SOREMA -それ、魔!- 17

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SOREMA -それ、魔!- 17

 

「メッセージ」

 

────


第145話 「緊急会議」

 

────


《第2支部/大会議室》

安西と犬飼が手紙を発見したその日、魔裁組第2支部の実働班8人+研究班約100人の全員が、会議室に集められる。


安西「皆さん知っての通り、五百旗頭博士が、この手紙を置いて、姿を消しました」

安西は、大きなプロジェクターに手紙を投写する。


ザワザワザワザワ....


はるか「なぎちん...」

ジャ「...」

美波「渚ちゃん...」

麗美「なんで...」


研究員A「五百旗頭さんは大丈夫なのか?!」

研究員B「あの人居ないと、研究進まないよ!!」

研究班「そーだ!そーだ!」ザワザワ...


安西「い、一旦!お静かに!」


シーン...


犬飼「五百旗頭さんのデスクには、もう1つ、差出人不明の手紙が置いてあった!」

一同「!!」

 

”拝啓、五百旗頭渚様。


お久しぶりでございます。魔法界人間国宝、いや、人殺しの悪魔様。つきましては、貴女の”過去に犯した大罪”について、示談の用意が出来ましたご報告と共に、私の研究の成果を貴女にもご覧頂きたく、連絡した次第でございます。前向きな返答をお待ちしております。それが貴女のためでもありますから。


全てはこの国の平和の為に。”

 

三太郎「は?!」

一善「...なんだ...これは?!」

はるか「なぎちんが」

麗美「人殺しの」

美波「悪魔...?」


莉茉「ジャスティンさん。何か心当たりないですか?」

ジャ「わからない...何も思い当たる節がない」

三太郎「こんなん、デタラメに決まってるだろ!」

幸二「(何かヤバい奴らに巻き込まれたんじゃないか?)」


研究員A「あの、過去に犯した大罪って何だ?」

研究員B「まさか、五百旗頭さんってマッドサイエンティストなんじゃ?!」


はるか・麗美「あ゛?!」ギロッ


研究員「ひぇっ!」ビクビク


安西「ま、まず!今後について、話し合いたいと思います」


研究員C「話し合うも何も、五百旗頭さんがいないと何も出来ないよ!」

研究員D「でも実は五百旗頭さん、本当に犯罪者なんじゃないの?」

研究員E「後ろめたさで魔裁組から逃げたのか?」


ザワザワザワザワ...


安西「...(皆の心も不安と焦りでバラバラだ...どうすれば...!)」


バタッ!


三太郎が立ち上がった。

三太郎「とりあえず。なぎちんを探しに行こう!」

 

────


第146話 「信じない」

 

────


《第2支部/会議室》

三太郎「なぎちん本人に聞いてみないとわからないだろ!だから、なぎちんを探そう!」

麗美「探すって、どうやって探すのよ」

三太郎「そんな遠くに行ってないだろ?!走って探すんだよ!」

はるか「でもさ、なぎちんは探さないでって言ってんだろ?」

三太郎「だからって探さないのか?」

はるか「それは...」


莉茉「私は、五百旗頭さんに話を聞きたい。だから、私も三太郎くんに賛成!」

美波「私も!渚ちゃん本人が安全か心配だし...」

三太郎「よし!じゃあ決まりだな!」


幸二「待った」


三太郎「?!」


幸二「俺は反対だ」

三太郎「は?!なんで」

幸二「五百旗頭さんが”探すな”と言ったのには理由があるはず。五百旗頭さん本人に不都合があるか、もしくは、”俺たちに危害が及ぶか”だ」

三太郎「...?」

幸二「五百旗頭さんは頭のいい人だ。いつも最善の方法を考えて行動している。だから、五百旗頭さんを信じるなら、探すなと言われたなら探さない。ひたすら待つ。それが俺たちの出来る”最善の選択”だ」


三太郎「おいお前、それ本気で言ってるのか?もしなぎちんが誰かに攫われてたらどうすんだよ!!お前、人殺しとか大罪とか、本気で信じてるのかよ!!!!」


幸二「そんなわけねぇだろ!!!五百旗頭さんがそんな人じゃないくらいわかってる!!!でもな、わかるだろ?これは緊急事態だ。どう考えても普通じゃない!!!お前の行動一つで魔裁組を危険に晒すかもしれないんだぞ?!五百旗頭さんを本当に信じるなら、五百旗頭さんの言う通りにした方がいい!」


三太郎「は?なぎちんは仲間だろ!!このまま何もせずで黙って見捨てるのかよ!!」


幸二「見捨てるなんて言ってないだろ!!五百旗頭さんが探せと言ったら全力で探す。でもそうじゃない!五百旗頭さんにとっては余計なお世話なんだよ!!だから、帰る場所を作って待ってるのが、最善だって言ってるんだ!!」

はるか「私も、幸二に賛成だわ」

ジャ「一理ある」

麗美「...」

三太郎「は?!お前ら仲間じゃねえのかよ?!」


研究班「(なんか実働班だけで喧嘩してる...おっかな...)」


三太郎「マジで見損なったわ!なぁ、お前はどっちだよ!!一善!!!」

一善「...」

三太郎「お前も見捨てるのか?!」


一善は、少し考えて、言葉を慎重に選ぶ。

一善「...俺はどっちも間違ってないと思う」


三太郎「!」

幸二「!」


一善「正直、紙切れ1つじゃ分からないよ。人の気持ちって...」

幸二「一善...」


一善「五百旗頭さんの本心は五百旗頭さんに聞いてみないと分からない。でも、五百旗頭さんは聞いて欲しく無いかもしれない。このまま放ってほしいかもしれない。どっちも有り得る”可能性”だから」

三太郎「...」

一善「俺は2つの可能性がある時に、後悔が少ない方を取りたい。だから、俺は五百旗頭さんを探すよ」

三太郎「...!」


一善「間違ってるかもしれないけど、もし五百旗頭さんに拒絶されたらそれでいい。でも、五百旗頭さんに何かあったら、そんなの絶対嫌だ」

幸二「...」

ジャ「...なるほどな」


一善「幸二ごめん。俺は五百旗頭さんを”信じない”。五百旗頭さんを失いたくないから」


幸二「...そうか」


こうして、実働班は、一善、三太郎、莉茉、美波の五百旗頭捜索チームと、ジャスティン、幸二、麗美、はるかの待機チームに別れることになった。

研究班は、暫くの間、五百旗頭を除いて研究を進めることになった。

 

────


第147話 「亀裂」

 

────


《東京各地》

三太郎「すみません!この人見ませんでしたか?!」

三太郎は、墨田区周辺を、五百旗頭の顔写真と共に聞いて回った。


一善と莉茉は、周辺の防犯カメラから、五百旗頭の行方を探った。


美波は、元々五百旗頭との親交も深かったため、五百旗頭ゆかりの地を回った。


2日探したが、未だ手掛かりはない。

 

────

 

《第2支部/実働班ルーム》


待機チームは、座って暇を持て余していた。

ジャ「はるかも麗美も、ずっとここにいるの珍しいじゃん?」

麗美「なんか...落ち着かないし」

はるか「私も」


幸二「そもそも、手紙の送り主、誰なんだ?」

はるか「幸二とジャスティンはなぎちんより前からここに居るんだろ?なんかあったんじゃねえの?」

幸二「あんまり詳しくは知らないんだ」

ジャ「俺は最初、研究班として入部したから、何となくなぎちんと居たけど、火種になりそうなことはなかったよ。あるとすれば、なぎちんが魔裁組(ここ)に来る前だな」


麗美「なぎちんって、ここに来る前は何してたの?」

ジャ「詳しくは分からないけど、魔法協会直属の研究員だった、ということだけ...」

はるか「何か後ろめたいことがあるのかな...」

幸二「どうだろうな」

ジャ「ただの逆恨みか、イタズラ。もしくはなぎちん本人が何かしでかしたか...」

麗美「...」

 

《浅草/浅草寺

三太郎「マジで何も見つからねえな」

莉茉「なぎちん、どこにいっちゃったんだろう」

美波「やっぱり、探さないであげた方がいいのかな...」

三太郎「でも俺は何もせずに放っておくなんて出来ない!」

一善「...」

三太郎「アイツら、本当に薄情だよ」

莉茉「幸二君たちだって、五百旗頭さんの事は心配なはずよ?でも」

三太郎「だとしたら、なんで放っておくって選択肢があるんだよ!」

一善「幸二達も幸二達で真剣なんだよ。自分だけが正しいなんて思っちゃダメだ」

三太郎「...でもさ」


東京の夜は深けていく。

 

────


《謎の場所》


コツ     コツ     コツ


五百旗頭は、榊と共に、とある研究所へ来ていた。暗く、狭い通路をゆっくりと歩く。


五百旗頭「...」

榊「もうすぐだ。きっと驚くさ」

五百旗頭「悪趣味な研究所ね」

榊「独創的と言ってくれないか?」


2人は奥へ進む。そして、最奥部へとたどり着くと、そこは暗く巨大な空間だった。

 

そして、五百旗頭は”何か”を目撃する。


榊「見よ、これが私の”答え”だよ!」

五百旗頭「!!!!こ、これは?!」

 

五百旗頭が見たものとは────?

 

────


第148話 「とある研究結果」

 

────


《榊の研究所》

五百旗頭らがたどり着いた部屋には、数千もの人型戦闘ロボットが、360°にわたって天井まで積み上げられていた。


五百旗頭「これって...!!」

榊「見ての通り戦闘マシーンだよ。専用の特殊なマヂカラで動く。君の言う”エレメント”だったかな?みたいなものでね」

五百旗頭「これを使って何をするつもり?!」

榊「何でも出来るだろうな。俺の意思次第で」

五百旗頭「!」

榊「でも俺は破壊主義者じゃない。平和主義者だ。この国の平和の為のものになればいいと思っている」

五百旗頭「...」


榊「五百旗頭、この国の、特に首都東京において、一番平和を脅かすものはなんだ?」

五百旗頭「...?」

榊「病原菌か?腐った政治か?それとも他国からの侵略の脅威か?違う違う違う....」

五百旗頭「何なのよ」


榊「魔法だよ」


五百旗頭「!!」

榊「驚くなよ。君も分かっているだろう。だから君たちも、ちまちまと魔導書を集めているんだろう?何百年も掛けて」

五百旗頭「...」

榊「だがな、”真実”を知っていてまだそんなことをしている君は立派な”人殺し”だ。この数年で何人の人間が魔法の犠牲になった?何人の魔導師(はんざいしゃ)が野放しになっている?人々は見えない脅威に今日も立ち尽くすしかないんだよ。俺はそんな現状を変えるためにここに居る...」


五百旗頭「それって、まさか────?」 

 

────

───

──

 

《東京某所》

翌日──

一善らは、各々のやり方で今日も五百旗頭の行方を探る。

三太郎「なぎちんーー!!!どこだよーー!!」


一善「(五百旗頭さん...無事だといいけど...)」


莉茉「(五百旗頭さん...)」


美波「(渚ちゃん...!)」

 

 

 

《第2支部/実働班ルーム》

はるか「おっすー」

はるかが支部へやってきた。


幸二「...どうした?」

麗美「あ、はるか」

はるか「麗美もいたんだ。ジャスティンは?」

幸二「五百旗頭さんの件で、協会本部に呼ばれてる」

はるか「そりゃあの人いなくなったら協会も混乱するわな」

麗美「早く帰ってきてよ...なぎちん...」

 

《魔法協会本部/善能寺の部屋》

ジャスティン、安西、犬飼は、善能寺を訪ねる。


善能寺「こんな手紙を置いてねぇ...」

安西「私たちが気づいた時にはもう居なくて...」

犬飼「...」

ジャ「なにか、心当たりはありませんか?なぎc...五百旗頭さんは、前まで魔法協会直属の研究員だったんですよね?」


善能寺「そのことで、心当たりがあるから呼んだのよ」

一同「!!!」


善能寺「五百旗頭さんはかつて、ここで”ある研究”をしていたの」

ジャ「ある研究とは?」

善能寺「魔法を封印する研究よ」


犬飼「...?」

安西「それって、魔導書を全て燃やせば済むのでは...?」

善能寺「でもそれって、凄く大変な作業よね、実際、江戸時代から今に至るまで、まだ完了していないもの」

ジャ「...それで?」

善能寺「五百旗頭さんは見つけたのよ。魔法を封印するもう一つの方法を。そして、五百旗頭さんはこう結論づけた...」

ジャ「...!!」

安西「それって?!」

犬飼「...?」

 


善能寺「人間の心臓1000人分と引き替えに、魔法を封印できる、と」

 


一同「!!!!」

 

────

 

第149話 「蠢き」

 

────


《榊の研究所》


榊「そうだな。”俺を追い出した”魔法協会に代わって、俺が平和をもたらすのさ」

五百旗頭「...!!」


榊「1000人の人間の命の犠牲によって、魔法を完全に封印する!!」


五百旗頭「!!!なんですって!!!?!」

榊「俺はまだ諦めてないんだよ。お前と違ってな」

五百旗頭「榊!!!それは絶対にやってはならない禁断の一手!!!!そんなことを考えてるなら貴方もただの人殺しよ!!!絶対にさせないわ!!!!」


榊「魔法の犠牲は後を絶たない。だがな、お前も知っているだろうが、魔法ってモンは魔導書を全て燃やすだけでは無く、”命”と引き替えに封印出来るんだ。お前が見捨てた無駄な犠牲と、私が払う有意義な犠牲、この違いが分からないか?一研究員として」


五百旗頭「知ってるわよ。でも払う犠牲が大きすぎる。私は一生反対よ!」

榊「お前や善能寺のババアが”あの時”止めずにいたら、”佐久間”は死ななかった。佐久間を殺したのはお前だ」

五百旗頭「...」


榊「今すぐにでも封印出来るものをお前は、実に7年もの間野放しにした。7年間もの間魔法で死にゆく人間達を見殺しにしたのだ。佐久間もその1人」


五百旗頭「それは...」


榊「俺は佐久間の分までお前達に復讐するつもりだ。佐久間はもう戻らん。だからせめて、俺が正しかったと分からせる」


五百旗頭「復讐?!何を考えてるの?!この兵器で何をするつもり?!それに1000人もの人間を貴方が殺していいはずないわ!封印だって完璧なものじゃない!いつか解けるかもしれない、その時に1000人の命は無駄死によ!だから私がここであなたを止めるわ!」


榊「フッフッ。威勢がいいな。ならば、もっと面白いものを見せてやろう。ついてこい」

五百旗頭「...?」


榊「アレを見ればお前も、自分の置かれた立場が分かるだろう」

 

────

 

《魔法協会本部/善能寺の部屋》

ジャ「命と引替えに、魔法を封印する?!」

安西「そ、そんなことが出来るんですか?」


善能寺「偶然見つけてしまったのよ。あくまで、本当に試した訳ではもちろんないけれど、心臓1000個と、魔導書51冊を燃やすことは、一度に燃やすマヂカラ消費量的にほぼ同義であると、結論づけられた」

ジャ「な、なんだそれ...!」

犬飼「全然わかんねぇ!」

善能寺「でも、いくら五百旗頭さんの研究だったとして、確実性に欠けているわ。しかも、払うコストがあまりにも大きい。だから私と五百旗頭は、この方法は”見つけなかった事にした”」


安西「...」

犬飼「...」


善能寺「このことを知っているのは、私と、五百旗頭さん、あともう1人しかいない。その人間が、手紙の送り主じゃないかと、私は睨んでる」

 

────

 

第150話 「XYZ ː A(ゼクシーザ)」

 

────


《榊の研究所/最奥部》


2人は赤いハザードランプが点滅している暗い廊下を進む。黒と黄色のストライプ柄の扉を榊が開く。

榊「俺の最高傑作をご覧頂こうか」


ゴゴゴゴゴゴ...!


扉を開くと、そこは巨大な空間に飛び出た足場のようになっており、下を見下ろすと、底が見えないほどの深さになっていた。そして、目の前には超巨大な物体が現れた。


五百旗頭「!!!!」


榊「これはこの国の新たな秩序を構成する平和の象徴。通称XYZ ː A(ゼクシーザ)」ド     ン     !

五百旗頭「ゼクシーザ...?」


そこには、赤いライトに照らされた巨大な繭の様な物体が、不気味なチューブに繋がれて、浮かんでいた。

巨大な繭は、脈を打ち、煙を放出している。


五百旗頭「何...これ...?!」

榊「ゼクシーザ。終わりから、新たな始まりへ進めるための兵器だよ。この兵器が起動すれば、1000つの命が無差別に抽出される。そしてこの内部で魔法陣が築かれ、一瞬で魔法が封印される」

五百旗頭「何よ...それ?!」


榊「見ればわかるだろう。お前達には出来ない偉業を俺は成し遂げたんだ。戦友の死に絶望し、お前達と袂を分かったあの日からな!!!」

五百旗頭「(...これほどの兵器を持っているなんて...)」

榊「この兵器は私が開発した人造マヂカラで動く。お前のエレメントよりも遥かに出力の高いものだ」

五百旗頭「(エレメントは人体に適応するために敢えてマヂカラのレベルを抑えている...でも恐らく榊の人造マヂカラは最大出力で造られている...)」


榊「マヂカラ反応に換算すると、レベル13はくだらない」

五百旗頭「!!!(レベル5でも相当稀なのに...13なんて!)」


榊「さすがにわかっただろう。お前は、もう何も出来ないと」

五百旗頭「(...規模が大きすぎる...これじゃ魔裁組のあらゆる手段でも抗えない...なら...!)」


榊「俺も、まさかこんなに素晴らしいものが出来るなんて思ってもなかったよ」


五百旗頭「(私がやることは...!)」シャキン!

五百旗頭は懐から護身用のナイフを取り出した。


五百旗頭「!!!(ここで榊を...!!)」

五百旗頭は微量のエレメントをナイフに纏わせた。五百旗頭のナイフの切っ先が、榊へ迫る!


榊「百目鬼


ガン!!!!!


五百旗頭「ぐはっ...!」

五百旗頭は、背後から謎の少年に押さえつけられた。ナイフはカランコロンと音を立て、床に転がった。


榊「ご苦労」

百目鬼「...笑」


百目鬼 藤(どめき ふじ)”

榊の用心棒。

百目鬼「...」 ド     ン     !


五百旗頭「くっ....」


バタンッ!


五百旗頭は気を失った。

榊は転がったナイフを手にして言った。

榊「やはり人殺し...度胸が違うな。百目鬼、とりあえず牢にでもぶち込め」

百目鬼「...」

百目鬼は、五百旗頭を牢屋に押し込んだ。

 

────


数時間後、五百旗頭は牢屋で目が覚めた。手足には鎖のようなものが繋がれていた。

五百旗頭「...ちょっと...なんのつもり...?」

榊「お前にチャンスをやろう」

五百旗頭「...」

榊「私がこれからやることは2つだ。1つは私の戦力を用いて、魔法協会を潰す。もちろん、魔裁組もその対象だ。そしてもう1つは、ゼクシーザで魔法を封印する」

五百旗頭「...」


榊「お前が負けを認め、一生俺に仕えると言うのなら、どちらか片方は見送ってやってもいい」

五百旗頭「...!」

榊「これは強制じゃない。優しい提案だ。好きな方を選ぶといい」

五百旗頭「くっ...お前!!!!」

榊「自分の立場を弁えろ」ビリビリビリィ...!

五百旗頭の手足に繋がれた鎖に電流が流れた。


五百旗頭「うわぁぁぁぁ!!!」

榊「さぁ、どうする?」

五百旗頭「...もしゼクシーザが起動したら、どうなるの」

榊「魔法は封印される。尊い1000の犠牲によってな」

五百旗頭「...」

榊「まさか、この理論の真偽を疑ってるわけじゃあるまい。なんたって、”お前が見つけた手段”だものな!」

五百旗頭「...」

榊「あの日、お前がそんな事実を隠し持ってることを知った俺たちは驚いたよ。だが喜べ、お前の研究は俺の手によって、平和の為に使われる。お前は犯罪者から、英雄になれる」

五百旗頭「...」


榊「時間を与えよう、暫く考えてみるんだな」

五百旗頭「...なら────」

 

五百旗頭の答えは──!

 

────


第151話 「創造と破壊」

 

────


《魔法協会/善能寺の部屋》


安西「送り主って...」

ジャ「それって、誰ですか?」

善能寺「榊天慈という、元研究員よ。五百旗頭と同じチームで研究をしていた」

安西「その人が、あの手紙を」

犬飼「人殺しの悪魔ってのは、どういう意味ですか?」


善能寺「恐らく佐久間くん。佐久間大地くんっていうもう1人居た研究員の子が関係してるのよ」

ジャスティンらは、善能寺の言葉に真剣な眼差しで耳を傾けた。


善能寺「五百旗頭さん、榊くん、そして佐久間くん。3人とも私がスカウトした博士よ。元は一般の学生だったの。3人は優秀な研究チームでね、魔法についての研究が進んだのは彼らのおかげよ。3人はとても仲が良くてね。旧知の仲のような関係だった」

ジャ「...」

善能寺「でもある日、五百旗頭さんが、”例の方法”を発見した。彼女は榊くんと佐久間くんには内緒で私に相談してきたの。もちろん私は反対して、その場でデータを消去した。でも榊くんが見つけてしまったのよ、削除し忘れたデータを」

安西「...」

善能寺「榊くんは魔法を封印することにとても熱心で、正義感の強い男だった。でも時に正義が暴走しがちでね、彼は犠牲を払ってでも今すぐその方法を取るべきだと五百旗頭さんや私に言ったの」

犬飼「...」

善能寺「そのことで榊くんと五百旗頭さんは激しく口論になった。どちらもお互いに譲らず、少し時が過ぎた頃に...」

ジャ「?」


善能寺「佐久間くんが魔者に殺されたの」


一同「!!」

善能寺「佐久間くんは明るくて、研究熱心な2人にとっても癒しの存在でもあった。誰にでも優しくて、気さくで、善良な少年だった」

安西「そんな...」

善能寺「榊くんは佐久間くんの事が本当に大好きだった。だから、佐久間くんが亡くなった時は深く絶望していたの」

ジャ「...」


善能寺「榊くんはこう言ってたわ。”お前らが早く魔法を封印していたら、佐久間は死ななかった。お前らは人殺しだ”、と」

犬飼「...」

善能寺「五百旗頭さんと榊くんの道はそこで決裂した。榊くんは姿を消して、五百旗頭さんは魔裁組の研究班に異動になった」


ジャ「...なぎちんにそんなことが」

犬飼「五百旗頭さん...」

 

────


第152話 「榊と佐久間」

 

────

 


7年前────

 

 

《とある研究室》

五百旗頭「榊くん。そっちのデータ見せて」

榊「ん?これか?」

榊は、パソコンの画面を五百旗頭に見せた。


五百旗頭「なるほど。ありがとう」

榊「進みそうか?」

五百旗頭「なんとかね」

榊「あんま無理すんなよ」

五百旗頭「ありがとう」


佐久間「2人ともー!お茶買ってきたよ!」

榊「お、佐久間サンキュー」

五百旗頭「ありがとう」

佐久間「レモンティーとミルクティーどっちがいい?」

五百旗頭「私はミルクティーかな」

榊「じゃあレモンティーでいいや」

佐久間「俺は安定の!!じゃじゃーん!」


榊「またドクペかよ。それ不味いだろ」

五百旗頭「それほんと嫌い」

佐久間「はー?!やっぱ頭のいい人間には分からないか、この美味しさは」グビグビグビグビ


榊「よし、俺達も少し休憩すっか」

五百旗頭「そうね」

 

《研究室の屋上》

3人は、ドリンクを片手に語らった。

榊「佐久間はさー、なんで魔法の研究員になろうと思ったんだ?結構善能寺さんの誘い断った奴多いって聞いてるけど」

佐久間「俺?俺はなんか、魔法って面白そうじゃん?って思ったから!」

五百旗頭「ふふっ子供みたいね」

榊「お前ここで色々見ててよくまだそう言えるよな」


佐久間「いやそりゃさ、魔法だっていい側面ばっかじゃないよ。でも、結局人じゃん?どんなものだって、使い方次第で善にも悪にもなる。もののせいにしちゃあダメなんだ」

榊「...」

佐久間「俺は魔法を正しく使って、より良い世界を作りたい。そう思って、ここに来た、かな?」

五百旗頭「ふーん」

佐久間「2人は?2人はどうなんだよ!」


榊「俺は魔法を封印したい。それだけだ」

佐久間「...うん」

榊「佐久間の言うことは間違ってない。でも現状は、魔法によって齎されるのは悲しみばっかりだ。俺は早く、魔法の無い世の中で、安心して暮らしたい」

佐久間「...そっか。榊はカッコイイなー!」

榊「っやめろよ!」

佐久間「ははは!じゃあ、渚は?」

五百旗頭「...」

榊「五百旗頭?」


五百旗頭「私は────」

 

────


第153話 「永遠の別れ」

 

────


《研究室の屋上》

バサバサバサバサ....

屋上から鳥が羽ばたいた。


佐久間「ぷっ!あはははは!渚!それ、マジ?!wwwww」

榊「wwwwww笑えるな」

五百旗頭「っ!なによ!真剣に答えたつもりよ!!///」

佐久間「わりぃわりぃwwいや、あまりにも斜め上だったもんでwwww」

榊「そっかwwwwお前そんな感じだったんだwwww」


五百旗頭「言った私が馬鹿でした!早く忘れなさい!」


榊・佐久間 「あはははははは!!」

 

数ヶ月後──

 

《屋上》

真夜中、榊は五百旗頭を呼び出した。

榊「見たぞ?あれ、本当にそんなことが出来るのか?」

五百旗頭「...そうよ」

榊「五百旗頭。よく聞け。俺は、やるべきだと思う」

五百旗頭「!!!榊?」

榊「確かに払う犠牲は大きい。でも!今やらないと!今後より多くの人間が犠牲になる!魔裁組が魔導書を集めきるまであと何年かかるか分からないんだぞ!それまでに確実に1000人は死ぬ!だったら今!ここで終わらせるべきじゃないか?」

五百旗頭「榊。私たちに人の命を奪う権利はないわ」

榊「わかってる!でも、これは尊い犠牲だ!佐久間に内緒のままにするのは悪いが、明日にでもやるべきだ!」

五百旗頭「善能寺さんにも話したけど、協会も反対よ。もちろん私も。今回のことは忘れなさい」

榊「なぁ五百旗頭!今まで魔法の犠牲なった人々や遺族の無念、分かるだろ!ここで終わらせることが出来るのに、俺たちは見て見ぬふりをすればいいのか?」

五百旗頭「生贄として殺される1000人にも家族がいるのよ、あなた、それでもやるつもり?」

榊「だったら凶悪犯や死刑囚の心臓を使えばいい!それでいいだろう?」

五百旗頭「そんな下劣なやり方で、被害者の無念が晴れると思ってるの?それで成り立つ平穏なんて、私は嫌よ!」

榊「とにかく!やるべきだ!」


五百旗頭「私は最後まで反対。今日は頭を冷やしなさい。おやすみ」

榊「...」

 

数日後────

《とある病院》


善能寺「佐久間くんが、亡くなったわ」

榊・五百旗頭「!!!」

善能寺「魔導書の魔者に遭遇したみたい。魔者は魔裁組が退治したけど。佐久間くんは...」

五百旗頭「そんな...」


病院の薄暗い廊下で、榊は五百旗頭の胸ぐらを掴んだ。

榊「お前が...お前らが!!あの時”やる”と決めていれば!!!!佐久間は!!!佐久間は死ななかった!!!!」

五百旗頭は何も言わず、俯いたままだった。

榊「佐久間はもう戻らない!!!!お前らは人殺しだ!!!!!」

五百旗頭「...」

榊は、病院を去った────

 

────

 

《魔法協会本部/善能寺の部屋》

ジャ「...」

犬飼「...」

安西「...」

善能寺「榊くんは私のところにも来てね。彼はその日以来魔法協会の敷居を跨ぐことは無かった」

ジャ「...なるほど」

 

────


第154話 「メッセージ」

 

────


《魔法協会本部/善能寺の部屋》

善能寺「私が知ってるのはこれくらいかしら」

犬飼「じゃあその榊ってやつが...」

善能寺「私も榊くんのやり方には反対。でも、五百旗頭さんも、佐久間くんのことはかなり責任を感じていると思うの。だから、もし手紙の主が本当に榊くんなら、五百旗頭さんはもう...」


安西「戻って来ない...」

善能寺「可能性ありね」


ジャ「...」

犬飼「そんな...」

 

バタッ!!!

扉が勢いよく開く。

 

一同「?!」


職員A「善能寺さん!!!!こっち!!!」

善能寺「何?!」


善能寺は、扉を開けた職員に連れられて、部屋を急いで出ていった。それに続いてジャスティンらも部屋を出る。案内された先では、大きなスクリーンを囲って、職員らによる人だかりが出来ていた。

 

────

 

《魔裁組第2支部

捜索チームの面々が、支部に帰ってきた。

一善「戻りました...」

三太郎「...」

莉茉「...」

はるか「おつかれ」

麗美「見つからなかったみたいだね...」

美波「うん...あれ、ジャスティンくんは?」

麗美「協会に行ってるって」

美波「そっか...」


ダッダッダッ!!


するとそこに、幸二がパソコンを持って走ってきた。

幸二「おい!!お前ら!!これ!!」

一同「?!」

 

────

 

《魔法協会本部/大スクリーン前》

スクリーンの前には人だかりが出来ていて、スクリーンには1人の女性が映し出されていた。


ジャ「な、なぎちん?!」

安西「渚!!!」

善能寺「!!」

犬飼「五百旗頭さん?!」


職員B「これ、五百旗頭渚だよな?」

職員C「失踪したって聞いてたけど?」


ジャ「(どこから撮ってる?本物か?なぎちんは無事だと思っていいのか?)」

安西「渚...?」


五百旗頭「魔法協会の皆さん。魔裁組の皆さん。こんにちは。五百旗頭渚です」


《第2支部

はるか「なぎちん!」

麗美「なぎちん!」

三太郎「なぎちんじゃん!!!!」

莉茉「五百旗頭さん?」

一善「なんだこれ?!」

一同は食い入るようにパソコンの画面を見た。


五百旗頭「お騒がせしてすみません。私はもう、魔法協会ひいては魔裁組に戻るつもりは一切ありません」


一同「!!!」


魔法協会に走る衝撃────!

 

SOREMA -それ、魔!- 18へ続く。

 

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第145話 「緊急会議」

第146話 「信じない」

第147話 「亀裂」

第148話 「とある研究結果」

第149話 「蠢き」

第150話 「XYZ ː A(ゼクシーザ)」

第151話 「創造と破壊」

第152話 「榊と佐久間」

第153話 「永遠の別れ」

第154話 「メッセージ」