SOREMA -それ、魔!- 39
SOREMA -それ、魔!- 39
「カチコミ」
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第330話 「3人の協力者」
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《莉茉の家》
1年前から恒例となった第2支部女子お泊まり会。
プシュ!
莉茉「乾杯!」
はるか「!」
美波「!」
3人で乾杯する。
はるか「そういえば、ヒメは?」
莉茉「五百旗頭さんの所にいるって。終わったら来るらしいよ」
美波「大変だね」
はるか「なんか、完成したんだっけ?なぎちんの研究」
美波「少し聞いたかも」
莉茉「まだ未完成らしいけど、試作品は出来たらしいね!」
はるか「そっか!さすがなぎちんだな!我らが天才科学者!」
美波「だね!」
莉茉「それで…」
はるか「麗美は…来ないか」
莉茉「うん。今日は来ないって」
美波「…そうだよね」
はるか「麗美は一番あの人と長い付き合いだったしな」
莉茉「…」
美波「大丈夫かな…麗美ちゃん」
はるか「…」
莉茉「ほら、みんな暗い顔しないしない!」
はるか「!」
美波「!」
莉茉「麗美は私たち以上に辛いと思う。その分今は、私たちが明るく前を向こう!麗美が立ち直った時に、一緒に戦えるように!」
はるか「…そうだな!」
美波「うん!」
莉茉「よし!今日は飲むぞー!!たまには息抜きしないと、心が潰れちゃうぞー!!」
はるか「おう!!!」
美波「(違う意味で潰れそう…)」
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《渋谷 / スクランブル交差点》
通行人らは、大型ビジョンのニュースを指さす。
通行人A「おい、アレ、見ろよ!」
通行人B「ん、なんだ?」
【速報】いろは坂46 堆ひえり 無期限活動休止へ 復帰の目処は未定
通行人B「え!!あくえりまじかよ!!!」
通行人A「俺割とすきだったんだけどなぁ」
通行人B「引退すんのかな?」
通行人A「てかなんで活休するんだ?病気?」
通行人B「なんかスキャンダル撮られたんじゃね?」
通行人A「どうだろうな」
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《廃校》
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幸二「こんな所に呼び出して、なんだ?」
三太郎「悪いな。俺さ」
幸二「…?」
三太郎「もっと強くなりたい」
幸二「…!」
三太郎「俺、今のままじゃ、スーパーヒーローどころか、ただのヒーローにもなれてない。このままじゃダメなんだ…!」
幸二「…それで?」
三太郎「俺に特訓をつけてくれ…!!」
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《魔法協会 / 善能寺の部屋》
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善能寺「まさか、千巣君が殉職するなんて」
ジャ「今でも受け入れられません…」
善能寺「現在保管中の魔導書に関しては、各地に散らばる魔法協会の隠し金庫に移したわ。第1支部はもう畳む予定よ」
ジャ「残った3名の実働班メンバーと職員については?」
善能寺「職員は一部を除いて第2支部に移すわ。実働班の3人は、所属は第2支部になるけど、まだあそこに住んでいたいそうだから、そのままあそこに住まわせてあげることにしたわ」
ジャ「なるほど。わかりました」
善能寺「ノベルについて、こちらでも調べている。白鶯君が絡んでるらしいわね」
ジャ「白鶯はノベルの中心人物であると思われます。そして、魔導書を全て手中に収める為に暗躍しています」
善能寺「なるほど────」
ジャ「恐らくですが、ノベルは今戦力を大きく欠いている状態です。ノベルの意志に呼応できる履術者や魔者を見つけるのは至難の業ですから。ですが、場が整えば、白鶯らはこちらに仕掛けてくると思われます」
善能寺「そうね」
ジャ「戦力を欠いているのは我々も同じ。今のままでは戦力に不安が残ります。そこで提案なのですが…」
善能寺「…?」
ジャ「協力者を集めませんか?」
善能寺「…!というと?」
ジャ「”あの人達”に、協力を頼みたい…!」
善能寺「!!」
ジャ「”3人”とも、行方は分かってますよね」
善能寺「まぁ…でも簡単には乗ってこないでしょうね」
ジャ「説得します。どうしても今は、彼らの力が必要です」
善能寺「そうね。わかったわ。私も1人当たってみるわ。後の2人はそっちで頼めるかしら」
ジャ「もちろんです!ありがとうございます!」
善能寺「その3人以外にも、他にあてがあったら打診してみるわ」
ジャ「よろしくお願い致します…!」
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第331話 「私が」
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《第2支部 / 研究室》
五百旗頭は、犬飼、安西、そしてヒメを呼びだした。
五百旗頭「悪かったわね。今日はお泊まりじゃないの?」
ヒメ「大丈夫です。終わったら向かいます。急いでないですし」
五百旗頭「そう。あなたには協力してもらったから、しっかり話しておきたくてね」
ヒメ「…?」
五百旗頭「ほとんど完成したわ。魔導書を人から取り出すトリガーが」
ヒメ「…!本当ですか!」
五百旗頭「ええ。本当は、”あの子”にも完成品を見てあげたかったけれど…」
ヒメ「…」
五百旗頭「まぁいいわ。犬飼、ちょっと持ってきて」
犬飼「はい!」
犬飼は、青い手袋の様なものを持ってきた。
ヒメ「これが…?」
五百旗頭「そう。これは、人から生きたまま魔導書を取り出すことが出来るグローブ…名付けて…」
ヒメ「!」
犬飼「!」
安西「!」
五百旗頭「魔導書ゲッター!」ドン!!
安西「(ぜ、絶妙にダサい...!)」
ヒメ「...は、はぁ」
犬飼「でもこれは、大きな進歩だ!これを履術者が着けることによって、魔導書を引き寄せることが出来る!」
ヒメ「どういう原理なんですか?」
安西「このグローブは、魔導書のページの切れ端を混ぜて作ってあるの。当然魔導書由来の強いマヂカラが込められているわ。それを履術者が使うと、その手には魔導書の力が2つ集まる。それによって、魔導書をこちらに引っ張り出すことが出来るってわけ!」
五百旗頭「白鶯君は2つの書の履術者なの。魔導書の力は引き寄せ合うわよね。だから彼は、その強い引力を利用して、魔導書を奪ったんだわ。多分ね」
ヒメ「なるほど...!」
五百旗頭「でも履術者を増やすことは禁じられているし、そもそも2つの書を履術するなんて、リスクが大きすぎる。普通の人は死んでしまう。だから、少しでも安全に引力を高められるように、このグローブ形式にしたの」
犬飼「理論上は、これで完成だ。後は...」
ヒメ「実証出来ればいい...そうですね?」
五百旗頭「そういうことよ」
ヒメ「私...やってもいいですか?」
犬飼「ヒメちゃん?」
安西「え?」
五百旗頭「でも、あなた戦闘経験ないわよね」
ヒメ「ありません...でも、最低限の護身術は善能寺さんの部下の方に教えて貰っています。それに...」
五百旗頭「?」
ヒメ「そのグローブ、まだ安全とは言いきれない...そうですよね?」
犬飼「...!」
安西「...!」
五百旗頭「...?どうしてそう思うの?」
ヒメ「勘です。最初から安全が保証されてるものなんて、あんまりなくないですか?」
犬飼「ま、まぁ確かに...危険とまではいかないが...100%安全とは言いきれないな...」
ヒメ「だったら、私が実験台になります。最後まで協力させてください」
五百旗頭「あなた...」
安西「...!」
ヒメ「万が一の時、大事な戦力達をこれ以上失えませんから」
五百旗頭「...!」
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犬飼「良かったんですか?彼女に預けて」
五百旗頭「基本的に戦闘はしないし、相手が弱りきった時にしかやるなって念押ししたから、大丈夫だとは思うけれど、魔者が襲って来たら心配ね」
安西「大丈夫かな...」
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《第2支部 / 一善の部屋》
一善「...」
ライン!
一善「?」
一善の元に一通のメッセージが届く。
一善「!」
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D
明日会いたい。戦闘になるかも。
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それは、百目鬼からのメッセージだった。
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第332話 「尾行」
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《第2支部》
一善は、百目鬼に呼び出された場所へと出発する準備をしていた。
一善「...」
ヒメ「一善。どこかいくの?」
一善「ちょっとね」
ヒメ「今日任務じゃないよね?」
一善「うん」
ヒメ「なんでちゃんとした戦闘用の服来てるの?」
一善「...」
ヒメ「戦いに行くの?」
一善「これは...ご、護身用!護身用だよ!いつ魔者が出るか分からないし...!」
ヒメ「いつも普通に出歩いてるのに?」
一善「今日は、なんとなーく、魔者か出そうだナー?みたいな!」
ヒメ「怪しい」
一善「な、なんでもないって!」
ヒメ「じゃあ何しに行くの」
一善「それは、、そのぉ、、」
ヒメは一善に詰寄る。
ヒメ「私に!言えないことって!何!」
一善「ま、遊びに行くだけだよ!ね!ね!」
ヒメ「...」
一善「じゃ、じゃあねぇー!」
ヒメ「...行ってらっしゃい」ジロッ
一善は、支部の外へ出た。
ヒメ「...」
ヒメは速攻で着替えた。
ヒメ「怪しすぎる。つける」ドン!
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《押上駅》
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一善「(えーっと、渋谷で乗り換えて...っと)」
一善は、渋谷方面の電車に乗り込む。
ソーーッ
ヒメ「(乗った!乗ったぞ!)」
ヒメは、メガネと帽子の変装して、同じ車両に乗り込む!
《渋谷駅》
一善は降りる。
ヒメ「(降りた!降りたぞ!)」
ヒメは後をつける。
一善はホームの階段を降り、乗り変える。そしてホームを移動し、次の電車を待つ。
ヒメ「(横浜方面...?何しに行くのかな?)」
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《元町・中華街駅》
そして、一善は終点で電車を降りる。
ヒメ「(中華街...?もしかして...デートとか?)」
一善は、改札を出て、立ち止まる。
ヒメ「(止まった!隠れないと!)」
ヒメは、物陰に隠れて、一善を監視する。
ヒメ「(誰か待ってる...?)」
そして、一善の元へ、百目鬼が現れる!
ヒメ「(来た!男の子か...誰だ?)」
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百目鬼「久しぶり。油木クン」
一善「久しぶり」
百目鬼「元気だったかい?」
一善「まぁ...うん」
百目鬼「おいおい。なんかしょげてない?どうかしたか?」
一善「...」
百目鬼「...ま、まぁいいよ。今日はちょっと、油木に頼みがあってな」
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第333話 「カチコミ」
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《横浜中華街入口》
百目鬼「見つけたんだよ。俺が探していた男が...!」
一善「それって...魔導師の...?!」
百目鬼「あぁ。そいつをこの手で...」
一善「...」
百目鬼「倒したい...!」
一善「...!」
百目鬼「だから、君の力を借りたいんだ。油木一善クン」
一善「うん。わかった」
百目鬼「...!」
一善「どっちに行けばいい?」
百目鬼「(なんか、この間より丸くなったか...?雰囲気が優しくなってる気が...)」
ヒメはそのやり取りを遠目で見る。
ヒメ「(あの人...誰だろう?一善の友達かな...でもなんか、魔者では無いんだろうけど、気配が普通の人じゃなさそう...)」
一善「ねぇ」
百目鬼「あっ。悪い悪い、向こうだ。向こう」
一善「よし、行こっか」
百目鬼「もしかして、俺の事ちょっとは好きになった?」
一善「は?」
百目鬼「あはは。そうでなくっちゃ...」
一善「...」
百目鬼「ね」チラッ
百目鬼は、ヒメの方を見た。
ヒメ「!!!!(見られた!気づかれてた?!)」
ヒメは壁に隠れる!
一善「百目鬼?どこ見てんの?」
百目鬼「何でもないさ、行こうか」
一善と百目鬼は、中華街の中に進んで行った。
ヒメ「(あの人、なんなの?追うわ!)」
ヒメも後について行く。
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《中華街大通り》
横浜中華街。
今日も絶品な中華料理を求めて、沢山の人々が足を運んでいた。
百目鬼「俺が情報源にしてたエミリーって幹部が死んだ。だが、そいつが生前俺に伝えた情報を頼りに、俺はその魔導師の行方を掴んだ」
一善「(千巣さんが倒した魔導師か)」
百目鬼「そいつのコードネームはドイル。ドイルは、この中華街を根城に、普段はヤクザとして暗躍してる。俺は得意の潜入捜査でそいつの行動範囲を特定した」
一善「本名は?」
百目鬼「寺杣定(てらそまさだむ)」
百目鬼は盗撮した寺杣=ドイルの写真を見せた。
一善「なるほどね」
百目鬼「普段は麻薬売買、売春行為に違法賭博。まさに犯罪のオンパレードって奴らだ。どこで何してくるかわからん」
一善「怖いね」
百目鬼「ドイルってやつは、そのヤクザの幹部だ。何回か潜入してる感じでは、割と偉い方の奴」
一善「ふーん」
百目鬼「そいつ自身は履術者だが、他の連中にはそれを隠してる。魔法を使わなくても、暴力はお得意らしい」
一善「なるほどね」
百目鬼「今日、ドイルは別の華僑グループとの会合がある。高級中華貸切でな。そこで俺は騒ぎを起こす。そして、混乱に乗じてドイルを1人にして、ドイルを殺す」
一善「え、まって。ヤクザ達の中に飛び込むの?!」
百目鬼「うん、そのつもり」
一善「え!?ま?!怖すぎ!!」
百目鬼「魔者よりは怖くないし弱いだろ」
一善「怖さのベクトルが違いすぎるわ!あれは触れちゃダメな感じの人達じゃん!!もっと他の方法ないの?!」
ヒメ「(なんの話してるんだろ...)」
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第334話 「伏魔殿」
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《横浜中華街》
2人は適当な店に入る。
ヒメは、離れた席からジュースを飲みつつ2人を見つめる。
ヒメ「...」チューチュー
百目鬼「ドイルはグループの中ではボス的な立ち位置なんだ。今日集まるメンバーの中では一番偉い。当然周りには囲いがいつもたくさんいる」
一善「うんうん」
百目鬼「一般のヤクザに魔法を使うのは一応ご法度なんだろ?だから、ドイル1人をおびき出したいんだが、俺の能力を持ってしても、人が多すぎると発動出来ない。円陣内に”人”のような発動対象の候補が多すぎると、上手く転送出来ないんだよ。俺の実力じゃ」
一善「ふーん」
百目鬼「そうなると、直接触れる必要がある。直接触れた相手なら飛ばせる。だが、ヤクザをかき分けて触れに行くなんて無理だ。潜入捜査とはいえ、俺は奴らの根城の店のウェイターをしてるだけだからな。触れようなんてしたら、ヤクザに殺される」
一善「確かに」
百目鬼「周りのヤクザに警戒されずにドイルに近づくには、その場を混乱させないといけない。だから、今日の会合を利用する」
一善「具体的にはどうするの?」
百目鬼「店に入って少ししたら、電気を落とす。そこで俺が、円陣内のヤクザ達を雑に入れ替える。それくらいなら出来るからな。そこで偶発的な衝突を誘う。そして混乱に乗じて、予め潜入した俺が、ドイルを油木の元へ転送する。俺もそこへ合流し、始末する。こういう算段だ」
一善「それって、一般の人にも危害が及ぶんじゃ?他のお客さんとか、店員とか」
百目鬼「ヤクザの会合は裏で警察の了解を得て開かれるんだ。店の周りには私服警官がうろついてる。激しい暴動が起きれば全員お縄だ。だからちょっとした小競り合い程度しか起きないだろう」
一善「なるほどね。俺は待っておけばいいわけね」
百目鬼「まぁね。これで問題ないか?」
一善「大丈夫なの?」
百目鬼「舐めてる?俺は潜入のプロだぜ?」
一善「ていうかさ、なんでそんなに倒したいの?その魔導師にどんな恨みが?」
百目鬼「...まぁな」
一善「...!」
百目鬼「ま、そんなことはどうだっていい。消せばスッキリだ」
一善「...」
百目鬼「決行は今日の夜。心の準備しておいてくれ」
一善「それはとっくに出来てる...!」
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《横浜中華街》
夜になった。
ヒメ「(あの2人...今日1日何してるの?遊んでるの?全然楽しそうじゃないんだけど!)」
一善「この店が...」
百目鬼「そう、今日の宴の舞台、蔓蛮楼(まんばんろう)だ」
2人は黄金に輝く豪勢な表構えの店の前に立つ。
百目鬼「俺は裏口に行って着替えて潜入する。油木は指定したランデブーポイントに向かってくれ」
一善「ランデブーポイントて...」
百目鬼「早く決着をつけたい。役者が揃ったら30分もしないうちに作戦を決行する。いいね?」
一善「わかった」
百目鬼「あと、'お'連'れ'様にもよろしくね?」
一善「???」
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《蔓蛮楼》
蔓蛮楼。高級四川料理の名店。
この日は、特別な会合の為、通常営業は早くに締め切られ、貸切となっていた。
余るほどの黄金が施された大部屋には、大きな回転式の円型テーブルがひとつと、2人分のカトラリーが置かれている。
もう間もなく、指定暴力団”門前会”の下部組織 ”周一家”と、同じく指定暴力団”四代目清澄会”の下部組織 ”趙一家”の会合が始まろうとしていた。
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第335話 「一触即発」
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《蔓蛮楼》
店の目の前に、黒い車が何台も続けて現れる。
店員は店の入口に列になって客を出迎える。
ガチャッ
ドン!
指定暴力団”四代目清澄会 若頭” 大島
大島「おいおい...中々ケバい店やないかい...」
大島は、スーツに身を包んだ強面の男達を連れ、店の中へ入る。
そして、遅れてまた別の車の群れが現れる。
ドドン!!!
指定暴力団”門前会 若頭” 寺杣定(ドイル)
寺杣「向こうはもう着いてるのか?」
手組員「はい!寺杣さん!」
寺杣「...」
そして、2組は、同じ部屋に通され、若頭は席に着く。
大島「寺杣さん。久しぶりやのぅ。元気やった?」
寺杣「お陰様で。で、話ってのは?」
大島「早い早い。まだ前菜も出とらんやん」
寺杣「...」
大島「おいおい!あれやあれ。※しょうこちゃん持ってきて」
※紹興酒のこと。
寺杣「あんたのとこの白河一派さんが、こちらにアヤつけて来ましてね」
大島「白河もアホや。まさか弓引いてケツ割るなんてなぁ...今頃、ドブん中で息してへんのとちゃうか?」
寺杣「同じ釜の飯を食べた兄弟でしょう?ウチのシマ荒らしておいて、あんたらが落とし前つけてくれるんですよね?」
大島「そんな怖い顔せんといてや、今日は寺杣さんにも美味しい話持ってきたんやから」
寺杣「...?」
大島「最近デコ助にチャイナがうるさなって来たやろ?どや、ここらで締めへん?ウチとあんたらで」
寺杣「...それに、なんのメリットが?」
そこへ、食前酒の紹興酒が運ばれる。
運んでいるのは、店員に変装した百目鬼だった。
百目鬼「(ドイル...覚悟しろ...?今日がお前の命日だ...!その酒には睡眠薬が入ってる。眠った隙に拘束して洗いざらい懺悔させてから殺してやる...!)」
ギロッ!!!!
大島「さぁさぁ!とりあえず、乾杯といきまへんか!」
寺杣「...」
百目鬼「(さぁ...飲め...!)」
百目鬼が、飲み物を置いて立ち去ろうとした時だった!
ガタッ
寺杣が席を立った。
百目鬼「...?!(なんだ?!)」
大島「寺杣さん?まさか小便か?」
ド カ ッ !
寺杣は、百目鬼を殴りつけた。
百目鬼「ぐはっ...!!」
寺杣「...」
大島「寺杣さん?!素人さんに手ぇだしたらアカンやろ!!」
組員「お頭!!」
ジョボジョボジョボ...
寺杣は、黙って酒を百目鬼にかけた。そして、別の女性店員に話しかける。
寺杣「もう一杯、持ってきてくれ」
店員「し、承知しました!」
百目鬼は、泡を吹いてその場に倒れた!
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第336話 「失敗」
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《蔓蛮楼》
組員「お頭...!この店員が何か...?」
寺杣「さぁな。どうだっていいだろう。文句があるのか?」
組員「...いえ!」
寺杣は、転がった百目鬼に近づきながら続ける。
寺杣「まぁ、私が直接手を下すには...理由が無いわけなかろう...」
組員「はい...」
寺杣「理由など些細だ。どうだっていい。だが、次はない」
組員「...!」
大島「...?」
寺杣は、百目鬼を片手で持ち上げ、組員に投げ渡す。
寺杣「ゴミ捨て場にでも投げておけ。無駄に手は出すなよ?お前らがヘマすると目付けのサツが騒ぐ...わかったな?」
組員「...はい!!!」
寺杣「(あのガキ...なんだ?魔法使いか...?マヂカラを抑えていた様だが、気配を隠しきれてなかった...恐らくあの酒にも何かしら細工がされていたのだろうが、まぁいい。疑わしきは潰す、これが世の理だ)」
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百目鬼は、店の裏のごみ捨て場で気を失っていた。
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《中華街 / 近隣の駐車場》
一善「(...遅いな)」
一善は、百目鬼からドイルが転送されるポイントで待機していた。
ヒメ「(一善?さっきからずっと何してるの?なんか向こうの店、ヤクザ?みたいな人達が何人も入ってて怪しいわ?しかも何か私服警官みたいな人も沢山!なんなのよ!それにさっきまでいた友達?は?)」
その後、1時間を過ぎても、一善の元へドイルが現れることはなく、レストランでは会合が予定通りに続いていた。
一善「(流石にこんなに遅いのはおかしい...少し、どこかから店を覗けないか...?)」
一善は、店の近くに移動する。
ヒメ「(一善が動いた...!追いかけないと...!)」
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《蔓蛮楼付近》
一善は、蔓蛮楼の向かい側の壁に隠れる。
すると、黒い車が何台も現れた。
一善「(車...?また人が増えるのか?)」
その様子を遠くからヒメが見る。
ヒメ「(何見てるの...?探偵ごっこ...?てか、なんで私こんなにコソコソしてるのよ!私の方が探偵ごっこじゃない!そろそろ話かけようかな...)」
その時だった。
一善「!!」
蔓蛮楼から、寺杣を含むヤクザが全員出てきたのだった...!
一善「!!(あれ...ドイルだよな...?!)」
寺杣らは、黒い車に乗り込み、車を出した。
一善「(百目鬼は...?!無事なのか...?!)」
ヒメ「いちぜ...」
ヒメが一善に話しかけようとすると、一善は走り去ってしまった!
ヒメ「一善!!!」
一善は、スマホを片手に車を追いかける!
ヒメはそれを追う!!!
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《ゴミ捨て場》
百目鬼は気を失っていた。
そこに一善からの着信が...!
ブーーー ブーーー
百目鬼「...」
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第337話 「追走」
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《本町通り》
一善は、車を追いかける。
一善「つのキング!お願い!」
ボワァン!
つのキング「ウォーーーーー!」
一善は、つのキングに乗って空から車を追う!
一善「...!(百目鬼出ない!何があったんだ!でも今はあいつらを追わないと...!)」
ヒメは、空を飛んだ一善を見上げる。
ヒメ「(一善どこ行くのよ...?!あの車を追ってるのかしら?!そうよね!!)」
ヒメは、一善を追いかける。
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《蔓蛮楼裏 / ごみ捨て場》
百目鬼「...うぅ...」
百目鬼は辺りを見回す。
百目鬼「ここは...?」
百目鬼「...!!そうだ!」
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《中華街大通り》
寺杣一行の車は大通りを通り、移動する。
一善「...」
つのキング「ウォーーーーー!」
プルルル... プルルル...
一善の元へ電話が届く。
一善「百目鬼!」
『百目鬼 : 油木...!』
一善「百目鬼!どうした?今ドイルが...!」
『百目鬼 : あいつら、今どうなってる...?』
一善「中華街の中を移動してる!俺はそれを追ってる!」
『百目鬼 : そうか...悪いがこちらの作戦は失敗した...そいつらを追ってくれ...!俺は能力で移動出来るから直ぐに追いつく。捕まえたら連絡くれ...!』
一善「捕まえたらって...!百目鬼は大丈夫なの?」
『百目鬼 : 大丈夫だ...頼むぜ...魔法使いさん...!』
一善「...!」
ブチッ!
一善「(切られた...百目鬼は大丈夫なのか...?息切れが凄かったけど...)」
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そして、寺杣一行は狭い路地に入り、車は止まる。
寺杣は車から降り、組員を引き連れて怪しいビルに入っていった。
一善「...行くしかない...!」
一善は、そのまま地面に降り立つ!
ヒメ「...(一善...?)」
ヒメは、ヤクザ達がビルに入っていくのを見ている一善を見張っている。
ヒメ「...(あの人たち、どこかへ入っていくわね...バレたらヤバそうな奴ら...!)」
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《クラブ・トロピウス》
一善は、一行が入ったバーの入口を少し遠くから見る。入口には見張りの男が2人立っている。
見張り「...」
一善「...!(マヂカラを纏ってコーティング...姿を見せずに潜入...ジャスティンさんみたいに壁をすり抜ける魔法陣での移動が出来たら良かったけど...出来ないからここは仕方ない!)」
エイッ! エイッ!
見張り「ぐはぁっ!」
見張り「がはっ!」
一善は、見張りの2人を見えない状態のまま気絶させ、建物の陰に運んで寝かせた。
一善「よし...入るぞ...!」
一善は、店へ入っていく!
ヒメ「…!!何してるのよ!」
一善とヒメ、敵陣に乗り込む────!