SOREMA -それ、魔!- 52

f:id:btc21:20230328000804j:image

SOREMA -それ、魔!- 52

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 52

 

「因縁」

 

────

 

第429話 「スカウト③」

 

────


《雪山》

 


一善らは、浮き上がった小屋の中に閉じ込められている。

 


一善「これ...魔法か...?!」

ジャ「あぁ。魔法だよ」

三太郎「うぉぉ!これ、慣れると楽しいぞ!マジで宇宙にいるみてぇだ!」

ジャ「...(どこからやってるのか知らないが、この狭所でのマヂカラコントロール...俺達3人含め、全ての物体がぶつからないように制御されてる...衰えてないな...粟生屋さん!)」

 

 

 

ガッシャーーーーーン!!!

 

 

 

小屋は地面に着地した。

 


三太郎「ゴホッゴホッ。うっひょー!楽しかった!」

一善「ハァ...怖かった」

ジャ「ふぅ。全く、凄いな、あの人は」

一善「今のって...」

ジャ「あぁ。あの人だ」

 


ジャスティンは、ある方向を指さした。

 


三太郎「ん?あの人って?」

一善「...!」

ジャスティンが指差した方向からは、1人の男がこちらへ向かって歩いてきていた。

 


ジャ「あの人が、元魔裁組でシャックスの、”重力の魔法使い”粟生屋昴...!!」

 


粟生屋「久しいね。神野ジャスティン護君だっけ?」ドン!

ジャ「お久しぶりです。粟生屋さん」

 


粟生屋は、3人の前へ現れた。

 


粟生屋「僕のこの眼が、何か変な気配を察知したんでね、少し遊んでみたら、まさか君とは。彼らも魔法使いかい?ジャスティン」

ジャ「はい。紹介します」

三太郎「俺!三太郎!!!」

一善「油木一善です」

粟生屋「成程ね。まぁまぁ強そうだね」

三太郎「粟生屋さんだっけ!なんかすげぇ強ぇんだろ!よろしくな!」

粟生屋「ま、君達によろしくすることなんてないけどね」

 


三太郎「...(てか、目の色変じゃね?!左右で色が違ぇ!)」

三太郎はじーっと粟生屋の目を見る。

粟生屋「ん?この眼かな?僕の右眼はね、賢眼って言ってね。色々凄いんだ」

一善「綺麗ですね。興味深い」

ジャ「その眼で僕達が来たって分かったんですね」

粟生屋「あぁ。僕のアトリエに勝手に入ってさ」

三太郎「わりぃ!」

ジャ「粟生屋さん、連絡先くらい教えてくださいよ。位置情報だけじゃいざとなった時連絡が取れません」

粟生屋「取れてるじゃん。それに、なにかいざとなった時だから、君達が来たんだろう?なんだい?言ってみな?用件は?」

 


ジャ「粟生屋さん。もう一度魔裁組に来てくれ」

粟生屋「成程、僕が想像したのと違うなぁ...」

 

 

 

《神戸》

 


京金「なんで私が、また魔法使いしないといけないのよ」

幸二「ルカさんの力が必要なんです」

莉茉「今、魔裁組では緊急事態でして...」

京金「成程ね、人手が足りないとか?そんなことでしょ」

莉茉「ま、まぁ...」

京金「私はやらないわ。だって、やりたくないもの」

幸二「...」

莉茉「...」

 


すると京金は、麗美の前に立ち、話しかける。

 


京金「ていうか、さっきから何?ずっと一言も喋らないで睨んでて、疲れない?」

麗美「...」

京金「お名前、なんだっけ?ソラちゃんだっけ?ふふふ」

麗美「...」

麗美は京金を睨み続ける。

京金「まぁ、なんでもいいけど、折角の再会なのに、何も言わないつもり?私、あなたのこと沢山可愛がってあげたわよね?」

麗美「...」

 


莉茉「...幸二くん、この2人、なんかあったの?」コソコソ

幸二「...ま、まぁ色々あるんですよ...”因縁”が」コソコソ

 


京金「何も言えないの?あら、あんなに噛みつかれたのが嘘みたい。お利口になったのね、えらいわ」

京金は、麗美の頭を撫でる。麗美はその手を勢いよく払う。

パシッ!

京金「...あら」

麗美「...」

京金「あなたも頼みに来たのよね。私に。ほら、なんか言ったらどうなのよ」

京金は、吸い終わったタバコを吸殻入れにしまう。麗美は、声を押し殺して頭を下げる。

麗美「...よろしく、お願い、します...」

 

 

 

 

 

 

────


第430話 「因縁」

 

────


《神戸》

 


京金「まぁ、アンタに頼まれた所で、別に関係ないけど」

麗美「...!」

幸二「ルカさん!」

莉茉「...!」

 


京金「何で?今更何よ。 別に私が居なくたって、何とかやってきた訳でしょ?エレメントだっけ?あれも完成したって聞いたし、おかげで家業は傾いたけど」

莉茉「それは...」

京金「だいたいさぁ、私よりも強い奴がいるでしょ?ねぇ」

幸二「...」

莉茉「...」

麗美「...」

 


京金「ほら、アンタが大好きだった、”お兄ちゃん”。元気してる?」

麗美「...!」

幸二「それは...!」

莉茉「...!」

 


京金「懐かしいわね。ガキだった頃のアンタ、あの人にコバンザメみたいにひっつき回って、万くん万くんってさ、本当に、ひえりちゃんとどっちが本当の兄妹か分からないくらいに」

麗美「...!」プルプル...

幸二「あの、ルカさん...!」

莉茉「...!」

京金「本当、うっとうしかった。アンタ」

麗美「...!」プルプル...

幸二「...!」

莉茉「...!」

京金「で、私も居なくなった訳だし、ゲット出来たの?第一、アンタ妹以下にしか見られてなかったみたいだけど、どうなの?今は?」

 


麗美「...死んじゃったよ」

 


京金「...え?何て?」

 


麗美「死んだよ...あの人はもう!死んだんだよ!!!」

麗美は、声を荒らげて京金にしがみついて言った。

 


京金「...」

京金は、唇を噛み締める。

 


ペシィン!!

 


京金は、麗美の頬を強烈に叩いた。

 


幸二「!」

莉茉「!!」

麗美「...」

 


京金は、麗美の胸ぐらを掴み、何度も殴打する。

 


京金「あの人が?死んだ?は?何で?何で?」

麗美「...」ペシィン!ペシィン!

京金「何でアンタらが生きてて!アイツが死ぬんだよ!」ペシィン!ペシィン!

麗美「...」

 


バッ!!

 


幸二は、京金を麗美から引き剥がす!莉茉は、俯いた麗美の赤くなった頬をさする。

 


幸二「おいアンタ!正気かよ!いくら何でもやりすぎだ!」

莉茉「麗美...大丈夫?」

 


京金「ハァ...ハァ...マジで...意味わかんない」

京金は、頭を掻き毟る。

 


京金「そんなの...理由は1つよ...」

幸二「...?」

莉茉「...?」

麗美「...」

 


京金「アンタらが不甲斐ないからだろうが!!!クソ雑魚が!!!!」

京金は、行き場のない怒りをぶつけ、泣き叫ぶ。

 


幸二「...」

麗美「...」

莉茉「...(京金ルカさん...ちゃんと話したのは初めてだけど...人間味のある人なんだな...もっと冷静で...屈強な人達だと思ってたから...いい意味で驚いた...)」

 

 

 

 

 

 

────


第431話 「お返し」

 

────


《神戸》

 


幸二「千巣さんを殺したのは、白鶯の一味です」

京金「白鶯...!」

莉茉「今、白鶯の組織”ノベル”は、魔裁組が所持、管理していない魔導書の全てを保持しています」

幸二「そして、近い将来魔裁組に全面戦争を仕掛けてくる...だから俺達には、あなたの力が必要なんです」

京金「...」

 


幸二「許せませんよね?白鶯」

京金「...」

 


麗美は立ち上がる。

莉茉「麗美...?」

幸二「...?」

 


麗美「...よろしくお願い致します...」

 


麗美は、京金に頭を下げた。

 


幸二「...!」

莉茉「...!」

 


京金「...はぁ」

幸二「...?」

 


京金「白鶯も、アンタらも、何もかも許せないわ。本当に」

莉茉「...」

幸二「...」

麗美「...」

 


京金は、自分の髪を手で梳かしながら言う。

 


京金「私が手伝うからには、白鶯達を跡形もなく叩き潰すわよ」

 


幸二「...!」

莉茉「...!」

麗美「...!」

 


京金「久しぶりにやってやるわよ。魔者狩り」

 


幸二「ルカさん...!」

莉茉「ありがとうございます!!」

麗美「...!」

 


京金「はぁーイライラする。ま、ストレス発散にはいいわ。うん。”普通の人生”ってのも、退屈だったし」

京金は、自分を納得させるように言いきかせ、頷く。

 


スッ

 


すると麗美は、京金の前へ行き、手を差し伸べる。

京金「あ?」

 


麗美「二言はないですよね?'ル'カ'お'姉'さ'ん」

京金「ないわ。そんなダサいこと、私がすると思う?」

麗美は手をさらに前に出す。

麗美「じゃあ前言撤回はなしということで」

京金「えぇ。アンタらの弔い合戦、私も乗せられてやるわよ」

京金は、麗美の手を握ろうと手を伸ばす。

 


すると、麗美はその手を思い切り引いた。

 


ペシィン!!!!!

 


麗美は、京金の頬を一発引っぱたいた!

 


京金「...!」

麗美「ざっけんな。クソ女が」

京金「...相変わらず...ムッカつく...」

麗美「足引っ張ったら許さないから。お姉さん」

京金「こっちのセリフよ。おチビちゃん」

 


京金は、少し微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

────


第432話 「回復魔法の使い手」

 

────


《老人ホーム》

 


東海林は、善能寺らの説得を黙って聞いている。

 


善能寺「まぁ、あなたも色々あったから、私も無理にとは言わないわ。でも、正直あなたの力が喉から手が出る程欲しいの」

東海林「...」

善能寺「結論は急がなくていいわ。それに、あなたが出来る範囲のことで協力してくれればいいから」

東海林「はい...ありがとうございます」

 


美波「あの、唯さん!」

東海林「ん?」

美波「私、唯さんともっと話したいです!」

はるか「わ、私も!!」

東海林「私と?」

美波「はい!私、唯さんと同じ回復魔法使いなんです!!」

東海林「え!そうなんだ!」

美波「唯さんは、今までいた魔法使いの中で誰よりも強い回復魔法使いだったと聞きました。だから、私もそうなれるように、唯さんに色々聞きたいんです」

東海林「そうなんだ。嬉しい。ありがとう」

 


善能寺「私は、今日は失礼しようかしら。若者達でお話に花を咲かせてみては?」

はるか「唯さん!仕事大丈夫ですか?」

東海林「あ、それはさっきホーム長がいいって言ってくれたから大丈夫だけど、、」

美波「じゃあ少し、お話しませんか?」

東海林「う、うん!そうだね」

 


東海林は、2人に紙パックのジュースを買ってあげた。

 


東海林「美波ちゃんだよね?美波ちゃんはなんで回復魔法使いになったの?」

美波「私は、最初から魔法使いになりたかったわけじゃないんです」

東海林「うん」

はるか「...(そういえば、同じ時期に入ったけど、美波が何で魔裁組に来たのか聞いたこと無かったな)」

 


美波「五百旗頭渚さんっていう、今魔裁組の研究班のトップの人がいるんですけど」

東海林「知ってるよその人!エレメントを作った人だよね!」

美波「そうです!私、渚ちゃんと同じ大学なんです」

はるか「え!そうだったの?!」

東海林「そうなんだ!」

 


美波「研究室も同じで、まぁ、代は被ってなかったんで、当時面識はなかったんですけど」

はるか「なるほど」

東海林「へぇ!それでそれで!」

東海林は、笑顔で美波の話に聞き入る。

はるか「...(唯さん。マジで可愛いな)」

 


美波「論文を書く時に、先輩の論文を参考にするじゃないですか。その時に、渚ちゃんの論文を見て、天才だ!ってなって。当時研究者を目指してた私は、卒業したら渚ちゃんの元で働きたいなって思って。渚ちゃん、研究職に就いたって、研究室で有名になってて」

東海林「凄い人だったんだねっ!」

はるか「そうだったのか」

 


美波「で、人伝にLINE貰って、お話させてください!って連絡したら、まさかの魔法についての研究をしてるって聞いて」

東海林「うんうん!」

美波「私、アニメとか漫画超好きで、魔法!アニメみたい!ってなって興味持ってたら、手伝ってみない?って言われて」

はるか「ほうほう」

 


美波「いざやってみたらまさかの実働班っていう笑」

はるか「え、そうだったの?」

東海林「へぇー!面白いね笑」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────


第433話 「相違」

 

────


《老人ホーム》

 


美波「渚ちゃんに、回復魔法の適性があるって言われて、注射打たれて、戦場に駆り出されて...でもなんか、何となくできて笑」

はるか「やばいな美波、それ、やべえよ?」

東海林「美波ちゃんは優秀なんだね!」

美波「いやいや!そんなことは無いです!本当は研究班に行きたかったんですけど、渚ちゃんが、私が実働班として働く代わりに大学のレポート手伝ってくれてたので笑」

はるか「エサそれかよ...」

 


美波は、りんごジュースを飲みながら続ける。

 


美波「でも、皆と戦っていくうちに、この仕事いいなって、皆の力になりたいなって思ったんです」

はるか「美波...」

美波「凄いいいチームだなって、思うんです」

東海林「...」

 


美波「私たちは、本気で平和な世界を作りたいって、皆思ってます。私も何か還元できることは無いかって、考えた時に、唯さんに修行してもらいたいなって、思ったんです!」

東海林「しゅ、修行?!そんな、私には、そんなこと出来ないよ」

美波「見れば分かります。唯さんの強さ。きっと全盛期はもっと凄かったに違いない!」

東海林「そんな、、期待しすぎないでよ、、恥ずかしいなぁ」

美波「白鶯蓮源。唯さん、昔の仲間だったんですよね?」

東海林「...!」

 


美波「唯さん達がどんな関係性だったかは分かりません。仲間を倒そうとするのは辛いってのも分かります。でもごめんなさい。私達は、平和を脅かす人達を無視できない」

東海林「それは、、そうだよね」

はるか「唯さん!唯さんはどう思ってんの?白鶯のこと!あいつ、昔の仲間だったはずの千巣さんまで、、」

東海林「...!千巣くん...もしかして...」

美波「...」

はるか「...」

東海林「そうなんだ...」

 


東海林は、紙パックを持ったまま、俯く。

 


東海林「白鶯君は、私達のこと、何とも思ってないと思う。理子さんも...千巣くんも...」

美波「...?」

はるか「...?」

 

 

 

 


3人はジュースを飲み終えるまで少し話し、東海林は美波らを入口まで送った。

 

 

 

 


東海林「2人とも、今日はありがとう。返答はまた改めてでもいいかな?」

はるか「は、はい!今日は押しかけてすみませんでした!」

美波「ありがとうございました!」

 


美波とはるかは、手を振りながら、老人ホームを後にする。

 


美波「あ!唯さん!」

東海林「...!」

美波「私達、皆待ってます!唯さんのこと!」

東海林「...!!」

美波「皆で...皆で平和を!」

美波は、拳を前に突き出した。

 


東海林「う...うん!」

 


東海林は、自動ドアをくぐり、建物の中へ戻る。

 


東海林「...(理子さんも、千巣君も止められなかった...誰かが白鶯君を止めないといけない...)」

 


自動ドアが閉まる。

 


東海林「...(若い子に任せていいのかな。私達が、責任を取らないと...)」

 


東海林は、震える手を重ね合わせた。

 

 

 

 

 

 

────


第434話 「慢心」

 

────


《雪山》

 


粟生屋「千巣が死んだ?」

三太郎「あぁ。俺達が、弱かったから...」

一善「...」

粟生屋「ははっ。それは違うぞ。若人よ」

三太郎「?」

一善「?」

 


粟生屋「あいつ、強かっただろう?誰かに守られないといけないような奴じゃなかった。僕だって、サシでやったら五分五分くらいには強かったからね」

三太郎「...」

一善「...」

ジャ「...」

 


粟生屋「自分達のせい?それは自惚れだ」

 


一同「...!」

 


粟生屋「実力差を客観的に見れてない。君達はまだ、そんなステージには立ててない。僕にはわかる。あいつは多分、君達を守って死んだんだよ」

ジャ「粟生屋さん...」

粟生屋「もっと強くなりなよ。若い魔法使い達」

三太郎「...!」

一善「...」

 


ジャ「粟生屋さん。魔裁組には今時間が無い。白鶯の組織”ノベル”は知ってますか?奴らはこっちが持ってない魔導書を全部持ってる。いずれ大きな戦いになるだろう。だから、強い味方が必要なんです」

粟生屋「成程。要は今の魔裁組じゃ力不足ってわけね」

三太郎「...!」ムッ!

一善「...!」

 


ジャ「悔しいけどそうです。いや、どれだけ戦力があっても今は足りないと言うべきだ。これは未曾有の危機。俺達にできる限りの補強をしたい。粟生屋さん、頼む。力を貸して頂けませんか」

粟生屋「うーんどうかなぁ。少なくとも僕は全く乗り気じゃないよ。面倒臭いもん」

三太郎「...!てか、アンタ、さっきからちょいちょいムカつくなぁ!」

粟生屋「あぁ。怒らせちゃった?ごめんごめん。でも、本当でしょ?」

三太郎「きぃー!一善、お前も腹たってるだろ!」

一善「え!巻き込まないでくれる!」

ジャ「(まさかの梯子外し!!)」

 


一善「でも三太郎、この人の言ってることは正しいよ。だいたい」

三太郎「...」

一善「でも、今の魔法使いも弱くはないですよ?粟生屋さん」

ゴォォォォ...

粟生屋「ほほぅ。(この子、見栄をきった途端気配が変わった。見応えがありそうだ)」

 


三太郎「そうだそうだ!シャックスだかシャンクスだか知らねぇけど、俺達だって負けてねぇ!!!」

バリバリバリバリ...!

三太郎は、拳にエレメントを纏った!

粟生屋「それが噂のエレメントね。へぇー興味深い」

粟生屋は、攻撃に構えた。

ジャ「やめとけ。三太郎」

三太郎「...!」

三太郎は、エレメントを抑えた。

 


ジャ「無意味だ。粟生屋さんは強い」

三太郎「は?!ジャスさんは、俺が負けるって思ってんのか?!こんな老いぼれに?!」

粟生屋「老いぼれて...笑」

ジャ「単純に味方同士でやり合うのが無駄だってだけだ。勝ち負けなんてないだろう」

三太郎「...おぅ」

 


粟生屋「ま、すぐに臨戦態勢になれることはいいことだ。世の中、味方じゃない存在は敵同然。何してくるかわからないからねぇ」

一善「...」

三太郎「...」

 


粟生屋「じゃあわかった、君達、僕と少し勝負をしよう。せっかく来たんだ、何の土産もなかったら帰れないだろう?」

ジャ「...?俺たちは誘いに頷いてくれればそれでいいんですが?」

粟生屋「いいから、やろう。久しぶりに」

 

 

 

 

 

 

────


第435話 「二本の刀」

 

────


《雪山》

 


一善「でも、魔法を使った勝負ってご法度じゃ?」

粟生屋「魔法は使わない。ほれ」コロン...

粟生屋は、木刀を2本ジャスティンに投げた。

粟生屋「なんの仕組みもしてない、ただの木刀だ。好きな方を選びたまえ」

ジャ「...?」

粟生屋「この木刀で戦う。いいね」

ジャ「...いいですけど、何のためにやるんですか?」

粟生屋「勝った方が一つ言うことを聞く。これでいいんじゃないかな」

ジャ「成程、じゃあ負けたら魔裁組に戻ってきてくれるんですね?」

粟生屋「んー。まぁいいよ。僕に勝てるくらいの人がいるなら、面白そうだし」

 


三太郎「でも、ジャスさん、刀普段使わないだろ?おい粟生屋さん!ずるいぞ!どーせアンタの得意分野なんだろ?!」

粟生屋「じゃあ君が戦ってもいいんだよ?」

三太郎「ぐっ...!俺も刀の使い方はわからねぇ...!卑怯だ!」

粟生屋「それともう一つ、僕も戦いで刀は使わないよ」

三太郎「...!」

 


粟生屋「誰でもいい。僕に勝てる者は?」

 


ジャスティンは、刀を1つ粟生屋に戻し、もう片方を凝視した。

ジャ「...」

一善に刀を押し付けた。

一善「え!」

ジャ「ん!」

一善「はい?」

ジャ「ん!!」

 


粟生屋「なるほど、君が戦うのか」

一善「い、いえ!え?!俺?!」

三太郎「一善!!お前が一番刀使えるだろ!」

一善「え?!俺刀で戦ったことないけど!」

三太郎「エレメントの剣とかつのキングの剣とか!だいたい同じだろ!」

一善「でも責任重大過ぎない?!」

ジャ「大丈夫だ。うん。君なら」

ジャスティンは、小馬鹿にしたように腕を組んで頷いた。

一善「本気で言ってるんですか?!」

粟生屋「おいおい、弱くないんじゃなかったのかい?そんなだと、弱く見えるぞ?」

 


一善「...負けても知りませんよ」

ジャ「いや、勝て」

一善「はぁ...マジっすか」

 


粟生屋は、一善にブレスレットを2つ渡す。

粟生屋「これをつけたまえ。これは自らの意思で装着すると、一時的に体のマヂカラを遮断できるもの。好きな方を選べ」

一善は片方をつけ、もう片方を粟生屋に返す。

 


粟生屋はブレスレットをつけながら言う。

粟生屋「刀を手放したら負け。折れても負け。戦闘不能になっても負け。僕が勝ったら言うこと聞いてねぇ〜」

一善「...やるからには、負けません」

 


2人は位置につく。

粟生屋「君、名前なんだっけ?」

一善「油木一善です。名乗るのは2回目ですけど!」