SOREMA 其魔外伝 久品和義英雄譚・後編

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其魔外伝 久品和義英雄譚・後編

 

《浅草》


閻魔は、浅草の街を破壊し尽くして回った。何人かの魔裁組の魔法使いも駆けつけたが、苦戦の末戦闘不能に追いやられた。


閻魔「張り合いがないな。最近の魔者狩りは…!それとも、私が”人間”であるが故に本気が出せていないのかな…?」


キィィン!!!


そこへ、どこからともなくクナイ型魔具が投げられ、閻魔の頬に傷をつけた。


閻魔「!!!」


和義「青木葉閻魔ァ!!!!!!」

閻魔「(この男は…!久品和義!!!)」


和義は、閻魔に斬りかかる!!


ギィン!!!!!!


閻魔は、刀で受け返す。


閻魔「この覇気…只者ではないな!名をなんという…!」

和義「…!わかってんだろ!」

閻魔「…!」


カキン!!!


二人は間をとる…!


和義「久品和義、お前が最後に戦う男だよ」ドン!

閻魔「待っていたよ。お前を、ずっとな!」ドン!


和義「ギラファ!!!」

和義は、ギラファを顕現させた。

ギラファ「ウォーーーーー!!」

閻魔「…!!」

ギラファは、閻魔に向かって突進する…!


閻魔「”運”!!特別大業魔具!!ヴリトラ!!」

閻魔は、端と端に大きな鎌のついた薙刀を取りだした。

閻魔「消え失せろォ!!!!」

ズザァァァァァン!!!

ギラファ「ウォーーーーー!!!」ズバッ!!!

閻魔の一撃で、ギラファは大ダメージを負った!


和義「久品流!!!月跳(つくばね)!!!」

閻魔「…!(この男…!攻撃を受けた魔獣に目もくれず斬り掛かるだと…?!やはり只者ではない!!)」


ギッ   ターーーーーーン!!!!!


閻魔は、和義の攻撃を刀で受ける!

閻魔「…!」

和義「ギラファを心配してくれてるんだな…!だが、問題ないさ…!」


ギラファ「ウォーーーーー!!!」

ギラファは、閻魔の背後から和義ごと掴んで空中へ飛ぶ!

閻魔「…!(今度は自分ごと!)」

ギラファは、空中で和義を落とした。

閻魔「(落ちた?!いや…わざとか…?!)」


和義「久品流!!!紗輪狽(しゃりんばい)!!!」

和義は、刀で自身の周囲の縦360度円状に刀を振るった!


閻魔「!!!」ズバァァ…!!!


ギラファ「ウォーーーーー!!!」


ギラファは、閻魔をそのまま地面へ激突させた!!


ドガーーーーーーーーン!!!


閻魔は、地面にめり込んだ。


スタッ

和義「…」


ボロッボロッ

閻魔「ふぅ」パッ パッ

閻魔は起き上がった。

閻魔「残念。死にはしないよ」

和義「(最初に与えた頬の傷がいつの間にか消えている…そしてこのタフさ…間違いない)」

閻魔「わかったかな?久品和義。そう、私は蒼魔導書の”最終章”!五十一巻 不死の書に選ばれた人間さ…!」

和義「…!」


ヒュウウゥ…

風が強く吹く。


閻魔「お前がいくら強くても、私は倒せない」

和義「…」


閻魔「日暮真理はどこだ」

和義「!!!」


閻魔「動揺したな…本当は二人まとめて地獄に送ってやりたいところなんだが…今日は来ないのか?」

和義「あぁ。来ない」

閻魔「そうか…魔者狩りは続けているのか?」

和義「もうやめた」

閻魔「成程、残念だ」

和義「今後、お前の前に現れることは一切無い。それにお前はここで俺が倒す」

閻魔「私を殺すことは出来ないさ。まぁいい」

和義「…」


閻魔「ならば...私はお前を殺して、その後、目の下に結晶のような痣を持つ女を探して片っ端から殺してやろう…!お前への贈り物としてなァ!!!」

和義「!!!!」ブチィッ!!!


閻魔「まずはお前から死ね!!!」ビュゥゥゥゥゥ!!

閻魔は、鞭のような魔具を再び振り回した!


ガゴォン!!!


和義は間一髪で躱す!

和義「…!(この魔具!間合いが広い上に威力も凄まじい!!!まずいぞ!!!)」

閻魔「くくくっ!!!手も足も出ないか?!」

ビュゥゥゥゥゥ!!!ビュゥゥゥゥゥ!!


和義「!!!(奴の間合いに入らねば…!)」


閻魔「死ねぇ!!!」ビュゥゥゥゥゥ!!!


和義「!!!」キィン!!!!!

和義は刀で攻撃を受ける!


閻魔「これで終いだ!!!”運”!魔迅手裏剣!千本!!!」ズババババババババババ!!!

閻魔は、数え切れない数の手裏剣を和義に飛ばした!!!


和義「!!!(まずい!!)」

 

ピタッ!!

 

すると、手裏剣が、止まった。


和義「…?!時が止まった?!この術は!!」


???「巻き戻し」

 

ズババババババババババ!!!


和義に向かって飛んだはずの手裏剣は、全て閻魔に降り注ぐ…!!


閻魔「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」


???「遅くなったわねぇ」

和義「鬼屋敷さん!!!」

鬼屋敷「ハァ…和ちゃん。生きててよかったわ〜」ドン!


閻魔「…な、なんだ、てめぇは?」ポタッ  ポタッ

鬼屋敷「誰だって良いじゃないのよ〜」

閻魔「確かにそうだな。手を出すなら殺すまで」ダッッ!!


閻魔は、鬼屋敷に高速で襲いかかる…!


鬼屋敷「ハッハッ。巻き戻し」


ズザァァァァァ!


閻魔は、走り出す前の場所へ戻る。


閻魔「(…?元の場所に戻った?)」


鬼屋敷「ハッハッ!後、あんたの腹、見てみなさいよ」

閻魔「…?」


ド     ン     !

閻魔の腹部には、三本の槍が突き刺さっていた。


閻魔「グハッ…!!(いつの間に…!何だこの女の能力は…!攻撃が見えない…!)」ブッシャー!

鬼屋敷「ハッハッ…」


和義「…!(鬼屋敷さんの術は確かに強力…!だが、こんなに連発していては、鬼屋敷さんの体が…!)」


鬼屋敷「ぐはっ!」ドバッ!

鬼屋敷は吐血した。

和義「鬼屋敷さん!!!!」

閻魔「…!?」


鬼屋敷「ハァ…問題ないわよ…!和ちゃん、さっさとやりなさい…!」

和義「…!」

閻魔「くくっ(どうやらこの手の術は何度も出せないようだな…!)」  グイッ!!

閻魔は、自らの腹部に刺さった三本の槍を抜いた。


閻魔「振り出しに…戻ったな…!」

和義「…(いや、さっきのダメージは閻魔にとってかなり深手だったはずだ。不死とはいえダメージは蓄積するんだな。でも鬼屋敷さんはしばらく戦えそうにない…!)」

閻魔の腹部の傷は、少しずつ治癒し始めていた。


和義「(あの腹の傷が塞がれる前に決着をつける…!)」 ボワァッッッ!!!

閻魔「…!!(来るな…)」


和義「ギラファ!」

ギラファ「ウォーーーーー!!」

閻魔「同じ手は食らわぬ!」ビュゥゥゥゥゥ!!

ギラファ「ウォーーーーー!」ドビャァァ!!

ギラファは、閻魔の攻撃を食らうも、閻魔の鞭にしがみつく!

閻魔「…?!」

和義「久品流!!!閃振(せんぶり)!!!」


シャキーーーン!!


閻魔「がぁ!」シュパッッッ!!

和義は、目にも止まらぬ速さで閻魔を斬りつけた!

和義「…!」

ギラファ「ウォーーーーー!!」

ギラファは、鞭を掴んだまま、空へ飛んだ!そして、閻魔も宙へ浮く。

閻魔「…!」   パッ!

閻魔は、鞭を離す。

和義「空中ではまな板の鯉だな」

閻魔「…!」


和義「久品流!!!楓乱(ふうらん)!!!」ジャキーーーン!


閻魔「…くくっ」

閻魔はわざと腕を斬られる!

和義「…!」

閻魔「斬られると分かっていれば怖くないのさ…!この世の全てはかすり傷」

和義「!!!」

閻魔は、斬られながら、攻撃を仕掛ける…!

閻魔「なんせ死なないからな…!」

和義「…!!!」

閻魔「”運”!!特別大業魔具!!インドラ!!」

閻魔は、巨大な三又の槍で和義を串刺しにした!


グサッッッ!!!


和義「あぁぁぁ!!」

閻魔「吹き飛べ!!」 ビュンッッッッ!!!!

閻魔は、槍ごと和義を放り投げた!


ドォォォォォーーーーン!!!


閻魔「まだまだだ!”運”!!特別大業魔具!!シヴァ!!!」

閻魔は大きな槌を取りだし、大きく振り下ろした!


ドゴォォォォーーーン!!


地面が抉れ、大きなクレーターが出来た!


スタッ

閻魔「くくっ。死んだか。腹の傷ももうすぐ治ってしまうが…?」

シュウゥゥゥ……

閻魔「ん?」


クレーターの真ん中に目をこらすと、和義を庇ったギラファの姿があった…!

和義は起き上がり、ギラファを労わった。


和義「ありがとうな…ギラファ」

ギラファ「ウ、ウォ…」


閻魔「虫ケラが…」


和義「…!!!」ギロッ!!

閻魔「…」


和義「そろそろお終いにしようか。青木葉閻魔!!!」

閻魔「やれるものなら…やってみろ!!!」

 

和義「行くぞ…!!!」 スチャ

閻魔「…!」 カチャ

和義「久品流!!!閃振!!!!」 キィン!

閻魔「(さっきの技か…!受けきれる!)」


シュパッッッッ!!!


閻魔「ぐはっ!(なんだ?!さっきより速い…?!)」ブシャッ!


和義「久品流!!!月跳!!!」

閻魔「!!!」ブシャアー!!

和義「久品流!!!灼焼(しゃくやく)!!!」

閻魔「…!(技の速さが全て上がっている…?斬られると分かっていても追いつけない…!いや、違う!!!)」

和義「…」ドン!

鬼屋敷「…!」ドン!


閻魔「(あの女だ!あの女が、私の動き”だけ”遅くしているのか…?)」

鬼屋敷「(長くは続けられない…!和ちゃん…!)」


和義「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

閻魔「!!!」

和義「久品流!!!剣刃騎(つばき)!!!」


ズバァァァァーーーーーーーーン!!!!!


閻魔「がはっ…!!」ブッシャーーーーー!!!


閻魔はその場に膝をついた。


鬼屋敷「ごぼっ…!!」ドビュッ!

鬼屋敷は、大量の血を吐いた…!


和義「…(鬼屋敷さんはもう限界だ…!どうする…!)」


閻魔「ハァ…ハァ…ここまでやるとはな…流石、我がギンガを壊滅させただけの事はある…」

和義「…」

閻魔「お前の強さは何の為にある?」

 

和義「抱きしめたいものがあるのさ。平和な未来の先にな...!それを果たす為さ」

 

閻魔「平和か...それも面白い...だが、我々ギンガの思想は不滅…!いつか必ずや!魔法が支配する世界が訪れる…!我々の思想は海を越え…!この世界をも我がものにする…!全ての人間は我々の思想に跪くといい…!!くははははは!!!!」

和義「…お前の好きにはさせない」


閻魔「久品和義…!冥土の土産だ…これで最後…!」

和義「!!!」

閻魔「”運”!!!」


ドン!!!!


閻魔は頭上に巨大な大砲のような魔具を出した!


閻魔「普通の人間なら、膨大なマヂカラ消費量に耐えきれずに死ぬ程の代物…特別大業魔具…ヴィシュヌ…!!」

和義「…!」

鬼屋敷「何よ…あれ!」

閻魔「こいつがフルパワーで炸裂したらば…ここから3キロは地図が空白になる…!」

和義「!!!」

閻魔「くくくっ。久品和義!!!お前は終わりだァ!!!!!」

和義「貴様ァ!!!!」

閻魔は、大砲に両手をかざし、マヂカラを充填し始めた。

閻魔「安心したまえ。日暮真理も、お前の元に送ってやるさ」ポポポポポポポポ…!

和義「覚えておけ…俺がここで死んでも関係ないんだよ…」

閻魔「は?」


和義「真理に手を出してみろ…?地獄の底から何度でも蘇ってお前を殺しに行くぞ」

 

閻魔「…ほほぅ。面白そうだな…!」ポポポポポポポホ…!

和義「…!!」

閻魔「くははは!!お前の遺言はそれでいいか?!もうそこまで死が迫っているぞ…!」ポポポポポポポホ…!

和義「俺は死なない…!」

 


閻魔「新しい世界の幕開けだ!!!!ヴィシュヌ!!!」

和義「!!!!」

 


閻魔「狩鬼(カルキ)!!!!!!!」

 


ボガァァァァァーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

 


それは、全てを破壊する最凶の光線!!!

 


ボガァァァァァーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!


和義「…!!!」

鬼屋敷「和ちゃん!!!!」


和義は、閻魔の攻撃に飲み込まれた!!


閻魔「終わったな…!」

和義「ぐぅぅおおおお!!!!」バババババ!!

閻魔「?!」


閻魔の放った攻撃から、和義は魔法陣で身を守っていた!

 

閻魔「守護を展開している…!」

 

閻魔の放った光線は、更に強さを増していく...!!

 

ボガァァァァァーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

 

和義「くっ…行くぞ…!!!」バババババ!!

閻魔「くははははっ!!守護を展開したまま、動けるはずが無かろう…!!」

和義「前へ!!前へ…!!!」

閻魔「?!?!?!」


和義は、身体中に魔法陣を纏い、攻撃を浴びながら中を進んだ!


和義「たとえこの身が滅びようとも…お前だけは!!!」

和義、閻魔の至近距離へ迫る…!!

和義「久品流……!!!」

閻魔「愚か!!!灰と化すがいい!!!!」

閻魔は、更に攻撃の出力を上げた!!

 

ボボボガァァァァァァァンッッッ!!!!!!!!!

 

和義「くっ…がぁぁぁぁぁ!!!」


和義は、後ろに吹き飛ばされる!!!!

閻魔「勝負あったなぁ!!久品和義!!!」


ドッカーーーーーーーーーーン!!!!!

 

────


閻魔の放った光線は、周囲をえぐり摂り、甚大な被害を出した。


閻魔は、膝をついた。


閻魔「ハァ…終わった…奴は?」

閻魔は、ぼやける視界で、和義を探した。


閻魔「…木っ端微塵か」

 


ヒュゥゥゥゥ……

 


すると、空中に天高く登る謎の影が見えた。


閻魔「…あれは?!」


閻魔が目をこらすと、それは、ボロボロになったギラファに股がって空を飛ぶ和義だった…!


閻魔「…(生き…てる!?)」

鬼屋敷「…!!!」


閻魔は、もうマヂカラをほぼ使い果たしていた。


しかし、和義も同じ。ギラファは、閻魔の上まで和義を運ぶと、和義の意に反し消えてしまった。


和義「ここまで飛んでくれりゃ、十分だ…」

閻魔「…!!!」

和義「……!!!」ギロッ!

閻魔「!!!」


和義「終わりだぁぁぁぁぁ…!!!!!」

閻魔「ああああああ!!!!」

 

 

ズ     ド     ン!!!!

 

 

和義は、閻魔の頭上から、刀を地面に突き刺した。その強き剣は、悪しき魔導師の体を貫いた。

 

和義「久品流…!!覇王天(さぼてん)…!!!」

閻魔「……………!!!」

 

──────

────

──


時は現代──────


《第1支部


ジャ「青木葉はその後拘束され、10年もの間監禁された。でも青木葉は、その間食糧も水も一切与えずとも死ななかった」

一善「…!」

ジャ「10年たったある日、青木葉は絶命した。気がついたら目の前に不死の書が落ちていてね、何があったのかはわからんが」


ジャスティンは、一善に青木葉事件と、久品和義について、知っていることを全て話した。ジャスティンは、冬美と一善が親子であることは知らない。


つまり一善は、自らの出生と、母親の真実について、まだ知らない。


一善「なるほど…そんな悲惨な事件があったんですね…」

ジャ「あぁ」

一善「それで?和義さんはその後?」

ジャ「久品和義は、閻魔との死闘で受けたダメージによって、翌年亡くなった。和義には娘が居たそうだが、娘とは満足に話せないまま、息を引き取ったらしい…」

一善「…」


ジャ「その後、その娘に善能寺さんが魔導書を渡したんだ。母真理の形見である、追憶の書をね」

一善「俺、追憶の書の履術者の子知ってます!その子の苗字も久品なんです」

ジャ「へぇ!俺は面識がないから、知らなかったけど、ま、そうなるよね。その子、ずっと海辺の家暮らしでさ、大人との接触が禁止されてたらしいよ。ほら、マヂカラを嗅ぎ取って娘を狙ってくる魔導師もいるからって」

一善「だからあの時…」


そこへ鬼屋敷がやってくる。


鬼屋敷「少しいいかしら」

ジャ「!!!鬼屋敷さん?」

一善「どうしてここに?」

鬼屋敷「油木一善くん。あなたに話があるの。少し時間いいかしら」

一善「は、はい…」


────

───

──


一善「…!!!俺が…?」

ジャ「久品和義の息子…?」

鬼屋敷「真理ちゃんの新しい名前を私達は知らなかったから、善能寺さんが、当時二人を担当していた医者に聞いたらしいわ…油木冬美。それがあなたのお母様の名前よね?」

一善「えぇ…はい」

鬼屋敷「やはり、運命だったのね…!」

一善「お母さんが…魔法使いだった…なんて…!!」

一善は衝撃を受けた。


一善「てか、俺、双子だったんだ、ほほう」

ジャ「ほほうって。そっちは割とすんなり受け入れるんだね」

一善「元々お父さんのこと知らないって辺りから、どんな境遇でもおかしくないなって思ってたので…」

ジャ「心の準備は出来てたってことね」

一善「でも驚きダナー。ヒメちゃんと兄妹だったなんて」

ジャ「んね」


鬼屋敷「一善くん」

一善「?」

鬼屋敷「あなたのお母さんは…どんな人だった?」

鬼屋敷は、涙を浮かべながら、一善に語り掛ける。

一善「…!僕のお母さんは────」

 

暫く話した後、鬼屋敷は、去っていった。

 

────


東京スカイツリー / 天望回廊》


鬼屋敷「(真理ちゃん…長生きして欲しかったわ…和ちゃんの”願い”は叶わなかった…でも…)」


回想────


鬼屋敷「和ちゃん…本当にそれでいいの?」

和義「えぇ。だって、お別れじゃありませんし」

鬼屋敷「?」

和義「この世界から魔法が無くなったら、必ず迎えに行きます。そして、許してくれるのなら、家族4人で平和に暮らします」

鬼屋敷「!!」

和義「その為に俺は、目の前の敵を全て滅ぼします。それが、平和な未来への道と信じて────」


回想終わり────


鬼屋敷「(向こうで仲良くしてくれていたら、それもいいわね…)」

 

《第2支部

ジャ「つまり、一善のつのキングは、父親譲りの能力ってことになるな」

一善「こんな偶然あるんですね…」


ボワン!!


一善は、つのキングを召喚した。

ジャ「びっくりした!急に出すじゃん…」

一善「ねぇ…つのキング」

つのキングは、まっすぐ一善を見つめた。

一善「俺のお父さんは…どんな人だった?」

ジャ「…」

つのキング「……」


一善「なんて、聞いても分かるわけないよね…!ごめんつのキング」

一善は、つのキングを撫でた。

つのキング「ウォ……」

 

────

 

久品和義の死後、ヒメは幼くして追憶の書の履術者となる。

そして、和義の操蟲の書は、発見されること無く、ただひっそりと、愛する家族と平和に暮らすはずだったあの場所に現れた。それはまるで、英雄が残した未練を物語るかのように…

 

それからその魔導書は、しばらく人の手に渡ることは無かった。”とある少年”が偶然見つけるまでは…

 

一善「ジャスティンさん。俺さ」

ジャ「?」

一善「全部、運命だと思うんだ。今ここにいるのも多分そう。俺は、魔法と切っても切り離せない星の元に生まれたんだよ」

ジャ「…」

一善「お父さんも、お母さんも、立派な魔法使いだったんだよね。だから…」

ジャ「…?」


一善「俺も、2人の息子として相応しい、強い魔法使いになりたいって思った」

ジャ「…!」

 

────


《公園》

一善は、澄んだ空を見上げている。

一善「(お父さん、お母さん、俺を産んでくれてありがとう。これからもっともっと強くなって、2人が安心出来るように、平和な未来を築くよ。だから今は、見守っててね)」

 

 

”俺が君を守る”

 

 

一善は、また一歩、未来へと歩き出した。

 

 

SOREMA 其魔外伝 久品和義英雄譚

 

 

【完】

 

 

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