SOREMA -それ、魔!- 67

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SOREMA -それ、魔!- 67

 

 

 

 

 

 

 


全て終わらせる

 

 

 

 

 

 

 


第535話 「空き容量」

 


《決戦の地》

 


ルカ「...(何が起きた...?そんなことよりあの子は...?)」

三太郎「へっ。危なかったな」

ルカ「アンタは」

三太郎「間一髪だったなぁルカルカ。でも俺が来たからもう安心だ」ドン!

 


麗美とルカは、三太郎によって落下を免れたのだ。

 


ルカ「その呼び方やめろ!」

三太郎「ちぇっ。ありがとうくらい言われたいよねー」

ルカ「ちっ。助かったわよ。感謝するわ。ってかあの子は?」

三太郎「麗美?それなら向こうで」

麗美は、地面に横たわっていた。

 


ルカ「...おチビちゃん!!!」

 


ルカは、麗美の元へ駆ける。麗美は目を覚まさない。

 


ルカ「アンタ...馬鹿よね...!何してんのよ!!」

ルカは、麗美を揺する。

 

 

 

ルカ「もう...ほんと...ほんとに...」

ルカは肩を震えさせる。

 

 

 

三太郎「多分だけど、麗美生きてるよ?」

ルカ「は?」

三太郎「うん」

ルカ「いや、あんた見てた?あんなもんモロに喰らって、私だって即死よ?それを、この子が...?」

 


すると、麗美が目を覚ます。

 


麗美「...舐め...すぎ...」

ルカ「...?!」

三太郎「麗美さ、そーゆー技持ってんの」

ルカ「は?!」

麗美「とにかく......もう無理だから...後は頼んだよ」

ルカ「ちょっとまてぃ!何?無策で飛び込んだんじゃなかったの?!言葉が足らん過ぎるわ!アホ!」

麗美「...うるさ。...命の恩人に説教かよ」

ルカ「...!」

 


三太郎「まぁまぁ。とにかく助かったんだからよしってことで。麗美は美波達に任せて、ルカルカはまだやれるか?」

ルカ「...ったりまえよ!まだやり足りないわよ」

ルカが立ち上がろうとすると、麗美がルカの服の裾を掴む。

 


ルカ「...?」

麗美「...貸しは...返した!」

ルカ「...はいはい」

 


ルカは、立ち上がり、三太郎に着いていく。

三太郎「もうすぐ首を再生させられる。早く行かないと」

ルカ「アンタと私でやるわけね。アンタ、何ができるの?」

三太郎「2人だけじゃねえぜ」

ルカ「?」

 

 

 

幸二「自分らもいます」

唯「ルカルカ!無事でよかった!!」

幸二と唯がそこへ現れた。

ルカ「唯...!」

 


幸二「それに、これ」

ルカ「...魔導書?」

 


幸二は手に魔導書を持っている。

 


幸二「封印の書。白鶯から奪ったものです」

ルカ「あいつ。いくつ魔導書抱え込んでんのよ」

幸二「でも恐らく、残りの保有していない魔導書の数を考えても、白鶯の宿す魔導書はわずかでしょう」

三太郎「俺たちが来るまでに、ジャスさん達が回収してくれたって聞いたからな!」

 


唯「不死の書と、元々持ってた龍の書は回収出来てないから、最低2つはあると思うけど」

ルカ「成程」

幸二「奴はもう魔者です。残りの魔導書を全部奪えばゲームセット、体が滅びます。そうでなくとも、とにかく魔導書さえ奪えば、あとはどうとでもなります」

唯「これ以上、白鶯君に人を傷つけさせたくない。だから早く魔導書を全部回収しよう」

 


ルカ「そうね。とっとと、うっ...!」

ルカの体の傷が疼く。

唯「大丈夫?!ルカルカ!」

ルカ「問題ないわ...待たせたわね、いくわよ」

 


三太郎「よし俺たちで、白鶯を倒すぞ...!」

 


4人の視線の先には、首の戻った白鶯がいた。

 


白鶯「めでたい奴らだな」

唯「白鶯君...」

 


白鶯「何人代わりが来ようと、押され気味なのはお前達の方に見えるが」

幸二「余裕ぶっこいてるみたいだが、お前もそうとう削られてるみたいだが?」

幸二は、封印の書を白鶯に見せる。

 


白鶯「どれだけ魔導書を奪われようが構わん。この身に宿った2つの魔導書さえあれば、後はお前たちを葬ったあとでゆっくりと回収し直せるからな」

幸二「...(2つ...不死の書と龍の書か...奴を信じるなら、残りの魔導書は2つだけ...嬉しい誤算だが、期待しすぎずにいよう)」

するとルカが、白鶯の後ろに回り込んでいた!

 


ルカ「ベラベラとうるさいわよ」

 


ザクッ!

 


ルカは白鶯の首を鎌で吹っ飛ばした!

しかし、首が落ちた白鶯は、その腕でルカの首元を掴んで持ち上げる。

そして、首を再生させながらルカに話しかける。

 


白鶯「お前達が枷を外してくれたおかげで、体が動きやすくなった...やはり、魔導書の抱え込みは体に毒だな」

白鶯は5つの魔導書を宿していたが、2つになったことで、お互いの魔導書によって抑えられていたマヂカラから解放され、残り2つの魔導書の能力を効率的に扱えるようになった。

 


幸二「三太郎!行くぞ!」

三太郎「あぁ!」

幸二と三太郎は、白鶯がルカに気を取られている間に、魔導書を奪いに白鶯の背中に迫る!

 


唯は空から白鶯を包囲する。

 


ルカ「くっ...アンタ、ボロいパソコンかよ」

白鶯「ちっ」ブチッ

 


ボワッ!!!!

 


白鶯がルカを持っていた手から炎があがる!

 


唯「ルカルカ!!!」

ルカ「.........!」ボワッ...!

ルカは白目を向いて気を失った!

 


幸二「...白鶯!!!」

三太郎「くらえ!!!!」

 


幸二らが白鶯に攻撃を加えようとすると、白鶯から龍のオーラが数体現れ、幸二らを掴んで遠くへ突き放す!!

 


幸二「うわぁ!」

三太郎「くそっ!」

唯「!!ルカぁ!」

 


ドーーーン!!!

 


3人は、白鶯から遠くへ離される。白鶯は、白鶯の足元に倒れたルカを見下ろす。

そして、ルカの持っていた鎌を両手で持ち、振りかぶる。

 


唯「ルカルカ......ルカぁ!!」

幸二「......!」

三太郎「ルカルカ...!(ちっ、龍に噛まれて、体が動かねぇ!)」

唯「白鶯君...お願い...やめて......」

 


白鶯は鎌をルカ目掛けて振り下ろす!

白鶯「沈め」

 


ゴォォォォォォ...!

唯は悲鳴をあげる!

 


その時。

 

 

 

 


ドォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 


白鶯は横から何者かに凄まじい蹴りをくらって吹き飛ばされた!!!

 


白鶯「また横槍か...」

 


ルカ「......」

ルカは、白鶯では無い別の人間の足元を見る。その男は、膝の埃を払いながら言った。

 


粟生屋「ふぅ。お待たせ」

ルカ「粟生屋......遅いわよ......」

 


粟生屋到着──────!

 

 

 

 

 

 

 


第536話 「星が降る夜に」

 


粟生屋「ふぅ。お待たせ」

ルカ「粟生屋......遅いわよ......」

 


唯「あおやん...!あおやん!!!」

唯は号泣してルカの救出を喜んだ。

 


粟生屋は、唯達が掴まれている龍を払う。

 


粟生屋「まさか君がここまでコテンパンにやられるとは」

ルカ「私だってね...結構やったのよ......」

粟生屋「東海林、僕がやるから、その間に彼女の治療を」

唯「え...でも」

粟生屋「大丈夫...だって僕...」

 


唯「...」

 


粟生屋「最強だから」

 


唯「...う、うん!そ、そうだね!」アセアセ

ルカ「......キモ」

 


バタッ

 


ルカは気を失った。

 


粟生屋「安心して眠りたまえ。僕がカタをつける。天堂幸二、それとその友達。手伝いたまえ」

幸二「...はい」

三太郎「俺は三太郎だ!モブじゃねえぞ!」

粟生屋「なら活躍してそれを示せ。僕に食われないようにね」

三太郎「当たり前だ。主役は俺だからな!フン!」

粟生屋「...」

幸二「(なんの話ししてんだ、この人達)」

 


白鶯がやってくる。

 


白鶯「久しいな。粟生屋昴」

粟生屋「随分と醜悪な姿になったな。白鶯」

白鶯「お前はだらしなくなったな。先程の蹴りも、さほど喰らわなかった」

粟生屋「あれは10パーも出してないからね」

白鶯「よく言う」

粟生屋「さ、何でもいいけど、お話しに来たんじゃないんだ。わかるよね」

白鶯「俺も血が騒いでいるよ。またお前は俺に負けに来た...!」

粟生屋「さぁ、今度はどうなるか...」

 


白鶯「...来い!」

 

 

 

ヒュン!!!!

 

 

 

粟生屋は超高速で白鶯に迫る!

 


幸二「!!!」

三太郎「!!(見えねぇ!)」

 


粟生屋と白鶯は目にも止まらぬ速さで攻撃をぶつけ合う!!

 


幸二「...手伝えって言われても...」

三太郎「見えねぇんじゃ...何も出来ねぇ」

 


白鶯は龍の姿になり上空に飛ぶ。粟生屋も宙を舞うように、白鶯と空中戦を繰り広げる!

 


白鶯「もっと...広く使おう!」

 


ドォォォォォォォン!!!

 


白鶯が、粟生屋をビル3つ分突き破る勢いで吹き飛ばす!

 


粟生屋は吹き飛ばされた先で周りを見る。

 


粟生屋「一般人の避難は済んでる...ならもう少し広く使おう」

 


粟生屋は立ち上がる。

粟生屋「さっきまでの場所じゃ、僕には狭すぎる」

 


粟生屋は空に浮かぶ白鶯目掛けて攻撃を放つ。

 


粟生屋「虚重弾!!!」

 


白鶯はそれを尻尾を巻いて受け止める。

粟生屋は宙へ跳び、攻撃を受け止めた白鶯ごと蹴り飛ばす!

 


ドォォォォォォォン!!!

 


高速道路を真っ二つに破壊しながら、白鶯は地に落ちる。

 


そこに粟生屋が隕石を数弾落とし込む!!

 


ビル群だった辺り一面は、ほぼ更地になった。

 


幸二「...圧倒的過ぎる...!あの二人の戦いは異次元だ...!」

三太郎「俺達も行くぞ!隙を見てれば何かしらやれるはずだ!俺はモブじゃねぇ!!!」

 


白鶯は人間体に戻る。

 


白鶯「こっちの方が、お前とやるにはいいな。さっきのは的がデカすぎた」

粟生屋「変わらないだろうけどね。相手してやるから来いよ」

白鶯「デケェ口叩きやがるなぁ。いつもお前は」

 

 

 

 

 

 

 


第537話 「カノ」

 


粟生屋 vs 白鶯

 


シュッ!バッ!ガッ!ドカッ!ヒュンッ!...!

 


拳を振る音や、空を蹴る音が遠くまで響く!

空振りの衝撃波ですら、周りの建造物が耐えられるものではなく、更に辺り一面が崩壊していく!

 


粟生屋「...!」

粟生屋がパンチを外す!

白鶯「隙あり!」

 


ドォォォォォォォン!

 


白鶯の攻撃が、粟生屋の顔面に炸裂する!粟生屋は目の上を切り、出血した。

 


粟生屋「...血か」

 


白鶯「油断するなよ?」

白鶯は、粟生屋目掛けて衝撃波を放つ!

 


粟生屋はモロに攻撃を食らってしまう!

粟生屋「......!」

 


幸二「粟生屋さん!」

すると、裏に回っていた三太郎が白鶯に殴り掛かる!

白鶯は、三太郎の攻撃を全て避ける!

白鶯「当たっていれば、なかなかの威力だろうな」ヒュンッ!ヒュンッ!

三太郎「ちっ...!」

幸二は遠くから白鶯目掛けて弾を放つ!

白鶯はそれを弾きながら、三太郎の攻撃を避け続ける!

 


白鶯「あの男のおかげで、目が慣れた。お前達の動きが全てスローモーションに見えるよ」ヒュンッ!ヒュンッ!

三太郎「クソっ!」

幸二「...!」

 


その時、白鶯の動きが止まる!

白鶯「...?!」

三太郎「うぉぉぉぉぉ!!!」

 


ドォォォォォォォン!!!!!

 


三太郎の攻撃が、白鶯にクリーンヒットした!!!

 


白鶯「...!!!(成程な...アイツだ...)」

 


粟生屋「ハァハァ...」

粟生屋が、白鶯の動きを重力で一時的に止めていたのだ。

 


幸二「三太郎!あれやるぞ!」

三太郎「おう!」

 

 

 

幸二「インパクトマグナム!023!!!」

 

 

 

2人は合体技を白鶯に食らわせる!!!

 


ドォォォォォォォン!

 


白鶯は壁を突破って遠くへ飛んでいく!

 

 

 

〜〜〜

 


粟生屋は、朦朧とする意識の中で、ふと、昔のことを思い浮かべる。

 


〜〜〜

 


粟生屋母「もっと努力しなさい。私達と家族でいるということは、そういう事よ」

 


粟生屋父「お前は俺達家族の失敗作だ」

 


粟生屋母「粟生屋の名を持っていて、恥ずかしくないのかしら」

 


粟生屋の家は、由緒正しき上流階級の一家である。

父は政治家、母は一流メーカーの令嬢で次期社長候補。年の離れた兄は日本有数の医大を主席で卒業し、今は医者。

そんな一家で育てられた粟生屋は、常に高いレベルの成績や結果を求められて生きてきた。

 


粟生屋は父や兄ほど数字に興味がなく、家では落ちこぼれ扱いを受けていた。

 


そんな粟生屋だが、昔から魔法が使えたことで、内心家族を見下しながらも、息苦しさを感じつつ生きていた。

 


兄は父や母ほど厳しくなく、粟生屋とも普段から会話を交わしていた。

 


粟生屋は兄の勤める病院にたまに足を運び、休憩時間に話をしたりしていた。

 


粟生屋が中学に進学したくらいのとある日、いつも通り粟生屋が病院に行くと、兄が担当していた少女と話す機会があった。少女の名前はカノ。カノは、心臓の持病があり、入院していた。カノは無愛想で、幼いながらどこか達観したような雰囲気のある少女だった。

 


カノ「お医者さんの弟の人ですよね」

粟生屋「弟の人ってなんだよ。昴でいい」

カノ「じゃあ、昴」

粟生屋「いや、さんはつけてね?」

カノ「昴はさ、人生楽しい?」

粟生屋「(無視された)うーん。普通かな。なんで」

カノ「いや、楽しくないなら、頂戴よ、昴の時間」

粟生屋「...はい?」

 


カノ「私、いつ死ぬか分からない。だから、当たり前のように、辛い顔して生きている人を見ると、その分頂戴よって思っちゃう」

粟生屋「...」

カノ「健康だった時は、もがいて生きるの馬鹿みたいって思ってたし、周りの子達とか、運動会とかお受験とか?何熱くなってるんだろって思ってたけど、今私は、やりたくてもそれが出来ない」

粟生屋「なるほど?」

カノ「別に私は熱血ごっこがしたいわけじゃない。やり遂げたいこともないし、未練もそんなにない。ただ私は、自分の限られた時間を、全部自分の好きなように使いたい。その時間を得る、つまり、生き延びるためには、たとえ醜くても、今をしぶとく生きてやるって、思った」

粟生屋「...」

 


カノ「死んだら一番悲しむのは、今日まで懸命に生きてきた自分自身だし」

 


粟生屋「...!」

カノ「だから、私は自分のことだけは裏切りたくない。私、可愛いから」

粟生屋「...」

 


カノ「どんなに醜くても、私は生き抜いてやる。それでそのあと、めちゃくちゃ遊んでやる。人生を謳歌してやる。美味しいもの沢山食べて、一日中映画館で映画見て、世界中を旅したい。自分の時間の使い方を、自分で決めたい」

粟生屋「ほう」

カノ「皆、明日が当たり前にあるって思ってるから、時間を勿体なく使ってる人が多い。自分に残された時間なんて、誰も教えてくれないのに」

カノは、潤んだ目で呟いた。

粟生屋「...!」

 


カノ「昴はどう?適当に使ってるんだったら、その時間私に頂戴よ」

 


粟生屋「...嫌だね」

カノ「...!」

粟生屋「ありがとう少女。君のおかげでハッキリしたよ。そうだな。じゃあ僕は、君が呆れるくらい自分の時間をテキトーに食いつぶしてやる。やりたくない事は一切しない。人に指針を決めさせない。僕の描いた人生だけをテキトーに過ごす。マジになったりすることなくね」

カノ「は?あと、カノって呼んで」

 


粟生屋「カノ。僕もね、誰かの期待に応えたりとか、やりたくないことをやらされてる時間が嫌いでね。本当にうんざりだよ。うん。決めた。僕は僕のやりたいようにやる」

カノは苦笑いを浮かべて言った。

 


カノ「...まぁ、よかったね」

粟生屋「うん。ありがとう、カノ」

 

 

 

1週間後、粟生屋は兄からカノが亡くなった事を知らされる。

 


回想終──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第538話 「own way」

 


《決戦の地》

 


粟生屋は、過去に白鶯に敗れた黒い森での事を思い浮かべる。

 


粟生屋「マジになったら...負け...」

 

 

 

 


だって、かっこ悪いもんね。

 

 

 

僕は、テキトーに、スマートに生きていきたいんだよ。

 

 

 

あの時、カノに誓っただろう?僕は絶対に、自分の決めた道を生きるって。

 

 

 

 


...でも、本当にそうか?

 

 

 

 


今の僕は、何だ?

 

 

 

 


自分のやりたいことをやる、やらされたくないことをやる。

本当の思いはこれだろう?

 


でも果たして、今の僕は”本当にテキトーに生きたい”と思っているのか?

 

 

 

白鶯に負けた時僕は、足掻くのがかっこ悪いと思った。

血塗れで抗うのがかっこ悪いと思った。

だってスマートじゃないから。

テキトーじゃない、マジになってるから。

だから僕はあの時、白旗をあげた。

 

 

 

 

 

 

でも、その後に残った、心の中の黒いしこり。

 

 

 

 

 

 

違和感があった。何かが違うと思った。

でも僕は、自分の頭の中にある、スマートに生きる自分を守れたと、言い聞かせるように、そのしこりの上からブラインドをかけた。

 

 

 

ずっと続いた違和感、そして何より。

 

 

 

僕の中のカノは笑ってなかった。

 

 

 

 


今もそうだ。僕は白鶯にやられた。ここで足掻くのはかっこ悪い。後輩に見られてみっともない。こんなの僕じゃない。ここで退散するのが一番いい......

 

 

 

違うだろ。

 

 

 

 

 

 

そうか、わかったよ。

 

 

 

僕はずっと自分に”嘘をついていた”んだ。

 

 

 

凝り固まった親と同じで、僕はずっと、”スマートな自分”に雁字搦めになっていた。

 


主人公は僕だろう?

 


ここで僕は、きっとやらないといけないんだ。

 


本当にやりたいことを、やらないといけない。

 

 

 

今やりたいのは、スマートな自分を守ることじゃない。”白鶯”を倒すことだ。

 


それは僕の醜態を晒すことになるかもしれない。血塗れで戦う僕は不細工かもしれない。

 


もちろん、テキトーに戦って勝てる奴じゃない。

 

 

 

今日までのスマートの自分は、今の僕を笑うかもしれない。周りの人間からは”らしくない”と言われるかもしれない...

 

 

 

 


でも、そんなの──────

 

 

 

粟生屋は立ち上がる。そして呟く。

 

 

 

粟生屋「知らねえよ」

 

 

 

粟生屋の目には、白鶯と激戦を繰り広げる幸二と三太郎が映っている。

 


粟生屋「随分と時間を無駄にしてしまったよ、カノ。一旦”俺”のプライドを預かっててくれないか?」

粟生屋は拳に力を込める。

 


粟生屋「スマートな僕とは、白鶯(あいつ)を倒して落ち合うよ」ゴゴゴゴ...!!

 


”かっこいいよ。昴”

 


粟生屋「今は醜くても、何だってしてやる。紛れもなく、必死で!」

 

 

 

 

 

 

 


第539話 「全て終わらせる」

 


ゴォォォォォォ!!!!

 


粟生屋にエネルギーが漲る!!!

 


ヒュンッ!!

 


粟生屋は、3人のいる方へ向かって突き進む!

 


粟生屋「まだ終わってない!!白鶯!!!」

白鶯「...来たか!」

 


粟生屋らは、白鶯に攻撃をしながら会話する。

 


幸二「粟生屋さん!」

三太郎「動いて大丈夫なのか?」

粟生屋「そんなこと言っている場合じゃないだろう!まずはこいつを止めないと!」

三太郎「...おう!」

幸二「!」

粟生屋「狂渦(くるうず)!!!」グゥィィン!!

白鶯「...!!(こいつ、さっきより士気が高まっている?!)」

 


三太郎「朱のエレメント!!ダイナマイトエモーション!!!」ドォォォォォォォン!

白鶯「...!!」グハァ!!

幸二「操天!!落ちろ雷!!」ゴロォン!

白鶯「くっ!」グハァ!!

 


白鶯は吹き飛ばされる!

 


幸二「ハァハァ...ハァハァ...」

三太郎「くっ...ハァハァ...」

粟生屋「...(僕は束の間休めたが、この2人はもう限界をとうに越えてる...!次の攻撃に耐えられるか...!)」

三太郎「ハァハァ...まだ立ってくるぞ、行けるか?幸二?」

幸二「ハァハァ...あぁ...うっ...」

三太郎「幸二!」

粟生屋「...(他の兵力も軒並みダウンしてる。回復役が不足してる故東海林を戦闘に回す余裕もない...後は”彼”が来てくれれば多少は楽になるが...!)」

 


白鶯は再び立ち上がった。

 


白鶯「成程、全身傷だらけになろうと、目はまだ生きてるな」

幸二「...当たり前だ」

三太郎「お前なんかに、魔裁組が負けてたまるかよ...!」

白鶯「ははっ。ヒーロー気取りなお前達も、なかなかのジリ貧の様だが、そろそろ三人纏めて沈めてやろうか」

粟生屋「ふっ。甘いね、白鶯」

白鶯「あ?」

 


粟生屋「こいつらはな、何度やられても諦めない。何度倒されようと、傷を重ねようと、立ち上がる力を持ってる。僕が見てきた中でも、最強のチームだよ」

白鶯「...」

 


粟生屋「それにね、お前は少々やりすぎた。沢山のものを奪ったね。奪う人間は、奪われる覚悟もした方がいい」

白鶯「なんの事だ?」

 


粟生屋「奪われる者は弱者では無い。奪われた怒りや悲しみはやがて大きな力となり、奪った者はその報いを受ける。お前にもう未来はないよ。白鶯」

白鶯「戯言か?寒い事を言うようになったもんだ、粟生屋。その続きは一旦鏡を見てから言うべきだと思うが?」

粟生屋「いや。もう終わった。ほら、お前が嫌いな”敗北”が音を立てて近づいてきたぞ...!!」

白鶯「...?!」

 


グ     シ     ャ     !!

 


一善「...」

 


白鶯の背後からつのキングが高速で飛んできたのだ!

一善は、一瞬にして白鶯の横を素通りし、粟生屋らの元へ降り立った。

 


白鶯は、自分の腹部の出血を見る。

 


一善の手には、不死の書が握られていた。

一善と、ヒメはつのキングから降りる。

 


幸二「一善...!」

三太郎「やったんだな...!一善!」

粟生屋「ふっ」

一善「遅くなってごめん」

 


白鶯「また新しい味方か」

 


一善は白鶯に背中を向けたまま、白鶯を睨みつける。

 


一善「あ゛?」

白鶯「...」

一善は、白鶯に体を向ける。

 


一善「ヒメ、まずは幸二達を治療して欲しい。その後、周囲の手伝いをしてくれ。出来るだけ多くの友達を助けたいんだ」

ヒメ「うん。わかった」

幸二「いや、まだ、戦える」

三太郎「俺も...!」

一善「ありがとう。でも、一旦休んでくれ。まずは傷を治してから。命を賭して戦った仲間の為にも、簡単に死んじゃダメだ」

幸二「...」

三太郎「...」

 


ヒメ「でも...大丈夫?1人で」

粟生屋「僕はさっき休んだから、助太刀させてもらう。邪魔とは言わせないよ」

一善「ありがとうございます」

 


ヒメ「...」

一善「俺達の仇は必ず俺達がとるから」

つのキング「ウォーーーー!」

ヒメ「ありがとう。一善」

幸二「お前も死ぬなよ」

三太郎「ほんとだぞ!」

一善「大丈夫」

 


幸二らはヒメと共に戦線離脱。

 


白鶯「めでたい奴らだな。どうせ全員死ぬんだから、関係ないだろう」

一善「白鶯蓮源。お前だけは絶対に許さない」

 


ゴゴゴゴ...!!!!

 


ビリビリビリビリビリ...!!!!

 


一善の怒りが、周囲にまで波及する!!

 


粟生屋「...!(凄まじいね...!)」

 

 

 

一善「お前が命を奪った人。命を奪わせて死んだ人。そして、それを悲しみ涙を流した人。今ここでその全員に詫びろ」

白鶯「俺に命令するか。成程、ならば断ると言ったら?」

 

 

 

一善「関係ない。どう答えようと地獄へ送ってやる。誰よりも辛く、痛く、苦しいやり方で」

 

 

 

白鶯「...!」

 


一善 vs 白鶯、因縁の対決──────!!