なるほどね。どっちみち面倒だ...!(早く東海林を止めないと白鶯が...!)作戦変更だ。2人ともリタイアしてもらうよ...!」


粟生屋は人差し指にマヂカラを貯める!


ゾゾゾゾゾゾゾ...!!!!


東海林「!!!!(まずい!!)」

白鶯「...」ギロッ


粟生屋「”虚重弾”」

東海林「!!!」

白鶯「...」ニヤッ


粟生屋「おさらばだ...!!!!!」

 

ドガァァァァァァァァァンンン!!!!!!!

 

粟生屋の攻撃は、辺り一面を巻き込み炸裂する!!!!!


粟生屋「...どうだ?」

 

 


数秒後、粟生屋の目に映った、衝撃的な光景。

 


粟生屋「!!!!!!」

 

なんと、白鶯は東海林の顔面を掴み、東海林を盾に攻撃を防いだのだった!!!!

 

粟生屋「!!!!!貴様...!!!!!」

東海林「.........」ボロッ

白鶯「...」ニヤッ


白鶯は東海林を掴む手を離した。


バタッ...


東海林は白鶯の足元に倒れる。

東海林「白鶯...君...?」ポロッ...

白鶯「ご苦労だった」

粟生屋「...(白鶯はもうフルパワーになってる...!)」

東海林「私達...なかま...だよ...ね?」

白鶯「仲間?」

東海林「...?」


白鶯「俺は、お前の名前を知らない」


東海林「...!!!」

粟生屋「!!!」

白鶯「もうお前に用はない。邪魔だ」


バ     コ     ッ     !


白鶯は、東海林を蹴り飛ばした!

 

粟生屋「東海林!!!!」

東海林「.........」ボロッ...


白鶯「俺に用があると言ったな...粟生屋昴」

粟生屋「...僕の名前は分かるんだ」ゴゴゴゴ...

白鶯「用とは何だ、言ってみろ」

粟生屋「そんなこともういい...今はただ、不快だ」

白鶯「...?」


粟生屋「極めて不快だよ。お前」

白鶯「何だ?」


粟生屋は一呼吸おいて、話を続ける。

粟生屋「僕も仲間とか、友情とか、別に興味はないんだ...でも僕は君みたいに、自分を慕ってくれる人間を無下にはしない」

粟生屋は鋭い眼光で白鶯を睨みつける。

東海林「.........」シクシク...

白鶯「...」

 

粟生屋「これ以上他人の、”人としての尊厳”を踏みにじるな」

 

白鶯「...?」

 

粟生屋「用か...もう怒りで忘れたよ...でも強いて言うなら...」

白鶯「...」


粟生屋「消えろ。以上だ」

白鶯「ははっ。ならばやってみるがいい。相手になってやる...!」


粟生屋「...(悪い、リーダー。今なら本気でこいつを殺しかねない...!!)」ゴゴゴゴ!!!

 

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第413話 「破片」

 

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《千巣サイド》


千巣「ハァ...(マヂカラが切れてきてる...上手く探知できねぇ...粟生屋どこだ...?)」


すると、千巣は倒れた東海林を見つける。


千巣「ん?東海林?」

東海林は意気消沈した様子で、先刻よりも大きな傷を作り、座っていた。

千巣「東海林...?どうした?」

東海林「...せんちゃん...」

東海林の光のない目からは、血なのか涙なのか分からない何かが零れ落ちていた。

千巣「おいどうした...また戦ったのか...?」

東海林「私...もうダメかも...」

千巣「...?」

東海林「...自分の存在意義が...分からない...」

千巣「...?」

 

────

 

《皆藤・京金サイド》


京金「...」ギシギシッ!

京金は、皆藤の蛇を解けずにいた。

皆藤「ハァ...往生際が悪いのね」

京金「そりゃ...こんな'舐'め'プで負けたら、話になりませんから」

皆藤「そんな事ないわ。私だって全力よ」

京金「...なら、そんな手加減してないで、早くトドメをさしたらどうです?」

皆藤「......」

京金「そういう優しさ、私は求めてません」

皆藤「...!」


皆藤は、筆を走らせた。


京金「...!」


皆藤「あなたは凄い戦士よ。だからこの技を持って、あなたを沈めるわ...!」ゾゾゾゾゾゾ...!!!


京金「!!!」


皆藤「曼荼羅魔神図...”雷神”!!!!」


皆藤の背後に大きな雷神が浮かぶ!!

京金「...!!!(これは...!!)」

皆藤「いくわよ。はぁぁぁぁ!!!!」

京金「!!!!!」


ポロッ

 

京金は、最後の力を振り絞り青玉を地面に落下させた!

 

ゴロゴロゴロピッカーーーーーーーン!!!!!!!

ドッカーーーーーーーン!!!!!

 

────

 

《千巣サイド》

千巣「ん?なんかやべえ音しなかったか?」

東海林「...」

千巣は木に登り、遠くの空を見る。

千巣「...?(青い煙...?京金か!)」

千巣は、下に降り、東海林に声をかける。

 


千巣「大丈夫か...?」

東海林「行っていいよ...ルカルカが心配なんでしょ...?」

千巣「...」

東海林「私は...大丈夫...もう...ギブアップするから」

千巣「...悪い、お疲れ様」

東海林「......」ポロッ


千巣は、羽織ったジャージを東海林にかけ、木を渡り、煙の元へ急ぐ!

 

────

 

《粟生屋・白鶯サイド》


粟生屋「ハァ...ハァ...」


ドン!!!


粟生屋は、地面に這いつくばり、血を流していた。白鶯は、涼しい顔で粟生屋を見下ろす。


白鶯「無様だな。助けてやろうか?」

粟生屋「貴様...こんな力を...何をした...!」

白鶯「ただの実力の差さ。己の惨敗の理由を関係の無い所に見つけ出そうとするな。かえって惨めだぞ」

粟生屋「...くっ」

白鶯「俺の目的はもはやお前ではない。あの女だ。俺が最強であると証明せねばならない」

粟生屋「...!」


ビュンッ!!!


白鶯は、森の中へ消えた!


粟生屋「......」

 

────


第414話 「愛剣」

 

────


《千巣サイド》


千巣「京金!!!」


千巣が青い煙の元へ駆けつけると、京金は、満身創痍の状態で倒れていた。


京金「...あぁ...アンタか...」

千巣「...!(意識はある...)」

千巣は座り込み、京金の傷を止血する。


皆藤「...」

皆藤はその様子を見ていた。千巣は、京金をお姫様抱っこして木陰へ運ぶ。

京金「やめなさいよ...恥ずかしい...」

千巣「...はいはい」


そして、千巣は立ち上がり、振り返る。


千巣「なかなか派手にやってくれましたね」

皆藤「真剣勝負を申し込んできたのはルカの方よ」

千巣「なるほど」

皆藤「...」


千巣「でも俺は、こうはいきませんよ」

京金「...」

京金は遠くから2人を見る。

皆藤「本気で来なさい」


千巣「千紫万紅流居合...狩義亞(かるぎあ)...!」


スゥゥゥゥゥ...


構えに入った千巣の周りにそよ風が流れる。


皆藤「...(初めて見る技...)」

京金「...(凄い...集中力...)」

千巣「......」


そして、十数秒が過ぎる。


皆藤「...(何もして来ない...なら...切り込む...!)」

ピクッ


千巣「!!!!!!」カッッ!!!!!

皆藤「!!!!!」

 

ズ     バ     ッ     !!!!!!

 

 

皆藤「!!」ブシャッ!!!!

京金「速い...!!」

千巣は、皆藤の微動の瞬間に、皆藤を斬った!!


千巣「...」チャキッ

皆藤「ハァ...なかなかやるわね」

千巣「...」

皆藤「本当の意味で開眼したのね。四十六眼の力が」

千巣「お見通しでしたか」

皆藤「あなたの類まれなる感覚の鋭さは四十六章 知覚の書の力によるもの。そして集中力を極限まで高めることによって、ここまでの速さの居合が可能になるってわけね」

千巣「流石ですね」

皆藤「魔法オタクなめないでよね」

千巣「...(こりゃ、あんま効いてないな...)」

京金「...(理子さん、私とあれだけやりあっておきながら...まだあんな余力が...)」


皆藤「こっちからいくわよ...!魔鳥獣戯画!蝶!」

皆藤は、大量の蝶を召喚した!

ヒラヒラヒラヒラヒラ...!

千巣「...!(なんだこれ...目眩しか...?)」

その隙に皆藤はサングラスを装着する。

皆藤「...(恐らく千巣君の眼は開眼した...目が合ったら終わる!)」スチャッ


皆藤は蝶の群れを掻っ切って千巣に突きを食らわす!!


シュッッッ!!!!!


千巣「...!!!」キィン!


キィン!カァン!シュッ!!キィン!!!


皆藤「君の夜叉(それ)と、私の天叢雲(あいけん)、よく斬れるのはどっちかしら...!」キリキリ

千巣「...!」ビュン!!!

千巣は、大きく剣を振り切る!

皆藤は、後ろに避ける!!


千巣「...さぁね(なにか別の視線を感じる...?気のせいか?)」

皆藤「さぁ、決着といきましょ」

 

 

SOREMA -それ、魔!- 50へ続く。