SOREMA -それ、魔!- 43
SOREMA -それ、魔!- 43
「号令」
第361話 「きっかけ」
《第2支部》
この日は、五百旗頭による実働班女子メンバーの定期検診が行われていた。
はるか「やっべぇ!遅刻遅刻!!」
はるかが駆け足で支部へやってくる。
莉茉「はるか!おはよう!」
はるか「莉茉っちおはよう!!皆は?」
莉茉「”元”第1支部の3人は控え室にいるわよ。麗美と美波は遅刻」
はるか「マジかよww私より遅いのが2人もww」
莉茉「美波は寝坊でしょうね。でも麗美はそもそも来るかな...」
はるか「あれから本当に元気ないもんな...」
莉茉「心配だな...」
バタンッ
そこへ、五百旗頭と安西がやってきた。
五百旗頭「あれ、2人だけ?」
莉茉「すみません。そうみたいです」
五百旗頭「そう...しょうがないわね」
はるか「なぎちんおはよう!!ねぐせやばいな!!寝不足か?!」
五百旗頭「武智さんおはよう。空見さんが来てないから、九頭龍坂さんの次に武智さん診るわ。準備しておいて」
はるか「うぃっす!」
安西「麗美ちゃん...大丈夫かな...LINEは返ってくるんだけど...」
五百旗頭「...」
プルルル... プルルル...
安西「あ!電話だ!美波ちゃんから!!」
五百旗頭「どうせ寝坊でしょ」
『美波 : ごめんなさい!!すみません!今起きました〜!!』
五百旗頭「やっぱり」
安西・莉茉「あははは...」
五百旗頭「え、寝癖?」
一同「時差!!!!」
────
《地下鉄内》
麗美「...」
麗美は沈みきった表情で、旧型の地下鉄に揺られる。
──
私の家では、魔法使いになるのは当たり前だった。
でも私、小さい頃は、魔法使いになりたくなかったんだ。
────
回想────
《空見家 / 中庭》
その日は、空見家が主催した、魔法協会関係者のみのパーティが開かれていた。
麗美母「庭で泣いてるみたいなの。今、山御(召使い)がついてるわ」
麗美父「麗美は偉大な魔法使いになる俺の娘だ、そんなことで泣いていてはいけない!」
麗美母「あの子はまだ5歳よ?私は麗美を戦わせるのにはずっと反対よ!」
麗美父「...」
麗美(5)「うぇーん。うぇーん。。」
麗美は、しゃがみこんで泣いていた。
山御(やまみ)「麗美お嬢様...どうされましたか...そんなに泣いては、可愛い顔が台無しですよ?」
麗美「うぇーん。うぇーん。だって、わたしもまほうつかいにならないといけないんでしょ〜?!いやだよ〜こわいよ〜!!」
山御「...(麗美お嬢様は、長女として生まれた。その為、生まれながらに赫魔導書の能力を持つ履術者。その使命を5歳の少女に負わせるのは、確かに酷である...)」
麗美「うぇーん!!うぇーん!!」
山御「...(なんと言葉をかけて良いのか...)」
???「おーい!!君ー!!」
麗美「...?」
千巣万之助(9)「なんで泣いてんだよ〜どっか痛いのか〜?」
麗美「...きみは...?」
千巣「おれ、万之助!よろしく!!」
────
第362話 「背中」
────
《空見家 / 中庭》
麗美「ばんのすけ...くん?」
山御「千巣家のご長男...千巣万之助様ですね?」
千巣「そう!よろしくな!君のなまえは?」
麗美「れみ...」
千巣「れみちゃん!!いいなまえだね!」
麗美「ぐすん...ありがとう」
千巣は、しゃがむ麗美に寄り添うようにしゃがんで、問いかけた。
千巣「どうして泣いてるの?」
麗美「ぐすん...ばんのすけくんも...まほうつかいなの...?」
千巣「...おれは...もうすぐ魔裁組に入るんだ」
麗美「そうなんだ...こわくないの...?」
千巣「...うん...怖いかな」
麗美「...!やめなよ!死んぢゃうかもしれないんだよ...?」
千巣「...うん。でも、父さんから聞いたんだ。この世界には、魔法で苦しんでる人がいっぱいいるんだって!それで言われたんだ、少しでも助けてあげてくれって。お前にはそれができるって」
麗美「...ぐすん」
千巣「れみちゃんも、魔法がつかえるの...?」
麗美「...うん」
千巣「俺と一緒だね!じゃあさ、一緒に魔法使いになろう!ね?」
麗美「...?」
千巣「俺は、魔法使いとして戦いながら、一緒に戦うれみちゃんのこともまもる!」
麗美「...!」
千巣「れみちゃんのことは、俺がしなせない!だから、怖がらなくて大丈夫!」
麗美「...ばんのすけくん...」
千巣「それにな、俺たちはもっとたくさん、仲間がいるんだぜ!」
麗美「...?」
千巣「おーい!!こーじ!でてこいよー!」
陰から2人を見ていた幸二がやってくる。
麗美「...?」
千巣「分かるんだよなーずっと見てたろー幸二」
幸二(5)「お兄ちゃんたちとはぐれちゃった」
千巣「こいつ、こーじ。よろしくな」
幸二「...」
麗美「こんにちは...」
すると、千巣は2人の手を自分の手と重ね合わせた。
麗美「!」
幸二「!」
千巣「いいか、俺たちは仲間だ!おれたちで、平和な未来をつくろう!」
幸二「うん...!」
麗美「...!」
千巣「俺は、二人のことも守るし、町のみんなのことも守る。すごい魔法使いになるんだ!」
幸二「おれは、ばんのすけくんにもまけない魔法使いになる...!」
千巣「あはは!こーじ、鬼ごっこでも俺に勝てないじゃん!」
幸二「それはかんけいないじゃん!」
麗美「うふっ笑」
山御「...(お嬢様が、笑った...)」
千巣「だから、待ってるぜ!れみちゃん、こーじ!俺はさきに魔法使いになって、みんなをまってるから!」
幸二「うん!」
麗美「うん...!」
麗美は、手で目元をゴシゴシして答えた。
────
あの人は笑った。
その時だった。私が魔法使いを志したのは。
こんなにも広く、しなやかで、強い心を持った人がいるんだなと、思った。
私も、そんな人間に、心のどこかで憧れを抱いていた。
────
第363話 「眼差し」
────
《堆家》
麗美(18)は、ひえりの家で料理をしていた。
麗美「あの人まだ?」
ひえり「簡単な任務だったとはいってたけど、疲れて道草くってるのかな。遅いね」
麗美「電話してみてよ」
ひえり「ちょっと待ってね」
〜〜〜
ひえり「出ないね」
麗美「んもぅ!」
ひえり「まだかな〜料理出来ちゃうよね〜」
麗美「うん」
私は、魔法使いとして、仕事に明け暮れるあの人がうらやましかった。
ひえり「麗美ちゃんはいつ魔法使いになるの?」
麗美「一応20歳までは母がダメって。父は許してくれてるんだけどね。マジだりー。私だって早く...」
早くあの人に追いつきたかった。
あの人と肩を並べて戦いたかった。こうしている間にも、あの人は遠くに行ってしまう気がして、私は一人で自分の能力を磨いていた。
────
《廃校》
麗美(20)。魔裁組に所属した。
麗美は、一人で稽古していた。
麗美「はっ!!!ふっ!!!」バッ...!
千巣は遠くから麗美を見つける。
千巣「おー」
バタンッ...
麗美「ハァ...ハァ...」
千巣「やってるねー。こんな隅っこで。そんなに誰かに見られるのが嫌?」
麗美「ハァ...見てんじゃねー!帰れ!」
麗美は地面の砂を投げつけた。
千巣「却下」
麗美「...!」イラッ
千巣「てかさ、なんでそんなにムキになってんの。俺には教えてくれない”戦う理由”とやらのせい?」
麗美「...黙れ」
千巣「こわ」
麗美「早く帰って!!」
千巣「何を焦ってるのか知らんけど、お前は強い魔法使いに'な'れ'る。ポテンシャルは高い」
麗美「...」
千巣「相手してやるよ。ほら、来い...!やるんだろ?」
麗美「...!うぉりゃぁぁぁ!」
私の戦う理由。アンタに勝つため。
それだけだ。
...いや、少し違うかな。
認めてもらいたかった。一番強いあの人に、ただ認めて欲しかったんだよ。強くなったこと。今のままじゃ、あの人には全然敵わない。でも、もう守られる必要もないくらい、一人で強くなったんだよって。
なのに...なのに...!
回想終──────
《第2支部》
九頭龍坂と虎走は、定期検診を終えていた。
九頭龍坂「はぁ...疲れたわぁ...」
虎走「意外と体力つかうよねぇ」
九頭龍坂「せやねん。何か異常あった?」
虎走「私は健康でしたー!」
九頭龍坂「良かったわぁうちもや!」
虎走「本当!...って、あれ?」
虎走は、遠くから歩いてくる人影を指さした。
九頭龍坂「あれ?あの子ちゃう?」
前から歩いてきたのは、麗美だった。
九頭龍坂「お久しぶりやねぇ」
麗美「...」
虎走「ぎゃは!あれ、元気ない?」
麗美「...」
────
第364話 「リスタート」
────
《第2支部》
九頭龍坂「聞こえてへんの?挨拶は基本やろ?人として」
麗美「...」
虎走「(え?大丈夫?すごい元気ないけど...?)」
麗美「ども」
九頭龍坂「...?」
虎走「(そっか...先輩の件で沈んでるのか...仲良かったもんな...先輩と)」
九頭龍坂「...」
虎走「行こ、小町」
九頭龍坂「アンタ、辛気臭いなぁ」
麗美「...」
虎走「...!」
九頭龍坂「いつもの威勢はどしたん?なんか、逆に腹立つわァ」
麗美「...」
虎走「小町...!ちょっと!」
九頭龍坂「なぁ、感じ悪いなぁ。てかあんた、最近全然顔出してなかったんやろ?任務も放ったらかしって聞いたんやけど?」
麗美「...」
九頭龍坂「やる気ないなら、辞めたらええんちゃう?」
麗美「...」
虎走「ちょっと小町...流石に可哀想だよ!この子、先輩の」
九頭龍坂「いつまでそんな顔しとるんや!!」
麗美「...!」
虎走「...!」
九頭龍坂「ひとつ教えといたるわ。寂しいのはアンタだけやない!!!ウチらやって、大事な仲間三人も亡くなっとるさかい…普通でいられるわけないやろ?」
麗美「…」
九頭龍坂「アンタの辛さなんてわからん。他人やもん」
麗美「...」
虎走「小町...」
九頭龍坂「せやけどなぁ、千巣はんが今のアンタ見て、どう思うかよう考え!!!!」
麗美「...!!」
虎走「...!」
九頭龍坂「アンタが一番ようわかるんやろ…」
麗美「......」
虎走「小町...」
九頭龍坂「もうええわ。行こか」
虎走「あ、うん」
2人は去った。
麗美「...」
今の私を見たら...か。
なんて言うんだろう。
わっかんない。あの人、何考えてるかわからんし。
でも多分、
喜んではいないな。
それに、認めてなんてくれない。
こうしてる間にも、きっと差は開いてる。
わかってる。
意思のない停滞は、後退と一緒。
少しずつでも、進まないと...
────
はるか「あ!麗美じゃん!」
莉茉「麗美!!!」
美波「麗美ちゃん久しぶり!!!」
麗美「...!皆...!」
はるか「おい麗美ー!心配したんだぞ〜?」
莉茉「元気だった?無理してない?」
美波「寂しかったよ〜!」
麗美「皆...皆ぁ...!」
莉茉「麗美どうしたのぉ〜」
美波「麗美ちゃんが泣いてるとこ初めて見た...!」
はるか「泣くなよ!!男だろ!!」
麗美「グスン...女の子だわ...!」
はるか「www」
その様子を遠くから五百旗頭と安西が見ていた。
五百旗頭「ひとまず、大丈夫ってことでいいのかしら」
安西「うん。よかった...!」
────
第365話 「進展」
────
《第2支部》
翌日
ジャスティンと莉茉はお茶をしていた。
ジャ「そうか。麗美が帰ってきたか」
莉茉「うん。でもまだ少し心配です。本人は大丈夫だって言ってるけど、彼女ああみえて繊細なので」
ジャ「だよね。わかるよ。でも心配はしてない。皆がいるからね」
莉茉「ジャスティンさんも気にかけてあげてください」
ジャ「麗美、プライドエベレストだからさ、皆の方がわかってあげられると思うけどな」
莉茉「まぁ...そうかもしれませんけど」
ジャ「三太郎は燃えてるぞ〜!幸二も、三太郎に稽古を付けてたら自分も燃えちゃってさ」
莉茉「へー!いい相乗効果ですね」
ジャ「そして一善からは、例の件の報告があるからね」
莉茉「聞きました。ノベルの幹部と極秘に接触していたんですよね」
ジャ「それに、なぎちんの研究結果のことも気になる。ゾクゾクするね」
莉茉「皆、すごい」
ジャ「見てて思わない?俺はさ、重なるんだ。一善、幸二、三太郎、はるか、麗美、美波。6人が、”あの6人”に」
莉茉「”シャックス”ですか?」
ジャ「うん。でも俺は、シャックスを越えられると思ってる」
莉茉「...!」
ジャ「”個”のシャックスなら、今の皆は”チームワーク”だ。それぞれがお互いを助け合い、尊重する。当たり前だけど、大事な事だよね」
莉茉「そうですね」
ジャ「そして、彼らには僕達上の人間の存在も必要だ。俺とリマリマ。五百旗頭さんや、他全てのスタッフ。俺たち大人が、彼らを導いてあげたいんだ」
莉茉「...」
ジャ「大人になると人は、どうしても人を疑って生きていかないといけない。俺はね、教えたいんだ。信じられる大人もいるということ、人を信じることは、悪いことじゃないよってことをね。生きていく上の一つの選択肢として、いつでも選べるように」
莉茉「...!」
ジャ「そして、”彼ら”にも見せてあげたい。今ここにいる、宝のような魔法使い達を...!近い将来、きっと...!」
莉茉「...?(彼ら?誰?)」
ジャ「ま、俺達も、出来ることをやろう!頼りにしてるよ!魔裁組の長女、リマリマ!」
莉茉「...はい!」
────
《廃校》
三太郎と幸二は、特訓を続けていた。
三太郎「ハァ...ハァ...」
幸二「ハァ...一善のこと...聞いたか?」
三太郎「何だ?」
幸二「またノベルの魔導師を1人倒したらしい」
三太郎「すげぇな!もう3人もあいつが関わってる!」
幸二「一善は本当にすごい。感謝しないとな。だが、討伐数よりも大事なものがある。魔法使いの使命は」
三太郎「人々の平和を守ること、だろ?」
幸二「そうだ。だから、俺たちの特訓は無駄じゃない。必ずや貢献し、ノベルを滅ぼすぞ...!」
三太郎「間違いねぇ...!見せてやるぜ、ついに完成した、”俺だけのエレメント”をなぁ!!」
────
《第2支部 / 会議室》
数日後──
この日は、実働班と研究班の合同会議が開かれた。
安西「えー、まずは、研究班から」
五百旗頭が前へやってきた。
五百旗頭「ついに完成したわ。このグローブ。”魔導書ゲッター”は、生きたまま、記憶等を失わずに人体から魔導書を摘出出来るものよ。まず、休む暇もなく研究に尽力してくれた研究チームの皆、本当にありがとう。お疲れ様」
パチパチパチパチパチパチ
そして五百旗頭は1つの魔導書を持ち上げて続けた。
五百旗頭「そしてこれが、実際にノベルの幹部の1人から奪った魔導書よ。一通り確認したけど、欠損等は見られなかった。よって、魔導書ゲッターは、試作品の段階から、実用化の段階へ切り替えていいという結論に至ったわ」
三太郎「すげー!」
幸二「ついにやったんだな」
はるか「てか、魔導書ゲッターってネーミングw」
美波「多分、渚ちゃんのセンスだよね...」
五百旗頭「実働班の履術者の子には、これから被検体として協力を要請すると思うわ。是非よろしく」
三太郎「任せろ!」
幸二「お前は違うだろ」
虎走「ぎゃは。おもしろそ」
九頭龍坂「ええけど、ネイルが隠れてまうなぁ」
村松「...」
安西「次に、じゃあ、一善くん」
一善「はい」
一善は、一番前の座席を去り、五百旗頭に代わってステージに立った。
────
第366話 「まさかの再会」
────
《第2支部 / 会議室》
一善「皆さんこんにちは。実働班の油木一善です。僕たちの殲滅対象である、魔導師集団ノベルについて。今日、重要参考人となる人物を連れてきたので、皆に紹介します」
一善は、会議室の入口に立ったヒメに目配せをし、ヒメはドアを開けた。
ギィィィィィ...
現れたのは、腕にギブスを巻いた百目鬼だった。
一善「紹介します。百目鬼藤君です」
はるか「お、なんか若い男!」
麗美「んね」
莉茉「怪我してる...?」
幸二「...」
三太郎「あ、あー!!!!」
幸二「なんだようるさい。友達か?」
三太郎「あいつ!!あいつだ!あいつ!!」
幸二「...?」
五百旗頭「まさか...?」
百目鬼「はじめまして。百目鬼藤です。実働班の皆さんには”お久しぶり”と言うべきかな?」
すると、三太郎が席から立ち、百目鬼に詰め寄った。
ジャ「おい、三太郎?」
幸二「?」
三太郎「おいお前!!よく生きてたな!!!俺のこと覚えてるか?!?!」
百目鬼「あぁ。スーパーヒーローだろ?」
三太郎「そうだ!!てか、何の用だ!!」
一善「え、2人は知り合いなの?」
三太郎「知り合いじゃねえ!けどいたろ?あの時!」
一善「???」
百目鬼「(やっぱ油木は覚えてないんだ)」
莉茉「三太郎くんとあの人知り合い?」
麗美「でもお久しぶりって」
はるか「私しらなーーーーい!!」
美波「私も...」
百目鬼「はぁ...覚えてないのかなぁ、君たちがロスト・フロンティアで激闘を繰り広げている時、僕もいたんだよ、そこに」
莉茉「へー!」
はるか「え、いたか?」
美波「覚えてない...」
幸二「あ、なんかいたような、いなかったような」
一善「...!(前に言ってた、”命の恩人”って...それに関係してるのかな?)」
五百旗頭「お久しぶりね」
五百旗頭「腑に落ちないけど、あなたには助けられたわ。礼を言う機会があってよかった。腑に落ちないけど」
百目鬼「はっ。まぁいいけど、俺もアンタに話したいことあるしなぁ」
ザワザワザワ...
一善「えー。はい、時間が無くなるので進めますね。彼は、履術者でありながら、ノベルに潜入していた過去を持ちます」
ジャ「...!!!」
幸二「ノベルに...?」
三太郎「潜入...?!」
百目鬼「あぁ。俺はノベルにいた1人の魔導師、ドイルに用があって、ずっと潜入していた。コードネーム・アランとしてな。幹部級の中では下っ端だったけど、情報は幾つかあるぜ...!だから俺は、お前らが知りたがってる情報を持ってるかもしれない」
三太郎「おい!ボスはどんなやつだ?!」バタッ!
幸二「お前らの目的はなんだ!!」バタッ!
ジャ「ガスマスクの魔者はいるか?!」バタッ!
百目鬼「おいおい、質問は一つ一つ丁寧にしてくれ。今から、あの子から報告がある。俺もちょいちょい補足する。質問はその後だ」
すると、ヒメがステージにあがった。
ヒメ「では私からは、ノベルの魔導師から摘出された魔導書の追憶調査の結果をレポートさせていただきます」
ヒメは、プロジェクターを起動させた。
────
第367話 「思惑」
────
《会議室》
ヒメ「この強震の所の履術者、寺杣定・通称ドイルは、あまりノベルの会合には顔を出しておらず、暴力団としての活動に本腰を入れていた様子が伺えました」
幸二「...」
一善「...」
ヒメ「そして、ノベルには複数の幹部と、それを取りまとめるボス・通称シェイクスピアという人物がいます」
百目鬼「もう知ってる人もいるかもだが、※第一事変での生存者の証言により、正体は白鶯蓮源という人物だそうだ」
※第一事変・・・鬼屋敷事変のこと
ジャ「白鶯...!」
三太郎「てか、お前ノベルのメンバーだったんだろ?なんで知らなかったんだよ!」
百目鬼「俺たちは互いに顔を見せない。唯一俺が顔を分かってたのは、エミリーという女幹部のみだ。組織のナンバー2だったが、もう死んだ」
幸二「氷室さんか...」
百目鬼「そして、この蝶が書かれた紙。これはノベルの関係者が使う、魔者を作り出す兵器だ」
はるか「あの気色悪い紙な」
莉茉「やっぱりノベルの仕業だったのね...!」
ヒメ「そして、記憶の断片から、ノベルが企んでいるある事が浮かび上がりました」
一同「...!?」
ヒメ「それは、近い将来、魔裁組が持つ全ての魔導書を奪うと同時に、東京を壊滅させることです」
一同「!!!!」
百目鬼「ノベルの目的は、魔法の力によって全人類を支配し、新たな世界秩序を作ること」
ヒメ「そして白鶯は自らの力で永遠にこの地球を支配することを目論んでいるわ」
五百旗頭「あの子が考えつきそうな事ね」
犬飼「あいつ...イカれてやがるぜ」
安西「怖くなってきた...大丈夫かな...」
ヒメ「そして、ドイルは、ノベルに協力する報酬の一つとして、不死の命を与えられる約束をしていた」
三太郎「不死...?!そんなこと出来るのか?!」
幸二「恐らく、不死の書だ」
三太郎「不死の書って...なんとか事件で、もう俺たちの手に入ってるんじゃ?」
幸二「いや、その後奪われたんだよ。当時実働班だった白鶯に...!」
三太郎「え?!?!」
ジャ「もう5年以上前の話だ。それから奴は、元々持ってた龍の書の力と、その不死の書の力で、手がつけられなくなってるはず...!」
三太郎「やっべぇな...!」
百目鬼「今ノベルサイドが掴んでる魔導書の所在は12個。俺の分を除いて11個だ。魔裁組は、この短期間で魔導書は手に入らなくとも、4人の幹部を潰してる。今奴らは、後継者探しに焦っているはずだ」
ヒメ「ノベルが持つ魔導書は、全て数字が大きい。履術者としての適性を持つ人は絞られる」
百目鬼「それに、思想をも統一するとなると、かなり時間がかかるはずだ。適合者になれなかった雑魚魔者の処理件数は多くなるかもだが」
ジャ「なるほど。だから”俺に持ちかけてきた話”に繋がるわけね?」
三太郎「ん?俺にしてきた話?」
ジャ「あぁ」
ヒメ「はい」
ジャスティンは、前に歩きながら話した。
ジャ「要するに、今が最後の休戦期間ってことさ。だから俺に'戦'力'の'補'強を急ぐように言ってきたんだよね?ヒメちゃん」
ヒメ「そうです。予めジャスティンさんと善能寺さんには、戦力の補強の準備をお願いしていました」
ジャ「グッドサジェスチョン!!でも俺も元々考えてたんだ。そうなると思って」
ヒメ「...!」
ジャスティンは、ステージに立った。
そして、ジャスティンは、全員の前で言った。
ジャ「確かに、今いるメンバーは強い。かなりの成長も見られる。だが、仲間は強いに越したことはない。これはスポーツじゃない。戦争なんだ」
一同「...」
ジャ「俺達は、”SHAKKS”を招集する...!!!!」ド ン !!!
────
第368話 「号令」
────
《会議室》
一同「!!!!!」
幸二「シャックス...!」
麗美「...!!!!」
はるか「シャックス?」
莉茉「...!」
美波「...?」
五百旗頭「あの子たちを...?」
一善「...」
三太郎「シャックス?ジャスさん!!シャックスってなんだ?赤髪か?」
幸二「それはシャンクスッッ!」
はるか「私もいまいちよくわからん」
一善「僕も具体的には知らないですね」
美波「聞いたことはあるけど...」
ジャ「そっか。知らない人もいるよね。説明するよ」
SHAKKS
史上最強の6人と言われた魔法使い達。
SH ・・・ 東海林唯(しょうじゆい)
A ・・・ 粟生屋昴(あおやすばる)
K ・・・ 皆藤理子(かいとうりこ)
K ・・・ 京金ルカ(きょうがねるか)
そして、
S ・・・ 千巣万之助
三太郎「なるほど、カツーン的なかんじか!」
はるか「カトゥーンな!」
美波「でも、史上最強の”6人”なんだよね?」
三太郎「確かに、5人しか言ってなかったぞ」
ジャ「あぁ。元々は、Hは白鶯蓮源のHだ」
三太郎「!!」
一善「そうか...なるほど」
ジャ「Hは言わずもがな俺達の討伐目標。そして、K・皆藤さんとS・千巣さんは...」
幸二「亡くなっている...」
三太郎「皆藤って人も?」
一善「なるほど...(※緑の孤島のコテージで幸二が言ってた、1人を除いて生死不明っていうのは、皆藤さん?のことだったんだ)」
※8巻参照
ジャ「つまり、俺たちが味方に付けられる可能性があるのは3人。東海林唯、京金ルカ、そして粟生屋昴。この3人を、俺たち魔裁組に引き戻す」
三太郎「おぉ!強い仲間が加わるのか!ワクワクしてきたぞ!」
はるか「これで百人力だな!ノベルなんてめじゃねぇ!」
幸二「いや、そう簡単にはいかないだろう」
三太郎ら「?」
麗美「そうね。彼らが最初から縦に首を振るかどうか...」
莉茉「...」
美波「え、何?どんな人達なの...?」
幸二「まぁ...一言で言うならクセが強い人達だな」
ジャ「あぁ。知っている人は知っているだろうが、彼らの説得は一筋縄ではいかないだろう。元魔裁組で、協会の協力者という肩書き以外は、ほぼ一般市民と遜色ない。前向きに戦いに身を投じてくれるとは限らない」
三太郎「そう...なのか」
はるか「いろいろあんだなぁ」
ジャ「だが、ブランクがあるとはいえ、彼らは全員26歳。白鶯と並んで今がマヂカラのピークと言える。ノベルが行動を起こす前に、俺達で彼らを説得し、戦力を整える!」
五百旗頭「...(神野くん...気合入ってるわね)」
ジャ「絶対に彼らが必要だ...ノベルを討つ為に...!」
次巻、物語の核心に迫る回想の物語、
”SHAKKS編”スタート──────!!
SOREMA -それ、魔!- 44へ続く。