SOREMA -それ、魔!- 68

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SOREMA -それ、魔!- 68

 

 

 

 

 

 

 


理想

 

 

 

 

 

 

 


第540話 「理想」

 


《決戦の地》

 


ひえりと五百旗頭が戦場に到着する。

 


ひえり「唯さん!」

唯「あ!ひえりちゃん!なぎちんさん!」

五百旗頭「私たちはまず何をすれば良いかしら」

唯「私は今ルカルカから手が離せないので、他に怪我をしている組員や一般の方の治療と、そのフォローをお願いしたいです!美波ちゃんと一緒に!」

ひえり「分かりました!」

 


唯「あと、もう少しでルカルカの応急処置が終わるので、そしたらルカルカと麗美ちゃん、幸二君達の経過も見てて欲しいです!そこらへんはヒメちゃんが今やってくれてるので!」

五百旗頭「分かったわ」

唯「そしたら私も戦線に戻ります!」

ひえり「とりあえず私は美波さんの方行きますね!」

唯「よろしく!」

 

 

 

白鶯 vs 一善

 


2人はお互いに睨み合う。粟生屋はその様子を一善の隣で見る。

 


一善は、激しい怒りを沈めながら話す。

一善「覚えてるか?3年前のクリスマス。俺の母親を殺したのはお前だな?目の下に結晶の様な痣がある」

白鶯「覚えている...わけが無いだろう」

一善「...」

白鶯「誰を殺ったかなんて、一々覚えてないさ。お前は毎日の食事を何年も覚えていられるのか?」

一善「食事と殺人を同じ様に考えるなよ」

白鶯「同じだよ。日常行為という意味でな」

一善「はっきり言うが死ぬほど不快だよ。ここまで他人に殺意を抱いたのは初めてってくらいに」

白鶯「俺は人から殺意を向けられ慣れてる。お前にとって俺は仇でも、俺にとってお前はただの虫ケラ。お前のように俺に歯向かう人間は俺の望む世界に要らん」

一善「必要とされなくて結構だよ」

白鶯「お互い様だな」

 


一善「俺には分からないんだよ。他人を傷つけて平気でいられるその神経が」

白鶯「...」

一善「お前のような人間は社会から排除するべきだ」

白鶯「他人...人間...社会...お前は何か履き違えているようだ。お前はまさか、俺とお前が対等な”人間”であるとでも思っているのか?」

一善「は?」

 


白鶯「もはや俺は人間ではない。神だ。この社会に縛られる存在ではない。俺がこれからの社会秩序を作っていく。俺にとって過去の社会等もう必要が無い」

一善「何を言ってるんだ?」

白鶯「お前は神はいると思うか?」

一善「...」

白鶯「まぁ神はいるかもしれんな。だがその神はな、この上ないほどに不平等だ」

一善「...」

 


白鶯「何故ならば、どんな人間にも平等だからだ。善人にも、悪人にも、平等だからだ。運さえ良ければ、悪人であってもずっと人生を謳歌する。運が悪ければ善人であろうとも重荷を背負って生きなければならない。つまり...」

一善「...」

 


白鶯「神は、誰のことも見ていない」

一善「...!」

 


白鶯「はっきり言って善も悪もどうだっていい。善悪は生もののようなものだ。その時々で形を変えてしまう。だから、俺が神になろう。俺にとって大事な価値基準は善悪ではない。力だ。強き者に幸せを、弱者には罰を、俺が与える。神の決めるものさしに従って、相応しい幸福を与える。どうだ?これが真の平等だと思わぬか?」

一善「...」

 


白鶯「神なんて必要なかったのさ。あんな役立たず。それなのに人間は愚かに祈りを捧げる。馬鹿馬鹿しい。もっと手っ取り早く平等を享受できるというのに」

一善「...」

白鶯「強き者が幸福を手に入れられる様に、邪魔な弱者は排除する。搾取の対象にしても良いかもな。これが俺の描く完全なる世界だ。俺はそれを今日から実現する」

一善「お前...!」

白鶯「己の持つ力と、意志を示せばお前にも幸福を与えてやってもいい。どうする?」

 


一善「白鶯。お前は害だ」

白鶯「小僧。お前は自分の言っていることが絶対に正しいと思っているのか?お前の掲げる正義はなんだ?そしてそれで、俺が裁けるのか?」

一善「お前の様な害のある人間は誰かが間引かないといけない。それは出来る人がやればいい。たまたまその役割が、俺に回ってきただけだ」

白鶯「話が通じていないのか、単に頭が足りないのか。どちらにせよお前の論理は破綻しているぞ?小僧」

 


一善「人を平気で殺すお前らが正義なわけがないだろ!!!」

白鶯「はぁ。どいつもこいつも、叶わない理想ばっかり口にする。血のない進歩などないんだよ。呆れる馬鹿ばかりだ」

一善「うるさい!お前の言ってることが正しいとか、理にかなってるとか、賢いとか、そんなのどうだっていいんだよ!俺の全細胞が、お前を全力で否定してるんだよ!」

 

 

 

 


白鶯「教えてやろう。この世にはな、叶う望みと、叶わない望みがある。低能な人間はそれを分からずに理想ばかり口にする。お前達の事だ」

 

 

 

一善「そんなこと、皆わかってるよ」

 

 

 

白鶯「...?」

一善の脳裏には共に戦い抜いた仲間の顔が浮かぶ。

 


一善「今日まで、沢山の人が死んだ。傷ついた。俺達の...仲間も死んだ」

白鶯「...」

 


一善「皆、叶わなかった理想を痛いほど直視しても、それでも希望を口にするんだよ」

粟生屋「...」

一善「目の前の壁を壊して、乗り越えて、進んだ先で見えた希望に手を伸ばして、その希望を掴んで、それが自信になって、それを繰り返して人は強くなる」

白鶯「...」

 


一善「でも...どんなに強くなっても...強くなっても...守りたかった命は、突然手からこぼれおちてしまう」

一善は、大粒の涙を流す。

 


一善「心が折れて、叶わなかった理想を思い浮かべて、それでも俺達は...その絶望の上に希望を重ね続けていくんだよ!」

粟生屋「...」

 


一善「倒れて行った仲間たちが最後に残してくれた希望の欠片。生き残った俺達は、それを大きくする義務がある。命は燃え尽きても、希望はずっと消えないんだよ」

 


白鶯「綺麗事を通り越してもはや暴論だな」

一善「ふざけるな。お前に何がわかる」

白鶯「何も分からない」

 


一善「なら教えてやるよ。叶わない理想こそ、口にする価値があるんだよ」

白鶯「?」

 


一善「理想は理想でしかない。起こってしまったものは変えられない。だからって、理想を、希望を捨てることはあってはならない」

粟生屋「...」

 


一善「俺達は...!いつか希望を実現する為に...ここにいる!!!」

 


ヒメ達は遠くからそのやり取りを見る。

ヒメ「...!」

幸二「...」

三太郎「一善...!」

 


一善「俺は、信じてる。自分にとって善い事を重ねた先に、その希望は待ってるって」

白鶯「善い事...?それは何だ?」

一善「お前にもう、希望を奪わせない。その為に」

白鶯「...?」

一善「ここでお前の息の根を止めることだ」

白鶯「フハッ...成程」

一善「お前にとってはどうだっていい話かもしれないが、俺の母親はお前が殺した。殺す人間は殺される覚悟をするべきだ。想像しろ。お前が見ているこの星の風景は、もう二度と見られないものとなる。よく焼き付けておけ」

白鶯「...!」ブチィッ!

 


一善は、理子が遺した剣・天叢雲を取り出す。

一善「ここで、死ね」

白鶯「フハッフハハハハ!!とんでもない独善だなぁ!!!まぁいいさ!!やってみるがいいさ!!」

 


粟生屋「僕は合わせるよ。一善、君に」

一善「...行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第541話 「1 2 3」

 


一善・粟生屋 vs 白鶯

 


一善と粟生屋は、白鶯相手に息のあったコンビネーションで連撃を与える、

 


〜〜〜

 


回想

 


一善とヒメは、理子の墓で手に入れた剣・天叢雲について、魔具に詳しいルカに聞いていた。

 


ルカ「ん?これ、理子さんの剣と同じじゃないかしら。だいぶ錆びてるけど」

一善「これ、理子さんの墓に行った時に見つけたんですよね」

ヒメ「そうなんですよ」

ルカ「ま?もしかしたら、本当に理子さんの剣かもね。あまり出回ってない代物だから」

一善「この剣、凄いんですか?」

ルカ「天叢雲。なかなかお目にかかれない大業魔具のひとつ。理子さんだから使いこなせてたけど、凡人はマヂカラ吸われて終わりだからまぁ魔具庫にでも仕舞っときなさい」

一善「...成程。ありがとうございます」

 


回想終

 


〜〜〜

 


一善は、天叢雲で白鶯に斬りかかる!

一善「...(ルカさんごめんなさい。どうしても仕舞っておく事は出来ませんでした。きっとこの剣は理子さんが成し遂げられなかった希望を叶える為に、僕達に遺してくれたものだと思うんです。直感ですが)」キィン!カァン!

白鶯「この剣...どこかで見たことがあるな」ガッ!キィン!

一善「...(俺は理子さんの想いも...全員の悔しい想いも全部持っていたい!俺達の世代で、魔法の悲劇を終わらせる為に...!)」

 


一善は、白鶯を大きく斬りつける!

 


ズバッ!

 


白鶯「...!」

一善「つのキング!」

一善は、天叢雲を空に投げる!

つのキング「ウォーーーー!」

つのキングは、天叢雲をキャッチする!

 


一善「くらえ!緑のエレメント!潮騒!」

一善は、魔導書ゲッターを填めた手を白鶯に伸ばす!

粟生屋「良し!当たった!」

 


一善は、そのまま手を突っ込み、白鶯から魔導書を取り出そうとする!

しかし、一善の攻撃は電撃波によって阻まれる!

ビリビリビリビリビリ!

 


一善「ちっ」

粟生屋「恐らく最後の魔導書だから結び付きが強い...!瀕死になるまで追い込まないと厳しい可能性がある!」

一善「分かりました!」

 


一善と白鶯はお互い一歩も引かずに攻撃を与え続ける!

粟生屋「...(さっきまでのダメージがそろそろ響くな。この賢眼でももう2人の動きを追えない...!)」

 


その瞬間、白鶯が粟生屋に攻撃を加える!

 


白鶯「リタイア」

 


ドォォォォォォォン!

 


粟生屋「...!!!」ガハッ...!

粟生屋は気を失って後ろへ倒れ込む。

その瞬間、高速で唯が空を横切り、粟生屋を救出した!

唯「おつかれ。あおやん」ヒューン

粟生屋「...天使...?死んだ...?僕」

 


そして幸二と三太郎が白鶯に攻撃を与える!

白鶯「...!」グハァ!

三太郎「帰ってきたぜ!一善!」

幸二「待たせたな...!」

一善「二人とも...大丈夫?」

三太郎「あぁ!バッチリだぜ!」

幸二「それは嘘だ。まだ全快はしてない」

三太郎「おい!言うなって!」

幸二「だが、戦力にはなると思う。一緒にやるぞ!一善!」

一善「...わかった!」

 

 

 

唯は、粟生屋を治療する。

粟生屋「...僕はいい...あいつに挨拶して来なくていいのか...?」

唯「まずはあおやんだよ。自分だけ死んだら許さない」

粟生屋「...」

唯「粟生屋君がボロボロになってまで戦ってるの、新鮮だった」

粟生屋「...君は...不謹慎だな」

唯「ごめん...そうだよね。命をかけて戦ってくれてるのに...ごめん」

粟生屋「いや冗談だよ...僕もそう思うし...それに、戦ってるのは...君もおなじだろう?君のおかげで...何人の味方が九死に一生を得たか...」

唯「私には...これしか出来ないから...」

粟生屋「...ひとまず、ありがとうと言っておこう...」

 


白鶯は一善らの攻撃と、魔導書を一気に失った反動で、マヂカラのコントロールが効かなくなり始めていた。

 


白鶯「うっ...ははっ...はっはっはっ!!まだだ...もっと...もっと...!お前らごときに潰される俺ではないわ...!」

 


一善、幸二、三太郎、つのキングは、白鶯に集中攻撃を食らわせる...!!

 


粟生屋「...(一人一人の力は、昔の僕達の方が洗練されていたかもしれない。だが、彼らのコンビネーションには目を見張るものがある。攻撃の練度で言えば...彼らの方が僕らよりも数段ハイレベルだろう...!)」

 


幸二「二人とも...!あれをやろう!」

三太郎「よし!」

一善「うん!」

 


幸二「インパクトマグナム!!」

一善・三太郎「「123(ワンツースリー)!!!」」

 


三人の合体技が白鶯を貫く!!!

 


ドッカーーーーーーン!!!!

 


白鶯「...!!(これが...エレメントの力...なのか...?!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第542話 「鎖」

 


白鶯は吹き飛ばされ、一善らは攻撃を重ねる!

 


一善「まだ終わらせないぞ。白鶯!!!!」

ドォォォォォォォン!!!

 


白鶯は言葉にならない咆哮を上げる!

 


一善「来い...!つのキング!!」

 


つのキング「ウォーーーー!!」

一善「緑のエレメント!!巌窟王・覇!!!」

つのキングは白鶯に向かい突進する!!

 


幸二「蒼き青のエレメント...!飛雷禍哭!!」

三太郎「朱のエレメント!!ジャスティス・ザ・フレア!!」

 


ドォォォォォォォン!!!!

 


一善「つのキング!!」

つのキング「ウォーーーー!!」

 


つのキングは大剣と化す!!

 


一善「大剣豪...!!」

一善は、右手で黄金の剣を持つ。そして左手に天叢雲を持つ。

一善「緑のエレメント・極の型(きわみのかた)!剣聖!」

 


2本の剛剣が白鶯をぶった斬る!!!

 

 

 

白鶯は再び咆哮を上げる!!

白鶯を中心に発生した強烈なマヂカラ波が周囲を破壊する!!

 


幸二「...!!立っていられない!!」ドォォォォォォォン!

三太郎「うわぁぁぁぁ!!」ドォォォォォォォン!

一善「...!」ドォォォォォォォン!

 

 

 

白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 

 

 

 


ドォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 


辺り一面が更地になってしまった!!

 

 

 

一善が目を開け、立ち上がると、そこにあったはずのビルや道路が全て更地になっていた。

 


一善「...!皆は!?」

 


一善が額から流れ出る血を拭いながら辺りを見ると、コンクリートの下敷きになった五百旗頭やひえり、ヒメなどの姿が見えた。

 


一善「...!皆......皆...!」

ヒメ「うぅ......一善......」

 


幸二や三太郎もコンクリートの山の上で血を流し失神している。

もはや一善以外に意識を保てている人間はいなかった。

 

 

 

 


ギリャァァァァァァ!!!!!

 

 

 

 


そして、一善が空を見ると、龍の姿になり、のたうち回る様に飛び回る白鶯の姿がそこにあった。

 


一善「...!(暴走してる...?!)」

 


そして、一善が再び辺りを見ると、ガラス片やコンクリートに派生した微弱なマヂカラから生まれた魔者が発生していた!

 


魔者「ギリャァァァァァァ!!」

 


一善「...(冷静になれ...冷静でいろ...!まずは魔者を全滅させるべきだ...!周りの人間を守る...!)」

 


すると、白鶯が堪えきれなくなったものを吐くように、エネルギー光線を放出する!!

 

 

 

 


ドォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 


一善「......!」

一善は驚愕の表情を浮かべる。

 


なんと、約2キロ先まで、地図上の建物が一瞬にして破壊されたのだ!!

 


一善「...!!(どうする...?白鶯を止めないと被害が拡大する...でも魔者を退治しないと仲間が...!!どうする...?!)」

 

 

 

シャリン!!

 

 

 

するとそこへ、1人の青年が現れる!

青年は鎖の様な武器で、次々と魔者を退治していく!

 


一善「...!(誰だ?!)」

青年「魔者は僕に任せてくれ!僕は魔法を使える!!」

一善「...?!」

 


廻「僕は履術者だ!北海道からニュースを見て最速で飛んできた!味方だ!」

一善「...!」

廻「まずは無理のない範囲であの化け物を止めて欲しい!僕がこっちで時間を稼ぐ!束の間だけど温存してくれ!」

 


その青年の名は廻桜志郎。

彼は魔裁組の人間ではないが、蒼魔導書第十章 鎖の書の履術者である。

一善「...!感謝します!!」

 


魔者「ギリャァァァァァァ!!」

廻は、多数の魔者を次々と倒す!

廻「迅雷連鎖(じんらいれんさ)!!!」

 


ビリビリビリビリビリィ!!!

 


一善「...まずは、白鶯を倒す...!つのキング!!」

つのキング「ウォーーーー!!!」

 


すると、一善はつのキングの頭に手をやる。

 


一善「つのキング。今までありがとう。俺を色々な所に連れて行ってくれて。寂しさを埋めてくれて。そして、一緒に戦ってくれて」

つのキング「ウォ?」

一善「辛い思いをさせたね。本当にありがとうね。つのキング」

つのキング「...」

 


一善「これが最後の戦いになる。だから、最後に手伝って欲しいんだ。俺を...俺達を勝たせて欲しいんだ」

つのキング「...」

一善「沢山の人の願いを叶えに行こう。あいつを倒して、皆で笑うんだ」

つのキング「...」

 


一善は、涙を流しながら続ける。

 


一善「でも...ごめんね...つのキング。君はその時には...もういないかもしれない...」

つのキングは、心配そうに一善を見つめる。

一善は、つのキングを抱きしめる。

 


一善「大好きだよ...つのキング。これからもずっとずっと。俺は君を忘れない」

つのキング「ウォ...」

一善「俺を...平和な世界に連れて行って下さい...つのキング...!」

 


すると、つのキングは、一善に背中を向けた。

 


つのキング「ウォーーーー!!!!」

一善「...!!」

一善は、涙を腕で拭い、つのキングに乗る!

 


一善「行こう...つのキング!!!」

つのキング「ウォーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第543話 「青年の恩返し」

 


唯と粟生屋は、コンクリートの山から脱出する。

 


血塗れの2人は、朦朧とした意識で肩を組んで歩く。

 


唯「ハァ...ハァ...大丈夫?あおやん?」

粟生屋「...幻覚が見える...死ぬかも...」

唯「幻覚...?大丈夫...?!うっ...」

粟生屋「...走馬灯かな...”懐かしい顔”が見えるんだよ...てか...君も相当深手な傷を負ってるじゃないか...それに治療に使ったマヂカラも馬鹿にならないだろう...」

唯「...私も...幻覚が見える......あれって...」

粟生屋「やっぱり...見えるよな...」

 


唯・粟生屋「「廻」ん」

 


2人の目の先で、廻が戦っていた。

 


廻は、一通り魔者を倒し、2人の元へ駆け寄る。

 


廻「大丈夫ですか?!......って?もしかして...!!君たち...!!!唯ちゃん?粟生屋君?!」

唯「あ...あはは...これが走馬灯か...」

粟生屋「僕達も...ここまでか...」

廻「いやいやいや!違います!!久しぶり!!本物だよ!?!」

唯「え...なんで...」バタン

粟生屋「こんにちは...」バタン

 


廻「!!(この2人限界だ!折角再会出来たのに...!死なせてたまるか!!)」

廻は、2人に自分のマヂカラを分け与える!

 


唯「ゴホッゴホッ...めぐりん?...めぐりんなの?」

廻「うん。久しぶり。遅くなっちゃて、本当にごめん」

粟生屋「...北海道から来たのか?」

廻「うん。ニュースで見て、魔法に関する何かが起きてるに違いないって思ったら...想像以上のことが起きてた」

粟生屋「......だとしたら早すぎるな...やっぱり幻か...」

廻「本物です!」

すると、唯が、廻の足をがっしりと掴み、目をまっすぐ見て話す。

唯「お願いがあるの...皆を助けて欲しい...皆瓦礫の下にいると思うから...一人でも多くの仲間を助けて欲しい...お願いします」

廻「...わかった!任せて!」

 


廻は、鎖を駆使して、瓦礫を次々に破壊。瓦礫に埋まった仲間達を次々に救出した。

 


ヒメは辛うじて足を引き摺る程度で、意識は保てていたため、廻と共に他メンバーの状況を確認する。

 


重体

はるか

ジャスティ

虎走

九頭龍坂

岩田

三太郎

幸二

 


重症

麗美

ルカ

村松

ひえり

粟生屋

 


行方不明

美波

百目鬼

五百旗頭

 


ヒメは簡易ベッドの上で横並びに寝転がるメンバーを見ながら言う。

ヒメ「魔裁組は、あと女子が2人、男子が1人いるはずなんですが...」

廻「探します...!」

 


そこへ五百旗頭がやってくる。

 


五百旗頭「ハァ...とんでもないわね...白鶯蓮源」

ヒメ「五百旗頭さん!」

廻「!」

 


ヒメ「無事でよかったです。美波ちゃんと百目鬼君以外はここに!」

五百旗頭「全員酷い怪我ね。犬飼達含めて研究班も相当深手をおってるわ」

ヒメ「そんな...ちなみに一善は意識があって戦闘中です。でも、正直1人じゃ太刀打ちできる相手じゃない...」

廻「ぼ、僕も戦えます!」

五百旗頭「君は?」

 


廻「廻桜志郎と言います。履術者です。人間国宝の五百旗頭渚博士ですよね。存じ上げてます。僕もある程度の戦闘経験があるので、戦力になるかと思います」

五百旗頭「...成程」

ヒメ「...」

廻「僕は魔裁組にある恩があるんです。東京が大変なことになってるって聞いて、北海道から飛んできました。僕にできることなら、何でもやります!だから、なんなりとお申し付けください!」

 

 

 

 

 

 

 


第544話 「先導者」

 


ジャスティンの脳内》

 

 

 

ジャ「......」

 

 

 

”俺、死んだのか?”

 


目の前は真っ暗だ。

 


”そうか。死んだのか。結局俺は、役に立たなかったよ。結構頑張ったんだけどなぁ”

 

 

 

すると、ジャスティンのイメージの中に、ひとつの顔が浮び上がる。

 


”まだ終わってないよ”

 


ジャ「...!」

 


理子「まだ終わりじゃないよ。護」

 


ジャ「...!理子姉さん」

 


理子「護。よく頑張ったね。見てたよ、君の戦い。それと、君が作ったチームの戦い」

 


ジャ「...!」

 


理子「私が出来なかったことをやってくれたんだね。護は凄いよ。今の皆は紛れもなく最強のチームよ。私が言うんだから、間違いない」

 


ジャ「...!」

 


理子「今、護の仲間が戦ってる。皆の傷を負けにしないように。皆を守るために」

 


ジャ「...!!」

 


理子「だったら、行かなくちゃ。護はもう守ってもらう子じゃない。人を護れる、強い子だから」

 


ジャ「...姉さん!」

 


理子「立派な魔法使いとして、使命を果たしなさい」

 


そう言って理子は消えた。

 


ジャ「姉さん...姉さん...!!」

 

 

 

 


姉さん。俺を認めてくれてありがとう。

 

 

 

でも、もう少しだけ待ってくれ。

 

 

 

姉さんの言う通り、まだ使命を果たせてないから──────

 

 

 

《決戦の地》

 


ジャスティンは簡易的ベッドの上で目を覚ました。

 


ヒメ「...!ジャスティンさん!」

五百旗頭「神野くん?」

 


ジャ「...皆は?」

 


ジャスティンは隣で目を瞑る仲間を見て悟る。

 


ジャ「皆...本当によく頑張ったんだね」

 


ジャスティンは立ち上がる。しかし、ふらついてろくに歩くことが出来ない。

 


ジャ「...(くそ...マヂカラの枯渇が激しい...このままいっても犬死か...?でも、いないよりは...)」

 


ジャスティンは、一善の元へ向かう。

 


五百旗頭「神野くん!まだ寝てないと、死ぬわよ!」

ヒメ「マヂカラが、明らかに枯渇してます!」

ジャ「じゃたなぎちん。俺に力を分けてくれ。エレメントでも何でも、俺に全部くれ。俺はやらないと行けないんだ。リーダーとして、先輩達に渡されたバトンを、落としたくない」

五百旗頭「エレメントなんて、マヂカラの土俵がない今のあなたに打っても、適合できなくて命が危険に晒されるわ!無理よ!」

ジャ「でも!戦わないと...俺が...!」

 


すると、廻が口を開く。

 


廻「俺のマヂカラでも...大丈夫ですか?」

ヒメ「?」

五百旗頭「?」

ジャ「...あなたは?」

廻「詳しい説明は後で!俺のマヂカラを全部あげます!きっと僕よりあなたの方が強いので!」

ジャ「...?」

五百旗頭「...(天然のマヂカラの譲渡”療”なら、回復しながらマヂカラを与えられるから、安全性は高い...ここは彼にかけてみるか)」

 


廻「行きます!」

 


ボワッ!

 


ジャ「...!染みるぅ...!」

五百旗頭「恐らく、本調子の10%にも満たない状態だけど、それでも行くのよね」

ジャ「はい。なぎちんが止めないこともわかってる」

五百旗頭「...何年見てると思ってんの?君のこと」

ジャ「それはお互い様」

 


廻「頑張ってください」

ジャ「感謝します。では」

 


ジャスティン、一善の元へ──────!