SOREMA -それ、魔!- 16

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SOREMA -それ、魔!- 16

 

「ハッピーバースデー」

 

────


第136話 「乙女たち」

 

────


《第2支部/医療室》

第2支部実働班女子メンバー定期検診。


女子メンバーは、研究班ルームの中の医療室の1つの部屋に集められた。そこへ、白衣を着た五百旗頭がやってくる。


越前「五百旗頭さん!」

一同「!」

五百旗頭「やっほー」

はるか「なぎちん〜〜会いたかったよ〜〜」

はるかは、五百旗頭に抱きついた。

五百旗頭「いや、あなた達ほとんど顔出さないじゃない」

麗美「なぎちん久しぶり」

美波「...!」

五百旗頭「久しぶり、ま、みんな元気そうね」

はるか「なぁなぎちん。カレシ出来た?」

五百旗頭「余計なお世話ね」

はるか「こりゃ出来てねぇな」

麗美「最近マッチングアプリで結婚する人とかもいるらしいよ?やってみれば?」

五百旗頭「嫌よ。そこまでして結婚したくないもの」


莉茉「まぁでも、五百旗頭さん銀座とかでナンパ待ちとかしてみたら案外モテそうじゃない?」

麗美「(この純粋清廉潔白系美少女越前莉茉から「銀座でナンパ待ち」という言葉ガ...)」

五百旗頭「それも嫌。あなた達は自分の心配をしたら?」

はるか「ちぇっ。話そらすなし」


五百旗頭「じゃあ、越前さんから始めるから、あとの子は待合室で待機してて」

はるか「おいっす!」

美波「はい!」

五百旗頭「越前さん。こっち」

越前「はい!」

五百旗頭「あ、あと貴方達」

はるか・麗美 「?」

五百旗頭「その呼び方やめなさい」

一同「時差!!」

 

待合室にて────

 

はるか「なーんだ。なぎちんカレシまだ居ねぇのか」

麗美「興味ないんじゃない?」

美波「そういうはるかちゃんは...?彼氏さんとかいないの...?」

はるか「いねェよ!!!欲しいわ!!!」

美波「そうなんだ。好きな人とかは?」

はるか「んーいないかな」

麗美「あの三太郎とかいう馬鹿な子とお似合いじゃない?おバカ同士で」

はるか「誰が馬鹿だと!あいつはダチって感じだろ!どう見ても!」

 

三太郎「へっくしゅん!!」

一善「風邪?」

三太郎「いや、なんか寒気が...」

 

はるか「美波は?」

美波「私は...居ないかな」

はるか「好きな人とかは?」

美波「うーん...どうだろう...ちょっといいなって人と...あとは”推し”かな...」

麗美「推し?」

美波「そう!!私の推しは!!シンデレラボーイズ略してデレボの正蔵院マコト様!!マコト様しか勝たん!!!」

麗美「まさかの2次元」

はるか「そういう系ね」

2人は死んだ目で美波を見た。

美波「そんな目で見ないでヨ!」

 

────


《第2支部/第2医療室》

五百旗頭「じゃ、始めるわ。体を楽にして」

莉茉「はい」


シュドーーーーーン...

 

────


第137話 「理想の殿方」

 

────


《第2支部/医療室》

美波「じゃあ麗美ちゃんは?」

はるか「コイツはいるよ多分」

麗美「あら、そんなに私が可愛く見える?ありがとう」

はるか「別に言ってねえよ?」

麗美「うざ」

美波「まぁまぁ...笑」

麗美「いないわよ。別に欲しいとも思ってないし」

はるか「ふーん。じゃあ好きな男は?」

麗美「いない、かな。ゴホン」

はるか「ん?なんか動揺してる?」

麗美「してないわ!!!」

はるか「さてはお主、恋してるなァ?」

美波「そうなの?」

麗美は顔を赤くして応える。

麗美「ばっかじゃない?そういえば、莉茉ちゃんって今彼氏いるのかな」

美波「(露骨に話題逸らしたァ!)」


はるか「莉茉っちは引く手数多だろ」

麗美「あの人もいろいろ苦労してるんじゃん?」

美波「どんな男の人が好きなんだろうね」


ガチャッ!


五百旗頭と、検診を終えた莉茉が帰ってくる。犬飼と安西もやってきた。

五百旗頭「はい、次空見さん」

麗美「はい」

はるか「そういえばさー、なぎちんと莉茉っちはどんな男が好き?」


犬飼「ドキッ!」


五百旗頭「急に何」

莉茉「えー好きな男の人かー。優しくて、明るくて、笑わせてくれる人、かな!」

麗美「(模範解答アザマス!!)」

犬飼「(ひょっとして俺か?)」


五百旗頭「私はうるさくない人」

犬飼「え、じゃあ僕なんてd」

五百旗頭「アンタうるさい。視覚的にも聴覚的にも」

犬飼「グサッ」チーン


莉茉「皆は?」

はるか「んー。私は漢気があって、めっちゃ笑う人!あと、背が高いとなお良し!」

美波「私は、話口調が優しくて、穏やかな人とか?癒してくれるような人がいいな。あとは目が綺麗だといいなって思うかも」

麗美「私は頼れてワガママ聞いてくれる人。後は顔。鼻筋重視」

安西「私はちょっと変わってる人が好きかな。でも幼い人よりも知的な人がいいなって思うかも!見た目はあんまり気にしないなー!」


犬飼「全部俺なのでは?!」

はるか「どういう思考回路してんのよ」

五百旗頭「あなたの脳も検査する必要がありそう」

麗美「〇ね」


犬飼「トホホ...」チーン


五百旗頭「じゃあ空見さん。いくわよ」

麗美「はーい」


犬飼「オレ...ダメナノカナ...」

莉茉「犬飼さん!そんなに落ち込まなくても、きっといい人見つかりますよ!」グッ!

美波「元気だしてください」グッ!


犬飼「君たちは天使だァ〜〜〜〜〜」パァァ!!

 

安西「(すごい単純...!)」

 

────


第138話 「五百旗頭食堂」

 

────


《第2支部/食堂》

女子の検診は終了し、食事の時間になった。


この日は、実働班のメンバーが全員揃って食事をとった。


パクパク パクパク パクパク


はるか「うまい!うまい!うまい!」

麗美「それなんか嫌だからやめて」

三太郎「あれ?美波ちゃんトマト嫌いなの?」

美波「うん...」

三太郎「じゃあもらっちゃおー!」パクッ

美波「...ありがとう!」

ジャ「うーん。やっぱりなぎちんは料理上手だねぇ。このビーフストロガノフもコクがあって最高だぁ」

はるか「え!これなぎちんが作ったの?」

五百旗頭「そうだけど」

はるか「え!めっちゃ美味いわ!」

安西「渚昔から料理得意だもんね」

五百旗頭「まぁ普通かな」

麗美「後でレシピ教えて欲しいな」

莉茉「でも凄いです!本当に美味しいですよ!」

五百旗頭「それはよかった」


ジャ「検査の結果は?」

五百旗頭「誰も問題はなかった。明日の男子も何も無ければいいけど」

ジャ「ま、ひとまず安心ってわけね」


犬飼「おい!おれのミートボール一個取ったろ!」

三太郎「だって残ってたんだもん」

犬飼「はァ?!この馬鹿ブルドッグがァ!俺様はな、好きな物は後に食べるんだよ!!」

三太郎「取ったもん勝ちだわ!!この世は弱肉強食社会なんだよ!!はっ!!」

犬飼「んだとこの糞ガキァ!!」

五百旗頭「おかわりあるんだから、もう少し静かにしなさい」

はるか「うるさい男は嫌われるぞ」ヒヒッ

犬飼「ギクッ!」ハイ...


幸二「...」パクッ

一善「幸二、聞いたよ。この間の任務のこと」

幸二「そうか」

一善「とりあえず。お疲れ様。赫魔導書も見つかりそうって聞いたから、よかった」

幸二「そうだな」

一善「...その」


幸二「ありがとう。でも気を使うな。兄なんてとうの昔に死別したと思ってたのがポッと現れただけだ。だから俺は今まで通り、やっていくだけだ」

一善「...そっか」

幸二「(兄貴...兄貴の分まで俺が必ず魔法を封印する。その時まで待ってくれ)」


五百旗頭「明日、男子の定期検診だから、よろしくね」

ジャ「ほーい」

三太郎「なぎちん!これおかわり!」

幸二「俺もおかわりください!」

三太郎「お!お前も好きかこれ」

幸二「今回だけは気が合いそうだなァ!」


ジャ「なんか皆、意外といい感じのチームになってきたじゃん?」

莉茉「ですね」

 

────


第139話 「手紙」

 

────


《第2支部/五百旗頭の部屋》

ガチャッ!


五百旗頭「(はぁー疲れた)」

五百旗頭は、机に突っ伏す。


そして、ふと、昼に届いた手紙を思い出す。


五百旗頭「(そうだ...手紙...!)」


ガコッ


五百旗頭は、机の中にしまった手紙を取りだした。そして、封筒の中身をあけ、中の手紙を読んだ。


五百旗頭「!!!!!!!」


────

───

──

 

《第2支部/医療室》

次の日。


五百旗頭「じゃあまずは、一善君からね」

一善「はい」

五百旗頭「神野くん達はここで待ってて」

ジャ「り」

三太郎「り」

幸二「はい」


五百旗頭「じゃあ行くわよ...」

一善「...」


五百旗頭と一善は、隣の部屋に移動した。


ガチャッ


幸二「そういえば、紙片の書、どうなりました?」

ジャ「断片的な記憶しか拾えなかったけど、魔導書の在処の記憶、つまり大事な記憶は割と色濃く残るから、何となく場所は特定出来たよ。多分折紙山の奥だ。今研究班と協会員が探してる。ま、見つかるだろう」

幸二「よかったです」

三太郎「そうだ!京都に行ってきたぜ!」

幸二「お土産は?」

ジャ「ないわけないよな?」

三太郎「あっ...」

 

────


京都からの新幹線にて────

三太郎「これは、支部の皆へのお土産っと」

三太郎は、八つ橋の箱を1つ購入していた。

千巣「あっ。やば。ひえりのお土産忘れたわ」

三太郎「!!!!」


ひえり”お兄ちゃん〜お土産買ってきてよ?もちろん、生八つ橋ね☆”


千巣「どうしよ。戻ろうかな」

三太郎「アニキ!!!!これどうぞ!!!!」

千巣「え、いいの?」

 

────

 

三太郎「ごめん...ありません...」

幸二・ジャ「ガッカリ!!」

 

《第2支部/第2医療室》

五百旗頭「安西。ちょっと」

安西「は、はい!(準備ミスったかな?渚怒るかな?なんだろう...)」

五百旗頭「ちょっと、やってみて」

安西「え?」

五百旗頭「彼の検診、あなたに任せるって言ってるの」

安西「え?いいんですか?」


五百旗頭「安西ももうただの助手じゃなくて、博士になれるくらい沢山勉強してるんだし、頃合かなって」

犬飼「いいな!五百旗頭さん俺は?!」

五百旗頭「あなたも、もう少し頑張れば博士になれると思うけど、精進なさい」

犬飼「あっ、、はい!!」


安西「ありがとうございます」

五百旗頭「もう仕事の時もいつも通りでいいわ」

安西「...ありがとう。渚」

一善「じゃあ、俺はどうしたらいいですか?」

安西「あ!うん!ごめんごめん!とりあえず洋服脱いで、ここに座って!(頑張らなくっちゃ...!)」

一善「はい!」


五百旗頭「....」

 

────


第140話

 

────


《第2支部/第2医療室》

安西「力抜いてリラックスしてねー」

一善「はい!」


安西は一通り一善の体を検診した。


一善「安西さんと五百旗頭さんって、元々お知り合いだったんですか?」

安西「高校の時の同級生だったの。大学は別のところに。私は大学卒業後、院に進んだけど、渚は4年制を卒業してすぐに魔法協会直属の博士になったの。私は渚の誘いで最近ここに来た見習いなの。一善くん達の少し前かな」

一善「なるほど。お2人は何で博士になろうと思ったんですか?」

安西「渚は魔法協会の偉い人からスカウトされたらしいわ。渚は高校の時から優秀だったから、魔法協会の人も目をつけていたらしいし。私はオマケよ」


一善「2人とも、魔法と何か接点が?」

安西「何も無かったわ。だから最初聞いた時驚いた。魔法?何それ?おとぎ話?ってね。多分それは渚も一緒」

一善「そうなんですね」

安西「私は一善君や他の子みたいに、魔法の被害にあってるわけじゃない。でも、命をかけて戦う皆の姿を近くで見てると、こんなにやりがいのある仕事ってないのかもって思う。一人一人が尊敬出来る仲間だし、その人達の支えになれてるなら、嬉しいなって。だから、なろうと思ったわけじゃなくて、なってみて、やって良かったなって思った、かな。答えになってる?」

一善「ありがとうございます。安西さんって心綺麗ですよね」

安西「え!そんなことないよー!私なんてズボラだしドジだしぜーんぜん」

一善「笑」

 

────


安西「はい!一善君はこれで終了!エレメントが体に染み付いてるみたいに波長があっていたわ。マジカラの数値も平常値、体に問題はなさそうね!」

一善「ありがとうございます!」

安西「次はー神野くんかな?渚?」


シーン...


安西「あれ?渚は?」

犬飼「五百旗頭さん、知らない間にどっか行っちゃったみてぇだ」

安西「もー渚ったら。優秀なのはいいけど、すぐふらっとどっか行っちゃうんだからー」

一善「戻ってきますかね?」

安西「ま、戻ってくるでしょ。とりあえず、次は神野くんね!呼びに行かなくちゃ!」

 

ソラマチ/地下駐車場》

プルルル... プルルル...


???「はい」

五百旗頭「お手紙ありがとう。なんの用かしら」

???「フッフッ。名前を書いたつもりはないが」

五百旗頭「あなた以外思いつかなかった」

???「フッフッフッ。その勘の良さは変わってないな。腹立たしいほどにな」

五百旗頭「話があるなら直接聞くけど」


???「フッ。久々の再会だ。酒でも飲んで話そうか」

 

────


《第2支部/医療室》

安西「次!神野くんどうぞ!」

ジャ「はーい!って、なぎちんは?」

安西「居なくなっちゃったから私が代わりに!」

ジャ「ほーい...」

 

────


第141話 「A data」

 

────


《第2支部/医療室》

三太郎「お疲れ一善!どうだった?」

一善「特に異常なし」

幸二「そうか」

三太郎「てか、これ、毎年やってんの?」

幸二「1年に2回やることになってる」


三太郎「そういえば、幸二っていつから魔法使いなんだ?」

幸二「2年前、エレメント注射を打った。それより前は、魔具で戦ってた。でも、体にはマヂカラが流れていたから、いつからと聞かれてもわからん」


三太郎「お前も特異体質なんだ」

幸二「いや、先祖がマヂカラを受け継ぐと、子供にも抗体のようなものが出来る。魔法使いの子供は元々魔法使いになる素質を持って生まれることが多いんだ。俺の親も祖父も引退こそしてるが、代々魔法使いだった」

一善「なるほど」

三太郎「へぇー!じゃあ一善は?亡くなったお母さんって」

一善「違うよ。お母さんはつのキングも何も見えてなかった」


三太郎「お父さんは?」

一善「俺お父さんの記憶が無いんだよ。というか知らない。お母さんも、知らないフリして教えてくれなかった。だから詮索はしてないよ。俺にとっての親はお母さんだけだから」

三太郎「ふーん。そっか」


一善「そういえば、幸二は、赫魔導書の履術者になるの?」

三太郎「え?履術すんのはダメなんじゃないのか?」

幸二「例外があってな、赫魔導書の保持家庭の人間が、その赫魔導書を再履術することは認められているんだ」

三太郎「えーーずっるーー!!」

幸二「他の人間の手に渡って悪用されるよりも良いだろ!それくらい赫は特殊なんだよ」

三太郎「ちぇっ」

一善「うん。で、するの?」

幸二「...使いこなせるなら、やってみる価値はあると思うが...」

一善「...!」

三太郎「...!」

一善「楽しみだね」

三太郎「ま、ライバルは強い方が倒しがいがあるしな」

幸二「お前をライバル認定した覚えはないぞ」


カツ    カツ


一同「?」

善能寺「あら、若い魔法使い達。ごきげんよう

三太郎「誰だ?」

幸二「善能寺さん?!」

三太郎「ぜんのーじ?」

一善「は、はじめまして...」

幸二「この人は魔法協会会長の善能寺柳子さんだ」


善能寺がやってきた。


一善「あ、油木一善です!よろしくお願いします」

三太郎「へー!俺、佐藤三太郎!よろしくなおばちゃん!」


一善・幸二「(おばちゃん...!!!)」ガビーン


善能寺「おばちゃん?私も老けたわね。ま、いいわ。五百旗頭さん見てない?」

幸二「なんか居なくなったって聞きました」

善能寺「あら、そう」


ガチャッ


安西「はい!次三太郎君...って!善能寺さん?!お疲れ様です!どうされましたか?」

ジャ「善能寺さん!」

犬飼「ご無沙汰してます!」

善能寺「皆ごきげんよう。今日はちょっと、見たいデータがあってきたの」

善能寺は一善の方へちらっと目をやる。

一善「?」


善能寺「解剖データを見せて頂戴」

犬飼「か、解剖データと言われましても...毎月膨大なデータがありますので」

善能寺「宝探しは趣味なの。自分で探すわ。とりあえず、データ室に案内して」

犬飼「は、はい!」


犬飼は善能寺をデータ室に案内した。


ジャ「(何だ?善能寺さんが直々にここへ来るなんて)」

一善「?」

安西「ま、まぁ...笑 次は三太郎くんね!」

三太郎「おっす!」


ガチャッ

三太郎と安西は部屋を出て、検診へ向かった。

 

《第2支部/データ室》

犬飼「では、自分は失礼します!」

善能寺「ありがとう」


ガチャッ!

善能寺は1人、天井高くまで積まれた資料の合間を歩く。


善能寺「(もしも私の想像が全て正しかったら...面白いことになるわ)」


カッ   カッ


善能寺「”あの子”は”特別な子”かもしれない」

 

────

 

第142話 「平和と犠牲」

 

────


《都内/とあるバー》


カラン  カラン...


店内はダークレッドを基調にした小洒落たレイアウトで、カウンターには黒い長髪の男が座していた。男は緑のカクテルを飲み干し、正面を見ていた。


五百旗頭「悪趣味な店ね。榊」

榊「そうかな。君にお似合いなチョイスだと思ったが?」


榊 天慈(さかき てんじ) 元魔法協会直属博士

榊「元気そうで何よりだよ」


五百旗頭は、榊とひとつ空けて座った。


店員「なにかお作りしても?」

榊「オリンピック」

五百旗頭「ブロンクスで」


榊「...しけたモン頼むねぇ」

五百旗頭「要件を聞いたら帰るから」


オレンジ色のカクテルが2つカウンターに置かれた。


榊「フッ。まずは再会を祝して。乾杯」

五百旗頭「...」

榊「つれないな」

五百旗頭「あんな物騒な手紙を寄越しておいて何よ」

榊「脅かして悪かったよ。でも事実だろ?君は'人'殺'しだ。今でも俺は君を恨んでいる」

五百旗頭「...」


榊「だが、喜べ。もう魔法による惨禍は終わる」

五百旗頭「...なんですって?」

榊「完成したんだよ。俺の夢が。もうすぐ実現する。もう魔法に苦しめられることなく生活出来る未来が来る。俺の手によって」


五百旗頭「…それって」

榊「?」

五百旗頭「...まさか”あの手”を使うんじゃないわよね?」

榊「...さぁ」


ガタッ!


五百旗頭「そんなの許されるわけないわ!!例え”それ”で平和が訪れるとしても、それは本当の平和じゃないわ!変なこと考えてるなら今すぐ辞めなさい!!」

榊「おいおい…ここはバーだぜ?落ち着いてくれよ」

五百旗頭「落ち着けるわけないじゃない…!」


榊「...平和と犠牲は一心同体なんだ。それは研究者なら分かるだろ?犠牲の上に発展は成り立つんだ」

五百旗頭「...」


榊「君の研究と俺の野望、何も変わらないだろう。俺は俺の手で、この国の平和を守りたい。多少の犠牲を払ってでもな」

五百旗頭「...!」

榊「そして、”俺が正しかったと証明する”のさ。フッフッ。そうだ、五百旗頭、寝返るチャンスをやろう。我々の基地に招待するよ。それを見たらお前も、何も言えなくなる。俺に賛同せざるを得なくなる」

五百旗頭「魔法協会や魔裁組が黙ってないわ」

榊「だったら?」


五百旗頭「あなた、何考えてるの?」

 

榊「近い内にまた会おう。その時に全てを話そう」

 

榊<この男>の企みとは────?

 

────

 

《第2支部/食堂》

数日後の夜。食堂には、たくさんの人影が集まっていた。しかし、電気はついておらず、真っ暗だ。


三太郎「(おい、この後どうするんだよ?)」

はるか「(だから、さっき言ったろ?)」

莉茉「(三太郎くん、しっかりやってよ?)」

幸二「(マジちゃんとやれよ?)」

三太郎「(わかったから!緊張が...)」

麗美「(そんな緊張する程のこと?)」

ジャ「(じゃ俺がやろうか?)」

三太郎「(いや、俺がやる!)」

犬飼「(なんかドキドキしてきたァ)」

美波「(そろそろかな...)」


ブー !  ブー !


犬飼「(びっくりした!なんだよこの音!)」

一善「(俺の携帯です。安西さんから合図来ました!)」

幸二「(よし、タイミングミスるなよ?)」

三太郎「(わかってるって!)」

一善「(来る...!)」

 

────


第143話 「ハッピーバースデー」

 

────


《第2支部/食堂前の廊下》

安西「ほらほら渚!早く早く!」

五百旗頭「何よ。なんか怪しいわよ?」

安西「いいからいいから♪」

五百旗頭「こっちって、食堂?」

五百旗頭は、安西に引っ張られるがまま、食堂へやってきた。

安西「ほら、扉空けて!」

五百旗頭「ん?」


ガラガラガラガラ....


五百旗頭「真っ暗じゃない」

すると、安西が電気をつけた。

パチッ!


三太郎「なぎきん!!!誕生日おめでとーー!!!」パァン!、

一同「おめでとーーーーー!!!!」パァンパァン!

そこには、クラッカーを持ったメンバー達と、大きなケーキが置いてあった。


この日は五百旗頭渚の誕生日だ。


五百旗頭「???私?」

安西「今日は渚の誕生日でしょ?」

五百旗頭「...あ、そうかも」

安西「だからサプラーーーイズ!!みんなでケーキも作ったんだよ?ほら、早く座った座った!」

安西が、五百旗頭に座るよう急かす。五百旗頭はまだ頭が混乱していた。


はるか「なぎちん!!お誕生日おめでとう!」

ジャ「何歳?」

犬飼「おいダルメシアン!女性に年齢聞くか?普通」

安西「あははは」

麗美「チャッカマンどこ?」

一善「あ、俺もってる!」

幸二「ロウソク足りてるか?」

美波「刺しといた!」

三太郎「黄のエレメント!着火!」

はるか「なにそれウケるw」

莉茉「1回電気消すよ!」


パチッ


一善「じゃあ、歌いましょうか」

莉茉「せーの」


三太郎「くだらなぁ〜い〜は〜な〜しは〜おも〜いつ〜くのにぃ〜♪」

一善「ちがうわ!」


一同はハッピーバースデーの歌を歌った。

五百旗頭は目をまん丸にして見ていた。


安西「ほら!火、消して!」

五百旗頭「あ、うん」


フー...


一同「おめでとーーーー!!!!!」

五百旗頭「な、なんか、今になって実感湧いた...ありがとう皆」

はるか「相変わらずの時差だなおい」

美波「渚ちゃんっぽいね」


ジャ「おい!皆で写真とろーぜ!」

はるか「あ、アリアリ!」

ジャ「んじゃ犬飼よろしく」

犬飼「俺も写らせろよッ!」

 

安西「じゃならぼー!」

五百旗頭「...」

麗美「ほら、なぎちん真ん中!」

莉茉「主役なんですから!」

五百旗頭「あ、、うん、、」


五百旗頭を中心に全員は並び、ジャスティンは、カメラのシャッタータイムを設定した。


ジャ「10秒ね!」

三太郎「いえーーい!!(^-^)   v」

幸二「バカッ!俺の顔の前でピースすな!」

一善「美波ちゃんもっとこっち寄ったら?」

美波「あ、ありがと///」


ジャスティンは、端っこに走り込む。

ジャ「はい!チーズ!」

 

パシャア!!

 

ジャスティンは、写真を確認する。

ジャ「悪くないね」

はるか「ねぇジャスティンエアドロしてー」

麗美「あ私もー」

ジャ「おけー!あ、インスタあげよー」

莉茉「え?インスタやってたんですか?ジャスティンさん?」

ジャ「いや、俺のアカウントではないよ(パスワードとユーザー名が簡単すぎて、とある人のアカウントをハッキングしてしまったのだぁ!はっはっは)」

莉茉「???ふーん」

ジャ「はい投稿ー。ポチッとな」

 

────

 

豊洲/堆家》

千巣「ん?こんな投稿俺したか?」

ひえり「何?」

 

────

 

《第2支部/食堂》

ジャ「wwwwwww」

はるか「てかwwwこの人wwwフォロワー10人てwwwウケるwww」

麗美「あの人そういうの興味無いしね」

はるか「だとしてもwww10人てwww」

莉茉「可哀想だからフォローしてあげよっと」


安西「おめでとう!渚!これ、私から!」

五百旗頭「これは?」

安西「ネックレス!渚に似合うかなって!」

安西は、五百旗頭にダイヤモンドのネックレスを渡した。

五百旗頭「...ありがとう。すごい嬉しい」

安西「んもー嬉しそうじゃないなぁー!」

五百旗頭「...笑」

 

ありふれた日常が、一番の幸せ────

 

────


第144話 「晩餐」

 

────


《第2支部/食堂》


ピーピー  ガヤガヤ

写真撮影を終え、一同はわちゃわちゃしている。


五百旗頭「そういえば安西、皆の診断結果、どうだった?」

安西「あ、うん!三太郎くんだけ若干数値高めだったけど、皆体に悪影響はないみたい!特に変わったところもなかったよ!あとでデータ送るね!」

五百旗頭「助かるわ」

安西「うん!」

五百旗頭「安西。いつもありがとう。あなたは誰よりも努力家ね。でも少しは要領ってものも覚えなさい?」

安西「え?うん」

五百旗頭「だけどその辛抱強さはあなたの最大の武器だと思うわ。将来のあなたに期待するわ」

安西「なんか、ありがとう笑」

五百旗頭「安西。もし私に何かあったら、ここはあなたに任せるから」

安西「?渚いきなりどうしたの?」

五百旗頭「何でもないわ。ただ、あなたの成長を見てね思ったの」

安西「やだなぁ照れるよー」


五百旗頭「”あの研究”も、私抜きでもやれるわよね」

安西「...渚?やっぱり何か...?」

五百旗頭「ま、やれる所までやってみてね」

安西「?」


五百旗頭「犬飼。あなた、普段はうるさいけれど、ここぞと言う時の集中力は目を見張るものがあるわ。いつもその調子でやりなさい。そうすれば、もっと成果をあげられるようになるわ」

犬飼「五百旗頭さん...!」

五百旗頭「あと、いつかいい人と結婚出来るよう祈ってるわ」

犬飼「お、俺は五百旗頭さんと...///」

五百旗頭「それは無理。ほか当たりなさい」

犬飼「!!」ガビーン!


五百旗頭「皆」


一同「?」

騒ぎ立てていた全員が、五百旗頭の方へ耳を傾ける。


五百旗頭「今日はありがとう。そして、いつも感謝してる。一人一人、尊敬してるわ。これからも、良き魔法使いとして、そして1人の若者として、悔いのない人生を歩むように。どんなに魔法が使えても、あなた達がこの世に生まれて、この時代で出逢えたことほどの奇跡はもう起こせない。だから、仲間を大切に、自分を大切に、ね」

幸二「!!」

一善「!!」

麗美「!!」

ジャ「くぅーいいこと言うねぇ」

莉茉「なんか、深い!」

はるか「っておいおい、卒業式の担任かよw」

美波「渚ちゃん...」


犬飼「グスン....そうだな...ここで皆と出会えたのは...奇跡なんだな...」

はるか「ってこの人めちゃくちゃ泣いてるゥ!!」

三太郎「グスン...間違いねぇな...」

はるか「お前もかヨ!」


美波「渚ちゃん、どっかに行っちゃう人みたいだね」

安西「そんなわけ。渚がいないと、魔裁組は成り立たないんだから!ね、渚」

五百旗頭「あなた達がいるじゃない」

安西「え?」

ジャ「ヒューヒュー!」

三太郎「ヒューヒュー!」


犬飼「よし!俺もっともっと頑張って!いつか五百旗頭さんを超えるぞ!!」

三太郎「頑張れー犬飼!!!!」

犬飼「犬飼”さん”なッ?!?!」


一同、笑う。


五百旗頭「(...この子達なら大丈夫。だって、こんなに明るいもの)」


その日は、夜まで大騒ぎだった。

 

────

 

《第2支部/五百旗頭の部屋前》

数日後────


コンコン!

犬飼「五百旗頭さん!データの確認お願いします!」

コンコン!

犬飼「いませんか?」


シーン...


犬飼「(いないのか...?)」

犬飼は、ドアノブに手をかける。


ガチャ...


犬飼「五百旗頭さ...」?!

そこには、五百旗頭ではなく、安西が立ち尽くしていた。


犬飼「安西?」

安西「...犬飼くん」


犬飼「なんだ?どうした?」

安西「これ...」

 

────

 

”魔裁組の皆へ。


暫く出掛けます。探さないでください。

無責任な私をどうかお許しください。

 


五百旗頭 渚”

 

────

 

この手紙の真意は────?!

 

SOREMA -それ、魔!- 17へ続く。

 

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第136話 「乙女たち」

第137話 「理想の殿方」

第138話 「五百旗頭食堂」

第139話 「手紙」

第140話 「やりがい」

第141話 「A data」

第142話 「平和と犠牲」

第143話  「ハッピーバースデー」

第144話 「晩餐」