SOREMA -それ、魔!- 30
SOREMA -それ、魔!- 30
「動き出した時代」
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第255話 「蝶」
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《東京 / 上野公園》
パタパタパタ...!
鳩が群れとなって飛び回る。
魔者「デュリャァァァァ!」
一善「緑のエレメント…!草枕!!!!」
ズバッ!!!!
魔者「デュリャァァァァ!!!!!」
シュルルルル…
一善は、単独任務で上野公園を訪れていた。激闘の末、魔者を1体退治した。
この時、一善は魔裁組に所属して1年以上経っていた。
一善「…(魔導書の魔者では無いな…)」
通行人「あの人、何してたのかな…?」
通行人「ダンスの練習?ウケる」
通行人「いやあれは劇団員じゃないか?」
一善「…(そうだよな。皆には魔者は見えないもんな。でもそれでいい。今日も1人も被害を出さずに済んだ)」
一善は水筒から塩水を撒く。
一善「…(最近、魔導書の魔者じゃなくても強力なマヂカラを持った魔者が多い…今回のもそうだった。それと…)」
ド ン !
一善は、魔者が消えた場所に残った”小さな紙切れ”を拾い上げた。その紙切れには、絵本のような形の蝶々が描かれている。
一善「(またこの紙切れだ。最近多い。なんなんだ?早く支部に戻って報告だ)」
一善はその場を去る。
そんな一善を遠くから見る男がいた。
???「元気そうだね…」ニヤッ
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《魔裁組第2支部 / 実働班ルーム》
一善が支部に戻ると、第2支部実働班のメンバーが勢揃いしていた。
一善「戻りましたー」
一同「!」
幸二「おかえり」
三太郎「おそかったな一善!寄り道か?」
ジャ「お!一善おかえり!どうだった?」
一善「魔導書のドロップはありませんでした」
ジャ「そうか。お疲れさん。でも落ち込むことは無い。今まで魔裁組の皆が頑張ったおかげで、残る行方不明の魔導書はあと13個だ」
三太郎「てことは、それを全部拾い集めて燃やせば、魔法を封印できるんだな!」
麗美「私達含む味方側の履術者が持ってる魔導書と、魔裁組が保管してる魔導書。これらを合わせて51個になればいいのよね」
ジャ「ま、そだね」
はるか「でもさ、味方側の履術者って、麗美とか一善とかはいいけどさ、今いない人とかもいるんだろ?どうやって探すんだ?」
ジャ「一応、認定された履術者と魔法協会は定期的に連絡を取ることになってるから、居住地は分かってる。魔導書が全て集まったら返還してもらう契約を結んでるのさ。岩田さんとかね」
美波「そうなんだ…」
莉茉「でも、一善くんみたいに体内に魔導書が宿ってる履術者の人は、どうやって魔導書を顕現させるの?」
ジャ「今の所は”魔導放棄”しか方法はない。けど、なぎちんが長らく、新しい方法の研究をしてるから、何とかなるはずだよ」
莉茉「そうなんだ」
ジャ「そして!皆に今日集まって貰った理由の一つはね!新しい仲間を紹介するためです!!」
一同「!!!」
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第256話 「新しい仲間」
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《第2支部 / 実働班ルーム》
ジャ「入ってきていいよ!」
ガチャ!
一同「!!!」
ヒメ「皆さん。お久しぶりです」
三太郎「ヒメちゃん!」
幸二「…!」
久品ヒメ。追憶の書の履術者。
ヒメ「今日から私も、正式に、魔裁組の一員としてお世話になります!」
麗美「えーほんと?!」
三太郎「新しい仲間だ!!」
莉茉「楽しくなりそうね!」
ジャ「ヒメちゃんには、今まで通り追憶調査に携わってもらいつつ、実働班や研究班の包括的なサポートをお願いすることになったんだ!」
ヒメ「私も、皆さんの力になりたいなと思って、一善と話し合って志願したの。皆さんの暖かい雰囲気も好きなので」
美波「やったぁ!嬉しい!」
はるか「これからよろしくな!」
ヒメ「よろしくお願いします!」
パチパチパチ…!
麗美「いやぁでもあの時は驚いたな。まさか、一善くんとヒメちゃんが双子だなんて」
一善「俺も最初は驚いたよ」
ヒメ「そうね」
三太郎「なんか、割とさらっとしてるんだな...笑」
一善「そう?俺もヒメも最初はどう振舞っていいか...」
ヒメ「そうだったわね」
はるか「うーん。でも顔はそこまで似てないなぁ」
莉茉「そうかな?タレ目な感じとか似てない?」
ヒメ「あはは」
一善「あはは...」
ジャ「はい、そういうことで、よろしくね!次はね。皆さんお待ちかね…!」
はるか「なんだなんだ?」
三太郎「あれか?」
幸二「…!」
ジャ「階級試験の結果発表です!!!」
三太郎「待ってました!!!!」
はるか「いよ!!!」
莉茉「緊張するな…!」
麗美「とうとう来たわ…!」
ヒメ「階級試験?」
一善「魔裁組実働班のスキルを測る試験の事さ。実技、知識、実績の3つの観点から、階級が分けられるんだ」
ジャ「プラスで、審査員の人達の意見も加味される。姐さんやなぎちん、善能寺さんとか、要はお偉いさんね」
三太郎「去年も紅白やりたかったけど、実技試験も楽しかったよな!個人戦!」
幸二「……」
美波「でもテスト難しかったよ…魔法に関する歴史とか」
麗美「魔導書について知識とかね」
ジャ「俺が在籍する前の年まではしばらく行われていたらしいんだけど、その年に”階級のインフレ”が起きて、無意味と化して無くなったらしい」
一善「なるほど」
三太郎「俺は柱かな?!柱かな?!」
一善「それは違う作品!!」
三太郎「じゃあ特級とか?!」
一善「それも違う作ひ」
ジャ「いや、この階級試験の最高階級は特級だ」
一善「あ、そうなんですね」
三太郎「すげぇ!!俺も無量空処するわ!」
一善「それは確実に違う作品!」
ジャ「さぁ、皆、結果を配るよ…!」
一同「…!」ゴクリ!
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第257話 「試験結果」
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《第2支部 / 実働班ルーム》
ジャスティンは、全員に試験結果の紙を配る。
三太郎「ん?これ、沢山数字があるけど、どこを見ればいいんだ?」
ジャ「3つの分野それぞれのスコアと、それとは別に右下に漢字があるでしょ」
三太郎「”普”って書いてあるけど?」
ジャ「wwwじゃあ三太郎は”普級”だな!」
三太郎「え!!特級じゃねぇのかよ!!」
一善「俺は”快”って書いてある」
麗美「私も!」
莉茉「私もだ!」
ジャ「3人は”快級”だ」
はるか「私”準”」
美波「あ、私も同じ!」
ジャ「2人は”準級”だね」
三太郎「おいおい!2級とか1級みたいに数字じゃないのか!これ、どれがいちばん高いんだ?」
はるか「んだんだ」
ジャ「上から特級、準特級、快級、準級、普級だ」
三太郎「え」
ジャ「分かりにくかったら、電車の種別を思い出すとわかりやすい」
一善「あぁ。普通がいちばん遅くて、特急が1番速い的なあれですか」
三太郎「も、もしかして…俺…」
ジャ「1番下ですね」
三太郎「なんですとーーーーー?!?!?!」
ジャ「ま、まぁ三太郎は実技のスコアは割と高めだし、この階級が強さに直結する訳じゃないから、あんまり気にしすぎるなよ」
莉茉「それに、三太郎君は歴が周りより浅いからね」
三太郎「だとしても…もう3年目だぞ…俺…」 チラッ
麗美「あれれ?知識部門壊滅的じゃんww」
一善「もっと勉強しなよ笑」
三太郎「てかお前!俺と同時入部なのに何涼しい顔して快級とってんだよ!!!」
一善「お、俺は勉強したしさ…」
莉茉「ちなみにジャスティンさんは?」
ジャ「俺は、準特級」
はるか「すげぇじゃん!上から2番目!」
ジャ「本当は特級が良かったけどね…ま、いいや」
一善「特級はやっぱり難しいんですか?」
ジャ「まぁいつからこの形式の試験があったか分からないけど、何百人受けてきたとされる試験で、特級はたったの6人しか出てないらしい」
一善「へぇ〜」
ジャ「そしてその6人は”同じ年”に出た。その年からこの試験は無くなったのさ」
一善「それが”史上最強の6人”ってやつですか」
ジャ「さすが一善くん!知識部門第2支部トップ2だっただけあるね」
一善「そうなんですか?てか、幸二は?この試験受けたことある?」
ジャ「幸二は昔受けたことあるんだろ?それに知識部門は一善と並んでトップだったけど…」
幸二「......」
三太郎「あ…笑」
ジャ「そっか…」ニヤニヤ
幸二「…うるせぇ!俺だって、食中毒で大変だったんだよ!!」
※幸二は、実技試験当日食中毒で欠席し、階級は普級(仮)。
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第258話 「動き出した時代」
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《第2支部 / 実働班ルーム》
幸二「だいたい三太郎!お前が階級とか欲しいとか言わなければ、ジャスティンさんが上にかけあうことも無かったんだ!」
三太郎「おまwww悔しいのかよ普級でwww」
幸二「おまえも同じだろ?!俺はちゃんと試験受けたら少なくとも準級以上はあるわ!」
三太郎「いいんだよ!俺数学とかの勉強は割とできるもん!魔法のことはよくわからん!」
幸二「なんだその理論!」
ヒメ「あはは」
はるか「仲良いんだか悪いんだか」
麗美「んね」
ジャ「ま、こんなのいいのいいの。お飾りだから。でも三太郎、最低限の知識は持っとけよ?それが人の命を救うことにも繋がるかもしれないからな」
三太郎「お、おう...」
ジャ「とにかく、これからもジャカジャカ魔者を倒して、魔法を封印するぞー!」
三太郎「いえーーい!」
一善「あ、そういえばジャスティンさん。またこれが」
一善は蝶々の書かれた紙切れを見せる。
ジャ「またこれか...これで何件目だ?」
幸二「ここ数ヶ月で、よく目にしますね」
はるか「最近、魔者が全体的に強くなってるのも、それのせいなのか?」
ジャ「分からないが、蝶々紙が発見されないケースでも、魔者のレベルは高い。魔導書の魔者と比べても遜色はないくらいには。皆もそう思わないか?」
幸二「そうですね」
はるか「たしかに」
ジャ「この蝶々紙については、善能寺さんにも報告している。何か大きな陰謀が動き始めているのかもしれない」
一善「...なるほど」
ジャ「何か分かったら共有しよう。また、蝶々紙が手に入ったら教えてくれ...今年は否が応でも...」
一善「?」
幸二「...」
三太郎「!」
ジャ「”時代が動く”...!」
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《第2支部 / 研究班ルーム》
善能寺「ごきげんよう」
犬飼「善能寺さん...!」
安西「こんにちは。今日はどういったご要件で...?」
善能寺「例の研究の進捗を聞きに来たの。五百旗頭さんはどこに?」
安西「奥です!犬飼案内してもらえる?」
犬飼「おう。こちらです!」
犬飼は、善能寺を、奥にいる五百旗頭の元へと案内した。
善能寺「ごきげんよう。五百旗頭さん」
五百旗頭「こんにちは」
善能寺「調子はどう?」
五百旗頭「何となくですが、道筋は見えてきました。あとはその実証が出来れば...」
善能寺「なるほど」
五百旗頭「ええ。成功すれば、”履術者の心身に影響を与えずに、魔導書のみを摘出出来るようになる”...!かと」
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《岩田家》
一善は、岩田の家に定期面会にやってきた。
一善「お久しぶりです。岩田さん」
拓郎「お待ちしておりました。一善少年」
一善「お元気そうで何よりです」
拓郎「一善少年も、元気そうで」
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第259話 「久しぶり」
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《岩田家》
2人はテーブルの上に置かれた魔導書を挟んで会話をしている。
拓郎「この1年半で随分と成熟した男の顔になられましたな。一善少年」
一善「そうですかね」
拓郎「あの時は、誠実さの中にどこか迷いがあったのでは無いですか?」
一善「...そう、だったかも」
拓郎「今の一善少年は、気の張り方が真っ直ぐだ。あるべき自分を見据えていて、そこへ向かって進んでいかんとする決意が目に見える」
一善「ありがとうございます」
拓郎「うむ!!!!!」
一善「!!」ビクッ
拓郎「前回ジャスティン殿とこちらにいらしたのは半年前でありましょうか。その時からこちらは変わらずでございます。魔裁組の皆様はいかがでしょう」
一善「最近、街の魔者が少々様子がおかしいと言いますか」
拓郎「と、いうと...?」
一善「これ、なんだか分かりますか?」
一善は、蝶々紙を拓郎に見せた。
拓郎「蝶々...?本...?見たことがないな」
一善「そうですよね...」
拓郎「これは、なんです?」
一善「最近、魔者を倒すとこの紙が現れるんです。これが何なのか、協会も魔裁組も把握していなくて...」
拓郎「もし見かけたら報告に伺います。我々も、何か皆様の役に立てたらと、常日頃から思っておりますので」
一善「ありがとうございます。助かります」
拓郎「そうだ、一善少年。久々に道場で一汗流してみませぬか?新しく作った魔者のテストプレイをしたいのであるが...」
一善「そうなんですね!是非お願い致します!」
拓郎「名付けて!超巨大魔者!!キョダイマモノアドベンチャー!レイドバトル編!!!」ドン!!
一善「(相変わらずだな...)」
拓郎「では、行きましょうぞ」ワクワク...!
一善「はい」
プルルル...! プルルル...!
一善「あ、電話だ」
拓郎「お出になるといい」
一善「ありがとうございます」
自動音声「墨田区錦糸4-15-1にレベル3相当のマヂカラ反応あり。繰り返す墨田区...」
一善「!!」
拓郎「!!」
一善「拓郎さんすみません...!魔者が!」
拓郎「問題ありませぬ。私も馳せ参じようぞ!」
一善「(錦糸公園だ...!ここから走って20分くらい...タクるか...?どちらにせよレベル3なら、1人で!)」
拓郎「どうされた?一善少年!」
一善「俺1人で大丈夫です!今日はありがとうございました!」
ポイッ
拓郎は、一善にヘルメットを投げた。
拓郎「バイクの方が速い!乗っていきたまえ!」
一善「(バイク乗れるの...!)」
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《錦糸公園》
公園の中心に、1体の魔者と、1人の男がいる。
魔者「ビュハァァァァ...!」
???「おい、いい子にしろって」
魔者「ビュハァァァァ...」
???「人を襲ったらダメだよ?もうすぐお目当てが来るだろうから...」
魔者「ビュハァァァァ...」
百目鬼「あー久しぶりだなー!魔裁組の皆さん...!」
ド ン !
百目鬼の手には、何枚もの蝶々紙が、ひらひらとなびいていた。
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第260話 「準特級」
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《第1支部》
第1支部の実働班5人のうち、千巣を除いて4人は合同生活をしている。
虎走「私!快級!まぁまぁじゃん?」
九頭龍坂「うちもやわぁ」
村松「...」
チラッ
虎走「村松ちゃんも快だ!3人同じ!」
九頭龍坂「まぁまぁレベル高いんとちゃう?」
虎走「確かに!」
九頭龍坂「で、某先輩は間違いなく特級やろうなぁ」
虎走「パイセンはねぇ...笑」
伊藤「......」
伊藤は、自分の試験結果をじっと見つめていた。
虎走「伊藤ちゃんは?」
九頭龍坂「伊藤ちゃん?」
村松「...?」
伊藤「......」
・・・
虎走「ま...まぁ!伊藤ちゃんはさ!1番歴が短いのもあるし!気にすること、ないんじゃない?」
九頭龍坂「こんなのオマケやて。あれやろ?向こうのなんやったっけ...サンジロー?みたいな子がやりたい言うてやっただけやろ?」
虎走「気にしない気にしない...!」
村松「...!」コクリコクリ!
伊藤「...違うんです」
一同「?」
伊藤「私...準特級...らしいです」ド ン !
一同「!!!!」
虎走「へ、へぇー!凄いじゃん!」
九頭龍坂「オ、オマケ言うたけどあれは嘘や。ほんまにすごいことやで?準特級やろ?」
村松「...!!」
虎走「確か向こうのジャスティンさんと同じだよね?それ、めっちゃすごくない?」
伊藤「でも...スコアは全部平均...これ、何かの間違いなのでは...?」
鬼屋敷「間違いじゃないわよ」
虎走「!!」
九頭龍坂「姐さん!」
村松「...!」
伊藤「......!」
鬼屋敷「間違いじゃないわよ。あなたは準特級の女よ」
伊藤「......!」
鬼屋敷「精進なさい...!」
鬼屋敷は去っていった。
伊藤「あ!あの!」
鬼屋敷「何よ?」
伊藤「...おやすみなさい!」
鬼屋敷「ハッハッハッ!まだ17時よ?これから溜まった韓流ドラマ見るんだから、まだ寝ないわよ」
伊藤「そ、そうですよね」
鬼屋敷「じゃあねぇ」
鬼屋敷は、どこかへ消えた。
伊藤「...(まさか...?)」
虎走「...?」
九頭龍坂「どうかしたん...?」
村松「...?」
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第261話 「X」
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時は、1年と少し前。ジャスティンらが折紙山で魔者を退治した時の事。
《折紙山 / 小屋前(回想)》
この日、彼らは交代で外で見張りをしていた。そして、伊藤が見張りをしている時だった。
ズザザッ!
伊藤「!!!誰!!」
マスクの男「驚かしてすまない。伊藤蘭さんだね?」
伊藤「...!なんで私の名前を!」
X「私のことはX(エックス)と呼んでくれ。私は君の姉、伊藤凛さんの事を知っている!」
伊藤「...!」
X「凛さんの件は...とても残念に思っている。まだ若かったろうに...実は私も、'同'じ'男に、親しい人を殺されていてね...」
伊藤「それって、白鶯蓮源のことですか?」
X「そうだ。私は、白鶯を捕まえるために、身を明かさずに策略を立てている。そのために君の力を貸してほしいんだ...!」
伊藤「...?なんで私?」
X「私も君も、白鶯を倒したい。そのビジョンは同じ。だから、協力してくれるかなと思ったんだ」
伊藤「...」
X「それに、君しかできないことも頼みたい」
伊藤「...?私にしか出来ないこと?」
X「あぁ...白鶯は、今も魔導師として暗躍し、”次の世界の主権”を狙っている...!」
伊藤「...何よそれ?」
X「白鶯は、魔法の力を使って、非魔法使いの人間共を支配し、新たな世界秩序を作らんとしているのだ!!」
伊藤「...?」
X「白鶯は、今後数年の間に大きく動くだろう。今は影を潜めて、その準備をしているんだ」
伊藤「許せない...!」
X「そうだろう?!許せないだろう?!私も同じなんだ...そして、私の想像だが、白鶯は、魔裁組に”内通者”を忍ばせている...!」
伊藤「!!!!それって、誰なの?!」
X「それは...!」
伊藤「...!」ゴクリ...!
X「人間国宝...鬼屋敷蝶絵...!!!」
伊藤「!!!」
X「驚くのも無理はない...君は元々は第1支部所属の魔法使いなんだろう?」
伊藤「嘘よ!!鬼屋敷さんが、そんな悪党の味方をしているわけないじゃない!!!」
X「もちろん。可能性の話だ。信じるか信じないかは君次第だが...」
伊藤「?」
X「白鶯は、魔裁組にいた時、鬼屋敷の寵愛を受けていたんだ。言うなれば、蝶絵のお気に入り...皆はチョキニと言ってたよ」
伊藤「チョキニ...?」
X「そう。だから、白鶯が罪を犯して魔裁組から姿を消した時も、白鶯を連れ戻そうと躍起になっていたのは誰よりも鬼屋敷だった」
伊藤「あなたはなんでそんなに内部事情に詳しいの...?」
X「魔裁組関係者ということだけは伝えておくよ。白鶯に目をつけられたら消されるから、詳しくは言えないけど」
伊藤「...」
X「俺も鬼屋敷とは顔見知りでね。だから、もし君が鬼屋敷を信じているなら、その疑いを晴らすためにも協力して欲しい...」
伊藤「何をするつもりなの...?」
X「話を聞くだけさ...鬼屋敷本人に...!」
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第262話 「戦士」
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《折紙山 / 小屋前(回想)》
伊藤「私は...?何をすればいいわけ?」
X「鬼屋敷の行動をチェックして報告して欲しい...しばらくはそれを続けるんだ。そして時が来た時には...君にプレゼントをあげよう...!」
伊藤「プレゼント...?!」
X「そうさ──────」
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《第1支部》
伊藤「...(まさか...ね)」
一同「???」
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《錦糸公園》
一善は拓郎とバイクで移動中。
拓郎「倒した魔者から、先程の紙が現れると!」
一善「だから、もしかしたら今回も...!」
2人はバイクを乗り捨て、錦糸公園に向かう。
到着した2人を、百目鬼が見つける。
百目鬼「...!(あれかな?2人か。ちょっと遠くで様子を見させてもらおうか)」
百目鬼は、魔者から離れて物陰に隠れた。
百目鬼「お利口にするんだよ?」
魔者「ビュハァァァァ...!」
タッタッタッ!
拓郎「久しく見たな。本物の魔者は...!」ゴゴゴ...!
一善「いくよ...!つのキング!」 ボワァン!
つのキング「ウォーーーーー!」
百目鬼「...(あの少年はあの時の...そしてもう1人は知らない男...魔裁組じゃないのか?)」
魔者「ビュハァァァァ!!!」
拓郎「行くぞ!硬岩無血!!!」バキバキバキ...!
一善「緑のエレメント!巌窟王!!」
つのキング「ウォーーーーー!!」
拓郎は、全身を岩の如く硬化させた...!
つのキングは、エレメントを纏って緑色に輝く!
拓郎「緑のエレメント...!切砂拓磨(せっさたくま)!!!」ガァン!!!
つのキング「ウォーーーーー!!!」ドォン!!!
拓郎とつのキングの一撃は魔者を怯ませた!
魔者「ビュハァァァァ!!!!」
一善「来い...つのキング!」
つのキング「ウォーーーーー!!」シュウィィィィン!
シャキン! シャキン! シャキーン!
ガッチーーーーン!!
つのキングは、光の粒子となって、一善の持つエレメントの剣に宿った。
拓郎「(魔獣がエレメントの剣に宿った...!一善少年の持つ剣はまるで...黄金の聖剣、エクスカリバーの如し...!)」
百目鬼「(ほほう...!)」
魔者「ビュハァァァァ!!」
一善「一撃で終わらせる」
拓郎「!!!」
一善「大剣豪!!!降魔!!!!」
ザ ァ ン !
魔者「ビュハァァァァ!!!!!!」
一善「...」
一善の斬撃は、一撃で魔者の首をはねた。
拓郎「(一撃で...!!!一善少年、まさかここまで成長しているとは...!)」
百目鬼「(やるねぇ...!)」
魔者は跡形もなく消えた。そして、そこにはひらひらと1枚の蝶々紙が現れたのだった。
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第263話 「接触」
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《錦糸公園》
拓郎は、蝶々紙を拾い上げる。
拓郎「一善少年!これは!」
一善「今回も...!本当になんなんだ...?」
拓郎「それにしても見事な剣さばき。恐れ入った」
一善「ありがとうございます」
拓郎「一善少年はこの後どうされるご予定で?」
一善「今回の事を報告に、支部へ戻ります。道場へはまた伺わせて頂きますね」
拓郎「左様でございますか。ならば、支部までバイクで送り届けさせてもらってもよろしいか?」
一善「ありがたいのですが、拓郎さん家逆ですよね?それに、ここから支部は目と鼻の先なので、歩いて行きます。ありがとうございます」
拓郎「そうか...ならば」
一善「?」
拓郎「私は、ここでポケGOをやって帰るとしよう!」
一善「ポケモン脳!!!」
そして、ポケモンGOに夢中になる拓郎を背に、一善はスカイツリーへ向かう。
百目鬼「...!」
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《四ツ目通りコンビニ》
一善は、スカイツリーへ向かう途中の道にあるコンビニに寄る。
一善「(あ、バブカあった。これ美味いんだよなぁ...)」
一善は、パンを一つ買い、外に出る。すると、あの男が一善に接触する。
百目鬼「久しぶりだね」
一善「?!」
百目鬼「ははっ。すごい驚くじゃん」
一善「すみません...本当に驚いているので」
百目鬼「俺に見覚えは?」
一善「ないです」
百目鬼「そっか、あの時君は満身創痍だったし、君は俺を分からないか。俺、君の命の恩人なんだけどな」
一善「すみません...人違いでは無いですか?」
百目鬼「君、魔裁組の人間でしょ」
一善「!!魔裁組、知ってるの?」
百目鬼「知ってるさ。僕も君と同じ、魔法使いなんだから」
一善「!!」
百目鬼「ちょっと、お話に付き合ってもらってもいいかな?」
一善「...!」
パッ!
一善「?!(景色が変わった...?!いや、本当に移動したのか?今の短時間で?)」
2人は、裏路地に移動した。
百目鬼「秘密の話がしたいから、人目につかない方がいいと思って...」
一善「...?(この人は、なんなんだ?)」
百目鬼「ま、そんな不安そうな顔しないでよ、ね?気になることがあったら答えるから」
一善「俺の命の恩人っていうのは、どういう意味?」
百目鬼「あーそれはもういいよ...忘れられた恩は双方にとって邪魔でしかない」
一善「...?」
百目鬼「大丈夫、僕は君達の味方だから」
そう言いながら、百目鬼は蝶々の書かれた絵をひらひらさせた。
一善「!!!(その紙は?!)」
百目鬼の企みとは──────!
SOREMA -それ、魔!- 31へ続く。
第255話 「蝶」
第256話 「新しい仲間」
第257話 「試験結果」
第258話 「動き出した時代」
第259話 「久しぶり」
第260話 「準特級」
第261話 「X」
第262話 「戦士」
第263話 「接触」