SOREMA -それ、魔!- 69

f:id:btc21:20230328003738j:image

SOREMA -それ、魔!- 69

 

 

 

 

 

 

 


光を探して

 

 

 

現在までのあらすじ。

 


ノベルの幹部を全て倒し、白鶯との最終決戦を繰り広げる魔裁組。

白鶯の圧倒的な力の前に次々と戦線離脱して行くメンバー。

暴走する白鶯相手に一善が孤軍奮闘する中、北海道から駆けつけた履術者・廻桜志郎の助けによって、ジャスティンが戦線復帰。最後の力を振り絞り、一善と共に白鶯討伐に動く。

 

 

 

 


第545話 「重なり合う」

 


《決戦の地》

 


ヒメ「ジャスティンさん...大丈夫でしょうか」

五百旗頭「賭けるしかないわ。今の時点で、高度な治療ができる人がいなくなってしまったのだから」

ヒメ「唯さん...」

五百旗頭「最後の希望を込めて、南野さんを探しましょう。私たちで」

ヒメ「はい!百目鬼くんも!」

廻「僕はここにいます!ここで何かあった時に、戦える人がいた方がいいと思うので」

五百旗頭「ありがとう。久品さん、行きましょう」

 

 

 

《とある倒壊したビルの地下部》

 


百目鬼は、白鶯の攻撃で地下へ吹き飛ばされていた。長らく気を失っていたが、目を覚ます。

 


百目鬼「...痛っ」

 


百目鬼は片足がコンクリートに挟まって動けなくなっていた。

 


百目鬼は身動きの取れない状態で、光の射す方から、上空の龍を見る。

 


百目鬼「...やべぇなあれ......って?あれはもしや」

 


百目鬼は巨大な龍と空中戦を繰り広げる一善を確認。

 


百目鬼「おい...あれ一人で相手してんのヤバいだろ...」

 


百目鬼は辺りを見回す。すると、下半身が埋もれて気を失っている美波を発見する!

 


百目鬼「...!南野!!」

 


美波は目を覚まさない。

 


百目鬼「...!くそっ!足が動かねぇ...!(それだけじゃねぇ、頭も朦朧として何も出来ねぇ!誰か来てくれ...!)」

 


百目鬼は何とかして、自分の足に被さっていた瓦礫を退かすと、足を引き摺って美波の元へ駆け寄る。

 


百目鬼「おい南野?大丈夫か?大丈夫じゃねぇか」

 


周囲の赤くなったコンクリートを見る。

 


百目鬼「おいおい。助けるだけ助けて逝っちまうなんてナシだよな?」

美波から返事はない。

 


百目鬼「ちっ...そんなの...絶対ナシだろ!おい!」ガンッ ガンッ!

百目鬼は、コンクリートを破壊するために、コンクリートに衝撃を加える。

 


百目鬼「おいおい!南野!南野!!」

美波「...」

百目鬼「くそっ...くそっ...硬ぇ!!」

美波「...」

百目鬼「俺は...なんでこんなに弱いんだ...!」

 


コンクリートはビクともしない。

 


百目鬼は溜息をつき意気消沈する。

 


百目鬼「情けねぇ話だよな。今俺の相棒がでっかい敵と戦ってるんだよ」

百目鬼は涙を流す。

百目鬼「でも...俺は...あいつを助けてやれる程の力がねぇ...!」

 


百目鬼は涙を拭う。

 


百目鬼「らしくねぇか...ははっ。はぁ。なんで俺、こんなに弱いんだろ」

美波「...」

 


百目鬼「あいつは...一善はお前の助けが絶対必要になる。だからさ...頼むよ...もう1回、あいつの助けになってくれ...!あいつを助けてやってくれよ...!」

 


百目鬼の涙が、美波の手の甲に落ちる。

 

 

 

美波「...」

 

 

 

 


ピクッ

 

 

 

 


《決戦の地》

 


一善とつのキングは、白鶯の周りを飛び回り、白鶯に攻撃を仕掛ける!

 


一善「...(もうこいつは錯乱状態だ、意識はないだろう、だからこそ、何をするか分からない...!早くカタをつけないと!まずは龍の状態を解除させる!)」

 


一善はつのキングから飛び降り、龍の喉仏に剣を突き刺し、腹部まで剣を振り下ろす!!

一善「うぉぉぉぉ!!」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


一善「...!!!!(吹き飛ばされる!!)」

 


すると、地面から駆けてきたジャスティンが、一善の握る剣を支える!!

 


一善「ジャスティンさん!!!」

ジャ「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

2人はそのまま剣を突き刺したまま、白鶯を一刀両断した!!!龍の姿の白鶯は、地面に叩きつけられる!

 


白鶯は、傷口を治しながら再び空へ上がろうとする。

 


ジャ「させねぇよ!!!!」

ジャスティンは、天叢雲を白鶯の頭部から地面に貫通させる勢いで突き刺した!!

 


すると、白鶯は頭をぶん回し、ジャスティンは上空に放り出された!

 


一善「ジャスティンさん!!!」

 


白鶯は、くっつけた尻尾でジャスティンを思いっきり吹き飛ばす!!!

 

 

 

ドォォォォォォォォン!!

 


ジャスティンは遥か彼方のビルに叩きつけられた!!

 


一善「ジャスティンさん...!!!」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


一善は、目の前に横たわった巨大な龍の顔面を見ながら口を開く。

 


一善「お前は...どこまで俺の仲間を傷つければ気が済む...?」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


白鶯は鋭い眼光で一善を睨みつけ、口に強烈な光を溜め込む!!!

 


一善「...」

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!!」

 

 

 

一善「つのキング」

つのキング「ウォーーーー!!」

 


つのキングは、再びの剣の姿となった!

 


一善は、剣を2つ持ち、光を口に溜め込む白鶯の顔面に近づく。

 


ジャスティンは遠くから一善を見る。

ジャ「......一善!逃げろ...!(くっ...体が動かない...!)」

 


一善「...」

白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

一善は今にも放たれそうな光の前でも、物怖じせずに、剣を強く握りしめる。

 


一善「お前を倒して、俺は善を為す」

 


ドォォォォォォォォン!!

白鶯の攻撃が放たれる!!

 


一善「!!!!」

 


キィィィィィィィン!!!!

 


一善を中心に、緑のオーラが周囲に放たれる!!

一善の髪は揺らぎ、地には亀裂が走る!

 


白鶯「ギリャァァァァァァ!!!」

 


白鶯は攻撃を受けてさらにのたうち回る!!

 


バタバタバタバタバタ!!!

 


ジャ「...!止めた...のか?」

 


一善はつのキングに乗り、上空から白鶯を見下ろす。

 


一善「...終わりだ!」

 


その様子を、ヒメ達が見上げている。

 


ヒメ「一善...!」

五百旗頭「...!」

廻「...!」

 


ジャ「...ふっ。人はここまで変われるんだね。あの日のクリスマスから、君は見違える様に変わった」

 


一善は、つのキングから飛び降り、天叢雲を白鶯の頭蓋骨に突き刺す!!

 

 

 

 


白鶯は断末魔をあげる!!!!

 

 

 

 


グヲォォォォォォォォォァァァァ!!!!!

 

 

 

ヒメ「...!」

五百旗頭「...!」

廻「やった...?!」

 


幸二と三太郎は、目をうっすらと開ける。

幸二「...?」

三太郎「...一善...は?」

 


白鶯は、滅びた。

 


龍の体は、先端から燃えるように崩壊していく。

 


そして、地面には一冊の青い本が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第546話 「川辺」

 


一善「...」

 


白鶯は人間体の頭部を残して殆どが消失していた。

 


ヒメ「終わっ......た?」

五百旗頭「......!」

 


三太郎は体を起こす!

 


三太郎「おい、皆無事か?!いててて」

ヒメ「今、一善が...」

三太郎「ん?」

幸二も体を起こす。

幸二「一善は...?!」

 


ヒメ「白鶯を...倒した...!!!」

 


幸二・三太郎「!!!!」

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

一善「...!!」

 


グシャッ!

 


一善は、白鶯の頭部を踏み潰す。

 


グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!

 


一善「...」

 


グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!

 


一善は完全に気を失っていた。意識的ではなく、ただ本能で体を動かしていた。

 


ヒメはそれを見て、足を引きづりながら一善の方へ駆け寄る!

 


一善は、突然意識が飛んだように地面に倒れかける。

 


ヒメは寸前で一善を受け止める。

 


ヒメ「一善...!一善!!」

一善は目を瞑って、返事をしない。

 


ヒメ「...(脈はある。でも早く回復しないと...!)」

 


そこへ幸二と三太郎がやってくる!

 


幸二「一善!おい一善!!」

三太郎「一善!!お前!すげえよ!」

幸二「死ぬなんて許さないぞ!」

幸二、三太郎は一善に回復を施す。

 


三太郎「ちっ...まともに”療”出来ねぇのに...俺達もマヂカラが残ってねぇ...!」

幸二「でもやるしかないだろ!」

ヒメは、一善を助けるべく、一善をその場に寝かせて、廻や五百旗頭に助けを呼びかける!

 


幸二「くっ...(例え俺が死んでも...こいつだけはて!)」

三太郎「...!!」

 

 

 

その時だった。

 

 

 

パッ!

 

 

 

 


幸二らの目と鼻の先に、寝転がった美波が突然現れた。

 

 

 

〜〜

 


力を使いは果たした百目鬼は、地下部で光を浴びながら呟く。

百目鬼「やったんだな。流石、俺の相棒だ」

 

 

 

バタッ...

 


〜〜

 


三太郎「美波ちゃん?!」

美波「三太郎君...幸二君...」

幸二「大丈夫か...?!てか、なんで...」

美波「百目鬼くんが...百目鬼君は地下で身動きが取れなくなってる...助けてあげて欲しい」

幸二「わかった!サムワットに連絡する!」

 


美波は、寝転がった状態で、一善を見る。

 


美波「一善君...?」

 


三太郎「あぁ。一善が危ないんだよ!こいつずっと白鶯と戦ってたんだ...!」

美波「私を...もう少し一善君に近づけて。動けないから」

 


幸二は美波を一善の隣に寝かせる。

 


美波「一善君...絶対に死なせないから」

 

 

 

美波は、目を覚まさない一善の頬に手を当てる。

 

 

 

美波「...帰ってきて。一善君」

 

 

 

 


ポワァン...!

 

 

 

 


一善に力が注がれる。

 


三太郎「一善!!」

幸二「一善...!一善!!」

ヒメ達もそこにやってくる。

 


五百旗頭「一善君...!」

ヒメ「一善!起きて...!」

廻「...!」

 

 

 

一善の運命や如何に──────!

 

 

 

 

 

 

 


第547話 「光を探して①」

 


日が登り、朝になる。

 

 

 

周囲の片付けは順調に進められ、魔裁組のメンバーは、病院に運ばれた。

 

 

 

そして、白鶯との戦いから数日が経つ。

 

 

 

《病院》

 


ひえり「殆どの人が意識を戻したのはよかったです」

五百旗頭「でも、油断は出来ないわ。まだ意識が戻らないメンバーが...数名」

 

 

 

ピッ     ピッ     ピッ

 

 

 

 


《集中治療室① 武智はるか》

 

 

 

 


はるかは暗闇の中を1人歩く。

 

 

 

すると、どこからが聞き覚えのある声がする。

 

 

 

莉茉「それ以上は来ちゃダメよ」

 


はるか「...!」

 


莉茉「おつかれ。はるか」

 


はるか「莉茉っち...!」

 


莉茉「見てたよ。はるかの活躍。凄かった。流石私の妹って感じ」

はるか「莉茉っち...!一緒に帰ろうよ!みんな待ってるから...!」

莉茉は首を横に振る。

 


莉茉「私はもうみんなと同じ所へは行けないんだ。悲しいけど」

はるか「...じゃあ、私もそっちに行く!莉茉っちがいない世界なんて嫌だよ!せっかく終わったのに...なんで...!」

莉茉「ありがとう。でも、はるかのこと、皆待ってるから」

はるか「え?」

 


はるかが横を見ると、麗美と美波がそこにいた。

 


はるか「麗美...美波...」

麗美「いつまで寝てるの?」

美波「早く起きてよ...」

はるか「でも...」

 


すると、莉茉が3人を引き寄せるように抱きしめる。

 

 

 

莉茉「皆。今までありがとう。私と仲良くしてくれて、慕ってくれてありがとう。もう会えないけど、魔法が無くなっても、私はずっと皆のお姉ちゃんでいてもいいかな...」

はるか「...!!」

麗美「莉茉っち...」

美波「うん...!うん...!」

 


莉茉は3人更に強く抱きしめる。

 


莉茉「長生きしてね。私の自慢の妹たち...!」

 


はるか「莉茉っち...!!莉茉っち!!!」

 

 

 

カァァァァァァァ!!!!

 

 

 

はるかは目を覚ました。

 


はるかが目を覚ますと、麗美と美波がベッド横ではるかを見ていた。

 


麗美「...あ」

美波「はるか...!」

 


麗美は席を立ち、涙を目に浮かべながら廊下で叫ぶ。

 


麗美「はるかが...はるかが起きました!!」

 

 

 

《集中治療室② 百目鬼藤》

 

 

 

百目鬼は暗闇の中で佇む。

 


百目鬼「ここはあれか、地獄ってやつか」

 


すると、どこからか声がする。

 


紅「残念ながら、違うぜ!」

 


百目鬼「...?」

 


百目鬼が声のする方を見ると、百目鬼のかつての友人が顔を揃えていた。

 


山吹「やっときたのかよ。お前が来ないと、始まらないだろ」

浅葱「そうだね。久しぶり、藤」

松葉「記念に写真を撮ろう。って、写らないか」

墨「まぁなんでもいい。まずは藤を労うのが先だろう」

 


藤「お前ら...」

 


5人は藤を囲む。

 


藤「はぁ...悪かったな。かっこ悪ぃ俺。なんかむきになっちまってた」

墨「まぁ。復讐なんて、くだらないと思って見てたが」

山吹「おい!俺達のためにやってくれたのに!」

松葉「ごめんね藤。墨はお前が怪我したり危険な目に合うのが本当に心配だったんだよ」

墨「...!違う!それを言うな!」

浅葱「全く。素直じゃないねぇ」

 


紅「でも俺たち痺れたぜ。お前が俺達のためにあそこまでしてくれるなんてな。お前、すげぇ魔法使いだったんだな」

 


藤「...!」

 


浅葱「お前のおかげで、俺たちも安心して成仏出来るよ」

 


藤「お前ら...!」

 


松葉「ありがとう。藤」

 


藤「...!いや...でも、悪かったな。お前たちの分まで、長生きするべきだったのに...」

 


紅「...」

浅葱「...」

松葉「...」

 


山吹「は?」

 


藤「?」

 


墨「お前、何か勘違いしてはいないか?」

藤「...?」

墨「俺たち、お前を迎えに来たのではないぞ」

藤「え?」

 


紅「おいお前ら!」

全員「おう!」

 


5人は藤は胴上げする。

 


藤「...!なんだよ!」

 


山吹「お前はまだまだ生きなくちゃなんねぇんだよ!」

藤「は?でももうやることはねぇし」

浅葱「そうじゃない。君の人生は使命かよ」

松葉「君には人生を楽しむ”権利”がまだ残ってる」

藤「...!」

墨「分かったらとっとといけ」

紅「お友達が、待ってるぜ」

 

 

 

フワッ

 

 

 

百目鬼は宙を舞った。

 

 

 

百目鬼「......」

 


百目鬼は目を覚ました。

 


百目鬼「...ふっ。生きちまった」

 

 

 

 

 

 

 


第548話 「光を探して②」

 


《集中治療室③ 京金ルカ》

 


ルカは暗闇の中で目を覚ます。

 

 

 

ルカ「何ここ」

 


???「ここは、この世とあの世の狭間。今世での功罪を清算し、汝の運命を定める場所。果たして、汝の行先は天国か...はたまた地獄か」

 


ルカ「は?誰よ!いるなら出てきなさいよ!!張り倒すわよ!!!」

 


千巣「こわ」

 


ルカ「...!」

 


千巣「よっ」

千巣が現れた。

 

 

 

ルカ「...!!バカ!」

 


ルカは千巣を平手打ちするが、千巣はこれをかわす。

 


千巣「いや、ここで戦闘してる奴初めて見たんだけど」

 


ルカは千巣の胸ぐらを掴む。

ルカ「答えなさい!なんでアンタは死んだのよ!」

千巣「いや...俺、弱いし」

 


ルカ「そうじゃない...いや...もうどうでもいい...」

ルカは胸ぐらを掴んだ手を離す。そして、千巣の胸元によりかかる。

 


ルカ「私も...そっちに連れて行ってよ」

千巣「...」

ルカ「お願い...お願い...」

 


千巣「おい、情緒不安定にも程があるだろ。FUJIYAMAかよ」

 


ルカ「...!アンタっていつもそう!こっちが腹たってんのにいっつも余裕ぶっこいて、変なこと言って、何考えてるか分からないしさァ!何?!下に見てるの?!大人ぶりやがって!どうせ私の事、ガキ臭いとか思ってんだろ?!クソが!」

 


ペシィン!!!

 


ルカの平手打ちが千巣に当たった。

 


ルカ「...!」

 


千巣が座り込む。

 


ルカは、千巣に背を向けて、膝を抱え込んで座る。

 


ルカ「...反論あるなら...言いなさいよ」

 


千巣は、座ったまま、ルカの背中に言葉を投げかける。

 


千巣「”ルカ”」

ルカ「...」

 


千巣「─────。───────。」

 


ルカ「...!!!」///

 

 

 

そこへ、理子、唯、粟生屋がやってくる。

 


粟生屋「いやぁ。いいもの見せてもらったよ」

唯「キャーーーーー!」

理子「なんか面白いね」

 


千巣「お前ら...!」

ルカ「...!」

 


粟生屋「残念ながら君はこっち側の人間だ、京金ルカ」

唯「そうだよ!ルカルカは渡さない!私だって、ルカルカのこと愛してるんだから!」

唯は、ルカをきつく抱きしめる。

ルカ「唯!痛い!痛い!」

理子「そもそも、取ろうとしてないし」アセアセ

 


千巣「皆、ありがとな。俺たちが出来なかったこと、やってくれて」

 


粟生屋「ま、僕は何もしてないけどね」

唯「私も少しだけ手伝っただけだよ」

ルカ「認めたくないけど、私達より強い奴らを少しだけ手伝っただけよ」

 


理子「私達も、これで心置き無くあの世に行ける。私も、3人のことずっと上で待ってるから。何十年後また、同窓会でもしようね」

 


粟生屋「ま、悪くないね」

唯「うん!その時まで、頑張って生きます!」

ルカ「...うん」

 


ルカは粟生屋と唯に連れられて暗闇を出ていった。

 

 

 

理子「千巣君」

千巣「はい?」

理子「あれはダメでしょ。ルカ、困っちゃうんじゃない」

千巣「その時はまた脳内に出勤しますよ。こうやって」

理子「ふふふ」

千巣「なんすか」

 


〜〜〜

 


《集中治療室④ 神野ジャスティン護》

 


ジャスティンは暗闇の中で彷徨う。

 


ジャ「...」

 


すると、懐かしい声が背中から聞こえる。

???「護!!」

 


ジャ「...?」

ジャスティンは振り返る。

 


朱里「おかえり。護」

ジャ「朱里...?」

朱里「元気?って、そんなわけないよね。お疲れ様、護」

ジャ「朱里...?朱里なのか?」

朱里「ははっ。そうだって。久しぶりだね」

ジャ「...!!」

 


ジャスティンは朱里を抱きしめる!

 


朱里「わぁお!あははっ。急に動いて大丈夫?」

ジャ「朱里...!ごめんね。朱里を守れなかった。助けてあげられなかった...!俺は弱かった...本当に...ごめんね!」

朱里「そんなこと気にしてないよ。ずっと見てたんだよ?護のこと」

 


ジャ「...!」

朱里「護、辛かったね。沢山努力してる護、かっこよかったよ。心の底から、かっこいいって思った」

ジャ「...!」

朱里「護は弱くなんてないよ。だって、沢山の人を護れたじゃない。十分すぎるくらいだよ」

 


ジャスティンは、朱里から離れて立つ。

ジャ「朱里...俺、朱里が好きだよ。あの時は言えなかった」

朱里「...」

ジャ「朱里...俺は」

朱里「私も...好きだった」

 


ジャ「...!」

 


朱里の目から涙が落ちる。

朱里「優しくて、真っ直ぐな護の事が、私は好きだった」

 


ジャスティンは再び朱里を抱きしめる。

ジャ「ありがとう。今も同じ気持ちかな?俺もそっちに行くから。これからは絶対に離さない。どんな事からも朱里を守る。これでずっとずっと、一緒だね」

 


朱里「...それは出来ないよ」

 


ジャ「...?」

 


朱里は、涙声で、笑顔を作って言う。

朱里「護は、もっと生きなきゃ」

ジャ「...朱里?」

 


朱里「まだ若いんだから、護にはもっともっと、生きて欲しい」

ジャ「...」

朱里「護はこれからも色々なことを知って、色々な人と出会って、話して、遊んで、恋をして...幸せにならないといけないんだよ?」

ジャ「...どうして?」

朱里「だって。護が助けた人達は皆、護が死んじゃうの、嫌がるよ?」

ジャ「...!」

 


朱里「一緒に戦った仲間達も、護が生きることを望んでる。もちろん。私も同じ。だから、護の気持ちに応えることは出来ません。でも、嘘をつきたくなかったから、本当の気持ちを話したの。困らせてごめんね」

 


ジャ「...朱里」

 


朱里「護は素晴らしい人だから、これからも護らしくら幸せに生きて欲しい。これが私からの最後のお願い」

 


ジャ「...!」

 


朱里はジャスティンに抱きつく。

 


朱里「素敵な人を見つけてね。護」

ジャ「...朱里!朱里...!」

 


朱里は、光になって消えていく!

 


ジャ「......!朱里...!」

 

 

 

〜〜〜

 


ジャスティンは目を覚ます。

 


ジャ「...朱里...ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 


第549話 「光を探して③」

 


《集中治療室⑤ 油木一善》

 

 

 

一善は暗闇の中を走る。

 


一善「早く...皆の所へいかなくちゃ...ここはどこだ...?俺は寝てるのか...?」

 


???「一善!」

 


どこからともなく声がする。

 


一善「...?この声は...?」

 


冬美「一善...!」

一善「...お母さん?」

 


一善の目の前に冬美が現れた。

 


一善「お母さん...なるほど。そういうことね」

冬美「一善。お疲れ様」

一善「...うん」

 


冬美は一善を抱きしめる。

 


冬美「一日一善。私との約束、守ってくれてありがとう。一善は立派だった。さすが、私の自慢の息子よ...!」

一善は、じんわりと涙を浮かべる。

冬美「本当に、逞しくなったね、一善」

一善「...!」

 


冬美「おかえり。一善」

一善「...お母さん......!」

 


すると、冬美は光に包まれた。

 


一善「お母さん...行っちゃうの?」

 


キラキラァ...

 


すると、冬美は少し若返った姿になった。

 


一善「...?」

 


すると、一善の隣にヒメが現れる。

 


ヒメ「私たちのお母さんよ。まだお母さんが、魔法使いだった時の姿」

一善「...ヒメ?どうしてここに?」

ヒメは微笑む。

ヒメ「そして...」

 


ヒメは後ろを振り返る。つられて一善も振り返る。

そこには、一人の男の姿があった。

 

 

 

一善「...!」

 

 

 

一善は直感でそれを理解した。

 


一善はその男を、幻の中で見たことがある。

 


???「一善、ヒメ」

 


一善はその男の声を、何度も聞いたことがある。

 


一善「...!」

ヒメ「この人は...」

 


一善「...お父さん......?」

 


和義「初めましてだな。一善...!」

 


一善はたどたどしい歩幅で、和義に近づく。

 


一善「お父さん...お父さん...なんだよね」

 


和義「あぁ。俺はお前達の父親だ」

 


すると、一善は、和義に飛びついた。

 


一善「全部分かった...!今まで、ずっと守ってくれてたんだね...!そばにいてくれてたんだね...!俺のことずっと...隣で見守ってくてたのは...父さんだったんだね...!」

和義「ごめんな一善。お前に顔を見せることが出来なくて。俺に出来る事はこれしか無かった。俺の方こそ、俺のギラファ...いや、つのキングを導いてくれて、ありがとう...!」

一善「お父さん...!」

 


そこに、冬美(真理)とヒメも肩を寄せる。

 


和義「真理、ヒメ、一善。全員俺の自慢の家族だ!」

ヒメ「お父さん...!」

一善「...!」

真理「そうね。和義」

 


和義は一善とヒメに言葉を残す。

 


和義「今日まで、本当に良くやってくれた。俺たちが成し遂げられなかった偉業を、お前達とその仲間達は、力を合わせて達成することができた。本当にありがとう」

一善「...!」

和義「2つ。忘れないで欲しいことがある。1つは、仲間への感謝の気持ちだ。思い出して欲しい。心が折れたり、体が思うように動かない時、手を差し伸べてくれた仲間を。共に傷つき、励ましあった仲間を。命を賭して、お前達に望みを繋げた仲間を」

ヒメ「...!」

 


和義「そして、自分を好きでいることだ。お前達が成し遂げたことは、何にも変えられない程の偉業だ。だが、周りの誰もがそれを理解出来るとは限らない。だから、他人に褒められずとも、自分で自分を誇れ」

一善「自分を...誇る...」

和義「他人を貶したり、人の上に立つためではない。常に前向きに、一日一日を明るく生きられるように、自分を好きでいて欲しい。誇りに思って欲しい。そして、これからも善き一日を積み上げて行って欲しい。日常に戻って、平和な暮らしが戻っても、残念ながらいい事ばかりではないのが現実だ。辛い事に目の前を塞がれてしまっても、沢山の人々を救ったお前達なら、どんな困難も乗り越えられる。俺の自慢の家族だからな」

ヒメ「お父さん...」

 


和義と真理の体は徐々に光となって消えていく。

和義「その尊い命を、力尽きるその日まで大事にして欲しい。一日一日を、楽しく生きてくれ。俺達との約束だ」

真理「あんまり早くこっちに来ないようにね」

 


一善「お父さん...お母さん...」

ヒメ「...!」

 


和義「何があっても心配ない」

一善「...!」

ヒメ「...!

 


和義「俺達が二人を守る」

 


真理「うん」

 


キラキラァ...!

 


一善「待って...!」

 


一善が手を伸ばすと、2人は消えてしまった。

 


一善「...行っちゃった」

ヒメ「だね」

一善「...俺達も行こう」

ヒメ「うん。みんな待ってるから」

ヒメは一善の手を引いて、光の方へ走り出す!

 


一善「ありがとう...お父さん...お母さん!」

 

 

 

キィィィィィン...!!!!

 

 

 

 


一善が目を覚ますと、ヒメ、幸二、三太郎らの顔が、目の前に現れた。

 

 

 

 


ヒメ「...おかえり、一善」