SOREMA -それ、魔!- 31

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SOREMA -それ、魔!- 31

 

「クラクション」

 

────


第264話 「百目鬼とアラン」

 

────


四ツ目通り裏》

一善「君が持ってるその紙...何?」

百目鬼「ん?これ?おもちゃ」

一善「???」

百目鬼「これを使えば、塵一つあれば魔者が作れるんだ」

一善「...!ならさっきの魔者はお前が...!」

百目鬼「あぁ。そうさ」


バッ!


一善は、百目鬼の胸ぐらを掴んだ!

 

一善「ふざけるなよ?!どういう手口か知らないが、あれでもし1人でも人が死んだらどうするつもりだ?!今までも同じような魔者を何体か倒したが、それも全部お前の仕業か!?!」グイッ...!

百目鬼「おいおい!まてまて。俺が魔者を作ったのは今回が初めてだ。そして、今回の魔者は誰も襲ってないだろう?ただ君達魔裁組を誘き寄せるために俺が仕組んだ罠だよ...!」


一善は手を離した。

一善「聞きたいことが山ほどある。一つ一つ全部答えろ」

百目鬼「答えなかったら?」

一善「消す」


百目鬼「...こわいなぁ。ま、いいよ。答えてあげる」

一善「お前は誰だ」

百目鬼百目鬼藤。一般の魔法使いさ。そして...」

一善「?」

 

百目鬼「魔法犯罪組織”ノベル”のメンバーさ」

 

一善「?!魔法犯罪組織?!」

百目鬼「あぁ。コードネーム”アラン”。これが俺の組織での名前だよ」

一善「お前、魔導師か...?」

百目鬼「おいおい。俺は君の味方だって言っただろう?俺は魔法使いだって」

一善「全て分かりやすく説明しろ」


百目鬼「犯罪組織ノベル。組織のボス ”シェイクスピア”を中心とした魔法犯罪組織さ。構成員は10人前後。魔者もいれば魔導師もいる。その境界線は曖昧さ」

一善「...」

百目鬼は、蝶々紙を風になびかせて、不敵な笑みを浮かべる。

百目鬼「この蝶々の書かれた紙。これは俺たち組織の人間が作ったものさ。まだテスト段階だけどね」


一善「...お前らの目的はなんだ?」

百目鬼「ずばり、魔法を使った世界征服さ。今俺たちは、13の魔導書の在処を知っている。もちろんほとんど履術者がいる。この力を使って、魔裁組が持つ全ての魔導書を奪い、魔法の力を使って世界をこの手にしようってのが、俺たちの野望さ」


一善「(13個...?ってことは、魔裁組が把握していない魔導書の全てはこいつらが分かっているということなのか?なら、白鶯もそのメンバー?お母さんから奪われた予知の書の在処を知ってる...?)」

百目鬼「まぁ、ここまでは、'ア'ラ'ン'と'し'てのお話で、本題はここからだ...」

一善「?」


百目鬼「ノベルを破滅させるために、俺と組まないか?」

 

────


第265話 「駆け引き」

 

────


四ツ目通り裏》

一善「壊滅...?お前はそのメンバーなんじゃないのか?」

百目鬼「俺はとある魔導師を探してたんだ。そしたら、魔導師が集まる組織が見えてきた。それがノベルだった」

一善「...」

百目鬼「俺はその魔導師を殺したいんだよ。その手がかりを掴むためにノベルに潜入したってわけ。俺も履術者の端くれだから、簡単にコードネームまで貰えたよ」

一善「で、その魔導師ってのは?」

百目鬼「名前も言いたくないねぇ...でもまだ生きてるよ。勝手にくたばってなければな」


一善「その魔導師は、ノベルの中にはいたのか?」

百目鬼「俺たちはコードネームでしかやり取りをしない。それに、ごく一部のメンバーにしかお互いの顔は明かさないんだ。だから俺も顔が分かるメンバーは数える程しかいない。その中にはいなかった」

一善「なるほど」

百目鬼「第四十三章 強震の書。これが俺の追ってる魔導師の能力だ。お前たちが保管していなければ、きっとノベルの1人として生きている」

一善「...(四十三章は欠番だったはず...)」

百目鬼「ノベルは近いうちにお前たちに奇襲を仕掛ける筈だ。そして全ての魔導書を奪う算段がついてる。お前たち魔裁組にとっても、今ノベルを叩くメリットはある」

一善「...」

百目鬼「それに、俺をお前たちの支配下に置くことも重要ではないか?なにせおれの胸(ここ)には魔導書が眠ってるからな」

一善「...(こいつが言っていることは一理ある...)」

百目鬼「俺と組まないか?」


一善「...少し考える」

百目鬼「君、名前は?」

一善「油木一善」

百目鬼「油木一善クン。明日、12時にスカイツリーの駅改札に来てくれないか」

一善「なんで?」

百目鬼「男同士のデートは嫌いかな?」

一善「...は?」

 

────


《ノベルの拠点》

 

────


ド       ン       !


空は夜のように暗く、赤く巨大な月が照らしている。

幾つも並び立つ高層ビルの屋上の様な空間に、それぞれ一人一人が違うビルの屋上に立っている。その場にいる者の顔は見えず、黒く靄がかかっている。


ドン!

エミリー。ノベルのナンバー2。

エミリー「遅いわね。何やってるのかしら、あの子」


ドン!

クリスティ。ノベル幹部。ゲイ。

クリスティ「全くもう...焦らしちゃって♥」


ドン!

サド。ノベル幹部。

サド「まぁ、待ってれば来るだろう」


ドン!

ドイル。ノベル幹部。

ドイル「...」

 

ゴゴゴゴゴ...!!


ドン!

デュマ。ノベル幹部。

デュマ「あ!来たんじゃない?向こうのビル!」


シュゥゥゥゥ...

 

「待たせたな」

 

エミリー「やっときたわね。シェイクスピア


ドン!

シェイクスピア。ノベルのボス。顔は見えない。

シェ「さぁ、始めようか」

 

────


第266話 「標的」

 

────


《ノベルの拠点》


シェ「全員揃ってるか?」

クリスティ「全員って...私たち何人いるか分からないじゃない〜?」

デュマ「確かに!顔も見えないし!」

エミリー「ウルフが居ないわ。あとは新人のアランが」

シェ「その2人はいいだろう。他はいるなら始めようか」

サド「今日は、何故我々を呼んだのだ?」

シェ「あぁ。魔裁組には、少なく見積っても20は下らない数の魔導書がある。それらを全て手にするためには、魔裁組を殲滅せねばならない」

クリスティ「なんで殲滅するのよ。仲間にしちゃえばいいじゃない」

サド「お前は馬鹿か。魔裁組は魔法を無くすことを最終目標としている。我々の思想にとっての反乱分子は全て抹消せねばならない」

クリスティ「なるほどねぇーん」


シェ「話が逸れた。今回お前達を呼んだのは、魔裁組殲滅作戦の前準備として、摘んでおきたい芽があるからだ」

サド「なるほど」

デュマ「なにそれなにそれ!」

シェ「1人はこの男だ」


ボワァァン...!

上空にとある顔が浮かぶ。

 

クリスティ「わぁお!いい男ねぇん♥」

サド「こいつは?」

シェ「千巣万之助。魔裁組のエースだ。こいつを先に消しておきたい」

クリスティ「うふん。なるほどねぇ」

デュマ「やりたいやりたい!俺やりたい!」

エミリー「いいえ、この男は私がやるわ」

シェ「そうだな...俺もエミリーに任せようと思っていた...」


デュマ「ちぇっ。なんでだよ!」

エミリー「私は顔見知りなのよ...この男と。私がまだ'魔'法'使'い'と'呼'ば'れ'て'い'た'時のね」

シェ「奴は強い。だがエミリーなら、心理的に隙をつける」

エミリー「そうね。久しぶりだわ。本当の名前で振る舞うのは...!」


シェ「そしてもう1人は...」


ボワァァン...!


ある1人の顔が浮かぶ。


エミリー「あら」

サド「ほほぅ」

クリスティ「なるほどーん?」


シェ「こいつは俺が直々に消しに行く。布石はもう打ってある」

デュマ「なんだー。俺はお留守番かー」


シェ「何か、異議のある者は」


???「一ついいかな。シェイクスピア様」


シェ「なんだ?カフカ


ドン!

カフカ。ノベル幹部。魔者。

カフカ「俺、ちょっと殺したい奴がいるんだよねぇ...」


シェ「というと?」

カフカ「俺が操っていた蝶の魔者が2体同じガキにやられたんだよ...あいつはちょっと、生かしておけねぇや...」

シェ「どんな男だ」

カフカ「虫の魔獣を使う若い男だよ...エレメントの色は緑...!」

シェ「魔裁組の新顔か。まぁ、好きにするといい...だが相手の戦力は削ぎすぎるなよ...雑魚はまとめて処理する。その方が我々の力を誇示できるからな」

カフカ「ヒヒヒ。わかったよ。感謝する。シェイクスピア様」


ズズズズ...


カフカは、黒い闇の中に沈んで行った。


シェ「まぁ、敵の駒を散らせるには丁度いいだろう」

エミリー「いいの?もしカフカが死んだらどうするの?貴重なコマが減るわよ」

シェ「どうにだってなる。俺たちは契りの指輪によって、例え死んでも、魔導書はこの場所に帰って来る」

サド「魔者の我らでも、奴らに魔導書が奪われることは無い」

クリスティ「心配しすぎじゃな〜い?可愛い顔が台無しよエミリー♥ま、見えないけどねん」

エミリー「...ふっ。ま、いいわ。でも魔導書に選ばれる人間は多くない。お前達も、簡単にくたばらない事ね」


ズズズズ...


エミリーはカフカと同じように闇の中へ沈んでいった。


デュマ「ま、そんな簡単にしなないっしょ!」

ドイル「...」

シェ「お前達も、魔裁組の人間と遭遇したら分かっているな?殺すか、逃げ切るかだ。準備が整うまでまだ少し早い...勇み足は禁物だ」


ズズズズ...


全員闇の中へ消えた。

 

────


第267話 「クラクション」

 

────


《第2支部 / 実働班ルーム》

とある日。


三太郎「ジャスさん。今日は静かだな」

ジャ「実働班は俺たち2人しか居ないしな」

三太郎「一善は?どこ行ったんだ?また任務か?」

ジャ「いや、今日は予定があるって。原宿に」

三太郎「原宿!じゃあ遊びにいったのかな?デートとか!」

ジャ「女の子ではないってさ」


三太郎「そっかー。でもよかったわ。最近の一善、優しいんだけど、どこか怖いっていうかさ。いつも気を張ってたから、リラックス出来る時間があるならよかったよ」

ジャ「確かにな。魔法使いとしての責任感を強く感じているように見える」

三太郎「俺も一善とスポッチャとか行きたいな...」

ジャ「...連れてってやりなよ。喜ぶと思うよ」

三太郎「よし!今度落ち着いたら誘ってみよっと!」

ジャ「俺も行きたい!」

三太郎「ジャスさんも行こうぜ!」

ジャ「いえーい!!」


三太郎「あと、女子勢は?」

そこへ五百旗頭がやってきた。

五百旗頭「あの子達なら、越前さんの家に泊まってるわよ」

ジャ「あ、なぎちんちっすー!」

三太郎「おうなぎちん!お泊まりか?!いいな!」


五百旗頭「最近よく泊まってるわよね。前から越前さんが三人娘の面倒を見てあげていたのは知ってたけど」

ジャ「三人娘は3人とも長女じゃん?だから、甘えられる年長の女の子の存在は貴重なんだろ」

三太郎「それに莉茉っちさん。あぁみえて寂しがり屋だしなぁ」

五百旗頭「独り身の越前さんにとって3人は、妹の様な存在...なのかもしれないわ」

ジャ「ヒメちゃんも一緒なのかね」

五百旗頭「そうらしいわよ」

ジャ「楽しそうでいいねぇ」


三太郎「ひぇっくしゅん!!ひぇっくしゅん!!!あれ、急にくしゃみが止まらねぇ!ひぇっくしゅん!!...」


ジャ「どうした?花粉症か?」

五百旗頭「きっと今頃、三太郎君の悪口で盛り上がってるんだわ」フフフ

ジャ「ははっ!まちがいないな!」

三太郎「やめてぇ!こわい!!」

 

────

 

《麻布付近商店街》

千巣は、マクドナルドを出て六本木方面に商店街を歩く。

千巣「...(シェイクうま)」チューチュー

千巣は、シェイクを飲みながら、車道を横切る。わたり切ると、片手に持った階級試験の結果用紙に視線を落とした。

千巣「...(特級...ねぇ)」


プーーーーーーーーーー!!


すると、大きなクラクションが鳴った。

千巣「!!(ノイキャン貫通して聴こえるってどんな音だよ!)」

千巣が横に目をやると、黒い高級車の左ハンドルから女の顔が覗いていた!


千巣「...あなたは!」

エミリー「久しぶりね。万之助君」

 

────


第268話 「小夜のドライブ」

 

────


《原宿 / 竹下通り》


百目鬼「うわー。人がいっぱいだぁ」

一善「...」

百目鬼「おいおい油木君。今日は休日だろう?しかも原宿に来てるんだよ?何そのローテンション。楽しもうぜもっと!クレープでも食う?」

一善「逆になんで君と原宿に来ないと行けないわけ...」

百目鬼「君じゃない君じゃない。俺は百目鬼藤。ちゃんと名前があるんだから、呼んでよ」

一善「百目鬼。これで十分だな。帰る」

百目鬼「おいおい...つれない男だなぁ...」

一善「...何をすれば満足なの!」

百目鬼「本日の目的は、俺が悪いやつじゃないよってことを、油木クンに教えてあげたいんだ」

一善「...」


百目鬼「とりあえずクレープ食お」

一善「男2人で?」

百目鬼「嫌ならプリクラでも撮る?」

一善「もっと嫌だわァ!」

 

────

 

《麻布付近商店街》


プーーー!  プップーーーー!

エミリーの車は、後ろの車の交通の妨げになっていた。

エミリー「ほら」ポンポン

エミリーは、助手席を叩いた。

千巣「は...?」

エミリー「後ろの車に迷惑でしょう。早く乗りな」

千巣は渋々車に乗り込む。


ガチャッ!


エミリー「久しぶりねぇ。元気?」

千巣「まぁ。季彩先輩こそ、何してるんですか?」

 

氷室季彩。エミリーの本名

エミリー「まぁ、貴方に話すほどのことは無いわ」


千巣「...」

エミリー「今日は何してたの?」

千巣「散歩です」

エミリー「そう。暇なのね」

千巣「夜から予定が...」

エミリー「少しドライブしましょう?お話がてら」

千巣「...?」


エミリーは都内を適当に走らせた。千巣は終始窓の外を見ていた。


そして日が落ちる頃、エミリーの車、メルセデスAMG GT Cロードスターはアクアブリッジを渡る。


千巣「これ、どこへ向かってます?」

エミリー「千葉方面かしら」


千巣「困りますよ。俺予定あるって」

エミリー「近所にね、昔からやってたパン屋があったの」

千巣「...急に何の話ですか?」

エミリー「そのパン屋はそれなりに人気だったんだけど、ある時、とある人気のパンが出来て、とても賑わった時期があったの...」

千巣「...」

 

────


第269話 「時に善意は、刃物と化す」

 

────


アクアライン

エミリー「でも、そのパンは、原料の値上がりや、人手不足もあって、棚から姿を消したのよ」

千巣「...」

エミリー「そしたらそのパン屋にたくさんの人が押しかけたの。そのパンを何とか復活させてくれって」

千巣「...」

エミリー「その人たちはきっと、そのパンを本気で好きだったんでしょうね。その思いを伝えるべく、押しかけたのだろうけど、パン屋のオーナーは頭を抱えちゃったのよ。そのパンは簡単に作れなくなったから」

千巣「ほぅ」

エミリー「その時期を境にそのパン屋に足を運ぶ人は減ったわ。あんなに盛況だったのに、ちらほらと見える程度になった。そんな時、オーナーは意を決して、その人気だったパンを復活させようと奮起したのよ」

千巣「...」

エミリー「すると口伝に噂が広がって、何日かは人が溢れたわ。皆、ありがとう、ありがとうって。でも」

千巣「?」


エミリー「近くに新しいパン屋が出来たの。それもすごい有名店の2号店」

千巣「...」


エミリー「そしたら、バケツを返したように人は居なくなって、皆その新しい店に行ってしまったの。おかげで店は大赤字。オーナーは頭を抱えた後、店を閉じたの」

千巣「...」

エミリー「すると今度は、店が無くなった悔みや悲しみの言葉や投稿がSNSなどに溢れたのよ。なんで、どうしてって...」

千巣「...」

エミリー「人って残酷よね」

千巣「...」


エミリー「あなた、まだ魔法使いやってるのよね。なんで?」

千巣「それは...」

エミリー「あなたが守っている人間たち。人は人を助ける時、助けようとする人を”綺麗な心の持ち主”だと錯覚する癖があるけれど、そんなことは無い」

千巣「...!」


エミリー「そんな綺麗なものじゃない。人は」


千巣「...あなたも昔は、魔法使いでしたよね」

エミリー「やめたのよ。もううんざりしてたから」

千巣「季彩先輩...?」


エミリー「私は今、もっと楽しいことをやっているから...!」

 

────


第270話 「終着駅」

 

────


アクアライン

千巣「楽しいこと...?」

エミリー「あなた達、魔法を無くすために戦っているんだろうけど、本当にそれでいいの?」

千巣「というと?」

エミリー「魔法を無くすということは、即ちあなたは普通の人間になるということ。魔法を持っているあなたは今、特別な存在。その力で、どうとでもなれるのよ。あなたの心が許す限り」

千巣「...」


エミリー「あなたも、私達と来ない?魔導師としての道」

千巣「!!!!」


エミリー「あなた達がどれだけ人を救おうと、それに見合った見返りは絶対に帰ってこない。だって、皆何食わぬ顔して生きているでしょう?魔法を知らない凡人たちは、私たちが命を削る戦いの前線に立たされていることを知らないもの...」

千巣「アンタ、魔導師に堕ちたのか...?」

エミリー「あなたも消費されるだけ。そして私は堕ちたんじゃない。気がついたの。この力の本当の使い方」


千巣「...違うな」

エミリー「?」

千巣「俺の戦いのゴールは、感謝されることじゃない。もっと手前にあるんだよ」

エミリー「...?」

千巣「大切な人が傷つかなければそれでいい」

エミリー「は?」


千巣「ま、俺も自分と関係ない人間を助ける。その人も誰かにとって大切な人かもしれないから。だから別に、その人に感謝される所まで、俺のレールは伸びてないんだわ」

エミリー「...変わった人ね」

千巣「何となく分かったよ...アンタが今日、何か禍々しい気配を纏っていた理由がな...!」

エミリー「ふぅん」

千巣「車を止めろ。ちょっと外で話をしましょうか...!」ゴゴゴゴゴ...!

エミリー「あら、決裂?なら可哀想だけれど...ここで死んでもらうしかないようね...!」


エミリーは、アクセルをベタ踏みした!

千巣「...!!!」


エミリー「魔導結界...展開!!!」


車は、高速で光の中に飛び込んだ!!!

千巣「...!!(眩しい...!独特なマヂカラの気配...!!)」


千巣が目を開けると、そこはサボテンの生えた、まるで西部劇の舞台のような空間だった...!


千巣「...!(ここは?)」

エミリー「魔導結界...”荒野”」

 

────


第271話 「怒りの荒野

 

────


《魔導結界・荒野》

千巣「こんな術、昔は使わなかったよな」

エミリー「そうね」

千巣「なんですかこれは」

エミリー「教えてあげるわ。これは魔導結界。私を中心に展開される異空間領域よ。私たちの組織、ノベルの中でも、選ばれたものにしか与えられない特別な術...」

千巣「(ノベル...?)」


エミリー「ここを出るには、私を倒すか、私が術を解くかしかない」

千巣「なるほど。どうすれば解いてくれる...?」

エミリー「あなたが、私の誘いに頷いたら、考えるわ」


千巣「なるほど、なら残念ですが、さようなら」


キィィィィン...!!!


千巣は、四十六眼を発動させた!

エミリー「ふふっ」

千巣「...?(昔とマヂカラの気配が大きく違うな...まさか)」


千巣は、四十六眼を解いた。


エミリー「あら、やらないの?待ってたのに」

 

千巣「あんた、'履'術'者だな?前と違う」

 

エミリー「ふふっ。あなた、なんでもお見通しなのね。そうよ。あの時の私だと思って貰ったら大間違い。あなた達モンスター6人の後塵を拝する私はもう居ないわ」

千巣「でも俺はあんたを尊敬していたんだぜ?」

エミリー「そう?それはあの時伝えて欲しかったわねぇ!」

カチャ...!


バァン!!バァン!!


エミリーは、ピストルを放つ!


千巣「赤のエレメント...!唐紅!!」


ボワァァン...!!


エミリーの弾は唐紅に弾かれる!

エミリー「ふふっ。封印(ロック)...!」

千巣「...?」


エミリー「ふふっ!くらいなさい!」カチャ!


バァン!!バァン!!


千巣「赤のエレメント!唐紅!」

エミリー「ふっ」ニヤッ


バスゥーーン!バスゥーーン!!


エミリーの放った銃弾は、千巣にヒットした!

千巣「...!」ゴボゥ!!


ビチャッ!


千巣は吐血した。

千巣「...?!(エレメントが...不発?!)」

エミリー「ふふっ。もっと遊びましょう?万之助君?」

 

────


第272話 「封印(ロック)」

 

────


《魔導結界・荒野》

千巣「...」ポタッ ポタッ

エミリー「私ね、組織ではこう呼ばれてるの」

千巣「?」


エミリー「”エミリー”。これが私のコードネームよ」


千巣「何の組織だ…?」

エミリー「素晴らしい仲間たちよ。魔法をこよなく愛する良き仲間」

千巣「...そうですか...ゲホッ。それはよかったな。魔導書の力まで貰っちまってよ...!」ポタッ...

エミリー「私には才能があったみたい...なにせ、'魔'導'師'に'な'れ'たんだから。普通なら、魂を食われて魔者になるのが関の山ってとこよね」

千巣「...みたいだな」


エミリー「ま、お話しながら、ゲームも続けましょ」バァン!!


千巣「...!(エレメントは使えないかもしれない、なら!)守護!!」カキィン!!


エミリー「ふふっ。封印(ロック)」

千巣「...?」


エミリー「あなたじゃ私には勝てない...私はそう思うけれど、どう?考えを改める気になった?」

千巣「それは期待するな...!俺が外道の道に進むことは、絶対に有り得ない...!」

エミリー「そうかしら。それに、さっきから全く攻撃をしかけてくる気配がないけれど、やる気あるの?」

千巣「そりゃ俺だって、一度同じ釜の飯を食った人間を殺したくはないさ...でも、やらないといけない時もあるんだよな。だから許してくれ」

エミリー「...!」

千巣「”運”!!」


シーーーーーン


千巣「?!(今、夜叉を出そうとしたよな?だが、出てこない...?)」

エミリー「ふふっ」

千巣「運!運!」

エミリー「あらら〜?どうしたの〜?自慢の刀はどうしたのかしら?」

千巣「(なんで...?基礎魔法が使えない...?)」

エミリー「なら攻撃しちゃうわよ?こっちから」バァン!


千巣「守護っっ!!うわぁぁぁ!!!」バシューーン!

千巣は、膝をついた。


エミリー「なんか、可哀想になってきたわね。一時代を築いたあの”SHAKKS(シャックス)の千巣”が、まさか私の前で無様な姿を晒してるだなんて」

千巣「...その呼び方はやめてください」ゴボッ!


エミリー「(私の能力は、蒼魔導書第二十八章、封印の書。円陣内で動いたマヂカラの発生源に負担をかけて、一定時間マヂカラを流せなくする。エレメント、魔導書、基礎魔法。それぞれ別の発生源からマヂカラが流れている...だけどその3つさえ塞げば、どんな技だろうと関係はない...あとはその眼。眼さえ封印(ロック)出来たら、私の勝ちは確実なものになる...!)」


千巣「...(わかんねぇけど、この人の能力は恐らく技を封じる能力だ。エレメントは出せそうにない。そして守護を封じられたのと同時に、運も出来なかった。走も試しているが使えない。この眼は生きてる...だが、あと1回のチャンスでこのロックのカラクリを解こうとするのはリスキー過ぎる...つまり...)」

エミリー「...」


千巣「(あと一撃しか...攻撃できない...!!)」

 

千巣、絶体絶命──!

 

SOREMA -それ、魔!- 32へ続く。

 

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第264話 「百目鬼とアラン」

第265話 「駆け引き」

第266話 「標的」

第267話 「クラクション」

第268話 「小夜のドライブ」

第269話 「時に善意は、刃物と化す」

第270話 「終着駅」

第271話 「怒りの荒野

第272話 「封印(ロック)」