SOREMA外伝 The Parallel ④

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SOREMA外伝 The Parallel 4

 


《謎の場所》

 


モーニング「あらあら。2人もエージェントが役目を終えてしまいましたね」

ライト「…」

ジャスティス「しかも彼らは、世界同士の接近を更に近づけてる」

ライト「このままだと、世界が正面衝突して、どちらの世界も無事ではいられない…」

モーニング「パラドックスキーも1つ取られちゃったしね…あーあ。安心安全に世界を渡り歩ける僕達だけの特権なのにー」

 


ライト「これ以上世界が危機に向かうようなら…最終手段を取らないといけなくなるかもしれない」

ジャスティス「何それ」

ライト「監視対象の”消去”だ」

ジャスティス「…成程」

 


ライト「天堂幸二、虎走葉月という人間はどの世界にも”いなかったことにする”。世界の為に個人を犠牲にするのはあまり好ましくないやり方だがやむを得ん。それが私たち、世界の秩序を守るパラドックスエージェントの仕事だ」

 


フラワー「…それでいいのかな」

 


ライト「?」

 


フラワー「なんていうか…2人がちょっと、可哀想だよ」

ライト「…仕方の無いことだ」

ジャスティス「…」

 


モーニング「いっその事、パラドックスキーで2人を送り届けてあげたらどうです?」

ライト「それはエージェント規律に反する。如何なる理由があろうとも、個人の未来に肩入れしない。我々の鉄の掟だろう」

モーニング「全く、お堅いねぇ、ライトは」

ライト「…」

ジャスティス「…」

 


???「でも少し大変なことになりそうよ?」

 


フラワー「…!」

ジャスティス「?」

モーニング「おぉ!久しぶり!」

ライト「遅かったな、”スカイ”」

 


────

 


《謎の孤島》

 


俺たち3人は今、謎の孤島へやって来ていた。

 


時を戻すこと、今朝。

 


────

 


幸二「榊…なんでそれを…?」

榊「あぁ、昨日の夜、青髪の青年が接触してきたんだ。確か名前は…」

幸二・虎走「ジャ?!」

榊「あぁ、そうそう。そして彼がこれを」

幸二「なんでその”カギ”をジャスティンさんが持ってるんだぁ?!」

 


そう、榊は昨晩、ジャからキーを受け取っていたのだった。榊はキーを俺に預けた。

 


葉月「2つある…これ、どっちかが本物でどっちかが偽物ってこと?」

幸二「いや、よく考えろ。6っていうキーワード。これって6つあるキーを集めろってことじゃないのか?」

葉月「…!成程!」

幸二「ジャスティンさんもエコーと同じパラドックスエージェントで、パラドックスエージェントは6人。そしてそれぞれキーを持ってる…みたいな感じか?」

榊「そういうことか」

幸二「でもなんでジャスティンさんがパラドックスエージェントなんだ?こっちの世界のジャスティンさんなのか?それとも…?あぁ!!もうわからん!こんがらがってきた」

 


パチパチパチパチ…

 


そこにモーニングが手を叩いて現れる。

 


モーニング「ご名答。君達の導き出した答えはだいたい正解だ」

幸二「お前は…!」

葉月「…!」

榊「何の用だ」

 


モーニング「僕のヒントからよくここまで辿り着いた。褒めてあげよう」

幸二「そんなことを言うためにここに来たのか?」

葉月「あんたもパラドックスエージェントなの?」

モーニング「さぁ、どうだか」

榊「…!」

 


モーニング「一つだけ忠告してあげよう。君達、急いだ方がいい」

 


幸二「?」

葉月「は?」

榊「…!」

 


モーニング「君達が”存在し続けたい”なら、早く世界を手繰り寄せるんだ。敵は案外、近くにいるものかもしれないよ」

 


幸二「何を言ってやがる」

葉月「分かるように説明しなさい」

 


モーニング「じゃあ、僕はこれで」

 


するとモーニングの周りに突風の渦が現れる!!!

 


幸二「ちっ…!またこれか!!!」

 


風が止むと、モーニングは消えていた。

 


葉月「はぁ…急げって…どういうこと?」

幸二「分からない。分からないが、俺たちにあまり時間は残されていないのかもしれない」

榊「あぁ。青髪の青年も同じことを言っていた」

幸二「!」

榊「そしてここに行くようにと、地図を」

幸二「…!」

葉月「この場所って…!!」

 


────

 


そして俺達は孤島へと到着した。

 


この孤島、俺たちの世界では…

 


ロスト・フロンティアと呼ぶ。

 


────

 


《謎の場所》

 


ライトは険しい顔で1人、2つの地球を眺めている。

 


ライト「パラドックスキーが世界同士を呼び寄せている…」

 


 


ライト「そして…”スカイ”が言っていたあの事…本当ならば我々は何もせずとも監視対象を”消去”できてしまうということになる…」

 


────

 


《とある病院》

 


ピッ    ピッ    ピッ …

 


心電図モニターの音が響く。

 


ジャスティンは、目を覚まさない幸二を神妙な面持ちで見つめる。

 


ジャ「…」

 


────

 


幸二「おいおい、ここロスト・フロンティアだった島だよな?」

葉月「なんか雰囲気違うね。これはこれで気味悪い」

 


ロスト・フロンティアは、かつての要塞のような島からうってかわり、お城のようになっていた。

 


榊「ここであってるんだよな」

幸二「地図が指し示してる場所は間違いなくここだ。それにアンタ、この場所に来た記憶はないか?」

榊「ない!」

 


お前あんなにここで好き勝手やってたのに!別人なんだろうけど!

 


榊「ここに私達が会うべき人間がいるということだが」

幸二「そうだな」

 


???「ここは立ち入り禁止よ」

 


どこからか、突き刺すような女性の声がする。

 


???「立ち去りなさい!部外者!」

 


ザザッ。

 


幸二「…!あなたは!」

 


そこに現れたのは…

 


安西「あなた達何者?ここは研究機関500(ファイブダブルオー)が所有する特別施設よ。あなた達のような部外者は立ち入り禁止よ」

幸二「安西…さん?!」

 


安西亜珠。魔裁組第2支部研究班の班長助手である。性格は優しく温厚、世話焼きと言ったところだが…

 


安西「分かったらとっとと帰りなさい!!」

 


どうやら性格は真逆らしい。さすがパラレルワールド

 


幸二「安西さん!聞いて欲しい話があるんです!」

安西「なんですって?どうしてあなた、私の名前を?」

葉月「私達のこと覚えてませんか?お願いします!こいつの話を聞いてあげてください!少しだけでもいいので!」

榊「ついでに私の事は覚えていないか?!」

幸二「やめとけ覚えてたら殺されるぞ」

 


安西「…どちらにせよ、ここで引き返さないなら、土足で入ったペナルティとしてここで捕えるわ」

 


安西さんが手を鳴らすと、スーツの男達が俺達を取り囲んだ!

 


幸二「…ちっ」

葉月「話を聞きいれてはくれなそう」

 


幸二「五百旗頭渚!この名前に聞き覚えは無いですか!!」

安西「は?五百旗頭渚?」

幸二「はい!(頼む…思い出してくれ…!)」

 


安西「なんであなたが五百旗頭の名前を知ってるの?」

幸二「え?」

葉月「記憶が…ある?」

 


幸二「覚えているんですね!五百旗頭さんのこと!」

安西「覚えてるって何よ?だってこの施設の主は…」

 


安西さんが続けようとすると、ガラガラとキャリーバッグの音を立てて、サングラスを着けた薄着ナイスバディの少女が現れる。

 


???「エクスキューズミ〜ちょっとどいて〜」

 


スーツの男達はしどろもどろになりながら道を開ける。

安西「?次から次へと、あなた何者?」

 


少女はサングラスを外す。

 


美波「呼ばれたから来たんだけど。私、南野美波。ナイストゥーミーチュー」

 


み、南野?!

あの南野美波なのか?今俺の目の前にいるのはいかにもザ・帰国子女と言わんばかりの服装や雰囲気のイケイケ風バイリンガールなのだが?

 


美波「あなた達のボスに呼ばれて来たの。研究の手伝いが必要なんでしょ?」

安西「…そう、なの?(なんでそういう重要な事を私に言わないの!”あの人”は?!)」

 


南野美波。魔裁組第2支部実働班のメンバー。紫のエレメントの使用者であり、回復魔法の使用者でもある。普段は大人しく、あまり口数が多い方ではないが、底力は凄い。

 


葉月「み、みなみちゃん?」

美波「そうよ。What's going on?」

葉月「うぅ…キャラが違いすぎて胃もたれしそう…」

幸二「よ、よく分からないが南野、そして安西さん!魔法について話したいことがあるんだ!」

美波「Magic?Are you a magician?a wizard?lol

幸二「はは。ついていけねぇ」

 


安西「とにかく、あの人の許可が降りるまではここに…」

 


???「いーよー」

 


安西「!!」

美波「?」

幸二「!!」

葉月「!!」

榊「?」

 


そこに、聞き慣れた声がする。

 


声の主は、城の上の方の窓から身を乗り出して、俺達を見ていた。その声の主こそ…!

 


五百旗頭「みんな入っちゃいなよ〜!」

 


幸二・葉月「五百旗頭渚!!!!」

 


五百旗頭渚。魔裁組第2支部研究班の班長であり、魔法界人間国宝の1人。エレメントシステムの先駆者であり、各色のエレメントの技術を確立した功労者。性格はぼーっとしていて、どこか抜け感があるが切れ者である。

 


五百旗頭「かもんかもん!」

 


安西「はぁ…全くあの人ったら」

美波「んじゃ、お邪魔するわね〜。サンクスフォーユアヘルプ」

 


南野はキャリーバッグを引いて城の中へ入っていく。

 


美波「あ、これ持ってて」

スーツ男A「あ、は、はい…」

 


美波「うわ〜So beautiful…!」

 


幸二「…俺達も行こか」

葉月「そうだね」

榊「…」

 


俺達も、城の中へと続く。

 


────

 


そして、この様子を草陰から監視していた人間がいた…

 


フラワー「…」

 


────

 


五百旗頭「ようこそ!我が五百旗頭キャッスル!そして、秘密組織ファイブダブルオーへ!」

 


五百旗頭さんの全く秘密感のないヘラヘラした挨拶と共に、安西さんが紅茶を持ってくる。キャラこそ違えど関係性は案外似たようなものなのか。

 


五百旗頭「で、まずは美波ちゃんだ。初めまして、日本の天才、五百旗頭渚ちゃんでぇーす!」

美波「この人が新しいボス?oh my gosh…かなり飛んでるわね」

安西「まぁ、そこは同意だわ」

 


美波「私は南野美波。あなた達の研究の為にはるばるロスから来たの。よろしく」

安西「えぇ、よろしく」

五百旗頭「ま、お堅い話は後で後で!美波ちゃんはどんな男が好きなの〜?」

 


位置変えゴリラ見てぇなこと聞くな。この人。

 


美波「そうねぇ。日本の男はヒョロい男が多いから、ビッグで逞しい男が好きね」

 


向こうと全然ちげぇぇぇ!

 


榊「この子も、君達の仲間なのか」コソコソ

葉月「そうだけど、キャラ違いすぎて草って感じ」コソコソ

 


その様子をフラワーは盗み見る。

 


フラワー「…」

 


五百旗頭「で、君達は?招いた覚えはないけど?」

 


幸二「あ、はい、僕達は御三方に聞きたいことがあって」

五百旗頭「御三方?私と?」

幸二「安西さんと、南野、君だ」

安西「…?」

美波「ミー?」

 


幸二「えーっと、まずこいつの顔に見覚えないですか?」

榊を前に出す。

 


榊「え、私?」

 


五百旗頭「うーん、ない」

 


ダメか。

 


五百旗頭「あなた男前ね。私と働く?」

 


引き抜くな!

 


榊「うーん、貴方の様な聡明な方と働けるのも悪くないが…待っている人がいるのでね」

 


乗り気になるな!

 


五百旗頭「なんだ妻子持ちか…はいはい」

榊「あ、いや、待ってるってそういう意味では…」

五百旗頭「え、じゃあどういう意味?」

榊「私の、恋人は、この国さ!」

 


言いたかっただけだろ。

 


美波「なにそれ」

安西「構うだけ無駄よ」

 


榊「僕は別の世界で、人々をゼクシーザの驚異から守る、光の戦士なのだよ!」

五百旗頭「別の世界…ゼクシーザ…?」

 


ギィィィン…!

 


五百旗頭「…うぅ…!!」

幸二「…!(来るか…!)」

 


フラワー「…!」

 


安西「五百旗頭!…うぅ…って私も…!!」

葉月「2人とも…!」

美波「ちょっと、あなた達、どうしたの?」

 


一方榊は、自分の世界に入り込み演説?を続ける。

 


榊「私はか弱い人々の為に、ゼクシーザという悪を滅ぼす!それが正義なのだ!これ以上、犠牲を出さぬ為にも、私は元の世界に帰らねばならないのだ!」

 


お前がここでそういうこと言うとめっちゃパンチあるな。

 


美波「でも、その話少し興味あるわ。”私達の研究”ともシナジーがありそうだし」

五百旗頭「その…話…詳しく…聞かせてもらえるかしら…」

幸二「…?」

葉月「どういうことですか?」

安西「私たちは…パラレルワールドの可能性について研究しているのよ…!」

 


幸二「…!」

葉月「…!」

榊「なんと!」

 


────

 


少し落ち着いて、俺達は今日までのことを話した。

 


五百旗頭「んなるほどねぇ。君達の世界は魔法ってものがあって、私はそこでも天才扱いされてるってわけねぇ!さすが私だわ〜!!」

安西「自惚れるのは後。これは研究にとって大きな進歩となるデータよ!それで、どうやってこの世界へ来たか、覚えてる?」

幸二「確か…雷」

葉月「あ!そうそう!雷!私その時支部…あ、いや、東京タワーにいて!」

幸二「俺もだ。スカイツリーに居た時に、落雷が…」

榊「私も戦闘中に…」

美波「なるほどねぇ」

 


安西「まず私達の結論では、パラレルワールドは存在するということになっている。あなた達の存在も、その証明に繋がると思うわ」

幸二「はい」

安西「世界はそれぞれ独立して動いているけれど、約100年に一度、大世界…つまり、世界の集合体の調和を保つ為に、世界同士が接近するの」

幸二「世界の接近?」

安西「それが何のために行われるかは分からないけど、そのようなものがあるって事だけは本当よ」

榊「成程」

 


美波「そしてその世界同士がapproach(接近)する時、小さなfriction(摩擦)が生まれる。そうよね?」

安西「そう。静電気みたいなものね。それがあなた達が浴びた落雷の正体よ」

五百旗頭「そゆこと〜」

 


葉月「はぁ。難しくてよくわかんない。コージ君聞いといて、ちょっとトイレ」

幸二「お、おい!」

榊「まぁいい。私達が聞こう。続けてくれ」

 


葉月は席を外した。

 


安西「その落雷に巻き込まれた人間がどうなるのか、今まで分かっていなかった。でも今回の事から考えると恐らく」

五百旗頭「落雷に巻き込まれた人間は、並行世界に飛ばされる」

安西「…でも、同じ世界に同じ人間は2人と存在出来ないはず」

美波「だからもう1人の彼らはautomatic(自動的)に彼らが元いた世界に送られる、ってことじゃない?」

幸二「…(確かモーニングとか言う奴もそんなことを言っていたような…)」

 


美波「まぁでも残念だけど、あなた達が元の世界に戻ることはimpossible。不可能よ」

安西「100年後また落雷に打たれて、運良く戻れれば御の字、と言ったところでしょうね」

 


幸二「いえ、それがそうでもなさそうなんですよ」

安西「なんですって?」

五百旗頭「ん?なに?」

 


幸二「パラドックスエージェント…って知ってますか?」

安西「パラドックス?」

美波「agent?」

 


幸二「はい。俺達が最初にこの世界に来た時、モーニングと名乗る謎の人間が接触を図って来ました。奴は人智を超えた俺達の世界で言う魔法のような力を使っていました。そしてそいつが俺達に元の世界で関係のあった人物と接触するよう、間接的に促したんです」

安西「ほう」

 


幸二「そして俺達は、かつての仲間を探し、俺達の世界の記憶を引き出すよう語りかけた。すると彼らは揃って、頭を抑え、キーワードのようなものを頭に浮かべた。まるで他の誰かから、俺達に伝えるよう言われた、とでもいうように」

美波「へぇ」

安西「興味深い…」

 


幸二「先程の五百旗頭さんや安西の反応も同じようだった。だから、もっと俺達の世界の記憶を呼び起こせば、キーワードが導き出せるはず…!」

美波「I see...」

安西「でもそんなこと初めて…」

 


五百旗頭「ふっふっふっ」

 


安西「…?五百旗頭?」

幸二「…?」

 


五百旗頭「はっはっは!本当にいたのね!パラドックスエージェントは!!!」

 


美波「ちょ、大丈夫?頭」

榊「…!」

幸二「ど、どういうことですか?」

 


五百旗頭「私の仮定と一致したのよ。絶対に居ると思ってた、世界同士を監視し、私達のそれとは一線を画す、超越した存在が。大世界の秩序を守る存在がね!嬉しいわ〜!」

安西「そ、そうなの?五百旗頭?」

 


五百旗頭「そうよぉ。私の仮定では、そのパラドックスエージェント…私は監視者と呼んでいたわ。監視者は、複数存在し、別世界から紛れた人間を監視する。そして、大世界全ての人間を超越した力で管理する。それが貴方の言うパラドックスエージェント、なのね」

幸二「分からないですけど恐らくそうですね。今まで集めたキーワードはパラドックス、エージェント、カギ、持ってる、6、6つ、6人」

五百旗頭「てことはパラドックスエージェントは6人いて、カギは6つある!これで決まりね!」

幸二「そういうことです」

美波「Unbelievable!」

 


榊「そうだ、あれ、見せてやったらどうだ?」

幸二「あ、忘れてた」

五百旗頭「ん?」

 


────

 


葉月はトイレを済ませ、元いた部屋に戻ろうとする。

 


葉月「はぁ〜。難しすぎてわからんっつうの。てか、本当に元の世界に戻れるのかねぇ」

 


ため息をついていると、部屋の入口で”とある少女”の、幸二らを覗いている後ろ姿を目撃する。

 


フラワー「…」

 


彼女の手には、幸二が手にしているカギと同じもが握られていた。

 


葉月「…君は?」

 


フラワー「…!!」

 


フラワーは、慌てて振り向く!

 


葉月「あれ?花ちゃん?」

フラワー「…!!」

 


幸二らは、葉月の声に気が付き、全員振り返る。

 


フラワー「あ、いや、その…」

安西「また来客?あなた、いつから居たの?」

五百旗頭「まぁまぁ、いーじゃんいーじゃん?」

 


葉月「ねぇ…なんで、ここにいるの?」

幸二「ん?知り合いか?」

葉月「うん、この子、この世界の私の友達…なんだけど…」

幸二「そういえば、あの顔学校で…!」

 


葉月は不安そうな顔でフラワーを見る。

 


フラワー「……」

 


葉月「ねぇ、その手、何持ってるの?」

フラワー「……」

葉月「見せて?」

フラワー「……ごめんなさい!!!」

 


葉月「!!」

 


フラワー「私…パラドックスエージェントなんです!!!」

 


葉月「…え?」

安西「彼女が…」

五百旗頭「パラドックス、エージェント?!?!」

 


フラワー「騙しててごめんなさい。これ…」

フラワーは手に隠し持っていた3つ目のパラドックスキーを葉月に渡す。

葉月「これって…」

 


フラワー「ごめんなさい…!私、葉月ちゃんの監視役として、葉月ちゃんを騙してたの…!ごめんなさい!」

葉月「ちょ、花ちゃん?」

フラワー「私はフラワー。本当はこの世界の葉月ちゃんの友達なんかじゃない。私はパラドックスエージェントとして、監視対象の葉月ちゃんを監視してただけなの!」

葉月「…ごめん、難しくてよく分からない!」

 


フラワー「本当は…本当は…あなた達を元の世界に帰らせないために、あなた達と彼女(五百旗頭)達…”バイパス”の人達を接触させない事が目的で来たの。このパラドックスキーも、渡すつもりもなかった…」

葉月「…」

フラワー「あなた達特異点が元の世界に帰ろうとして、友達達に記憶を与え続けると、接近して離れていく筈の世界がまた接近して、ぶつかって壊れちゃうから、私達はあなた達を妨害して、世界の破壊を阻止しないといけないの…!」

 


成程、俺達がしていたことは図らずもこの世界の危機を呼んでいたということか。

 


フラワー「でも、あの日学校の屋上で…」

 


幸二「…!」

 


フラワー「彼の想いを聞いて、可哀想だなって思った…何とか元の世界に戻してあげたい…って」

幸二「…!聞いてたのか」

葉月「それでこの鍵を…?」

フラワー「この鍵は私達じゃないと使えない鍵。でも、6つ揃うと、元の世界に戻ることができるかも」

幸二「かも?」

フラワー「確実ではないけど、可能性はある」

榊「運が絡むということか」

フラワー「でもこのままあなた達が行動を続けていると、世界が壊れちゃう…はずだったんだけど」

 


葉月「はずだった?」

 


フラワー「急いで、あなた達には時間が残されてない!」

 


幸二「なぁ!その、時間が残されてないってのは、どういう意味なんだ?!」

フラワー「早くしないと…しん……」

 


バタッ

 


フラワーは気を失ってしまった。

 


五百旗頭「ちょ!あなたには聞きたいことが沢山あるわ!!安西!!手当!!」

安西「承知!ちょっと待ってて!おいそこの男達!担架持ってきて!」

美波「oh  my  gosh....」

 


────

 


結局、フラワーは俺たちが帰るまで目覚めなかった。

 


五百旗頭「今日はありがとう!研究のことならいつでも呼んで!」

安西「気をつけて帰るのよ」

 


幸二「見送りまですみません、また世話になるかもしれません」

美波「ま、これからもウィンウィンで仲良くしましょ」

葉月「この世界に残ってればね」

榊「では行こうか」

 


五百旗頭「ばいば〜い!!」

 


────

 


俺達は船にのり、帰路に着く。

 


葉月「花ちゃん、なんか怪しいと思ってたんだよなぁ」

幸二「そういえば彼女、倒れたまんまで大丈夫だったのか?」

葉月「五百旗頭さん達に任せておけば大丈夫っしょ!」

幸二「薄情だな!」

 


────

 


その頃、五百旗頭キャッスルでは。

 


花「は!目覚めた!」

安西「!!ちょっと五百旗頭ー!!パラドックスエージェントが目を覚ました!」

五百旗頭「今行く!!!」

花「えーっと、ここどこ?!」

 


安西「ここは研究施設の中よ。パラドックスエージェントの貴女には沢山聞きたいことがあってね、協力してくれるかしら?」

美波「…」モグモグ

 


花「えー?!何言ってるかわからない!!!そんなことよりバイト行かなきゃ!!ばいばい!!!」

 


ピューーーーン!!

 


花は全速力で立ち去っていった。

 


安西「は〜?!」

 


そこへ五百旗頭が現れる!

 


五百旗頭「おっはよう!パラドックスエージェントぉ!!!」

 


 


五百旗頭「あれ?パラは?」

安西「よく分からない。どっかに消えたよ。てか何よその呼び方」

五百旗頭「ぐぬぬ…!!!私の研究がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 


美波「to be continued…ってわけね」

 


────

 


幸二「これで残す所鍵は3つだな」

榊「だがパラドックスエージェントを見つけられない限り、鍵は見つからないぞ」

幸二「…そうだな」

葉月「やっぱり、魔裁組の人達を探し続けるしかないのかな」

幸二「どうだろう。五百旗頭さん達の元にキーワードは降ってこなかった。もうキーワードは出尽くしたのでは無いかな…」

葉月「そ、そんな…」

幸二「でも一つだけ、気になることがある」

葉月「?」

 


幸二「あのモーニングとやらが残した言葉”敵は案外近くに…”って言葉、少し心当たりがある」

榊「どういうことだ、まさか、私?!」

幸二「おい!話をややこしくするな!」

葉月「え、私?!」

幸二「そうじゃねぇよ!もう呼び出してある」

葉月「え?」

 


スタスタスタ…

 


一人の男が現れる

 


幸二「来てくれたんだな、俺の親友…いや」

 


榊「?」

葉月「?」

 


幸二「パラドックスエージェント、さん」

 


ライト「…」

 


葉月「あれ…この人って確か…」

榊「友達か?」

 


幸二「あぁ。山田光、だよな」

 


ライト「いや、僕の名前はライト。君の言う通り、パラドックスエージェントだ」

 


────

 


《とある病院》

 


職員「お客様、面会希望でしょうか?」

???「はい」

職員「面会希望者のお名前は…」

???「天堂幸二、虎走葉月…それと──」

 


職員「…以上3名ですね、ありがとうございます。では来院者様のお名前をお願い致します」

 


朝「はい。三ツ木朝といいます」

 


────

 


ライト「…」

幸二「キーを渡して欲しい」

ライト「それは出来ない」

幸二「…」

 


ライト「君達には申し訳ないが、世界の為だ」

 


幸二「…」

葉月「何とか方法はないの?!」

 


ライト「パラドックスキーを我々以外の人間が使うことは許されていない。他に方法はない。以上だ」

葉月「ケチ!」

 


榊「我々は、ずっとこの世界で一生を過ごしていくというのか…?」

 


ライト「…」

 


幸二「お前の仲間は、俺達に時間が残されていない…と言った。それはどう言う意味だ?」

 


ライト「…」

 


葉月「私達が元の世界に戻れるようになるには制限時間があるってこと?」

 


ライト「…」

 


榊「まさか…世界の衝突による滅びが始まるということか?」

 


ライト「…」

 


幸二「それは無いだろう。だとしたら、黙ってお前たちエージェントが見ているはずがない」

 


ライト「…」

 


幸二「俺達は、どの世界にも存在出来なくなる…違うか?」

 


葉月「え!!」

榊「!!」

 


ライト「…!」

 


幸二「最悪だ、その反応、図星なのかよ。どうせあれだろ、別世界の人間は、その世界に適応出来ずに、時間が経過するとその場に居られなくなる…といったような話か」

 


ライト「いや全く違う」

 


幸二「違うんかい!!!!」

 


ライト「全てを話そう。君達にはそれを知る権利がある」

幸二「…!」

葉月「…!」

 


ライト「君達のした行動は、離れゆく世界を再び近づけた。故に、このままだと世界は衝突し、崩壊する、はずだった」

幸二「…」

葉月「…」

 


ライト「この世界の君達は、君達が元いた世界の君達と生まれ変わり、魔法使いとしての人生を歩もうとしていた。だが、この世界の君達には魔法への耐性がない。故に今、元いた世界では君達が魔法に冒されている」

 


幸二「…!」

葉月「…!」

幸二「成程、この世界の俺達にはマヂカラへの耐性がない…!だから…!」

葉月「魔導書のマヂカラが体を…!」

 


ライト「そしてこのままだと、魔法の世界の君達は死に至り、そして…」

 


幸二「俺達は、存在出来なくなる…」

 


ライト「そういう事だ」

 


葉月「でもおかしくない?こっちの世界では死んじゃった人も、向こうの世界では生きてたりする!そういう場合はどうなるの?」

 


ライト「それは世界の正史によるものである故、問題は起きない。

榊「正史?」

ライト「運命といった方がわかりやすいかな。だが今回は、本来死ぬ運命ではなかった人間が、世界を渡ったことで死ぬ。その場合連動する運命が書き換えられ、全てを無かったことにする。故に君達も、無かったことになってしまう」

葉月「…そんな」

幸二「…!」

 


ライト「そして榊天慈」

榊「…何だ!」

 


ライト「君は誰かに呼ばれてこの世界に来ている」

 


幸二「!」

葉月「え!サカキンが?」

 


榊「どういうことだ?」

 


ライト「本来、摩擦によって世界を渡った特異点のデータは全て我々パラドックスエージェントに共有され、それを元に我々は特異点を監視する。だが、君のデータだけはどこにも共有されていなかった。君もまた、特異点だというのに」

 


榊「…?」

 


ライト「君は意図的にこの世界に連れてこられている」

 


榊「…なんだと?!」

 


ライト「理由は分からない、だが何者かが君をここに呼び出し、何かを企んでいるということだ」

 


幸二「何者って…誰なんだよ、そりゃ!」

 


ライト「分からない。だがこんな事をできる存在は限られている」

 


榊「…」

幸二「…」

葉月「…」

 


ライト「榊天慈、君はずっとこの世界で、残りの人生を過ごすことになるだろう。君を連れてきた者を明らかにし、その歪みを戻すことが出来なければ」

 


榊「…!」

 


ライト「最後に、天堂幸二、虎走葉月。申し訳ないが、君達の命は短い。残りの余生を楽しんでくれ。もう無駄なことをする必要は無い。それを伝えに来た」

 


幸二「…!」

葉月「嫌だ…嫌だよ…」

榊「何て事だ…!」

 


ライト「では、失礼する」

 


幸二「俺は…」

 


ライト「…」

 


幸二「こんな所で…終われない!」

 


ライト「…!」

榊「!」

葉月「!」

 


幸二「俺はまだまだ、向こうに帰ってやらないといけないことが沢山ある!まだまだ俺は、やるべき事を果たせてないんだ!」

 


ライト「…」

 


幸二「もっと誇り高き魔法使いになって、平和な世界を作りたい!誰も魔法で泣かない世界を、俺は作るって、兄さんと約束したから!」

 


ライト「…」

 


幸二「それに、きっと待ってるんだよ。待っててくれてるんだよ!俺の仲間達が!皆!俺達の帰りを待ってる!だから俺は、最後の最後まで諦めない!」

 


葉月「コージ君…」

 


幸二「お前がどうしようと知ったことか!俺は力づくでもお前からキーを奪うぞ。体が消える直前まで俺は諦めない。きっと俺の仲間ならみんなそうしたはずだ。並大抵の覚悟で魔法使いやってねぇんだよ!俺達は…!!」

 


葉月「…わ、私も!同じ!最後まで、諦めない…!」

 


榊「君達…」

 


ライト「…」

 


幸二「だから、俺達は、」

 

 

 

チャリン…

 

 

 

すると、甲高い音を立てて、なにかがライトの手元から零れ落ち、地面を跳ねて俺の足元へと転がる。

 


ライト「…」

 


俺はそれを拾い上げる。

 


幸二「これって…」

 


それは、ライトが持っていたパラドックスキーだった。

 


葉月「カギだ…!あなた!」

ライト「…見なかったことにしてくれ」

 


ライトは、俺達に背を向けて歩いていく。

 


幸二「…助かった!」

 


ライト「…(なら足掻いてみるがいい。最後まで…うっ…頭…が…)」

 


ライトの姿は見えなくなった。

 


幸二「これでキーは4つ…」

葉月「あと2つ…これなら、本当に帰れるかも!!」

榊「…(俺を呼び出したのは、誰なんだ?)」

 


幸二「待っててくれ…皆!」

葉月「そういえばさ、もう実働班の人にはみんな会ったっけ?」

幸二「伊藤は会ってないな」

葉月「会いに行けないアイドルで有名ないろは坂46になってたしなぁ…」

幸二「あともう1人、消息すら掴めてない奴がいる」

葉月「あ…」

 


幸二「そう、油木一善」

 


────

 


《とある病院》

 


朝「天堂幸二。もう少し生きてみたいでしょう」

 


幸二は目を覚まさない。

 


朝「ふふふ。分かります。君の魂がそう叫んでいます。良いでしょう。君に少し時間をあげよう」

 


ドクンッ。

 


ギロッ!!!!

 


幸二は目を開けた。

 


体は動かないまま、真顔で呼吸のみを繰り返す。

 


朝「ふふふっ…!もう少し、もう少しなのです…!」

 


朝は部屋を移動する。

 


朝「あと2人…君達も生きていたいでしょう?虎走葉月…そして…」

 

 

 

303号室。そこで眠っている青年…その名は。

 

 

 

朝「油木一善…!!!」

SOREMA外伝 The Parallel ③

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《謎の場所》

 


ライト「集まったか?お前たち」

ドリーム「はい」

エコー「あぁ」

フラワー「…」

モーニング「ところでまた彼女が居ないようですが」

ライト「彼女は監視対象の元にいる」

エコー「ちっ。世話焼きすぎだろ、あの女」

 


ドリーム「で、今日は何のために号令を?」

ライト「あぁ。モーニング。お前のしでかした過ちで、監視対象の動向が危険な水域に達しつつあるぞ」

モーニング「えー僕ですか?」

エコー「てめぇ、とぼけてんじゃねぇぞ?俺たちはな、この世界全てを守る義務があるんだ。たった6人でだ!それをお前が余計なことをしたせいで…!」

 


ライト「まぁまぁ。怒っていても埒が明かない。こうしている間にも私の監視対象は着々と帰還準備を進めている。そうだな、フラワー」

フラワー「…はい」

ライト「これより我々は次の段階、直接介入に警戒ギアを上げる。平行世界を介して記憶を呼び起こす事象が起きれば起きるほど、世界の衝突は避けられなくなる。だから我々は何としてでも、監視対象と”バイパス”達の邂逅を阻止するのだ…!」

 


────

 


《ツチツチバーガー1号店》

 


幸二「もぐもぐ…ここのハンバーガーうめぇなぁ!」

葉月「最近できた新しいハンバーガーショップらしいわ」

榊「実に美しい」

 


するとそこに美少女の店員がやってくる。

 


???「おいしいですか?ありがとうございます!」

 


幸二「…!あ、あなたは!」

葉月「第2支部の…!」

榊「?」

 


幸二・葉月「莉茉さん!!!」

 


莉茉「え…?あ!名札ですね!はい!こんにちは!莉茉といいます!初めまして!」

 


越前莉茉。魔裁組第1支部実働班所属の魔法使いで、青のエレメントと桃のエレメントの二色使い。そして公式設定で美人であり、ミス魔裁という異名もある。

 


幸二「やはり初めましてか」

葉月「もう1人くらいこっちサイドの人いてもいいと思うんだけどなぁ」

莉茉「こっち…サイド?」

 


俺達がテーブルで話し込んでいると、裏で怪しい影が暗躍していた。

 


ドリーム「…(あれがライトとフラワーの監視対象…確か名前は…天堂幸二と虎走葉月!そして、あの店員が”バイパス”の、越前莉茉!早く彼らを離さないと…!)」

 


ドリームは莉茉と同じ服装に着替える。

 


???「あの、店員さん!」

 


ドリーム「(あ、私?)あ、はい!」

 


???「ハンバーガー1つ!インスタで映えさせたいから、ソース超超超超大盛りで!」

 


────

 


ドリーム「(ちっ、邪魔が入った…!てか、あの莉茉って子、いつまで話してるの?普通の飲食店ならクビよ?まぁいいわ、記憶は書き換えたから、私が干渉して…!)」

 


ドリームは俺達のテーブルに割って入ってくる。

 


ドリーム「あの、莉茉ちゃん?そろそろいいかしら?」

 


莉茉「あ、あ、えーっと…ピピピピ…ユメさん!すみません!」

ドリーム「うん。あとこれからここのテーブル、私が担当するから、あなたは向こうの水色の髪のお客さんの担当して!」

莉茉「あ、はい…!」

ドリーム「(これでこいつらを引き離せる…!)」

幸二「…(おいこの店員、余計なことするな!)」

葉月「…(まだキーワード聞き出せてないのに…!)」

榊「実に美味」

幸二・葉月「いつまで普通に食ってやがる!」

 


幸二「てか、さっきあの店員、水色の髪の客っつったか?」

葉月「あ、うん、言ってたけど…」

 


ホワホワホワ…

 


恐らく俺たちは同じ顔をイメージしただろう。

 


幸二「…まさか」

葉月「まさかね」

 


???「ねぇーちゃん!コーラ超超超超遅いんだけど!!!」

 


幸二・葉月「絶対あの人で草ァ!!!!」

 


ピュン!!!

 


俺達は美味しくバーガーを召しあがる榊を置き去りに、”水色の髪の客”の元へ向かった。

 


幸二「あなた、ジャスティンさんですよね?」

葉月「神野…なんだっけ…?」

ジャ「…超誰?」

 


”水色の髪の客”は、謎のゴーグルをつけて、ナゲットをムシャムシャと食いながら、きょとんとした。

 


幸二「…まぁいいや!あなた、お名前は?」

ジャ「…ジャ」mgmg

幸二「ジャ?」

葉月「ジャ…ス…?」

ジャ「ジャ」

幸二「ジャスティ…?」

ジャ「ジャ」

葉月「続きは?」

ジャ「ジャ」

 


幸二「ジャ?!?!お前の名前は、”ジャ”なのか?!」

ジャ「うん。僕は”ジャ”。よろしく」

 


幸二・葉月「”ジャ”だと〜?!??!!!!」

 


幸二「おいおい目を覚ませ!君の名前は、ジャ なんかじゃないはずだ!そうだよな!」

葉月「ジャスティンって長くて文字数の圧迫になっちゃうから、「」の前に”ジャ”しか付けられないから、その恨みと自虐でジャって名乗ってるだけよね?」

幸二「君の本当の名前は神野ジャスティン護だ!!!」

 


ジャ「…なんかよくわからないけど、とりあえず今の名前は”ジャ”だから。また名前変わったら教えるよ」

幸二「は?こいつぶっ飛んでんな」

葉月「あなた、魔法使える?」

ジャ「うん。使えるよ」

幸二「え」

葉月「マジっすか?!」

ジャ「エクスペクトパトローナム!」

幸二「それ他作品じゃボケ!」

葉月「何この人私達の世界以上にぶっ飛んでるわ」

幸二「こうなったらこの人にありとあらゆる情報をぶつけて、キーワードを吐かせるんだ!」

葉月「おう!」

 


────

 


ドリーム「失礼します、コーヒーでございま、」

 


榊「ありがとう。うん。いい香りだ」ボッチー

 


ドリーム「(なんでアイツらが居ないのよ!!!)」

榊「君、綺麗だね」

ドリーム「あ、ありがとう…じゃないわ!あいつr…あのぉ、お連れ様はどちらに」

榊「彼らは向こうのテーブルに移動したよ」

ドリーム「はぁ?!」

 


ドリームは俺達のテーブルを見たが、そんなことはお構い無しだ。とにかく俺達はジャにキーワードを吐かせることに必死だった。

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「スノウジェム!」

ジャ「Rin音?」

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「氷結のアリア!」

ジャ「お酒?」

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「硬金氷鬼!」

ジャ「平仮名じゃだめ?」

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「ジ・エターナル!」

ジャ「うわぁ厨二病だぁ」

 


葉月「はぁ…はぁ…全くだめね…」

幸二「はぁ…はぁ…まてまて、なんでお前が息切れしてるんだ?」

葉月「だって…こんなに羅列しても、何も思い出してくれないから…」

幸二「羅列してるのは俺なんだが?お前、ただの「白のエレメント!」botじゃねぇか」

葉月「とにかく、続けましょ」

幸二「いや、闇雲にやっても仕方ない…!他の方法でいくぞ!」

 


莉茉「あの…お紅茶お持ちしました…」

幸二・葉月「ちょっとすっこんでろ!!」

莉茉「は、はいぃぃぃ!!!」

 


ドリーム「(どうなってるの?この空間にバイパスは彼女1人のはず。現に、あのよく分からない男からは、何も感じない…とにかく、越前莉茉と彼らを監視しながら、このままやり過ごすしかなさそうね)」

 


幸二「五百旗頭渚!なぎちん!わかるだろ!」

ジャ「なぎちん?██████?」

幸二「コンプラ!!!」

 


葉月「はぁ…なんでこんなに思い出してくれないの…?」

 


”ジャ”は表情一つ変えずにポテトをムシャムシャしている。

 


幸二「もう分かった!おいジャ!右手を出してみろ!」

ジャ「右手?はい」

幸二「手を上に向けて、薬指と親指で輪っかを作れ」

ジャ「こう?」

幸二「あぁそうだ」

葉月「なるほど!エレメント顕現を再現するのね?」

幸二「そのままほかの指を丸めて、マ!って言いながらさっきの形に手を戻すんだ!」

ジャ「こう?」

幸二「そうだ!じゃあ声を出してやってみろ!」

ジャ「せーの!マ!!!」

 


シーン

 


ジャ「これで何が起きるんだい?」

 


何も起きなかった。何故だ…!何故この人は何も思い出さないのだ!!!

 


ジャ「残念だけど、僕は君達が探してる人では無いと思うよ」

幸二「いやアンタ、どっからどう見ても神野ジャスティン護だろ?!」

ジャ「いや、僕は今”ジャ”と名乗ってるんだよ。だからその神野君ではないんだ」

葉月「はぁ。なんだコイツ」

幸二「ぐぬぬぬぬぬ…!!!」

 


ダメだ、一旦退こう。

 


俺たちは元の席に戻る。

 


榊「おかえり」

幸二「ただいま。じゃねーよ!家みたいにくつろいでんじゃねぇ!」

榊「コーヒー美味いぞ。2人もどうだ」

 


ぐぬぬ…あの”ジャ”はとりあえず無視しよう。そうなったら莉茉さんを目覚めさせるしか…

 


ドリーム「(あいつら、あの水色に絡むのをやめた…次の狙いはおそらく…越前莉茉…!)」

 


すると、水色の男が、俺達のテーブルに紅茶を運んでくる。

 


ジャ「これ君たちのだよね?さっきあの子が運んできたけど、持っていき忘れてたから、はい」

葉月「あ、ども」

幸二「ぐぬぬぬ」

ジャ「じゃあね」

 


とりあえず紅茶を啜る。

 


幸二「ん?葉月、お前のティーカップ、なんかついてるぞ」

葉月「え?」

幸二「カップの底」

葉月「ん?何これ」

幸二「ん?プリクラか?」

榊「?」

葉月「あーーーー!!!!!!!」

 


幸二「ん?何だ」

 


葉月「これ…キスプリ!!!」

 


幸二「キスプリ!?!?」

榊「キスしながらのプリクラか?!」

幸二「見せろ!見せてみろ!!」

葉月「ちげえわこの下心ゴミ男共!!」

幸二「言い過ぎィ!」

 


葉月「これ、私が好きなアイドルKiss & Princeの王寺君と、この女の子は…」

幸二「ん?これ」

葉月「莉茉ちゃん?!」

 


そのプリントには、アイドルと映る莉茉さんの姿があった。プライベートと言うよりは、撮影会で撮った写真の様だが。

 


莉茉「は、はい!」

ドリーム「(まずい!)私が伺います!」

 


ドリームがやってくる。

 


葉月「ちょっと?莉茉ちゃん呼んできて?」ゴゴゴ…

榊「葉月くん。怒っているのかい?」

葉月「ううん?ちょっと」

 


ものっそい笑顔だがものっそい怖い!怖い!

 


ドリーム「私じゃダメでしょうか?」

葉月「ダメに決まってんだろうが!」

 


そこへ莉茉さんが現れる。

 


莉茉「何か…私…不手際を…?」

葉月「これは何かな?」

莉茉「はっ!それは!!」

葉月「これって、誰と誰?」

莉茉「それは…」

葉月「ん?言ってみて?♡」

莉茉「…」

葉月「ん?」

 


莉茉「駆け出しアイドル!!Kiss & Princeの王寺君と私です!!!」

 


葉月「は?!」

榊「駆け出しアイドル?」

 


おいおい。キスプリが駆け出しアイドルだと?メンバーの名前まではあまり知らんが、キスプリって名前は全国区だろ!渋谷とかこいつらの広告で溢れてるぞ?テレビでもみるし!どうなってる?

 


葉月「キスプリが駆け出しアイドル?!」

 


莉茉「へ…?あなた、キスプリご存知なのですか…?」

葉月「当たり前だろうが!!!あんた私が何年キスプリ推してると思ってんだコラ!!今でこそ東京ドームやら京セラで2daysとかやってるけどな!最初の方はクッソみみっちい箱でせこせことライブやってたんだぞ?!こんなチェキ持ってるってことは?あんたも古参なんか知らんけどナァ!誰にキスプリ愛は負けねぇんだわコラ!!」

莉茉「キスプリが…東京ドーム…?」

葉月「…?」

 


莉茉「そんな…夢みたいな事が…!」

葉月「へ?」

 


莉茉さんは、葉月の手を取って言った。

 


莉茉「ありがとう!私、正直担降りしようか迷っていたんです!正直今のキスプリは低迷期でCDもあまり売れない!でもあなたはそれでも東京ドームでライブできる様になるって信じて推し続けるのですね!嬉しいです!こんな近くに同志がいてくれて!私決めました!キスプリがドーム公演でシンデレラカールを3回歌うまで、キスプリを応援します!CD100枚!チェキ会全国巡礼!絶対に絶対にキスプリをドーム公演に連れていきます!!」

 


葉月「…?ちょっと?莉茉ちゃん?」

 


どういうことだ?俺たちの世界ではキスプリは日本中を熱狂させるアイドルだが、この世界では地下アイドルということか?

 


莉茉「最新シングル”スワンの翼”は10枚買ってそれで十分だと思っていましたが、今から90枚買い足します!来月に出るシングル”人魚の煌めき”は200枚予約します!私がキンプリを買い支えないと…!!!」

 


葉月「スワンの翼?人魚の煌めき?そんな曲あったっけか」

 


莉茉「ありがとう!あなた、お名前は?」

葉月「虎走葉月だけど」

 


莉茉「葉月さん…うっ!!!!うわぁぁぁ!!」

ドリーム「…!(始まった!!記憶の呼びかけが!!)」

莉茉「葉月さん…!!葉月さん…!!」

ドリーム「ちょ、莉茉ちゃん!!落ち着いて!!(”ピースワード”を聞かせる訳にはいかない…!早くこの場を去らないと…!)」

 


なるほどな。トリガーはそれか。

 


ドリーム「(記憶の呼びかけ=ピースワードが降ってくるトリガーは、対象の”名前”だけでは引けない筈…!でも今、2人は魔法に関する話題を出してなかった…!一体どこにトリガーが…?!)」

 


スワンの翼、人魚の煌めき。これは莉茉さんのエレメントの技名だ。何の因果か、俺たちの背中を押してくれてありがとうな…キスプリ!

 


って何言ってんだ俺は。

 


莉茉「…!カギ!!」

 


幸二「!!」

葉月「カギ!!」

榊「!!」

 


ドリーム「(クソ!!聞かせてしまった!!)」

 


────

 


ライト「…ぬかったな。ドリーム」

 


────

 


莉茉はその場に倒れこんだ。

 


莉茉「はぁ…体に力が入らない…」

 


ドリーム「…!クソ!!クソ!!」

榊「?ユメさんでしたよね」

ドリーム「…あ、はい…」

榊「どうしたのかい?そんな汚い言葉、あなたには似合わないよ?」

ドリーム「…」

榊「君は綺麗なんだから」

ドリーム「…」

 


葉月「莉茉ちゃん!!大丈夫?!」

莉茉「は、はい…なんか、頭に声が響いて、何となく、葉月さんに伝えるべきなのかなって思って…」

葉月「うん。ありがとう。受け取ったよ」

莉茉「私が聞こえたのは、カギの二文字だけ。何の意味があるのかは分からないけれど…」

葉月「大丈夫」

ドリーム「…」

 


莉茉「…私」

葉月「?」

 


莉茉「モデルを目指しているんです」

葉月「…!」

 


莉茉「どうしても王寺君と近づきたくて」

葉月「もしや、ガチ恋!」

莉茉「いえ、恋ではないと思います。憧れに近い感情といいますか」

葉月「ほう」

莉茉「私、元々引っ込み思案で、何をやっても中途半端だったんです。でも、王寺君をみて、明るく、何でも挑戦してみようって、思えるようになったんです」

葉月「…」

 


莉茉「だから、もっと有名になって、王寺君に見つけて貰えるようになったら、感謝の気持ちを伝えたいなって思って」

葉月「…」

莉茉「もちろん、キスプリは私が買い支えます。だからお互いに大きな舞台で、一緒に輝きたいって、思うんです」

葉月「莉茉ちゃん…」

莉茉「私、変ですかね?」

 


葉月「そんなことないよ」

莉茉「?」

葉月「莉茉ちゃんみたいなファンがいてくれることが、キスプリにとって一番の幸せだと思う」

莉茉「葉月さん…?」

葉月「私達が知ってる莉茉ちゃんも、心身綺麗な人なんだ」

莉茉「え?」

葉月「あ、ううん。気にしないで。だからそのまま、綺麗な人でいて欲しいな」

莉茉「葉月さん…!ありがとう!」

葉月「私も戻ったら、挨拶しにいこっと」

ドリーム「…」

 


────

 


ライト「ドリーム」

 


ドリーム「…はい」

 


ライト「未熟なお前に”パラドックスキー”を預けておくのは危険だ。お前からキーを剥奪する。そしてお前を、パラドックスエージェントから追放する」

 


ドリーム「…はい」

 


────

 


ドリーム「…」

 


榊「どうしてそんなに暗い顔をしているんです?ユメさん」

夢「…」

榊「彼女達と同じように、皆平等に未来がある。もちろん君にも」

夢「…」

 


幸二「2人とも、そろそろ行くぞー」

葉月「あ、うん!まって〜」

榊「おう」

 


会計を済ませる。

 


莉茉「ありがとうございました!」

夢「…ありがとうございました」

 


榊「また道が交差することがあったらその時は」

夢「…?」

榊「今よりさらに輝いているあなたに会えること、楽しみにしてるよ」

 


夢「…!」

 


────

 


《謎の場所》

 


エコー「おいライト、ドリームを追放したって本当か?!」

ライト「あぁ。彼女は力不足だった。彼女の体は、体の持ち主にお返しした」

エコー「でもこれで5人になっちまったじゃねぇか」

ライト「大丈夫。代わりが見つかるには時間がかかりそうだから、鍵を預けるのにちょっとした助っ人を用意した」

エコー「助っ人?」

 


そこへ現れたのは、水色の髪に、謎のゴーグルをした長身の男。

 


エコー「お前、名前は?」

ジャ「そうだなぁ、ここでの名前は…」

エコー「…」

ジャ「”ジャスティス”とでも言っておこうか」

 


────

 


幸二「おい葉月。今手に入れたキーワードってなんだっけ」

葉月「パラドックス、エージェント、持ってる、カギ、よ」

幸二「んだよまだ4つしかねぇのかよ」

葉月「あんたが兄貴からしっかり聞いておけばもう1つあったのよ!!」

幸二「あれは無理だ仕方ない」

葉月「ちっ。自分のミスだけ棚に上げやがって」

幸二「ふんだ」

 


榊「全く、君達は本当に素直じゃないね」

幸二「は?榊そりゃどういう意味だ?」

榊「私のいた緊迫感のある世界ではね、君達みたいなボーイ&ガールはとっくに結婚しているよ」

 


幸二・葉月「け、けっこん〜?!?!」

 


榊「あぁ。いつ死んでしまうか分からない…想いを伝えるのに、伝えるべき時なんて用意できない、そんな世界だからね」

幸二「…」

葉月「そんなに大変なんだ」

 


榊「分からないが、後回しに出来るってことは、幸せなんだと思う」

 


幸二「…」

葉月「…だとしても、こいつとはそんなんじゃないし」

幸二「同感だ」

 


榊「まぁいいさ。話を戻そう。このキーワードの中でやはり気になるのは、パラドックスとエージェント、だな」

幸二「そうだな、この2つの意味がわからない事には、いくら文章が出来上がっても、帰り方が分からんぞ」

葉月「そうね」

榊「調べてみようか」

幸二「どうやって?」

榊「ま、ググッたり?TwitterとかYouTubeで見てみたり?最近はTikTokもか?」

幸二「TikTokってそんな有益な情報載ってんのか?」

 


葉月「さぁ。私、YouTubeで調べてみる〜。サカキンはGoogleで、コージ君は得意そうだからTwitterよろしくぅ」

榊「承知」

幸二「Twitter得意そうって他二つに比べて悪意を感じるんだが」

 


葉月「えーっと…ん?んーーーー?!?!」

 


幸二「なんだ?有益な情報あったのか?」

榊「どうした?」

 


葉月「こ、これみて!!!」

 


3人で、葉月の小さなスマホでとあるYouTubeの動画をまじまじと見る。

 


葉月「ちょっとくっつかないで変態!」

幸二「見えねぇんだから仕方ねぇだろうが!」

 


そこには3人の男女が映っていた。

 


???「どうも、黄色のはるるです!」

???「赤のいぬきゃいです!」

???「緑のたくちゃんです!」

 


???「せーの、シンゴーズでーす」”

 

 

 

幸二「はるる?」

葉月「いぬきゃい?」

榊「たくちゃん?」

 


幸二・葉月・榊「シンゴーズ?!!」

 


幸二「こいつら、まちがいない!」

葉月「ええ!」

榊「知り合いか?」

 


幸二「そう!武智はるかと!」

葉月「えーっと…あと2人だれだっけ」

幸二「可哀想に」

 


いぬきゃい「いぬきゃいだワン!!」

たくちゃん「たくちゃんだ!!」

いぬきゃん「いやお前はただよ秋田犬だワン!」

たくちゃん「そなたこそ土佐犬だワン!」

はるる「まぁどうでもいいけど!本日の企画はー?!────」”

 

 

 

なんだこれ。

 


────

 


幕張メッセ

 


幸二「うっわ。人多」

榊「想像以上だな」

 


俺たちは、謎のYouTuber”シンゴーズ”を探すため、YouTuber フェスタなるものにやってきた。どうやらシンゴーズはこのフェスに登壇するらしい。

 


葉月「うぉーー!!東北オンエア!!!あ!!!あっちにはゴムドット!!!!」

幸二「YouTuberとか好きなのか」

葉月「そりゃあ乙女の嗜みですわよ」

幸二「世も末だな」

葉月「あ゛?」

幸二「やんのか小娘」

榊「おい2人とも、あれ!」

 


榊が指を指した先には、ステージの上でスポットライトに照らされる3人組がいた。

 


はるる「どうも、黄色のはるるです!」

いぬきゃい「赤のいぬきゃいです!」

たくちゃん「緑のたくちゃんです!」

 


「せーの、シンゴーズでぇぇぇす!!」

 


きゃぁぁぁぁぁ!!!!

 


会場は黄色い声援で大盛り上がりだ。そして俺は恐らく死んだ魚のような目で彼らを見ていた、だろう。

 


────

 


一通り彼らのショーケース?公開収録?を見た後、俺と榊は葉月に引っ張られ、ステージ袖へと移動する。

 


幸二「おいおいどこに行くつもりだ?」

葉月「決まってるでしょ!はるか達に会いに行くんだよ!」

幸二「正気か?流石につまみ出されるぞ!関係者以外立ち入り禁止って文字が読めないんですか小娘さん?!」

葉月「私達は関係者だ!」

 


脳筋乙。

 


すると3人がステージを降り、扉の向こうへと行こうとするのが見える。

 


榊「おい!3人が裏に行ってしまうぞ!」

葉月「まずい!ちょー!!!はるかぁぁぁぁ!!」

 


────

 


はるか「…?今私の名前を…?」

拓郎「ん?!気の所為だろう!」

犬飼「いや、俺にも可愛い仔猫の声が聞こえたぜ?」

 


葉月「はるかぁぁぁぁぁ!!!」

 


葉月は俺達の手を引き、人混みをかき分け、はるからの元へ突っ切る。

 


警備員「ちょ、お客様!これ以上演者に近づかないで!」

葉月「はるかぁぁぁぁ!!!」

はるか「ほら、聞こえた」

拓郎「確かに!どこだ?」

犬飼「あ、向こう、警備員がタムろってるぜ」

 


葉月「話を聞いて!!!はるか!!!!」

 


はるか「…!(あの子、なんで私の本名を?)」

犬飼「ありがとう。愛しき仔猫ちゃん」

拓郎「元気なファンだな!」

 


葉月は警備員ともみくちゃになりながらも、呆然とこちらを見る3人に話しかける。

 


葉月「はるか!少しだけ話を聞いて!」

警備員「困ります!」

はるか「待って」

警備員「…?はるるさん?」

 


はるか「この子、裏に通していいよ」

 


えー!ゴリ押しは正義ってか?!

 


葉月「はるか!!」

はるか「ねぇ君さ、どうして私の名前知ってるの?」

葉月「それは後で説明するから、」

 


はるか「君、私と会ったこと、ある?」

 


葉月「…!覚えてるの?」

警備員「とにかく!他のお客様に見つからないうちに裏へ!」

 


なんやかんやで俺達3人は裏へと移動した。

 


────

 


はるか「わからないけど、なんか懐かしい感じがした。君達からは」

葉月「…!そうだよ!私達は仲間なの!」

拓郎「仲間?」

犬飼「うん。君、可愛いね。その瞳、麗しい。今日から君は、ペルシャだ」

葉月「犬飼は黙ってろ!」

犬飼「何だこのガキァ!てかなんで俺の本名知ってるんだコラァ!」

 


幸二「俺達とお前らは、魔法を駆使して、戦う仲間なんだ。別の世界では」

はるか「魔法?」

拓郎「別の?」

犬飼「世界?」

幸二「あぁ。こいつ(榊)は違うけど」

榊「左様」

 


幸二「岩田拓郎さん。あなたは私達に協力してくれる岩の魔法使い。魔裁組の協力者だ」

拓郎「僕の本名まで…!うっ…!」

はるか「!!たくちゃん!!」

拓郎「すまん…少し目眩が…」

 


幸二「犬飼博斗。お前は五百旗頭渚の助手として、研究班で活動する博士見習い」

犬飼「コラァ!お前見るからに年下だろうが敬語使え!!って…うっ…なんだ…この感覚…!いお…きべ…?」

幸二「あぁ。お前はその五百旗頭っていう人に心酔してる」

犬飼「…!!知らない…知らないはず…なのに…!」

 


はるか「じゃあ、私は?」

幸二「…」

はるか「そこの人はよく分からんけど、君たち2人はどこか懐かしい気がして…」

幸二「…」

 


武智は、俺に1歩近づく。

 


クンクン

 


幸二「……?」

はるか「懐かしい匂い。なんだろう?会ったことないよね?でも、私も君達の仲間だったのかな?」

幸二「そうだ。武智はるか。魔裁組第2支部実働班のメンバー。黄のエレメントの使い手」

はるか「魔裁組…エレメント…?」

 


幸二「そうだ。覚えていないか?折紙山でのこと」

はるか「おりがみやま?」

幸二「たしかお前には弟がいたな。名前は確か…優(まさる)」

はるか「…!」

 


拓郎「君、その話は…!」

犬飼「いきなりなんなんだ!もうその辺に!」

 


はるか「いいよ」

 


拓郎「はるる!」

犬飼「でも!」

 


すこし頭を抑えて、武智は真っ直ぐ俺を見て言った。

 


はるか「続けて欲しい」

 


幸二「…俺たちの世界のお前は、虐められた弟を守る為に拳を振るう。そのせいで一度は罪を犯してしまうんだ」

はるか「…!」

拓郎「なんだと?」

犬飼「はるるはそんな奴じゃねぇ!」

 


幸二「分かってる…!武智、お前は出所した後、その拳を、世のため人のために使う為に、魔裁組に加入するんだ。たくさんの人を魔者の脅威から守る為に」

葉月「そうだったのか」

榊「正義感の強い、逞しい子だったんだな」

 


はるか「魔者……う…うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 


葉月「はるか!」

 


犬飼「はるる!!!!」

拓郎「大丈夫か!!!!」

 


???「おーっと、これ以上はやめてもらおうか」

 


そこに人相の悪い謎の青年が現れる。

 


エコー「我が名はエコー。パラドックスエージェントの狂犬と呼ばれし男だ」

 


拓郎「パラドックス?」

犬飼「エージェント?」

拓郎「そんなクリエイター聞いたことあるか?」

犬飼「ねーな?お前新人か?」

 


エコー「黙れ!!!!」

犬飼「ひぃ!」

 


葉月「パラドックス…エージェント?!」

幸二「その文字列…!」

 


エコー「あぁ。だがそんな名前なんざどうだっていい…お前らに忠告だ。天堂幸二、虎走葉月!」

幸二「…!(こいつら、俺達の名前を…!)」

葉月「…!」

榊「…(私は無視?)」

 


エコー「今すぐここから立ち去れ」

 


葉月「なんでよ!てかアンタ、どうして私達を知ってるのよ!」

エコー「へん。そんなこと、教える価値もない」

幸二「嫌だ、と言ったら?」

エコー「心を折る」

幸二「…!」

 


はるか「うっ……」

バタン

 


拓郎・犬飼「はるる!!!!」

葉月「はるか!!!」

 


武智はその場で倒れた。

 


幸二「武智!」

 


俺が武智に駆け寄ろうとすると、透明なシールドが出現し、俺と武智達を隔てた。

 


武智サイドには岩田さんと犬飼、そして何故か榊。

俺達は2人と、エコーと名乗る青年、とに別れた。

 


エコー「この壁は簡単には破れない。どうだ?”魔法”は久しぶりか?」

幸二「…!こいつ、魔法のことを!」

葉月「あんた、一体何者なの?!」

エコー「さぁ。お前らが俺に勝てたら教えてやってもいい。ま、無理だろうけどな」

葉月「…!」

 


エコー「残念ながらこの魔法はお前らの世界の魔法とは違う…故にお前たちは魔法を使用することが出来ないのだ」

幸二「戦うって…どうやって?」

 


エコー「もちろん、リアルファイトさ」

 

 

 

ビュン!

 

 

 

エコーが高速で俺に迫る!!

 


エコー「くたばれ!!!天堂幸二!!!」

 


ドッカーーーーン!!!

 


幸二「…うっ!」

 


俺は顔面を思い切り殴られ、シールドの壁に打ち付けられる!

 


葉月「コージ君!!!」

 


シールドの外から榊がこちらに何か必死に語りかけているようだが、何も聞こえない。

唇が裂けたようで、すこし流血する。

 


幸二「ちっ…」

エコー「どうだ?久々の血の味は」

幸二「あぁ。最高だよ」

エコー「…」

 


幸二「久々のリアルファイトなんでな、少し鈍っちまったみてぇだが…」

エコー「…?」

 


ビュン!

 


俺はエコーに超高速で迫る…!!!

 


幸二「魔法使いを舐めるなァ!!!!」

 


ドッカーーーーン!!!!!

 


俺はエコーを殴り飛ばした!

 


葉月「魔法関係ないただのパンチで草ァ!!!」

 


エコー「ぐはっ…!!!」

 


エコーはふらつきながら立ち上がる。

 


エコー「ふっ。効かないね」

幸二「そいつは残念だ」

 


ビュン!!

 


ボコッ!ガンッ!シュッ!ヒュンッ!ドンッ!ガコッ!ドゴッ!ボガッ!

 


高速で拳をぶつけ合う!

 


葉月「コージ君!そいつ、カギを持ってるかもしれない!」

幸二「…!」

エコー「ちっ…!そこまで気がついてるのか…!」

 


殴り合う隙に一瞬、エコーの胸元にちらりと光が迸る。

 


幸二「…(あれが、鍵か?)」

エコー「くたばれぇぇぁぁ!!」

 


エコーの右ストレートを寸前でしゃがんでかわす!

 


その時、その光は鮮明に俺の面前に現れた。

 


これがカギ…なのか?

 


バシッ!

 


俺はその光を掴み、エコーの胸元から引きちぎった!

 


エコー「…!しまった!」

幸二「なんだか分からねぇこのお宝は貰ってくぜ?」

エコー「くっ…クソが!!!!」

 


俺はエコーに回し蹴りを喰らわせる!

 


エコーは吹き飛び、シールドの壁に頭をうちつけた。

 


エコー「う…うぅ…」

 


エコーは気を失った。

幸二「はぁ…はぁ…」

葉月「…!」

 


すると、シールドは無くなり、榊らの声が耳に飛び込んでくる。

 


榊「大丈夫か!天堂幸二!虎走葉月!」

葉月「大丈夫!」

 


気を失ったエコーを端に運び、俺は武智の元へ行く。

 


幸二「意識が戻ったか…?武智…!」

はるか「う、うん…」

犬飼「無理するな」

拓郎「今日はもう帰ろう」

 


すると武智は重い口を開く。

 


はるか「…私の弟…優は死んでしまったんだ」

幸二「…!」

葉月「!!」

 


はるか「病弱で、太陽の下をまともに歩けないくらい、ずっと病院の中で過ごす生活。生まれてからずっとそうだった」

犬飼「はるるは、そんな優君のために、毎日学校帰りに病院に通っていた」

拓郎「でもある時…」

 


はるか「容態が急変して、直後には…」

 


葉月「…そんなことが」

榊「…」

 


はるか「悲しくて仕方なかった。毎日泣いた。でも少し経って、どこからか、優の声が聞こえた気がしたの。笑ってるお姉ちゃんが見たい…って」

幸二「…」

 


はるか「私も、闘病生活の中でも、前向きに生きてる優の笑顔が大好きだった。きっと優は天国から私を見守ってくれてる。私が泣いてばっかりじゃ喜ばない。だから私は、優に元気な姿を見せようと…優に笑顔になって欲しくて、この仕事を始めたの」

葉月「そうだったんだ…」

榊「ぐすん…なんだか…いい話だ…!」

 


はるか「そうだ、さっき頭がくらくらしてた時に、思い浮かんだことがある。きっとこれを誰かに伝えないといけないような…そんなことが」

幸二「…!」

葉月「それって!」

榊「教えてくれるか…?」

 


はるか「6」

 


葉月「6?」

幸二「今度は数字か…?」

 


拓郎「僕は確か…6人…と言われたような」

犬飼「いや、俺は6つ…だった気がするが?」

 


幸二「6…6人…6つ…分かった。感謝する」

 


はるか「何か役に立つの?これが」

幸二「あぁ。俺達は元の世界に戻らないといけないから、その為のキーワードみたいなものなんだ、それが」

はるか「そ、そうなんだ。なんか、難しくてよく分からないね」

スタッフ「シンゴーズさん!次の出番です!」

はるか「あ、はい!」

 


────

 


エコー(?)「…うぅ、頭が…ん?ここはどこだ?俺はなんでこんなところに?」

 


────

 


幸二「お別れみたいだな」

はるか「うん。今日はなんか、ありがとう」

幸二「え?」

はるか「大切なことを、思い出した気がした」

幸二「…そうか」

 


葉月「頑張ってね!YouTube!」

犬飼「あぁ!ありがとう!ペルシャちゃん」

葉月「おめぇに言ってねぇよ犬飼」

犬飼「本名で呼ぶな〜!!!!」

 


拓郎「行くぞ2人とも!」

はるか「う、うん!」

犬飼「そうだな!」

 


3人は、他のブースへと移動し始めた。

 


弟の為に…か。

 


違う世界でも、変わってるものと、変わらないものが、あるんだな。

 


────

 


────

 


とある病室

 


点滴に繋がれた男と女…

 


心電図は薄弱な彼らの拍動を無機質に記録する。

 


善能寺「少しまずいことになったわね…何が起きてるのかしら…」

 


医者の羽田は言う。

 


羽田「よく分からないけれど…彼らの体に宿った魔導書が突然、彼らの体を蝕み始めたのよ。今彼らは必死に抗ってる…」

 


善能寺「…成程」

 


羽田「まるで彼らの体が、突然”マヂカラへの適応力を失ったみたい”」

 


羽田「このままだと”3人”とも…魔者になるか…死に至るか────」

 

 

 

301号室 天堂幸二

302号室 虎走葉月

 

 

 

そしてもう1人…

 

 

 

────

 


虎走邸

 


葉月母「君が噂のコージ君ね!!!はーちゃんから話は聞いてるわぁ!」

葉月「ちょ、ママってば!」

 


そして俺は何故か今、こいつの家で晩飯をご馳走になっている。

 


葉月母「今日は奮発して、グラタンつくっちゃった!」

葉月「わー!美味しそう!!!」

 


虎走の母、スリムで美形…というか可愛らしい印象。あ、別に狙ってるとか、変な目で見てるとかでは無いぞ?

ってか若い。何歳だこの人。

 


葉月母「コージ君はさ、彼女とかいるの?」

幸二「ぶっ!いや、いませんし、作る気も…」

葉月母「だったらはーちゃんとかどう?!結構いい子なのよぉ!」

葉月「ぶっ!ちょっとママやめて!そういう関係じゃないから!」

葉月母「そうなのかなぁ?最近急によく話題に出すから、てっきり”ソウイウ関係”なのかな〜って」

幸二・葉月「ち・が・い・ま・す!」

 


葉月母「まぁ、仲がよろしいことで。あ、そうだ、デザート作らないと♪」

 


ママはキッチンに消えていった。

 


幸二「てか、このグラタン、美味いな」

葉月「でしょー!こっちの世界でもママのグラタンは絶品だね!」

幸二「よかったな」

 


葉月「そういえばさっきのあれ…」

幸二「これの事か?」

 


俺はさっきエコーって奴から奪い取ったカギのようなものをテーブルに置いた。

 


葉月「カギ…だよね」

幸二「あぁ。このカギが元の世界に戻るためのカギ…なのか?」

葉月「どうなんだろう。はるか達が言ってた6ってのも気になるわね」

幸二「分からない。手がかりがまだ少なすぎる。明日は別の誰かを当たってみよう」

葉月「心当たりあるの?」

幸二「…実は全くない」

葉月「なんだよ!」

 


幸二「今までは運良く探し当てられたが、他のメンバーはどこで何をしてるのか…」

葉月「確かに」

 


幸二「そういえば、榊は?」

葉月「なんかジョギングするからまた明日って」

幸二「ほーん」

 


────

 


《夜の公園》

 


榊「はぁ…はぁ…このままでは、体力が低下の一途を辿ってしまう…!」

 


榊は夜の街をジョギングする。

 


榊「はぁ…はぁ…はぁ…待っていろ佐久間達…早く帰って…ゼクシーザを倒さねば…」

 


そこへ、”水色髪の男”が現れる。

 


ジャ「久しぶりだね」

榊「…!君は?あぁ!コーヒー屋の!」

ジャ「そっか。君とはそこが最後だったね」

榊「?」

 


ジャ「榊天慈、君に協力して欲しいことがあるんだ」

榊「協力?」

ジャ「あぁ。君の存在を利用したい。もう時間がないんだ」

榊「…何の話だ?」

 


ジャは、榊に住所が書き込まれた紙切れを渡す。

 


ジャ「ここに行ってみてくれ」

榊「ここは?どこだ」

ジャ「大丈夫。安心安全な場所だから。少し遠いけど」

榊「…?」

ジャ「あぁ、1人で行っちゃダメだよ?”この世界の仲間”を連れて、行ってらっしゃい」

榊「…何が目的だ!」

 


ジャ「さぁ。でも早く行かないと、皆が不幸になるよ?君も君の仲間も…ね」

 


榊「なんだと?それに何故私の名前を!名乗った覚えはないぞ!」

 


ジャ「あ、あとそうだ、これ」

 


ジャは、榊に”あるもの”を渡した。

 


榊「…!これって、まさか?」

 


ジャは、姿を消した。

 


榊「……?」

 

 

 

 

SOREMA外伝 The Parallel ②

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SOREMA 外伝 The Parallel 2

 


俺は天堂幸二。魔法使いをやっている。

 


ひょんなことから平和な平行世界に飛び込んでしまった。

 


俺は同じ立場の虎走葉月、また別の世界からやってきた榊天慈と、元の世界に戻るため、この世界の住人達と関わることにしたのだが…

 


────

 


《謎の場所》

 


モーニング「もどりやしたー」

 


そこに、長身の女性が話しかける。

ドリーム「もう、モーニングったら。色々と話しすぎよ!これで矛盾が生じたらどうしてくれるの?」

モーニング「いーじゃんいーじゃん、おもろいし」

 


更に容姿端麗な男が剣幕で詰め寄る。

エコー「おいコラ。てめぇ。誰の味方なんだ?!マジでなんかあったらどう落とし前つけてくれんだよ…!」

モーニング「何も無いっしょ。フラワーもそう思うでしょ?」

 


モーニングは、小柄な少女に話しかける。

フラワー「わ、私は…その…えーっと」

エコー「おいフラワー、お前の監視対象、どうなってるんだよ」

フラワー「あ、はい!ちょっと、見失ってしまって…」

エコー「なんだと?」

 


そこへ山田光と同じ顔をした男が現れる。名をライトと言った。

 


ライト「安心しろ。全員の居場所はこのコンパスに示される」

エコー「ちっ。ならいいんだが」

ライト「モーニング。これ以上余計な真似はやめろ」

モーニング「はーい」

ドリーム「私達は、何か対策を打つべきでしょうか…?」

ライト「不要な干渉は彼らの帰還意識を強めるだけだ。今は彼らが自主的に、元の世界への帰還を諦めるのを待つしかない」

フラワー「承知致しました…」

ライト「僕とフラワー、そして”彼女”は、引き続き監視対象を見張りつつ、余計な行動に走らせないよう、道筋を矯正していこう」

フラワー「了解です」

 


エコー「てか、アイツはどこにいる?」

ドリーム「彼女なら、監視対象の所にいるのでは?ライト」

ライト「そのようだ。まぁ彼女なら問題はないだろう」

エコー「そうか」

 


ライト「平行世界の至近距離接触の時期になると、このような特異点が必ず現れる。平行世界を故意的に再び接触させる行為は、いずれの世界をも歪ませる極めて危険な行為だ。次の至近距離接触は100年後。それまで世界間の干渉は、私達パラドックスエージェントが許さない。彼らには申し訳ないが、それが全ての世界の為なのだ」

 


────

 


《ペットショップ・クワイエット》

 


幸二「おいおい。ペットショップて。わんこもふりに来たわけじゃないんだぞ?」

葉月「そうじゃない。絶対にいるんだよ、ここに」

幸二「誰が?」

葉月「静ちゃんが!」

 


村松静。本来の世界では、第1支部の魔法使い。ラキラキという名の魔獣を連れている。

 


榊「静という子は、どんな子なんだ?」

葉月「物静かで、もふもふが好きな子って感じかな。でもちょっとよく分からないとこもあるっていうか?」

榊「ほう」

幸二「あ、あれ」

 


俺の視線の先には、女子が数人、犬と戯れて遊んでいた。

 


???「あ、らっしゃっせー」

 


その中心にいる女子、ピアスがバチボコに空いたファンキーなショートヘアの女子が、挨拶する。

 


そう。この女子こそ、この世界の村松静だ。

 


葉月「静ちゃん!!」

静「ん?」

 


葉月は静とその集団に駆け寄る。

 


葉月「あの、あ、初めまして…って言うべきなのかな?私、虎走葉月!」

静「お、おう…お客さん?」

葉月「違う!私達、静ちゃんに用があって!」

静「あーし?」

女子A「え、ガチ?」

女子B「しーちゃんマジモテじゃん!」

女子C「この間も女の子から告白されてたよね!」

静「んね!マジうけんべ!悪ぃけどあーし、恋愛対象男なんだよねぇ」

葉月「あ、いや、そういうわけでは…(恐ろしい程にキャラ違ぇな。流石平行世界)」

女子D「でもしーちゃん、男にもモテるじゃん?」

A「そうそう!この間ここに来た小学生もメロメロだったしね!」

B「マジでしーちゃん、周りの人間ダメにし過ぎっしょ!」

 


あっはっはっは!!!

 


なるほどね。これが数十年後、街角の井戸端会議に発展するわけね。話題も肉屋のコロッケの値段がどーのこーのになるわけね。なるほど。理解。

 


榊「村松静。君はこの少女の事を覚えてないのかい?」

静「うーん。可愛い子だけど、どっかであったっけ?」

葉月「いや、会ったっていうか…」

静「わりぃ。おもいだせねぇわ!ってかそういえばさぁ!こないだもさぁ!」

 


村松らはまたワキャワキャと騒ぎ出した。ペットそっちのけで草。

 


葉月「魔裁組!」

 


静「は?」

葉月「魔裁組!この言葉に聞き覚えは?」

静「魔剤?Monsterのこと?まぁよく飲むけど」

葉月「はぁ。じゃあ、小町!九頭龍坂小町!」

静「九頭龍坂?いかちー名前だな?人間?」

葉月「覚えてないんだね。静ちゃんは魔法使いだったんだよ?魔者と戦う…」

 


静「魔者……?」

 


ズキッ

 


静「う、うーん。まぁ、人違いだし?てか待って魔法?ウケるwww」

 


葉月「…」

榊「打つ手なし…なのか?」

葉月「いや」

榊「?」

 


幸二「ワオーーーーーーン」

 


静「え?」

A「今、ワンチャン鳴いた?」

C「いや、ウチの子じゃない」

D「私も違う」

 


幸二「ワオーーーーーーン!!!」

 


B「え待ってウケるw兄さんが鳴いてるwww」

D「ガチ?ワロタwww」

 


あっはっはっは!!!

 


幸二「ワオーーーーーーン!!!」

 


これで思い出すなら…あとは葉月…お前があの”名前”を…!

 


葉月「ギャッハッハッハッハッ!!!!!」

 


お前が一番笑うな!!!

 


静「あは、あははは(何だこの遠吠え…どっかで聞いたことが…?)」

葉月「静ちゃん」

静「ん?なに?」

 


葉月「ラキラキって、知ってる?」

 


静「ラキラキ…?」

 


ワオーーーーーーン!

 


ワオーーーーーーン!

 


ワオーーーーーーン!

 


静「あぁ……あぁ……!!!!」

 


葉月「静ちゃん!!思い出した?!」

 


幸二「…!」

榊「大丈夫か…?少女!」

A「ちょっと!しーちゃん?!大丈夫?!」

C「水持ってくるね!」

 


静「あぁ…!!!パ…パ……」

葉月「パ?」

静「パラドックス………エー……」

 


バタン

 


村松は気を失ってしまった。

 


────

 


数時間後、村松は目を覚ました。

 


静「うぅ…」

 


葉月「!!静ちゃん!!」

静「…!君は確か、葉月ちゃん」

葉月「そうそう!!葉月!!」

幸二「おい村松!思い出したか?!魔法のこと!」

榊「ついでに、私のことも思い出したりしてないか?!」

 


静「…ごめん。何も分からないや」

葉月「…そっか」

幸二「ラキラキのことも?覚えてないのか!!お前、あんなに可愛がってたろ!ずっと一緒にいたろ!!!」

静「ごめんな。マジで思い出せないんだ。ずっと一緒にいたのはこの豆柴のパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソだけだし、その他の事も、何も覚えてないんだ…」

葉月「…そっか」

榊「それならば仕方ないな」

 


うーん僕はその犬の名前が気になって仕方ないんだが?!

 


静「でも一つだけ…」

葉月「!」

 


静「さっき…脳裏に響いた声…」

幸二「!」

 


静「パラドックス…何とかって…」

榊「パラドックス?なんの事だ」

幸二「葉月、メモっとけ!」

葉月「指図しないで!」カキカキ

 


幸二「もしかしたら、パズルのピースみたいに、一つ一つの単語を合わせれば、元に戻る方法が分かるのかも知れない…!」

葉月「…!なるほど!」

幸二「他にも魔裁組の人間は沢山いる!とっとと回って、元の世界に帰るぞ!」

葉月「…うん!」

榊「私のことは思い出せないか?」

静「おっさんのことも、全くしらないや」

 


榊「おっさん!!!」グサッ

 


────

 


《渋谷》

 


幸二「よし、他に居場所に心当たりがある奴はいるか?」

葉月「うーん…鬼屋敷さんとか…どこにいるんだろ…」

幸二「あの人、生きてるか怪しいよな」

 


ゲンコツ!

 


幸二「まぁとりあえず、人が集まりそうな場所に来たが…っておい!!あれ見ろ!」

葉月「ん?」

榊「あれは?」

 


俺は思わず電光掲示板に目を奪われた。そこには、いろは坂46というアイドルグループの広告が流れており、そこにはあの伊藤蘭とその姉、伊藤凛の姿があった。

 


蘭「伊藤蘭です!」

凛「伊藤凛です!」

蘭・凛「私たち、会いに行けないアイドル、いろは坂46の、伊藤シスターズでぇぇす!」

蘭「私達に会いたいかー?!」

凛「会いたい皆は〜コンサートに集合!」

 


伊藤蘭。魔裁組第1支部の新人で魔具使い。

 


そして、その姉・凛は…

 


葉月「凛さん……」

 


そう、俺達の世界では、凛は既に死んでいる。

 


蘭の話によると、魔導師に殺されたという。凛もまた、第1支部の魔法使いだった。

 


葉月「蘭ちゃん…凛さん…」

 


葉月は涙を流した。その涙が再会を祝う嬉し涙なのか、はたまた悲しい涙なのか…俺にはわからなかった。

 


葉月「魔法使いもいいけど、あの2人、アイドルもよく似合ってるわ」

幸二「…そうだな」

 


葉月「魔法のない世界では、色んな人の運命が変わってるのかもね…」

 


…!

 


ということはまさか…?

 


俺の……”兄”も……?

 


幸二「おい葉月、榊、ちょっと用事思い出した!」

葉月「あ!ちょっと?!コージ君?!」

榊「どこへ行く!おい!」

 


俺が走り出そうとしたその時だった。

 


ドカッ。

 


人だかりにぶつかった。

 


???「きゃぁぁぁ!」

 


バタッ

 


俺とぶつかった女は地面に倒れてしまった。

 


幸二「あぁ…悪い…大丈夫か?」

???「いえ…こちらこそ…すみません…」

 


幸二「それならよかっt…って…お前は!!!」

 


葉月「あ!」

榊「ん?」

 


その女は、見慣れた顔の女だった。派手な金髪、大きな瞳。間違いない。

 


幸二「お前!空見麗美じゃねぇか!!!」

 


麗美「え…!」

 


葉月「あ!発見!」

榊「この少女も仲間なのか?」

葉月「んーちょっと違うけど、まぁそんな感じ」

榊「はぁ。なら私のことも…!」

 


麗美「あの…どうして…私の名前を…?」

幸二「もちろん知ってるさ…勝気なその表情、他を圧倒する圧…お前は音の魔法使い!空見麗美なんだァ!!!!」

麗美「あ、あの…あなた…誰?」

幸二「げげ。ま、そう、だよね」

葉月「って、あの子。腕…」

 


よく見ると、麗美は先程の転倒で肘を擦りむいてしまっていた。

 


幸二「あ、悪い…!大丈夫か?」

麗美「い、いえ、私がドジなだけなので…」

 


こいつも中々キャラ変わってんなぁ…

 


???「おい。てめぇ」

 


ゾクッ。

 


背中から聞こえたその声は、聞き覚えがあるような。だが聞き馴染みのないような、だが確かに、かなりの圧を感じる声だ。

 


???「てめぇ。てめぇだよ。そこの青臭いガキ…」

 


恐る恐る振り返る。

 


幸二「は……はい……」

 


するとそこにいたのは、これまた見覚えのある、サングラスをした金髪ロングヘアーの男だった。

 


千巣「てめぇ。俺様のハニーに何してくれてんだ?ゴルァ」

 


幸二「せ、千巣先輩…!!!」

 


千巣万之助。魔裁組第1支部所属の現役最強の魔法使い。赤のエレメントと魔導書四十六章 知覚の書による四十六眼、そして妖刀・夜叉による千紫万紅流の剣技を駆使し魔者を狩る、俺の憧れの魔法使いである。

 


葉月「せ…」

千巣「?」

葉月「せんぱーい!!!」

 


ハグッ!!

 


葉月「あいたかっだよぉぉ〜せんぱぃ〜!!」

幸二「あ!おい!」

麗美「きゃっ!まぁ!」

 


千巣「て…めぇ…!」

葉月「…!」

千巣「触んじゃねぇ!!!阿婆擦れが!!!」

 


バシィン!!!

 


千巣先輩(?)はなんと抱きついた葉月を振り払った。

 


葉月「先輩…この世界の先輩は優しくない…」

千巣「ブスが触んじゃねぇ。俺様の隣はハニーだけで十分なんだよ。な?麗美

麗美「う…うん…」

葉月「ブ、ブス…私が…?うぇぇぇぇぇん!」

 


な、なんと!麗美ちゃん!長年の片思いを世界越しに実現させたのね!それは良かった!ずーっと君の恋路を気まずさ片手に見守ってきた僕からすると本当に嬉しい気持ちでいっぱいだよ!感動をありがとう!

あと葉月ちゃん、君はブスじゃないから、元気だしなね。

 


榊「女の子にブスとは、不躾だな」

千巣「あ?てめぇ誰だクソジジィ」

榊「じ、ジジィだと?!」

千巣「ジジィだろどう見ても」

榊「くっ…こんなガキの為に佐久間は戦っているのか…!」

千巣「佐久間?だれそれー」

榊「まぁいいさ、彼は名声なんざどうだっていい男だ。だが忘れるな。お前のその幸せは、誰かによって守られているということをな!!」

千巣「は?なーに言ってんだこのおっさん?ヒーロー気取りか?だっさ」

 


麗美「ちょっと。万君。いいすぎ」

千巣「ごめんごめん。てか麗美。その傷、見せてごらん?」

麗美「大丈夫だって、軽く擦っただけだし」

千巣「ハニーに傷は似合わないよ。ほら、跡になったり、バイ菌がはいったらいけない。マキロンで消毒するんだ」

麗美「…ひぃ!染みる!」

 


千巣「で、これやったのはどこのドイツだおいコルァ!」

葉月「こいつです」ピシッ!

幸二「おい仲間を売るな!」

 


千巣「ま、そんな気がしてたわ。お前さっき俺様の名前を呼んだな。もう一度呼んでみろ」

 


先輩は指の骨をポキポキ鳴らしながら言った。

 


幸二「千巣万之助。最強の魔法使いだ」

千巣「くっくっくっ。そうだよな。まさかこの街で俺様の名前を知らねぇ奴ァいねぇ。いや、いちゃいけねぇ。俺様は帝京卍會の初代総長!斬りのバイキーこと、千巣万之助様だァ!!」

 


俺達は知らぬ間に、謎のバイクの集団に囲まれてしまっていた!……すげえ既視感!!

 


バイキー!バイキー!バイキー!バイキー!

 


千巣「はっはっ。魔法使いってのは意味不明だが、最強ってのは本当さ。この街じゃ俺に勝てるやつなんざいねぇ。タイマンでは83戦83勝。俺達帝卍に逆らったチームは全て俺達の傘下に下った。今はかけがえのない仲間さ」

 


バイキー!バイキー!バイキー!バイキー!

 


千巣「まぁ俺様も鬼じゃねぇ。今日は気分がいいんだ。ハニーに土下座して謝るというのなら、今日のところは見逃してやる」

幸二「…!」

千巣「最強の俺様を前にしちゃ、どんな奴でも足が竦む。俺様はそれをよーく見てきた…」

幸二「…」

 


千巣「俺様が目の前に居るってのに…ひよってない奴いる?!」

 


バイキー!バイキー!バイキー!バイキー!

 


千巣「いねぇよなぁ!!!!!!!」

 


うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 


野郎共の歓声が上がる。

 


幸二「ちっ…!」

葉月「バイキー!やっちゃえ!!!」

幸二「お前は俺の味方でいろよ!」

 


榊「ちょっと待て」

 


千巣「あ?」

 


榊「千巣万之助と言ったな。お前と話がしたい」

千巣「なんだジジィ。てめぇの出る幕はもう終わったぜ」

榊「君はこれだけの人間を従えて、さぞかし喧嘩が強いのだろう」

千巣「あぁ。最強だ」

榊「君は他の世界では、最強の魔法使いらしいな」

千巣「よく分からんが、そうなんだろうな。俺様のことだ」

 


榊「だが、今の君は最強なんかじゃない!」

 


千巣「…!なんだと!!」

 


榊「強さとは…力とは…自分の為に使うものでは無い。世の為、人の為に存在するものなのだ」

千巣「は?ジジィの説教かよ」

榊「君の拳は、何のためにある」

千巣「もちろん。ハニーを守るためだぜ?この街を締めて、ハニーには誰一人として手出しさせない。それが最強だ」

榊「そうかな」

千巣「は?」

榊「ならそのハニーの顔を見てみろ。どんな顔してる」

千巣「そんなの、俺に惚れてる顔に決まって…」

 


麗美「…」

 


麗美の顔は、雲っていた。

 


千巣「そ、そりゃ、ハニーは怪我してるんだ。暗くて当z…」

榊「違う!」

千巣「…!」

榊「お前の思う”独りよがりの強さ”を、彼女は望んでない!」

千巣「なん…だと?!」

 


榊「お前の強さは彼女の為のものじゃない。彼女を守ったつもりになって、強き自分を守る為の偽物の強さに過ぎない!」

千巣「俺の強さが…偽物の強さ…だと…?!」

 


榊「本当の強さは…愛する人の笑顔を守る為にある!!!」

 


ギィィン!!!

 


千巣「う…頭が……!!!」

 


榊「今の君は、歪んだ正義感と力に溺れてしまっている。思い出せ!大事なものはもっと近くにあるはずだ!!!」

 


ギィィン!!!

 


千巣「うわぁぁぁぁ!!!」

 


麗美「…!」

幸二「先輩…!」

葉月「…!」

 


榊「納得がいかないというのなら受けて立とう。私の拳は、真の強さを理解している」

千巣「て、てめぇ…!」

 


榊「今の君には、負けないよ」

 


千巣「ちっ…舐めやがってぇ…!!!!」

 


先輩が榊に殴りかかろうとしたその時!!

 


ペシン!!!

 


甲高い音が、虚空に響く。

 


幸二「!」

葉月「!」

榊「…!」

 


千巣「うっ…!」バタン

 


麗美「…」ハァ…ハァ…

 


麗美の掌が、先輩の頬を打った。

 


先輩はその場に倒れ、意識を失った。

 


ギィィン!

 


麗美「ううっ…」

 


バタン!

 


麗美もその場に、先輩に重なるように倒れ込んでしまった。

 


ザワザワザワザワ…

 


────

 


人混み外れた裏路地にて、麗美は目を覚ます。少し遅れて、先輩が目を覚ました。

 


幸二「…」

葉月「先輩…!」

 


榊「…」

 


千巣「…麗美

麗美「…」

 


榊「目覚めたか」

 


千巣「あぁ…いてて…」

麗美「あ…大丈夫?ほっぺた」

 


麗美は保冷剤で先輩の頬を冷やす。

 


千巣「悪いな」

麗美「ううん。叩いたの、私だし」

千巣「やっぱそっか。悪い夢でも見てたのかなって思ったわ」

麗美「ごめんなさい」

千巣「…」

麗美「万くん…元の万君に戻ってよ」

千巣「…?」

 


麗美「昔はこんなんじゃなかったよね」

千巣「…」

 


麗美「昔からケンカばっかりしてたけど、その拳には理由があった。変な人に絡まれた私を守ってくれたり、誰かの喧嘩を仲裁したり、いじめられてる人をいじめっ子から守ったり」

千巣「そうだっけか」

麗美「うん。無駄な喧嘩はしない。でも、やる時はやる。自分より力の弱い人を守る為に戦う。万くんは私のヒーローだった」

千巣「…!」

 


そう。その通りだ。

俺達が知る千巣万之助は、正しくそういう男だった。

弱きを助け強きをくじく。見返りなど求めない。常に謙虚で逞しい。それが最強の魔法使い。千巣万之助なのだ。

 


千巣「麗美…」

麗美「私が好きなのは、そんな万くんだよ。ただ暴力を振るうだけの万くんなんて…万くんなんて…」

 


麗美は泣き出した。

 


千巣「…ごめん麗美。俺思い出したよ。昔のこと。足震わせながら、いじめっ子に立ち向かった時の事」

麗美「…!」

千巣「あの時、傷だらけになった麗美を見て、もう二度と傷つけたくない…そう思って、俺は…」

麗美「…!」

千巣「なのに、こんな風になってしまった」

麗美「万くん」

 


千巣「傷つけたくなかったのに…俺のせいで…心が傷だらけになっちゃったな…ごめん…本当にごめん」

 


先輩は麗美を抱きしめた。

 


葉月「わーお」

幸二「…!」

 


千巣「俺、決めた。帝京卍會は、今日で解散だ」

麗美「…!」

千巣「俺には余る力だった。俺ごと飲み込まれてしまうような気がしたから」

麗美「万くん…」

千巣「俺は、大切な人を守る為に、この力を使いたい…!」

麗美「…!!」

 


麗美の顔に笑顔が戻った。2人の傷跡は夕陽に照らされて、傷が薄く見えた、そんな気がした。

 


チュッ

 


葉月「…!!」

榊「なっ!」

 


あぱー。麗美ちゃん、大胆!

 


麗美「約束だよ?万くん」

千巣「あぁ」

 


榊「強くなったな。最強の魔法使い」

千巣「いや、魔法はもう解けた、それに」

榊「?」

 


先輩は、微笑んでこう続けた。

 


千巣「俺は、弱い」

 


葉月「…!」

幸二「…!」

麗美「うっ…!」

 


千巣「麗美…?!」

麗美「うっ…頭…が…!」

千巣「どうした麗美…!麗美!!!」

 


麗美「…言葉が…聞こえる…!」

 


幸二「…!!!何だ!なんて言ってる!!」

葉月「…!!」

榊「…!」

 


麗美「何だろう……多分……”もってる”って…!」

幸二「持ってる…?何をだ…?」

麗美「分からないけど…聞こえるのは……これだけ……」

千巣「そういえば俺もさっき、言葉が聞こえた!」

幸二「なんて言ってましたか!」

 


千巣「エージェント」

 


葉月「エージェント?」カキカキ

 


榊「今のところ、パラドックス、エージェント、そして、持ってる…か」

 


幸二「なんの事だか…まださっぱりだ…!」

葉月「でも着々と、元の世界に近づいてることは間違いない…!」

幸二「だといいんだが…」

榊「…」

 


千巣「てか、お、おじさん」

榊「一応聞くが私のことかな?」

千巣「お、おう」

榊「私はおじさんではなーーーい!!」

千巣「あ、すみません。それはいいんですけど…一つ…」

榊「何だ!」

 


千巣「どこかでお会いしたこと…ありますか?」

 


榊「…!君、私のことを覚えているのかね!!」

 


千巣「いや、覚えてるとかではないんですけど、気のせいかもしれない…」

榊「…そうか」

 


幸二「俺達の世界では結構バトってたもんな」

葉月「そうだったような。ぎゃはぎゃは」

榊「…!そろそろ私が君たちの世界でどんな人間だったか教えてくれないかなぁ?!」

幸二「やなこったー」

葉月「思い出したくもない!」

榊「悲しいーー!!!!!」

 


────

 


次の日の朝。

 


俺は葉月と、とある場所へ向かった。

 


そう、それは、この世界の俺が通っているという学校”翠春高校”である。

 


時を遡ること半日前。

 


幸二「なぁ。お前ら、このままずっと野宿で過ごすつもりか?」

葉月「私家あるし」

幸二「お前、どのタイミングで家に帰ってたんだ?」

葉月「昨日の夜とか?」

幸二「お前まじかいいな俺なんてずっと銭湯と公園のベンチが友達だよとほほ」

葉月「うち泊まる?♡」

幸二「魅力的だが却下。妙に寒気がする」

榊「私は元々サバイバルには慣れている故問題ない」

 


葉月「てかそろそろスマホ持ちなさいよ。不便なのよ毎回公衆電話で集合するなんて」

幸二「だとしてもよ。どうすりゃいいんだ?」

葉月「家に帰ってみればいいじゃん」

幸二「さっき帰ろうとしたら先輩達にぶつかったんだよ」

葉月「あー用事ってそういう」

幸二「だから今夜は帰ろうと思ったんだが…」

葉月「だが?」

 


幸二「いざ帰るとなると…勇気が…」

葉月「勇気?」

幸二「まぁその、元々あまり家に帰らない少年だったのと…高校生の俺を見てどう言うか…」

葉月「なるほどねなら私たちも一緒に行ってあげよっか」

幸二「…!」

葉月「うまーく見守ってあげる」

幸二「余計なことする予感しかねぇ」

榊「私も行こう。たまには室内で夜を明かしたい」

幸二「サバイバルに慣れている とは」

 


そんなこんなで、俺は2人を連れ天堂邸へとやってきた。

 


玄関にて。

葉月「おっきいいお家!小町の家といい勝負!」

榊「寝心地も良さそうだ」

幸二「電気、消えてるな」

葉月「もう0時過ぎだもんね」

欠伸を交えながら葉月は言う。

 


幸二「俺の親…特に親父は勉強熱心で、夜の3時くらいまでは書斎の電気をつけているはずなんだが…」

葉月「書斎ってどの部屋?」

幸二「右奥の部屋だ」

葉月「消えてる…おつかれなんじゃない?」

幸二「かもな。ま、行くか」

 


家の中に入る。

 


葉月「凄い!顔認証でロックが開くんだ!」

幸二「まぁな」

 


家の中は真っ暗だ。

 


幸二「人気ねぇな」

榊「寝ているのではないか?」

幸二「どうだかな」

葉月「コージ君って、何人家族なの?」

幸二「両親と兄がいるが…」

葉月「あ、コージ君のお兄さんって…」

榊「?」

幸二「あぁ…少し前に、死んだ」

葉月「…でも、この世界だったら」

幸二「どうだろうな。どこまで呼応してるのか分からん」

葉月「たしかに」

 


幸二「両親の部屋を見たんだが、どっちもいない」

榊「留守ということか」

葉月「なんでだろう」

幸二「さぁ。出張かなんかか?」

 


そしてリビングへと向かう。

 


葉月「わーひろーい!電気つけていい?」

幸二「構わない」

 


パチッ

 


葉月「おぉ!もっと広い!」

榊「素晴らしい洋式の部屋だな。実にエレガント」

幸二「まぁ、一流の建築家にやってもらったからな」

葉月「これが家族の写真?」

幸二「あ、あぁ」

 


撮った覚えのない4人での家族写真が飾られていた。まぁ、記憶が無いのは当然なのだが。

 


榊「?これはなんだ、幸二」

幸二「ん?手紙?」

 


榊がテーブルの上で見つけたそれは、置き手紙だった。

 


幸二「…!これは」

 


”幸二へ

 


2日連続外泊なんて、お前も遊び人になったものだな。

 


スマホくらい持っていけっての。

 


もし明日連絡がなかったら警察に捜索願出すからな。

 


俺は部活の合宿で泊まりこみだから、明日には帰る。

 


よろしく

 


恵太”

 

 

 

これは間違いない…兄貴からの手紙…!

 


幸二「兄貴…生きてるんだな」

葉月「…」

榊「…」

 


葉月「スマホ、忘れてるって」

幸二「あぁ、さっき俺の部屋を覗いた時に見つけた、こいつだな」

 


俺は手に入れたスマホから、兄のラインを開き、無事を知らせるラインを送る。

 


そして、見覚えのない人間だらけのラインの通知から、少し見覚えのある名前を見つける。

 


”山田 光

 


お前、学校サボりすぎ

 


おーい

 


生きてるか?

 


明日は学校来いよ”

 


葉月「誰これ」

幸二「最初に友達面して近づいてきた奴だよ。ま、こっちの世界の俺の友達なんじゃねぇか?」

葉月「私で言うハナちゃんね」

幸二「こっちの世界の俺は”翠春高校”ってとこに通ってるらしいな」

葉月「家族写真見たけど、お兄さんも翠春高校に通ってるみたいね。制服同じだし」

幸二「ちょっくらいってみるか…どれだけ話の辻褄合わせ出来るかゲームしてみてぇし」

葉月「ゲーム感覚で草」

幸二「てか翠春高校ってどこやねん」

葉月「ggrks」

幸二「すみません」

葉月「それか、私が連れて行ってあげよっか?」

幸二「は?」

 


葉月「実は私も、翠春高校の生徒なのです!!」

 


幸二「え、そうなの、それ早く言って?」

葉月「まぁ私もさっき知ったから許してペロ」

幸二「あざとい」

葉月「しかもね、翠春高校の場所を調べた結果、少〜し気になる事が浮かんできてね」

榊「気になることってのは?」

 


葉月「なんとその場所…!」

 


────

 


そして辿り着いた翠春高校。

 


※榊は留守番。

 


幸二「なるほどな…」

葉月「そう、ここは」

 


幸二「魔法協会の跡地…!!!」

 


春高校。俺達の世界では、ここにあるのは魔法協会本部。善能寺柳子理事長によって統治される魔法専門機関。

 


だが、魔法のないこの世界では、ここはただの学校になっていた。

 


幸二「よし、行くか」

葉月「そうだね」

 


???「おーーい!幸二ー!!!!」

???「葉月ちゃーーーーん!」

 


そこに現れたのは。

 


光「幸二!今までどこいってたんだよ!」

花「久しぶり!葉月ちゃん!」

 


幸二「お、おぅ…ヒカルぅ」

葉月「や、やぁ…ハナ…ちゃん」

 


圧倒的ぎこちなさ!!

 


光「早く行かないと、授業遅れるぞ…!」

幸二「お、おう!」

花「ほら葉月ちゃんも行こ行こ!D組の教室遠いんだから!」

葉月「あ、うん!」

 


────

 


俺達は、いや少なくとも俺は、学校の授業をそつなくこなした。

俺を友達だと言う奴らは何人かいたが、皆俺のサイキックギャグ(?)に期待しているようだった。俺が冷めた態度をいつも通りに取っていると、少しがっかりしていたので、少し笑いを取りに行こうとすると、それが面白くないのか更にがっかりされた。このくそ。

 


光「なぁ幸二、少し時間あるか?」

幸二「時間?少しだけ…なら」

光「そしたらさ、いつものとこで、ワイン飲もうぜ!」

幸二「は?ワインって俺たちまだ高校」

光「ちがうちがう!いつも言ってるだろ?ウェルチだよ!自販で買って、それをワインって言いながら、大人の嗜みがどーたらこーたら言って飲んでるの、お前じゃないか」

幸二「…そうだったっけな」

 


ダサすぎるぅ。

 


そして屋上にそのワインとやらを持って登った。

 


光「いやー、美味い」

幸二「そうだな」

 


大人になると分かる。ソフトドリンクの完成度の高さを。

 


光「一つ聞いていいか?」

幸二「あ?」

光「お前、なんか変わったよな」

幸二「は?俺が?」

光「あぁ。なんかここ数日、変だろ。まるで誰かに成り代わっちまったみたいで」

幸二「…」

光「俺、お前の友達だろ?」

幸二「…!」

光「何かあったのか?お兄さんと喧嘩でもしたか?バイトが上手くいかないとか?」

幸二「…違う。そんなんじゃない」

 


光「じゃあなんだ?俺に言えない事なのか?」

幸二「まぁ(言ったって無駄だしな)」

光「言ったって無駄だ。そんな風に思ってるのか?お前は」

幸二「…!」

 


光「別に無理に聞こうとは思わないけど、そういう諦めが理由で秘密にしてるなら、傷つくな」

幸二「…」

 


光「俺達さ、最初お互いに友達がいなくて、周りがどんどん仲良くなっていくなかで、余り物同士で、体育のペア組んだのが始まりだったよな」

幸二「…」

ヒカル「お前が体操着忘れて、鬼教師に借りに行くのが怖いって言って、一緒に借りに行って、俺まで怒られて…」

幸二「(そんなことがあったのか)…わるかったな」

光「そんなこと、俺にはどうだっていいくらい、友達が出来たことが嬉しかったんだよ」

幸二「…」

 


光「お前はちゃらんぽらんに見えるけど、貰った恩は忘れない奴だ。だから俺が大事な母親の形見を川に落とした時、日が暮れるまで探してくれた」

幸二「…!」

 


光「言えないことがあってもいい。でも、俺の事を少しでも…頼って欲しいんだよ!」

幸二「…」

 


こいつには言ってもいいのだろうか。

 


そうだよな。俺がこうしてる間にも、元の世界には別の俺がいて、そいつはいつかここに戻る。その時に、俺がしでかしたことがきっかけで、もう1人の俺が存在しにくくなったらそれは、俺の責任だ。

絶対に交わることの無い俺だとしても、そいつを俺は、おざなりにはできない。

 


幸二「おい…ひ、ヒカル」

光「ん?」

 


幸二「…話していいか?」

光「あぁ」

 


幸二「単刀直入に言う。俺はこの世界の人間ではない」

光「…!」

幸二「俺は平行世界の住人で、恐らくお前らが今まで見てきた天堂幸二とは別人だ。俺は魔法というものが存在する平行世界での天堂幸二だ。だからお前らの事は何も知らない。ここに来たのも初めてなんだ」

光「…」

幸二「お前らの天堂幸二は必ず返す。俺が元の世界に戻ることで、幸二は必ず帰ってくる。だから、俺が自分の世界に帰れるように手伝って欲しい」

光「…そ、そうなのか」

 


幸二「て言っても、信じないよな。こっちの俺はそんなぶっ飛んだジョークばっかり言っていたのだろう?」

 


光「信じるよ」

幸二「…!」

 


光「俺は、何をすればいい」

幸二「それに関しては、正直できることは無い」

光「…」

 


幸二「しばらくここには来ないかも知れないが、見守っていてくれ。そしてここに戻ってくる天堂幸二を助けてやってくれ」

光「…」

 


すると、二人きりの屋上に、とある男が現れる。

 


???「お!幸二!あっは!お前ここにいたのか!」

幸二「…!兄さん!」

 


そこに現れたのはサッカーのユニフォームに身を包んだ俺の兄貴。天堂恵太だった。

恵太は俺と共に魔裁組の一員だったが、俺が引き起こしたとある出来事を機に離隊。後に再会するも、俺を庇って、命を落とした。

 


光「俺はお邪魔なようだからここで失礼するね」

幸二「お、ちょ、ヒカル!」

光は兄貴に一礼して、去っていった。

 


恵太「友達か?見ない顔だな」

幸二「…」

 


兄貴は柵によりかかって立っている。

 


恵太「何だよ。ジュース買ってきたのに、もう持ってんのかよ。ま、家帰って飲めばいっか」

幸二「…」

恵太「おい何黙ってんだ?もしかして、久々にあって怒られるとか思ってたか?」

幸二「…」

恵太「大丈夫、お父さんとお母さんには言わないから」

幸二「…」

 


恵太「って!なんでそんなに話さないんだ?!なんか喋れよ!おい弟!」

幸二「…」

 


何故だろう。言葉は詰まってしまうのに、代わりに溢れんばかりの涙が頬を濡らした。

 


恵太「…!おいお前、泣いてんのか?」

幸二「兄さん…」

恵太「は?」

幸二「兄さん…!!!」

 


不思議と俺は、兄の胸に飛び込んでいた。

 


恵太「おいよせ幸二!泥がつくぞ!」

幸二「兄さん…!兄さん!」

恵太「なんかあったのか?帰らない間に」

 


声にならない嗚咽が、屋上に響く。

 


恵太「とりあえず、一旦落ち着けって。お前がただ事では無いことは理解した。大丈夫、何とかなるから、話してみろ」

幸二「…」

 


首を横に振った。

 


恵太「?」

幸二「俺は…兄さんに、謝らないといけないことがあるんだ」

恵太「俺に?なにを?」

幸二「…」

恵太「あ!お前もしかして、昨日届いたナナミンのフィギュア壊したのか?!」

幸二「…ちがう」

恵太「じゃなんだよ!」

 


幸二「兄さんの…大事な思い出を…壊した…」

 


恵太「思い出…?」

 


幸二「俺は兄さんの知ってる俺じゃない」

 


恵太「は?またトンチンカンなことを」

 


幸二「俺は、平行世界の天堂幸二なんだ」

恵太「平行世界?」

幸二「俺のいる世界では、魔法ってものがあって、俺はそこで魔法使いとして、魔導書を集めて、魔者を倒してる」

恵太「なんだ?ゲームの話か?」

幸二「信じてくれなくていい。でも本当なんだ。俺は数日前、この世界にやってきた、別の世界の天堂幸二。歳は20歳で、職業は魔法使い」

恵太「…!」

 


幸二「天堂家は代々魔法使いの家系で、俺も兄さんも魔法使いだった」

恵太「だった?」

幸二「俺の世界の兄さんは…」

恵太「?」

幸二「俺が小さい時にやった罪を被って、勘当されるんだ。そして一人でその人生の殆どを過ごすことになる」

恵太「…!」

幸二「大人になって再会した時には、兄さんは…俺を…魔者から守って…」

恵太「…」

 


幸二「俺は…兄さんの思い出も大切な場所も…人生も…全部奪ってしまったんだ…!」

恵太「…そうなのか」

幸二「そして死に際、俺はそれを伝えることが出来なかった」

恵太「…」

 


幸二「ずっと後悔してた。死のうとも思った!全て奪った俺が、どうして生きているんだって!でも、死ぬことは出来なかった」

恵太「…」

幸二「俺は今も魔法使いとして、戦っている。兄さんが残してくれた力を使って」

恵太「…」

 


幸二「正直、今の兄さんに言っても、何の意味もないよね」

恵太「…」

 


ギィィン!!!

 


恵太「うわぁぁぁぁ!!!!」

幸二「…!兄さん…!」

恵太「幸二…!!!幸二…!!」

幸二「兄さん!!!」

 


兄貴は少し頭を抑えたあと、落ち着きを取り戻した。

 


恵太「…」

幸二「兄さん…大丈夫?」

恵太「…あぁ」

 


兄貴は、俺を抱きしめた。

 


幸二「…!」

恵太「いいんだ。お前が生きていてくれれば、それで」

幸二「…!兄さん!」

恵太「お前を守って死んだ、俺はどんな顔してた?」

 


笑っていた。兄貴は笑顔で、晴れやかに…旅立っていった。

 


恵太「お前が生きてる。それが何よりの望みなんだ。自分の人生に後悔なんて、俺はしてない」

 


幸二「…!兄さん!兄さん!!!」

恵太「大丈夫、俺はずっと、お前を見守ってるから」

幸二「兄さん…?記憶が…?!」

 


兄は優しく微笑んだ。

正直、帰るためのキーワードを聞き出すことすら忘れてしまうくらい、俺の感情は決壊していた。

 


幸二「信じてくれるのか…?俺の言うことを」

恵太「信じるも何も、弟の言うことを信じられない兄なんて、どこにいるんだ」

幸二「…兄さん」

恵太「うん」

 


幸二「俺…頑張るから」

恵太「うん」

幸二「俺、頑張る。誰よりも強い魔法使いになって、必ず魔法を封印する。そして、誰も魔法によって苦しめられることの無い世界を実現する!俺には強い仲間が沢山いるから!一人じゃないから!だから大丈夫だよ!お兄さんが出来なかった分まで、絶対に俺が引き継ぐ!だからどうか兄さんも…その…」

恵太「長生きするさ。こっちの世界ではな」

幸二「…!うん!」

 


葉月「…コージくん」

花「…」

葉月「盗み聞きがバレる前に帰ろっか、もうすぐ門閉まるし」

花「う、うん…」

 


────

 


恵太「帰るか」

幸二「…あぁ」

 


俺たちは、2人で家に帰った。

 

 

 

ガチャ

 


恵太「ふぅ。疲れた疲れたーっと」

 

 

 

榊「あ、お邪魔してマース」

 


恵太「誰やねん!!!!!!」

 


────

 


次の日の朝

 


恵太「着替えたんだな」

幸二「あぁ。制服はもう、無理があると思ってな」

恵太「見た目は高校生だけどな」

幸二「中身はもう兄さんより年上だぜ」

恵太「あっはっは。そうだな」

幸二「それじゃあ。もう1人の天堂幸二をよろしく」

恵太「あぁ」

 


────

 


俺は、ここには帰らないことにした。

 


ここにいると俺は兄に…家族に甘えてしまう。俺が背負った業は、重い。

 


甘えていてはダメなんだ。

 


榊「本当に良いのだな」

幸二「あぁ」

榊「もう一度聞く。本当に、良いのだな」

幸二「あ、あぁ」

 


兄貴の方は振り向かない。俺は前だけ向いて、家を後にする。

 


恵太「幸二!」

幸二「…!」

 


振り返ってはダメだ。

 


恵太「長生きしてくれよ」

 


幸二「…!」

 


俺は溢れる涙を堪えながら、振り返らず、足を進めた。

 


兄さん、ありがとう。

 


元の世界に戻っても、頑張れる気がするよ。

 


だから見ていてくれ。

 


榊「本当に本当に本当に良いのだな!」

幸二「お前寝心地良かっただけだろ!!!」

榊「低反発枕神すぎたぁ!!!!」

 

SOREMA外伝 The Parallel ③へ続く。

 

SOREMA外伝 The Parallel ①

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SOREMA外伝 The Parallel 1

 

 

 

スカイツリー / 魔裁組第2支部

 


俺は天堂幸二。魔法使いをやっている。

 


外は生憎の雷雨。今日は休業だ。こんな荒れ模様なのにも関わらず、町は平和。変わったものだよな。

 


まぁでも、ロスト・フロンティアでの激闘の傷を癒すには都合がいい。

 


コーヒーを飲む。

 


支部には俺しか居ない。

皆、悪天候の日になるとこぞって買い物やらレジャーに出かけたがる。もうすぐ誰か帰ってくる頃だろうか。

 

 

 

ゴロゴロピッカーーーーーーーン!!!!!

 

 

 

その時、俺の鼓膜に大きな落雷の音が響いた。そして、支部の電気が全てストップしてしまった!

 


支部から見える景色はスカイツリーから見える景色と連動している。だが、魔法陣を介して繋がっているだけで、ここに落雷が落ちるのはおかしい。なにがあったのだろうか。

 


真っ暗闇で何も見えない。

 


幸二「おい、誰かいるかー!?!」

 


返事はない。こんな時に俺だけか。支部が停電するのは恐らく初めてだ。ブレーカーの位置だってわからない。誰かに電話して聞くか?

 


スマホを覗き込むと、左上には圏外の文字が。

 


幸二「ちっ…!マジかよ」

 


歩き回るにも、障害物1つ見えない故、1歩進むことすら困難だ。

 


幸二「…」

 


なんか…眠くなってきた…ような…

 


バタン

 


俺はその場で気を失ってしまった。

 


────

 


変な夢を見た。

 


それは、魔法が封印される夢。いや、魔法が無くなった世界の夢だ。

 


俺は仲間達と遊び、皆が笑って時を過ごしている。

 


俺たち魔裁組が目指す、魔法なき世界の夢だ。

 


だが何か違和感がある。何か大切なものを忘れてしまっているような…そんな夢だった。

 


────

 


目が覚めるとそこは、都心の公園だった。天気は快晴。休日のお昼時を過ごす人で溢れている。

 


幸二「…?!ここは?!」

 


俺はどうやら、ベンチの上で寝てしまっていたらしい。目の前を通り過ぎていくカップルや老人の目が痛い。

 


男性「あいつ…ベンチで寝るってやばくない?」

女性「もしかして、ホームレス?!w」

男性「高校生で?やばw」

 


ホームレスじゃねぇよ。しかも高校生でもねぇ。

ってか、ここはどこだ?なぜ俺はここに居る?

 


俺は体を起き上がらせ、辺りを見る。俺は確か、支部にいなかったか?しかも天気は落雷。時間も遅かったはず。公園の時計を見ると、時刻は13時過ぎ。俺はここで夜を明かしたのか?

 


立って自分の服装を見ると、昨日着ていたシャツではなくなっていた。どころか、”今着ている筈のない服装”を、俺は着ていた。

 


幸二「これって…高校の制服…?!」

 


ブレザーを脱ぎ、それを確認した。高級感のある紺地のブレザーに、金色の校章らしきボタンがついている。

 


幸二「これ、どこの高校の制服だ…?どういう事だ?」

 


この制服に見覚えはない。俺が高校生時代に着ていたものとも違う。どういうことだ、何が起きている?スマホで今日の日付を…

 


と、ズボンのポケットを探すも、スマートフォンは無くなっていた。

 


幸二「スマホがない?!」

 


するとそこへ、俺の名前を呼ぶ声がする。

 


???「おーい!幸二!!」

幸二「ん?誰だ?」

 


そこへ現れたのは、見覚えのない、長身で感じの良さそうな男だった。

 


???「はぁ…はぁ…幸二!どこ行ってたんだよ!授業終わってなかっただろ?」

幸二「いやごめんお前誰?」

???「え?何言ってんだよ幸二!寝すぎておかしくなっちゃったのか?」

幸二「は?マジで誰なんだよ!」

光「え…光だけど…もしかして、記憶喪失的な?」

 


そいつは山田光と名乗った。

 


幸二「ヒカル…?聞いたことない名前だが」

光「ははっ。冗談きついなぁ幸二は!ま、いつもの事か!お前のジョークは相変わらずぶっ飛んでんなぁ」

幸二「ジョーク?俺が?」

光「幸二…本当に、どうしたの?」

 


おいおいおい。意味わからねぇよ。こいつの純新無垢な顔を見ると、マジで俺がイカれちまったみたいに思えてくるじゃねえか。

 


幸二「俺はお前の事まっったく知らねぇし!ジョークも言わねぇ!ついでに、高校生でもねぇ!」

光「…?ジョーク…だよな?」

幸二「ちげぇ!俺は魔法協会直属部隊魔裁組第2支部実働班の天堂幸二!蒼魔導書赫魔導書第三十六巻操天の書の継承履術者及び、青のエレメントの使用者だ!歳は20歳!」

光「ぷぷっ…!はっはっはっ!それ、厨二病ってやつだよな!あっはっはっは!幸二は面白いよ本当に!こんな奴他にいないよ!」

幸二「はぁ?!全部本当だわ!!」

光「あっはっはっは」

 


光は笑うだけで何も聞いてくれなかった。マジで俺が変なこと言ってるみてぇじゃねぇか。それなら…、

 


幸二「お前が疑うなら見せてやる…!蒼き青のエレメントを…!天を司りし俺の魔法をなぁ…!」

光「おっ!見せてみろよ!」

幸二「蒼き青のエレメント…!豪砂蒼葬ォ…!!」

 

 

 

シーーーーーーン

 

 

 

は?何も起きねぇ。※対魔法勢力以外で魔法を使うのは御法度です★

 

 

 

光「おぉ!見える!見えるぞ!あっはっはっは!」

 


いや、俺には何も見えないんだが?

 


幸二「ちっ…!蒼龍鳴動ォ!!!!!」

 


シーーーーーン

 


光「流石プロ厨二病!技名も痛かっこいいなぁ」

 


幸二「お前、なにか見えてる?」

光「あぁ!龍だろ?なんかこう、でっっかい感じで?」

幸二「いや本当に見えるか聞いてんだよ」

光「え、あ、そういうノリ?もうお前さぁ!何聞いてんだよ〜」

 


どういうことだ。

 


俺、魔法が使えなくなってる。

 


幸二「おいお前、スマホあるか?」

光「ん?これか?」

幸二「貸せ!」

光「おぉ」

 


日付は…

 


ん?!変わってない?!

 


どういうことだ?

 


俺は確か昨日、支部で夜を明かして…何故かここに…?

 


幸二「おいヒカル!俺は何者だ!」

光「え、そりゃ、神とか?」

幸二「はぁ?!」

光「え、いや、いつも言ってるだろ?コージイズゴッドだっけ?」

幸二「はぁ〜〜?!」

光「ちがった?」

幸二「そうじゃねぇ!!俺は!!何をして!!どんな人間で!!お前とどういう関係だ!!」

 


光「いやそりゃ、俺と同じ翠春(すばる)高校1年A組の天堂幸二だろ?俺とお前はクラスメイトで、後は…」

幸二「……!!も、もういい!!」

 


俺の足は即座に外へ向いた。

体があの男から離れたがっていたのだ。

 


光「お、おい幸二!カラオケいかないのかよぉ!」

 


光の声がどんどん遠くなっていく。同時に、俺の意識も遠くなっていく様だ。

 


何もかも、意味がわからない。また変な夢でも見ているのだろうか?

 


とにかく、支部に戻ろう。

 


────

 


スカイツリー / 天望回廊》

 


幸二「…!!何…だと…?!」

 


支部に入るための魔法陣が、いつもある場所から消えている。

 


幸二「おいマジかよ。支部はどこだ…!魔法は!どうなっちまったんだぁ?!」

店員「お客様…大声はちょっと…」

幸二「あ…す、すみません」

 


全くどうなってやがる。1周してみたり、しばらく居座ってみたりしたが、魔法陣が開く気配すらない。というか、マヂカラの微かな匂いですら、消えてしまっている。

 


1度トイレへ向かい、その後もう一度、魔法陣があったはずの場所へ向かう。すると、

 


三太郎「…」

 


外の景色を眺める三太郎が立っていた。

 


幸二「おぉ…!三太郎!!」

三太郎「…!」

 


三太郎は、俺の呼びかけに振り向いた。しかし何故か、悲しそうな顔をしていた。泣いていたのか?

 


幸二「おいお前…どうした?目、腫れてるぞ?泣いてたのか?」

三太郎「え…」

幸二「ま、そうだよな。俺も困ってたんだ、ずっと魔法陣が出てこねぇからよ」

 


三太郎「あの、誰ですか?」

 


幸二「は?!」

三太郎「どうして僕の名前を?」

幸二「どうしてって…お前と俺は…」

 


友達…?なのか?戦友?相棒?いやいやそんな関係では無い。ライバル…?それも違うな

 


幸二「とにかく、早く魔法陣探すぞ!」

三太郎「魔法陣?何の話ですか?」

幸二「とぼけるな!早くしねぇと、支部の仲間が心配するぞ!」

三太郎「しぶ?」

幸二「そうだよ!一善とかジャスティンさん達が待ってるだろ!俺今スマホなくしたんだよ!」

三太郎「いちぜん?じゃすてぃん?ごめんなさい、誰でしょうか?」

幸二「はぁ?!おい三太郎!どうしちまったんだ?!」

 


三太郎の肩を強く揺さぶっても、三太郎の調子は変わらない。

 


何が起きている?

 


三太郎「うぅ…」

三太郎の顔色が悪くなる。

 


幸二「おい三太郎、大丈夫か?」

三太郎「もうやめてください!」

三太郎は俺の手を振り払った。

 


三太郎「分かりました、俺の名前、なんで知ってるか」

幸二「は?なんでってそりゃ」

三太郎「見てたんですよね?さっきのやり取り」

幸二「は?」

 


~~~

 


数分前

 


三太郎「せ…」

ひえり「?」

三太郎「千巣ひえりさん!!!」

ひえり「うわっ。急にどうしたの?」

三太郎「ぼ、僕と、付き合ってください!!!」

 


ひえり「…ごめんなさい。好きな人がいるの」

 


三太郎「…!!!」

ひえり「じゃあね。今日は楽しかった。また友達…いや、先輩として、よろしくお願いします」

 


~~~

 


三太郎「僕、好きだった後輩に振られてしまったんです」

幸二「…!」

三太郎「タメ語で話してくれてたのに…最後別れ際に敬語に戻ってて…これって完全に脈ナシですよね…!!そうですよね!!」

幸二「…!おいおい落ち着け!大の大人が泣きわめくんじゃねぇよ!」

三太郎「いや僕まだ、高校生なんですけど」

幸二「はぁ?お前も高校生か?!」

 


時空が歪んでいるのか?いや、これは夢だ、絶対そうだ。

 


幸二「ま、まぁ今日の所はその…美味いもんでも食って忘れな。きっとお前にはいい女性が現れるからよ」

三太郎「…!!」

 


ここにいても埒があかねぇ。他の手がかりを探すしか。俺は次の場所へ急いだ。

 


三太郎「あ、あの…!!」

幸二「あ?」

三太郎「名前…教えて貰っても…?」

 


幸二「俺は、通りすがりの魔法使いさ」

 


三太郎「…?」

 


────

 


《東京タワー》

 


どうせそうだろうとは思ったが、やはり第1支部の扉も閉ざされている。セキュリティも居ねぇ。魔裁組…いや、魔法は本当に無くなっちまったのか?

 


すると、見覚えのある顔が、その場に立っていた。

 


幸二「あ、あれは…?」

 


それは、魔裁組第1支部実働班の虎走葉月だ。

 


葉月「…」

 


幸二「お、おい!」

 


いや、待てよ?さっきの感じだと、また知らないと言われて追い払われるのがオチか?!

 


葉月「…!!」

 


虎走は振り向いた。

 


幸二「あ、あの…」

葉月「あ!!アンタは!!!」

幸二「…!!俺が分かるのか?!」

 


葉月「コーイチ君!!!」

幸二「コージだ!!!」

 


虎走葉月。こいつは第1支部お転婆娘。蒼魔導書三十四章 爆裂の書 の履術者である。

 


葉月「コージ君!アンタは、魔法使える?!」

幸二「お、お前、魔法の事が?!」

葉月「私、魔法使えなくなっちゃった!!」

幸二「!!実は俺もなんだ!!」

 


葉月「第1支部にも入れなくなってて…」

幸二「第2支部も無くなってた。しかも三太郎…第2支部の奴にも会ったんだ。だが様子が変だった」

葉月「変?」

幸二「あぁ。あいつ、魔法の事全く知らねぇような素振りだった。しかもなんかキャラも変だったし」

葉月「そんな…」

幸二「ここに来るまで、魔者は見たか?」

葉月「ううん。一匹も見てないし、マヂカラ反応もまるでない」

幸二「やっぱりおかしいな」

葉月「おかしいことは他にも…」

幸二「あぁ。お前、今何歳だ?」

葉月「私?20歳だけど」

幸二「だよな。どうりでその服…」

 


葉月は真っ白のセーラー服に身を包んでいた。

 


幸二「似合ってn」

 


ゲ      ン      コ      ツ     !

 


幸二「…魔法がなくても…その爆発力は…健在だな…」シュゥゥゥ…

葉月「次言ったらマジでぶっ飛ばすから」

幸二「シュミマシェン」

 


葉月「昨日大雨だったでしょ?私、支部にいたの」

幸二「あぁ、俺もだ」

葉月「そしたら停電が起きて、気づいたら真っ暗闇の中で寝ちゃって…」

幸二「あぁ、俺も俺も!」

葉月「それで目が覚めたら…ハナ?とかいう知らない子が私に話しかけてきて…」

幸二「あぁ!!俺も俺も!!!」

葉月「ムッ」

幸二「え?」

葉月「コージ君って、そういうノリの子じゃなかったよね?なんかキモい」

幸二「グサッ!!!」

葉月「不気味」

幸二「グサッグサッ!!!キモいよりグサッ!!」

 


葉月「どうやら、私たちの周りで何か変なことが起きてる見たいね。これって魔者の仕業?」

幸二「分からない。そうだ、お前の友達はどうなんだ?第1支部のメンバーは」

葉月「分からない。これから皆のいる所に行ってみようと思ってた所」

幸二「ん?心当たりがあるのか?」

葉月「なんとなくね!」

幸二「俺も同行していいか?」

葉月「ジー」

幸二「ん?なんだよ」

 


葉月「新手のナンパ?」

幸二「チゲェヨ!」

 


葉月「ま、いいや。アンタ、何も無いよりは役に立ちそうだし」

幸二「ボクケッコウツヨイノヨ…?」

葉月「魔法使えないんだから意味無いでしょうがァ!!」ポカッ!!

幸二「いってー!!!情緒不安定!!!」

葉月「ま、いいや、じゃ、よろしくね」

幸二「お、おう」

 


────

 


次の日。

 


俺は虎走と共に九頭龍坂小町の屋敷に向かった。

 


ピンポーン

 


葉月「小町ー?!いるの?!」

 


モニターフォンから男の声が聞こえる。

 


男性「どちらさまでしょうか?」

葉月「小町さんの友人なんですけど!」

男性「ただ今、お嬢様を玄関に向かわせますので、そちらでお待ちください」

葉月「あ、はい…」

 


幸二「豪邸だな。いつもこんな感じなのか?」

葉月「いや、いつもなら小町が呼び入れてくれるんだけど…」

幸二「何かがおかしいな」

 


ガチャ

 


すると、臙脂色の和服に身を包んだ九頭龍坂がやってきた。

 


小町「あら…えーっと」

葉月「小町…」

 


小町「ごめんなさい…どちら様でしょうか?」

 


葉月「…!(やっぱり忘れてる…!)」

幸二「俺たちは…」

葉月「小町!忘れちゃったの?私、葉月!虎走葉月!」

小町「こばせ…はづきさん…?」

葉月「小さい頃からの仲じゃん!?一緒にキスプリのコンサートとか行ったの、忘れちゃった?!」

小町「キスプリ…?」

葉月「Kiss & Prince!私たちの推しじゃん!忘れちゃったの?!」

小町「すみません。あまりテレビを見ないもので」

葉月「一緒に戦ったことも覚えてない?」

小町「戦う…?それは?」

葉月「…!」

 


小町「将棋で、でしょうか?」

 


葉月「しょ」

幸二「将棋?」

 


どうやらこの世界の九頭龍坂は女流棋士になっているらしい。

 


小町「すみません。どの話も身に覚えがなくて、私、将棋の練習で忙しいので、この辺で」

葉月「そんな…」

幸二「てか、今日ははんなりさんが、はんなりしてないんだな」

小町「はんなり…さん?」

葉月「小町です!小町の名前は小町です!」

小町「…!」

 


葉月「でも確かに、いつもは小町、京都弁だもんね」

小町「私のことでしょうか?確かに京都に住んでいたことはありますが、幼い時に少し住んでいただけですので、京都弁は話すことが出来ませんが…人違いではないでしょうか?」

葉月「いいやちがうね!私は小町のダチだもん!伸縮の魔法使い!色んなものをビョーンってして、魔者の戦う戦巫女!はんなりな嫌味で相手への精神攻撃も忘れない、私の相棒よ!」

幸二「褒めてんのか?それ」

小町「伸縮…?魔法…?」

 


その時、九頭龍坂の顔色が悪くなる。

 


ギィィン!!

 


小町「うわぁぁぁぁぁ!!!」

葉月「…?!小町?!小町!!大丈夫?!?!」

小町「こ、来ないで…!!!」

葉月「小町!!小町ってば!!」

 


九頭龍坂はその場に倒れ込む。

 


ガチャ!

 


男性「お嬢様!どうかされましたか?」

小町「ちょっと…体調が…」

男性「明日は大切な対局。今日はゆっくり休養をとりましょう。お嬢様」

小町「そ、その方がいいみたい」

男性「ご友人の皆さん、折角のところ申し訳ないのですが、本日はお引き取り願えますかな」

葉月「…!」

幸二「…」

 


男性「ではお嬢様。私はベッドメイキングして参ります。ゆっくりとお戻りください。くれぐれも無理なさらぬように」

小町「ありがとう」

 


ガチャ

 


男性は屋敷に戻った。

 


小町「ごめんなさい…葉月さん…人違いだったみたいだけれど、大丈夫かしら」

葉月「大丈夫もなにも、小町の体調が心配だよ」

小町「優しいのね。ありがとう」

葉月「当たり前でしょ?私の相棒なんだから」

小町「ううっ…!」

葉月「大丈夫?小町!!」

 


小町「見つかるといいわね…お友達が」

葉月「ううん。小町は小町だよ」

小町「そう。じゃあ今日はこれで」

 


九頭龍坂は屋敷に戻ろうとする。その前に聞きたいことがある。

 


幸二「千巣万之助」

小町「…?」

 


幸二「伊藤蘭村松静、鬼屋敷超絵。今言った名前に聞き覚えは?」

小町「ごめんなさい…全く聞き覚えが…」

 


ギィィン!!!

 


小町「うわぁぁぁぁぁ!!!」

葉月「小町!!!!」

 


ガチャ

 


男性「お嬢様!!」

小町「はぁ…はぁ…」

男性「私におつかまり下さい。皆様、本日はお引き取り願います。ごきげんよう

 


男性は九頭龍坂を連れて屋敷に消えた。

 


ガチャ

 


葉月「…」

幸二「収穫なしだな」

葉月「…そうかな」

幸二「ん?」

 


葉月「小町、苦しんでたよね。魔法について話すと」

幸二「確かに、そうとも取れるが」

葉月「きっと小町の中のどこかで、魔法についての記憶は残ってるんだと思う」

幸二「…」

葉月「だから、思い出してもらうまで、私は小町の所に…!」

幸二「あいつを苦しませても…か?」

葉月「…!」

 


幸二「俺もよくわからねぇが、恐らく、この現代には魔法なんてものは存在しないんだろう」

葉月「…」

幸二「だから各々、魔法に干渉されないそれぞれの人生を歩んでる。三太郎だってそうだった」

葉月「…」

幸二「ならそれでいいんじゃねぇか?」

葉月「…!」

 


幸二「魔法使いの使命は、魔法を無くすことだろ?魔法が無い世界が出来上がったなら、それ即ち平和ってことじゃねぇか?」

葉月「そ、それはそうだけど」

幸二「だから俺たちは、何もするべきじゃないのかもな」

葉月「でも、友達に忘れられても…いいの?」

 


幸二「…友達…か」

葉月「?」

 


幸二「平和が一番…だろ?」

葉月「…!」

 


幸二「ま、とりあえず今日の所はここまでにして、メシでも食いに行こーぜ。腹減った」

葉月「…!さりげなく美少女を連れ回さないで!」

幸二「…自分で言うかよ」

 


────

 


そんな俺たちを陰から見下ろすひとつの影。

 


ゆるふわパーマの男「うーん。なんか、ちょっとつまらないよねぇ」

 


────

 


幸二「おい、サイゼリヤでいいよな」

葉月「は?私をそんなファミレスに連れていくつもり?!せめてもう一グレード上乗せしなさいよ!」

幸二「いや、俺たち今は高校生だし、高校生のメシ食う場所つったらサイゼだろ。むしろサイゼってその為に存在する場所なんじゃねぇの?」

葉月「中身は20歳!いい女!だからサイゼは却下!!」

幸二「…!金ねぇんだよ!」

 


道端を歩いていると、一人の男がうつ伏せに倒れていた。

 


幸二「ん?人が倒れてるぞ!」

葉月「大変!」

 


駆け寄ると、男は意識をうっすらと保っていた。

 


???「…!ゼ…」

幸二「あ?何か言ってるぞ?」

???「ゼクシーザは……どこ……だ?」

葉月「ゼクシーザ?」

幸二「ゼクシーザ…?まさか?こいつ」

葉月「この顔どこかで!!」

幸二「お前は!!!」

 


幸二・葉月「榊天慈!!!!」

 


榊「…うぅ……君たち…どうして、私の名前を…!!」

 


榊天慈。ロスト・フロンティアで俺たち魔裁組に立ち塞がった天才科学者…いや、マッドサイエンティストだ。

榊はボロボロになった体を震えながら立て直す。

 


葉月「大丈夫?」

 


虎走が榊に肩を貸す。

幸二「おいそいつ、敵だぞ、大丈夫なのか?」

榊「敵…?お前たち、まさか…?人間に化けたゼクシーザなのか…?!」

幸二「は?」

葉月「何言ってんだこいつ」

 


ポイッ

 


ボテッ!

 


虎走は榊を捨てた。虎走は榊をポイッと捨てた。

流石に可哀想。一応SOREMA第1章ラスボスを務めあげた男でも、外伝ともなると、この扱いである。

 


榊「…いててて」

 


幸二「おい榊、俺たちはお前を知っている。だが、全てを知っている訳では無い。質問に答えてもらおう」

榊「……ゼクシーザの……言いなりには……ならないぞ…!」

幸二「ゼクシーザ?お前が作った兵器じゃないのか?俺達が壊したけど」

榊「兵器…?なんの事だ…?!」

すると虎走は近くの自販機で買った水を榊に飲ませてあげた。優しい。

 


葉月「とりあえず。この世界の榊は悪い人じゃないのかも。落ち着こ」

幸二「…」

 


────

 


榊「ぷはっー!!よみがえった!!」

幸二「…」

葉月「それでさ、ゼクシーザって何?」

榊「お前たち、ゼクシーザを知らないのか?それでよくこの世界で生きていられるな!」

幸二「いや俺たち、来たばっかりなんだが…」

榊「まぁ変わった子供たちもいるものだ。教えてあげよう。ゼクシーザとは、この地球に棲息する知的外来生物の総称。巨大なものだと100mを超える個体も存在する」

葉月「でっか」

榊「ゼクシーザはあらゆる街を破壊しては消え、また他の街を破壊しては消える。厄介な生物なのだ」

幸二「ほう」

榊「そして俺は…!そのゼクシーザからこの国を守る使命を請け負った男…!榊天慈!!」

 


葉月「ふーん(はなほじ)」

幸二「もう少し興味もてよ!」

 


榊「見たところこの辺りはあまりゼクシーザの進軍が見られないようだが、長らく気を失っていてここがどこだか分からない。この場所はどこだ?」

幸二「東京ですけど」

 


榊「と、」

葉月「と?」

 


榊「東京?!?!?!」

 


幸二「どうかしたか?おっさん」

榊「おっさんでは無い!榊天慈だ!」

葉月「で、東京がどうかした?」

 


榊「東京は前年、ゼクシーザ軍の大量破壊兵器投入によりその全土の8割を失ったはず…!」

 


幸二「は?」

葉月「どゆこと?」

榊「今日本では大阪を首都としており、関東圏では全土総合疎開が開始されている…はずだが…?」

 


幸二「そんなもんねぇよ」

榊「なんだってー?!?!?!?!」

 


葉月「おじさんは何者なの?」

榊「おじさんではない榊天慈だ!2回目!」

 


榊は咳払いをして話を続ける。

 


榊「私は、別星雲から現れた、虚空の戦士 ヌルと融合し、ヌルトラマンとなる使命を持った適合者の内の一人。今日も私は、荒廃した東京にて、ゼクシーザ軍の怪獣と戦を交えていた…はずだった」

幸二「なんだそれ…特撮の世界観じゃねえか…!」

葉月「それで?」

 


榊「だが怪獣との交戦中、突如謎の方面から降り注いだ落雷によって、視界を奪われてしまった。そしてそこから私は昏睡状態となったのだ」

 


俺たちと同じだ…!

 


榊「戦友、佐久間の呼ぶ声も虚しく、私は意識を失い、気がつくと、ここで倒れていたということだ…」

幸二「なるほどな…葉月…!」

葉月「これって…!って」

幸二「ん?」

葉月「さりげなく名前で呼ぶな!!」

幸二「いいだろうが!!セリフの中だと虎走だけど、お前のセリフの前には葉月って付けるから紛らわしいんだよ!」

葉月「メタ発言すな!」

榊「(何の話ですかね)」

 


幸二「とにかくこれは、俺たちが経験したものと同じだ…!」

葉月「サカキン。私達も同じように、別の場所から落雷によって飛ばされて来たの…!」

榊「…そうなのか!」

葉月「私達の歴史では、魔者っていう存在が街で暴れてて、私たちは魔法を使ってそれらを治めてたの」

 


榊「なにそれ!!ジャンプの世界観じゃん!やっば!!マジ?!ぶっ飛んでて草ー!」

葉月「おめぇの話もさほど変わらんわ」

 


榊「魔法か…それは大変だな」

幸二「ちなみにお前のせいでさらに大変になりました」

榊「マジ?なんかごめん」

幸二「もういい。とにかく」

 


榊「とにかく!何とか私を元の世界に戻してくれないか!!皆が私の…ヌルトラマンソラの事を待っているんだ!!」

幸二「…もしかして」

葉月「…?」

 


幸二「俺達、平行世界から飛ばされてきてる…?」

榊「平行世界?」

 


幸二「あぁ。榊がいたゼクシーザがいる世界。俺たちが居た魔法のある世界、そしてここ。少なくとも、並行する世界線が3つ存在する。そして俺たちはなんかの間違いでここに飛ばされた…違うか?」

榊「なるほど…ゼクシーザの仕業ならば、有り得ぬ話ではないな」

葉月「魔導師のせいかもしれないけど…」

幸二「もしかしたら、それらを超越した…更なる存在がいるのかもしれない…」

 


葉月「…!」

 


幸二「そしてこの仮説が正しければ…葉月。俺達の世界は別次元にまだ存在している」

葉月「ということは」

幸二「あぁ。多分そっちの世界では魔法は無くなったりしてないってことだ」

葉月「ってことは…」

幸二「恐らく…本当の仲間達が…俺達の帰りを待ってるかもしれない…」

葉月「…!」

榊「…!なら、早く帰らないと…!」

 


幸二「まて、どうやって帰るか、いや、それ以前に帰れるかどうかも分からないんだぞ…!どうすればいいんだ…?!」

葉月「確かに…」

榊「こんな時に…ヌルトラマンに変身出来れば…!」

 


するとそこに、謎の声が聞こえる。

 


ゆるふわパーマの男「そうそう、それでいい」

 


幸二「…?誰だ?」

葉月「今…声が」

榊「誰だ…?」

 


ゆるふわ「こんにちは。皆さん」

 


現れたのは見覚えのない、前髪をセンターで分けたゆるふわパーマの男だった。

 


幸二「榊、こいつに見覚えは?」

榊「ない。ゼクシーザ特有の雰囲気もない」

葉月「魔者でも無い…あなた、何者?」

 


モーニング「我が名はモーニング。君達を導く者だよ」

幸二「モーニング?ふざけた名前だな」

葉月「なんの用?」

 


モーニング「なんか、凄い刺があるね。まぁいい。焦るのは分かるよ。全く見ず知らずの世界に飛ばされて、混乱しているんだろう?」

 


幸二「…!何故それを…!」

榊「お前がなにか仕組んだのか?」

モーニング「ちっちっち。僕は君達を導く者だって言ったじゃん?味方かどうかは分からないけどね」

幸二「…!」

 


葉月「信用出来ない。なにか信じられる事、言ってよ」

榊「私たちがお前の言葉に耳を貸すに足りる情報を出せ」

 


モーニング「もしかして僕、嫌われてる?ぴえん」

幸二「なんなんだ、お前」

モーニング「ま、いいや、わかったよ。2つ教えてあげる」

葉月「…!」

 


モーニング「天堂幸二」

幸二「…!俺の名前…!」

モーニング「1つ。君の推論は正しい。ここは君達2人がいた魔法の世界とも、榊君が居た光の巨人の世界とも違う、別の世界。そして、どの世界にも君達は存在し得る」

葉月「…!」

 


モーニング「そしてもう1つ。君達は、元の世界に戻ることが出来る。君達が元の世界に戻るまで、元の世界の君は、今、君たちがいる”この”世界の君と入れ替わっている」

幸二「…!」

葉月「…!」

榊「…ということは!」

 


モーニング「そう。魔法が使えない天堂幸二や虎走葉月、光の巨人になれない榊天慈が、君達が元いた世界に現れている」

 


幸二「存在する世界線が入れ替わっている…?何故だ!」

モーニング「それは気が向いたら話すよ。じゃ、僕はこれで」

 


モーニングの周りに強風が渦巻く。

 


幸二「ま…まて!俺達はどうやったら戻れる…!!」

 


何だこの突風は…!俺たちまで飛ばされそうだ…!

 


モーニング「さぁ。自分で考えた方が面白いでしょう」

葉月「…!どういうこと?!」

榊「お前は何者なんだぁ!!」

 


モーニング「君達がここに来てからしたことを思い返してみるといい…期待しているよ」

 


ゴゴゴゴゴ…!

 


モーニングは姿を消した。

 


幸二「はぁ…はぁ…なんだったんだ…?あいつは」

葉月「でも、元の世界に戻れるって…!」

榊「なら早く元に戻る方法を探さないと…!」

幸二「でも今のままじゃ手がかりがほぼゼロだ…なんだ?俺達がここに来てからしたこと…?」

 


葉月「分かったかも」

幸二「?なんだ、言ってみろ!」

葉月「は?!教えてくださいませ女王様でしょ?」

幸二「は?こんなクソ生意気な女王様がいるかぁ?!」

葉月「女王様は生意気でなんぼじゃろうが!」

 


榊「お前ら、こんな状況で喧嘩出来るほど仲がいいんですね…」

 


幸二「で?なんなんだよ?何がわかったんだ?」

葉月「多分、この世界の皆と会うことだよ!」

幸二「…!」

 


葉月「さっき小町と会った時も、何か思い出そうとしてたような気がした!だから、色んな仲間に会って、記憶を呼び戻すの!多分、この世界の自分を通じて、並行する元の世界の自分とコミュニケーションが取れるんだわ!」

 


幸二「…合ってるかは分からないが、こっちに来てからしたことなんてそれくらいしかないからな…」

榊「残念ながら俺は、佐久間以外に元の世界の知り合いが殆どいないのだ…」

幸二「なら俺たちと来い。お前もなんやかんや顔割れてるからな。なんかヒントがあるかもだぞ」

榊「…!」

葉月「ま、求められてるかはわからないけどネン」

榊「…!どういう意味だ!私はただ、この国を守りたい一心で!」

幸二「まーまーわかったわかった。ま、とにかく、俺達は元の世界に戻らないといけねぇ。折角平和な世界で過ごせると思ったのに残念なこった」

葉月「私は早くみんなに会いたい…!」

榊「ならば力を合わせるしかないな!」

 


幸二・葉月・榊「元の世界に戻るために…!!!」

 

SOREMA外伝 The Parallel ② へ続く。

 

nbsrskniw.hatenablog.com

 

SOREMA外伝 The Parallel イントロダクション

魔法が…消えた…?!

 

魔裁組第2支部実働班の魔法使い・天堂幸二はいつものように支部で休暇を取っていた。そんな時幸二は、停電トラブルに巻き込まれ、そのまま眠りについてしまう。目が覚めると、そこは”魔法が存在しない”世界だった…!

 

見ず知らずの友人、何故か高校生になった自分、魔法を忘れ色々とおかしい仲間たち、死んだはずの人物と出会い…

 

何から何まで摩訶不思議な”パラレルワールド”で、幸二は、唯一魔法の記憶が残っていた魔裁組第1支部の魔法使い・虎走葉月、異次元からやってきたヌルトラマンを名乗る謎の男”榊天慈”と、それぞれの世界に戻る旅を始める。

 

3人は元の世界に戻ることが出来るのか…!

 

”ドタバタパラレルコメディ”が今、幕を開ける…!

 

「SOREMA外伝 The Parallel 1~5」

 

乞うご期待!!!

 

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