SOREMA -それ、魔!- 54

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SOREMA -それ、魔!- 54

 

 

「魔裁超会議」

 

 

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第443話 「魔裁超会議①」

 

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《第2支部 / 大会議室》

 


魔裁組実働班、研究班、そして魔法協会の協力者を集めた総勢100名超による会議が始まった。

 


ジャ「今日皆に集まってもらったのは、ノベルによる侵攻に備えた作戦の擦り合わせ、また、新たに協力者となってくれたメンバーの顔合わせの意味がある。まずはなぎちん」

 


五百旗頭「魔導書ゲッター。ついに完成したわ。実験した結果、マヂカラの弱った人間、後これは想像だけど、マヂカラを手放す意思のある人間には一定の効果を示すと思われるわ」

 


三太郎「どーせ俺にはかんけーねーし」フンッ!

はるか「やっぱり変な名前」

莉茉「シー!!!」

 


五百旗頭「履術者のメンバーにはこれを1つずつ支給するわ。今後魔導師や魔者に遭遇した際に役立てて欲しい。彼らは、百目鬼君によると、契りの指輪という魔導書を死後も保管する能力を持っているそうだから」

 


九頭龍坂「暫くネイルはお預けやな」

虎走「ぎゃは!ちょっと楽しみ!」

 


ヒメ「次に私から。前の会議からの繰り返しになりますが、現在倒したノベルの幹部の遺留品や現場から記憶を辿った結果、ノベルが東京で大規模テロを画策している事が想起されています」

 


幸二「ノベルめ...何を企んでる...!」

麗美「不気味ね」

 


京金「ま、どうせ白鶯の事よ。自分が最強だーとかやりたいんじゃない?派手に。あいつ結構用意周到なところあるし」

東海林「私もそう思う...」

粟生屋「zzz...」

東海林「ってあおやん!ちょっと!起きて!」

粟生屋「むにゃ?」

 


ジャ「恐らく、魔者もノベルのメンバーにいる関係上、東京を大きく離れてことを起こすことは考え難い。そこで我々は今日から、小隊を組みかえながら東京各地をパトロールする」

 


三太郎「パトロール!!」

 


粟生屋「なんか、めんどくさそ」ボソッ

東海林「あおやん!」

 


ジャ「実働班では、新たに戦力となってくれる協力者を中心に、小隊を組んで、それぞれ巡回しようと思う」

 


東海林、京金、粟生屋、百目鬼、岩田、ひえりが前に出てくる。

 


東海林「東海林唯ですっっ!あの、ちょっと前に魔法使いやってただけなので、まだ勘が戻ってきてないんだけど、ルカルカとあおやんと、一緒に頑張るので!よろしくお願いしますっ!!!」

莉茉「あの人が...唯さん…私を救ってくれた...」

 


京金「京金ルカよ。よろしく」

三太郎「よろしくな!ルカルカ!」

京金「誰がルカルカよ!!」ピキッ!

 


粟生屋「粟生屋昴。今最強の一般人です。よろしく」

三太郎「最強...?確かに雪山では凄かったけど、ジャスティンさんより強いのか?」

幸二「ブランクはあるだろうが、それを考えなければ3人とも現戦力トップ3に入るだろうな。元特級はレベルが違う。元の状態に戻るのもすぐだろう」

三太郎「そうなのか...!すげぇな!!」

 


岩田「岩田拓郎と申す。協力者連合の代表として今日1日お供させて頂く。以後お見知り置きを」

はるか「あの人、何歳?」コソコソ

麗美「40くらい?」コソコソ

岩田「25歳です!!!!」

はるか・麗美「...!!!(聞こえてた...!)」ビクッ!

 


百目鬼百目鬼藤。前に詳しく話したが、今日から正式に協力者としてここにお世話になる。元ノベルで内部事情は少し分かる。数える程の戦力にはならないが善処する。よろしく」

 


ザワザワザワ...

 


京金「は?!アンタ、ノベルって、白鶯の仲間だったの?!なんで殺しておかなかったのよ!アンタも殺すわよ!!」

京金が百目鬼に殴りかかろうとする所を粟生屋と東海林が抑える。

東海林「ルカルカ落ち着いて!皆見てるから!」

粟生屋「あはは!ヒスはモテないよ?」

京金「うるさ!」ピキッ!

百目鬼「うわぁ...こっわ」

東海林「ご、ごめんねどめきん!ルカルカ本当は優しい子だから!ね!」

百目鬼「どめきん?」

一善「アハハ...」

 


ひえりが回されたマイクを持つ。

 


ザワザワザワ...

ワーキャーー!ワーキャーー!

 


ジャスティンが咳払いをして、静粛を促す。

 


ひえり「初めまして...堆ひえり...改め、千巣ひえりです」

 


研究員「噂には聞いてたけど...あの噂ガチだっただ...」

研究員「千巣くんの妹がアイドルってな!」

 


ザワザワザワ...

 


ひえり「私、その...」

 


一同「...?」

 


ひえり「ま、魔法使いに...なりました!」

 

 

 

 

 

 

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第444話 「魔裁超会議②」

 

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《第2支部 / 大会議室》

 


ひえり「私、その、魔法使いになりました...!」

 


三太郎「え?」

犬飼「へ?」

一善「ん?」

京金「は?」

 


三太郎・犬飼「マジー?!?!?!」

 


ピューーーーーン!

 


三太郎と犬飼がひえりの元へ瞬間移動する!

 


三太郎「ひえりちゃん落ち着くんだ!俺は嬉しい!嬉しいよ?」ハヤクチ

犬飼「確かにひえりちゃんと毎週毎週会議名目で顔を合わせられるのは嬉しい!嬉しいが!」ハヤクチ

三太郎「今一度考え直すんだ!君が!もし戦いで命を落としたりしたらどれ程の人が悲しむか」ハヤクチ

犬飼「ひえりちゃんは最高のアイドルだ!だから魔法使いなんてやらなくても十分可愛い!」ハヤクチ

三太郎「俺が一生ひえりちゃんを守るよ!だから安心して普通の人生を生きるんだ!」ハヤクチ

犬飼「魔法ならもう俺たちひえりちゃんの魔法にかかってるからもう大丈夫だ!な!」ハヤクチ

 


ボカッ!!!

 


バコッ!!!

 


頭にゲンコツを作って気絶した2人を麗美が引きずってはけさせる。

 


麗美「続けてー」ニッコリ

 


ひえり「は、はい。あの、私戦うわけじゃないんですけど、兄の、魔導書を読みまして、魔法が使えるようになったんです」

京金「...!」

一善「...!」

幸二「てことは、第四十六章、知覚の書...?」

 


五百旗頭「検査した所、確かにひえりさんは履術者になったわ。全く...危ない橋を渡ったものね」

ひえり「すみません...」

五百旗頭「でも兄万之助君とは若干使用出来る能力に差異がある。”百眼千里(ひゃくがんせんり)”これはひえりさんだけが使える能力のようね。千巣君みたいに全身の感覚が強化される能力はないみたいだけれど、百眼千里は、超広範囲のマヂカラの検出が可能。その距離はざっくりと半径50kmって所かしら」

 


一善「50km...?!凄い!」

はるか「50キロ?こっからどこら辺だ?」

莉茉「鎌倉くらいかな」

はるか「え!すげえ!そんな遠くまでマヂカラが見えるのか?!」

 


ひえり「でもずっとやってると疲れが出てしまうのと、遠くは少しぼやけてしまいます」

五百旗頭「でもかなり高精度よ。都内各所のマヂカラレーダーよりも迅速かつ微量のマヂカラも見える。よって、私達マヂカラが流れる人間の行動範囲も逐一把握出来るわ。一人一人のマヂカラの違いも読み取れる」

ひえり「私の体力に限界が来なければの話ですけどね!」

五百旗頭「だから彼女には、ここから司令塔的な役割をお願いする事にしたわ。補佐はヒメさんと私で行うわ。これからよろしく。ひえりさん」

ひえり「はい!少しでも力になれるように、頑張ります!」

 


ジャ「以上が新しい仲間だ。かなり濃い、いや、濃すぎるメンツだが、纏まった時の破壊力は凄まじいことになる。会議は今日はここでおしまいとする。誰か他に何かある?」

 


シーン

 


ジャ「うん、じゃあ終わりにしよう。最後に、ノベルを討ち、平和を実現するまで、俺たちはチームだ。研究班も実働班も関係ない。一丸となって頑張ろう。長きに渡った魔法協会及び魔裁組の戦いも、もう終わりが見えてきている。ノベルという存在は驚異でもあるが、同時にチャンスでもある。これはノベルと魔裁組の全面戦争だ。亡くなった仲間や被害者の無念を胸に...必ず平和を俺達の手で作ろう...!!」

 


パチパチパチパチパチパチ!!!

 


会議は幕を閉じた。

 

 

 

東海林「ふぅー緊張したぁ...」

東海林は、壇上から降りる。

 


莉茉「...あの...」

東海林「ん?」

莉茉「初めまして...魔裁組実働班の越前莉茉と申します...」

 

 

 

 

 

 

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第445話 「受け継がれるもの」

 

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《第2支部 / 大会議室》

 


東海林「初めまして!よろしくねっ!」

莉茉「...私、東海林さんに助けてもらって、ここにいるんです!だからお礼をと...」

東海林「そうだったんだ...!昔の話だよね?」

莉茉「はい。覚えていますか?私の父親なんですが、魔者になってしまって、東海林さんが退治してくれたんです。でも私、動転して東海林さんを責めてしまって...」

 


東海林は一瞬考える。

東海林「あー!思い出した!!あの時の!!」

莉茉「分かります?」

東海林「うん!確か中学3年生くらいだったよね?!覚えてる覚えてる!あの後善能寺さんに相談して、引取りに来てもらったんだっけ?勝手なことしてごめんねー...」

莉茉「いえ!東海林さんが居てくれたから、今の私がいるんです。今私、とても幸せですし!」

東海林「そうなんだ。それはよかった!後、唯でいいよ?」

莉茉「ありがとうございます!これからよろしくお願い致します!唯さん!」

東海林「うんっ!莉茉ちゃんだったよね、よろしくっ!」

 

 

 

ひえりは、階段を降りる。

 


ひえり「...!」

 


そこには京金が立っていた。

 


ひえり「まさか...ルカさんも帰ってくるなんて、知らなくて」

京金「私もよ」

ひえり「...お久しぶりです」

 


京金はひえり元へ歩み寄る。

 


京金「苗字、変わったのね」

ひえり「いえ。私の気まぐれです。でも、魔裁組(ここ)にいる時は、お兄ちゃんの名前、名乗っていたいなって」

京金は黙って、俯くひえりを見る。

京金「...辛くない?」

ひえり「...」

ひえりは唇を噛み締める。

 


京金は、ひえりを抱きしめる。

 


ひえり「...!」

京金「寂しかったね...!よく頑張ったね...!」

ひえり「...ルカさん...!!!」

京金「大事な時に居なくなっちゃって...悪かったわね」

ひえり「ううん...ルカさん、前と同じ匂いがする...」

京金は微笑んだ。

 


その様子を麗美が安堵のような、羨望のような複雑な表情を浮かべて遠くから見る。

麗美「...」

 

 

 

粟生屋はジャスティンに話しかける。

粟生屋「中々面白そうなチームじゃない。途中寝てたけど」

ジャ「寝てたんすか?!」

粟生屋「うん」

ジャ「まぁいいですけど、あと、最強って言ってましたけど、自分も今結構強くなってますよ?あと皆も。幸二とか」

粟生屋「天堂兄弟の弟ね。へぇ〜。ま、僕あぁはいったけど、最強とか興味ないから。僕の世界では僕が常に最強だからさ」

ジャ「あぁ...そうですか」トホホ

粟生屋「今日は帰るわーじゃあまた」

ジャ「ありがとうございました!」

 


粟生屋は手を振って去った。

 


粟生屋「リーダーの意志、彼がちゃんと継いでるみたいだね」

 

 

 

一善「お疲れ様、ヒメ」

ヒメ「ありがとうー」

一善「あのさ、ヒメ」

ヒメ「?」

一善「ちょっと明日、行きたい所があるんだけど」

 

 

 

 

 

 

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第446話 「お墓参り」

 

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《とある霊園》

 


翌日、ヒメは一善に連れられて、霊園にやって来ていた。時の流れが少し緩やかに感じられる。

 


ヒメ「用って、ここ、お墓だよね?」

一善「うん」

ヒメ「この霊園、誰か知り合いのお墓あったっけ?」

一善「ないよ。でも、お参りしたい人がいるんだ」

 


一善は、1つの墓石の前で足を止める。

 


墓石には、皆藤理子の名前が彫られていた。

 


ヒメ「皆藤...理子って」

一善「うん。昔魔法使いをやってたっていう、凄い人」

ヒメ「話は聞いたことある...でも、どうしてここに?」

一善「ジャスティンさんに話を聞いて、凄い魔法使いだったんだなぁって思って、もし生きてたら、会いたいなって思って」

ヒメ「凄く強くて、優しい人だったみたいね」

一善「うん。きっと皆藤さんは、白鶯のことを止めようと必死だったと思う。だから、今は俺達がその思いを継いでるって、伝えたくて」

ヒメ「...そっか」

 


2人は数十秒、目を閉じて手を合わせる。

 


一善「...」

ヒメ「...」

 


ヒメは、一善の片手を握る。

 


一善「ヒメ?」

 


ヒメのもう片方の手は震えている。

 


一善「どうしたの?」

 


ヒメ「だめ...かな...?」

一善「ヒメ、もしかして?」

ヒメ「うん。もしかしたら、何か、わかるかなって、理子さんの人となりが」

一善「...いいのかな」

ヒメは、皆藤の記憶を読み取ろうとしていたのだ。

 


ヒメの手は、吸い込まれる用に墓石に伸びていく。一善は、心配そうに伸びる指を見つめる。

 


ヒメ「...」

一善「...!」

 


ピタッ

 


ヒメのか細い指先が、墓石に触れた。

ヒメは再び目を閉じた。一善もそれにつられて目を閉じる。

 


ヒメ「...!」

一善「...!」

 

 

 

キィィィィィィィン!!!!!!!!

 

 

 

ヒメ「!!!!」

一善「!!!!」

 


その時、ヒメと一善に何かが起こった!!ヒメと一善が目を開けると、辺りには真っ白な空間がどこまでも広がっていた!!

 


ヒメ「ここは?」

一善「瞬間移動したの...?」

 


???「待ってたわ」

 


ヒメ・一善「!!!!」

 


ヒメと一善が振り返ると、1人の女性の姿がそこにあった!

 


皆藤「初めまして、追憶の書の魔法使いさん」

 

 

 

 

 

 

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第447話 「待ってた」

 

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《皆藤理子の精神世界》

 


皆藤「私、皆藤理子。私に逢いに来てくれたのよね?」

ヒメ「えぇ...はい...」

一善「あなたが、皆藤理子さん...?」

 


皆藤「そうよ。男の子の方も見たところ魔法使いのようね、現代の魔法使いの子かしら」

一善「はい。油木一善といいます」

ヒメ「私は、双子の妹の久品ヒメです」

 


皆藤「双子...久品...ってことは、もしかして、英雄の子?」

 


一善「あ、そうみたいです...」

ヒメ「よくご存知で」

皆藤「えっへん。私、魔法オタクだから!追憶の書のことも知ってたから、いつか私の遺品に履術者の子が触れた時の為に、この仕掛けを生前に作っておいたの。今見えてる私は幻的なものよ」

ヒメ「なるほど、そんなことも出来たんですね」

 


皆藤(の幻)は、一善とヒメが繋いだままになっている手を指して言った。

皆藤「その手、離しちゃダメよ。一善君はここから消えて、元の世界へ戻ってしまうから」

一善「...わかりました」

皆藤「折角来てくれたんだから、手短に私の話を聞いて貰ってもいいかしら?」

ヒメ「はい!」

一善「寧ろ嬉しいです」

 


皆藤「ありがとう。魔裁組の皆には迷惑かけたわね。私のせいで、巨悪となった白鶯君を産んでしまった...止められなかった」

ヒメ「...」

一善「...」

皆藤「私は、自分の描いていた理想のチームを作れなかった。それは私がいけないの。私には、人を束ねる素質がなかったから」

ヒメ「...」

皆藤「こんな事を言ったらみんな怒るかもしれないけど、私は白鶯君を助けたかった。白鶯君にも分かって欲しかったの。仲間の大切さを」

一善「...」

皆藤「でも最期、私は一番やってはいけないことをした。私が誰よりも仲間を信頼できてなかったの。その結果、全てバラバラになってしまった。チームの皆には本当に、たくさんの傷を作ってしまった」

皆藤は泣き出した。

 


皆藤「ごめんね...こんな所でこんなしんみりした話聞きたくないよね。初めましてなのに。ごめんね...」

ヒメ「理子さん...」

一善「...!」

 


皆藤「今のチームはどう?仲良くやってるのかな?」

一善「はい。ジャスティンさんや五百旗頭さんを中心に、楽しくやってます」

皆藤「そうなんだ。護が...」

ヒメ「はい!」

皆藤「それは良かった。あの子は皆に愛されるから。五百旗頭さんも、元気ならよかった」

ヒメ「...」

一善「...」

 


皆藤「私、魔裁組に何も還元出来なかった。リーダーだったのに、私は何も与えられなかった。本当に、謝ることしか出来ない。今の皆が少し羨ましい。私もそのチームに入りたかった」

ヒメ「...」

皆藤「今日は来てくれてありがとう。私達が出来なかったこと、押し付けてしまうみたいになるけれど、どうか白鶯君を止めてね。魔裁組を守り抜いてね。出来るから、今の皆なら」

ヒメ「ありがとうございます」

一善「ありがとうございます」

皆藤は潤んだ目で微笑んだ。

 


一善「でも...一つだけ。理子さんは勘違いしてます」

皆藤「...?」

一善「何も与えられなかったと仰ってましたけど、そんなことはないと、僕は思います」

皆藤「...!」

 


一善「少し話しただけで分かります。理子さんの優しさ、強さ。ジャスティンさんも、理子さんの話をする時、とても慈愛の香りが溢れてました」

皆藤「なかなか独特な例えをするのね」

一善「でも本当です。きっと当時のメンバーにも、理子さんは沢山の優しさを与えていたはずです。例えその優しさが花を咲かせなかったとしても」

皆藤「...」

 


一善「その優しさは、嘘じゃないと思うから」

 


皆藤「...!」

 

 

 

一善「何も出来なかったなんて、思わないでください。理子さんが叶えられなかった事は、叶わなかったんじゃない。まだ途中なんです。僕達が必ず引き継いで、平和な未来を創ります。だから理子さんは、どうか見守っていてください。お願いします」

皆藤「一善君...!」

ヒメ「私も、一善や皆と一丸となって、戦います。支えます。それが私達に出来る、一番善い事だと思うので」

皆藤「...そう。最近の子には叶わないわ...私達の時よりも大人っぽい。それもそっか、私よりもう年上だもんね」

一善「やめてください...!恥ずかしいです」

ヒメは笑った。

 


皆藤「じゃ、頑張ってね。もう二度と会えないわ。こっちに来るまではね」

ヒメ「......はい!」

一善「...!」

皆藤「急いで来ちゃダメよ。じゃあね」

 


皆藤は足元から少しずつ消えていく。

 


皆藤「最後に...」

ヒメ「?」

一善「?」

 


皆藤「ありがと...!」

 


皆藤は笑顔で消えていった。

 


パッ!!!!

 


その瞬間強い光が2人を包み込む!!

 


一善「...!」

ヒメ「...!」

 


2人が目を開けると、そこには元の光景が拡がっていた。

 


一善「...戻ってきたみたいだね」

ヒメ「うん...凄かった...あれが理子さん...!」

一善「ん?これなんだろう」

 


2人の前には、かつての皆藤の愛剣が姿を表した!!!

 

 

 

 

 

 

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第448話 「提案」

 

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《第2支部 / 実働班ルーム》

 


後日、ヒメと一善は第2支部の実働班ルームでお茶をしていた。

 


一善「今って、ここにいるのは」

ヒメ「実働班は私達だけよ。皆パトロールに行ってるわ。あ、でも、唯さんと美波ちゃんは今特訓中かも」

一善「美波ちゃん、回復魔法のことで唯さんに聞きたいことあるって、言ってたしね」

ヒメ「それに、唯さんも”エレメント”のこと、美波ちゃんに教えて貰ってるって」

一善「ふーん」

 

 

 

回想──────

 

 

 

《研究班ルーム》

 


五百旗頭は、粟生屋、東海林、京金、麗美百目鬼を集めた。

 


五百旗頭「皆集まったわね」

京金「何の用ですか?五百旗頭さん」

東海林「...(何だろう...ドキドキするな...)」

 


五百旗頭「皆に、提案があるの」

五百旗頭は犬飼と安西に、ある物を持ってこさせた。

 


五百旗頭「これは、エレメント注射。これを打つことで、体にエレメントが流れる。もう皆、知っているわよね」

粟生屋「こんな感じなんだねぇ」

麗美「なぎちん、これをどうするの?」

五百旗頭「皆にこの力を使って欲しいの」

京金「...!」

東海林「...!」

 


五百旗頭「百目鬼君は承諾してくれたわ。そうよね」

百目鬼「まぁ...俺は、周りに比べて弱いからな」

五百旗頭「元第1支部の皆は打たないって。鬼屋敷さん直伝の魔具体術で戦いたいと」

麗美「ふーん」

 


京金「エレメント...理子さんが研究してたやつよね」

東海林「私打ちたい!今の子ってこれで戦うんですよねっ!!やりたいです!!」

 


五百旗頭は、5人にエレメントの色の説明をした。

 


五百旗頭「ちなみに、皆藤さん曰く、京金さんには緑、東海林さんには紫、粟生屋君には青がオススメよ」

東海林「紫か...」

京金「...」

粟生屋「ふわぁ...眠」

 


五百旗頭「ちなみに、百目鬼君はどうする?」

百目鬼「紫を希望する。”藤”だからな」

麗美「ダジャレかよ...」

五百旗頭「まぁでも、百目鬼君のトリッキーな能力とは一番相性がいいかも。でも」

百目鬼「あ」

五百旗頭「それぞれエレメントは残り1発ずつしかないわ。時間があれば作れるけど、結構大変な作業なのよね。だから」

百目鬼「あ、紫が良ければ譲りますよ、東海林唯さんだっけ?」

 


東海林「いや!いいよ!理子さんには悪いけど、私他の色にする!だからどめきん、紫打ちなよ!」

百目鬼「...(だからなんなんだその呼び方...)」

 


粟生屋「僕は打たないよ。今のままで十分強いし」

京金「イラッ」

粟生屋「それに、新しい力に翻弄されて、自分のペースを乱したくないからねぇ」

五百旗頭「あらそう。ちなみに皆藤さんは、あなたが打たない選択をする事も読んでたわ」

粟生屋「あはっ。どこまでもお見通しかい」

 


東海林「じゃあ私、青にしようかな!なんか綺麗だし!」

五百旗頭「いいんじゃない?」

京金「唯は遠距離向いてるしね」

東海林「あーでも黄色も剣術のパワーアップ出来ていいかも!どうしよう!」

京金「だったら緑は?どっちもカバー出来るんじゃない?」

東海林「え!ルカルカが緑がいいって!理子さんが!」

京金「いや、いいわよ。緑あげるわ」

東海林「まぁ、ルカルカ何打っても強そうだもんね!」

京金「そんなことはないけれど」

 

 

 

五百旗頭「じゃあ3人は決まりね。犬飼、安西、用意して」

安西「はい!犬飼くん緑持ってきて!」

犬飼「おう!新しいエレメント使いの誕生だな!」

 


安西と犬飼は、緑と紫の注射器を控え室に持っていった。テーブルには赤、青、黄の注射器が置かれている。

五百旗頭「残りの2人はどうする?」

 


京金「...」

麗美「...」

 


スッ...

 


2人は赤の注射器に手を重ねた。

 


京金「...は?!」

麗美「チッ」

 


一触即発──────!