SOREMA -それ、魔!- 44
SOREMA -それ、魔!- 44
「昔話」
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第369話 「雪山へ」
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《とある雪山 / 雪道》
三太郎「へっくしゅん...!!おいおい、夏なのになんで雪つもってんだよ!さみぃわ」
一善「こんな所にいるんですか...?」
ジャ「あぁ。いる。住んでる」
三太郎「まじで、変な人なんだな、その”粟生屋”って人」
合同会議から1週間後、三太郎と一善は、ジャスティンに連れられて、とある雪山に来ていた。
その目的は、かのSHAKKSの一角、粟生屋昴をスカウトするためだった。
ジャ「あの人も物好きだからねぇ...魔者がいない場所なんて、他にも沢山あるだろうに」
一善「ですね」
三太郎「てか、百目鬼のことだけどよ、あいつ本当に信頼できるのか?元ノベルなんて怪しすぎだろ!」
ジャ「まぁ確かに。だが、履術者である以上、協力者として泳がせておくのが最善だ」
百目鬼は、あの会議の後、魔裁組の協力者として、魔法協会と契約を結んだ。
一善「彼のことは、俺は信用してる。百目鬼のおかげで、ノベルの幹部を叩けたのは事実だしね」
三太郎「それもフェイクかもしれないぞ?」
一善「大丈夫。魔裁組(こっち)には深く干渉しないはずだし、あいつも魔法の被害者だ。最初は疑わしかったけど、そんなに悪いヤツじゃないよ」
三太郎「まぁ...一善がいうなら...」
ジャ「あいつには沢山聞きたいことがある。もしかしたら、あいつの情報が切り札になるかもしれないからな」
三太郎「切り札...かっけぇ...!」
一善「(単純)」
ジャ「彼にとっては仇だったんだってな。強震の書の男が」
一善「はい...」
ジャ「...悔いてるのか?」
三太郎「?(何を?)」
一善「はい。引き金を引いた百目鬼を、俺は止められなかった。もうドイルは履術者ではなかったから。その場で殺してはいけないと、頭ではわかっていた」
三太郎「え、魔導師なんだから、いいんじゃねえの?」
ジャ「確かに魔導師は、周りに危害を及ぼす恐れがある場合、その場での斬首が認められている。だが、今回のケースでは、もう男は魔法を放棄していた。その場合、一時的に生命を維持させ、捕縛するのが適当とされている」
三太郎「ふーん」
一善「俺は...正直、手を伸ばすことが出来ました。彼を力づくでも、止めることが出来たはずなんです」
ジャ「...」
三太郎「...」
一善「でも、なんだろう。百目鬼の立場になった時に、そんなに利口に考えられるかと言われたら...正直分からない。引き金を引く直前に、百目鬼の記憶を見たんです。そしたら、何が正解か、分からなくなって...」
三太郎「...」
一善「俺は、彼を人殺しにしたくなかった...」
三太郎「一善...」
一善は俯いた。
ポンポンッ!
ジャスティンが一善の肩を明るく叩いた。
ジャ「一善は悪くない!大丈夫大丈夫!」
一善「へ?」
ジャ「いいか一善、正しいと思って選んできた道が、振り返った時に綺麗であるとは限らない」
一善「...」
三太郎「...!」
ジャ「でもね、一善。それでいいんだよ。誰かが、その道を美しいと思うかもしれないから」
一善「...」
三太郎「...」
ジャ「君は百目鬼藤を人殺しにしてしまったと言った。それは君の視点。でも彼はどうかな?一善のことを責めるとは俺には思えないなぁ」
一善「それは...」
ジャ「君は彼を救ったのかもしれない。本当の意味で」
一善「...!」
ジャ「それに、罪悪感をちゃんと感じられる君は強くなれる。だから大丈夫」
一善「!」
三太郎「そうだぞ!」
ジャ「一善は悪くなーい!悪くなーい!」
三太郎「悪くなーい!悪くなーい!」
一善「...笑」
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第370話 「昔話」
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《雪道》
ジャ「てか遠いなぁ...粟生屋さん。こんなとこに住んでんのかよ...」
三太郎「やっぱ強ぇのか?」
ジャ「あぁ。とんでもなく強い。千巣さんと同等の魔法使い”特級”の称号の持ち主だからな」
一善「SHAKKSの皆さんは全員特級ですか?」
ジャ「そうだよ。あの人たちがいた時代は、何の因果か、街の魔者が恐れをなして姿を消していた」
三太郎「へぇ。すげぇ」
ジャ「でも、魔導書の回収が遅れたのもそのせいだったりするけどな」
一善「なるほど」
ジャ「粟生屋さんをはじめ、SHAKKSは確かに化け物集団だった。でもその中でも特に、群を抜いて強かった魔法使いがいた」
三太郎「アニキ?」
ジャ「いや」
一善「白鶯...ですか?」
ジャ「いいや。ちがう。それは、その時代”女帝”とも呼ばれた魔法使い”皆藤理子”という人だ」
一善「皆藤理子...さん。唯一亡くなっていた方ですよね」
ジャ「あぁ」
三太郎「あのアニキより強い女の子がいたのかよ!!!やべぇな!!!」
ジャ「その人は本当に、超超超超強くてね。そして超超超超優しかった」
一善「...」
三太郎「...」
ジャ「そして、俺を魔裁組に引き入れてくれたのも、理子姉さんだ」
一善「...!!」
三太郎「...!!」
ジャ「もし理子姉さんが生きてたら、今頃どんな魔法使いになっていたのかな...」
一善「...」
三太郎「...」
回想──────
時を遡ること12年。
世は2011年。
《第1支部》
若菜公平(23) 魔裁組第1支部実働班リーダー
公平「はい、えーっと、今日から新しい仲間が、2人加わってくれます。じゃあ、、挨拶してくれるかな?」
公平は、新人の男女2人を紹介する。1人の少年が手を挙げて自己紹介をする。
幸二(10)「はい!天堂幸二です!お兄ちゃんに負けないように頑張ります!よろしくお願いしまーす!」
パチパチパチパチ
千巣「ついに来たな...!」
恵太「幸二!いよいよだな!」
幸二「うん!」
恵太「お前と戦うのが楽しみだ!」
幸二「おれもだよ!お兄ちゃんに負けないように頑張る...!」
恵太「あはは!まずは魔者を倒せるようにならないとな!」
一同笑う
公平「じゃあ次、、皆藤さん」
皆藤「はい!」
シーン
皆藤理子(16)
魔法協会直属の特待生。蒼魔導書第四十五章 描写の書の履術者。
皆藤「皆さん初めまして。皆藤理子です。善能寺さんの元で、子供の頃から協会直属の特殊任務部隊で活動してました。皆さんに早く溶け込んで、仲良くなれるように頑張りたいです!よろしくお願い致します!」
パチパチパチパチ
公平「皆藤さんには、即戦力として任務に参加してもらうと同時に、人材育成にも携わってもらいます」
皆藤「はい!よろしくお願いします」
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第371話 「スクランブル」
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《第1支部》
皆藤は、挨拶を終えた。
幸二「(この人、見かけによらず声低!)」
千巣「へぇ。(俺より強いのかな...?)」
※氷室「ま、人手が増えるのは悪いことじゃないわ。私の重荷が減るものね」
※氷室季彩。エミリーの人間の名前(31巻等参照)
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《渋谷》
ある日の深夜、皆藤、千巣、恵太は3人で渋谷での任務にあたる。
魔者「ジュリヤァァァァ...!」
魔者「ギュリュリラァァァァ...!」
渋谷のスクランブル交差点では、魔者が大量発生していた。
バサッ! ザンッ!
恵太「おいおい!なんでこんなに魔者が増えてんだ?ここは渋谷だろ?最初のマヂカラ反応は1体だけだったはずですよね?千巣先輩!」グサッ...!
千巣「あぁ...だが落ち着け!こいつら、”ゴミ”を媒体としてできたハリボテの魔者だ!強くはない!恐らく本体がどこかにいる!そっちに気を配りながら通りかかる人々を避難させるんだ!」ジャキィン!
恵太「結構難しいっすよ!数が多すぎる!」バサッ!
千巣「踏ん張れ!今皆藤さんが本体を探してる!」
皆藤「...(この能力は恐らく、蒼魔導書第四十二章 入魂の書の能力。生命を持たない物質に魂を吹き込んで魔者の様に変貌させ操る...手強いわね。早く本体の履術者を探さないと...!)」
皆藤はマヂカラの気配を読み取る!
皆藤「(北側から強いマヂカラが流れてる...?)」
ピピッ
すると、本部にいる公平から3人に連絡が入る。
『公平 : 強いマヂカラ反応が渋谷から北上しています!人手があればそちらへ向かってください!』
恵太「人手って...もう限界でしょ!」
千巣「どうする...!(確かに、このままじゃキリがない...!本体の場所がわかったって言うのに...!)」
魔者「ギュリャァァァ...!」
千巣「うぉりゃぁ!」ザァン!
皆藤「2人とも!北へ向かって!恐らく代々木公園よ!あそこなら高い建物もなくて魔者が集いやすい!」
恵太「でも、こいつらも魔者では?それにこいつらはどうするんです?」
皆藤「こいつらは正確には魔者じゃない!これは入魂の書の履術者の力で作られたぬいぐるみみたいなもの!マヂカラで攻撃すればすぐに崩れる!」
千巣「...なるほど!」
恵太「でもこの数じゃ!」
皆藤「”私の能力”で対処可能よ!2人は本物の魔者を追って!」
千巣「...わかりました!行くぞ!恵太!」
恵太「...はい!皆藤さんも気をつけて!」
皆藤「ありがとう!終わったら向かうわ!」
千巣と恵太は北上して代々木公園へ向かった。
魔者「ブリュゥゥアァァァ...!」
魔者「ズルギュラァァァァ...!」
魔者「コブシュディァァァァ...!!」
皆藤は、スクランブル交差点の真ん中でおびただしい数の魔者(?)に囲まれる。
皆藤「ざっと数えて100体か...さてと。あんたらの相手はこの私1人で充分...!!!」
皆藤は、魔法陣から筆のような魔具を取り出した!
皆藤「魔鳥獣戯画!!武士!!!!」
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第372話 「鳥獣戯画」
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《渋谷》
皆藤「魔鳥獣戯画!!武士!!!!」
サササッサッッッ...!!!
皆藤は、空に大きく筆を走らせ、呪文を唱える!
「顕!!!!」
ボワァン!!
すると、辺り一面に、まるで武士のような人影が何人も現れた!
皆藤「(私の能力...描写の書。私がこの筆で書いた物体は、次元を超えてこの場で実体化する...!私のマヂカラが尽きない限り、何体でもコピー可能...!)」
現れた武士は、辺りの魔者に一斉に斬りかかった!
皆藤「(そして、その能力で現れた物体は、私の意思に呼応して、意志を持って戦う!!)」
バサッ!!
バサッ!!
魔者達が、断末魔を上げながら倒れて、ごみに成り代わっていく。
皆藤「(私も2人を追って代々木公園へ向かいたいけれど、円陣を出たら能力の効果が消えてしまう...!早く倒すか魔者達を北へ誘導しないと...!)」
バサッ!!
バサッ!!
皆藤は、魔者を倒し続ける...!
皆藤「(ちっ...!多い!!)」
バサッ!!
バサッ!!
パッ...!!
皆藤「?!!!」
すると、皆藤の目の前の魔者達が全て霧散した...!
皆藤「消えた...ってことは?」
『公平 : マヂカラ反応が消えました!』
『恵太 : はい!代々木公園にて、四十二章の魔者を退治しました!!』
皆藤「よかった!!ありがとう!!千巣君と恵太君は?怪我はない?」
『千巣 : 俺たちは大丈夫です!皆藤さんは大丈夫ですか?』
皆藤「私は大丈夫!」
『千巣 : よかったです。では、そちらへ向かいます。合流しましょう』
皆藤「了解!」
『公平 : 皆さん、お疲れ様でした!』
3人は、魔者を退治し、魔導書を支部へ持ち帰った。
《第1支部》
皆藤「お疲れ様でした」
千巣「お疲れ様でした。ふわぁ。眠」
恵太「お疲れ様でした〜眠いなぁ〜むにゃむにゃ」
公平「皆さんお疲れ様でした。ゆっくり休んでください」
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第373話 「皆藤理子」
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《第1支部》
一同「おやすみなさーい!!!!」
公平「では、皆藤さんも、おやすみなさい」
皆藤「まって、公平さん!すこしお話していいですか?」
公平「僕、ですか?」
皆藤「はい!」
2人は、最低限の明かりがついた支部内のキッチンへと移動する。
皆藤「公平さんは、普段戦わないんですか?」
公平「いや?僕も一応実働班のリーダーだからね。戦うこともあるよ。でも...」
皆藤「でも?」
公平「僕はね、弱いんだ。階級も僕は普級。ただ年齢が上だからリーダーをしてるだけなんだ」
皆藤「なるほど...」
公平「恵太君や千巣君みたいに、若いのに僕より強い子が沢山いる。だから僕は、彼らをサポートすることが多い」
皆藤「サポートですか」
公平「うん。でも、難しい任務の時は僕が同行することもある。死なせたくないからね。貴重な人材は」
皆藤「...」
公平「いざとなったら、僕は彼らの盾となる」
皆藤「...!」
公平「魔法使いにおいて、命の価値は平等じゃない。それは仕方の無いことなんだ」
皆藤「...なるほど。それも一理あるかもしれません」
公平「...」
皆藤「でも、その結論は少し悲しいです」
公平「...!」
皆藤「私は、そんな現状を変えるために来たのかもしれません」
公平「?」
皆藤「私は、魔法協会で培ったノウハウを共有して、そして皆からも沢山のことを吸収して、人を育てて、共に成長して、みんなで強くなりたいんです。そして、魔法のない平和な世界を作りたい。最高のチームで」
公平「...最高のチーム...か」
皆藤「はい!」
公平「そうか...その最高のチーム、見てみたかったものだよ」
皆藤「見てみたかった?」
公平「誰かから聞いてないかい?僕はもうすぐここを去るんだ」
皆藤「え、辞めちゃうんですか?」
公平「うん。僕は履術者じゃないし、実力もない。それにもうすぐ、魔法使いとしてはピークを迎える年齢だ。でも、もう限界を感じてしまってね。別の道を目指すことにしたんだ」
皆藤「そう...なんですね」
公平「うん。後悔はしてない。自分自身と向き合って、これからの人生を考えるよ。だから君が呼ばれたんじゃないかな?後進の育成にも長けていそうだしね」
皆藤「...」
公平「皆藤さん、魔法協会の特殊部隊にいた時は、凄い評判だったよ。若いのに、立派だよね。それに君は履術者だ。今の魔裁組にとって貴重な存在」
皆藤「いえいえ...」
公平「皆藤さんはいつから履術者なの?」
皆藤「私は...生まれた時からです」
公平「生まれた時から...?」
皆藤「はい。何故か分からないんですけど、お母さんのお腹の中にいる頃から、体内に魔導書が眠っていたんです。不思議ですよね」
公平「そうなんだ。親御さんも魔法関係の?」
皆藤「いや。ただの一般家庭です。物心ついた時に、自分で自分の異様さに気がついて、周りの大人に話していました。そしたらある日、幼稚園に善能寺さんが来たんです。その日から私は魔法協会所属になりました」
公平「へぇ。壮絶だね」
皆藤「そうですかね。私は割と、この仕事向いてるなって、自分で思いますけどね」
公平「そっか。それは良いことだね」
皆藤「はい。でも、特殊部隊では...その...」
「──────────」
公平「そんなことがあったんだね...」
皆藤「だから、魔裁組(ここ)では、最高の仲間と、最高のチームを作りたいんです...!」
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第374話 「運命の歯車」
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後日、若菜公平は、大勢の班員に見送られ、魔裁組を去った。その眼差しに後悔はなく、小さくなっていく背中は、どことなく大きく見えた。
そして月日は経つ。
皆藤が魔裁組に所属して1年が過ぎた頃────
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《第1支部 / ミーティングルーム》
皆藤は1人でオレンジジュースを飲んでいた。
バタッ
善能寺「皆藤さん。ごきげんよう」
皆藤「!!善能寺さん!」
善能寺「調子はどう?」
皆藤「ボチボチですね」
善能寺「まぁ、元気そうでよかったわ」
皆藤「どうでした?第2支部の方は」
善能寺「いい出来よ?千巣君も驚いていたわ」
この年、魔裁組第2支部が完成した。千巣は第2支部に移動になった。
皆藤「千巣君、大丈夫ですか?友人が亡くなったって...」
善能寺「正直、まだ復帰には時間がかかるかも。暫くは第2支部で心身ともにリハビリをしてもらうわ」
皆藤「わかりました。自分からも連絡してみます」
善能寺「助かるわ」
善能寺「そして皆藤さん。今日から、貴方に正式に、魔裁組第1支部のリーダーを務めてもらいたいわ」
皆藤「...!」
善能寺「あなたの手腕は私が一番分かってるつもりよ。やってくれるわよね?」
皆藤「はい!ご期待に添えるよう、頑張ります!!」
善能寺「もう少ししたら、新しく何人か第1支部に加わることになるから、その子たちの面倒も見てあげて欲しいわ」
皆藤「はい!!楽しみです!!」
善能寺「よろしく頼むわよ...!」
この日、皆藤が、第1支部のリーダーとなる。
そして、数週間後、新しく加入するメンバーを迎える当日。
皆藤は、簡単な任務に赴いていた。
《都内某所》
皆藤「...(レベル1!でも油断は禁物...!さて、どこだ?)」
皆藤は、魔者を探す。
皆藤「...(早く倒して、新しい仲間と会いたいな...!どんな人達なんだろう?ワクワク!)」
皆藤は走って辺りを見回す!
皆藤「...(向こうからマヂカラの気配がする...!よし、今は任務に集中!早く倒して、支部へ戻るぞ〜!!)」
皆藤はマヂカラの気配を辿って、とうとうその気配の元へとたどり着いた。すると、そこには魔者はおらず、1人のガタイの良い青年が立っていた。青年の手には空のペットポトルが握られている。
皆藤「...(あれ?ここらへんに魔者がいるはずだけど...?あの人、誰?)」
青年「...」
青年は、黙ってペットポトルを凝視している。
皆藤「...(?あの人、マヂカラの気配がする...!もしかして、あの人が気配の正体?)」
皆藤は、その青年に話しかける。
皆藤「こんにちはー。君、名前は?」
青年「...は?」
皆藤「あ、いや、ごめんね。脅かしちゃって、そこで何してるの?」
青年「...なんだっていいだろ」
皆藤「うん...まぁね(この人が持ってるペットポトル...マヂカラが染み付いてる...?)」
青年「もういいだろ。あっちいけ」
皆藤「君さ、そのペットボトル、少し貸してくれない?」
青年「...?(この女、気配が只者じゃねえ、もしや”俺と同じ能力”が使えるのか?)」
皆藤「わかっちゃった。君、魔法が使えるね??」
青年「...!!」
皆藤「何かさ、普通の人と違うこと、出来るでしょ」
青年「...(やっぱり、この女も...!)」
皆藤「君、名前は?」
青年「...白鶯蓮源」
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第375話 「龍の子」
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《都内某所》
皆藤「白鶯君。そのペットポトルは、君が倒した魔者から出てきたものかい?」
白鶯「だったら?」
皆藤「凄いね。魔裁組でもないのに、魔者を退治出来るなんて」
白鶯「魔裁組?」
皆藤「うん。君や私みたいな、魔法使いの集まるチームの事だよ」
白鶯「...(同じような奴らが他にもいるのか)」
皆藤「そうだ、君も私達と共に戦わない?」
白鶯「...は?」
皆藤「魔裁組のメンバーにならない?君にはその素質があると思うけど」
白鶯「ならない」
皆藤「なんで」
白鶯「俺は誰にも従わない。誰の要望も聞かない」
皆藤「なんで」
白鶯「俺は最強だからだ。俺は人生において負けたことがない。いかなることでも」
皆藤「ふーん。君、最強なんだ」
白鶯「俺は、この星で最強になる男だ。この呪われた力でな。今の俺はバケモノだって簡単に倒せる。今日まで何体もバケモノをこの手で葬ってきた。何故ならば、強いから」
皆藤「...」
白鶯「弱者は嫌いだ。滅び去れ」
皆藤「なるほどね、雑魚い魔者を退治するだけで満足なんだ」
白鶯「雑魚い魔物?」
皆藤「うん。魔者にはね、魔導書の魔者と、ただの野良魔者がいるんだよ。君が倒した魔者で、本のようなものを吐き出した魔者はいたかな?」
白鶯「本...?」
皆藤「居ないみたいだね。まぁ、遭遇することはあまりないよね」
白鶯「おい女、話はもういい。消えろ」
皆藤「嫌だ。君を魔裁組へ連れていく」
白鶯「行かない。俺は誰にも従わない、誰ともつるむ気はない」
皆藤「1人じゃ強くなれないよ?いつか限界が来るわ」
白鶯「ほざけ」
皆藤「正義のヒーローになりたくない?」
白鶯「最悪だ」
皆藤「じゃあこうしよう、私と勝負して、立ち上がれなくなった方が言うことを聞く、これでいい?」
白鶯「は?」
皆藤「いいかどうかを聞いてる」
白鶯「俺に命令するな!!!頭にきた。お前はこの場で叩きのめしてやる...!」
皆藤「...(歳はだいたい同じくらいか...!ま、少し手加減してあげよっか)」
白鶯「うぉぉぉぉぉ」
ゴゴゴゴゴゴゴ...!!!!
皆藤「!!」
白鶯が雄叫びをあげた!すると、白鶯の両手が赤く膨張し、鱗のような紋様が浮かび上がった!!そして、牙が伸び、背中からは炎を纏った翼が生えた...!!
皆藤「その姿...!!」
白鶯「俺は...人ではない。龍だ!!!!!」
皆藤「ドラゴン...図鑑で見たな...恐らく、蒼魔導書第三十五章 龍の書。でも、図鑑の図解とかなり解釈が違ってる。彼のイメージ力に起因するのか...?」
白鶯「恐れおののけ。逃げるなら今だぞ?」
皆藤「別に、逃げないけど?”運”!!!」
ボワンッ...!
皆藤「大業魔具!天叢雲!!!」
皆藤は、大剣を魔法陣から取りだした!!
皆藤「私の愛剣の恐ろしさ...見せてあげる...!!」
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第376話 「皆藤vs白鶯」
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《東京某所》
白鶯「...?(あの女...何も無い所から剣を...?)」
皆藤「じゃあ、行くよ?」
ビュンッ...!!!
白鶯「!!!(消えた?!)」
皆藤は白鶯の真後ろに回り込んだ!
皆藤「これは”走”」
白鶯「?!」
ジャキーン!!
皆藤は白鶯を斬りつける!!
白鶯「!!(峰打ちか...!)」
皆藤「まだまだ!」
ドカッ!!
皆藤は白鶯の腹に蹴りを入れる!
白鶯「!!(女の癖に...なんて蹴りの威力...!)」
ドッカーーーーン...!!!
白鶯「ちっ」パラパラ...
皆藤「どう?私と来ない...?」
白鶯「まだ勝負はついていないだろ」
皆藤「まだやる気?」
白鶯「勝ち誇ったつもりか?ならば、これを受けても立っていられるかな?」ポポポポ...
白鶯は口元に光を溜め込んだ...!
皆藤「?」
白鶯「!!!!!!」
ボガァァァァァァァン!!!!
白鶯「龍ノ息吹(りゅうのいぶき)!!!!!!」
白鶯は凄まじい威力の光線を放った!!!
そして、皆藤に炸裂した!!!!
ドッカーーーーーーーーーン!!!!!
シュルルルゥゥゥゥ...
白鶯は元の姿に戻った。
白鶯「...(エネルギー切れか...だが、これを受けて立っていられる奴はいなかった...)」
すると、白鶯の目に、微笑んだ皆藤が映る!
白鶯「!?!?!」
皆藤「あはっ。これは”守護”」
白鶯「...無傷で...立っている?」
皆藤「白鶯君。君には才能がある。魔裁組に来ればもっと強くなれるよ?」
白鶯「...」
皆藤「頑固だね。まぁでも、約束は約束。私の言うことを聞きなさい」
白鶯「...」
バッ!!
すると、白鶯の足元から蛇のようなものが現れ、白鶯を地面に縛り付けた!
白鶯「?!何だ?!」
皆藤「魔鳥獣戯画...蛇」
シャーーーーー!!!
白鶯は地面に仰向けになり、身動きが取れなくなっていた。
皆藤は、剣先を白鶯の顔面に向けた。
皆藤「はい、私の勝ち」
白鶯「...!!!」
SOREMA -それ、魔!- 45へ続く。