SOREMA -それ、魔!- 41

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SOREMA -それ、魔!- 41


「幻の中で」

 

────


第346話 「無情」

 

────


《とある神社》


バァァァン!!!


銃声が鳴った。


藤「...(なんだ?)」

紅「...(でかい音がしたな)」

墨「...(爆竹か...?)」


倒れた山吹を目の当たりにした浅葱と松葉は驚愕する。


浅葱「(缶蹴りどころじゃない...よな?!)」

松葉「(何があった...?山吹!!)」


2人は、隠れている場所から山吹の元へ走った!


浅葱「山吹!!!」

松葉「山吹!!!」


すると、山吹は銃で撃たれて死んでいた。


浅葱「!!!!」

松葉「!!!!」


2人は倒れている山吹を見て言葉を失った。


寺杣「お友達かい...?」 カチャッ

浅葱・松葉「...!」ビクッ!

2人は、寺杣の後ろにもう1人、倒れている男を見た。

松葉「(この人が山吹を...!!)」

浅葱「(誰なんだ...?こいつ)」

寺杣「...」

寺杣は無言で2人に銃を向けた!

浅葱「や、やめてくれ!」

松葉「誰か!!!!」


バァァァン!!


バァァァン!!


紅「...?!(浅葱?)」

墨「...!!!(この音、爆竹じゃない...!まさか拳銃?!)」

藤「...(松葉の声!!浅葱も一緒か?!それに'妙'な'気'配がする...!)」


残った3人は、隠れた所から出てきた。


紅「浅葱!!松葉!!山吹!!」

墨「一旦中断だ!どこだ?」

藤「皆!返事してくれ!!」


3人は境内の中心で合流した。


藤「紅!墨!お前らさっき」

墨「あぁ、大きな音がしたな」

紅「2人の声も聞こえた!」

藤「何か起きてる。手分けして探そう!」

墨「わかった」

紅「おう!」


3人は散らばって他の3人を探す。


寺杣「...(流石に4人の死体をそのままにしていては足がつく...ならば)」

 

墨「皆いるか?」チラッ

墨は、寺杣を見つける。

寺杣「...」

 

墨「...?!(誰だ?!)」

寺杣「ガキ...考え事の最中だ、邪魔をするな」

墨は、寺杣の後ろに山吹らが倒れているのを見る。

墨「...?山吹...?浅葱...!松葉!!」

寺杣「お前もこいつらの連れか」

墨「アンタが...やったのか...?」

寺杣「...」

墨「警察...!」


墨はその場から走り去った!


墨「(どうして...!どうして...!早く警察か救急に連絡しないと...!!)」

寺杣「...(逃がしたらまずい...まぁ逃がさないが)」

 

────


第347話 「只者」

 

────


《とある神社》


墨は境内を抜け、下へ降りる階段へと走り去ろうとする!


紅「おい!墨!どこ行くんだ!」

墨「紅!逃げろ!ヤバいやつがいる!!早く!!」

紅「ヤバいやつ?」

墨「殺される!早くしないと!」

紅「!!!」

2人は階段へ向かう!!


ザザザァッ...!


すると、高速で寺杣が回り込んだ!


寺杣「どこへ行くんだ?」

墨「!!!」

紅「!!!(銃を持ってる?!)」

寺杣「都合が悪いんだよ、お前たちに逃げられると」

墨「!!!」

墨はその場から逃げた。

紅「墨!!」

墨「お前も早く逃げろ!!!」

紅「!!!」

寺杣「面倒だな」 カチャッ

墨と紅は走って寺杣から逃げる!


ガサガサ...

近くへ藤がやってくる。藤は草陰に隠れて様子を見る。


墨「(音がしたな...藤か...?ここで友人だとバレたら藤まで殺される!!頼む!!逃げてくれ!!!)」

墨に寺杣が追いつく。

寺杣「まずはお前からだな」

墨「!!!」

藤「...?(誰だ?あの男)」

墨「......!」

寺杣「...」カチャッ


バァァァン!!


藤「!!!!」

紅「墨!!!!!!」


墨は死んだ。


寺杣「後1人か」

紅「!!!(ヤバい...!何とかしないと...!)」

藤「(墨が...?あれは銃...?なんなんだ...アイツ...?それにどこか...俺と同じ気配がする...?!)」


寺杣は、階段の前に立ち塞がる。

寺杣「残りの1人は上手く隠れたか。まぁいい...出口はこの階段ひとつしかないからな。それに...」


紅「(クソ!アイツがいて逃げられない...!)」

藤「(とにかく...警察に連絡しないと...?!他の皆は無事なのか...?!)」

藤は隠れながら携帯で警察に連絡する。


寺杣「出てこないのならば...死んでもらうぞ...?(早くしないと、あのガキがサツに連絡していたら面倒だ...サツ殺しは後々厄介だからな)」

紅「(このまま朝まで隠れれば...!)」

藤「(よし...!警察には連絡した。後は...!)」


寺杣「ならば...やるか」ゴゴゴゴゴ...!

寺杣は、地面に手を置いた。

紅「(何をしてる?)」

藤「?」


寺杣は、地面に亀裂を走らせた!!

紅「!!!!」

藤「!!!!」


寺杣「この神社ごと潰してやる...!」

紅「(な、なんなんだよ!!あいつ!!)」

藤「(...?!)」

 


ガッッッッッ...!!!!

 


ドッゴォォォォォォン...!!!!

 


境内は真っ二つに割れ、神社の建物は崩壊した!


寺杣は階段を離れ、神社の奥へと向かった。


紅「...!今なら...!!」

紅は、階段へ向かって、下へ降りようとした!

藤「(...あれは!紅!)」

すると、寺杣は振り返り、銃を構えた!

寺杣「ははっ。ガキの考えなぞ簡単に読める」カチャッ!

紅「!!!(...!まずい!!!!)」

紅は振り返った。


藤「紅!!!!」

寺杣「死ね」


バァァァン!!


寺杣「...?!」


すると、寺杣と紅の位置は入れ替わっていた!!


紅「...?!」

寺杣「何が起きた...?!」


藤「ハァ...ハァ...」

 

────


第348話 「事故」

 

────


《とある神社》


紅「...(藤!!)」

寺杣「なんだ...もう1人いたのか...それに」

藤「......!」

寺杣「お前、魔法使いか...?」

藤「魔法...?」

寺杣「(なんだ、魔者狩りではない...野良か)」

藤「...紅...俺の能力でお前を送る。お前は逃げろ」

紅「お前はどうするんだよ!」

藤「俺は逃げられる。この能力で」

紅「...本当か」

藤「それは本当だ。あいつももしかしたら、俺と同じ'異'端'者かもしれない」

紅「...」


寺杣「じきにここは崩壊する。いや、崩壊させる。どうせ助からない。助けるつもりもない」


寺杣は、持っていた銃をこちらへ投げた。


寺杣「もうこれは要らん。あっても邪魔になる」

紅「...!」

藤「...」


藤は銃を拾った。


寺杣「ガキにはチャカの使い方も分からないだろう。まぁ使えたところで...だけどな」

藤「お前...!」

紅「どうする...藤...!」

 


藤「...紅、走れ!」

紅「!!」


パッ!!


藤は、紅を寺杣の背後に転送させた!紅は、階段を駆け下りる!!


寺杣「!!!」

藤「お前の相手はこっちだ...!」

寺杣「!!!」

藤は、寺杣と、自分の位置を入れ替えた!!

寺杣「...!」

藤「行かせない...!」

 


藤は、階段を背にし、紅を追わせる道を断った。

 


紅「...!!(藤!!お前だけでも無事でいろよ!!)」

紅は階段を駆け下りる!!


寺杣「それで守りきれたつもりか...?!」

藤「...!!」

寺杣「お前のお仲間は皆死んだ」

藤「!!!」

寺杣「後1人だな」

藤「俺達は殺させない...!」

寺杣「フッ」


ビュンッ!!


寺杣は、藤の横を一瞬で通り過ぎ、階段へ向かった。


藤「!!!!(早すぎる...?!?!)」

寺杣「逃げ切れると思ってるのかな...?」

藤「紅!!逃げろ!!!」

紅「?!?!」


寺杣は、階段を足で砕き、亀裂を走らせた!!


ゴゴゴゴゴ...!!


紅「...!!(足元が揺れてる...!!地震...?!前に進めない...!!)」

寺杣は紅に迫る!!


藤「紅!!!うわぁぁぁ...!!」

藤は揺れに足を取られその場で倒れ込む...!!

寺杣「終わりだな...!!!」

寺杣は、亀裂を開き、紅は亀裂に引き摺り落とされる!!

紅「!!!クソ...!!足が...!!!」


紅は、亀裂に完全に引きずり込まれた!!


ゴゴゴゴゴ...!!!


紅「うわぁぁぁぁぁぁ...!!」

寺杣「ははっ。いいか?これは、”不慮の事故”だ」

 

 

 

ガッシャァァァァァァァンッッッ...!!!!!!

 

 

 

紅は、亀裂に挟まれて潰された。


藤「紅ーーーーーーー!!!!!!!」

 

────


第349話 「百目鬼藤」

 

────


《とある神社》


寺杣「...」

藤「...!!!」


神社は寺杣が起こした揺れによって半壊し、地面には亀裂が走っていた。


寺杣「安心しろ、お前もお友達同様、ここであの世へ送ってやる」

藤「やめろ...やめろ!!!」

寺杣「お前も俺と同じ、”魔法使い”だったようだな」

藤「(この力が、魔法ってやつなのか...?)」

寺杣「これだけ暴れたら、警察の前に魔者狩りが来てしまうな...そろそろ潮時だ」

藤「...魔者狩り?」

寺杣「魔導師としての俺は存在してはいけない存在...」

寺杣は、再び地面に手をやった。

寺杣「全て終わらせる...!」

 


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...!!!!!!!

 


藤「!!!!」


強い揺れが辺りを襲った!!!


木々は大きく揺れ、神社は全壊、地面には大きな亀裂が幾つも走る。

 


ガラァァァァァン...!!!

 


ドッゴォォォォォォン...!!!

 


藤「...!!!(とにかく...何とかしてここから離れないと...!)」


寺杣「逃げられるわけが無い。あばよ、青春ごっこの少年達」

藤「!!!!」


寺杣はその場から去った。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...!!


藤「(紅...山吹...浅葱...松葉...墨...!!!)」

 

────

 

事件後、小高い丘の上にあった神社は、丘ごと崩壊。5人の少年と、1人の成人男性の遺体が発見される。全員、死因を特定出来ない程の外傷を確認、事故死として処理された。


少年・百目鬼藤は、生死不明とされたが、捜索後数年経っても音信不通の状態が続いた。そのため、生きていると考えた者は、彼の帰りを長らく待っていた遺族含めても、殆どいなかった。

 


この事件について、辺りに住む者は神社に祀られた神の祟りだと噂したとか。

 

────

 

《とある河川敷》


藤「.........」グスン...


藤「皆ぁ...!!!!!」

 

 

回想終──────

 

《魔導結界・古城》

 


シュゥゥゥゥゥゥ...!!!!!

 


キ        ィ        ン        ッ...!!!!!

 


百目鬼の鋏を、ドイルは棍棒で受ける...!!


ドイル=寺杣「5年前のあの日だと?何の話か覚えていないな」

百目鬼「覚えてないか?俺の顔!この能力!5年前、お前が夜の神社で皆殺しにした高校生の生き残りだ...!!!!」


シュッッ...!!!!


百目鬼は、ドイルと距離を置く。


ドイル「夜の神社...高校生...皆殺し」

百目鬼は、ドイルを正面から睨みつける。

ドイル「思い出したような...」

百目鬼「...!」

ドイル「お前か、あの時はまだ野良魔法使いだった。あそこから逃げて生き延びたって訳か」

百目鬼「神に生かされたと言うべきかな...!」


百目鬼は再びドイルに迫る!!


ガッ...!!!!!


百目鬼「あれから俺は、魔法についての情報をかき集めた...!魔導師や研究員の元についてお前の足取りを探った...!ここまで来るのに5年もかかった!!!!」キリキリキリ...!

ドイル「...!」キリキリキリ...!

 


ギ  ィ   ン   !!!!

 


百目鬼「今日で終わりにしてやる...!!寺杣定!!!!!!」

ドイル「...!!!」

 

────


第350話 「幻の中で」

 

────


《魔導結界・古城》


百目鬼「妖鋏・加具土命!!!朝霧!!!!」ジャキッ...!

ドイル「...!」バァン!!


ドイルは、拳銃から弾を放つ。

ドイルの撃つ弾は、実弾の他に、強震の書の能力である、”揺れる空気砲”を弾の形に加工した物がある。この弾は弾痕を残さない。


百目鬼「はぁ!!!!」ギィン!

百目鬼は鋏を振り回す!

ドイル「...!」ガチッ...!

ドイルは、棍棒と拳銃で受ける!


百目鬼「...!!」パッ!

百目鬼は、ドイルの後ろに回り込んだ!

百目鬼「死ね!!!!」グサッッ...!

百目鬼さ、ドイルの背中に鋏を突き刺す!

ドイル「ぐはっ!」ブシャッ!


すると、ドイルは背中に刺さった鋏に手を回した!

百目鬼「?!」

ドイル「共震!!!!」


グラグラグラグラ...!!!!


百目鬼「ぐわぁぁぁぁ...!!(脳が揺れる...!!)」

百目鬼は、手から鋏を離した。

ドイル「ふっ!!!」ドガァン!


ドイルは、百目鬼を蹴り飛ばす!


ドッカーーーーーン!!!


百目鬼「ハァ...ハァ...」

ドイル「懲りたか?」コツ コツ

ドイルは、百目鬼の鋏を持ったまま、壁に打ちつけられた百目鬼に近づいて行く。ドイルは、鋏を投げ捨てる。


百目鬼は、ドイルを見上げて睨みつける。

ドイル「...腹が立つな」

ドゴォン!!!!

ドイルは、百目鬼の顔面を棍棒で殴りつける!

百目鬼「...!!!!」グハッ

ドイル「...!」ドゴォン!

百目鬼「!!!」グハッ

ドイル「...」ドゴォン!

百目鬼「!!!」グハッ


ドイルの顔面に返り血が飛び散る。

ドイル「...お前がやっていることはな、逆恨みだ」

百目鬼「...!!!」

 

────

 

《魔導結界・古城 / 一善の精神世界》


一善は気を失っていた。


一善「...?」

 


一善の目の前には真っ白な空間が広がっていた。気を失った一善は、自分の意識の中をさまよっていたのだった。


一善「...ここは?」

 

すると、一善の脳裏に声が響く。


???「立て!」


一善「...?!」


???「立つんだ!」


一善「き、君は?」

つのキング「俺は、君の相棒だ!」

 


一善の目の前に現れたのは、つのキングを名乗る赤髪の男性だった。

その姿は、かの英雄、”久品和義”を彷彿とさせるものだった。

 


一善「つのキング...?」

つのキング「一善、君は、なぜ戦っている」

一善「?」

つのキング「何の為に戦う。己の体を傷つけて」

一善「それは...」

つのキング「...」


一善「お母さんとの約束を守るため」

つのキング「...」

和義の姿をしたつのキングは、一善の話を真っ直ぐな眼で聞いている。

一善「一日一善。俺はその言葉を胸に、ずっと今日まで戦ってきた。俺が強くなって、誰かが傷つくことから守れるなら、それが一番、今の俺に出来る”善いこと”だと思ってたから」

つのキングは黙って一善の話に耳を傾ける。


一善「でも俺は、道を踏み外した...」

つのキング「...?」


一善、独白──────!

 

────


第351話 「我が為」

 

────


《一善の精神世界》


一善「俺はね、目の前の任務に夢中になるあまり、お母さんとの約束を忘れていたんだ」

つのキング「...」

一善「'友'達に、どうして魔法使いをやってるのか聞かれて、答えられなかった。思い出せなかった」

つのキング「...」


一善「だから、俺は悔しいんだ。すごい」

一善は、ズボンの脇を握りしめた。

一善「俺のお母さんは、すごい魔法使いだったんだ。でも、俺を産む為に、魔法使いを辞めた。自分の記憶を全て失うことになっても」

つのキング「...」


一善「俺のお父さん。見たことはないけど、すごい魔法使いだったんだよね。そしてそれは君が一番よく分かってるよね、つのキング」

つのキング「...」


一善「俺は魔法使いなんかじゃなかった...ただのロボットだ。人として、人間として戦うことをいつの間にか忘れていたんだ」


つのキング「...」


一善「俺はお父さんやお母さんみたいにはなれない。お母さんも悲しんでると思う。俺が、いつの間に変わってしまってたことを」


つのキング「...」


一善「俺はもう、魔法使い失格なんだ。だからこれからはせめて、ちゃんと一人の男として、自分に出来ることをやりたい。お母さんとの約束をしっかり守りたい。そう思う」

 


つのキング「失格...?それは違うぞ」


一善「...!」

 

────

 

《魔導結界・古城》

 


ポタ...ポタ...

 


百目鬼「ハァ...ハァ...逆恨み...?!」


ドイル「そう、逆恨み。お前は復讐をしているつもりなのだろうが、そんなものはエゴでしかない。果たして死んだお友達は望んでいるのかね。こんな馬鹿げたことを、5年も」

百目鬼「エゴだと...?」


ドイル「あぁ、そうだ」

百目鬼「あいつらの時間は、あの日止まってしまった。お前が止めたんだよ!!だから俺は、お前を討つまで、俺の時間をあいつらのために使うと決めた!」

ドイル「あいつらのため?死人が何を望むかなどわかりはしないだろう?」

百目鬼「...」

ドイル「こう思っているかもしれないぞ...」

百目鬼「...?」

 


ドイル「お前だけ無様に逃げて、呪ってやるとな...!ハッハッハ」

 


百目鬼「...!!」

ドイル「お前は、仲間を見捨てて逃げたのだろう?」

百目鬼は歯を食いしばってドイルを睨みつける。

ドイル「いいか?アランくん。お前は、お前自身のエゴで、死んだ人間の感情を決めつけて、自分の行動を正当化してるだけだ」

百目鬼「...」

ドイル「極めて自分勝手極まりない、ただの狂犬だ」

百目鬼「...!!」

ドイル「反吐が出る」

 


百目鬼「...」

ドイル「...」

 


百目鬼「だったら...」

 


ドイル「...」

 

 

 

百目鬼「────」

 

ドイル「...!?」

 


百目鬼は、何を思う────!

 

────


第352話 「軌跡」

 

────


《魔導結界・古城》


百目鬼「だったら...」

ドイル「...」

 

百目鬼「俺は幸せ者だな」

 

ドイル「...?!は?」


百目鬼は、ふらつきながら立ち上がった。


百目鬼「俺は恵まれてる。なんでかって?そいつらの為なら死んでもいいと思える程の奴らに出逢えたんだからな...!!」

ドイル「?!」

百目鬼「確かに、死んだ人間の考えなんてわからねぇ。でもな」

ドイル「...」


百目鬼「あいつらは、自分に危機が迫っている時でも、お互いを心配するような、そういう奴らだった。あの時も...!」

百目鬼の中に、”あの日”の情景が思い浮かぶ。


百目鬼「今、俺が生きてて恨んでる奴なんて、絶対にいねぇ!!!」


ドイル「なるほどな。気持ちが悪い」

百目鬼「...言ってろ」

ドイル「...」

百目鬼「呪い...そうかもな。俺はあいつらに呪われているかもしれない。だが、呪い上等...やってやるさ、俺が納得するまで...!」

百目鬼は、不敵な笑みを浮べ、ドイルを見上げる。


ドイル「まぁいいさ、どのみち死ぬんだ、答え合わせはあの世でゆっくりやるといい」カチャッ


ドイルは、百目鬼の顬(こめかみ)に銃口を突きつけた。

百目鬼「...(ハァ...あぁは言ったが、もう術を発動できる程の力はねぇ...!)」

ドイル「...」

百目鬼「...(ここまでか...)」

ドイル「あばよ」

 

 

 

バァァァァン!!!!

 

 

 

”6発目”の銃声が虚空に響く...!!

 

────

 

《一善の精神世界》


つのキング「一善、俺はずっと君と過ごしてきた。小さい頃から、君を見ていた」

一善「...」

つのキング「魔法使いになった時も、俺は君と一緒に戦った」

一善「...」

つのキング「だがどんな時も、君が正義の心を忘れたことは、一度だってなかった!」

一善「...!」

つのキング「君のお母さんは悲しんでいない。君のお父さんも、君を見たら誇らしく思うだろう。こんなに優しく、逞しい男に育ってくれたことを」

一善「...!つのキング...!」


つのキング「己を誇れ、一善」


一善「...!!」


つのキング「俺の相棒が、君でよかったと、俺は心から思っている。どんな時も自分に出来ることを精一杯やる。背伸びしたっていい、醜くてもいいと、君はただ、どんな時も折れずに前へ前へと突き進んだ」

一善「...」


つのキング「君がどのようになろうとも、君の心の奥底には強い正義と、信念を感じた。俺には分かる」

一善「...」

つのキング「俺は君の心に住み憑いた相棒(まじゅう)なんだよ」

一善「...!!」


つのキング「まだやれる、君が今やらないといけないことはなんだ?」

一善「...」

つのキング「君が一番分かっているはずだ、一善」

一善「やらないといけないこと...それは」


つのキング「(君を誇りに思うよ、一善。こんなにも真っ直ぐ育ってくれたことを...!)」


一善「行かないと...!」


つのキング「俺が君を守る...!だから、行け!一善!!!」

一善「...うん!!!」

 

 

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ...!!!

 

 

 

《魔導結界・古城》

 


バァァァァン!!!!

 


百目鬼「...!!!」

ドイル「...?!?!」

 


ドイルが放った銃弾は、百目鬼の顔を逸れて、後ろの壁を貫いた。拳銃を握ったドイルの右腕は、1人の少年によって掴まれていた。

 


ドイル「...!!」

一善「...」

 

百目鬼「油木...!」

ドイル「お前か...」

 

────


第353話 「轟くは稲妻」

 

────


《魔導結界・古城》


一善「大丈夫?」

百目鬼「死ぬとこだった...助かったぜ」

ドイル「魔者狩りか...今こいつを殺すところだ、邪魔をするな」

一善「やらせない。友達なんだよ」

百目鬼「...!!」

ドイル「また友達ごっか。馬鹿だらけだ」

一善「友達を傷つける奴を、俺は絶対に許さない」

ドイル「なら...二人まとめて殺るしかないわけだ」

 


ドゴォン!

 


一善は、ドイルの腕を掴んだまま、腹に一発入れる!


ドイル「ぐはっ...!」

ドイルは、拳銃を手放す。


一善「お前には強い嫌悪感が湧く。悪い奴は嫌いだ」


ドッカーーーーーン!!!


一善は、ドイルを蹴り飛ばした!

 


ガラガラ...

 


ドイルは怒りで全身の血管が浮き上がっている。

ドイル「ハァ...生きて返さないぞ?」ピキピキ

一善「...」

ドイル「木端微塵にしてやる...!!!」ゴゴゴゴゴ...!!

一善「(来る...!)」

百目鬼「!!!」

一善「百目鬼、動ける?」

百目鬼「少しならな...不甲斐ない」


一善「わかった。俺がお前を守る」

百目鬼「...!」


一善「走!」


ビュンッ!


ドイル「死ねぇ!!!!」

一善「緑のエレメント...!!!浮雲!!!」ドゴォン!

ドイル「地捲り(じめくり)!!!」

 

ガチィン!!!!!

 

ドイルは、地面をちゃぶ台のように返し、一善の攻撃を防いだ!


百目鬼「...(俺も少し、動かねぇと...!)」

百目鬼は、印を結ぶ。


ドイル「そのままくたばれ!小僧!」

一善「...!!!」

 


ドッカーーーーーン!

 


ドイルは、盾にしていた地面を爆破させた!

ドイル「ハァ...どうだ?」


シーン


ドイルの視界には、一善はいなかった。


ドイル「ハッ。吹き飛んだか」

一善「緑のエレメント!風流仏!!!」

ドイル「後ろ...?!?!」

百目鬼「ハァ...」ニヤッ


ガァァァァァン!!!!


ドイル「ぐはっ!!!」


一善「つのキング!!」

つのキング「ウォーーーーーー!!!」


ザァァァァァン!!!


つのキングの角が、ドイルの腹を切り裂いた!!


ドイル「ぐわぁぁぁ!!」ブッシャーーーー!


百目鬼「まだだ...!!運!加具土命!!」

ドイル「!!!」

 


百目鬼「妖鋏・加具土命!!”稲妻”!!!!」

 

 

 

ジ    ャ     ッ     キ     ーーーーーーー     ン  !!!!

 

 

 

ドイル「!!!!!!!!」ブッッッシャーーーー!!!


ドイルは、地面に膝をつき、倒れた。


一善「ハァ...ハァ...」

百目鬼「ハァ...やるな、油木クン」

一善「だいたいわかった。君の能力は」

百目鬼「ははっ」


そして、戦闘の様子を建物の陰から隠れて見ている1人の少女がいた。

 

ヒメ「...!(ハァ...見つけた...!一善とお友達!)」

 


VS”ドイル”、佳境──────!!

 

SOREMA -それ、魔!- 42へ続く。