SOREMA -それ、魔!- 50

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SOREMA -それ、魔!- 50

 

「HELP」

 

────


第415話 「勝つために」

 

────


《黒の孤島 / 千巣、皆藤サイド》


千巣 vs 皆藤。


千巣は、皆藤の素早い剣裁きに圧倒される...!


千巣「...流石に速ぇ!」カン!キン!

皆藤「本気出してる?」カン!キン!

千巣「本気でやってるよ!」カン!キン!


ズザザザ...


京金は唖然としてその様子を見る。

京金「...(千がついていけてないなんて...やっぱ理子さんはレベルが違うんだ...)」


千巣「ハァ...(慣れてない技使っちまったからマヂカラのコントロールが上手くいかねぇ...!)」ズサッ!

千巣は膝をついた。

皆藤「立ちなさい。千巣くん」

千巣「ハァ...ドSだなぁ...!」


千巣が剣を片手に、地面についた膝を立て直そうとしたその時だった...!!!


ビュウィィィィン!!!


京金「...!!(何!!)」

千巣「...!(何か来る!)」

皆藤「...!(すごい殺意!)」


そこへ現れたのは、白鶯だった!!


バッ!!!!!!


千巣「白鶯!!!!!」

白鶯は、千巣に向かって駆けていく!!

白鶯「さらばだ...歴戦の勇者よ...!」

千巣「...!(視線の正体はこいつか...!!!)」


ド     ッ     カ     ン     !


千巣「.........!」グハッ


千巣は、顎を白鶯に蹴られ、吹き飛んだ!


京金「千!!!!!!」


皆藤「!!!!!」


千巣は、大木に背中を打った。


千巣「ハァ...悪ぃ、ギブ」

京金「千...千...!」

京金は、重い体を引き摺って千巣の元へ向かう。

 

白鶯「...」

白鶯は皆藤を睨みつける。

皆藤「他の皆は...?」

白鶯「さぁな。俺を倒して探しに行くがいい」

白鶯は、手にマヂカラを溜め込む...!


皆藤「...やる気満々ね」チャキッ

皆藤は剣を構える。

白鶯「蹴りをつけるぞ。皆藤理子...!」

皆藤「...(こんなこと、本当ははしたくなかった。でも戦うことでしか分かり合えないなら...私は戦うよ...!君のことを分かりたい...!私は!リーダー...として...!)」

白鶯「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

皆藤「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

ビ          ュ          ン          !!!!

 

 


2人は、激突した!!!!

 

────

 

《粟生屋サイド》

 

────


粟生屋は地面に寝そべっていた。


粟生屋「ハァ...ハァ...空が暗くなってきた...」


ポタッ   ポタッ


雨が降ってきた。


粟生屋「ハァ...僕って...いつもこうだよな...中途半端っていうかさ」


仰向けになった粟生屋の頬を水滴が伝う。


粟生屋「.........」

粟生屋は落ちていたナイフの柄を両手で強く握り、目を瞑る。

 

その時、粟生屋の脳裏に謎の声が木霊する。


〜〜〜


”もっと努力しなさい。私達と家族でいるということは、そういう事よ”


”お前は俺達家族の失敗作だ”


”粟生屋の名を持っていて、恥ずかしくないのかしら”


〜〜〜


粟生屋「.........」


また、別の声が木霊する。


〜〜〜


”死んだら、一番悲しむのは、今まで生きてきた自分よね”


”私は、自分のことだけは裏切りたくない。私、可愛いから”


”どんなに醜くても、私は生き抜いてやる...”


〜〜〜


粟生屋「.........!!」


粟生屋、なにかに気がついたように目を見開き、体を起こした。


粟生屋「あぁ...そうだったそうだった」


粟生屋はナイフを投げ捨てた。

 

 

「ははっ。そうそう。この人生(ゲーム)、マジになったら負けだ」

 

 

粟生屋は立ち上がり、辺りを見回した。


粟生屋「頭ぐらんぐらんするな...まぁいい。リーダー達はどっちだ...?まだやってんのか...?」


粟生屋は、猫背で暗い森を歩く。

 

────


第416話 「終わりを告げる雨」

 

────


《皆藤サイド》


皆藤 vs 白鶯。


降り始めた雨は、徐々に強さを増していく。


戦線離脱した千巣と京金は、戦いの様子を見ている。


千巣「俺達、敗退一番乗りだな」

京金「...」

京金は、座って俯いている。

千巣「...ま、今回は俺の力不足ってことで、」

京金「いや」

千巣「...?」

京金「私が、弱かった。それだけ」

千巣「...?」

京金「やっぱり、勝てない人って、いるのよ」

千巣「...あんま考えすぎるなよ?」

京金「......」

千巣「...」


京金「...(私だって...)」

 

目の前では白鶯と皆藤の戦闘が続く。白鶯はばて始め、皆藤は息を切らしながらも白鶯を追い詰める。
京金は、1人特訓を重ねた日々を思い返す。

 

どんなに...どんなにどんなにどんなに頑張ったって...あの人には敵わない...

 

うわ...やっぱ...あの人は化け物だ...結局私は...最強にはなれない...じゃあ...私は何のために...?

 

京金は唇を噛み締める。

 

────

 

《東海林サイド》

 

────


森の中を、1人歩く東海林。


東海林「......」


東海林は目の光を消し、その焦点の合わない眼で、力なく歩く。

 

仲間だと思ってたのに...

 

東海林は、頬の傷に手を当てる。

 

私だけだったんだ...

 

バタッ...


足元の石に躓く。しばらく立ち上がれずに、雨に打たれる。

 

もう......私って......要らない?

 

────

 

《皆藤サイド》


白鶯「ハァ......(力が...尽きる...?)」

白鶯は、皆藤を前に、体が動かない。


皆藤「雨が降るとね、魔導書の力は弱まる。魔者と同じ」

白鶯「...」

皆藤「つまり、真に体術で強い方が勝つ」

白鶯「...」

皆藤「私はまだやれるけど?」

白鶯は、マヂカラの切れた拳を握る。

そして、皆藤に向かい走っていく!

 

そこへ、粟生屋と東海林もやってくる。

2人は遠くから、皆藤と白鶯を見ていた。


粟生屋「...」

東海林「...」

京金「...」

千巣「...」


白鶯「うぉぉぉぁぁあ!!」

白鶯は重い足を走らせ、皆藤に迫る!

皆藤「...」

 

バッ!シュッ!シュパッ!!!

 

皆藤は、素早い剣捌きで、白鶯を制した!

皆藤「...」

白鶯「...!」グハッ...!


バタッ!!


白鶯は倒れた。


粟生屋「...勝負あったみたいだね...」

皆藤「...」

 

決着──────!

 

────


第417話 「Broken」

 

────


《黒の孤島》


皆藤「...」

皆藤は、呼吸を落ち着かせながら、白鶯を見る。


白鶯「...」

白鶯は、無言で地面にうつ伏せで倒れる。


粟生屋「...」

千巣「...」

京金「...」

東海林「...」


ザァァァァァ...


沈黙の中、皆藤が口を開く。


皆藤「ゲームはおしまい...いいね?」


雨が葉を打つ音だけが響く。


皆藤「うん。じゃあ、風邪ひくし、もう、」

皆藤が続けようとした所に、白鶯が割って入る。


白鶯「結局お前じゃないか」

 

皆藤「...?」

千巣「?」

粟生屋「?」

京金「...」

東海林「...」


白鶯は、うつ伏せになったまま続ける。


白鶯「結局”お前”じゃないか。いつも腹が立ってたんだよ。皆で最強?笑わせるな。お前は心の中では、他の人間を見下し、自分が最強であることを隠してきた。自分に近づかんとする周りの人間を上から嘲笑っていたんだろう。そういう態度が腹立つんだよ」

皆藤「そんなこと...そんなことない!!」

京金「...」


白鶯「最強はたった1人。それを知っていてお前は周りの人間を利用し、嘯き、叶いもしない夢を見せ、そしてそれを今打ち砕いた。俺でもひく程の外道だとは思わないか?」

皆藤「私...そんなつもりじゃ......違う!」

白鶯「結局、今日までお前を超える人間は現れなかった。満足か?」

皆藤「私は...私は!」

白鶯「お前に騙され、ここまで付き合ってきた馬鹿共を思うと気の毒でならないよ」

東海林「...」

 


白鶯「偽善者が」

 


皆藤「!!」

千巣「...あの野郎...!」

粟生屋「...」 


白鶯はよろつきながら立ち上がる。雨は次第に強くなる。

白鶯「これがお前が作った最強のチームの正体だ。そして、この退屈こそ、お前が夢見ていた”平和”だぞ?どうだ?理想と現実はお前が描いた通りのものだったかな?」

皆藤「違う...違うよ......」

 


ガ   ッ   !

 


千巣が、白鶯を殴り飛ばす!


千巣「お前...!さっきからなんなんだよ...!何がしてぇんだよ!!俺達のことバラバラにして、楽しいか?!」


白鶯は地面に手をつきながら答える。

白鶯「あぁ...くだらん友情ごっこを粉々にするのは楽しいよ」

千巣「くっ...!お前さえ!お前さえいなければ!!!」

千巣は、白鶯に馬乗りになって殴りつける。

東海林「...」

粟生屋「...」

京金「もうやめて!」


千巣「お前がいたからこのチームは壊れたんだ!」


皆藤「......!」

千巣「あ...」

皆藤は、絶望に満ちた、今にも崩れ落ちそうな表情で千巣と白鶯を見つめた。脳裏には、白鶯と初めて出会い、チームを結成した日の情景が浮かぶ。

 

私の...せいだ......

 

皆藤「皆......ごめん......ごめん......ごめん......」


千巣「...!」

京金「...!」

東海林「......」

粟生屋「...!」


白鶯「...ははっ」


皆藤「今日で、このチームは解散します」

 

────


第418話 「雨のち曇」

 

────


黒の孤島での激闘翌日


《第2支部


皆藤は第2支部を訪れていた。


ジャ「あ!理子姉さん!!」

皆藤「...」


ジャスティンは皆藤に声をかける。


ジャ「サバイバルゲーム見てたよ!途中までだけど。お姉さん凄いよ!凄いかっこよかった!」

皆藤「...」

ジャ「しかもお姉さんが全員に勝ったんでしょ?!凄すぎるよ!やっぱり”最強”の魔法使いは違うね!」

皆藤「...」

ジャ「俺もお姉さんみたいになれるかな...」

皆藤「...」

ジャ「ん?お姉さん、元気ない?何かあった?」

皆藤「...」

皆藤は、無理くり笑った顔を作る。


皆藤「何も!」

ジャ「...そっか」

皆藤「ありがとね」


皆藤はその場を去る。


皆藤「...護は戦わなくていいわ」

ジャ「え、なんで?」

皆藤「戦うこと以外にも沢山仕事があるから」

ジャ「...」


皆藤はその場を去る。


ジャ「...(どうしたのかな?)」

 

────

 

《鬼屋敷の部屋》

 

────


白鶯は、とある別件で鬼屋敷に呼び出されていた。鬼屋敷はデスクに座している。


鬼屋敷「聞いたわ。あなた、この間の単独任務で市民を見殺しにしたらしいわね」

白鶯「...」

鬼屋敷「も〜話してくれないとわからないじゃないのよ!クールなのはその顔面だけにしなさい!」

白鶯「...」


鬼屋敷「しかも、魔者を取り逃がしたらしいわね。アンタほどの男が」

白鶯「...」

鬼屋敷「どんな魔者だった?」

白鶯「...」

鬼屋敷「〜!もういいわ!追憶調査!行ってきなさい!そこでわかるから!」

白鶯「!それは必要ない」

鬼屋敷「...?」

白鶯「'ガ'ス'マ'ス'ク'を'つ'け'た'魔'者だった。それだけだ」

鬼屋敷「ガスマスク?」

白鶯「...」


鬼屋敷「...まぁいいわ。この話はおしまい。この間の合宿?の話聞いたわ〜。また理子ちゃんに派手に負けたそうじゃないの〜」

白鶯「...!」ピキッ

鬼屋敷「あんたは意地が曲がってるのよ。そのまんまじゃ理子ちゃんには勝てないわよ〜」

白鶯「...黙れ」

鬼屋敷「頼むわよ。私はあんたの力を買ってるんだから〜頑張ってもらわないと〜」

白鶯「...」

鬼屋敷「怒ったらクールな顔が台無しよ。ふっふっ」


鬼屋敷は席を立った。


鬼屋敷「じゃあね。私は新入りの科学者?との顔合わせに行ってくるわ。五百旗頭さん?だっけな。アンタも会ったら挨拶しておくのよ〜」

白鶯「...」


鬼屋敷は白鶯を背に先に部屋を出た。


鬼屋敷「エレメントってなんなのよ〜ハッハッ!」


ガッシャン!


白鶯「...」

白鶯は鬼屋敷の部屋に1人になった。そして、白鶯は徐にポケットから何かを取りだした。


白鶯「...」ニチャア...!

 

────

 

《病院の屋上》


昼下がりの病院。


スゥ...


京金は、柵に寄りかかり煙草を吹かす。


京金「ゴホッゴホッ...」


スゥ...


すると、ある男の腕が、京金の煙草を持つ手を掴む。

バッ!


京金「...!」

千巣「お巡りさんこっちです」

京金「...離して!」


京金は、煙草を落とし、千巣の手を振り払う。


千巣「何してんの」

京金「別にいいでしょ」

千巣「いや、別にお前がそいつを吹かしてる理由は聞かねえよ。こんなとこで1人で何してんの?って話」

京金「...それも関係ない」

千巣「...そーだな」


2人は柵に寄りかかり、遠くを見る。


京金「てか」

千巣「?」

京金「...お前って呼ぶの、やめてくれる?」

千巣「...はい」

 

────


第419話 「そして彼は居なくなった」

 

────


《病院の屋上》


この日、2人は、あの日以来入院した東海林のお見舞いに来ていた。


千巣「東海林、体には別状なさそうだな。全然話してくれないけど」

京金「...うん。あの日以来、ずっと心閉ざしちゃってね、私にも話はあんまりしてくれないけど、体には問題ないみたい」

千巣「まずは安心するべき...なのかな」

京金「そうね」

千巣「でもまだ心配だな。東海林は心(こっち)の傷の方がデカいだろうしな」

京金「...うん」


千巣「今年中の復帰は難しいかもな」

京金「そうね」

千巣「魔裁組も手薄になるな。”粟生屋の件”もあるしな」

京金は遠くを見ながら、静かなトーンで返す。

京金「この期に及んで組の心配?アンタもしかしてサイコ?唯の事本当に心配してる?」

千巣「いや、俺達は魔法使いだし。それに東海林は貴重な戦力だ。そこを心配するのは当たり前だろ」

京金「...」

千巣「まぁでも、急ぐことは無い。それまで俺達が、東海林の帰る場所を守ってればいい」

京金「...うん」


千巣は柵から離れる。


千巣「じゃ、行くわ。東海林のお見舞い、こまめに行ってやれよ」

京金「...言われなくても」


千巣は、その場を去ろうとした。


京金「...待って!!!」

千巣「...?」


京金は、千巣の元へ走り寄った。

 

────


《空港》


粟生屋は、大きなスーツケースを転がして、皆藤と会話する。


皆藤「...本当に、行っちゃうの?」

粟生屋「ええ。今まで、お世話になりました。リーダー」

皆藤「...どうして?」


粟生屋は、少し考え、笑顔で答える。


粟生屋「自分、別にいらないっすよね」

皆藤「...?」

粟生屋「自分の必要性を感じなかったんで。それに、もう飽きたっていうか」

皆藤「そんなことないよ?」

粟生屋「ありがとうございます。でももう帰るつもりないんで。魔導書集まったら呼んでください。返すんで」

皆藤「...」

粟生屋「これからの魔裁組の健闘を祈ります。では」


粟生屋は、スーツケースを転がしてその場を去る。

皆藤は、小さくなる粟生屋の背中に言葉をぶつける。


皆藤「粟生屋君がそうするなら、別にそれでもいい!でも、私はずっと待ってる...!粟生屋君が帰ってくる場所、ずっと空けて待ってるから!」

 


粟生屋は一瞬立ち止まる。

 


粟生屋「.........」

皆藤「...?」


粟生屋は振り返って微笑んだ。

粟生屋「あ、大丈夫っす」


粟生屋は、魔裁組から去った。

 


東海林、粟生屋という2つの大きな戦力を失った魔裁組。

かつてSHAKKSと呼ばれ、最強の世代と言われた6人。彼らの壊れ始めた歯車は、後に起こる”大きな事件”に向け、更に崩壊の一途を辿っていくのだった。

 

────


第420話 「HELP」

 

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《第2支部 / 研究室》


この頃、皆藤は五百旗頭の元で、エレメントの研究に精を出していた。


五百旗頭「そろそろ、休憩にしましょう」

皆藤「すみません。もう少し続けてから食事にします」

五百旗頭「...わかったわ」


五百旗頭は席を立って、コーヒーを皆藤に渡した。


五百旗頭「皆藤さん。あんまり無理しすぎない方がいいわよ。目のクマ、酷くなってるし」

皆藤「...」

五百旗頭「'神'野'く'ん'の'件もあったし、焦る気持ちは分かるけど、結論を急いでも研究は上手く進まない。早く完成するに越したことはないけど、あなたの心身を壊してまでやることない」

皆藤「...」

皆藤は何か言いたげに黙った。

五百旗頭「...?」


皆藤「護の件もそうですが...私は、このエレメントの技術を使って、皆の力になりたいんです!ルカも千巣君も白鶯君も、他の皆も素晴らしい魔法使いなんです!それに、唯や粟生屋君も、戻ってきてくれるかもしれないから...だから、もっともっと強くなれるように、サポートがしたいんです!それが今の私に出来る最大限の」

五百旗頭「”贖罪”とでもいうのかしら?」

皆藤「...!!」


五百旗頭「聞いたわよ。”サムワット”時代の話」

皆藤「...」

五百旗頭「あなたの気持ちも分かるけど、なら尚更足並みを揃えて、着実に成果を出していくべきじゃない?突っ走ってもいいことないわ」

皆藤「五百旗頭さん...」


五百旗頭「皆藤さんは本当によくやってくれてる。だから今は、少し休んだら?」

皆藤「...」

 

 

1週間後

 


《格技場》


キィン!キィン!!


剣を交える音が、場内に響く。


皆藤は久々に第1支部に顔を出し、京金、千巣と組手をしていた。

千巣は、皆藤と京金の組手を見ている。


千巣「...」

京金「...!」キィン!キィン!

皆藤「...!」キィン!キィン!


千巣「...(2人とも目が死んでる...俺が言えたことじゃねえが...)」


京金「...!」

皆藤「...」

シュッ!パッ!ザンッッッ!


京金は、皆藤から1本取る。


バタッ


皆藤は尻もちをつく。

京金「ハァ...やった...?」

皆藤「...」


京金「...?」ハァ...ハァ...

千巣「...(皆藤さんが1本取られた...そんなことあったか?今まで)」


皆藤「...ハァ...もう終わりにしましょう」

京金「...はい?」


皆藤「もう皆十分強くなった。強さだけが全てじゃない...」

皆藤は地面に座ったまま答えた。

皆藤「あなたの勝ちよ、ルカ」


京金「...」

千巣「...(もしかして...?)」


京金は、震えた体で小さく呟いた。


京金「最低」


京金は、目元を腕で覆いながら外へ駆けだした。


皆藤「...」

千巣は、皆藤の元へ歩み寄る。


千巣「わざと負けましたね?」

皆藤「...」

千巣「あいつもそれをわかって...」

皆藤「...」

千巣「ちょっと、酷ですよね」

 


皆藤「じゃあどうすればいいんだよ!!!!」

 


千巣「...!!」


皆藤「...ごめん...大きな声出して...」

千巣「...いえ」

皆藤「...」

千巣「1人で抱え込みすぎですよ。理子さん」

皆藤「ごめん」

千巣「俺も何か出来ることがあれば、」

皆藤「ありがとう。でも、いいの。そう思ってくれるだけで十分」

千巣「でも、」

皆藤「ちょっと1人にさせて。ごめん...ごめんね」


皆藤は、外へ出た。


千巣「...(京金は誰よりも強くなりたがってた...でも”あの日”以来、自分の実力に限界を感じて自暴自棄になってた...東海林や粟生屋の離脱も大きく影響しただろう。今のあいつに残ってるのは惰性だけ。きっと理子さんもそれがわかってて'こ'う'し'たんだろうが...裏目に出たな...)」


千巣は、皆藤が出ていった扉を見る。


千巣「...(理子さんも...京金も心の傷が大きすぎる...俺になにか出来ないか...?とりあえずまずは...俺がちゃんとしないと。俺だけは真っ直ぐ前を見ないと。魔裁組を守るために...!)」

 

────

 

そして、事件は起き、1つの時代が終わりを告げることになる。

 

────


《深夜 / 謎のビルの屋上》


白鶯「くくくくっっ...はっはっはっ!!」


白鶯の手には、”蒼い書物”が握られていた。


白鶯「遂に...遂に手にしたぞ...!最強の力を...!!!はっはっはっはっ!!!!!!」

 

────


第421話 「指名手配犯」

 

────


《第1支部


第1支部は、混乱状態にあり、焦る人々でごったがえしていた。


鬼屋敷「ちょっと!!どういうこと?!?!」

鬼屋敷は焦った表情で職員を問いただす。

職員「わかりません!!ただ、何者かが鬼屋敷さんが不在の間に例の宝庫から”不死の書”を盗み出したと!!」

鬼屋敷「何よそれ!!あの宝庫の場所は限られた人しか知らないはずよね?!それに、強い結界が張られてるはずよ?!」

職員「そうなんですが、全て破られたみたいで、、今善能寺さんとも連絡をとって事態の確認を取っている次第です!!」

鬼屋敷「あの力が誰かに渡ったらとんでもない事になるわ...!!早く取り返さないと!なんてことに!!!」


《宝庫》

千巣と京金は、報告を受けて宝庫へ案内された。

千巣「こんな所にこんな宝庫が...」

京金「誰が何の目的で...」

職員「何か分かることはありますか...?」

京金「魔具のトラップが全部破られてる...かなり強い人間の仕業ね」

千巣「それにこの場所はみつけようと思って見つけられるような場所じゃない。入るのにも必要な段階がある。この仕掛けを知っている人間...つまり」

京金「内部の人間...」

千巣「そう。犯人は魔裁組関係者かと」

職員「成程...」


京金は千巣に尋ねる。

京金「不死の書って、一番最後の魔導書よね?」

千巣「あぁ。強いマヂカラ反応を探ろう」

京金「そうね。そういえば、白鶯と理子さんは...?」

千巣「理子さんはさっき連絡があった。犯人を探してるって。しかも、もう目星がついてるって」

京金「え...?それって」

千巣「...信じたくは無いが...理子さんが言うならな...」


京金「...!私達も行くわよ!」

千巣「あぁ...!」

職員「あのぉ!2人とも...!!」


京金と千巣は宝庫から飛び出した。

 

────

 

《とある廃工場》


皆藤は、1人、廃工場へ来ていた。


皆藤「来たわよ...1人で」


???「来たか」


ヒュンッ!


男が1人、皆藤の前に、上から現れた。


皆藤「久しぶりね。白鶯君」

白鶯「待っていたぞ。かつてのリーダーさん」

皆藤「ここに呼び出した理由。そういうことよね」

白鶯「...何の話だ?」

 

白鶯は、緩んだ口角で、見下すように話す。

皆藤「とぼけたって無駄。君なんでしょ?不死の書を盗んだのは」

白鶯「ほほう?」

皆藤「私を呼んだのは何で?返してくれるの?」

白鶯「それは違うな。俺は今日で魔裁組を抜ける。最後に顔を見ておこうと思ってな」

皆藤「ということは、白鶯君が不死の書を盗んだので間違いないのよね」


白鶯「ふっ...如何にも」ニヤッ


皆藤「分かってるわよね。これは重罪よ。今不死の書はどこにあるの?早く返しなさい」

白鶯「嫌だと言ったら?」

皆藤「もし君が不死の書を返さないと言うのなら...魔裁組及び魔法協会の規定に則り、ここであなたを殺害します」

白鶯「俺を殺す...?」

皆藤「ええ」

皆藤は真っ直ぐな目で言った。


白鶯「ははっ。無理だ」

皆藤「...」

白鶯「お前に俺は殺せない」

皆藤「...」

白鶯「それはお前が一番わかっているだろう?お前はくだらん情があるせいで、弱者に構い、”仲間”の罪を罰せない。違うか?」

皆藤「...」


白鶯「俺は殺せない。お前には」

 

SOREMA -それ、魔!- 51へ続く。