其魔外伝 追憶の華 序

其魔外伝 追憶の華 序

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追憶の華。

 


それは、虹色に輝く、道端の一輪の花。

 


あるいは、視界一面に咲き誇る、虹色の花。

 


人の想いと想いが交差する時、古の記憶が呼び起こされる──────

 

 

 

時を遡って、2014年。


《第一支部 / 部員寮》


氷室季彩は、深夜、暗くなった第一支部の廊下を歩く。

コツ コツ...

氷室「(遅くなってしまった。明日は任務だし、早く寝ないとな)」


すると、奥の部屋から漏れた仄明るい光が見える。


氷室「(...あの部屋は?)」


氷室が部屋を覗くと、理子が机に向かっていた。


氷室「何してるの?」

理子「!」ビクッ

理子は、咄嗟の声掛けに驚いた。

理子「季彩さん!驚かさないでくださいよ!」

氷室「悪かった悪かった。で、何してんの?こんな遅くまで」


理子「今日久々に魔法協会の図書館に行ったら、面白い本を見つけて」

理子の机には、1冊の図鑑が置いてあった。


氷室「ほう」

理子「追憶の華って、聞いた事ありますか?」

氷室「ない」

理子「これが凄い興味深いんですよ!」

氷室は、理子が開きかけにしていた図鑑を覗き込む。

氷室「はぁ。相変わらず勤勉ね」

理子「興味がでるとつい...」


氷室は、理子に背中を向ける。

氷室「もう遅いんだから、ほどほどにしなね」

理子「ありがとうございます」

氷室「じゃあ私は寝るわ。おやすみ」

理子「おやすみなさい」


ガチャッ

 

────

 

其魔外伝 追憶の華

 

────

 

翌日。


《第一支部 / 大会議室》

理子は、ルカと千巣を呼び出す。


大きな円卓の隅っこには封筒と遺体の写真が並んでいる。


ルカ「なんですか?この写真」

千巣「...」

理子「何日か前に届いたの。見ればわかると思うけど、これは全て、魔法によって亡くなった方の写真よ。皆マヂカラ痕が残ってる」

ルカ「それで?よくあることではないですか。こんな写真わざわざ見せて、なんの意味が?」

理子「この写真の送り主、どうやら北海道に居るみたいなの?」

ルカ「は?」

千巣「?」


理子は同封されていた手紙を差し出す。そして、机に散らばった写真を重ねながら話を続ける。


理子「送り主はMという人物で、彼が言うには、彼は今も北海道に住んでいるそうよ。そしてこれらの写真も全て、彼らが北海道で撮ったらしい」

ルカ「つまり」

千巣「魔者が北海道にいるとな?」

理子「魔者、もしくは魔導師が、北海道にいるかもしれない。でも、このMという人物に関しても、敵か味方かは分からない。そこでね」

ルカ「はい」


理子「3人で、北海道に調査に行きます」

ルカ「なっ」

千巣「ほう」

理子「今から」

千巣「今から?」

ルカ「はぁ?!」


理子「飛行機は手配してもらったので、宿泊セットだけ用意よろしく。1時間後には飛び立つので!」

ルカ「ちょ、ちょっと急すぎませんか?それに7月の北海道って気温どんな感じなんですか?」

千巣「割と暖かいみたいだぞ」(スマホを片手に)

ルカ「調べんのはやっ!」


千巣「でも、なんで俺とこいつ?」

理子「!」

理子は少し動揺する。

ルカ「(こいつだと...!!)」

理子「き、気になることがあってね。これ」


理子は手に持っていた写真から一つを再び机に置く。


理子「これ、白鶯君の残すマヂカラ痕に似てるのよ」

ルカ「...!ってことは?白鶯が?」

千巣「単純に似てるだけでは?」

理子「結論から言うと白鶯君はシロ。北海道への渡航履歴が無いわ。ま、写真が本当に北海道で撮られたものならだけど」


千巣「じゃあやはり、無関係では?」

理子「でも、龍の書の鱗状のマヂカラ痕は特殊だから、他のものとは考えられない。だから今回は念の為白鶯君はお留守番。粟生屋君にお目付けしてもらって、唯と白鶯君は仲良くお留守番って訳」


ルカ「...?」

千巣「...?」

理子「...」


ルカ「なるほど(よく分からん)」

千巣「ほう(よく分からん)」

理子「(”お前ら”に気使ったんだよ!分かれや!)」

 

《北海道 / 小樽運河


数週間前──────


建物の隙間の路地裏で、ピンク頭の男が、一人の男性を追い込んでいる。

ピンク頭の男は、異様な雰囲気を放っている。


男性「わわ...やめてくれ...なにをする...」

ピンク「何もしないさ...僕はただ君とお友達になりたいだけ。私はイムカ。君を導いてあげる」

男性「友達...?わわわ...わかった...なんでもする...欲しいのは金か...?」

イムカ「違うね。僕は何も要らない。君がお友達になってくれさえすれば」

男性「わかった...!なる、なるよ...!だから...命だけは!」

イムカ「ははっ。よく言った」


イムカは、男性の胸に手を当てた。


ドクン!


イムカ「君に力を与えよう。そうしたら、僕とお友達になれるから」

男性「あわわわわ...!うわぁぁぁギリャァァァァ...!」


男性は、魔者になった。


魔者「グゥゥゥゥ...!」

イムカ「あーあ。魔者になっちゃった。友達にはなれなかったね。はい。おしまい。もういっていいよ」

イムカは、魔者を放って去ろうとする。


すると、魔者が我を忘れてイムカの背中に襲いかかる。

すると、イムカは、鎌で魔者を一刀両断した!


グシャッ!!!


イムカ「想像以上にお馬鹿さんだったみたいね」


地面に、魔者の残骸がぐしゃりと音を立てて落ちる。そして、消える。


イムカ「馬鹿と弱者には手を出すな。はぁ。またやっちゃったなぁ。失念失念」


イムカはその場を去る。

 


 

 

《北海道 / 新千歳空港


理子らは、北海道に到着。

空港で合流する筈の、魔法協会の案内役を1時間以上待っている。


ルカ「おっそい!どこで何してんのよ!」

千巣「まぁまぁ。来てくれないと、目的地にいけないわけだし」

理子「...」


3人は空港内で周りを見渡す。


理子「本当ならここで案内の人と合流してMの言う観測スポット(遺体の写真が取られた場所)に行かないとなんだけどなぁ。連絡もつかないし。どうしたことか」

理子は2台のスマホを見る。

理子「着いたらこっちの魔法関係者専用のスマホに電話がかかってくる筈なんだけどなぁ」


千巣「ちなみに、調査する場所って分かってるんですか?」

理子「なんとなくね」


理子は北海道の地図を広げる。いくつか理子によって赤い印が付けられている。

理子「Mの言う通りなら、恐らくこの辺が怪しいって」

千巣「成程。小樽の方から富良野の方まで。手広いな」

理子「でも、魔導師だとしてもそんなに山を超えての右往左往は出来ないはず。それに東に行くにつれ写真が新しくなっている」

千巣「じゃあ、この、富良野に行って見れば良いのでは?最後にMが現れたっぽいのがここなら」

理子「論理的に考えるならそうね」


ルカ「わかったわ。もうタクってそこ行きましょうよ。これ以上待ってても埒が明かないわよ」

千巣「...まぁ、無くはないな」

理子「そうする?」


プルプル   プルプル


すると、理子の魔法関係者専用スマホの元に電話がかかってくる。


理子「ん?誰からだ?」

千巣「案内の人じゃ?」

理子「そうかも」


理子は電話に出る。


理子「もしもし。魔裁組第一支部皆藤です」


ガチャッ。


電話はワン切りされた。


理子「え?」

千巣「?切られた?」

理子「うん。非通知だからこっちからかけられない」

千巣「なんだったんだ?」


ルカは痺れを切らす。

ルカ「もうタクシー乗りましょ!!とっとといくわよ!富良野富良野!!」プンスカ!

千巣「まぁそうだな」

理子「流石に1時間待ってるし、もう自分達で行こっか」


3人は話しながら、タクシー乗り場に向かう。

その時、横を向いて歩いていた理子に一人の青年がぶつかる。


理子「うわっ!!」

青年「あっ!!」


ビシャッ!!!


なんと、青年が持っていたコーヒーが、理子の靴にかかってしまった!


青年「あっ!すみません!!!」

理子「ふわぁ!」


辺りにはコーヒーの匂いがほのかに香る。

ルカ「うわ!理子さん大丈夫ですか?」

千巣「派手にやったな」

青年「すみません!本当にすみません!」

理子「いえ、こちらが前を見ていなかったのが悪いので、全然気にしないでください」

千巣「(あんなに強い理子さんでも、こういうドジするんだな)」

ルカは理子の靴をティッシュで拭いている。


青年「すみません。なんとお詫びしたらよいか...」

理子「いやほんとに気にしないでください。こちらこそ、コーヒーを無駄にしてしまってすみません」

青年「そんなことはいいんです...何かお詫びが出来ればと思うのですが...」

理子「いや本当に...」


青年「ちなみに...皆さんは観光客ですか?」

ルカ「違うわ。私たちはまほ、」

ルカが本当のことを言おうとすると、千巣が慌てて口封じをする。

千巣「(ばかか!魔法のことは一般人には口にしないのがお決まりだろ!)」


理子が青年に答える。

理子「観光客です!」

青年「そうなんですね。ちなみにどちらに向かわれるんですか?」

理子「富良野に!」

青年「富良野!それは偶然!」

理子「?」

青年「僕もこれから富良野に行くんですよ!よろしかったら、一緒にどうですか?」

千巣「な?」

ルカ「ぬ?」

理子「一緒にって...?」


青年「レンタカーとか借りられてます?そうならそれでいいのですが、タクシーとかで移動する場合、かなりかかりますよ?」

理子「は、はぁ...」

青年「コーヒーのお詫びと言ってはなんですが、僕の車で、富良野まで乗っていきませんか?」

理子「(なんと願ったり叶ったりな!)」

千巣「いいんですか?」

青年「はい。お詫びさせてください!」

ルカ「決まりね、案内しなさい」

理子「ちょっとルカ!初対面の人にエラソー過ぎ!」

千巣「じゃあ、お言葉に甘えて...」


青年「では皆さんこちらへどうぞ!車まで案内します」


こうして、青年の車で富良野へ向かうこととなった。

 

────

 

その頃、空港では。

 

スーツ姿の魔法協会の案内人が倉庫の裏で”鎖のようなもの”に繋がれ、監禁されていた。


案内人「んー!んー!」ガシャンガシャン!

 


 


ブーーーン(エンジンの音)

 

《東京 / 第一支部

 

唯と粟生屋は部屋でマリカをしている。


唯「また負けたーあおやんうますぎー!」

粟生屋「君はもう少し勝つ努力したまえ。レインボーロードでパワフルキノコを使うのは自殺行為だよ」

唯「えーそーなのー!?先言ってよー!」

粟生屋「もしかして、マリカやったことない?」

唯「そんなことないもん!次あそこやろ!モーモーカントリー!」

粟生屋「いや疲れた。一旦休憩」


粟生屋は席を立つ。


唯「てかさー。北海道いいなー私も行きたいよ」

粟生屋「行ってらっしゃい」

唯「え!いいの?」

粟生屋「冗談だ」

唯「わかった!行ってくる!」

粟生屋「話聞いてたかい?」

唯「じゃあさ、あおやんも行こうよ!」

粟生屋「いや、僕はここで白鶯見てないとだし(とは言われたが、僕がやる必要あるか...?)」

唯「白鶯君も一緒に行けばいいよ!声掛けてくるね!」

ドタバタ!

粟生屋「ちょ!待て!」


唯は走って行ってしまった。そして、すぐに帰ってきた。


唯「行くわけないって...」ションボリ

粟生屋「そりゃそうだろ。アイツは」


すると、そこへ鬼屋敷が現れる。


鬼屋敷「あら、絵になる2人ねぇ」

唯「あ!鬼屋敷さん!」

粟生屋「どうも」

鬼屋敷「白鶯ちゃんいる?」

唯「白鶯君なら向こうにいますけど...」

鬼屋敷「ちょっと力仕事を頼みたくてね、今日1日借りてもいいかしらねぇ」

唯「え、まぁ、いいの、かな?」

粟生屋「どーぞどーぞ」

鬼屋敷「ありがとう♡」


鬼屋敷は白鶯の元へ行った。すると鬼屋敷の馬鹿でかい声が聞こえる。


鬼屋敷「白鶯ちゃん借りてくからああぁぁ〜」


鬼屋敷は白鶯を連れて出ていった。


唯「行っちゃった」

粟生屋「アイツ。鬼屋敷さんにだけはほいほい付いてくよね」

唯「流石に逆らえないでしょ。あの人には」

粟生屋「まぁね」


唯「!」


すると唯は、急にスマホをいじり出す。

粟生屋「(?)」

唯は素早い指裁きでスマホをタップする。


シュパパパパ...


粟生屋「ほら、マリカやるんでしょ?次どうする?4レース?8レース?」


すると、唯はスマホの画面を粟生屋に見せる。


唯「予約完了!いざ、新千歳空港!」

粟生屋「がち?」

 

────

 

《北海道 / 車》


車は富良野へ向かっている。かれこれ1時間半走行中。


青年は名を廻桜志郎(めぐりおうしろう)と言った。歳は理子とタメ。18歳。


廻「この間誕生日を迎えたばっかりで、運転もあまり慣れてなくて...」

ルカ「よく人を乗せようと思ったわね」

理子「こら!」


千巣「ずっと北海道に住んでいるんですか?」

廻「そうだよ。後、堅苦しいから君も敬語じゃなくていいよ」

ルカ「あとどれ位で着くのよ」

廻の後ろに座るルカが言う。


廻「30分くらいかな」

ルカ「遅い。もっと早く走れないの?若葉だからってひよってんじゃないわよ」

理子「こらルカ!運転してくれてるんだから、感謝しなさい!」

助手席の理子が後ろを振り返って言う。


理子「ほんと、ごめんね」

廻「いいよいいよ。こちらこそ、コーヒーの件謝らないとだし」

理子「全然いいよその事は。もう後ろの人達は気にしないで!」

千巣「俺も!?」

廻「あは。あははは」


理子「廻君はさ、富良野に何しに行くの?」

廻「ちょっと、花を見に行こうかなって」

理子「確かに、富良野の花畑人気だよね。今見どきだし」

廻「富良野には昔、思い出があってね。花を見ると、時々思い出すんだ」

理子「そうなんだ...」


すると、車はジェットコースターの様な道にさしかかる。


千巣「すげー。マジでジェットコースターみたいじゃん」

ルカはスマホの画面下を長押ししながらカメラを窓の外に向ける。

理子「開けてていい景色だね」

廻「そうだね」


すると、廻が車を止める。


理子「ん?」

ルカ「何?熊出た?」

千巣「いやまさか。どうした?」


その時だった。ほぼ同時に、ルカが窓の外の異変に気がついた。


遠くで魔者が現れたのだ。


ルカ「...!」

車の左座席に座る理子と千巣からは見えていない。

ルカは、千巣に耳打ちする。理子は2人を振り返る。

千巣「...!?」

理子「2人とも?どした?」

千巣「※壱です」

※魔裁組では、一般人がその場にいる時に魔者が現れると、「壱」と言う隠語を使って魔者の存在を共有する。

理子「!」

千巣「恐らく低級ですが、※場所柄を考えて2人で行ってきます」

※標高の高い場所や、水辺に近い場所に出る魔者には注意を払う。それを克服出来る程の力があると判断する為。


ルカ「ごめん。ちょっと写真撮ってくるわ」

廻「え、あ、うん!」

千巣とルカは車を降り、広大な草原に降り立つ。


富良野 / 西11線(ジェットコースターの路)》


理子は、廻を説得する。

廻「あの二人、降りちゃったけど大丈夫かな?」

理子「ごめんね!なんか写真撮りたいみたいで!ほら、普段都会に住んでるから、美味しい空気も吸いたいだろうし...ね!ごめん!」


千巣とルカは、魔者と対峙する。


千巣「おいお前なんでこんな所にいるんだ?」

ルカ「Mが言ってたのは本当みたいね」

魔者「ギリヤァァァァァ!!!」

千巣「まあでも、弱そうだな」


すると、魔者は炎を辺りに発生させ、千巣らに襲いかかる!

千巣「火?!」

ボワァァァァ!

2人は攻撃を避ける!


ルカ「喰らいなさい!!!」

ルカは銛をぶん投げる。


グサッ!!!!


魔者は滅んだ。


ルカ「しょぼいわね。田舎は魔者のレベルも低いのかしら」

千巣「田舎に居ないのが魔者なんだけどな。あと色々と失礼だぞ」

ルカは服についた草を払いながら、千巣と共に車に向かって歩く。


千巣「...なぁ」

ルカ「?」

千巣「色々おかしいと思わないか?」

ルカ「何が?」

千巣「今の魔者、火を吹いたよな」

ルカ「それが?」

千巣「普通の魔者なら火は吹かない。火を吹くのは火の魔導書の魔者だけだ」

ルカ「そうとも限らないんじゃない?白鶯とか、龍の魔導書だし、火吹きそうじゃん(知らんけど)」


千巣「だとしてもだ。魔導書の魔者でも無い低級の魔者があそこまで火を器用に扱うなんてありえない」

ルカ「じゃあ火の魔導書の魔者だったんじゃない?(鼻ほじ)」

千巣「だとしたら魔導書がドロップされるはずだ。それに火の魔導書なら、魔導書第一章 炎の書はもう魔裁組の保管庫に保管されている。同じ能力の魔導書は原則2つない」

ルカ「...」


千巣「加えてだ。写真で見た白鶯がつける痕と同じ痕のついた遺体...色々と重複してるものが多すぎる」

ルカ「つまり何よ?」


千巣「同じ魔導書が、2つ以上存在してることはないか?」


ルカ「...流石にないっしょ。だって、それがそうなら、さっきの魔者だって、魔導書吐き出さないとおかしいじゃない」

千巣「...たしかに」


2人は車に向かって歩き続ける。


千巣「(そしておかしな点はもう1つ...”彼”だ。何も無いところで急に車を止めた。まるで”魔者が見えたかのように”...ま、たまたまかもしれんが...)」


2人は車に戻る。


理子「あ、帰ってきた!」

廻「いい写真取れた?」

千巣「悪かった。撮れたよ。バッチリな」

ルカ「車出していいわよ」

廻「それじゃ、行くよ〜」


廻は車を走らせる。


理子「(北海道に魔者がいるなんて...どうして?ということは...)」

千巣「(魔者が自然発生するには魔導書の存在が必要不可欠)」

ルカ「(さっきの魔者に写真の人たちを殺れる程の器用さはない)」

理子「(この大自然の中で魔者が暴れ回れるのも常識的に考えて線が薄い)」

千巣「(全てのことから導き出される結論はほぼ一つ...)」

 

北海道には、強力な魔導師がいる...!

 

────

 

イムカは、一行の車が去った後、草原に現れる。


イムカ「殺られちゃった」

イムカは走っていく車を遠目に見る。


イムカ「お友達になりたいな♡」

 

────


そして、一行は花畑に到着。


廻「一応富良野についたけど、観光するなら、少し案内しようか?」

理子「観光...そうねぇ...」

ルカ「そんな時間あるかしら?」

千巣「まぁでもいいんじゃね?(偵察にもなるし、彼についても気になるしな)」

理子「じゃあ少し、案内してもらっていい?」

廻「わかった!じゃあ、いこう!花畑!」

 

4人は、カラフルな花畑を散策する。

花の独特の香りに包まれながら、一行は足を進める。


理子「本当に綺麗...!」

廻「これが今が最盛期のラベンダー。綺麗だよね。この季節はこれを見に沢山の人がここを訪れるんだ」

ルカ「これは綺麗ね。納得だわ」

千巣「花に感動できる感性はあるんだな」

ルカ「あるわ。なんだと思ってるの」

千巣「はいはい」

ルカ「そういうアンタこそ、どーせなんとも思ってないんでしょ、目が萎れてるわよ」

千巣「いや?心が洗われるような心地だぞ?」

ルカ「なーにいってるかわかんね」

千巣「おい」ピキッ


2人から離れたいた場所にいる廻に理子は話しかける。

理子「廻君はよくここに来るの?」

廻「何回か来たことはあるよ。何回みても綺麗だし」

理子「そうだよね。やっぱり、自然っていいな。心を軽くしてくれる」

廻「そうだね」

理子「そう言えばさ、さっき言ってた、花畑の思い出って、どんな思い出なの?」

廻「え、あ、あぁ、大したことの無い話だよ。子供の頃を思い出すって言うかさ」

理子「?」


廻「花の色、香り、この景色全て。ここに来ると、昔の思い出がフラッシュバックする様に思い出されるんだ。花には、不思議な力があると思うんだ」

すると理子は、ふと、追憶の華のことが頭によぎる。

理子「そうかもね。きっとそうだよ」

廻「うん」

理子「きっと、素敵な思い出なんだろうな」

廻「...」

 


その時!!

 

 

ボワァァァァァン!!!!!

 

 

謎の衝撃波が4人を襲う!

”4人”はその衝撃波を間一髪で避ける!!


ルカ「何よ?!」

理子「また敵襲...?!」


そこに現れたのは、謎のスキンヘッドの男。


スキン「イムカの遊び道具壊しちゃったのお前らだな」

ルカ「は?何言ってんのよ。日本語話しなさいよ」

スキン「分かっちゃってねぇな。さっきのバケモンだよ。あれは俺っち達の大事なオモチャなんだよ!」

ルカ「あらそう。ごめんなさい。出来が悪すぎてね」

スキン「ふざけちゃってんな。殺しちゃおうかな。それか、お前を俺のオモチャにしちゃおうか?」

ルカ「きっしょ」

理子「あなた、魔導師ね。聞きたいことが沢山あるから、観念しなさい」

スキン「やれるもんならやっちゃってみな」


千巣「(なるほどな。魔導師の集団が巣食ってるって訳か。さっきの魔者もこいつらの仕業って訳だ。色々見えてきた。それに...)」


千巣は、廻に目をやる。


千巣「(あいつ、攻撃を避けた...!魔法を感知できるってことだ。それにあの反応速度...これでハッキリした。あの男、廻桜志郎は、普通の人間じゃない...!)」

 


 


富良野 / 花畑》


ルカと千巣は、上手く人を誘導し、捌けさせる。


理子「廻君。この人危ないから、逃げて」

廻「...」

理子「廻君?」


廻「理子さん。ごめん」

理子「?」


すると、理子の目にも追えないスピードで、廻はスキンへ向かっていく!

理子「危ない!その人はただのチンピラじゃ!」


すると、廻は手から鎖のような物を出して、スキンに攻撃した!!

 


バシュッ!!!!

 


理子「!!」


スキン「ぐわぁぁぁ!!」

スキンは、飛ばされる。

廻は、スキンを鎖で掴んで、花畑から遠くの地面に叩きつける。

廻「土足で花畑に踏み入るな」

スキン「痛てぇなぁ...お前も魔法を使えちゃうのか...!」


そこへ、千巣とルカが戻ってくる。

ルカ「は?あの人魔法使いなの?」

千巣「...!」


スキンは立ち上がる。

スキン「でも俺も魔法なら使えちゃうんだよなだぁ!!!」


スキンが手を叩くと、”音の衝撃波”が4人を襲う!!


千巣「(音?!)」

ルカ「(これって...?!)」

スキン「爆音爆音!!俺のシャウトを聴いちゃいな!!」ドォン!ドォン!

理子「この能力って!」

千巣「麗美の能力です!空見家の長女の!」

ルカ「何で?!こいつが同じ能力持ってんのよ?!」


理子「(どうなってんの!色々)」ヒュンッ!

音の攻撃を切り裂いて理子がスキンに斬り掛かる!


理子「天叢雲!!!!」


ジャキーーーーン!


スキン「ぐぇぇぇ!痛てぇ!!!」


理子「魔鳥獣戯画 烏!!!」

理子は能力で描いた多数のカラスをスキンにぶつける!!

スキン「ぐわぁぁぁぁ!!」


そこへ廻が鎖をグルグルと巻き付け、電気ショックを食らわせる!

廻「”蜷局縛・迅(とぐろしばり・じん)”!!!」


ビリビリビリビリィ!!!!


スキン「ギャッハーーーーーー!」


スキンは失神した。


廻「ハァ...ハァ...」


ルカ「あぁぁ!なんか、頭がおかしくなりそう。こいつ(スキン)は誰!!で、アンタ(廻)は何!!」

千巣「ま、このハゲは目が覚めたらきっちり聞かせてもらうからいいとして、」

千巣は、廻を見る。


千巣「色々説明してもらおうかな。廻桜志郎君」

廻「...」


理子「君は...何者なの?」

廻「僕は...」


すると、遠くから声が聞こえる。


???「おーーーーーーーい!」

ルカ「?!この声って?!」ピン!

 

唯「おーーーーーーーーい!!みんなーーーー!!!」

ルカ「唯?!なんでここに?!」

後ろからも粟生屋やってくる

理子「唯?粟生屋君?!」

 

追憶の華 破に続く。