SOREMA -それ、魔!- 70

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SOREMA -それ、魔!- 70(終)

 

 

 

 

 

 

 


魔法の本

 

 

 

 

 

 

 

 

《夜 / とある廃校》

 


白鶯との激闘から1ヶ月が経った。

 


生き残った魔裁組のメンバーは、少しずつ回復し、殆どのメンバーが自力で移動出来る程になっていた。

 


白鶯の消失後、魔者の発現はほとんど見られず、魔法協会は、魔裁組の動けるメンバーや、サムワットを動員して、残りの魔導書を集めた。

 


白鶯が所持していた残りの魔導書は、ヒメの追憶調査によって集められたデータによって、全て集めることが出来た。

 

 

 

そして今日は、とあることをするために、魔裁組全員及び、魔法協会全員が、廃校に集められた。

 

 

 

まちまちに立てられた灯篭によって面々の顔が焔色に照らされる。

 

 

 

廃校の校庭の真ん中には、大きな薪の山がみえる。

 

 

 

 


一善は、車椅子に乗り、ヒメがそれを押している。

 


幸二「一善、足の調子はどうだ?」

一善「うん。リハビリも順調だし、あと1ヶ月もすれば歩けるようになると思う」

幸二「そうか」

一善「心配ありがとう」

 


そこへ、安西と犬飼がやってくる。

 


犬飼「おい一善、あくえりちゃん見なかったか?」

一善「ひえりちゃんなら、”例のもの”を取りに家に帰ってたと思います。流石にもうすぐ来ると思いますけど」

犬飼「そっか。早く来ないかなぁ...!!」

 

 

 

数時間前──────

 


《堆家》

 


ひえりは、赫魔導書を手に、千巣の写真の前に座る。

 


ひえり「行ってくるね。お兄ちゃん...」

 


その様子を、ルカが壁によりかかりながら、腕を組んで見ている。

 


ルカ「あくえりちゃん。そろそろ行くわよ」

ひえり「すみません。行きましょう。間に合いますかね」

ルカ「私のドライビングテクニック舐めんじゃないわよ」

ルカはバイクの鍵を手でぐるんぐるん回した。

 

 

 

安西「てか、犬飼くん。今...”一善”って...?」

犬飼「ん?何の話だ?」ハナホジ

ヒメ「これって...歴史的瞬間...?!」

一善「え?何の話?」

 


犬飼「...!本人が気づいてねぇから、今のはなしだ!またな!柴犬!」

 


犬飼はどっかに歩いていった。

 


安西「あはは。またなってなによ。まだこれからなのに」

ヒメ「ふふ」

一善「?」

安西は犬飼を追いかける。

 

 

 

 


葉月「ぎゃは!キャンプファイヤーまだかな!」

小町「キャンプファイヤーちゃうやろ。火祭りや」

三太郎「どっちでもないぞ!これから始まるのは盆踊りだ!!!」

はるか「全部違ぇわ!バッキャロー!!」

 


三太郎「え、何が始まるの?」

はるか「焼肉大会だぜ」

三太郎「ぎゃは!ウケる!」

葉月「あ!私の持ちネタパクるなし!」

小町「それ持ちネタって認識やったんや」

 


それを遠目で見る麗美達。

麗美「はぁ...しょうもない大喜利

美波「まぁ皆テンション上がってるんだよ!だって楽しみじゃん」

麗美「...」

 


麗美は俯く。

 


美波「麗美ちゃん?」

麗美「なんか...私たちだけ浮かれてていいのかな...って」

麗美は空の星を見上げる。

 


美波「それは...」

そこへ唯と廻がやってくる。

 


唯「いいんだよ!」

麗美「...唯さん」

唯「明るくいこうよ!ね!」

麗美「...でも」

唯「麗美ちゃんがもし”逆の立場”だった時、皆がくらーい顔してたらどう思う?」

麗美「...悲しいです」

唯「だよね!だから麗美ちゃんもすまいるすまいる!」

 


唯は、麗美の頬を無理やり指で引っ張る。

 


麗美「...」アセアセ

唯「麗美ちゃんって、ほんっとうに仲間思いなんだね!優しい子なんだね!えらいえらい!」

唯は、麗美の頭を撫でる。

 


唯「めぐりんもそう思うでしょ?」

廻「そうだね。今は僕達が笑顔でいられることが、一番喜んでくれることだと思うよ」

唯「だからさ、元気だして」

麗美「...はい!」

美波はそれを見て微笑む。

 

 

 

善能寺「本当に皆には感謝してる。ありがとう」

五百旗頭「それはお互い様ですよ。皆、それぞれ出来ることを全力でやった結果ですから」

善能寺「これで少しは、平和な未来に一歩近づいたかしら」

五百旗頭「そうですね。私達に出来ることは、もうやり尽くしましたね」

 


2人の所へ犬飼がやってくる。

 


犬飼「五百旗頭さん!ちょっと!こっちこっち!みんな待ってますから!」

安西「犬飼くん!今渚今大事な話し中だし...」

善能寺「いえ、大丈夫よ。五百旗頭さんも、若いんだから皆と楽しみなさい?せっかくだし」

五百旗頭「...じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 

 

百目鬼は松葉杖をつきながら一人立ち竦む。

 


粟生屋「やぁ。百目鬼君」

百目鬼「...どうも」

粟生屋「飲むかい?」

 


粟生屋は、百目鬼に飲み口の空いた缶ビールを渡す。

 


粟生屋「今開けたばっかりだから大丈夫だよ」

百目鬼「...どうも」

 


粟生屋「はい、KP」

百目鬼「...」

 


ゴクゴクゴク...

 


粟生屋「君も色々あった見たいだねぇ」

百目鬼「...まぁ」

粟生屋「ま、進んで話したい事でもないか」

百目鬼「いえ、別にそんな」

 


粟生屋「ひとつ聞いてもいいかな?」

百目鬼「何ですか?」

 


2人は、目の前で騒いでいる女子や三太郎達を見つめる。

 


粟生屋「誰がタイプ?」

 


百目鬼は勢いよくビールを吹き出した。

 


そこへ一善とヒメがやってくる。

 


一善「藤、どうしたの?ビール吹き出して」

百目鬼「いや、このおっさんが変なこと聞くからさ」

粟生屋「おっさんだと?!僕まだ26の代だよ?」

百目鬼「それをおっさんって言うんですよ。世の中では」

粟生屋「え?そんなことないよね?一善君?」

一善「...」

 


粟生屋「え?!僕、おっさん?!」ガーン!

ヒメ「あは、あははは」

 

 

 

 


はるか「そういえば、ジャスティンいねぇな」

葉月「村松ちゃんもいなくない?」

小町「どこいったんやろな。2人とも遅刻とかせぇへんタイプやのに」

三太郎「電話してみっか」

 


するとそこにジャスティンが現れた。

 


ジャ「やぁ」

三太郎「わぁお!」

はるか「おうジャスティン!何してたんだ?」

ジャ「ちょっと向こうでね」

 


ジャスティンは、来た方向を指さす。

 


葉月「...あ」

小町「村松ちゃん...?」

 


村松が何やら肩を震わせて泣いていた。

 


葉月「ちょっと、行ってくる!」

小町「うちも!」

 


はるか「どうしたんだ?珍しいな、あの子が泣くなんて」

三太郎「なにかあったのか?」

ジャ「無理もない。だってあの子は...」

はるか「あ...」

 

 

 

葉月と小町は村松の元へ駆け寄る。

 


葉月「村松ちゃん?」

村松「...グスン...ヒック...ウゥ」

 


そこには、肩を震わせて涙を流す村松の姿と、それを悲しそうな目で見つめるラキラキとトラトラの姿があった。

 


小町「そっか...」

葉月「...(実感なかったけど、この子達とは...

 

 

 

 


今日でお別れなんだ。

 

 

 

 


村松はあまり友達に恵まれるタイプではなかった。

ある日、”とある本”を読んでいると、目の前にラキラキが現れた。

 


ラキラキ「ワォン!」

幼き日の村松「...!」

 


その異能さ故、周りの人間は更に村松から離れたが、それと反比例するかの如く、ラキラキとは絆を深めていった。

 


魔裁組に入ってからも、何時でも何処でもラキラキと村松は一緒にいた。

 

 

 

 


今日、彼ら全員が集まった目的は、魔導書を全て燃やすこと。つまりそれは、魔法の消滅を意味する。

 

 

 

故に、村松とラキラキ、そして共に死線をくぐり抜けたトラトラとは、永遠の別れとなる。

 

 

 

村松「...ヒック...グスン」

ラキラキ「クゥゥン」

トラトラ「...」

 


葉月「...(どうしよう。何も言ってあげることが出来ない。友達なのに)」

小町「...」

 


そこに岩田が現れる。

 


岩田「いいのです。彼女に今必要なのは言葉じゃない。時間なのです。そっと見守ることこそ、友に出来る唯一にして最大の手伝いであります」

小町「...岩田はん」

 


葉月の目からは静かに涙が溢れる。

 


すると、村松がマスクを外し、ラキラキとトラトラを抱きしめる。

 


そして、震えた声で話し出す。

 


村松「ありがとう......!」

ラキラキとトラトラも涙を流す。

 


村松「こんな私に......ついてきてくれてありがとう......!」

 


葉月と小町もつられて大泣きする。

 


村松は、トラトラの顔に手を当てて話す。

 


村松「トラトラ...巻き込んじゃってごめんね......短い間だったけど...ありがとう...!」

トラトラ「クゥゥン...」

 


村松は、同じように、ラキラキの顔に手を当てて話す。

 


村松「ありがとう...ラキラキ。私は...ラキラキに救われた...!ラキラキがいなくなっても...私頑張るから......」

ラキラキ「クゥゥン...」

 


村松は2匹の顔を自らの頬に当てる。

 


村松「絶対に忘れない......ありがとう...!」

 


葉月「...グスン...ヒック...」

小町「...ウゥ...グスン...あかん...あかん...」

 


村松「2人もありがとう。泣いてもらえるようないい関係だったみたいだよ...私達!」

村松は笑顔をつくり、2匹をあやす。

ラキラキ「ワォーーン!」

トラトラ「ガォーーー!」

 

 

 

そして、ひえりとルカが到着する。

 

 

 

ルカ「あら、もしかして私達で最後っぽい?」

ひえり「かもですね。お待たせしちゃいました」

 

 

 

 


スタタタタタタ!!!!

 

 

 

どこからともなく男たちが現れた!

 


犬飼「待ちくたびれたぜあくえりちゃん。どうだい、今日のペアダンス、俺と踊らないかい?」イケボ

三太郎「いいや。俺はいくらでも待ったぜ?ひえりちゃんの為ならね。ところで、今日は俺とデュエットを...」イケボ

 

 

 

ブンナグッッ!!!

 

 

 

ルカ「ふぅ...さてと、始まるまでテキトーに待ってよっか」

ひえり「ですねぇ」

 


犬飼「ピヨピヨ」

三太郎「ピヨピヨ」

 

 

 

 


そして、遂にその時はやってきた。

 

 

 

 


善能寺「これより、魔法封印の儀式を開始します」

 

 

 

魔裁組のメンバーの他に、魔法協会、サムワット、魔法協会と提携を結んでいる家系の人間、その他魔法に関わる人間が、沢山集まった。

 


まず、善能寺とその部下によって、宝庫の魔導書が全て運び出される。

 


三太郎「わーお。俺たちが今まで集めてきた魔導書だ」

はるか「なかなかの数だな」

 

 

 

次に、岩田、麗美、幸二、ひえりによって、赫魔導書が返還される。

 

 

 

そして、五百旗頭の手によって、体内に魔導書を持っているメンバーから、魔導書が取り出される。

 


ニュルッ...

葉月「ぎゃはっ。なんか変な感じ!」

小町「こしょばいなぁ」

ルカ「...」

粟生屋「なるほど...」

唯「きゃー!くすぐったい...!」

廻「...!」

ヒメ「うっ...」

百目鬼「ふぅ...」

美波「...!」

 

 

 

村松「...」

五百旗頭「準備は出来た?」

村松「...はい」

 


ニュルッ...

 


村松「......」

 


そして、最後は一善に順番が回ってくる。

 

 

 

《一善の脳内》

 


真っ白な空間に、一善とつのキングがいる。

 


一善「ありがとう。つのキング」

つのキング「ウォーーー!」

一善は、つのキングに抱きつく。

 


一善「さようなら。つのキング」

つのキング「ウォーーー!!」

一善「元気でね──────」

 

 

 

ニュルッ...

 


五百旗頭によって、操蟲の書は一善の体から取り出される。

 

 

 

第一章から第五十一章、全ての魔導書が出揃った。

 

 

 

五百旗頭「それでは」

 


皆は、薪に灯された、大きく輝く炎を瞳に移す。

 

 

 

三太郎「ついにこの時が来たんだな...」

幸二「...あぁ」

一善「...!」

ヒメ「...!」

 

 

 

ブォォォォ...!!!!!!

 

 

 

 


全ての魔導書が炎に包まれていく...!!!

 

 

 

 


その場にいた全員が、ただ真っ直ぐ、燃え盛る炎を見ていた。

 

 

 

 


一善「...(これで、終わったんだ...!)」

 

 

 

 


──────

────

──

 

 

 

魔法封印から2ヶ月ほど経ったある日

 

 

 

《渋谷》

 


渋谷では、”未曾有の強風被害”にあったビル群の修復が勧められている。

 


崩壊したビル群を眺める高校生達。

 


高校生「めっちゃやばくね?写真撮っとこ」パシャ

高校生「てかさ、知ってる?あの噂」

高校生「あの噂?」

高校生「これ、ハリケーンで壊れたんじゃないらしいぜ?」

高校生「都市伝説的な?」

高校生「そんなとこだな。実はこれ、”魔法”が原因で壊れたらしいぜ。YouTubeであがってた噂だけど、魔法は実在して、魔法使いが暴れ回って壊したんだと。それを見たやつもいるらしいぜ。信じられねぇよな。それで、国はそれを隠してるって」

 


それを聞いたもう1人の高校生は、こう答えた。

 

 

 

高校生「それ...マ?」

 

 

 

 


《一善の新たな家》

 


俺(一善)は1人で歩ける程に回復した。

 

 

 

魔法の消滅と共に、魔裁組の支部も、魔法協会も全て無くなった。

もちろん、魔者はいなくなったし、俺達も魔法を使えなくなった。

 


俺はヒメと2人で暮らすことになった。

 

 

 

ヒメ「もうすぐ三太郎君来るらしいけど」

一善「あ、うん、聞いてるよ」

 


今日は、1月10日。

三太郎が遊びにくる。

 

 

 

ガチャッ。

 

 

 

音がした。三太郎と思われる。

一善「あ、三太郎だよね?テキトーにあがって〜」

幸二「いや、俺だが」

一善「...?!幸二?!久しぶり...だけど...なんで?」

幸二「え、だって、今日は...?」

ヒメ「あれ、幸二君?」

 


すると、後ろから聞き覚えのある声がする。

 


はるか「ちょりーーっす!あれ、幸二じゃん?」

美波「あれ、今日幸二くんもなんだ?」

幸二「あれ、2人も呼ばれてたのか?」

はるか「いや、私は全部で4人って聞いてたけど?」

美波「私も。でもはるかちゃんとそこで会ったからおかしいなって」

幸二「俺も同じだ」

 


一善「あの...俺達が一番分かってないんだけど」

ヒメ「うんうん。まぁでも寒いし、中入りなよ」

 


はるか「おじゃましまーーす!ってか広!」

美波「わぁ〜綺麗〜!」

 

 

 

一善「ヒメ、どういうこと?」

ヒメ「いや分からないわ。三太郎君が、3人でご飯食べよって言うから...でもこれって」

一善「何?もしかしてまだ...」

 


ひえり「こんにちは!」

麗美「いやー。遅くなってごめん〜」

 


一善「言ってる側からまだ来た」

ヒメ「なにこれ」

 


麗美「あれ?もしかしてあんまり歓迎されてない?」

一善「歓迎も何も、何も聞かされてないのですが」

麗美「え、今日三太郎と4人で飲むんじゃないの?」

ひえり「私は着いてきちゃいましたー!」

 


はるか「お!麗美じゃん!」

麗美「あれ、はるかじゃん。居たんだ」

はるか「奥にこーじと美波もいるよー」

麗美「え、めっちゃいるじゃん。三太郎は?」

はるか「まだ。私も三太郎に言われて来たんだけど、何してんだアイツ」

 


一善・ヒメ「......」ナンダコレ...

 


すると、一善のスマホが鳴る。

 


一善「あ、藤だ」

一善は電話に出る。

 


一善「もしもし?」

百目鬼「あ、俺だけど、家どこ?Googleマップ通りに来てるんだけど、イマイチわからん!」

一善「え、藤も今日来るの?」

百目鬼「は?佐藤と4人で親睦を深める会やるんだろ?」

一善「はぁ.........成程」

 


一善は、住所の詳細を百目鬼に送る。

 

 

 

集まったメンバーは、元魔裁組メンバーについての会話をする。

 

 

 

はるか「そういえばさ、なぎちんって元気?」

美波「大学の教員になるんだって。そしたら私も院行こうか迷ってるんだよね〜」

はるか「へぇ〜、まぁあの人ダンチで頭いいもんな」

美波「亜珠ちゃんと犬飼さんも、渚ちゃんが教員になったらアシスタントするかもって」

はるか「へぇ〜」

 


幸二「てか、唯さん達といた青髪の男の人、誰だったんだ?」

麗美「昔の友達?って言ってた。魔法使いだったらしいわよ。確か、めぐり?さんだっけか」

幸二「ふーん。まぁ履術者だったしな」

美波「唯さん達何してるのかな」

麗美「唯さんは元いた介護施設に戻ったらしいよ。粟生屋さんは知らん」

 


そこへ、ジャスティンが現れる。

 


ジャ「粟生屋さんは今頃彫刻で忙しいからね」

はるか「うわ!ジャスティンだ!」

ジャ「なんだその言い方」

麗美「もしかして、まだ壁すり抜け使えるの?」

ジャ「んなわけないだろう。もうただの一般人だよ」

幸二「白のファンタジスタも卒業ですね」

 


ジャ「いやそんなことはないよん!俺、YouTubeチャンネル始めたから見てね!白のファンタジスタって名前で!」

はるか「マジか!」

美波「すごい!見てみたいれ」

ジャ「Yes!超超超超面白いよ!ほら!チャンネル登録してして!」

麗美「あっ...はい」

幸二「へぇ...」

ジャ「興味なしかい!」

 


ひえり「ルカさんとも全然会えてないなー元気かなー」

麗美「なんかカフェ?始めたらしいよ。インスタで見た」

ひえり「へぇー!すごい!神戸ですかね?行きたい行きたい!麗美ちゃん一緒にいこうよ!」

麗美「私はゴメンだね。もう二度とあの人の顔見たくないし」

ひえり「じゃあインスタ外しなよ」

麗美「...!」グサッ!

 


はるか「インスタと言えば葉月小町ペアはっちゃけてんなー」

ジャ「タイガーアンドドラゴンペアね。本当仲良いよなあの2人」

美波「そういえば今度2人とライブ行くの!推し同士の共演だからチケット貰って3人で!」

はるか「へぇーええやん!」

美波「うん!楽しみ!」

 


ジャ「そういえばさ、この間ペットショップ行ったらさ、村松ちゃん居たんだよね」

はるか「え、マジか!」

ジャ「変わってなかったよ。わんわんのお世話してた」

ひえり「ペットショップ私も行きたいー!」

 


ジャ「てか幸二最近何してんの」

幸二「...実は」

麗美「ん?」

幸二「ダイパリメイク買ったんすよ」

ジャ「マジか!」

はるか「インスタのストーリーでめっちゃ見るやつだ!」

幸二「岩田さんとめっちゃ対戦してます。明日も一緒にやる予定です」

はるか「え、何選んだ?ヒコザルポッチャマナエトル?」

ひえり「え、私も買いました!やりたいです!」

 

 

 

一連のやり取りをを一善とヒメは見ている。

 


一善「久しぶりだね...この感じ」

ヒメ「うん。何だか楽しくなってきた」

一善「ね」

 


そこへ、三太郎がやってくる。

 

 

 

三太郎「お待たせーー!!皆ー!!!」

 

 

 

一善「...三太郎!」

はるか「お!おせぇぞ!」

ジャ「早くこっちきなー」

三太郎「わりぃわりぃ!」

幸二「てかどう言うことか説明しろよ」

美波「なんか、ワクワクしてきたかも」

麗美「はぁ...全く」

 


麗美の視線の先には、一善とヒメの姿が。

 


麗美「これじゃ、誰が”今日の主役”なんだか」

ひえり「ですね」

 

 

 

三太郎「全員揃ってるか?!」

はるか「いや、誰も全員がどこまでなのか知らねぇんだよ!お前だけなんだよ!」

三太郎「ははっ。悪ぃ悪ぃ。だってサプライズじゃん?」

一善「サプライズ?」

ヒメ「...?」

三太郎「ま、いいや、ってか百目鬼は?」

一善「あ、さっき連絡があって、もう着くぽい」

三太郎「おけ!」

 


そこへ百目鬼がやってくる。

 


百目鬼「ハァ...やっと着いた...寒すぎだろ今日」

ヒメ「あ、百目鬼君だ」

三太郎「おせーよ!百目鬼!こっちこい!」

一善「(あなたも今来たとこじゃないですか)」

 


三太郎「これで揃ったな!」

ジャ「じゃ、やりますか?」

一善「ん?何を?」

ヒメ「あ、あけましておめでとう的な?」

三太郎「それもそうだけど...!」

 


ジャ「一善!そして、ヒメ!」

 

 

 

全員「「「誕生日、おめでとう!!!!!」」」

 


パァァァァァン!!!

 


クラッカーの音が鳴り響く!

 


一善「...!あ、そっか」

ヒメ「...!」

 


三太郎「おめでとう!2人とも!」

 


一善「ありがとう...なんか、元旦近いしあんまこうやって大人数で祝われたことなかったから、新鮮で」

三太郎「去年まではあんまりそういうこと出来なかったもんな!だから今年はその分!盛大にやっちまおうぜ!!!」

はるか「おめでとー!!!2人とも!!」

ひえり「おめでとうございます!!」

ジャ「ぃよっ!!!」

 


美波「どう?驚いた?皆からプレゼントもあるんだよ?」

一善「え、なになに?」

ヒメ「嬉しい!ありがとう!」

 


三太郎「まずは俺から!ジャーン!スパイダーマンとキャプテンマーベルのフィギュア!!」コトッ!

ヒメ「あ...ありがとう!」

麗美「己の趣味全開で草」

 


百目鬼「僕はシンプルにこれ。いいアイロン」

一善「お!使う使う!ありがとう!」

百目鬼「シワ伸ばしについては何でも聞いてくれ」

ヒメ「百目鬼君そういうの好きなんだ!ありがとう!」

 


はるか「私はこれ!パジャマ!おそろいの!」

 


美波「私はおっきいぬいぐるみ!」

 


麗美「私からはルームフレグランスとキャンドル」

 


ジャ「僕からはオソロのワイヤレスイヤホンっ!」

はるか「わーお!おとっなぁ!」

美波「私もほしーい!」

 


ひえり「ごめんなさい。私は急だったので、いろは坂のCDに、サインとメッセージ付きで...また今度改めてお祝いします!」

ヒメ「すごい!かわいい!ありがとう!」

三太郎「え!!!俺が欲しい!!!」

ブンナグ!

麗美「ふぅ...あんたはまた今度」

三太郎「...(えっ...今度?ドキッ)」

ひえり「あげるとは言ってませんけどね」

三太郎「ぐはっ!」

 


一善「みんな、ありがとう!」

ヒメ「本当に、わざわざありがとうね!」

百目鬼「で、今年の抱負は?お二人さん」

 


ヒメ「...うーん。私は、とりあえず、色んな人と関わる...!そして、広い世界を見てみたい...!かな!」

 


麗美「いいですねぇ」

 


美波「一善君は?」

 


一善「...俺か...俺は変わらないかなぁ」

 


三太郎「お?」

ジャ「あれか」ニヤッ

幸二「...」

 

 

 

魔法使いとしての俺は、もう居ないけれど、俺がやることはこれからも、ずっと変わらない。

 


俺が生きている限り。

 

 

 

一善「うん。一日一善」

 

 

 

第550話 「魔法の本」

 

 

 

 

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 69

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SOREMA -それ、魔!- 69

 

 

 

 

 

 

 


光を探して

 

 

 

現在までのあらすじ。

 


ノベルの幹部を全て倒し、白鶯との最終決戦を繰り広げる魔裁組。

白鶯の圧倒的な力の前に次々と戦線離脱して行くメンバー。

暴走する白鶯相手に一善が孤軍奮闘する中、北海道から駆けつけた履術者・廻桜志郎の助けによって、ジャスティンが戦線復帰。最後の力を振り絞り、一善と共に白鶯討伐に動く。

 

 

 

 


第545話 「重なり合う」

 


《決戦の地》

 


ヒメ「ジャスティンさん...大丈夫でしょうか」

五百旗頭「賭けるしかないわ。今の時点で、高度な治療ができる人がいなくなってしまったのだから」

ヒメ「唯さん...」

五百旗頭「最後の希望を込めて、南野さんを探しましょう。私たちで」

ヒメ「はい!百目鬼くんも!」

廻「僕はここにいます!ここで何かあった時に、戦える人がいた方がいいと思うので」

五百旗頭「ありがとう。久品さん、行きましょう」

 

 

 

《とある倒壊したビルの地下部》

 


百目鬼は、白鶯の攻撃で地下へ吹き飛ばされていた。長らく気を失っていたが、目を覚ます。

 


百目鬼「...痛っ」

 


百目鬼は片足がコンクリートに挟まって動けなくなっていた。

 


百目鬼は身動きの取れない状態で、光の射す方から、上空の龍を見る。

 


百目鬼「...やべぇなあれ......って?あれはもしや」

 


百目鬼は巨大な龍と空中戦を繰り広げる一善を確認。

 


百目鬼「おい...あれ一人で相手してんのヤバいだろ...」

 


百目鬼は辺りを見回す。すると、下半身が埋もれて気を失っている美波を発見する!

 


百目鬼「...!南野!!」

 


美波は目を覚まさない。

 


百目鬼「...!くそっ!足が動かねぇ...!(それだけじゃねぇ、頭も朦朧として何も出来ねぇ!誰か来てくれ...!)」

 


百目鬼は何とかして、自分の足に被さっていた瓦礫を退かすと、足を引き摺って美波の元へ駆け寄る。

 


百目鬼「おい南野?大丈夫か?大丈夫じゃねぇか」

 


周囲の赤くなったコンクリートを見る。

 


百目鬼「おいおい。助けるだけ助けて逝っちまうなんてナシだよな?」

美波から返事はない。

 


百目鬼「ちっ...そんなの...絶対ナシだろ!おい!」ガンッ ガンッ!

百目鬼は、コンクリートを破壊するために、コンクリートに衝撃を加える。

 


百目鬼「おいおい!南野!南野!!」

美波「...」

百目鬼「くそっ...くそっ...硬ぇ!!」

美波「...」

百目鬼「俺は...なんでこんなに弱いんだ...!」

 


コンクリートはビクともしない。

 


百目鬼は溜息をつき意気消沈する。

 


百目鬼「情けねぇ話だよな。今俺の相棒がでっかい敵と戦ってるんだよ」

百目鬼は涙を流す。

百目鬼「でも...俺は...あいつを助けてやれる程の力がねぇ...!」

 


百目鬼は涙を拭う。

 


百目鬼「らしくねぇか...ははっ。はぁ。なんで俺、こんなに弱いんだろ」

美波「...」

 


百目鬼「あいつは...一善はお前の助けが絶対必要になる。だからさ...頼むよ...もう1回、あいつの助けになってくれ...!あいつを助けてやってくれよ...!」

 


百目鬼の涙が、美波の手の甲に落ちる。

 

 

 

美波「...」

 

 

 

 


ピクッ

 

 

 

 


《決戦の地》

 


一善とつのキングは、白鶯の周りを飛び回り、白鶯に攻撃を仕掛ける!

 


一善「...(もうこいつは錯乱状態だ、意識はないだろう、だからこそ、何をするか分からない...!早くカタをつけないと!まずは龍の状態を解除させる!)」

 


一善はつのキングから飛び降り、龍の喉仏に剣を突き刺し、腹部まで剣を振り下ろす!!

一善「うぉぉぉぉ!!」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


一善「...!!!!(吹き飛ばされる!!)」

 


すると、地面から駆けてきたジャスティンが、一善の握る剣を支える!!

 


一善「ジャスティンさん!!!」

ジャ「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

2人はそのまま剣を突き刺したまま、白鶯を一刀両断した!!!龍の姿の白鶯は、地面に叩きつけられる!

 


白鶯は、傷口を治しながら再び空へ上がろうとする。

 


ジャ「させねぇよ!!!!」

ジャスティンは、天叢雲を白鶯の頭部から地面に貫通させる勢いで突き刺した!!

 


すると、白鶯は頭をぶん回し、ジャスティンは上空に放り出された!

 


一善「ジャスティンさん!!!」

 


白鶯は、くっつけた尻尾でジャスティンを思いっきり吹き飛ばす!!!

 

 

 

ドォォォォォォォォン!!

 


ジャスティンは遥か彼方のビルに叩きつけられた!!

 


一善「ジャスティンさん...!!!」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


一善は、目の前に横たわった巨大な龍の顔面を見ながら口を開く。

 


一善「お前は...どこまで俺の仲間を傷つければ気が済む...?」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


白鶯は鋭い眼光で一善を睨みつけ、口に強烈な光を溜め込む!!!

 


一善「...」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!!」

 

 

 

一善「つのキング」

つのキング「ウォーーーー!!」

 


つのキングは、再びの剣の姿となった!

 


一善は、剣を2つ持ち、光を口に溜め込む白鶯の顔面に近づく。

 


ジャスティンは遠くから一善を見る。

ジャ「......一善!逃げろ...!(くっ...体が動かない...!)」

 


一善「...」

白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

一善は今にも放たれそうな光の前でも、物怖じせずに、剣を強く握りしめる。

 


一善「お前を倒して、俺は善を為す」

 


ドォォォォォォォォン!!

白鶯の攻撃が放たれる!!

 


一善「!!!!」

 


キィィィィィィィン!!!!

 


一善を中心に、緑のオーラが周囲に放たれる!!

一善の髪は揺らぎ、地には亀裂が走る!

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


白鶯は攻撃を受けてさらにのたうち回る!!

 


バタバタバタバタバタ!!!

 


ジャ「...!止めた...のか?」

 


一善はつのキングに乗り、上空から白鶯を見下ろす。

 


一善「...終わりだ!」

 


その様子を、ヒメ達が見上げている。

 


ヒメ「一善...!」

五百旗頭「...!」

廻「...!」

 


ジャ「...ふっ。人はここまで変われるんだね。あの日のクリスマスから、君は見違える様に変わった」

 


一善は、つのキングから飛び降り、天叢雲を白鶯の頭蓋骨に突き刺す!!

 

 

 

 


白鶯は断末魔をあげる!!!!

 

 

 

 


グヲォォォォォォォォォァァァァ!!!!!

 

 

 

ヒメ「...!」

五百旗頭「...!」

廻「やった...?!」

 


幸二と三太郎は、目をうっすらと開ける。

幸二「...?」

三太郎「...一善...は?」

 


白鶯は、滅びた。

 


龍の体は、先端から燃えるように崩壊していく。

 


そして、地面には一冊の青い本が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第546話 「川辺」

 


一善「...」

 


白鶯は人間体の頭部を残して殆どが消失していた。

 


ヒメ「終わっ......た?」

五百旗頭「......!」

 


三太郎は体を起こす!

 


三太郎「おい、皆無事か?!いててて」

ヒメ「今、一善が...」

三太郎「ん?」

幸二も体を起こす。

幸二「一善は...?!」

 


ヒメ「白鶯を...倒した...!!!」

 


幸二・三太郎「!!!!」

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

一善「...!!」

 


グシャッ!

 


一善は、白鶯の頭部を踏み潰す。

 


グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!

 


一善「...」

 


グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!

 


一善は完全に気を失っていた。意識的ではなく、ただ本能で体を動かしていた。

 


ヒメはそれを見て、足を引きづりながら一善の方へ駆け寄る!

 


一善は、突然意識が飛んだように地面に倒れかける。

 


ヒメは寸前で一善を受け止める。

 


ヒメ「一善...!一善!!」

一善は目を瞑って、返事をしない。

 


ヒメ「...(脈はある。でも早く回復しないと...!)」

 


そこへ幸二と三太郎がやってくる!

 


幸二「一善!おい一善!!」

三太郎「一善!!お前!すげえよ!」

幸二「死ぬなんて許さないぞ!」

幸二、三太郎は一善に回復を施す。

 


三太郎「ちっ...まともに”療”出来ねぇのに...俺達もマヂカラが残ってねぇ...!」

幸二「でもやるしかないだろ!」

ヒメは、一善を助けるべく、一善をその場に寝かせて、廻や五百旗頭に助けを呼びかける!

 


幸二「くっ...(例え俺が死んでも...こいつだけはて!)」

三太郎「...!!」

 

 

 

その時だった。

 

 

 

パッ!

 

 

 

 


幸二らの目と鼻の先に、寝転がった美波が突然現れた。

 

 

 

〜〜

 


力を使いは果たした百目鬼は、地下部で光を浴びながら呟く。

百目鬼「やったんだな。流石、俺の相棒だ」

 

 

 

バタッ...

 


〜〜

 


三太郎「美波ちゃん?!」

美波「三太郎君...幸二君...」

幸二「大丈夫か...?!てか、なんで...」

美波「百目鬼くんが...百目鬼君は地下で身動きが取れなくなってる...助けてあげて欲しい」

幸二「わかった!サムワットに連絡する!」

 


美波は、寝転がった状態で、一善を見る。

 


美波「一善君...?」

 


三太郎「あぁ。一善が危ないんだよ!こいつずっと白鶯と戦ってたんだ...!」

美波「私を...もう少し一善君に近づけて。動けないから」

 


幸二は美波を一善の隣に寝かせる。

 


美波「一善君...絶対に死なせないから」

 

 

 

美波は、目を覚まさない一善の頬に手を当てる。

 

 

 

美波「...帰ってきて。一善君」

 

 

 

 


ポワァン...!

 

 

 

 


一善に力が注がれる。

 


三太郎「一善!!」

幸二「一善...!一善!!」

ヒメ達もそこにやってくる。

 


五百旗頭「一善君...!」

ヒメ「一善!起きて...!」

廻「...!」

 

 

 

一善の運命や如何に──────!

 

 

 

 

 

 

 


第547話 「光を探して①」

 


日が登り、朝になる。

 

 

 

周囲の片付けは順調に進められ、魔裁組のメンバーは、病院に運ばれた。

 

 

 

そして、白鶯との戦いから数日が経つ。

 

 

 

《病院》

 


ひえり「殆どの人が意識を戻したのはよかったです」

五百旗頭「でも、油断は出来ないわ。まだ意識が戻らないメンバーが...数名」

 

 

 

ピッ     ピッ     ピッ

 

 

 

 


《集中治療室① 武智はるか》

 

 

 

 


はるかは暗闇の中を1人歩く。

 

 

 

すると、どこからが聞き覚えのある声がする。

 

 

 

莉茉「それ以上は来ちゃダメよ」

 


はるか「...!」

 


莉茉「おつかれ。はるか」

 


はるか「莉茉っち...!」

 


莉茉「見てたよ。はるかの活躍。凄かった。流石私の妹って感じ」

はるか「莉茉っち...!一緒に帰ろうよ!みんな待ってるから...!」

莉茉は首を横に振る。

 


莉茉「私はもうみんなと同じ所へは行けないんだ。悲しいけど」

はるか「...じゃあ、私もそっちに行く!莉茉っちがいない世界なんて嫌だよ!せっかく終わったのに...なんで...!」

莉茉「ありがとう。でも、はるかのこと、皆待ってるから」

はるか「え?」

 


はるかが横を見ると、麗美と美波がそこにいた。

 


はるか「麗美...美波...」

麗美「いつまで寝てるの?」

美波「早く起きてよ...」

はるか「でも...」

 


すると、莉茉が3人を引き寄せるように抱きしめる。

 

 

 

莉茉「皆。今までありがとう。私と仲良くしてくれて、慕ってくれてありがとう。もう会えないけど、魔法が無くなっても、私はずっと皆のお姉ちゃんでいてもいいかな...」

はるか「...!!」

麗美「莉茉っち...」

美波「うん...!うん...!」

 


莉茉は3人更に強く抱きしめる。

 


莉茉「長生きしてね。私の自慢の妹たち...!」

 


はるか「莉茉っち...!!莉茉っち!!!」

 

 

 

カァァァァァァァ!!!!

 

 

 

はるかは目を覚ました。

 


はるかが目を覚ますと、麗美と美波がベッド横ではるかを見ていた。

 


麗美「...あ」

美波「はるか...!」

 


麗美は席を立ち、涙を目に浮かべながら廊下で叫ぶ。

 


麗美「はるかが...はるかが起きました!!」

 

 

 

《集中治療室② 百目鬼藤》

 

 

 

百目鬼は暗闇の中で佇む。

 


百目鬼「ここはあれか、地獄ってやつか」

 


すると、どこからか声がする。

 


紅「残念ながら、違うぜ!」

 


百目鬼「...?」

 


百目鬼が声のする方を見ると、百目鬼のかつての友人が顔を揃えていた。

 


山吹「やっときたのかよ。お前が来ないと、始まらないだろ」

浅葱「そうだね。久しぶり、藤」

松葉「記念に写真を撮ろう。って、写らないか」

墨「まぁなんでもいい。まずは藤を労うのが先だろう」

 


藤「お前ら...」

 


5人は藤を囲む。

 


藤「はぁ...悪かったな。かっこ悪ぃ俺。なんかむきになっちまってた」

墨「まぁ。復讐なんて、くだらないと思って見てたが」

山吹「おい!俺達のためにやってくれたのに!」

松葉「ごめんね藤。墨はお前が怪我したり危険な目に合うのが本当に心配だったんだよ」

墨「...!違う!それを言うな!」

浅葱「全く。素直じゃないねぇ」

 


紅「でも俺たち痺れたぜ。お前が俺達のためにあそこまでしてくれるなんてな。お前、すげぇ魔法使いだったんだな」

 


藤「...!」

 


浅葱「お前のおかげで、俺たちも安心して成仏出来るよ」

 


藤「お前ら...!」

 


松葉「ありがとう。藤」

 


藤「...!いや...でも、悪かったな。お前たちの分まで、長生きするべきだったのに...」

 


紅「...」

浅葱「...」

松葉「...」

 


山吹「は?」

 


藤「?」

 


墨「お前、何か勘違いしてはいないか?」

藤「...?」

墨「俺たち、お前を迎えに来たのではないぞ」

藤「え?」

 


紅「おいお前ら!」

全員「おう!」

 


5人は藤は胴上げする。

 


藤「...!なんだよ!」

 


山吹「お前はまだまだ生きなくちゃなんねぇんだよ!」

藤「は?でももうやることはねぇし」

浅葱「そうじゃない。君の人生は使命かよ」

松葉「君には人生を楽しむ”権利”がまだ残ってる」

藤「...!」

墨「分かったらとっとといけ」

紅「お友達が、待ってるぜ」

 

 

 

フワッ

 

 

 

百目鬼は宙を舞った。

 

 

 

百目鬼「......」

 


百目鬼は目を覚ました。

 


百目鬼「...ふっ。生きちまった」

 

 

 

 

 

 

 


第548話 「光を探して②」

 


《集中治療室③ 京金ルカ》

 


ルカは暗闇の中で目を覚ます。

 

 

 

ルカ「何ここ」

 


???「ここは、この世とあの世の狭間。今世での功罪を清算し、汝の運命を定める場所。果たして、汝の行先は天国か...はたまた地獄か」

 


ルカ「は?誰よ!いるなら出てきなさいよ!!張り倒すわよ!!!」

 


千巣「こわ」

 


ルカ「...!」

 


千巣「よっ」

千巣が現れた。

 

 

 

ルカ「...!!バカ!」

 


ルカは千巣を平手打ちするが、千巣はこれをかわす。

 


千巣「いや、ここで戦闘してる奴初めて見たんだけど」

 


ルカは千巣の胸ぐらを掴む。

ルカ「答えなさい!なんでアンタは死んだのよ!」

千巣「いや...俺、弱いし」

 


ルカ「そうじゃない...いや...もうどうでもいい...」

ルカは胸ぐらを掴んだ手を離す。そして、千巣の胸元によりかかる。

 


ルカ「私も...そっちに連れて行ってよ」

千巣「...」

ルカ「お願い...お願い...」

 


千巣「おい、情緒不安定にも程があるだろ。FUJIYAMAかよ」

 


ルカ「...!アンタっていつもそう!こっちが腹たってんのにいっつも余裕ぶっこいて、変なこと言って、何考えてるか分からないしさァ!何?!下に見てるの?!大人ぶりやがって!どうせ私の事、ガキ臭いとか思ってんだろ?!クソが!」

 


ペシィン!!!

 


ルカの平手打ちが千巣に当たった。

 


ルカ「...!」

 


千巣が座り込む。

 


ルカは、千巣に背を向けて、膝を抱え込んで座る。

 


ルカ「...反論あるなら...言いなさいよ」

 


千巣は、座ったまま、ルカの背中に言葉を投げかける。

 


千巣「”ルカ”」

ルカ「...」

 


千巣「─────。───────。」

 


ルカ「...!!!」///

 

 

 

そこへ、理子、唯、粟生屋がやってくる。

 


粟生屋「いやぁ。いいもの見せてもらったよ」

唯「キャーーーーー!」

理子「なんか面白いね」

 


千巣「お前ら...!」

ルカ「...!」

 


粟生屋「残念ながら君はこっち側の人間だ、京金ルカ」

唯「そうだよ!ルカルカは渡さない!私だって、ルカルカのこと愛してるんだから!」

唯は、ルカをきつく抱きしめる。

ルカ「唯!痛い!痛い!」

理子「そもそも、取ろうとしてないし」アセアセ

 


千巣「皆、ありがとな。俺たちが出来なかったこと、やってくれて」

 


粟生屋「ま、僕は何もしてないけどね」

唯「私も少しだけ手伝っただけだよ」

ルカ「認めたくないけど、私達より強い奴らを少しだけ手伝っただけよ」

 


理子「私達も、これで心置き無くあの世に行ける。私も、3人のことずっと上で待ってるから。何十年後また、同窓会でもしようね」

 


粟生屋「ま、悪くないね」

唯「うん!その時まで、頑張って生きます!」

ルカ「...うん」

 


ルカは粟生屋と唯に連れられて暗闇を出ていった。

 

 

 

理子「千巣君」

千巣「はい?」

理子「あれはダメでしょ。ルカ、困っちゃうんじゃない」

千巣「その時はまた脳内に出勤しますよ。こうやって」

理子「ふふふ」

千巣「なんすか」

 


〜〜〜

 


《集中治療室④ 神野ジャスティン護》

 


ジャスティンは暗闇の中で彷徨う。

 


ジャ「...」

 


すると、懐かしい声が背中から聞こえる。

???「護!!」

 


ジャ「...?」

ジャスティンは振り返る。

 


朱里「おかえり。護」

ジャ「朱里...?」

朱里「元気?って、そんなわけないよね。お疲れ様、護」

ジャ「朱里...?朱里なのか?」

朱里「ははっ。そうだって。久しぶりだね」

ジャ「...!!」

 


ジャスティンは朱里を抱きしめる!

 


朱里「わぁお!あははっ。急に動いて大丈夫?」

ジャ「朱里...!ごめんね。朱里を守れなかった。助けてあげられなかった...!俺は弱かった...本当に...ごめんね!」

朱里「そんなこと気にしてないよ。ずっと見てたんだよ?護のこと」

 


ジャ「...!」

朱里「護、辛かったね。沢山努力してる護、かっこよかったよ。心の底から、かっこいいって思った」

ジャ「...!」

朱里「護は弱くなんてないよ。だって、沢山の人を護れたじゃない。十分すぎるくらいだよ」

 


ジャスティンは、朱里から離れて立つ。

ジャ「朱里...俺、朱里が好きだよ。あの時は言えなかった」

朱里「...」

ジャ「朱里...俺は」

朱里「私も...好きだった」

 


ジャ「...!」

 


朱里の目から涙が落ちる。

朱里「優しくて、真っ直ぐな護の事が、私は好きだった」

 


ジャスティンは再び朱里を抱きしめる。

ジャ「ありがとう。今も同じ気持ちかな?俺もそっちに行くから。これからは絶対に離さない。どんな事からも朱里を守る。これでずっとずっと、一緒だね」

 


朱里「...それは出来ないよ」

 


ジャ「...?」

 


朱里は、涙声で、笑顔を作って言う。

朱里「護は、もっと生きなきゃ」

ジャ「...朱里?」

 


朱里「まだ若いんだから、護にはもっともっと、生きて欲しい」

ジャ「...」

朱里「護はこれからも色々なことを知って、色々な人と出会って、話して、遊んで、恋をして...幸せにならないといけないんだよ?」

ジャ「...どうして?」

朱里「だって。護が助けた人達は皆、護が死んじゃうの、嫌がるよ?」

ジャ「...!」

 


朱里「一緒に戦った仲間達も、護が生きることを望んでる。もちろん。私も同じ。だから、護の気持ちに応えることは出来ません。でも、嘘をつきたくなかったから、本当の気持ちを話したの。困らせてごめんね」

 


ジャ「...朱里」

 


朱里「護は素晴らしい人だから、これからも護らしくら幸せに生きて欲しい。これが私からの最後のお願い」

 


ジャ「...!」

 


朱里はジャスティンに抱きつく。

 


朱里「素敵な人を見つけてね。護」

ジャ「...朱里!朱里...!」

 


朱里は、光になって消えていく!

 


ジャ「......!朱里...!」

 

 

 

〜〜〜

 


ジャスティンは目を覚ます。

 


ジャ「...朱里...ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 


第549話 「光を探して③」

 


《集中治療室⑤ 油木一善》

 

 

 

一善は暗闇の中を走る。

 


一善「早く...皆の所へいかなくちゃ...ここはどこだ...?俺は寝てるのか...?」

 


???「一善!」

 


どこからともなく声がする。

 


一善「...?この声は...?」

 


冬美「一善...!」

一善「...お母さん?」

 


一善の目の前に冬美が現れた。

 


一善「お母さん...なるほど。そういうことね」

冬美「一善。お疲れ様」

一善「...うん」

 


冬美は一善を抱きしめる。

 


冬美「一日一善。私との約束、守ってくれてありがとう。一善は立派だった。さすが、私の自慢の息子よ...!」

一善は、じんわりと涙を浮かべる。

冬美「本当に、逞しくなったね、一善」

一善「...!」

 


冬美「おかえり。一善」

一善「...お母さん......!」

 


すると、冬美は光に包まれた。

 


一善「お母さん...行っちゃうの?」

 


キラキラァ...

 


すると、冬美は少し若返った姿になった。

 


一善「...?」

 


すると、一善の隣にヒメが現れる。

 


ヒメ「私たちのお母さんよ。まだお母さんが、魔法使いだった時の姿」

一善「...ヒメ?どうしてここに?」

ヒメは微笑む。

ヒメ「そして...」

 


ヒメは後ろを振り返る。つられて一善も振り返る。

そこには、一人の男の姿があった。

 

 

 

一善「...!」

 

 

 

一善は直感でそれを理解した。

 


一善はその男を、幻の中で見たことがある。

 


???「一善、ヒメ」

 


一善はその男の声を、何度も聞いたことがある。

 


一善「...!」

ヒメ「この人は...」

 


一善「...お父さん......?」

 


和義「初めましてだな。一善...!」

 


一善はたどたどしい歩幅で、和義に近づく。

 


一善「お父さん...お父さん...なんだよね」

 


和義「あぁ。俺はお前達の父親だ」

 


すると、一善は、和義に飛びついた。

 


一善「全部分かった...!今まで、ずっと守ってくれてたんだね...!そばにいてくれてたんだね...!俺のことずっと...隣で見守ってくてたのは...父さんだったんだね...!」

和義「ごめんな一善。お前に顔を見せることが出来なくて。俺に出来る事はこれしか無かった。俺の方こそ、俺のギラファ...いや、つのキングを導いてくれて、ありがとう...!」

一善「お父さん...!」

 


そこに、冬美(真理)とヒメも肩を寄せる。

 


和義「真理、ヒメ、一善。全員俺の自慢の家族だ!」

ヒメ「お父さん...!」

一善「...!」

真理「そうね。和義」

 


和義は一善とヒメに言葉を残す。

 


和義「今日まで、本当に良くやってくれた。俺たちが成し遂げられなかった偉業を、お前達とその仲間達は、力を合わせて達成することができた。本当にありがとう」

一善「...!」

和義「2つ。忘れないで欲しいことがある。1つは、仲間への感謝の気持ちだ。思い出して欲しい。心が折れたり、体が思うように動かない時、手を差し伸べてくれた仲間を。共に傷つき、励ましあった仲間を。命を賭して、お前達に望みを繋げた仲間を」

ヒメ「...!」

 


和義「そして、自分を好きでいることだ。お前達が成し遂げたことは、何にも変えられない程の偉業だ。だが、周りの誰もがそれを理解出来るとは限らない。だから、他人に褒められずとも、自分で自分を誇れ」

一善「自分を...誇る...」

和義「他人を貶したり、人の上に立つためではない。常に前向きに、一日一日を明るく生きられるように、自分を好きでいて欲しい。誇りに思って欲しい。そして、これからも善き一日を積み上げて行って欲しい。日常に戻って、平和な暮らしが戻っても、残念ながらいい事ばかりではないのが現実だ。辛い事に目の前を塞がれてしまっても、沢山の人々を救ったお前達なら、どんな困難も乗り越えられる。俺の自慢の家族だからな」

ヒメ「お父さん...」

 


和義と真理の体は徐々に光となって消えていく。

和義「その尊い命を、力尽きるその日まで大事にして欲しい。一日一日を、楽しく生きてくれ。俺達との約束だ」

真理「あんまり早くこっちに来ないようにね」

 


一善「お父さん...お母さん...」

ヒメ「...!」

 


和義「何があっても心配ない」

一善「...!」

ヒメ「...!

 


和義「俺達が二人を守る」

 


真理「うん」

 


キラキラァ...!

 


一善「待って...!」

 


一善が手を伸ばすと、2人は消えてしまった。

 


一善「...行っちゃった」

ヒメ「だね」

一善「...俺達も行こう」

ヒメ「うん。みんな待ってるから」

ヒメは一善の手を引いて、光の方へ走り出す!

 


一善「ありがとう...お父さん...お母さん!」

 

 

 

キィィィィィン...!!!!

 

 

 

 


一善が目を覚ますと、ヒメ、幸二、三太郎らの顔が、目の前に現れた。

 

 

 

 


ヒメ「...おかえり、一善」

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 68

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SOREMA -それ、魔!- 68

 

 

 

 

 

 

 


理想

 

 

 

 

 

 

 


第540話 「理想」

 


《決戦の地》

 


ひえりと五百旗頭が戦場に到着する。

 


ひえり「唯さん!」

唯「あ!ひえりちゃん!なぎちんさん!」

五百旗頭「私たちはまず何をすれば良いかしら」

唯「私は今ルカルカから手が離せないので、他に怪我をしている組員や一般の方の治療と、そのフォローをお願いしたいです!美波ちゃんと一緒に!」

ひえり「分かりました!」

 


唯「あと、もう少しでルカルカの応急処置が終わるので、そしたらルカルカと麗美ちゃん、幸二君達の経過も見てて欲しいです!そこらへんはヒメちゃんが今やってくれてるので!」

五百旗頭「分かったわ」

唯「そしたら私も戦線に戻ります!」

ひえり「とりあえず私は美波さんの方行きますね!」

唯「よろしく!」

 

 

 

白鶯 vs 一善

 


2人はお互いに睨み合う。粟生屋はその様子を一善の隣で見る。

 


一善は、激しい怒りを沈めながら話す。

一善「覚えてるか?3年前のクリスマス。俺の母親を殺したのはお前だな?目の下に結晶の様な痣がある」

白鶯「覚えている...わけが無いだろう」

一善「...」

白鶯「誰を殺ったかなんて、一々覚えてないさ。お前は毎日の食事を何年も覚えていられるのか?」

一善「食事と殺人を同じ様に考えるなよ」

白鶯「同じだよ。日常行為という意味でな」

一善「はっきり言うが死ぬほど不快だよ。ここまで他人に殺意を抱いたのは初めてってくらいに」

白鶯「俺は人から殺意を向けられ慣れてる。お前にとって俺は仇でも、俺にとってお前はただの虫ケラ。お前のように俺に歯向かう人間は俺の望む世界に要らん」

一善「必要とされなくて結構だよ」

白鶯「お互い様だな」

 


一善「俺には分からないんだよ。他人を傷つけて平気でいられるその神経が」

白鶯「...」

一善「お前のような人間は社会から排除するべきだ」

白鶯「他人...人間...社会...お前は何か履き違えているようだ。お前はまさか、俺とお前が対等な”人間”であるとでも思っているのか?」

一善「は?」

 


白鶯「もはや俺は人間ではない。神だ。この社会に縛られる存在ではない。俺がこれからの社会秩序を作っていく。俺にとって過去の社会等もう必要が無い」

一善「何を言ってるんだ?」

白鶯「お前は神はいると思うか?」

一善「...」

白鶯「まぁ神はいるかもしれんな。だがその神はな、この上ないほどに不平等だ」

一善「...」

 


白鶯「何故ならば、どんな人間にも平等だからだ。善人にも、悪人にも、平等だからだ。運さえ良ければ、悪人であってもずっと人生を謳歌する。運が悪ければ善人であろうとも重荷を背負って生きなければならない。つまり...」

一善「...」

 


白鶯「神は、誰のことも見ていない」

一善「...!」

 


白鶯「はっきり言って善も悪もどうだっていい。善悪は生もののようなものだ。その時々で形を変えてしまう。だから、俺が神になろう。俺にとって大事な価値基準は善悪ではない。力だ。強き者に幸せを、弱者には罰を、俺が与える。神の決めるものさしに従って、相応しい幸福を与える。どうだ?これが真の平等だと思わぬか?」

一善「...」

 


白鶯「神なんて必要なかったのさ。あんな役立たず。それなのに人間は愚かに祈りを捧げる。馬鹿馬鹿しい。もっと手っ取り早く平等を享受できるというのに」

一善「...」

白鶯「強き者が幸福を手に入れられる様に、邪魔な弱者は排除する。搾取の対象にしても良いかもな。これが俺の描く完全なる世界だ。俺はそれを今日から実現する」

一善「お前...!」

白鶯「己の持つ力と、意志を示せばお前にも幸福を与えてやってもいい。どうする?」

 


一善「白鶯。お前は害だ」

白鶯「小僧。お前は自分の言っていることが絶対に正しいと思っているのか?お前の掲げる正義はなんだ?そしてそれで、俺が裁けるのか?」

一善「お前の様な害のある人間は誰かが間引かないといけない。それは出来る人がやればいい。たまたまその役割が、俺に回ってきただけだ」

白鶯「話が通じていないのか、単に頭が足りないのか。どちらにせよお前の論理は破綻しているぞ?小僧」

 


一善「人を平気で殺すお前らが正義なわけがないだろ!!!」

白鶯「はぁ。どいつもこいつも、叶わない理想ばっかり口にする。血のない進歩などないんだよ。呆れる馬鹿ばかりだ」

一善「うるさい!お前の言ってることが正しいとか、理にかなってるとか、賢いとか、そんなのどうだっていいんだよ!俺の全細胞が、お前を全力で否定してるんだよ!」

 

 

 

 


白鶯「教えてやろう。この世にはな、叶う望みと、叶わない望みがある。低能な人間はそれを分からずに理想ばかり口にする。お前達の事だ」

 

 

 

一善「そんなこと、皆わかってるよ」

 

 

 

白鶯「...?」

一善の脳裏には共に戦い抜いた仲間の顔が浮かぶ。

 


一善「今日まで、沢山の人が死んだ。傷ついた。俺達の...仲間も死んだ」

白鶯「...」

 


一善「皆、叶わなかった理想を痛いほど直視しても、それでも希望を口にするんだよ」

粟生屋「...」

一善「目の前の壁を壊して、乗り越えて、進んだ先で見えた希望に手を伸ばして、その希望を掴んで、それが自信になって、それを繰り返して人は強くなる」

白鶯「...」

 


一善「でも...どんなに強くなっても...強くなっても...守りたかった命は、突然手からこぼれおちてしまう」

一善は、大粒の涙を流す。

 


一善「心が折れて、叶わなかった理想を思い浮かべて、それでも俺達は...その絶望の上に希望を重ね続けていくんだよ!」

粟生屋「...」

 


一善「倒れて行った仲間たちが最後に残してくれた希望の欠片。生き残った俺達は、それを大きくする義務がある。命は燃え尽きても、希望はずっと消えないんだよ」

 


白鶯「綺麗事を通り越してもはや暴論だな」

一善「ふざけるな。お前に何がわかる」

白鶯「何も分からない」

 


一善「なら教えてやるよ。叶わない理想こそ、口にする価値があるんだよ」

白鶯「?」

 


一善「理想は理想でしかない。起こってしまったものは変えられない。だからって、理想を、希望を捨てることはあってはならない」

粟生屋「...」

 


一善「俺達は...!いつか希望を実現する為に...ここにいる!!!」

 


ヒメ達は遠くからそのやり取りを見る。

ヒメ「...!」

幸二「...」

三太郎「一善...!」

 


一善「俺は、信じてる。自分にとって善い事を重ねた先に、その希望は待ってるって」

白鶯「善い事...?それは何だ?」

一善「お前にもう、希望を奪わせない。その為に」

白鶯「...?」

一善「ここでお前の息の根を止めることだ」

白鶯「フハッ...成程」

一善「お前にとってはどうだっていい話かもしれないが、俺の母親はお前が殺した。殺す人間は殺される覚悟をするべきだ。想像しろ。お前が見ているこの星の風景は、もう二度と見られないものとなる。よく焼き付けておけ」

白鶯「...!」ブチィッ!

 


一善は、理子が遺した剣・天叢雲を取り出す。

一善「ここで、死ね」

白鶯「フハッフハハハハ!!とんでもない独善だなぁ!!!まぁいいさ!!やってみるがいいさ!!」

 


粟生屋「僕は合わせるよ。一善、君に」

一善「...行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第541話 「1 2 3」

 


一善・粟生屋 vs 白鶯

 


一善と粟生屋は、白鶯相手に息のあったコンビネーションで連撃を与える、

 


〜〜〜

 


回想

 


一善とヒメは、理子の墓で手に入れた剣・天叢雲について、魔具に詳しいルカに聞いていた。

 


ルカ「ん?これ、理子さんの剣と同じじゃないかしら。だいぶ錆びてるけど」

一善「これ、理子さんの墓に行った時に見つけたんですよね」

ヒメ「そうなんですよ」

ルカ「ま?もしかしたら、本当に理子さんの剣かもね。あまり出回ってない代物だから」

一善「この剣、凄いんですか?」

ルカ「天叢雲。なかなかお目にかかれない大業魔具のひとつ。理子さんだから使いこなせてたけど、凡人はマヂカラ吸われて終わりだからまぁ魔具庫にでも仕舞っときなさい」

一善「...成程。ありがとうございます」

 


回想終

 


〜〜〜

 


一善は、天叢雲で白鶯に斬りかかる!

一善「...(ルカさんごめんなさい。どうしても仕舞っておく事は出来ませんでした。きっとこの剣は理子さんが成し遂げられなかった希望を叶える為に、僕達に遺してくれたものだと思うんです。直感ですが)」キィン!カァン!

白鶯「この剣...どこかで見たことがあるな」ガッ!キィン!

一善「...(俺は理子さんの想いも...全員の悔しい想いも全部持っていたい!俺達の世代で、魔法の悲劇を終わらせる為に...!)」

 


一善は、白鶯を大きく斬りつける!

 


ズバッ!

 


白鶯「...!」

一善「つのキング!」

一善は、天叢雲を空に投げる!

つのキング「ウォーーーー!」

つのキングは、天叢雲をキャッチする!

 


一善「くらえ!緑のエレメント!潮騒!」

一善は、魔導書ゲッターを填めた手を白鶯に伸ばす!

粟生屋「良し!当たった!」

 


一善は、そのまま手を突っ込み、白鶯から魔導書を取り出そうとする!

しかし、一善の攻撃は電撃波によって阻まれる!

ビリビリビリビリビリ!

 


一善「ちっ」

粟生屋「恐らく最後の魔導書だから結び付きが強い...!瀕死になるまで追い込まないと厳しい可能性がある!」

一善「分かりました!」

 


一善と白鶯はお互い一歩も引かずに攻撃を与え続ける!

粟生屋「...(さっきまでのダメージがそろそろ響くな。この賢眼でももう2人の動きを追えない...!)」

 


その瞬間、白鶯が粟生屋に攻撃を加える!

 


白鶯「リタイア」

 


ドォォォォォォォン!

 


粟生屋「...!!!」ガハッ...!

粟生屋は気を失って後ろへ倒れ込む。

その瞬間、高速で唯が空を横切り、粟生屋を救出した!

唯「おつかれ。あおやん」ヒューン

粟生屋「...天使...?死んだ...?僕」

 


そして幸二と三太郎が白鶯に攻撃を与える!

白鶯「...!」グハァ!

三太郎「帰ってきたぜ!一善!」

幸二「待たせたな...!」

一善「二人とも...大丈夫?」

三太郎「あぁ!バッチリだぜ!」

幸二「それは嘘だ。まだ全快はしてない」

三太郎「おい!言うなって!」

幸二「だが、戦力にはなると思う。一緒にやるぞ!一善!」

一善「...わかった!」

 

 

 

唯は、粟生屋を治療する。

粟生屋「...僕はいい...あいつに挨拶して来なくていいのか...?」

唯「まずはあおやんだよ。自分だけ死んだら許さない」

粟生屋「...」

唯「粟生屋君がボロボロになってまで戦ってるの、新鮮だった」

粟生屋「...君は...不謹慎だな」

唯「ごめん...そうだよね。命をかけて戦ってくれてるのに...ごめん」

粟生屋「いや冗談だよ...僕もそう思うし...それに、戦ってるのは...君もおなじだろう?君のおかげで...何人の味方が九死に一生を得たか...」

唯「私には...これしか出来ないから...」

粟生屋「...ひとまず、ありがとうと言っておこう...」

 


白鶯は一善らの攻撃と、魔導書を一気に失った反動で、マヂカラのコントロールが効かなくなり始めていた。

 


白鶯「うっ...ははっ...はっはっはっ!!まだだ...もっと...もっと...!お前らごときに潰される俺ではないわ...!」

 


一善、幸二、三太郎、つのキングは、白鶯に集中攻撃を食らわせる...!!

 


粟生屋「...(一人一人の力は、昔の僕達の方が洗練されていたかもしれない。だが、彼らのコンビネーションには目を見張るものがある。攻撃の練度で言えば...彼らの方が僕らよりも数段ハイレベルだろう...!)」

 


幸二「二人とも...!あれをやろう!」

三太郎「よし!」

一善「うん!」

 


幸二「インパクトマグナム!!」

一善・三太郎「「123(ワンツースリー)!!!」」

 


三人の合体技が白鶯を貫く!!!

 


ドッカーーーーーーン!!!!

 


白鶯「...!!(これが...エレメントの力...なのか...?!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第542話 「鎖」

 


白鶯は吹き飛ばされ、一善らは攻撃を重ねる!

 


一善「まだ終わらせないぞ。白鶯!!!!」

ドォォォォォォォン!!!

 


白鶯は言葉にならない咆哮を上げる!

 


一善「来い...!つのキング!!」

 


つのキング「ウォーーーー!!」

一善「緑のエレメント!!巌窟王・覇!!!」

つのキングは白鶯に向かい突進する!!

 


幸二「蒼き青のエレメント...!飛雷禍哭!!」

三太郎「朱のエレメント!!ジャスティス・ザ・フレア!!」

 


ドォォォォォォォン!!!!

 


一善「つのキング!!」

つのキング「ウォーーーー!!」

 


つのキングは大剣と化す!!

 


一善「大剣豪...!!」

一善は、右手で黄金の剣を持つ。そして左手に天叢雲を持つ。

一善「緑のエレメント・極の型(きわみのかた)!剣聖!」

 


2本の剛剣が白鶯をぶった斬る!!!

 

 

 

白鶯は再び咆哮を上げる!!

白鶯を中心に発生した強烈なマヂカラ波が周囲を破壊する!!

 


幸二「...!!立っていられない!!」ドォォォォォォォン!

三太郎「うわぁぁぁぁ!!」ドォォォォォォォン!

一善「...!」ドォォォォォォォン!

 

 

 

白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 

 

 

 


ドォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 


辺り一面が更地になってしまった!!

 

 

 

一善が目を開け、立ち上がると、そこにあったはずのビルや道路が全て更地になっていた。

 


一善「...!皆は!?」

 


一善が額から流れ出る血を拭いながら辺りを見ると、コンクリートの下敷きになった五百旗頭やひえり、ヒメなどの姿が見えた。

 


一善「...!皆......皆...!」

ヒメ「うぅ......一善......」

 


幸二や三太郎もコンクリートの山の上で血を流し失神している。

もはや一善以外に意識を保てている人間はいなかった。

 

 

 

 


ギリャァァァァァァ!!!!!

 

 

 

 


そして、一善が空を見ると、龍の姿になり、のたうち回る様に飛び回る白鶯の姿がそこにあった。

 


一善「...!(暴走してる...?!)」

 


そして、一善が再び辺りを見ると、ガラス片やコンクリートに派生した微弱なマヂカラから生まれた魔者が発生していた!

 


魔者「ギリャァァァァァァ!!」

 


一善「...(冷静になれ...冷静でいろ...!まずは魔者を全滅させるべきだ...!周りの人間を守る...!)」

 


すると、白鶯が堪えきれなくなったものを吐くように、エネルギー光線を放出する!!

 

 

 

 


ドォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 


一善「......!」

一善は驚愕の表情を浮かべる。

 


なんと、約2キロ先まで、地図上の建物が一瞬にして破壊されたのだ!!

 


一善「...!!(どうする...?白鶯を止めないと被害が拡大する...でも魔者を退治しないと仲間が...!!どうする...?!)」

 

 

 

シャリン!!

 

 

 

するとそこへ、1人の青年が現れる!

青年は鎖の様な武器で、次々と魔者を退治していく!

 


一善「...!(誰だ?!)」

青年「魔者は僕に任せてくれ!僕は魔法を使える!!」

一善「...?!」

 


廻「僕は履術者だ!北海道からニュースを見て最速で飛んできた!味方だ!」

一善「...!」

廻「まずは無理のない範囲であの化け物を止めて欲しい!僕がこっちで時間を稼ぐ!束の間だけど温存してくれ!」

 


その青年の名は廻桜志郎。

彼は魔裁組の人間ではないが、蒼魔導書第十章 鎖の書の履術者である。

一善「...!感謝します!!」

 


魔者「ギリャァァァァァァ!!」

廻は、多数の魔者を次々と倒す!

廻「迅雷連鎖(じんらいれんさ)!!!」

 


ビリビリビリビリビリィ!!!

 


一善「...まずは、白鶯を倒す...!つのキング!!」

つのキング「ウォーーーー!!!」

 


すると、一善はつのキングの頭に手をやる。

 


一善「つのキング。今までありがとう。俺を色々な所に連れて行ってくれて。寂しさを埋めてくれて。そして、一緒に戦ってくれて」

つのキング「ウォ?」

一善「辛い思いをさせたね。本当にありがとうね。つのキング」

つのキング「...」

 


一善「これが最後の戦いになる。だから、最後に手伝って欲しいんだ。俺を...俺達を勝たせて欲しいんだ」

つのキング「...」

一善「沢山の人の願いを叶えに行こう。あいつを倒して、皆で笑うんだ」

つのキング「...」

 


一善は、涙を流しながら続ける。

 


一善「でも...ごめんね...つのキング。君はその時には...もういないかもしれない...」

つのキングは、心配そうに一善を見つめる。

一善は、つのキングを抱きしめる。

 


一善「大好きだよ...つのキング。これからもずっとずっと。俺は君を忘れない」

つのキング「ウォ...」

一善「俺を...平和な世界に連れて行って下さい...つのキング...!」

 


すると、つのキングは、一善に背中を向けた。

 


つのキング「ウォーーーー!!!!」

一善「...!!」

一善は、涙を腕で拭い、つのキングに乗る!

 


一善「行こう...つのキング!!!」

つのキング「ウォーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第543話 「青年の恩返し」

 


唯と粟生屋は、コンクリートの山から脱出する。

 


血塗れの2人は、朦朧とした意識で肩を組んで歩く。

 


唯「ハァ...ハァ...大丈夫?あおやん?」

粟生屋「...幻覚が見える...死ぬかも...」

唯「幻覚...?大丈夫...?!うっ...」

粟生屋「...走馬灯かな...”懐かしい顔”が見えるんだよ...てか...君も相当深手な傷を負ってるじゃないか...それに治療に使ったマヂカラも馬鹿にならないだろう...」

唯「...私も...幻覚が見える......あれって...」

粟生屋「やっぱり...見えるよな...」

 


唯・粟生屋「「廻」ん」

 


2人の目の先で、廻が戦っていた。

 


廻は、一通り魔者を倒し、2人の元へ駆け寄る。

 


廻「大丈夫ですか?!......って?もしかして...!!君たち...!!!唯ちゃん?粟生屋君?!」

唯「あ...あはは...これが走馬灯か...」

粟生屋「僕達も...ここまでか...」

廻「いやいやいや!違います!!久しぶり!!本物だよ!?!」

唯「え...なんで...」バタン

粟生屋「こんにちは...」バタン

 


廻「!!(この2人限界だ!折角再会出来たのに...!死なせてたまるか!!)」

廻は、2人に自分のマヂカラを分け与える!

 


唯「ゴホッゴホッ...めぐりん?...めぐりんなの?」

廻「うん。久しぶり。遅くなっちゃて、本当にごめん」

粟生屋「...北海道から来たのか?」

廻「うん。ニュースで見て、魔法に関する何かが起きてるに違いないって思ったら...想像以上のことが起きてた」

粟生屋「......だとしたら早すぎるな...やっぱり幻か...」

廻「本物です!」

すると、唯が、廻の足をがっしりと掴み、目をまっすぐ見て話す。

唯「お願いがあるの...皆を助けて欲しい...皆瓦礫の下にいると思うから...一人でも多くの仲間を助けて欲しい...お願いします」

廻「...わかった!任せて!」

 


廻は、鎖を駆使して、瓦礫を次々に破壊。瓦礫に埋まった仲間達を次々に救出した。

 


ヒメは辛うじて足を引き摺る程度で、意識は保てていたため、廻と共に他メンバーの状況を確認する。

 


重体

はるか

ジャスティ

虎走

九頭龍坂

岩田

三太郎

幸二

 


重症

麗美

ルカ

村松

ひえり

粟生屋

 


行方不明

美波

百目鬼

五百旗頭

 


ヒメは簡易ベッドの上で横並びに寝転がるメンバーを見ながら言う。

ヒメ「魔裁組は、あと女子が2人、男子が1人いるはずなんですが...」

廻「探します...!」

 


そこへ五百旗頭がやってくる。

 


五百旗頭「ハァ...とんでもないわね...白鶯蓮源」

ヒメ「五百旗頭さん!」

廻「!」

 


ヒメ「無事でよかったです。美波ちゃんと百目鬼君以外はここに!」

五百旗頭「全員酷い怪我ね。犬飼達含めて研究班も相当深手をおってるわ」

ヒメ「そんな...ちなみに一善は意識があって戦闘中です。でも、正直1人じゃ太刀打ちできる相手じゃない...」

廻「ぼ、僕も戦えます!」

五百旗頭「君は?」

 


廻「廻桜志郎と言います。履術者です。人間国宝の五百旗頭渚博士ですよね。存じ上げてます。僕もある程度の戦闘経験があるので、戦力になるかと思います」

五百旗頭「...成程」

ヒメ「...」

廻「僕は魔裁組にある恩があるんです。東京が大変なことになってるって聞いて、北海道から飛んできました。僕にできることなら、何でもやります!だから、なんなりとお申し付けください!」

 

 

 

 

 

 

 


第544話 「先導者」

 


ジャスティンの脳内》

 

 

 

ジャ「......」

 

 

 

”俺、死んだのか?”

 


目の前は真っ暗だ。

 


”そうか。死んだのか。結局俺は、役に立たなかったよ。結構頑張ったんだけどなぁ”

 

 

 

すると、ジャスティンのイメージの中に、ひとつの顔が浮び上がる。

 


”まだ終わってないよ”

 


ジャ「...!」

 


理子「まだ終わりじゃないよ。護」

 


ジャ「...!理子姉さん」

 


理子「護。よく頑張ったね。見てたよ、君の戦い。それと、君が作ったチームの戦い」

 


ジャ「...!」

 


理子「私が出来なかったことをやってくれたんだね。護は凄いよ。今の皆は紛れもなく最強のチームよ。私が言うんだから、間違いない」

 


ジャ「...!」

 


理子「今、護の仲間が戦ってる。皆の傷を負けにしないように。皆を守るために」

 


ジャ「...!!」

 


理子「だったら、行かなくちゃ。護はもう守ってもらう子じゃない。人を護れる、強い子だから」

 


ジャ「...姉さん!」

 


理子「立派な魔法使いとして、使命を果たしなさい」

 


そう言って理子は消えた。

 


ジャ「姉さん...姉さん...!!」

 

 

 

 


姉さん。俺を認めてくれてありがとう。

 

 

 

でも、もう少しだけ待ってくれ。

 

 

 

姉さんの言う通り、まだ使命を果たせてないから──────

 

 

 

《決戦の地》

 


ジャスティンは簡易的ベッドの上で目を覚ました。

 


ヒメ「...!ジャスティンさん!」

五百旗頭「神野くん?」

 


ジャ「...皆は?」

 


ジャスティンは隣で目を瞑る仲間を見て悟る。

 


ジャ「皆...本当によく頑張ったんだね」

 


ジャスティンは立ち上がる。しかし、ふらついてろくに歩くことが出来ない。

 


ジャ「...(くそ...マヂカラの枯渇が激しい...このままいっても犬死か...?でも、いないよりは...)」

 


ジャスティンは、一善の元へ向かう。

 


五百旗頭「神野くん!まだ寝てないと、死ぬわよ!」

ヒメ「マヂカラが、明らかに枯渇してます!」

ジャ「じゃたなぎちん。俺に力を分けてくれ。エレメントでも何でも、俺に全部くれ。俺はやらないと行けないんだ。リーダーとして、先輩達に渡されたバトンを、落としたくない」

五百旗頭「エレメントなんて、マヂカラの土俵がない今のあなたに打っても、適合できなくて命が危険に晒されるわ!無理よ!」

ジャ「でも!戦わないと...俺が...!」

 


すると、廻が口を開く。

 


廻「俺のマヂカラでも...大丈夫ですか?」

ヒメ「?」

五百旗頭「?」

ジャ「...あなたは?」

廻「詳しい説明は後で!俺のマヂカラを全部あげます!きっと僕よりあなたの方が強いので!」

ジャ「...?」

五百旗頭「...(天然のマヂカラの譲渡”療”なら、回復しながらマヂカラを与えられるから、安全性は高い...ここは彼にかけてみるか)」

 


廻「行きます!」

 


ボワッ!

 


ジャ「...!染みるぅ...!」

五百旗頭「恐らく、本調子の10%にも満たない状態だけど、それでも行くのよね」

ジャ「はい。なぎちんが止めないこともわかってる」

五百旗頭「...何年見てると思ってんの?君のこと」

ジャ「それはお互い様」

 


廻「頑張ってください」

ジャ「感謝します。では」

 


ジャスティン、一善の元へ──────!

 

 

 

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 67

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SOREMA -それ、魔!- 67

 

 

 

 

 

 

 


全て終わらせる

 

 

 

 

 

 

 


第535話 「空き容量」

 


《決戦の地》

 


ルカ「...(何が起きた...?そんなことよりあの子は...?)」

三太郎「へっ。危なかったな」

ルカ「アンタは」

三太郎「間一髪だったなぁルカルカ。でも俺が来たからもう安心だ」ドン!

 


麗美とルカは、三太郎によって落下を免れたのだ。

 


ルカ「その呼び方やめろ!」

三太郎「ちぇっ。ありがとうくらい言われたいよねー」

ルカ「ちっ。助かったわよ。感謝するわ。ってかあの子は?」

三太郎「麗美?それなら向こうで」

麗美は、地面に横たわっていた。

 


ルカ「...おチビちゃん!!!」

 


ルカは、麗美の元へ駆ける。麗美は目を覚まさない。

 


ルカ「アンタ...馬鹿よね...!何してんのよ!!」

ルカは、麗美を揺する。

 

 

 

ルカ「もう...ほんと...ほんとに...」

ルカは肩を震えさせる。

 

 

 

三太郎「多分だけど、麗美生きてるよ?」

ルカ「は?」

三太郎「うん」

ルカ「いや、あんた見てた?あんなもんモロに喰らって、私だって即死よ?それを、この子が...?」

 


すると、麗美が目を覚ます。

 


麗美「...舐め...すぎ...」

ルカ「...?!」

三太郎「麗美さ、そーゆー技持ってんの」

ルカ「は?!」

麗美「とにかく......もう無理だから...後は頼んだよ」

ルカ「ちょっとまてぃ!何?無策で飛び込んだんじゃなかったの?!言葉が足らん過ぎるわ!アホ!」

麗美「...うるさ。...命の恩人に説教かよ」

ルカ「...!」

 


三太郎「まぁまぁ。とにかく助かったんだからよしってことで。麗美は美波達に任せて、ルカルカはまだやれるか?」

ルカ「...ったりまえよ!まだやり足りないわよ」

ルカが立ち上がろうとすると、麗美がルカの服の裾を掴む。

 


ルカ「...?」

麗美「...貸しは...返した!」

ルカ「...はいはい」

 


ルカは、立ち上がり、三太郎に着いていく。

三太郎「もうすぐ首を再生させられる。早く行かないと」

ルカ「アンタと私でやるわけね。アンタ、何ができるの?」

三太郎「2人だけじゃねえぜ」

ルカ「?」

 

 

 

幸二「自分らもいます」

唯「ルカルカ!無事でよかった!!」

幸二と唯がそこへ現れた。

ルカ「唯...!」

 


幸二「それに、これ」

ルカ「...魔導書?」

 


幸二は手に魔導書を持っている。

 


幸二「封印の書。白鶯から奪ったものです」

ルカ「あいつ。いくつ魔導書抱え込んでんのよ」

幸二「でも恐らく、残りの保有していない魔導書の数を考えても、白鶯の宿す魔導書はわずかでしょう」

三太郎「俺たちが来るまでに、ジャスさん達が回収してくれたって聞いたからな!」

 


唯「不死の書と、元々持ってた龍の書は回収出来てないから、最低2つはあると思うけど」

ルカ「成程」

幸二「奴はもう魔者です。残りの魔導書を全部奪えばゲームセット、体が滅びます。そうでなくとも、とにかく魔導書さえ奪えば、あとはどうとでもなります」

唯「これ以上、白鶯君に人を傷つけさせたくない。だから早く魔導書を全部回収しよう」

 


ルカ「そうね。とっとと、うっ...!」

ルカの体の傷が疼く。

唯「大丈夫?!ルカルカ!」

ルカ「問題ないわ...待たせたわね、いくわよ」

 


三太郎「よし俺たちで、白鶯を倒すぞ...!」

 


4人の視線の先には、首の戻った白鶯がいた。

 


白鶯「めでたい奴らだな」

唯「白鶯君...」

 


白鶯「何人代わりが来ようと、押され気味なのはお前達の方に見えるが」

幸二「余裕ぶっこいてるみたいだが、お前もそうとう削られてるみたいだが?」

幸二は、封印の書を白鶯に見せる。

 


白鶯「どれだけ魔導書を奪われようが構わん。この身に宿った2つの魔導書さえあれば、後はお前たちを葬ったあとでゆっくりと回収し直せるからな」

幸二「...(2つ...不死の書と龍の書か...奴を信じるなら、残りの魔導書は2つだけ...嬉しい誤算だが、期待しすぎずにいよう)」

するとルカが、白鶯の後ろに回り込んでいた!

 


ルカ「ベラベラとうるさいわよ」

 


ザクッ!

 


ルカは白鶯の首を鎌で吹っ飛ばした!

しかし、首が落ちた白鶯は、その腕でルカの首元を掴んで持ち上げる。

そして、首を再生させながらルカに話しかける。

 


白鶯「お前達が枷を外してくれたおかげで、体が動きやすくなった...やはり、魔導書の抱え込みは体に毒だな」

白鶯は5つの魔導書を宿していたが、2つになったことで、お互いの魔導書によって抑えられていたマヂカラから解放され、残り2つの魔導書の能力を効率的に扱えるようになった。

 


幸二「三太郎!行くぞ!」

三太郎「あぁ!」

幸二と三太郎は、白鶯がルカに気を取られている間に、魔導書を奪いに白鶯の背中に迫る!

 


唯は空から白鶯を包囲する。

 


ルカ「くっ...アンタ、ボロいパソコンかよ」

白鶯「ちっ」ブチッ

 


ボワッ!!!!

 


白鶯がルカを持っていた手から炎があがる!

 


唯「ルカルカ!!!」

ルカ「.........!」ボワッ...!

ルカは白目を向いて気を失った!

 


幸二「...白鶯!!!」

三太郎「くらえ!!!!」

 


幸二らが白鶯に攻撃を加えようとすると、白鶯から龍のオーラが数体現れ、幸二らを掴んで遠くへ突き放す!!

 


幸二「うわぁ!」

三太郎「くそっ!」

唯「!!ルカぁ!」

 


ドーーーン!!!

 


3人は、白鶯から遠くへ離される。白鶯は、白鶯の足元に倒れたルカを見下ろす。

そして、ルカの持っていた鎌を両手で持ち、振りかぶる。

 


唯「ルカルカ......ルカぁ!!」

幸二「......!」

三太郎「ルカルカ...!(ちっ、龍に噛まれて、体が動かねぇ!)」

唯「白鶯君...お願い...やめて......」

 


白鶯は鎌をルカ目掛けて振り下ろす!

白鶯「沈め」

 


ゴォォォォォォ...!

唯は悲鳴をあげる!

 


その時。

 

 

 

 


ドォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 


白鶯は横から何者かに凄まじい蹴りをくらって吹き飛ばされた!!!

 


白鶯「また横槍か...」

 


ルカ「......」

ルカは、白鶯では無い別の人間の足元を見る。その男は、膝の埃を払いながら言った。

 


粟生屋「ふぅ。お待たせ」

ルカ「粟生屋......遅いわよ......」

 


粟生屋到着──────!

 

 

 

 

 

 

 


第536話 「星が降る夜に」

 


粟生屋「ふぅ。お待たせ」

ルカ「粟生屋......遅いわよ......」

 


唯「あおやん...!あおやん!!!」

唯は号泣してルカの救出を喜んだ。

 


粟生屋は、唯達が掴まれている龍を払う。

 


粟生屋「まさか君がここまでコテンパンにやられるとは」

ルカ「私だってね...結構やったのよ......」

粟生屋「東海林、僕がやるから、その間に彼女の治療を」

唯「え...でも」

粟生屋「大丈夫...だって僕...」

 


唯「...」

 


粟生屋「最強だから」

 


唯「...う、うん!そ、そうだね!」アセアセ

ルカ「......キモ」

 


バタッ

 


ルカは気を失った。

 


粟生屋「安心して眠りたまえ。僕がカタをつける。天堂幸二、それとその友達。手伝いたまえ」

幸二「...はい」

三太郎「俺は三太郎だ!モブじゃねえぞ!」

粟生屋「なら活躍してそれを示せ。僕に食われないようにね」

三太郎「当たり前だ。主役は俺だからな!フン!」

粟生屋「...」

幸二「(なんの話ししてんだ、この人達)」

 


白鶯がやってくる。

 


白鶯「久しいな。粟生屋昴」

粟生屋「随分と醜悪な姿になったな。白鶯」

白鶯「お前はだらしなくなったな。先程の蹴りも、さほど喰らわなかった」

粟生屋「あれは10パーも出してないからね」

白鶯「よく言う」

粟生屋「さ、何でもいいけど、お話しに来たんじゃないんだ。わかるよね」

白鶯「俺も血が騒いでいるよ。またお前は俺に負けに来た...!」

粟生屋「さぁ、今度はどうなるか...」

 


白鶯「...来い!」

 

 

 

ヒュン!!!!

 

 

 

粟生屋は超高速で白鶯に迫る!

 


幸二「!!!」

三太郎「!!(見えねぇ!)」

 


粟生屋と白鶯は目にも止まらぬ速さで攻撃をぶつけ合う!!

 


幸二「...手伝えって言われても...」

三太郎「見えねぇんじゃ...何も出来ねぇ」

 


白鶯は龍の姿になり上空に飛ぶ。粟生屋も宙を舞うように、白鶯と空中戦を繰り広げる!

 


白鶯「もっと...広く使おう!」

 


ドォォォォォォォン!!!

 


白鶯が、粟生屋をビル3つ分突き破る勢いで吹き飛ばす!

 


粟生屋は吹き飛ばされた先で周りを見る。

 


粟生屋「一般人の避難は済んでる...ならもう少し広く使おう」

 


粟生屋は立ち上がる。

粟生屋「さっきまでの場所じゃ、僕には狭すぎる」

 


粟生屋は空に浮かぶ白鶯目掛けて攻撃を放つ。

 


粟生屋「虚重弾!!!」

 


白鶯はそれを尻尾を巻いて受け止める。

粟生屋は宙へ跳び、攻撃を受け止めた白鶯ごと蹴り飛ばす!

 


ドォォォォォォォン!!!

 


高速道路を真っ二つに破壊しながら、白鶯は地に落ちる。

 


そこに粟生屋が隕石を数弾落とし込む!!

 


ビル群だった辺り一面は、ほぼ更地になった。

 


幸二「...圧倒的過ぎる...!あの二人の戦いは異次元だ...!」

三太郎「俺達も行くぞ!隙を見てれば何かしらやれるはずだ!俺はモブじゃねぇ!!!」

 


白鶯は人間体に戻る。

 


白鶯「こっちの方が、お前とやるにはいいな。さっきのは的がデカすぎた」

粟生屋「変わらないだろうけどね。相手してやるから来いよ」

白鶯「デケェ口叩きやがるなぁ。いつもお前は」

 

 

 

 

 

 

 


第537話 「カノ」

 


粟生屋 vs 白鶯

 


シュッ!バッ!ガッ!ドカッ!ヒュンッ!...!

 


拳を振る音や、空を蹴る音が遠くまで響く!

空振りの衝撃波ですら、周りの建造物が耐えられるものではなく、更に辺り一面が崩壊していく!

 


粟生屋「...!」

粟生屋がパンチを外す!

白鶯「隙あり!」

 


ドォォォォォォォン!

 


白鶯の攻撃が、粟生屋の顔面に炸裂する!粟生屋は目の上を切り、出血した。

 


粟生屋「...血か」

 


白鶯「油断するなよ?」

白鶯は、粟生屋目掛けて衝撃波を放つ!

 


粟生屋はモロに攻撃を食らってしまう!

粟生屋「......!」

 


幸二「粟生屋さん!」

すると、裏に回っていた三太郎が白鶯に殴り掛かる!

白鶯は、三太郎の攻撃を全て避ける!

白鶯「当たっていれば、なかなかの威力だろうな」ヒュンッ!ヒュンッ!

三太郎「ちっ...!」

幸二は遠くから白鶯目掛けて弾を放つ!

白鶯はそれを弾きながら、三太郎の攻撃を避け続ける!

 


白鶯「あの男のおかげで、目が慣れた。お前達の動きが全てスローモーションに見えるよ」ヒュンッ!ヒュンッ!

三太郎「クソっ!」

幸二「...!」

 


その時、白鶯の動きが止まる!

白鶯「...?!」

三太郎「うぉぉぉぉぉ!!!」

 


ドォォォォォォォン!!!!!

 


三太郎の攻撃が、白鶯にクリーンヒットした!!!

 


白鶯「...!!!(成程な...アイツだ...)」

 


粟生屋「ハァハァ...」

粟生屋が、白鶯の動きを重力で一時的に止めていたのだ。

 


幸二「三太郎!あれやるぞ!」

三太郎「おう!」

 

 

 

幸二「インパクトマグナム!023!!!」

 

 

 

2人は合体技を白鶯に食らわせる!!!

 


ドォォォォォォォン!

 


白鶯は壁を突破って遠くへ飛んでいく!

 

 

 

〜〜〜

 


粟生屋は、朦朧とする意識の中で、ふと、昔のことを思い浮かべる。

 


〜〜〜

 


粟生屋母「もっと努力しなさい。私達と家族でいるということは、そういう事よ」

 


粟生屋父「お前は俺達家族の失敗作だ」

 


粟生屋母「粟生屋の名を持っていて、恥ずかしくないのかしら」

 


粟生屋の家は、由緒正しき上流階級の一家である。

父は政治家、母は一流メーカーの令嬢で次期社長候補。年の離れた兄は日本有数の医大を主席で卒業し、今は医者。

そんな一家で育てられた粟生屋は、常に高いレベルの成績や結果を求められて生きてきた。

 


粟生屋は父や兄ほど数字に興味がなく、家では落ちこぼれ扱いを受けていた。

 


そんな粟生屋だが、昔から魔法が使えたことで、内心家族を見下しながらも、息苦しさを感じつつ生きていた。

 


兄は父や母ほど厳しくなく、粟生屋とも普段から会話を交わしていた。

 


粟生屋は兄の勤める病院にたまに足を運び、休憩時間に話をしたりしていた。

 


粟生屋が中学に進学したくらいのとある日、いつも通り粟生屋が病院に行くと、兄が担当していた少女と話す機会があった。少女の名前はカノ。カノは、心臓の持病があり、入院していた。カノは無愛想で、幼いながらどこか達観したような雰囲気のある少女だった。

 


カノ「お医者さんの弟の人ですよね」

粟生屋「弟の人ってなんだよ。昴でいい」

カノ「じゃあ、昴」

粟生屋「いや、さんはつけてね?」

カノ「昴はさ、人生楽しい?」

粟生屋「(無視された)うーん。普通かな。なんで」

カノ「いや、楽しくないなら、頂戴よ、昴の時間」

粟生屋「...はい?」

 


カノ「私、いつ死ぬか分からない。だから、当たり前のように、辛い顔して生きている人を見ると、その分頂戴よって思っちゃう」

粟生屋「...」

カノ「健康だった時は、もがいて生きるの馬鹿みたいって思ってたし、周りの子達とか、運動会とかお受験とか?何熱くなってるんだろって思ってたけど、今私は、やりたくてもそれが出来ない」

粟生屋「なるほど?」

カノ「別に私は熱血ごっこがしたいわけじゃない。やり遂げたいこともないし、未練もそんなにない。ただ私は、自分の限られた時間を、全部自分の好きなように使いたい。その時間を得る、つまり、生き延びるためには、たとえ醜くても、今をしぶとく生きてやるって、思った」

粟生屋「...」

 


カノ「死んだら一番悲しむのは、今日まで懸命に生きてきた自分自身だし」

 


粟生屋「...!」

カノ「だから、私は自分のことだけは裏切りたくない。私、可愛いから」

粟生屋「...」

 


カノ「どんなに醜くても、私は生き抜いてやる。それでそのあと、めちゃくちゃ遊んでやる。人生を謳歌してやる。美味しいもの沢山食べて、一日中映画館で映画見て、世界中を旅したい。自分の時間の使い方を、自分で決めたい」

粟生屋「ほう」

カノ「皆、明日が当たり前にあるって思ってるから、時間を勿体なく使ってる人が多い。自分に残された時間なんて、誰も教えてくれないのに」

カノは、潤んだ目で呟いた。

粟生屋「...!」

 


カノ「昴はどう?適当に使ってるんだったら、その時間私に頂戴よ」

 


粟生屋「...嫌だね」

カノ「...!」

粟生屋「ありがとう少女。君のおかげでハッキリしたよ。そうだな。じゃあ僕は、君が呆れるくらい自分の時間をテキトーに食いつぶしてやる。やりたくない事は一切しない。人に指針を決めさせない。僕の描いた人生だけをテキトーに過ごす。マジになったりすることなくね」

カノ「は?あと、カノって呼んで」

 


粟生屋「カノ。僕もね、誰かの期待に応えたりとか、やりたくないことをやらされてる時間が嫌いでね。本当にうんざりだよ。うん。決めた。僕は僕のやりたいようにやる」

カノは苦笑いを浮かべて言った。

 


カノ「...まぁ、よかったね」

粟生屋「うん。ありがとう、カノ」

 

 

 

1週間後、粟生屋は兄からカノが亡くなった事を知らされる。

 


回想終──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第538話 「own way」

 


《決戦の地》

 


粟生屋は、過去に白鶯に敗れた黒い森での事を思い浮かべる。

 


粟生屋「マジになったら...負け...」

 

 

 

 


だって、かっこ悪いもんね。

 

 

 

僕は、テキトーに、スマートに生きていきたいんだよ。

 

 

 

あの時、カノに誓っただろう?僕は絶対に、自分の決めた道を生きるって。

 

 

 

 


...でも、本当にそうか?

 

 

 

 


今の僕は、何だ?

 

 

 

 


自分のやりたいことをやる、やらされたくないことをやる。

本当の思いはこれだろう?

 


でも果たして、今の僕は”本当にテキトーに生きたい”と思っているのか?

 

 

 

白鶯に負けた時僕は、足掻くのがかっこ悪いと思った。

血塗れで抗うのがかっこ悪いと思った。

だってスマートじゃないから。

テキトーじゃない、マジになってるから。

だから僕はあの時、白旗をあげた。

 

 

 

 

 

 

でも、その後に残った、心の中の黒いしこり。

 

 

 

 

 

 

違和感があった。何かが違うと思った。

でも僕は、自分の頭の中にある、スマートに生きる自分を守れたと、言い聞かせるように、そのしこりの上からブラインドをかけた。

 

 

 

ずっと続いた違和感、そして何より。

 

 

 

僕の中のカノは笑ってなかった。

 

 

 

 


今もそうだ。僕は白鶯にやられた。ここで足掻くのはかっこ悪い。後輩に見られてみっともない。こんなの僕じゃない。ここで退散するのが一番いい......

 

 

 

違うだろ。

 

 

 

 

 

 

そうか、わかったよ。

 

 

 

僕はずっと自分に”嘘をついていた”んだ。

 

 

 

凝り固まった親と同じで、僕はずっと、”スマートな自分”に雁字搦めになっていた。

 


主人公は僕だろう?

 


ここで僕は、きっとやらないといけないんだ。

 


本当にやりたいことを、やらないといけない。

 

 

 

今やりたいのは、スマートな自分を守ることじゃない。”白鶯”を倒すことだ。

 


それは僕の醜態を晒すことになるかもしれない。血塗れで戦う僕は不細工かもしれない。

 


もちろん、テキトーに戦って勝てる奴じゃない。

 

 

 

今日までのスマートの自分は、今の僕を笑うかもしれない。周りの人間からは”らしくない”と言われるかもしれない...

 

 

 

 


でも、そんなの──────

 

 

 

粟生屋は立ち上がる。そして呟く。

 

 

 

粟生屋「知らねえよ」

 

 

 

粟生屋の目には、白鶯と激戦を繰り広げる幸二と三太郎が映っている。

 


粟生屋「随分と時間を無駄にしてしまったよ、カノ。一旦”俺”のプライドを預かっててくれないか?」

粟生屋は拳に力を込める。

 


粟生屋「スマートな僕とは、白鶯(あいつ)を倒して落ち合うよ」ゴゴゴゴ...!!

 


”かっこいいよ。昴”

 


粟生屋「今は醜くても、何だってしてやる。紛れもなく、必死で!」

 

 

 

 

 

 

 


第539話 「全て終わらせる」

 


ゴォォォォォォ!!!!

 


粟生屋にエネルギーが漲る!!!

 


ヒュンッ!!

 


粟生屋は、3人のいる方へ向かって突き進む!

 


粟生屋「まだ終わってない!!白鶯!!!」

白鶯「...来たか!」

 


粟生屋らは、白鶯に攻撃をしながら会話する。

 


幸二「粟生屋さん!」

三太郎「動いて大丈夫なのか?」

粟生屋「そんなこと言っている場合じゃないだろう!まずはこいつを止めないと!」

三太郎「...おう!」

幸二「!」

粟生屋「狂渦(くるうず)!!!」グゥィィン!!

白鶯「...!!(こいつ、さっきより士気が高まっている?!)」

 


三太郎「朱のエレメント!!ダイナマイトエモーション!!!」ドォォォォォォォン!

白鶯「...!!」グハァ!!

幸二「操天!!落ちろ雷!!」ゴロォン!

白鶯「くっ!」グハァ!!

 


白鶯は吹き飛ばされる!

 


幸二「ハァハァ...ハァハァ...」

三太郎「くっ...ハァハァ...」

粟生屋「...(僕は束の間休めたが、この2人はもう限界をとうに越えてる...!次の攻撃に耐えられるか...!)」

三太郎「ハァハァ...まだ立ってくるぞ、行けるか?幸二?」

幸二「ハァハァ...あぁ...うっ...」

三太郎「幸二!」

粟生屋「...(他の兵力も軒並みダウンしてる。回復役が不足してる故東海林を戦闘に回す余裕もない...後は”彼”が来てくれれば多少は楽になるが...!)」

 


白鶯は再び立ち上がった。

 


白鶯「成程、全身傷だらけになろうと、目はまだ生きてるな」

幸二「...当たり前だ」

三太郎「お前なんかに、魔裁組が負けてたまるかよ...!」

白鶯「ははっ。ヒーロー気取りなお前達も、なかなかのジリ貧の様だが、そろそろ三人纏めて沈めてやろうか」

粟生屋「ふっ。甘いね、白鶯」

白鶯「あ?」

 


粟生屋「こいつらはな、何度やられても諦めない。何度倒されようと、傷を重ねようと、立ち上がる力を持ってる。僕が見てきた中でも、最強のチームだよ」

白鶯「...」

 


粟生屋「それにね、お前は少々やりすぎた。沢山のものを奪ったね。奪う人間は、奪われる覚悟もした方がいい」

白鶯「なんの事だ?」

 


粟生屋「奪われる者は弱者では無い。奪われた怒りや悲しみはやがて大きな力となり、奪った者はその報いを受ける。お前にもう未来はないよ。白鶯」

白鶯「戯言か?寒い事を言うようになったもんだ、粟生屋。その続きは一旦鏡を見てから言うべきだと思うが?」

粟生屋「いや。もう終わった。ほら、お前が嫌いな”敗北”が音を立てて近づいてきたぞ...!!」

白鶯「...?!」

 


グ     シ     ャ     !!

 


一善「...」

 


白鶯の背後からつのキングが高速で飛んできたのだ!

一善は、一瞬にして白鶯の横を素通りし、粟生屋らの元へ降り立った。

 


白鶯は、自分の腹部の出血を見る。

 


一善の手には、不死の書が握られていた。

一善と、ヒメはつのキングから降りる。

 


幸二「一善...!」

三太郎「やったんだな...!一善!」

粟生屋「ふっ」

一善「遅くなってごめん」

 


白鶯「また新しい味方か」

 


一善は白鶯に背中を向けたまま、白鶯を睨みつける。

 


一善「あ゛?」

白鶯「...」

一善は、白鶯に体を向ける。

 


一善「ヒメ、まずは幸二達を治療して欲しい。その後、周囲の手伝いをしてくれ。出来るだけ多くの友達を助けたいんだ」

ヒメ「うん。わかった」

幸二「いや、まだ、戦える」

三太郎「俺も...!」

一善「ありがとう。でも、一旦休んでくれ。まずは傷を治してから。命を賭して戦った仲間の為にも、簡単に死んじゃダメだ」

幸二「...」

三太郎「...」

 


ヒメ「でも...大丈夫?1人で」

粟生屋「僕はさっき休んだから、助太刀させてもらう。邪魔とは言わせないよ」

一善「ありがとうございます」

 


ヒメ「...」

一善「俺達の仇は必ず俺達がとるから」

つのキング「ウォーーーー!」

ヒメ「ありがとう。一善」

幸二「お前も死ぬなよ」

三太郎「ほんとだぞ!」

一善「大丈夫」

 


幸二らはヒメと共に戦線離脱。

 


白鶯「めでたい奴らだな。どうせ全員死ぬんだから、関係ないだろう」

一善「白鶯蓮源。お前だけは絶対に許さない」

 


ゴゴゴゴ...!!!!

 


ビリビリビリビリビリ...!!!!

 


一善の怒りが、周囲にまで波及する!!

 


粟生屋「...!(凄まじいね...!)」

 

 

 

一善「お前が命を奪った人。命を奪わせて死んだ人。そして、それを悲しみ涙を流した人。今ここでその全員に詫びろ」

白鶯「俺に命令するか。成程、ならば断ると言ったら?」

 

 

 

一善「関係ない。どう答えようと地獄へ送ってやる。誰よりも辛く、痛く、苦しいやり方で」

 

 

 

白鶯「...!」

 


一善 vs 白鶯、因縁の対決──────!!

SOREMA -それ、魔!- 66

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SOREMA -それ、魔!- 66

 

 

 

 

 

 

 


私にできること

 

 

 

 

 

 

 


第528話 「駒猫(こまねこ)」

 


《九段下》

 


百目鬼村松・TORA vs 白鶯

激しい攻撃の応酬も、やや魔裁組が押されている。

 

 

 

美波は戦線離脱したはるかの治療に回る。

 


犬飼「おーい!!」

安西「美波ちゃーん!!」

 


そこへ、犬飼と安西が駆けてくる。

美波「犬飼さん!亜珠さん!」

2人は、美波の元へやってくる。

 


犬飼「一体全体どうなってやがる...!」

亜珠「街がめちゃくちゃだよ...なんでこんなことに...!」

美波「お2人も手伝って頂けますか?今はるかが...!」

犬飼らははるかに視線を落とす。

 


亜珠「ひどい傷...」

犬飼「もちろんだ!出来ることはなんでも言ってくれ!」

亜珠「これ以上...誰も失いたくない...私もなんでもやる!」

美波は、唇をかみしめ、脳裏に莉茉を思い浮かべる。

 


亜珠「まずは何をすればいい?」

美波「ありがとうございます、まずお2人は──────」

3人は、傷ついたメンバーの回復に全力を尽くす...!

 


〜〜〜

 


白鶯は、百目鬼らを弄びながら攻撃を重ねる。

 


百目鬼「(クソ...あいつ体力がどんどん回復してやがる...武智が稼いだダメージが無駄になっちまう...!)」

TORA「(迅速に畳み掛けるしかない...!)」

村松「...!」

百目鬼「全員地面に攻撃しろ!」

TORA「...!」

村松「...!」

白鶯「?」

 


パッ

 


百目鬼は3人を白鶯の上空に移動させた!

白鶯「!」

 


百目鬼「”弓張月”!!」ザ     ク     ッ     !

TORA「”風螺面虎(ふらめんこ)”」ドォン!!

村松「”獣穿刺(けものせんし)”」グサッ!!

ラキラキ「ワォーーーーーン!」

 


それぞれの攻撃が白鶯に上方三方向からヒットする...!

白鶯「...!」グハッ!

TORAが攻撃を畳み掛ける!

TORA「マスターのビジョンは、私が完遂する...!舞乱虎(ぶらんこ)!!」

 


ドガァァァァン!!!

辺り一面に煙が上がる!

TORA「...どうだ?」

 


シュゥゥゥゥ...

 


白鶯「ちっ...」プッ

 


白鶯は唾を吐き両手を軽くはたいた。

 


TORA「...失敗か」

白鶯「残念ながらそのようだ」

TORA「ならば、更に高出力の技で...!」

白鶯「そうもいかないだろう。そろそろお前のその異質なマヂカラも限界を迎えそうだが?」

TORA「...読まれていたか(そろそろ、この体を保てなくなる...本体からマヂカラが抜ければ、俺はただの動物に戻ってしまう...!)」

 


白鶯「お前がそこまで身を削る理由は何だ?」

TORA「マスターの意志を継ぐ。俺はそれだけの為の駒だ」

 

 

 

 

 

 

第529話 「虎の威」

 


《決戦の場(九段下付近)》

 


白鶯「お前がそこまで身を削る理由は何だ?」

TORA「マスターの意志を継ぐ。俺はそれだけの為の駒だ」

白鶯「はぁ。よくわからんが、駒というならそろそろ用済みにしてやろうか」

TORA「やってみるがいい。一筋縄ではいかないぞ」

白鶯「虚勢をはるな。見るからにお前はそうだなぁ...せいぜい人工知能を持った動物のようなものだろう。畜生が俺のような強者に逆らうな」

TORA「お前は強者では無い。強者の定義は既にアップデート済だ」

 


白鶯「...まぁどうだって良い。ここで消し炭してやる。マスターとやらの意志もここで途絶えさせてやろう」

TORA「ならば...!最大限...!お前を削り取る...!」

 


そこへ村松もやってくる。村松は白鶯を睨みつける。

村松「...!」

ラキラキ「ワォーーーーーン!」

 


白鶯「ふっ。畜生に葬られる俺ではない。生物としての格の差を思い知れ」ポポポポ...!

白鶯は手にマヂカラを溜める...!

 


その時!

 


ボコッ!!!

 


白鶯「...!!」グハッ!

 


TORA「...!」

村松「...!?」

 


白鶯のみぞおちに手が貫通した!

白鶯「...貴様」

 


百目鬼「油断しすぎだろ」

百目鬼の手が、白鶯の胴体を貫通していた!

 


白鶯「警戒を解いていた。弱すぎてな」

百目鬼「そうか」

白鶯「ここまで俺に近づいた事は褒めてやる。よくやった。”アラン”」

百目鬼「...!」

 


白鶯は、体全体からマヂカラのオーラを放った!!

 


ドガァァァァァン!!!

 


オーラは辺り全体を吹き飛ばし、百目鬼は遠くへと吹き飛ばされた!!!

 


TORA「百目鬼!!!うわぁ!!」バァン!

村松「!!!」バァン!

 


白鶯「...」

白鶯は、胸に手を当てる。

そこへ、TORAが攻撃を仕掛ける!

 


ヒュン!ガァン!スゥン!ドカッ!!

 


TORAと白鶯は激しく肉弾戦を繰り広げる!!

 


TORA「...!(マヂカラと本体の適合率が下がっている...!動作のラグが...!)」

白鶯「動きが鈍くなってきたなァ!虎男!!」

白鶯は、TORAを蹴り飛ばす!!

 


TORAは立ち上がり、手にマヂカラを溜める。

 


TORA「ハァ...ハァ...最大限、お前に...ダメージを与え...後に繋ぐ...!」ポポポポ...!

白鶯「やってみるがいい」ポポポポ...!

 


互いに、手にマヂカラを溜め、攻撃を放つ!

 


TORA「最大出力!!鉈天虎虎(なたでここ)!!」

白鶯「龍ノ凱旋!!」

 

 

 

ドガァァァァァァァァン!!!

 

 

 

2人の攻撃がぶつかり合う!!!

 


TORA「...!!!」

攻撃の押し合いの中、TORAは押されながらも踏ん張り続ける。

TORA「...!!魔法は、必ず消滅する...!お前は100%敗北する...!」ゴゴゴゴ...!

白鶯「そうか」ゴゴゴゴ...!

TORA「...!!」

 


白鶯「飲み込め」

 


白鶯の攻撃がTORAの攻撃諸共跳ね返し、TORAを飲み込む!!!

 


TORA「!!!!!!」

村松「...!!!」

 


ドガァァァァァン!!!

 


焼け野原となったそこには、1匹の虎が倒れ込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 


第530話 「従者」

 


《決戦の地》

 


TORAは、一匹の虎の姿となり、その場で倒れ込んだ。

 


村松「...!」

白鶯「それが本来の姿が。無様な畜生だ」

白鶯が傷だらけの虎に手をかけようとする!

村松「...やめなさい!」

 


すると、村松は遠くから虎を操り、白鶯から遠ざける!

白鶯「...?(虎が動いた?最後の余力が残っていたというのか)」

 


虎は、村松の裏に隠れ、村松は、虎に応急処置をする。

白鶯「...(いいや、違う。あの女の能力だ。獣を操る能力。といったところか)」

 


村松は、蒼魔導書第三十八章 操獣の書の履術者である。魔獣であるラキラキを従えているが、マヂカラが僅かに残った”虎”も、術式の対象になっていたのだ。

 


白鶯「畜生に情けなど要らん。もっとも、俺からすればお前たちも何ら変わらんがな」

 


白鶯は、村松にじりじりと近寄っていく。

白鶯「くだらん。埋まらん実力差に気がついた方がいい」

村松「...!」

 


白鶯「死ね」

白鶯が村松にとどめをさそうとする!

 


すると、百目鬼がそこへやってくる。

 


百目鬼「ちょっと待ちな」

白鶯「...?」

百目鬼「これ、返して欲しいだろ」

百目鬼の手には、時間の書が握られていた。

 


白鶯「そうか...あの時か。小賢しい」

百目鬼「実力差がどうとか。まずアンタには、誰も味方が居ないことに気づけよ」

白鶯「...?」

百目鬼「例えここで俺が倒れようと、俺にはまだ味方がいるからなぁ」

百目鬼は吐血し、膝をつく。

白鶯「味方?そんなもの、なんの役にも立たなかったが?」

百目鬼「それは、本当の意味で味方じゃないからさ」

白鶯「...その無様な格好で俺に説教をするつもりか?アラン」

百目鬼「だったら?」ゴボッ!

 


白鶯「まぁいい。最後に話したいだけ話せばいい。じっくり聞いてやろ、」

 

 

 

ズ     バ     ッ     !

 

 

 

白鶯が話していると、白鶯の顔面がバッサリと斬られた!

百目鬼「...?」

村松「...?」

 


白鶯は顔を再生させながら、話を続ける。

 


白鶯「...どこかで嗅ぎ覚えのある気配だ」

 


ルカ「覚えてたんだ。私のこと」

白鶯「...成程、魔法使いだったんだなぁ。まだ」

ルカ「違うわよ」

麗美「こいつが、白鶯蓮源...!」

 


現れたのは、大きな鎌を持ったルカと、麗美だった!

 


百目鬼「ハァ...焦らせんなよ...」

 


バタッ...

 


百目鬼はその場に倒れた。

 


ルカ「勘違いしないで、魔法使いなんてとうに辞めてるわよ」

白鶯「...?」

ルカ「私はね、ただアンタを殺しに来たの」ドン!

麗美「...!」ドン!

 


ルカ「昔からアンタのことはシンプルに嫌いだったわ。力に固執して、狡い手を使わないと人に勝てない。なっさけない男。変わってなさそうで安心したわ」

白鶯「...貴様」

ルカ「何も間違ってないわよねぇ。アンタが正攻法で勝ったことなんて、一度でもあった?」

白鶯「...」ピキピキ

 


ルカ「アンタは本当ならもう死んでる身なんだからら、死に損ないにはここで引導を渡してあげる」

麗美「...」

 


ルカ「覚悟しろよ」

 


白鶯「なるほどな。お前は少し厄介だ。容赦なく潰す」

ルカ「やってみなさいよ」

 

 

 

 

 

 

 


第531話 「転生せし虎」

 


《決戦の地》

 


麗美は、村松に話しかける。

 


麗美「はるかは?」

村松は、はるかが美波の治療を受けている方角を指さす。

麗美「莉茉っちは?」

村松は、顔を暗くして俯く。

 


麗美「...え、嘘?」

 


麗美は、無線を聞ける場所に居なかった為、戦況を把握出来ていなかった。

故に、莉茉の死を知らずにいたのだった。

 


麗美「そんな...そんな...」

 


麗美はショックでふらついてしまう。

 


倒れそうになったその時、ルカが麗美を抱える。

ルカ「戦うわよ」

麗美は荒くなった呼吸を整える。

 


ルカ「アンタがここで倒れたら、流石に私もヤバいから」

麗美「...!」

 


ルカ「泣くのは後にしなさい。死にたくなければね」

麗美「...!」

 


そこへ白鶯の攻撃が飛んでくる!

 


キィン!!!

 


ルカはそれを弾く!

 


ルカ「はい、貸し1」

麗美「...」

 


麗美は、自力で立ち、白鶯を睨みつける。

 


〜〜〜

 


犬飼と安西は、百目鬼に駆け寄る!

 


犬飼「おいパピヨン!!大丈夫か?!」

安西「全然大丈夫じゃないでしょ!向こうに運ぼう!」

犬飼「ってこれ!魔導書じゃねぇか!」

安西「白鶯から奪い取ったのね!でかした!」

2人は百目鬼と魔導書を運ぶ。

 


〜〜〜

 


白鶯「女3人か。面白い」

ルカ「女の子扱いしてくれるのね。かえって鬱陶しいけど」

麗美「...」

村松「...」

ラキラキ「ガルルゥゥゥ...」

 


すると、村松が治療した虎が、白鶯目掛けて走り出した!

 


ルカ「?」

麗美「虎?」

 


白鶯「畜生が」

白鶯は、虎を燃やそうとする!

 


村松「危ない!」

村松は、虎を操り、白鶯の攻撃から虎を守る!

 


白鶯「小癪な!」

ドガァァァン!

白鶯の攻撃が虎にヒットしてしまう!!

 


村松「!!(まずい!)」

ラキラキ「ワォーーーーーン!!」

 


すると、煙の中から出てきた虎は、魔法の力を得て、白と黒の体に、緑色の眼をした、虎のような魔獣に変化していた!!

 


ルカ「虎が」

麗美「魔獣になった?」

村松「!」

 


白鶯「何だ?魔獣?」

白鶯の攻撃を、虎の魔獣は避けながら、白鶯に飛びかかる!!

ルカ「なんかよく分からないけど、私達も行くわよ!」

麗美「...!」

村松「ラキラキ!」

ラキラキ「ワォーーーーーン!!」

 


3人は攻撃を仕掛ける!

 

 

 

 

 

 

 


第532話 「その名は絶望」

 


《決戦の地》

 


麗美サウンドスリー!SOUL!!」

3人と2匹は、白鶯に攻撃を仕掛ける!!

白鶯「うじゃうじゃと鬱陶しいな」

白鶯は、麗美の腹部にタッチする!

麗美「...!!触んなよ!!」

白鶯は、麗美を吹き飛ばす!!

 


ルカは魔具を使いながら、白鶯と撃ち合う!

 


麗美は立ち上がり、技を繰り出す!

麗美「一か八か...!サウンドアルファ DISCORD!!」

 


しかし、麗美の攻撃は決まらない!

 


麗美「?なんで?」

村松「封印されてる!」

麗美「?」

 


2人は、白鶯の攻撃を掻い潜りながら、会話をする!

 


村松「触られると、封印される!」

麗美「...!魔導書の能力か...!」

 


ルカは、ヌンチャクの様な魔具にエレメントを纏わせ、白鶯に襲いかかる!

白鶯「お前もエレメントか。魔法使いしてるじゃないか」

ルカ「こんなの飾りよ。私にとってはね!」

 


2人がやり合う隙に、ラキラキと虎の魔獣が白鶯に攻撃を仕掛ける!

村松「ラキラキ!トラトラ!」

ラキラキ「ワォーーーーーン!」

トラトラ(虎の魔獣)「ガォーーー!!」

麗美「(トラトラて)」

ルカ「(もっとまともな名前があったのでは)」

 


麗美「てか、魔法マジで使えない!」

麗美は遠くから猛魔クナイ(クナイの魔具)を投げ続ける!

麗美「(ちっ...足でまといかよ...!)」

 


しかし、麗美の投げた猛魔クナイは、白鶯に少しずつヒットしていく。猛魔クナイは、白鶯のマヂカラを吸い取っていく。

 


白鶯の封印能力の解除には、一定のダメージを与える事が必要だが、ルカと対峙する白鶯は本気を出しているのと、麗美村松らの実力ではそこへ強力な一撃を叩き込めない為、麗美の封印は解けずにいる。

 


麗美「くそ!でもエレメントならいけるか...?」

 


かつてのエミリーの封印能力ならば、エレメント、魔導書、基礎魔法と個別に封印していた(その代わり、術者が死ぬまで永続)ため、エレメントは使用出来たが、白鶯の封印能力は、永続能力を消す代わりに、全てのマヂカラをロックするため、本来なら麗美はエレメントも使えない。

 


だが、奇跡が起こる。

 


麗美「赤のエレメント...!戦慄の炎(ほむら)!」

 


五線譜の様な赤いエレメントの鞭が、白鶯を襲う!!

 


白鶯「...!!!」

ルカ「隙あり!!消え失せろ!!!」

ルカは、鎌を2本取り出した!

 


ルカ「”二丁飛車”!!!!」

 


ドガァァァァァァン!!!

 


白鶯は吹き飛ぶ!

ルカは鎌を魔法陣に投げ捨て、体よりも大きなハンマーを取り出す!

ルカ「”毘沙門”!!!」

 


ドォォォォォォン!!!

 


ルカか大きくハンマーを振り下ろすと、白鶯のいる地点に巨大な衝撃波が降り注いだ!!

 


ルカは、ハンマーを魔法陣に投げ捨てた。

 


麗美「...(攻撃が当たったからかな?魔法が戻ってきた!)」

そして、ルカは白鶯に呼びかける。

ルカ「死んだ?」

 


白鶯「...」

 

 

 

すると、煙の中に不気味な赤い眼光が!

 


ゴゴゴゴゴゴゴゴ...!!

 


煙の中から、赤い眼光と共に、凄まじい地響きが、3人を襲う!

 


グラグラグラグラグラ...!!

 


ルカ「な、何これ」

麗美「...!」

村松「...!」

ラキラキ「ワォーーーーーン!!」

トラトラ「ガォーーーー!!」

 


すると、煙の中から、凄まじく巨大な龍の形に変貌した白鶯が現れた!!!

 


麗美「...!何、アレ」

ルカ「流石にデカすぎでしょ」

村松「...!」

 

 

 

 

 

 

 


第533話 「遺したもの」

 


《決戦の地》

 


麗美「...!何、アレ」

ルカ「流石にデカすぎでしょ」

村松「...!」

 


まさしく東京タワーにも劣らない程の全長の龍は天高く昇り、ルカ達を睨みつける。

 


白鶯「やはりお前は無茶苦茶な女だなァ。京金ルカ」

ルカ「アンタに言われたくないわよ。人外が」

白鶯「ハッハッハッハ...!まぁいい」

 


ゴゴゴゴゴゴ...!!

 


白鶯は、巨大な尻尾で3人を払う!!

 


ルカ「...!」

麗美「...!!」

村松「危ない...!!」

 


ラキラキ「ワォーーーーン!」ガッ!

トラトラ「ガオーーーーー!!」ガッ!

ルカ「?!」

麗美「?!」

 

 

 

ドゴォォォォォォォンンンン!!!!

 

 

 

ラキラキとトラトラは、ルカと麗美を攻撃から守った!!!

 


ルカ「...助かった」

麗美「...村松さんは?!」

 


村松は、白鶯の攻撃が直撃し、頭から血を流し倒れていた!!

 


ルカ「あの子...!!」

麗美村松さん...!!!」

 


すると、ラキラキとトラトラは、消え去ってしまった。

麗美「そんな...!」

 


すると、天空から巨大な声が響く。

白鶯「余所見をしている場合かな?!」

 


ポポポポポポ...!!

 


まるで、視界を埋め尽くす程のな巨大な龍(はくおう)が、口元にマヂカラを溜め始めた!雲の流れも龍を中心に集まっている...!

空は光を放ち、太陽よりも眩しい光が、辺りを包み込む...!

 


ルカ「...!」

麗美「...あれを受けたら...流石に...」

ルカ「...まずいわね」

 


万事休すか──────?!

 


《上空基地》

 


その瞬間、上空基地では全ての機能がシャットアウトした。何も見えなくなり、ひえりと五百旗頭は真っ暗な空間に取り残された。

 


ひえり「!!何、これ」

五百旗頭「恐らく、マヂカラがキャパオーバーして、システムが落ちてしまったんだわ」

ひえり「そんなに強いマヂカラ反応が...?!」

五百旗頭「もう全ての結界は皆が破壊してくれた。後は白鶯だけ。皆そこへ集まっていると思うからら、私達も行きましょう。復旧までどれだけかかるか分からないわ。ここにいても出来ることはもうない」

ひえり「...」

五百旗頭「怖い?なら私1人で行ってくるわ」

 


1人で行こうとしている五百旗頭の袖を、ひえりが掴む。

 


五百旗頭「?」

ひえり「...怖いとか...そういうんじゃない...」

五百旗頭「ひえりさん?」

ひえり「五百旗頭さん...今から戦場に行って、死んでも仕方ないとか、思ってないですよね?」

五百旗頭「...」

ひえり「絶対に...絶対に絶対に、死んだらダメですよ」

五百旗頭「...?」

 


ひえり「あなただけは!!あなただけは、死んじゃダメなんです。だって、皆が助けてくれた命でしょ?!」

五百旗頭「...!」

 


ひえり「話は聞いてます...だから、命は大事にしてください。絶対に」

五百旗頭「...」

 


ひえり「私も行きます。でもその前に、約束してください。死なないって」

 


五百旗頭「...わかったわ。約束する」

ひえり「...」

五百旗頭「第一、死んでも仕方ないなんて、考えてもないわ。それに、奪われてもいい命なんて、本来1つもない」

五百旗頭は拳を握りしめる。

 


五百旗頭「私達に出来ることをしましょう。まずは戦力のサポートから。行きましょう。ひえりさん」

ひえり「...はい!」

 

 

 

 

 

 

 


第534話 「私にできること」

 


《決戦の地》

 


麗美とルカは、白鶯を見上げることしか出来ない。

 


ルカ「(あの攻撃を防ぐ事は今からでは恐らく不可能...逃げ切ることも出来ない...このままでは私たちだけじゃなく、医療班や倒れてる味方まで全員あの世行きよ...攻めてこの子と2人で医療班から軌道を逸らせるか...?でも出来たとして、戦える私達が居なくなってしまえば結局同じこと...どうする...?)」

 


ルカは、被害を最小限にするべく手を考える。

 


麗美はその隣で、白鶯を見上げる。

 


そして、ルカに目を移す。

 

 

 

 


────正直、この人には敵わない。今の私の実力では。

 

 

 

この戦いだって、2人で戦ってるように見えて、殆ど守られてばっかりだった。

 

 

 

この人は強い...うざいくらいに。

 

 

 

白鶯の次の攻撃を耐えられれば、その隙は必ず生まれる。

 

 

 

きっとこの人なら、それを活かしてくれる。

 

 

 

他の仲間もきっと、来てくれる。

 

 

 

だから...ここは私が...!

 

 

 

麗美は拳を握る。

 

 

 

もう少し、戦いたかったなぁ──────。

 

 

 

 


ルカ「おチビちゃん。聞いて。今からあいつの攻撃を此処から逸らすわ。着いてきなさい」

麗美「...断る」

ルカ「は?!じゃあどうするってのよ?!このままじゃここにいるみんな死ぬわよ?!」

麗美「大丈夫」

ルカ「何がよ?!」

麗美「いつでも斬り掛かれるように準備だけよろしく」

ルカ「?!」

麗美は、白鶯に一目散に飛んでいく!

 


すると、白鶯が攻撃を放つ!!

 

 

 

白鶯「滅びよ。”破星(かいせい)”!!!」

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォォンンンン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

辺りは真っ白な光に包まれた!!!!

 


ルカは斧と盾で何とか軌道をずらそうと立ち向かう!

ルカ「...!!!!!!(あの子...これじゃモロに攻撃を...!!)」

 


麗美は光に飲み込まれた...!!!...と思われた。

 

 

 

攻撃は途中で全て消え去っていた。

 

 

 

白鶯「?!」

 


麗美サウンドベータ...MUTE...!」グハッ...!

 


麗美がかつて生み出した技。”サウンドベータ・MUTE”。

相手の攻撃を自らのマヂカラを消費することによって相打ちにする技である。白鶯の最強格の技”壊星”を相打ちにしたことにより、麗美の体はボロボロになり、空中にて、体に力が入らない状態となった。

 


白鶯「小娘...何をした?!」

麗美「.........これだけじゃ終わらない...!」

 


ボワァァァァァァン...!

 


麗美「赤のエレメント...!猩々緋(しょうじょうひ)...!!」

 


麗美は体から残り全てのマヂカラをエレメンタル放出した!!!

 


白鶯「...!!」ドガァン!!

 


そこへルカが鎌を2つ持って白鶯の体を掛け登る!

 


ルカ「...(全て理解した...!今が”隙”!!!)」

白鶯「...?!」

 


ルカは、空中に飛び、白鶯の首元目掛け、2つの鎌を振り下ろす!

 


ルカ「”輪廻転生(サンサーラ)”!!!!」

 

 

 

ザ           ク          ッ          !

 

 

 

白鶯の首が切り落とされた!!!!

 

 

 

白鶯「グワァァァァ!!!!」

 


白鶯は首を切り離された状態で、地面に向かって落下を始める...!

ルカは、上空にて、白鶯の魔導書を奪おうと手を伸ばす。その時、麗美の存在に気がつく。

 


麗美は、意識を失い、もぬけの殻の状態で落下していた。

 


ルカ「おチビちゃん...!!」

ルカは、魔導書を諦め、麗美に手を伸ばす!

ルカ「...(このまま落ちたら...!)」

ルカは麗美に手を伸ばすも、届かない!

ルカ「...(くっ...マヂカラを使いすぎた...!空中だと制御が効かない...!もうすぐ落ちる...!)」

 


その時。

 


サッ...!!!!

 


落下中の2人を、人影が横切った。

 


スタッ...

 


その人影により、ルカと麗美は、一命を取り留め、地面に着地した。

 


ルカ「...(何が起きた...?そんなことよりあの子は...?)」

三太郎「へっ。危なかったな」

ルカ「アンタは」

三太郎「間一髪だったなぁルカルカ。でも俺が来たからもう安心だ」ドン!

SOREMA -それ、魔!- 65

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SOREMA -それ、魔!- 65

 

 

 

 

 

 

 

激情

 

 

 

 

 

 

 


ノベルウォー編 ここまでのあらすじ

 


白鶯蓮源(シェイクスピア)率いるノベルは、東京、品川、渋谷、新宿、池袋、上野の各地点に魔導結界を展開、そして東京全域に10000万体を超える魔者を解き放ち、魔裁組に対する全面戦争を仕掛けた。

 


死者こそ出したが、それぞれの結界は魔裁組によって全て解除され、魔者も全て消滅。

残る戦力はノベルのボス・白鶯のみとなった。

 


魔裁組の残ったメンバーは、白鶯の暴走を止めるべく、決戦の舞台となっている九段下周辺に集まり出す...!

 

 

 

 

 

 

 


第521話 「耐え難き侮辱」

 


《九段下付近・日本武道館前》

 


ジャスティン vs 白鶯

 


バッ!ガンッ!キッ!シュッ!ドカッ!ゴンッ!!

 


ジャスティンと白鶯は高速で拳をぶつけ合う!

 


白鶯「成程。少しはやるようだな」

ジャ「...!」

白鶯「渋谷の結界を解いたのはお前だな。まさかサドが人っ子一人にやられるとは...!」

ジャ「...!!」

 


ガンッッッッ...!!!

 


白鶯とジャスティンは距離をとる。

 


白鶯「他人に期待しない俺ですら驚愕したぞ」

ジャ「安心しろ、お前もそいつと同じ道を辿ることになるさ」

白鶯「成程な。それは結構なことだ」

ジャ「白のエレメント...!スノウジェム!!!」

キィィン!!

白鶯は攻撃を躱す!

 


白鶯「分からんな」

ジャ「?」

白鶯「それ程魔法に造詣が深いお前達が、なぜ魔法の封印に固執しているのか、その理由が」

ジャ「...」

白鶯「お前程度の実力者ならば、俺が描く魔法の理想郷の一員にしてやってもいい。不死の生命も与えよう」

ジャ「...」

白鶯「どうだ?お前も分かっているだろう。魔法という力の素晴らしさを。この力があればなんだって出来る。こんな小さな星など、簡単に手の内に収められる。お前達がちまちまと集めたその魔導書(ちから)があればな」

ジャ「...」

白鶯「燃やすなど、それこそ頭の狂った人間のすることだ。自ら力を手放して偽善者気取りか?実にくだらない...」

ジャ「!」

 


白鶯「死ねば人間はそこで終わる。くだらない存在だと思わないか?」

ジャ「...!!」ゴゴゴゴゴ...!

ジャスティンは怒りに震える。

 


白鶯「力を手に取れ。そして永遠の命と共に、この世の春を謳歌しよう。なぁ、魔法使いよ」

 


ジャ「くだらない...だと...?」

白鶯「?」

ジャ「死んでいった人達は、くだらなくなんかない」

白鶯「はァ?」

 


ジャ「お前には分からないだろうな。死んだ人への唾のかけ方しか知らないんだから」

白鶯「?」

ジャ「今日に至るまで、沢山の人が死んだ。俺の周りで」

白鶯「...」

ジャ「でも皆、俺の心の中で永遠に生き続ける」

白鶯「フッ...なんだ、そんなことか。まさかこの期に及んで、そのような戯言を妄信している輩がいるとはな」

ジャ「嘘じゃないさ。俺は死んだ友や仲間の想いを背に、今日まで生きてきた」

白鶯「...」

ジャ「ここまで来れたのは、死んでいった人達が残した思いがあったからだ」

 


ジャスティンは、かつての仲間や友を思い浮かべる。

 


ジャ「仲間の声、言葉、表情...その全てを今でも鮮明に思い出すことが出来る。そしてそれらは、俺たちを強く導く。背中を押してくれる」

白鶯「...」

ジャ「くだらない存在だと?最後まで逞しく生き抜いた仲間に、醜く生き続けることに固執するゴミのようなお前が、そんなことを言える資格はない!」

白鶯「...そうか。交渉決裂だな」

ジャ「...」

白鶯「俺をゴミ呼ばわりか...面白い。ならば」

ジャ「...!」

 


ビュンッ!

 


白鶯はジャスティンの目前に現れる!

 


白鶯「ゴミのように死ね...!」

 


ドゴーーーーーン!!!

 


ジャスティン、吹き飛ばされる!

 

 

 

 

 

 

 


第522話 「猛虎」

 


《武道館前》

 


吹き飛ばされたジャスティン。

辺り一面に煙が立つ。

 


白鶯「口ほどにもなかったか」

ジャ「まだ終わってねぇよ」

白鶯「...ほう」

 


ジャスティンは、白鶯の攻撃を受け止めていた。

 


ジャ「こんなもんじゃ、まだ死ねねぇ」

白鶯「なるほど、ならば」

 


白鶯は、手のひらにマヂカラを貯める...!

白鶯「これはどうだ?」

 


白鶯は、シャボンの様な物体をジャスティンに放つ!

ジャ「...!白のエレメント!アイシクルゾーン!」

ジャスティンはシャボンを凍結させて破壊した!

 


ジャ「...(恐らく催眠の書の能力だ...こいつ、いくつ魔導書を宿してやがる...!)」

白鶯「見事だな。白い魔法使いよ」

ジャ「白のファンタジスタだ」

白鶯「どちらだっていい」

 


ビュッ!!

 


白鶯はジャスティンの後ろに高速で回り込む!

ジャ「(油断した...!)」

白鶯「ならお前から、”白”を奪ってやる」

 


ポンッ!

 


白鶯は、ジャスティンの背中に触れた。

ジャ「...?」

白鶯「”封印(ロック)”」

ドクンッ!

 


ジャスティンはダメージこそないが、体に何か違和感を感じた。

ジャ「...?!何だ?!」

白鶯「...」ニヤリ

 


ジャ「(迷ってたって仕方ない...!白のエレメント...!白日の雹...!!)」

 


...

 


ジャスティンの技は不発に終わる。

 


ジャ「...?!技が出ない?!」

白鶯「フハッハッ!おい?!どうした?!」ドカッ!

 


白鶯はジャスティンを蹴り飛ばす!

 


ジャ「...?!タイミングを外されたか...?それとも?」

白鶯「ほら、打ってこい。お前のとっておきの魔法を!」

ジャ「...!白のエレメント!...!突羅辛螺!」

 


シーン...

 


ジャ「...?!(あいつの能力か...!)」

白鶯「察しがいいようだな。お前はもう”白”を出せない...!」

ジャ「...!」

白鶯「さぁて始めようか。一方的な虐殺を...!」

ジャ「...!」

 


白鶯は手からマヂカラを放出しジャスティンに攻撃を放つ!ジャスティンはそれから逃げ回る!

 


ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

 


白鶯「ほら、どうしたどうしたァ!」

ジャ「...!(考えろ...!対処法を...!そうだ、魔具があれば!)」

 


ジャスティンは魔法陣を展開し、魔具を取り出そうとする。

 


しかし、魔法陣は消えてまう。

 


白鶯「フハッ。上出来だ」

ジャ「...?!」

白鶯「これはかつて俺が重宝してた人間の能力だが、ほんの少し改良させてもらった」

ジャ「...?!(そうか、千巣さんのレポートにあった、マヂカラを封印する能力か...?)」

白鶯「お前はマヂカラを一切使えない...!」

ジャ「...?!」

 


白鶯は攻撃を続ける!

 


ドゴォン!ドゴォン!

 


ジャスティンは逃げ回りながら考える。

ジャ「(千巣さんのレポートには、技を出せばそのチャネルから放出されたマヂカラが使えなくなるものだった...だが俺のは違う...エレメントだけではなく基礎魔法まで封じられてる...しかも1回の封印で...封印が解けるとしたら、何か方法があるのか...?!他の仲間が来るまでに解決しないと...!)」

 


白鶯「さっきまでの威勢が嘘のようだなァ」

 


ドゴォン!ドゴォン!

 


そして、白鶯はジャスティンに近づく!

ジャ「...!」

白鶯「...眠れ」

白鶯は、シャボン玉の様なものを手にまとい、ジャスティンの顔にぶつけようとした、その時!

 


虎走「やめなさいよー!!!!!」

 


ドガァン!!!!!

 


白鶯の顔面が急に爆発した!!!

 

 

 

 

 

 

 


第523話 「原動力」

 


《武道館前》

 


ドガァン!!!

 


ジャ「...!この能力は!」

虎走「お待たせしましたぁ!」

ジャ「...!」

 


虎走が合流した。

 


ふらつきながらも、白鶯は体勢を戻す。

 


虎走「ぎゃっ、効いてない?!」

ジャ「葉月ちゃん、聞いてくれ、あいつに触れられたらダメだ、触れられると、、」

すると、白鶯が虎走に近づく!!

白鶯「女がいい度胸だなァ!!消し去ってやる!」

虎走「!!!」

ジャ「...!!」

間一髪のその時!

 


ズズズ...!

 


ジャスティンの力に再びマヂカラが宿った!

ジャ「この感覚...!マヂカラが戻った!!」

ジャスティン、虎走に攻撃を仕掛ける白鶯に横から攻撃する!

 


ジャ「白のエレメント!!一貫ピック!!!」

 

 

 

グ      サッ      !!!!!!!

 


白鶯は動きを止める!

 


ジャ「永久凍土にしてやる」

白鶯「...!」

 


カチカチカチカチカチィ...!!!

 


ジャスティンは、白鶯の周りにエレメントを展開し、白鶯を氷結させた!(実際に氷漬けになっているわけではなく、そう見えるだけ)

 


虎走「ナイス!ジャスティンさん!爆裂ノ一!!菊!!」

 


ドガァァァァン!!!!!

 


白鶯は吹き飛んだ!!

 


ジャ「ハァ...ハァ...」

虎走「ねぇ、小町は?最初ここにいたって聞いたけど」

ジャ「小町と岩田さんは医療班が保護した」

虎走「...!それって...!」

ジャ「命は無事だと信じたいがまずは...」

虎走「...!」

ジャ「あの”化け物”を倒すことが先決だ...!」

 


白鶯は再び起き上がった。

 


虎走「...だね(小町、無事でいてくれ...!)」

ジャスティンは息を切らしながら白鶯を睨みつける。

 


白鶯「少し効いたぞ」

ジャ「...!(まだピンピンしてやがる...!)」

虎走「ちょっと、ショック!」

ジャ「あいつに触れられるとマヂカラが使えなくなる。恐らく時間経過かダメージを与えると解除される。俺がそうだった。その辺の仕組みはよく分からんが、とりあえず触れられるな」

虎走「はい」

ジャ「あとシャボン玉みたいな攻撃もうけるな。眠らされる」

虎走「は、はい」

ジャ「あとあいつは不死身だ。何をしてもしなない。まずは魔導書を全て引きずり出すことだ」

虎走「多い!だけど、はい!」

 


ジャスティンは、短刀の様な魔具を取り出す。

ジャ「非常用のナイフが役に立ちそうだな」

虎走は斧の様な魔具を手に持つ。

虎走「...!集中、私!」

 


”私は、何か悲しい理由で魔法使いになったんじゃない...”

 


虎走「(私も葉月も、子供の頃に魔導書を読んじゃって、鬼屋敷さんの元で保護されてた...18の頃から魔具の訓練をさせられて、しれっと魔法使いになってた。それより前からプライベートで小さな魔者が出たら退治してたっけ。流石に強そうなのは無理だったけど)」

 


虎走は白鶯に視線を向ける。

 


虎走「(私は、皆と過ごす時間が楽しくて、正直それが魔法使いを続けた一番の理由だった。魔法はなくなって欲しいけど、皆で過ごせる何気ない時間はなくなって欲しくなかった。第2支部の皆は、特に辛い思いを胸に戦ってる人が多くて、会う度に胸がキュッてなってた。小町はわからないけど笑)」

 


虎走はジャスティンに目を向ける。

 


虎走「(こんなに強そうな敵が目の前にいて、ジャスティンさんだってもうボロボロなのに、目が生きてる。絶対にやってやるって、そんな気持ちがこっちにまでビリビリ伝わってくる。ずっと思ってた、この人達と私では覚悟が違うって。こんなにマジになれないって...)」

 


虎走は斧を握りしめる。

 


虎走「(でも今は違う...!私の大切な家族(なかま)を奪った憎い奴が目の前にいる。マジになれるかなれないかじゃない...体中の細胞がこいつを倒したがってる...!)」

 


虎走の顔に血管が浮き出る。

 


”絶対にやってやる...!”

 

 

 

 

 

 

 


第524話 「ジャスティン、墜つ」

 


《武道館前》

 


ジャスティンと虎走はコンビネーションで白鶯に攻撃を仕掛ける!

 


白鶯はシャボン玉や波動砲を放つも、2人はそれを躱す!

 


ジャ「白のエレメント...!スノウジェム!」

虎走「爆裂ノニ 牡丹!」

 


シャキーーーーン!!

ドッカーーーーン!!!

 


2人の攻撃が炸裂した...!

......ように見えた。

 


シーン

 


ジャ「いない?!」

虎走「?!」

 


すると、次の瞬間、2人は壁に激突して血を流していた!!

 


ジャ「...?!(ぐはっ...何が起きた?)」

虎走「...?!(何も見えなかった...痛い!!)」

 


白鶯「どうだ?お前達の”師匠”の味だぞ」

虎走「...!そうか、鬼屋敷(姐さん)の...!」

ジャ「時間の書か...!クソ...!」

白鶯「ふはっ...何が人間国宝だ、あんな老いぼれには勿体ない能力だな」

虎走「姐さんを馬鹿にするな!」

白鶯「ふはっ...」

白鶯が続けようとしたその時...

 


ド     ク      ン!!!!

 


すると、白鶯に衝撃が走る!

 


白鶯「...?!(何だ...意識が朦朧とする...!)」

ジャ「?」

虎走「?」

ジャスティンはボロボロになった体を無理やり起こして立ち向かう!

ジャ「(動きが膠着してる!今がチャンスだ!)」

虎走「(なんだか分からないけど、動け自分!)」

 


虎走も後を追う!

 


ジャ「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

ジャスティンは、白鶯に攻撃を仕掛ける!

 


白鶯「ぐぉぉぉぉ!!!」

ジャスティンが白鶯に攻撃をヒットさせた直後、白鶯は咆哮をあげ、辺り一面のものを吹き飛ばした!!!

 

 

 

ドゴーーーーーン!!!!!!!!!!

 

 

 

ジャ「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

虎走「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

2人は遠くまで飛ばされる!

 


白鶯「ハァ...ハァ...終わりか」

 


白鶯はその場に立ち尽くす。

 

 

 

虎走は、体を起こして、ジャスティンを探す。

 


虎走「ハァ...ジャスティンさん...無事かな...」

すると、遠くにジャスティンが倒れているのが見えた!

 


虎走「ジャスティンさん!」

 


虎走がジャスティンの所へ行くと、ジャスティンは意識を失っていた。

虎走「ジャスティンさん!ジャスティンさん!」

ジャスティンからの返答はない。

虎走「そんな...!」

虎走が応急処置をしようとすると、ジャスティンの手に何かが握りしめられているのがわかった。

 


虎走「...?!これ!」

 


それは、白鶯から攻撃をくらう寸前で奪った催眠の書だった!

 

 

 

 

 

 

 


第525話 「泥棒猫」

 


《武道館前》

 


虎走「これは...!魔導書!」

ジャ「...」

虎走「(そうか、白鶯は沢山魔導書を履術しているからマヂカラの枯渇と比例して魔導書が奪いやすくなるのかもしれない...それにいくつも履術すると白鶯とはいえ体への負荷はかなりあるはず...!追い詰めていけば魔導書を全て奪えるかも!)」

 


虎走はジャスティンをかかえて、少し安全な場所へ運ぼうとする。

虎走「救急班がもうすぐここに集まる。その時まで少しでも遠くに...!」

すると、背後から声がする。

 


白鶯「おい、どこへ持っていくつもりだ?」

虎走「...!!」

白鶯「魔導書を返せ」

虎走「これはジャスティンさんが死にもの狂いで奪ったものよ!絶対に渡さない!」

白鶯「おいおい。とんだ泥棒猫だな」

虎走「最初に泥棒したのはアンタでしょ!アンタだけには言われたくないわ!」

白鶯「...なるほどな。褒美に生かしてやろうと思ったが了解した。死ね」

虎走「魔導書には手を出させない!アンタの相手は私よ!」

 

 

 

《品川付近》

 


幸二と三太郎は唯と合流を図る。

 


幸二「あ!東海林さん!」

唯「幸二くん!三太郎くん!」

三太郎「おつかれっす...」

 


唯「2人とも結界を解除したんだね!無事でよかった!」ギュッ!

幸二「あっ...はい///」

三太郎「唯さんも...おつかれっす...!///」

 


唯「で、三太郎君の腕だよね!見せて!」

三太郎はぐにゃぐにゃになった腕を見せる。

三太郎「力が入らなくて...」

唯「ちょっと時間がかかるかもしれないけど、最速で治療するから待っててね!」

三太郎「ありがとうございます!」

幸二「ありがとうございます。治療が終わり次第、九段下へ行きましょう」

 

 

 

《武道館前》

 


虎走は白鶯と戦うも、防戦一方となってしまう。

虎走は傷だらけになりながらも、白鶯に果敢に立ち向かう。

 


虎走「...(必ず誰か来る...!それまで少しでも削るんだ!私がダメになっても!)」

 


ドッカーーーーン!!!

 


白鶯「ふはっ。攻撃のキレがなくなってきているぞ」

虎走「ハァ...ハァ...」

白鶯は虎走の首を掴んで持ち上げる。

虎走「!!」

白鶯「よくやったよ。”雑兵”にしてはな」ポポポポ...

白鶯は、右手の平にマヂカラを貯める!

 


白鶯「終わりだ」

虎走「...!!(終わった...!ごめんね皆...!)」

 


ガォォォォォォォン!!!!

 


白鶯の攻撃は、虎走諸共、辺りの建物一式を焼き尽くした。しかし白鶯はある異変に気がつく。

 


白鶯「?」

 


白鶯が掴んでいた筈の虎走はその場から消えていた。

 


白鶯「...焼き消えたか」

 


白鶯は再び立ち尽くす。

白鶯「退屈だな...誰も来ねぇなら壊すぞ」

 


???「おい、シェイクスピア

白鶯「?」

 


百目鬼「お前がシェイクスピアだろ?部下の顔ぐらいちゃんと把握しておくんだな」

白鶯「お前は...?!」

百目鬼「俺はアラン。寂しそうだから来てやったぜ...!お前を弔いにな!」

 


美波「...!」ドン!

村松「...!」ドン!

TORA「お前がノベルのボスだな...!」ドン!

 


百目鬼、美波、村松、TORAが現れた!

 

 

 

 

 

 

 


第526話 「激情」

 


《武道館前》

 


百目鬼らは、白鶯と対峙する。

 


白鶯「丁度いいウォーミングアップが終わった所だ。いくらでも相手になろう」

美波はジャスティンの元へ駆け寄る。

美波「ジャスティンさん!」

ジャスティンの返答はない。美波は応急処置を開始する。

 


虎走「...あ」

百目鬼の能力で遠くにいた虎走が目を開けると、そこには百目鬼らが到着していた。

 


虎走「...生き...てる...?」

バタン...

村松は、虎走に駆け寄り、治療を施す。

村松「...(葉月ちゃん...!)」

ラキラキ「ワォーーーーーン!」

 


白鶯「アラン。何故歯向かう?お前はノベルの一員だった筈だ」

百目鬼「最初からこのつもりさ。ご対面出来て嬉しいよ。シェイクスピア様」

白鶯「...ガキが」

 


TORA「お前がノベルの手先だったとはな、百目鬼

百目鬼「久しぶりだねぇ。まさかあんたがその”実体”を保ててるとはなぁ。”マスター”の呪いかな?」

TORA「どうだっていい。どちらにせよ、今は再び結託する手段をとった方が、プロジェクトが成功する可能性が高い。マスターの夢を俺は叶える。その為にここにいる...!」

百目鬼「ま、好きにしなよ」

TORA「...」

白鶯「...(妙な気配の奴がいるな、感じたことの無いマヂカラだ)」

TORAは白鶯を睨みつける。

 


パッ!

 


すると、白鶯の後ろに一瞬にして人影が現れる!

 


白鶯「!!」

百目鬼「...」ニヤッ

???「白鶯ォ!!!!」

 

 

 

ドゴォォォォォォォン!!!!!!!

 

 

 

白鶯は強烈なパンチを食らって吹き飛ぶ!!!!

 

 

 

白鶯「...中々効いたぞこれは」グハッ

白鶯は首の位置を調整しながら立ち上がる。

 


はるか「フゥーーーフゥーーー」ゴゴゴゴ...!

 


そこには全神経が逆立った様な殺気のはるかが立っていた...!

 


はるか「お前が奪った命...全部返せよ」

白鶯「...」

はるか「全部、返せよ...!」

白鶯「...!」

はるか「あんだけ命を奪って生きてるなんてこたぁなぁ...」バチバチバチィ...!

白鶯「...!」

百目鬼「ふっ」

 


パッ!

 


はるかは白鶯の目の前に瞬間移動する!

 


はるか「許されねぇんだよォ!!」

 


ドゴォォォォォォォォン!!!!

 


はるかの攻撃は白鶯のみぞおちに炸裂する!

白鶯「!!!!」グハァッ...!!

 


吹き飛んだ白鶯にはるかは近づいていく。

 


はるか「...」ゴゴゴゴ...!!

白鶯「...!!」

はるか「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 


ガ   ン    !!!!!

 


はるかの立つ地面に亀裂が入る!!

辺りの建物は倒壊を始める!!

 


ゴォォォォォォォォォ!!!!

 


TORA「...(なんていうマヂカラの出力量だ...!)」

百目鬼「...(こっちまで巻き込まれそうだ...!)」

 


はるか「...」ゴゴゴゴ!

 


はるかは怒りにのまれ、意識をほとんど失っていた。しかし、この時のはるかは、己の限界を遥かに超えた存在と化していた。

 

 

 

 

 

 

 


第527話 「虎の尾」

 


《九段下(武道館はほぼ倒壊)》

 


はるかは我を忘れた勢いで白鶯に攻撃を食らわせる!

白鶯ははるかに攻撃を浴びせるも、はるかは、それを諸共せずに突進する!!

 


はるか「...!!!」

 


ドゴォォォォォォォォン!!

 


ドゴォォォォォォォォン!!!

 


ドゴォォォォォォォォン!!!!!

 


白鶯「...!!!(この女...どうなってやがる!攻撃が効かん!)」グハァッ...!!!

 


はるかの強烈な一撃が白鶯に何度もヒットする!

 


百目鬼「(まずは武智の攻撃を当てるべく、位置を調整せねば!)」

TORA「(俺はあの道着の少女と百目鬼のサポートをしながら隙を見て魔導書を取り込む!)」

 


はるかの攻撃の隙間を縫い、TORAと百目鬼で白鶯を挟む!

白鶯「ちょこまかと鬱陶しいなァ...!!」

 


バリバリバリバリバリィ...!!!!!

 


白鶯は周囲に衝撃波を放った!!

 


はるか「...!!!」ドゴォン!

TORA「ぐはっ!!」ドゴォン!

百目鬼「ちっ!(もう少しで近付けそうだが、中々近付けねぇ!!)」ドゴォン!

 


はるかは吹き飛ばされながらも、立ち上がり、再び白鶯に迫る!!

 


百目鬼らは重い体を起こしながらはるかの背後から攻撃を仕掛ける!

百目鬼「(あいつ...すげぇマヂカラ量だ...だが問題は、いつまで持つか...)」

TORA「(どこかで一旦落ち着けないと、マヂカラが枯渇して、その後はどうなるか分からんぞ...!)」

 


はるか「黄のエレメント...!獄殲(ごくせん)...!!!!」

 


はるかの強烈な一撃が白鶯に炸裂する!!!

ドゴォォォォォォォォン!!!!!!!

 


白鶯「ぐわぁぁぁ!!!」ギリギリギリィ...!!!!

はるか「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

はるかは白鶯の腹を貫通させる勢いで拳を押し込む、

百目鬼「...!!(なんつう歯ぎしりだ!魔導書を奪うチャンスだが、動けねぇ!)」

TORA「...!!」

 


すると、白鶯が口の中にマヂカラを貯め始める!

ポポポポ...!!

 


TORA「おい女!退け!」

百目鬼ははるかを転送しようとするが、強いマヂカラ波の妨害を受け、上手く転送出来ない!

 


白鶯「...!!」ポポポポ...!!

はるか「...!!!」

百目鬼「武智!逃げろ!!」

白鶯が今にも光線を放とうしたその時...!

 


ワオーーーーーン!!

 


遠吠えと共に、ラキラキが現れ、はるかをさらって逃げた!!

 

 

 

ドゴォォォォォォォォン!!!!!!!

 

 

 

白鶯の攻撃は、辺り一面を焼き尽くした!

 


百目鬼「...(医療班が到着したのか...!)」

TORA「...(おかげで犬飼いの女が戦線に復帰出来るという訳か...!)」

 


医療班が到着、村松とラキラキが戦線に復帰した!

村松「...!」

ラキラキ「ワォーーーーーン!!」

 


美波「はるかちゃん...気を失ってる...大丈夫かな?」

はるかは、ラキラキによって美波の元に運ばれる。

はるか「...」

美波「(ジャスティンさんの応急処置は終わった、助かるかは正直五分五分...今ははるかちゃんを助けないと...!)」

 


美波ははるかを治療する。

 


白鶯は再び百目鬼らに対峙する。

 


百目鬼「ちっ。化け物め...!」

TORA「じきに援軍も駆けつけるだろう。それまでの辛抱だ」

村松「...!」

ラキラキ「ワォーーーーーン!」

 


白鶯「もっと楽しもうじゃないか...魔法使い共...!」

 

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 64

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第514話 「モヨ」

 


回想──────

 


《温の街 / とある公園》

 


温は、寂れた公園で、木の枝をもって素振りをしていた。

 


そこへ、ボロ着に身を包んだおばあちゃんが話しかける。名前をモヨ(茂世)と言った。

 


モヨ「元気だねぇ...」

温「!」

 


モヨ「剣道の稽古かい?」

温「あ、ええ。まぁ」

モヨ「こんな時間だけど、学校には行かないのかい?」

温「学校には行ってないです。今もアルバイトの休憩時間なんで」

モヨ「そうなの。こんなに若いのに、偉いねぇ。学校では学べないものも、あるからねぇ」

温「はい...」

モヨ「そんな堅苦しくなくていいのよ?おばあちゃん、お話したいだけだから」

温「...うん」

 


モヨ「剣道、すきなの?」

温「中学の時部活でやってたんだ。道着とか顧問が全部貸してくれたんだ」

モヨ「そうなのぉ。凄い上手だと思うわぁ。おばあちゃん剣道あんまり分からないけど」

温「ありがとう。昔、大会で優勝したこともあるんだ。剣道には少し自信がある」

モヨ「あら、そうなの。すごいわねぇ」

温「いつか、大事な人に何かあった時、守れるようにと思って」

温は木の枝を握って見つめる。

モヨ「まぁ...素敵だわぁ」

 


温「そろそろ時間だ、行かないと」

モヨ「あぁちょっとまって、君、お名前は?」

温「ゆたかです」

モヨ「ゆたかちゃん。覚えておくわ。また会いましょう」

 


この日以来、2人はよく公園で顔を合わせることになる。

 


温「おばあちゃんは、いつも何してるの?」

モヨ「私もお金がないからねぇ...その日暮らしよ」

温「そうなんだ」

モヨ「ゆたかちゃんは、毎日毎日働いて、お金持ちなのかな?」

温「...」

モヨ「あら、ちょっといけないこときいちゃったかしら?」

温「ううん。貯金してるんだ」

モヨ「貯金?」

温「うち、貧乏でさ。お姉ちゃんもいて。いつか2人で、幸せに暮らしたいんだ」

モヨ「そうなの。お姉さんのために、偉いねぇ」

温「ありがとう。お姉ちゃんのためなら頑張れる。明日もその先もずっとバイトだけど、お姉ちゃんの為を思えば、楽勝だよ」

モヨ「ゆたかちゃんは、心が綺麗なんだねぇ」

温「もちろん、俺のためでもある。2人の為に、俺は頑張るんだ!」

モヨ「素敵な子だねぇ。旦那さんにもらいたいくらいだわぁ...!」

温「や、やめてくれよ。照れる」

 


モヨ「ゆたかちゃん、たまには贅沢したいとか、思ったりしない?」

温「...いつかはね。でも、まだ先だよ」

モヨ「言う贅沢はタダよ?棚ぼたで叶っちゃうこともあるしねぇ」

 


温は少し考えた。

 


温「...蟹」

モヨ「かに?」

温「スーパーに、誰が買うか分からないくらい高い蟹があるだろ?あれをたらふく食いたい。姉ちゃんとこの街を出る時、あの蟹を自慢げに買って、新しい家で姉ちゃんと蟹鍋するんだ。二人で鍋をつつきながら、お互いの夢を語り合いたい...なんてね」

温が横を見ると、モヨは涙をハンカチで拭きながら話を聞いていた。

温「おばあちゃん?何泣いてんだよ」

モヨ「いやね、歳をとると、ゆたかちゃんもこうなるのよ?」

温「...あははは」

 

 

 

 

 

 

 


第515話 「もういいの」

 


《温の家》

 


温は、朝日が昇る頃、体に痣をつくって家路に着く。

奥の部屋からは大人二人の寝息が聞こえる。

 


温は家の鍵を明け、自室に戻る。

優子「温...?」

 


優子の部屋から声が聞こえたので、温は襖を開ける。

 


優子「温...こんな時間まで、大丈夫?」

部屋には青みがかった朝日の光が差す。

温「お姉ちゃんも...まだ寝てていい時間でしょ?」

温は、声を殺しながら、優しく答える。

優子「その傷...なにしてたの?」

温「俺、新しい夜勤のバイト始めたんだよ...!ちょっと体力勝負だけど、自信あるから大丈夫!給料も良いし!これなら15万に届くから、安心してね」

優子「...」

温「お姉ちゃん...?」

優子「温...ありがとうね」

温「?」

優子「もういいよ?」

温「...え?」

 


優子「もういいの...温」

 

 

 

翌日──────

 


温は、茶封筒を持って家路につく。

今晩、キキと戸倉は外出中。

温は15万から零れた端金でコンビニのシュークリームを2つ購入して帰る。

 


温「ただいまー」

 


温は荷物を置き、手を動かしながら、優子の部屋の襖に向かって話しかける。

 


温「今日給料もらったんだ。15万。全部合わせてしっかり稼げた!ちょっと余ったからシュークリーム買ってきたよ!お姉ちゃんも好きなやつ。ほら二人で食べよ!」

 


温が、シュークリームが2つ入ったレジ袋を持って、襖を開ける。

温「開けるよ!姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

温は、襖を開けた途端、手に持っていたビニール袋を落とした。

 


優子は首を吊って死んでいた。

 

 

 

温「...!!!!」

 


温は、すぐにロープを切り落とし、優子を抱きかかえた。地面には、椅子などが横に倒されて散乱している。

 


温「お姉ちゃん...!!!お姉ちゃん!!!!返事してくれ!!!お姉ちゃん!!!!」

 


温は、携帯電話も持たされていないため、119番を呼ぶすべもなく、団地のドアをいくつかノックしたが、返答はどこもなかった。

 


温は焦って姉の部屋に戻り、そこで姉の書いたメモを見つける。

 


”温へ 幸せになってね”

 

 

 

温は冷たくなった姉の頬に涙を零す。

 


温「なんで...なんでだよ!!守るって...俺が姉ちゃんを守るって言ったじゃないか...!!どうして守らせてくれないんだよ...!!!」

優子からの返答はない。

 


温「...ごめん...お姉ちゃんも、辛かったよね...痛かったよね...俺の事心配だったのかな...?でも俺のこの傷なんて...お姉ちゃんの痛みに比べれば、何ともなかったんだよ!!!俺は...ただ、お姉ちゃんと幸せになりたくて...」

 


優子の顔は微動だにせず、温の悲痛な叫びだけが、狭い部屋に響く。

 


温「なんで...お姉ちゃんは...死ぬべき人じゃない...!!」

 


その時、外から救急車のサイレン音がした。

 


温「...!救急車!」

 


温は、優子を寝かせて、部屋を飛び出し、音の鳴る方へ駆けた!

 

 

 

 

 

 

 


第516話 「もういい」

 


《温の街 / スーパー前》

 


スーパーの前には救急車とパトカーが数台止まっていた。そして人だかりが出来ていた。

 


ザワザワ...

 


温「すみません!!うちに来てください!!人が!!大変なんです!!!」

 


温は救急隊員達のいる所へ近づこうとするが、上手く近づけない。

 


温は、人だかりを掻き分け、黄色いテープをくぐり抜けて何とか救急隊員の元へと辿り着く。

 


温「すみません!姉ちゃんが!大変なんです!!」

隊員「こら君、勝手に入った来たら危ないじゃないか!下がって!」

温「き、きいてください!家で人が...!」

隊員「ちょっと担架通るから、危ないよ!」

 


温の目の前を複数の隊員と共に、担架が通った。

その時、温は驚きの光景を目の当たりにする。

 


担架で運ばれていたのは、モヨだったのだ。

 


温「...!おばあちゃん?!」

 


モヨは顔面に大きな痣をつくっていた。モヨは、担架に運ばれ、救急車の閉じた扉の向こう側に行ってしまった。

 


温は動転し、何をすればいいか分からなくなり、ただ呆然とした。

 


通行人A「あのおばちゃん、どうしたの?」

通行人B「ほらこのスーパーって元締めがヤバいって言うじゃん?

A「あー、漢州会の奴らか」

B「あーそうそう。そいつらと揉めたんだと」

A「揉めた?なんで」

B「いわゆる”万引き”よ。話に聞く限り、蟹を万引きしようとしてたらしい」

A「蟹?!」

 


温「!!!」

 


B「あぁ。それがバレて、泣きついた結果、あぁなっちまったんだと」

A「なるほどな。万引きは悪いが、なにもあそこまでするこたぁないだろ」

B「まぁでも、敵に回したのは自業自得だろ。おばちゃんもアホよな〜」

A「残念だが、この街ではよくある事だな。運が悪かったとしか言えん」

 


温「...おばあちゃん...?まさか...?!」

 

 

 

 

 

 

後日、モヨは死んだ。

 


モヨは、蟹をスーパーから盗もうとした結果、店員にバレ、元締めのヤクザ数名に暴行を加えられ、病院に搬送後数日で息を引き取った。

ヤクザらは暴行罪で現行犯逮捕。後日殺人罪に罪名変更となった。

 


目撃者によると、モヨは犯行直後、泣いて詫びた様だったが、暴力はエスカレートしていったらしい。

モヨには万引き含む犯罪の前科は全くなかった。

 

 

 

温は、自暴自棄になり、虚ろな表情でアーケード街を歩く。

 


温「俺は...なんの為に...」

 


バコォン

 


温の肩が男とぶつかる。

 


温「...」

男「おいゴラァ。当たってんだけど」

温「...」

温は無視して前を歩く。

 


男「おいコラ!コラ!!」

 


男の声は遠ざかっていく。

 


男「大丈夫か?あいつ。けっ」

 


温「...」

 


温はフラフラと歩く。

 


温「なんで...優しい人が死なないといけない...?誰かの為に生きれる人が死なないといけない...?!」

 

 

 

その時、温の目にある文字が飛び込んでくる。ビルの2階のガラス窓に書かれた文字を見上げる。

 


”漢州会事務所”

 


温「...」

 


温は足を止める。

 


温「...もういいや」

 


ダダダダダッ...!!!

 


温は、雑居ビルの狭い階段を駆け上がる...!

 

 

 

 

 

 

 


第517話 「ダザイ」

 


《漢州会事務所》

 


事務所は暗くなっている。

中では寝泊まりしているのか、下っ端と思われるヤクザが寝転がっていた。

 


バリィン!!!

 


温はドアを破壊し、中へ入る。

 


レザーのソファの後ろの壁にかかった1本の日本刀を奪う!

 


その時、部屋の明かりがつき、下っ端らが起き上がった!

 


ヤクザ「なんだ?!こんな時間に!!」

ヤクザ「おい、このガキだれじゃ」

ヤクザ「とっととぶっ殺せ!!」

温「...」

 


温は剣を構える。

 


ヤクザ「ガキがポン刀持った所で怖くないわァ!」

ヤクザらは、スーツの内側から和包丁の様な物を取り出した!

 


ヤクザ「いけぇ!」

温「...!!!」

 


ズバッ!!!

 


ヤクザの1人が、温に斬られた。

 


ヤクザ「...!」

ヤクザ「日和るな!ぶっ殺せ!」

 


ヤクザらが温に迫る!!

 


ズバッ!グサッ!ブシャッ!スパッ!グシャッ!ザバッ!バサッ!

 


温は、その場にいたヤクザを全員斬り殺した。

 


すると、後から数人のヤクザが事務所にやって来て、入口付近で発砲し出した!

温は椅子を盾に身を防ぎ、その後は片手で死んだヤクザの1人を持ち上げそいつを盾に突き進んだ。

 


ヤクザ「構うな!撃ち殺すぞ!」

ヤクザらは、盾となったヤクザ諸共温を打ち殺そうとしたが、弾は盾ヤクザを貫通することはなく、温は、盾ヤクザを、銃を持つヤクザら目掛けて蹴り飛ばし、重なった所を日本刀で串刺しにした。

 


階段を上がってこようとしたヤクザも全員蹴り飛ばし、奪った拳銃で全員射殺した。

 


温は刀を持ったまま逃走し、2人がよく通っていたピンクのネオンが妖しく光るホテルの前で、キキと戸倉を惨殺した。

 


温「...」

 


温は途方に暮れ、遠くの街へと足を進めた。

 


人目を避けて歩いていると、目の前に本が落ちてくる。

 


バサッ...

 


温「...」

 


温が上を見上げると、電灯の上に白鶯が座っていた。

 


温「...?」

白鶯「お前に話がある」

 


白鶯は電灯から降り、温に接触する。

 


白鶯「お前、その血みどろな格好でどうするつもりだ、警察にでも出頭する気か?」

温「誰だ?」

白鶯「私はシェイクスピア。お前に用があって来た」

温「...邪魔するなら殺すぞ」

白鶯「殺したいか。いいだろう。ならばまずはこの心臓を刺してみるといい」

温「...」

すると、白鶯は、温の日本刀を持つ手を握り、自らの左胸に突き刺した。

温「...!!」

白鶯「構うな...よく見ておくがよい」グリグリィ...

温「...!!!」

 


白鶯「俺は死なない」

温「...!(心臓を一突き...でも死なない...なんで?)」

白鶯「これは魔法だ」

温「...魔法?」

 


白鶯は日本刀を引き抜き言う。

 


白鶯「俺は魔法の力で不死身の人間となった。そこに落ちている本と同じようなものによってな。お前にも魔法を与えよう」

温「...?」

白鶯「その魔法の力を手にし、俺に協力しろ。そうすれば、いずれお前にも俺と同じ不死の力を与えてやる」

温「...協力?」

白鶯「あぁ。俺はこの魔法の力で、この世界の秩序を破壊する。魔法全盛の未来を作るのさ」

温「...なんだそれ」

白鶯「この世界は実にくだらない。ゴミみたいな世界だとは思わんか」

温「...」

 


白鶯「破壊したいと思わないか?この腐った世界を...!」

温「...!」

白鶯「その本を手にとれ。お前にも新たなる力を与えてくれる筈だ。その力があれば、何も怖くない。お前を縛るものは何一つ無くなる」

温「...!!」

白鶯「もう何も失わずに済む」

温「!!!!!」

 


白鶯「ダザイ。今日からお前をそう呼ぼう。ようこそ。ノベルへ...!」

 

 

 

回想終

 

 

 

《魔導結界・蝕》

 


ダザイ「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 


ダザイは剣を振りながら、一善に斬り掛かる!!

 


一善「!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第518話 「剣」

 


《魔導結界・蝕》

 


キィン!カァン!キィン!カァン!

ブシャッ!グサッ!

 


一善とダザイは高速で剣をぶつけ合う!

 


一善は押され、ダザイに傷一つ付けられない!!

 


一善「...(くそ...!全部攻撃が読まれてる...!)」

ダザイは一心不乱に剣を振り続ける!

ダザイ「”朱雀の構え”...!!!」

 


ブゥウォン!!

 


ダザイが大きく剣を振ると同時に、一善は後ろへ飛ぶ!

 


ダザイ「...読めてる!」

 


ダザイは後ろへ飛んだ一善に斬り掛かる!

 


ダザイ「終わりだぁ!」

ヒメ「させない...!」

 


ヒメは、小さな拳銃型の魔具を取りだし、ダザイに放った!

 


スコーーーーン!!!

 


弾はダザイの脳を貫通し、ダザイはバランスを崩し地面に倒れた!

一善「今だ...!」

一善はゲッターを着けた手をダザイに伸ばす!

ダザイ「...!」

ダザイは剣を一善に投げつけ、その隙に体勢を整えた!

ヒメ「...(頭の傷が治ってる...人間かと思ってたけど...彼も魔者なのね)」

 


ダザイは投げた剣を拾い、一善らに再び襲いかかる!

一善とダザイは高速で斬り合うも、一善にだけ傷が増えていく。

 


キィン!シュッ!ズバッ!!シャキッ!カァン!バサッ!

 


ヒメ「...(間合いに入れない...それに誤射する可能性もあるから安易に弾を打てない...お願い...早く来て...!)」

 


一善は血塗れになり、エレメントの剣を地につく。

ダザイも肩で息をし、魔法の使用で消耗が激しい。

 


一善「ハァ...(エレメントも枯渇しそうだ...でもこのままやってたら勝てない...!考えろ...考えるんだ...!)」

ダザイ「相手が悪かったな。魔法使いよ」

一善「...」

ダザイ「俺は全てを破壊する。この世界など、どうだっていいから」

一善「...お前は間違ってる」

ダザイ「?」

 


一善「一番強い剣って、なんだかわかるか?」

ダザイ「...?」

一善「大切なものに傷一つつけさせない剣。それが一番強い剣だよ」

ダザイ「...」

一善「そしてそれは、日本刀でも、魔法の剣でもない...!」

ダザイ「...?」

一善「守りたいっていう意思だよ」

ダザイ「!!」

 


一善「一番強い剣は、誰かに振り回すものでは無い。ずっと心の中の鞘にしまっておく物なんだ。悪意に塗れて、刃こぼれしないように...!」

ダザイ「!!!」

一善「全てどうでもいい?破壊することしか眼中にないお前は、いつか必ず思い知ることになる。己の弱さを。そして本当の強さの前に足が竦むだろう」

ダザイ「.........」

 


ドクン!

 


ダザイの脳裏に、過去の記憶がフラッシュバックする。

 


一善はヒメの前に立ち、ダザイに再び語りかける。

 


一善「俺はこの身がどうなろうとも、家族を守る。お前に勝てなくても、傷一つつけられなくても、妹は守る」

ダザイ「...!」

一善「俺は信じてる。明るい未来を。俺がここで負けても、お前達に明日はない」

ダザイ「...」

ヒメ「でも、これ以上戦ったら!」

一善「ハァ...俺は絶対に負けない。ヒメに手を出させたら、俺の負けだ」

ヒメ「...?」

一善「俺が死んでも、俺は負けない」

ヒメ「一善!」

 


一善「とはいえ、勝つのを諦めたわけじゃない...!」

一善は体のマヂカラを全て振り絞る!

ヒメ「もうやめてよ!」

ダザイ「...」

一善「...(ルカさんにはいざと言う時までとっておけと言われたけど...もう”アレ”を使うしかない...!)」

一善「行くぞ、剣を構えろ...!」

ダザイ「!!」

 


一善「うぉぉぉぉ!!!”運”!!!!」

ダザイ「!!!」

 


その時!

 


???「ふーん。かっこいいねぇ」

 


一善「?!」

ダザイ「?!」

 


ヒメ「!!」

 

 

 

粟生屋「結界、開きっぱだったけど、大丈夫そ?」

 


ヒメ「...!(来た!)」

 

 

 

 

 

 

 


第519話 「斜陽」

 


《魔導結界・蝕》

 


一善「あ...粟生屋...さん...」

 


バタッ

 


一善は気を失った。一善が倒れそうになった所を、粟生屋が腕で受け止めた。

一善は気を失った。

 


粟生屋「妹ちゃん。軽く状況説明と彼の治療」

ヒメ「あ...はい!」

ヒメは粟生屋の裏で一善に治療を施しながら続ける。

 


粟生屋「なるほど...予知の書かな?だとしたら僕のより数字が大きいことになるねぇ」

ヒメ「は、はぁ...」

粟生屋「まぁ、だいたいわかったよ。ありがとう」

ヒメ「はい...!」

粟生屋「少し派手にやっちゃうから、離れてて...!」

ヒメ「!」

ヒメは一善をかかえて少し離れる!

 


ダザイ「...何者だ」

粟生屋「ん?走馬灯の中で思い出そうとでも?」

ダザイ「...!」イラッ

粟生屋「ふっ。冗談冗談」

 


粟生屋は手のひらを重ね合わせる。

 


粟生屋「僕も”旧友”に会いにいかなくちゃだからねぇ。手短にやっちゃうよ」

ダザイ「...!」

 


ヒメ「粟生屋さん気をつけて!相手は何をしてくる全部読んできます!」

ダザイ「...」

粟生屋「ふっ...読んだところで...」

 


ダザイ「!!!!!」

 


ゴゴゴゴゴゴゴ...!!!!

 

 

 

粟生屋「何ができるってんだよ」

 

 

 

ズズズズズズ...!!!

 


ダザイ「!!!」

ダザイは、強い重力波により、その場から動けない!!!

ダザイ「...!(何だ...!上から押しつぶされる様な...!!まずい...!!)」ズズズズズズ!!

 


粟生屋は人差し指にマヂカラを貯める!

 


ダザイ「...!!(あれを受けたら!!)」

 


粟生屋「虚重弾!!!!」

 


ズドォォォォォォォンン!!!!!!

 


粟生屋の放った虚重弾は、結界内の敷地を大きく抉りとった!

 


粟生屋「あれ、これ外とリンクしてないよね?駅舎壊しちゃったけど...ま、いっか」

 


ダザイ「...(読めてはいるが...対処法が分からん!!なら肉弾勝負で決めるしか...!)」

 


ダザイは粟生屋の裏に瞬間移動し、刀を粟生屋の首に振り落とす!!!

 


ダザイ「終わりだァ!!!!”極技 麒麟”!!」

粟生屋「ふっ」

 

 

 

グニャッ...!!

 


ダザイの剣はぐにゃぐにゃになった。

ダザイ「!!!」

粟生屋「怠ったな」

 


粟生屋はダザイを重力波によって吹き飛ばした!!

ダザイはビルを何棟も突き破って吹き飛ばされる!!

 


粟生屋「おいおい。時間が無いって言ってるでしょ。そんな遠くいかないでよ。って、僕が飛ばしたんだっけか」

ダザイは瓦礫の下で疼いている。

粟生屋「ま、呼ぶからいいけど」

 


粟生屋が虚空を足で蹴ると、空間に切れ目が生まれた!すると数百メートル先からダザイが吸い込まれるように粟生屋の元へやってくる!!

 


粟生屋「Air-G...!」

ダザイ「...!!吸い込まれる!!」

ダザイが粟生屋の数センチまで迫る!!

ダザイ「!!!!」

粟生屋「はい。ベクトルチェンジ」

粟生屋が指を下に向けると、ダザイは顔面から地面に激突した!!!!

 


ドゴッッッッッッッ!!!!

 


粟生屋「ふぅ...大したことないね」

そこで、粟生屋が何かに気がつく。

粟生屋「お。じゃあ後はよろしく〜」

 


それは、一善の気配だった。一善はヒメの治療で回復し、背中から地面に倒れたダザイに攻撃を仕掛ける!

 


一善「緑のエレメント...!!斜陽...!!」

 


ドボッ...!!

 


一善は、魔導書ゲッターを背中に突っ込み、魔導書を取り出す!

 


バサッ...!!!

 

 

 

 

 

 

 


第520話 「握手」

 


《東京駅・丸の内駅前広場》

 

 

 

戦闘後。

 

 

 

一善ら3人は、魔導書を囲み座っている。

 


粟生屋「僕はそろそろ行かないといけない。お友達が待ってるからね」

一善「ハァ...お友達...?」

粟生屋「白鶯さ。あいつが現れたらしい...」

一善「...!じゃあ僕も...行かないと...」

粟生屋「後でこい。今の君が来ても戦力外だ。少し傷を癒してからにしろ」

一善「...」

粟生屋「ま、君が来る前にもう僕たちが倒しちゃってるかもねぇ」

一善「...」

 


ヒメ「白鶯が...皆は無事なのかな」

粟生屋「白鶯が現れてからか、無線の通りがおかしい。千巣の妹らがちゃんと機能できてるかどうかも分からない」

ヒメ「携帯も繋がらないし...どうしよう」

粟生屋「向こうを見たまえ」

粟生屋は、皇居方面を指さす。

粟生屋「あれは恐らく、僕たちの誰かが使った※七色玉だろう。あれを目安にすれば問題ない」

※煙玉のようなもの。21巻等参照。

ヒメ「でも、白鶯以外の結界は?」

粟生屋「もうここで最後だ。後は白鶯だけ倒せば、ゲームセット」

一善「それなら...もう少しで...!」

粟生屋「だが、こちらの犠牲も少なからずある。中には連絡が取れずじまいの人もいるし」

ヒメ「それって...」

 


粟生屋「まず、越前莉茉が死んだ」

 


ヒメ「...!」

一善「...!」

ヒメ「莉茉さん...そんな...」

 


粟生屋「僕はギリギリまで結界の外にいたから、無線が途切れる直前の情報まで分かってる。でも、確定している犠牲は彼女だけだ」

ヒメ「...」

一善「莉茉さん...」

 


粟生屋「死者を弔うのは後だ。まずは己の治癒を先決に。街の魔者の被害も今はないから、ひとまずここで落ち着くんだ。体勢が整い次第、煙を追って白鶯に会いに来い。いいね」

一善「...分かりました」

粟生屋「じゃあ、僕は行くよ」

 


一善「...粟生屋さん」

粟生屋「...ん?」

一善「少し待ってください」

粟生屋「何?」

 


一善「僕は、自分の正しいと思ったこと...善いと思った事を信じて行動しています」

粟生屋「うん」

一善「でも、あくまでそれは、僕が信じる善いことです。本当に正しいかどうかは分からない」

粟生屋「...」

一善「僕の正しさが、誰かを傷つけるかもしれない」

粟生屋「...何が言いたいの?僕もほら、急がないと」

 


一善「...これから、人を殺しに行きます」

粟生屋「白鶯?」

一善「はい」

粟生屋「...それで?」

 


一善「僕が善人の道を外れた時は、粟生屋さんが僕を止めてください」

 


粟生屋「...なんで僕に頼むのかな」

一善「多分僕の仲間達は、僕に同情してくれます。多分、僕を止められない」

粟生屋「...」

一善「僕もきっと、逆の立場ならそうなってしまう」

粟生屋「...」

一善「だから、一番冷静に物を考えられる人に頼みたいんです」

粟生屋「...ふーん」

 


一善「僕は白鶯を殺す。復讐、約束...そこにはそんな簡単な言葉じゃ片付けられない程の意味があるから」

粟生屋「...」

一善「後から追いかけます。だから改めて、手を貸してください」

 


粟生屋「限りなく自己中心的だね、君は」

一善「...」

粟生屋「でも、いいよ。その末路を僕は見たくなった。手を貸そう。せいぜい、ハッピーエンドになることを願ってるよ」

一善「...はい」

 


ヒュンッ!!!!

 

 

 

粟生屋は、遠くへ消えていった。

 


ヒメ「...」

一善「...」

 


ヒメと一善は、治療を続ける。

 


ヒメは、ダザイから奪った魔導書を手に取った。

 


ヒメ「あの人...なんでノベルに入ったんだろう」

一善「?」

ヒメ「百目鬼君だって、元々はノベルに入ってたじゃない?なんか、彼も事情があったんじゃないかって」

一善「...」

ヒメ「私には手を出さなかったし...なによりも、魔導師なのにどこか悲しい眼をしてた」

一善「...」

ヒメは一善の胸に手を当てながら、魔導書を伝って、ダザイの記憶の断片を読む。

 


〜〜〜

 


ヒメ「...」

一善「...」

 


ヒメ「そんなことが...」

一善「...」

 


すると、一善からつのキングが飛び出でる!

 


ボワンッ!

 


一善「つのキング?!」

ヒメ「...?!」

つのキング「ウォーーーーーー!!!」

つのキングは、背中に乗れと言わんばかりに羽を羽ばたかせた。

 


ヒメ「一善、大丈夫なの?」

一善「う、うん。もう割と回復したけど...」

つのキング「ウォーーーーーー!!!」

つのキングはいつにもまして燃えている。

 


一善「そうか...君も倒したいんだね」

つのキング「ウォーーーーーー!!!」

 


カァァァァァ!!!!

 


一善はイメージの世界に引き込まれる!!!

 


そこには、和義の姿になったつのキングがいた。

 


和義「一善」

一善「...!つのキング!」

和義「これが、最後の戦いになる。準備はいいか」

一善「...うん」

和義「行こう。油木一善...!」

 


2人は握手を交わした。

 


そして、一善とヒメはつのキングに跨り、白鶯の元へ向かう!

 

 

 

 

 

 

次回、最終決戦、遂に幕を開ける...!!!!