SOREMA -それ、魔!- 42

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SOREMA -それ、魔!- 42

 

「君を前に」

 

────


第354話 「ドイル」

 

────


《魔導結界・古城》

 


ヒメ「...」

 


ヒメは、物陰から3人の様子を伺う。


一善「...」

百目鬼「...」

ドイル「ハァ...貴様ら...いい気になるなよ...?」


ビリィ!ビリィ!


ドイルは、着ていたスーツを破って脱ぎ捨てた。


一善「!!」

百目鬼「...!」

ヒメ「うわ...!」


ドイルの体には和彫りの刺青がびっしりと掘られていた。


ドイル「ここまで痛い思いをしたのはいつぶりかな...」

一善「...!」

百目鬼「...!」


ドイル「魔者狩り...?友の復讐...?バカバカしい。そんなくだらん事のために命をドブに捨てるなんて、馬鹿の極みだな」

百目鬼「てめぇ...!」

一善「...」

ドイル「人は裏切るぞ。いくら世のため人のために働こうとも、そんなもの吹けば飛ぶ程の善行だ。生産性がない。自分以外信頼出来る人間などいない」

百目鬼「...」

一善「...」

ドイル「後は金だな。金はいい。裏切らない。自分に牙を剥くことも無い。金さえあれば、人生どうにだってなる」

一善「...」

百目鬼「クズだな」

 


ドイル「実際、何が間違っているのかな?誰に恨まれようと、嫌われようと、そんなことは些末な事、結局力がある者が勝つのさ。それは金しかり...」

 


カチャッ

 


ドイルは、銃を構えた。

 


ドイル「武力(ちから)しかり」

 

バァン!

 

百目鬼「!!!」

百目鬼と一善目掛けて銃弾が放たれる!


ヒメ「一善!!!」


キィン!!

 


シュゥゥゥゥ...


ドイル「...!」

一善「...」ハァ...


一善は、”守護”で、百目鬼を銃弾から守る。


ドイル「...」

一善「わかった。もううんざりだ」


ギュゥゥゥゥゥ...!!!

 


ドイル「!!」

百目鬼「!!」

 


ヒメ「!!」

 


一善の手元に、つのキングが現れ、黄金の剣に変身する...!

 


一善「もう終わりにしよう...ドイル...!」

 

────


第355話 「信じたい」

 

────


《魔導結界・古城》


ドイル「終わりにする...俺を倒すか。俺に殺される覚悟を決めたとは思えない眼力だ」

一善「あぁ。そうだよ」

ドイル「聞くが魔者狩りの少年、お前達はなぜ、俺を倒すことを正当化できるのだ?お前達のやってる事は盗人と変わらない。俺が自由に生きる権利の強奪だ」

一善「...」

ドイル「お前たちが俺の魔導書(ちから)を奪う権利が、果たしてどこにあるのかな?」

百目鬼「くだらねぇ。油木、こんな奴に耳をかすな」

一善「あるよ」

ドイル「...」

百目鬼「...!」


一善「俺の友人をお前は傷つけた。これ以上の理由、いるか?」

百目鬼「...!」


ドイル「ふっ。またくだらん友情ごっこか」

一善「俺はお前と百目鬼(かれ)の間に何があったかは分からない。でも、俺が信じたいと思ったのは百目鬼だった」

百目鬼「油木...!」

ドイル「...?」


ヒメ「...」


ドイル「はっ。感情論も甚だしい。お前と俺は分かり合えない人種のようだな」

一善「感情で動いてこそ人の子。だから、別に間違ってると思わない」

ドイル「まぁいい。なら教えてやろう。お前らみたいなガキには、大人として現実を叩きつけてやらんとな」


ドイルは、棍棒を強く握った。


一善「百目鬼...少し離れて...」

百目鬼「油木...?」

一善「大丈夫だから」

百目鬼「...!」


ドイル「...」

一善「行くよ...つのキング」


シュゥゥゥゥゥゥゥ...


ドイル「うぉぉぉぉぉぉ!!」

一善「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

バッ!!!!

 

ギ   ィ    ン    !

 

カキンカキンカキンカキンカキン!!!!!


ドイルと一善は、目にも止まらぬ早さで攻撃を繰り出し合った!!!


ドイル「生意気なガキめ!!ぶっ殺してやる!!」キンキンキンキン!!

一善「絶対に退かない!!勝つのは俺たちだ!!」キンキンキンキン!!


バッ!!


ドイルは距離をとった!


一善「逃がさない!走!」


ビュンッ!!!


一善は、ドイルに迫る!!


ドイル「鼓動!!!!」


ドォン!!!!


ドイルは、棍棒で地面を思い切り殴り、地面を波打たせた!!!

 

一善 vs ドイル、最終決戦────!!

 

────


第356話 「君を前に」

 

────


《魔導結界・古城》


ドイル「鼓動!!」

一善「守護!!」


ギィン!!


百目鬼「油木!!!!」

一善「...(くっ...守りきれない...)」バリバリィ...!


バリィィィィィィン!!!!!!

 

一善「うわぁ!!」

ドイル「ふっ」


ヒメ「一善!!!!!」


バタッ...


一善は地面に吹き飛ばされる。


ドイル「(今、女の声がしたな。結界内にいるのか?)」

一善「(ヒメの声...?いや、気のせいか...?)」

百目鬼「油木!!!!」


一善「ハァ...」

百目鬼「大丈夫か!」

一善「なんとか...」

ドイル「虫の息だな」カチャッ


バァン!

一善「!!!」


ヒメ「一善!!!」


パッ!


ドイル「ちっ。また瞬間移動か」

百目鬼「ハァ...」

一善「ありがとう...」

百目鬼「油木、よく聞け...あいつの能力は、震動を起こすモンだが、恐らく威力の高い技は一方向にしか放てない。だから、俺の能力を利用して、後ろに回り込むんだ。そこでお前が攻撃をかませ」

一善「なるほど...!」

百目鬼「お前は真正面からあいつに向かって最後まで突き進め、途中俺がベクトルを変える。でも構うな」

一善「...!」


百目鬼「俺を信じて進め...!ただ、前へ!」

一善「百目鬼...!」


ドイル「ハァ...ちょこまかと鬱陶しいんだよ。さっさと死ねば楽になれるものを」

百目鬼「いつ言ったよ...楽になりてぇなんて...!」

一善「...!」


ドイル「まぁいい、これで終わりにしてやる」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...!!


百目鬼「来る...!」

一善「...!」


ドイル「奥義...震撼殲(しんかんせん)...!!!」


ドイルは体を捻って、右腕にマヂカラを貯め始めた...!!!


一善は、つのキングの剣を片手に、ドイルに向かった...!!


一善「...!(頼んだぞ...百目鬼!)」

百目鬼「...(少しでもタイミングがズレたら二人ともお陀仏だ...!)」


シュゥゥゥゥゥゥゥ...!!!


一善「うぉぉぉぉぉぉぉぉ...!!」

 


ドイル「くたばれぇぇぇぇ!!!!」

 


ドイルは体を逆に捻らせ、右腕に貯めたマヂカラを一善と百目鬼の方向へ向かって解き放つ...!!!

 

 

 

バァァァァァァァァァァン!!!!!!!

 

 

 

パッ!

 

一善は、百目鬼の能力で、ドイルの背中に回った!!


一善「観念しろぉぉぉ!!!!」

ドイル「!!!あの男...自分を犠牲に」


百目鬼「(ふっ...頼んだぜ...相棒...!なんてな)」

 

 

一善「大剣豪!!!!龍牙!!!!!」

 

 

 

 


ザ        ン        !!!!!!!!

 

 

 

 


ドイル「!!!!!!!」グハッ...!!!

 

 

 

 


そして、ドイルが前方に放った衝撃波が百目鬼を飲み込む!!!!!


百目鬼「...!!!!!」


ヒメ「!!!!!!」

 

 

 

バァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

────


第357話 「魔導書、宙を舞う」

 

────


《魔導結界・古城》


バァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!


ドイルは、一善の攻撃を受けて、地面に倒れた!


一善「ハァ...ハァ...やったか...?」


百目鬼「...」

百目鬼は、ドイルの攻撃を'正'面'か'らモロに受け、膝をついた。

 


百目鬼「あ...ありがと...よ...」バタンッ

 


百目鬼は頭から血を流し、倒れた。


一善「百目鬼!!!」

一善は百目鬼に駆け寄った。一善はしゃがみこむ。

 


一善「しっかりしろ!!大丈夫?!?!」

百目鬼「ハァ...ハァ...死ぬかもな...」

一善「バカ言うな!まだ助かる...!!今簡単に治療するから...!!」


一善は、美波に少し習った回復魔法”療”を使って百目鬼を治療する。

一善「...!(やっぱり俺じゃ技量が足りない...!でもやらないよりは...!)」

百目鬼「ハァ...染みるねぇ...」

 

ゴン!!!

 

一善「!!!」

百目鬼「!!!」


ドイル「ハァ...俺に背を向けるとは...めでたい奴らだ」

一善の背後には、血まみれのドイルがそびえ立っていた。


ドイル「...」

ドイルは冷たく狂った視線で一善らを見下ろす。

一善「...!」

ドイル「無様だな...」

一善「ハァ...(くそっ!さっきの攻撃とこの療でマヂカラをこれ以上調達出来ない...!)」

百目鬼「ハァ...油木...!お前だけでも...逃げろ...!」

一善「出来るわけないだろ...!」

百目鬼「...(油木だけでも転送出来たら...!)」


ドイルは、拳銃を構え、震える手で引き金を引いた。


ドイル「これで本当の終わりだ...あばよ!!」


一善「!!!!」

百目鬼「!!!!」

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 


シュッ!!!!

 


ドイル「?!?!」

ヒメ「!!!!!」

 


ドイルの懐に、ヒメが飛び込んできた!!!

ヒメは、ドイルの腹部に'青'い'手'袋をはめた右手を突っ込んだ!!!


一善「ヒメ!!!!」

百目鬼「!!!!!」


ヒメ「今なら...!!!!!」


ドイル「くっ...何をする...!!」

 

 

バッ...!!!!

 

ヒメは、手を思いっきり引き抜いた!!!


すると、ヒメの手から、1冊の魔導書がすっ飛んだ!!!


一善「?!?!?!あれは?!」

百目鬼「魔導書?!?!?!」


ヒメ「!!!!出来た!!!!」

ドイル「?!?!?!?!」

 

 

宙を舞う魔導書────!!

 

────


第358話 「悲惨な記憶」

 

────


《魔導結界・古城》


パサッ


魔導書は、地面に落ちた。


ヒメ「ハァ...ハァ...」

ドイル「あれは...俺の...魔導書...?」

一善「何が...起きたんだ...?」

百目鬼「...?」


ドイル「返せ...返せ!!!」


ドイルは、魔導書に手を伸ばす!!


すると、ヒメはドイルを締め上げ、地面に突っ伏した!!


ヒメ「もうあなたは魔導師じゃない!怖くないわ!」

ドイル「くっ...!!!!」

ヒメはドイルを締め上げた。

 

すると、結界が徐々に崩壊し、誰もいなくなったバー・トロピウスに一行は戻ってきた。

 

────

 

《ノベルのアジト》


白鶯「...何だと?」


クリスティ「シェイクスピア様...?どうかしたのかしら?」

白鶯「ドイルが...魔導書が、契りの指輪の縛りをすり抜けた...!」

クリスティ「え、え〜?!そ、それって、誰かに魔導書が奪われたってことかしら〜?!どうするの〜?!?!」

白鶯「...(魔裁組か...?まさかここまでとはな)」

 

────

 

《バー・トロピウス


ドイルは、柱に縛り付けられていた。


ドイル「おいお前ら...俺をどうするつもりだ...?」

一善「お前を拘束する。洗いざらい話してもらうぞ」

ヒメ「...」

ドイル「はっ。俺もスジモンの端くれなんでな。口は割らんぞ」

一善「...」

百目鬼「...」

ドイル「どんな目にあおうと、俺はお前たちに情報は渡さねぇ...!!!」

一善「...」

ヒメ「厄介ね...」


一善「百目鬼...言いたいことなんかある...」

百目鬼「言いたいこと...?」


ヒメ「少し、手を貸してもらえる...?」

ヒメが、地面に座る百目鬼に話しかける。


百目鬼「...?」

百目鬼は、しゃがんだヒメの手に触れる。

ヒメは、もう片方の手で、一善の手を握る。


一善「...」

ヒメは目を瞑る。

百目鬼「...何してるんだ...?」

一善も座って目を瞑る。


ヒメは、百目鬼の記憶の一部を一善と共有した。


ヒメ「そんな悲しいことがあったのね...」

一善「なるほどね...」


百目鬼「ん?何だよ」


一善「いい仲間に恵まれてたんだね。百目鬼は...」

百目鬼「...」


ヒメ「じゃあ、この人、連れて帰ろうか」

一善「そうだね」

ドイル「...」

ヒメ「まったくもう!一善ったら私に全部内緒でどっかいっちゃうんだから」

一善「ごめんごめん。てか、なんでつけてきてんの?笑」

ヒメ「心配だったんだもん。しかも的中してるし」

一善「あはは」

 


すると、百目鬼が険しい表情でヨロヨロと立ち上がった。


一善「?」

ヒメ「?」

 

────


第359話 「銃声」

 

────


《バー・トロピウス

 


一善「百目鬼?」

ヒメ「?」

 


ドイル「...?」


百目鬼は、縛られたドイルに向かって歩いた。


一善「百目鬼…?」


すると、百目鬼は、ポケットから1つの拳銃を取りだした!

 


一善「百目鬼?!」

ヒメ「何してるの?!」


百目鬼「おいお前...覚えてるか、これ、お前がくれたモンだよな」

ドイル「...!」

百目鬼「お前が俺の仲間を殺した銃さ...俺は今日までこれをずっと持ってた...」

ドイル「返しに来た...って訳でもなさそうだが?」

 

 

 

カチャッ

 

 

 

百目鬼は、ドイルの眉間に銃を突きつけた!


一善「!!!!」

ヒメ「!!!!」

ドイル「...!」


百目鬼「この5年、ようやくお前から解放されると思うと、嬉しいよ」

一善「百目鬼!!ダメだ!!」

ヒメ「やめて!!!」

ドイル「...」

一善は、銃を構える百目鬼の元へ駆け寄り、説得する。

 


今ここで、魔導書の力を放棄したドイルを殺害する事は、魔法協会の規律違反である。

 


一善「ダメだ百目鬼!もし百目鬼がここでこいつ殺しても、友達達は喜ばないと思うよ?いいの?」

ヒメも加わる。

ヒメ「憎いのはわかるけど!これじゃ、この人殺しのクズと同じになっちゃうよ?」

一善「生きてたって受けさせられる罰は沢山ある...!」

ヒメ「もう私たちは勝ったんだよ!報われたんだよ?」

一善「こいつにはちゃんと罰を受けさせる...だから」

百目鬼「...」

 


一善「こいつにはしっかり...地獄をみせよう」

 


ドイル「...」

ヒメ「百目鬼くん...!」

一善「百目鬼...!」

百目鬼「...」

 


一善「ね?」

 

 

 

刹那の静寂が流れた。


ドイル「ふっ...ふはは」

百目鬼「あ?」

ドイル「お前に私は殺せない...殺せないだろ!!!魔法も覚えたてみてぇなクソガキが!?チャカの使い方も分からねぇだろう!?!?無様だなぁ!!あはは」ガチャッ!

一善「黙れ!ゴミ野郎!」

百目鬼「!!!!!」

百目鬼は、ドイルの口に銃口を突っ込んだ!


一善「!!!」

ヒメ「百目鬼くん!!!」

百目鬼の眼は激しく血走っている。

百目鬼「お前がいなければ!!お前がいなければ!!!」

ドイル「カカカカ...!」

百目鬼は鋭い目でドイルを睨みつけた!

百目鬼「殺してやる...殺してやる!!!」

一善「百目鬼!!」

ヒメ「!!!」

 

ハァ...ハァ...

 

 

悪ぃ...

 

 

もう...わからん

 

 

 

 

 

 

バ          ァ          ン          !          !          !

 

 

 

 

────

 

山下公園

 


深夜の海を望んで、百目鬼は缶ビールを開ける。

 


プシュッ

 


その背中をヒメと一善はただただ見ていた。


百目鬼「ゴクゴク...ぷはっ。まっず」


海は静かに揺れる。


百目鬼「紅、浅葱、松葉、山吹、墨...俺もお前らと一緒に...酒を飲みかわしたかった...」


一善「...」

ヒメ「...」

 

────

 

第360話 「仲間」

 

────


山下公園


百目鬼「紅はビールだろうな...それも何杯も飲むタイプ。浅葱は赤ワインか?味にうるさそうだ。松葉はハイボールか?二日酔いでいいリリックを書いてそうだ。山吹はサワー飲みすぎて街で潰れてるのが目に浮かぶ...墨は下戸だろうな。顔を赤くしてカラオケ歌うの、見てみたかったな...」

 

冷たい夜風が百目鬼の頬を乾かした。

 

ヒメ「...」

一善「そういえば...ドイルから奪った魔導書は?」

ヒメ「呼んでおいた研究班の人達に預けたわ。また詳しく追憶調査をするつもりよ」

一善「あの時、何が起きたの?」

ヒメ「明日詳しく話す」

一善「わかった」

ヒメ「うん」

一善「ヒメ...」

ヒメ「何?一善」


一善「俺は百目鬼を責められない」

ヒメ「...」

一善「俺が百目鬼の立場だったら、間違いなく引き金を引いてた」

ヒメ「...」

一善「俺は止められなかった。百目鬼の手を汚したのは俺だ」

ヒメ「...」

一善「...」

ヒメ「それを言うなら私も...私も彼を止められなかった」

一善「...」

ヒメ「だから、1人で抱え込まないで。私も...だから」

一善「...ありがとう。ヒメ」

ヒメ「うん...」

一善「はぁ...正しいって、なんだろう。正義ってなんだろう」

ヒメ「答えは一生分からないわよ...だから」

一善「...」

 


ヒメ「その時正しいと思う方を、選び続けるしかないよ...きっと」

一善「...そうだね」

 


ヒメ「...」

一善「俺達も、あっち行こう」

ヒメ「...うん」


一善とヒメは、百目鬼の元へ向かった。


百目鬼「...色々世話になった。2人は兄妹なんだってな」

一善「うん。知ったのは割とここ数年だけど」

ヒメ「バラバラに暮らしてたから」

百目鬼「へぇ。そうなのか」

一善「百目鬼はこれからどうするの?」

百目鬼「そうだな...とりあえず魔導師は辞めだ。もうやる理由が無くなったからな」

一善「大丈夫なの?その...命狙われたりさ」

百目鬼「大丈夫だよ。”強い魔法使い”に守ってもらうから」

百目鬼は一善を見て、微笑みながら言った。

一善「ははっ。面倒臭いなぁ」

百目鬼「おい!市民を守るのは魔法使いの仕事だろ!」


一同笑う。


一善「そうだ、百目鬼。俺は百目鬼に言わないといけないことがある」

百目鬼「なんだい?」

 

 

ピュゥゥゥゥ...

 

 

生暖かい潮風が吹く。

 

百目鬼「...約束?」

 

 

一善「そう。思い出したんだよ。俺が魔法使いである理由をね」

百目鬼「それが、母親との約束?」

一善「うん。一日一善。俺は、俺が善いと思うことを、毎日、一つ一つ積み重ねていこうって。決めてたんだ」

百目鬼「...」

ヒメ「...」

一善「魔法使いになって、戦う理由を作るといいって、俺の尊敬してる魔法使いの人に教えてもらってね」

一善は夜の星を見上げた。

ヒメ「...」

 


一善「俺は、この約束を、戦う理由にしたんだ」

百目鬼「ほう...」

一善「でも、当たり前のように魔法使いである日々を過ごす内に、忘れてしまった」

百目鬼「...」

一善「倒れている時、俺の中の相棒に諭された。でもやっぱり悔しい。悔しい...」

ヒメ「一善...」

一善「これが本当の答えだよ。百目鬼

百目鬼「...!」

一善「前に聞いたよね、俺に。魔法使いをしている理由」

百目鬼「あぁ」

一善「遅くなったけど、こんな感じ」

ヒメ「...」

 


百目鬼「ま、いいんじゃね?」

 


一善「...!」

ヒメ「...!」

 


百目鬼「今の君は、約束を'破'ら'な'か'っ'た君の努力の賜物だろう?ならいいじゃん」

一善「!!」

ヒメ「!!」


百目鬼「やっぱり、君とは仲良く出来そうだ。一善クン」

一善「...!」

ヒメ「百目鬼くん...!」

百目鬼「慣れたら、藤クンって呼んでくれてもいいんだよ?」

一善「あー。徐々にね」

百目鬼「誰が奇妙な冒険やねん」

一善「言ってないわ」

ヒメ「笑笑」

 

 

中華街編 完

SOREMA -それ、魔!- 43へ続く。