SOREMA -それ、魔!- 10

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SOREMA -それ、魔!- 10

「賭けられる命」

 

────

 

第81話 「現れたのは」

 

────


《黒の孤島/南南西》


美波は、穴に落ちた村松を監視していた。

美波「(とにかく...いかだ到着まで、この子を見張らないと...!)」

村松「...!」ギロッ!

美波「キャー!紫のエレメント!ぴえん!」ドォン!

村松「...」ボロ...


美波「(私、卑劣!)」

 


《黒の孤島/北西》

幸二「マジで!やめろ!」

三太郎「逃げるなら攻撃するぜェ!黄のエレメントォ!!」

幸二「話を聞け!!!」


三太郎「少しくらい、付き合え!」

幸二「バカか!仲間割れしてる余裕なんてもうないんだよ!いかだ到着まであと20分を切ってる!俺たちも出口を見つけないと」

三太郎「分かった!じゃあ俺と戦いながら見つければいいな!黄の...!」

幸二「ダメだこりゃ!」

 


《黒の孤島/北》

一善とつのキングは、森を北上していた。

一善「(どこだ?走った距離的にはもう出口についてもいいはずだ...方向を間違えた?)」

つのキング「ウォーーーー!!!」

一善「ん?どうした?つのキング?」

つのキング「ウォーーーー!!!!」

つのキングは、一目散に飛んで行った。

一善「どこいくんだよ!つのキング!」

一善は、つのキングを走って追いかけた。


すると、つのキングの飛んでいく先に光が見えた。

一善「...?!」


カァァァン!!!!


一善「(眩しい...!)」

つのキング「ウォ......」

一善「!!」


一善とつのキングは、光の中に飛び込んだ。

一善が目をこらすと、そこは海に面した砂浜だった。


一善「ここが!出口!」

つのキング「ウォ......」

一善「ありがとう!つのキング...つのキング?」

つのキングは、低い唸り声を上げていた。

一善は、つのキングの視線の先を見た。するとそこには、しゃがんで砂浜に絵を書いている1人の男の背中が見えた。ハッピの色は赤だ。

 

一善「...あの人は!」

すると、その男は振り返って、一善に話しかけた。

千巣「背中、見すぎじゃない?」ド   ン   !


一善「(...千巣って人だ!せっかくたどり着いたのに、白は俺だけかな?)」

千巣「.......」

一善「(このままでは、俺がここで勝たないと、白は勝てない...!)」


プォォォーーーン!!!


海の方面から、法螺貝の音が聞こえる。よく見ると、一艘のいかだが、こちらへ向かっているのがわかった。


千巣「あ、これ、あと10分でいかだが来るってことね」

一善「(ってことは?10分でこの人を倒さないと...!頼む、誰か来てくれ)」

千巣「......?」


ドガァァァァァン!


すると、森から、巨大な爆発がして、砂浜に爆風が吹いた。


一善「!!!!」

千巣「......?」


スゥゥゥゥ...

 

────


第82話 「声」

 

────


《黒の孤島/北の砂浜》

スゥゥゥゥ....


一善「(なんだ?)」

千巣「......」

 

三太郎「ゴホッゴホッ...おい!少しは手加減しろよな!」ドン!

幸二「お前がふっかけて来たんだろうがこの脳筋ゴリラ!!」ドン!

三太郎「黙れ陰キャ

幸二「直球スギィ!!!」


千巣「.....お友達?」

一善「まぁ...」


幸二「千巣先輩と一善!」

三太郎「って!よく見たら、一善!!そしてなんかヤベェ奴!!元気か?!」

一善「その心配いらんし!」


三太郎「ってかここ!砂浜じゃねえか!ゴールだ!わーい!」

幸二「バカ!ここからが本番だ!まずはあの人を倒さないと!」

千巣「(うるせぇ...)」

三太郎「っておい!海見ろよ!もうそこまでいかだ来てるぞ!」


幸二「千巣先輩...どいてくれたり...しないよな」

千巣「俺に勝てたらいいよ。3人で」

一善「...!」

三太郎「3対1でも余裕ってか」

千巣「いや、俺弱いよ?」


三太郎が攻撃を仕掛ける。

三太郎「本当に弱ぇか、俺が確かめてやるゥ!黄のエレメント!!ダイナマイトクラッシュ!!」

ドォン!

千巣は、攻撃を躱した。

千巣「黄か。悪くない」

幸二「くっ!青のエレメント!ハート・THE・トリガー!!」バン! バン!!

千巣「”守護”」カァン!

一善「防がれた!」


千巣「前より青が板についてるな。幸二」

幸二「くっ!」

三太郎「ごちゃごちゃうるせー!!!黄のエレメント!!ガントレットバスター!!」

千巣「”守護”」ガァン!!

三太郎「(...!!!硬ぇ!!)」

千巣「筋はいい。だが...!」

三太郎「!!!」


千巣「”赤”のエレメント...遊火(あそび)」

ボンッ!!!!


三太郎「ぐわぁぁぁぁ!!!」

三太郎は吹き飛ばされた。


幸二「!!」

一善「三太郎!!」

幸二「ちっ。青のエレメントッ!!」

千巣「”走”!」ドロン!

千巣は幸二の視界から消えた。

幸二「くそっ!速い!」

千巣「”運”!」

千巣は、魔法陣から、身丈よりも長い刀を取り出した。そして、思い切り振り切った。

幸二「うわぁぁぁ!!!」


千巣「.....」

幸二「(くそっ!レベルが違う...!)」

千巣「黄の肉弾と、青の狙撃か...チームとしてのバランスはいい。さて...」

幸二「...!」

すると、千巣は、一瞬で一善の面前へ瞬間移動した。

千巣「君は何を魅せてくれる?」

一善「!!!(いつの間に...!?)」

千巣は、一善に重い蹴りを入れた!

ドォン!!!

一善「うわぁぁぁぁぁ!!」


幸二「(一善が飛ばされた...!)」

千巣「......」


一善「(くそっ。全く反応出来なかった...!幸二の速さでも、三太郎の力でも敵わない。攻撃しても防がれる...どうする!)」


???「俺が君を守る!!!」


一善「...?!」


一善の脳裏に響く声の正体は───!

 

────


第83話 「あと5分」

 

────


《第2支部

カッ   カッ

犬飼「誰か来たか?」

五百旗頭「!!!」

ジャ「あなたは!!」


ジャ「善能寺様!!」ドン!!

やってきたのは、魔法協会会長、善能寺柳子だった。

善能寺「今年も派手にやってるわね」

鬼屋敷「柳子さんお久しぶりねぇ!」

善能寺「姐さんも、まだ生きていたのね」

鬼屋敷「ハッハッハッハッ!冗談きついわよぉ〜」

善能寺「今、どんな状況?」

五百旗頭「こんな感じです」

善能寺は、モニターを見た。


善能寺「あの砂浜にいる子達が新人の子達?」

ジャ「そうです」

善能寺「片方が操蟲の書の履術者?」

ジャ「はい」

鬼屋敷「操蟲の書。懐かしい響きね」

善能寺「そうね」

鬼屋敷「”彼”が生きていたら、今頃どんないい男になってたかしらねぇ」

ジャ「?」

善能寺「ちなみに、その子、名前は?」

ジャ「一善といいます」

善能寺「(一善...ね)」

鬼屋敷「いい名前ねぇ」


善能寺「ところで、五百旗頭さん。”あの研究”はどう?進んでる?」

五百旗頭「進んではいますが、まだまだ難しいですね」

善能寺「成功するまで続けて頂戴。その研究は、我々人類の未来に大きな影響を与える」

五百旗頭「精進します」

善能寺「それさえ成功すれば、”私達の世代で魔法を根絶やしに出来る”わ。平和的にね」

五百旗頭「はい」

善能寺「今まで払った犠牲を無駄にしないように.....」

 

ーーーーー

 

《黒の孤島/北の砂浜》


一善「(誰だ?)」


???「俺が君を守る!」


一善「(...もしかして...)」


幸二「一善!!!前!!!」

千巣「ぼさっとすんな〜」ドォン!!

千巣は空中で重ねて蹴りを喰らわせる。


一善「くっ!!!」


一善は地面に落下した。

千巣「(受身をとった...)」


一善「ハァ...(もしかして、君なのか?つのキング!!)」

一善は、つのキングの方に目をやる。

つのキング「ウォーーーー!!!」


つのキングは、頷き、千巣に突進する。

千巣「魔獣使い。厄介だな」

つのキング「ウォーーーー!!」

千巣「赤のエレメント、雄叫火(おたけび)!!」

つのキング「ウォーーーー!!!」ボワァァ!


つのキングは吹き飛ばされた。


一善「!!(気のせいか...?)」

千巣「...」

一善「(なら直接斬り掛かるまで...!)緑のエレメント!伽羅枕!」

千巣「”運”!妖刀・夜叉!」

千巣は、再び長刀を取りだし、一善の攻撃を受けた。


キィン!!!


千巣「いい”刀”だ」ペロッ

一善「...くっ!」


三太郎「(はっ。あいつ、背中ががら空きだぜ。今ここで、俺が...!)」バリバリバリ!

幸二「!!」


三太郎「騙し討ち悪ぃな...俺たちが勝つためだ!黄のエレメント!ガントレット...!」

千巣「見すぎだよ」ボソッ

一善「?」


そう言うと、千巣は刀を押し、一善は蹴り飛ばされる。

一善「!!」

そして、背中に迫り来る三太郎に、刀を振りかざす!

三太郎「!!!」

千巣「甘いな!」

ドン!!!

三太郎「ぐはっ!」

千巣「...安心せぇ...峰打ちだ。つってな」


幸二「くっ!」バァン!バァン!

幸二はエレメントの弾を放った。

それを千巣は、刀で弾く。


カキンカキンカキン!


千巣「.....」


いかだ到着まで、あと5分────!

 

────


第84話 「完敗」

 

────


《黒の孤島/砂浜》

千巣「俺は生まれつき感覚が鋭くてな、どこを見られてるかわかるんだよ」

三太郎「ちっ、さっきからボソボソ喋りやがって。背中にも目がついてる的な?!」


幸二「囲め!四方から同時に畳みかけろ!!」

三太郎「おう!!」

一善「わかった!!」

つのキング「ウォーーーー!!」


幸二「(もう時間が無い...!)」

三太郎「黄のエレメント!ガントレットバスター!」

一善「緑のエレメント!地獄の花!」

幸二「青のエレメント!コズミック・THE・ブレイブ!」

つのキング「ウォーーーー!!」


千巣「面白い...」

千巣目掛けて、四方から超攻撃が襲う!!

 

千巣「赤のエレメント!唐紅!」

 

ボワァァァァァァ!!!

辺りが赤いオーラに包まれ、全ての攻撃はかき消されてしまった。

千巣「...!!!」

幸二「うわぁぁぁぁぁ!」バァン!

一善「うわぁぁぁぁぁ!」バァン!

三太郎「うわぁぁぁぁぁ!」バァン!

つのキング「ウォーーーー!」バァン!


千巣は、3人とつのキングをものともせず吹き飛ばした。


幸二「(くっ、この人はまだ”本気じゃない”のに...)」

三太郎「(強い!強すぎる)」

一善「(今まで戦ってきたどの魔者よりも強い!)」


千巣「もういいかな?」


プォォォーーーン!


いかだが、岸に到着した。

 

ーーーーー

 

《西北西》


プォォォーーーン!


伊藤「...!」

莉茉「いかだが来たわね」

 


《南南西》


プォォォーーーン!


村松「...」

美波「(一善くん、辿り着けたかな)」

 


《南》

はるか「黄のエレメントォ!!!獅子拳ィ!!!!」

ドゴォォォォン!!!

虎走「ぎゃぁ!!!」

麗美サウンドワン!POP!」

九頭龍坂「縮!」


プォォォーーーン!!!


虎走「ぎゃは。もうすぐ時間ね」

九頭龍坂「心配無用。千巣はんなら」

麗美「(ちっ。遠すぎて状況がわからない...!)」

はるか「(くそ!誰か!頼む!)」

 


《第2支部

善能寺「勝負ありね」

鬼屋敷「ハッハッハッハッ!さすが!私が愛する子供たちだわぁ〜!」

ジャ「....」

犬飼「諦めるな!!!お前ら!!!」

 


《黒の孤島/砂浜》

ヒュン!


タタッ


千巣はいかだに乗り込んだ。

千巣「じゃ、俺たちの勝ちだな」


三太郎「くそ!体が動かねぇ!」

一善「(全身が重い...!)」

3人は、砂浜に這いつくばり、千巣が去っていくのを見ることしか出来なかった。


幸二「(悔しいがこれは、完敗だ...)」ド  ン  !

 

────


第85話 「これから」

 

────


いかだは、千巣1人をのせて、緑の孤島へ進んだ。


《黒の孤島/砂浜》

幸二「...クソ...クソクソクソ!!!」

幸二は、砂浜に何度も拳をぶつけた。

一善「...」

幸二「なんで...どうして俺は...勝てないんだ...!」

一善「...」

幸二と一善は、遠ざかっていく千巣の背中を見ていた。


幸二「...不甲斐ない...俺は、これから人々を守っていけるのか...?」

一善「幸二...」


バコーン!!


三太郎が、幸二を殴った。


一善「!!」

幸二「...?!」

三太郎「バカ言ってんじゃねえ...弱虫みてぇな弱音吐いてんじゃねぇぞ、俺より強いお前が!!!」

幸二「...」


三太郎「これから強くなるんだよ...!もうやり切ったみたいな面してんじゃねぇ...!」


一善「!!」

幸二「!!」

 

ーーーーー

 

そして、数時間後────


《緑の孤島》

審判「第4回紅白魔法合戦!優勝は紅組!」


虎走「やったーーー!!!ぎゃはぎゃは!!」

伊藤「やりましたね!皆さん!」

九頭龍坂「ま、当然の結果やない?」

麗美「....」イラッ

村松「...」

はるか「私の焼肉フルコースが...」ドヨーン


千巣「みんなお疲れさん」

伊藤「やっぱ先輩は凄いですよ!」

九頭龍坂「最強の魔法使いの名に恥じない活躍やったなぁ」

千巣「いや、最強は鬼屋敷さんだからw」

虎走「ウケるwwあれはレベチ」


莉茉「ごめんなさい。私のせいで...」

はるか「そんなことないよー莉茉っちー」

幸二「今回はチームとして相手が上手でした」

莉茉「...」

三太郎「なんか、すげえ悔しいなぁ。ここまで悔しいなんて。初めてかも」

一善「...うん」

麗美「来年こそは...」ゴゴゴゴゴ!

美波「麗美ちゃん気が早いって...」


プルルル プルルル...


千巣「あ、電話だ。もしもし?」

ジャ「せんのすさーーーーーん!!!元気ーーーーー?!?!」

千巣「っなんだよ!電話越しから暑苦しいんだよジャスティン!なんだ?」

ジャ「いやーセンパイの活躍お見事でしたよーほんと、うちの子達も歯が立たなかったみたいで」

千巣「あれはたまたま...」

ジャ「あのさー。こっちいま台風来ててですね?」

千巣「え」


ジャ「今日帰りの飛行機出せないから、明日迎えに行くね」

千巣「え?は?」

ジャ「みんなのこと頼んだよーん」ガチャ


幸二「ジャスティンさん、なんか言ってました?」


千巣「悲報。今日、迎え来ません」


シーーーーーーン


一同「えーーーー??!?!!??!」

 

ーーーーー


《第2支部

ザーーーーーー

ビューーーーー

東京の雨は勢力を強め、台風規模になっていた。

ジャ「明日には台風過ぎてますかねぇ」

五百旗頭「大丈夫でしょ」

安西「みんな大丈夫かな、、ご飯とかあるかな、、」

ジャ「たまにはこういうのもありでしょ。親睦親睦♪」

犬飼「呑気だな」

ジャ「あ、俺いいこと考えた」

善能寺「?」

鬼屋敷「なによ」

ジャ「魔裁組の戦力をもっともっと底上げする企画。名付けて」

鬼屋敷「?」

五百旗頭「?」


ジャ「魔裁組、交換留学」ド   ン    !

 

────


第86話 「BBQ」

 

────


《第2支部

鬼屋敷「交換留学?何それ」

ジャ「新人2人を一時的にそっちで育ててもらう。第1支部からも、希望する人間をこっちで預かる。ほら俺たち、教育方針も戦闘スタイルもてんでバラバラだろ?だから、双方のいい所を取り入れて、ハイブリッドな人材を育てようって訳」

鬼屋敷「なるほど...」

善能寺「いい考えね」

五百旗頭「ま、面白いんじゃない?」

ジャ「どうだ?姐さん」

鬼屋敷「ハッ。いいわ。私はどうせ何もしないから、どうぞ?」

ジャ「決まりだな」

 

ーーーーー


《緑の孤島/コテージ》

日は落ち、第1支部、第2支部の面々は仕方なくBBQをやることになった。


幸二「BBQやる材料なんてよくありましたね」

千巣「なんか、島の人達が分けてくれたよ」

幸二「へぇ。あ、そういえば、これ犬飼さんから」

幸二は犬飼から受け取っていた、謎の袋を渡した。

千巣「あぁ、”犬飼”ね」


《第2支部

犬飼「へっくしゅん!!」

安西「大丈夫?」


《緑の孤島》

麗美「(なんでこいつらとBBQしないといけないのよ...)」

九頭龍坂「あんたの肉、ええ匂いやなぁ」

麗美「(クンクン)って焦げとるやないかァ!」


はるか「バクバク!」

三太郎「バクバク!」

美波「あの、2人とも食べ過ぎじゃないかな?」

虎走「バクバクバクバクバクバクバクバクバクバク」

美波「(もっと食べてる人いた)」


村松「...」パクパク

一善「ここいい?」

村松「...」

一善「君の魔獣、凄い強いんだね。名前なんて言うの?」

村松「...ラキラキ」

一善「そうだった!沢山名前呼んでたもんね!」

村松「...」

一善「あのさ、疎通って何?」

村松「...疎通。話さなくても、何を考えているか、分かること」

一善「魔獣が?」

村松「...」

一善「(口数少なスギィ!)」


村松「疎通ができると、君の魔獣も、もっと行動しやすくなる。君自身も」

一善「!」

村松「..........」パクパク

一善「(なるほど、だからこの子はほとんど指示を出さずにあんなコンビネーションが出来たんだ)」


伊藤「アッあのぉ!」

莉茉「あ、伊藤ちゃん。ここ座りなよ」

伊藤「エッアッ、いいんですか?莉茉さんのお隣なんて、そんな、私には勿体ないと言いますか、その、、」

莉茉「はやく!笑」

伊藤「あっすみません!」ドキドキ

莉茉「笑」

伊藤「あの.....」

莉茉「ん?」


伊藤「サインくださいっ!!!!!」ドン!

 

────


第87話 「見上げた流星

 

────


《緑の孤島/コテージ》

BBQを終え、一行は眠りにつこうとしていた。

その頃、一善は、コテージの外で、空を見上げていた。


──”俺が君を守る!”


一善「(...あれは、本当につのキングの声だったのかな)」

一善は、満天の星空を眺めてから、ふと目閉じた。

一善「(お母さん。俺は今どうするのが正解かな。流されるままに今日までやってきたけど、まだ、あの時の”答え”が出せないんだ)」


──幸二 ”それでも辞めたいと言うのなら、荷物をまとめて出ていけ”


一善「...」


するとそこに、幸二がやって来た。


幸二「一善?」

一善「あっ幸二」

幸二「隣いいか?」

一善「うん...」


幸二「どうだった。今日の試合」

一善「正直に言うと、よく分からない」

幸二「...」

一善「悔しかったのか、苦しかったのか、なんとも思わなかったのか。なんか、本気で戦ったけど、みんなみたいに燃えるような感情はなかった。やっぱ温度差があるっていうか、なんかなぁ」

幸二「...」

一善「ごめん。みんな真剣にやってるのに」

幸二「...」

一善「戦うのとか、好きじゃないし」

幸二「でも俺はお前の才能を買ってるよ」

一善「?」

幸二「幼稚園に駆けつけた時、目の前の子供たちを救うために立ち向かうお前を見てたんだ。その時のお前は、人を守る男の顔をしてたよ。魔者と戦う時も、試行錯誤しながら戦うお前や三太郎の姿を見て、襟を正すべきだと思った。だから、俺はお前達が来てくれて良かったと思ってるよ」

一善「...!」

幸二「うん」


一善「でも...やっぱり戦えば戦うほど、また次の壁があって...俺にやれるのか、ずっと不安なんだ」

幸二「わかるよ。俺も同じさ。10年やってても、ジャスティンさんみたいに凄い人には抜かれるし、別に俺は才能ないんだよ。多分、一善にもいつか抜かれる。正直今の俺は、一善より強いって言いきれる自信もない。そして、また今日、己の力不足を味わった」

幸二は、拳を強く握った。


幸二「でもやらないとな。俺はもっともっと強くなって、天堂家の人間として相応しい男になりたいと思う。三太郎の言う通りだった...だから俺はこれからなるよ。たくさんの人間を救うことの出来る、強い人間に」

一善「幸二...」

幸二「一善も、もう少し続けてみたらどうだ?その才能は努力すればさらに磨かれる。自分を信じろ」

一善「...」

幸二「じゃあな。おやすみ」

幸二は、部屋に戻った。

一善「おやすみ」


一善「...」

一善は再び空を見上げた。


一善「才能...か」


満天の星空に、流れ星が流れた。

 

────


第88話 「交換留学」

 

────


《緑の孤島》

一夜明け、プライベートジェットに乗ったジャスティンらが、皆を迎えに緑の孤島へやってきた。


千巣「ジャスティン!姐さんも」

ジャ「千巣さーーーーんあいたかったよぉーーー!」

ジャスティンは、千巣に抱きついた。

千巣「マジで暑い!お前デケェからマジで暑い」

虎走「姐さん久しぶりー!」

九頭龍坂「わざわざ来てくれたん?」

鬼屋敷「もちろんよ〜!みんな、焼肉ありがとうね♥」

伊藤「そっか!勝ったから焼肉があるんだ!」

村松「...」

虎走「焼肉わーーーい!!」


はるか「おいジャスティン。ジャスティンが出てれば勝てたんじゃねーの?」

ジャ「それはどうかな」

麗美「ま、いいけど、早く帰ろ」

ジャ「あっじゃあ解散前に1ついいですかー?」

美波「?」

一善「?」


ジャ「えー、第2支部及び、第1支部の皆さん。我々魔裁組は、交換留学を行いたいと思います!!!」


一善「交換留学?」

三太郎「なんだそれ?」


ジャ「はい!You達!一善、三太郎!君たちは明日から約1ヶ月間、第1支部のお世話になってもらいます!!!」


三太郎「は?」

一善「俺たちが?」

幸二「...!」


ジャ「そう。だから支部に帰ったら、お引越しの準備してねぇん」

一善「マジっすか」

三太郎「第1支部ってことはあのふわふわの人と特訓出来るってことだな!!」

千巣「俺?」

ジャ「そう。千巣さん、こいつらの面倒見てくれない〜?」

千巣「は?」


鬼屋敷「あと、伊藤ちゃん!伊藤ちゃん、代わりに第2支部に行ってきなさい!」

伊藤「え!私ですか?」

鬼屋敷「あんた一番新入りなんだから、それに、あんたも本当は行きたいでしょ〜」ニチャア

伊藤「(確かに!莉茉さんと同じ第2支部!)やります!いや、やらせてください!!」


ジャ「んじゃ決まり!ってことで、明日からよろぴこ〜皆ー飛行機乗ってーって...」

気がつくと、既にほとんどの女子は飛行機に乗っていた。

ジャ「話聞けェ!」


千巣「おいジャスティン。俺はどうすればいいの?」

ジャ「千巣さんはー、あの二人をギッタギタにしごいてしごいてしごきぬいてくれればいいのです★」

千巣「はぁ...」

鬼屋敷「やっちゃいなさいよ!」

千巣「まぁ、少しなら...」

千巣の視線の先には、一善と三太郎が映る。


千巣「ま、面白いかもね」

 

────


第89話 「賭けられる命」

 

────


紅白から一夜明け、早速一善と三太郎は、第1支部に一時移籍することになった。


一善「第1支部ってどこにあるんですか?」

ジャ「スカイツリーが出来る前、1番東京で高かった場所は?」

三太郎「東京タワーか!」

ジャ「そう!はい着いた!」

一行は、東京タワーへやってきた。


ジャ「じゃ、姐さんおっかないから俺は帰るー。そこ登ってけばあるから!案内の人も多分いるし!」

一善「案内が雑!」

 

一善と三太郎は、なんやかんやで第1支部へ辿り着いた。

一善「(凄いな、第2支部の洋風な感じとは全然雰囲気がちがう...)」

三太郎「(無惨いそう...)」

 

《第1支部/鬼屋敷の部屋》


一善「今日からお世話になります。油木一善です」

三太郎「俺、三太郎!スーパーヒーローになる男だ!」

鬼屋敷「ハッハッハッ!元気でいいわねぇ」

一善「よろしくお願い致します」

鬼屋敷「ん。頑張ってちょうだいね」

三太郎「んじゃあな!」


2人は、部屋を後にしようとした。


鬼屋敷「あ!左のあんた!」

一善「ん?僕ですか?」

鬼屋敷「”その力”に、”泥を塗る”んじゃないわよ」

一善「?は、はい」


バタンッ


一善「...(なんだ?)」

 

ーーーーー

 

《第2支部

幸二は紅茶を飲んでいた。

莉茉「あら、幸二くん。何してるの?1人で」

幸二「いや、なんでもありません」

莉茉「わかった。あの2人が居なくなって寂しいんだ?」

幸二「そ、そんな訳ないですよ!」


するとそこへ1人の少女がやって来た。

伊藤「お、おはようございます!皆さん!」

莉茉「!」

幸二「!」

 


《第1支部


ガラガラガラ...

千巣「おーい。新人ー。特訓するぞー」

三太郎「でたな!最強ふわふわ野郎!」

千巣「まずお前に教えるのは礼儀だな」

一善「w」

千巣「改めて、俺は千巣万之助。よろしく」

一善「よろしくお願い致します!」

三太郎「よろしくぅ!」


《廃校》


千巣は、2人を連れて廃校にやってきた。

三太郎「また廃校かよ」

一善「まぁまぁ」

千巣「まずお前たちは、はっきり言って”基礎”がなってない。己の得手を伸ばすのもいいが、まずは基礎。お前たち自身の命を守る特訓だと思え」

三太郎「自分の命?」

千巣「そう。攻撃を防ぐ。攻撃から逃げる。といった基本的な術だ」

三太郎「なんか、地味だな!俺はなぁ!スーパーヒーローになりたいんだぜ?!俺は自分の命をかけて人を守りてぇんだ!もっと強ぇ技を教えてくれよ!」


千巣「却下」

三太郎「?」


千巣「お前がなりたいスーパーヒーローとやらになるには、ここを今すぐ辞め、英語を学びMARVELのオーディションを受けるべきだ。俺の思うスーパーヒーロー像とは大分違うからな」

三太郎「それってどんなだよ」

千巣「救える命は救う。だが、自分が率先して死んでもいいという訳では無い。己の命を先ず守る」

三太郎「はぁ?そんなの」


千巣「守れる命は複数あるが、賭けられる命は1つだ」


三太郎「...!」

一善「!!」


千巣「もしお前が死なずに生き続けていれば、この先の人生で沢山の命を救えるかもしれない。だがお前が今死んだら?この先救えたかもしれない命が救われない可能性がある。これは何も目の前の救える命を見捨てろという訳では無い。命の重さは同じだと言うが、それはお前自身の命も同じ。自分の命を軽んじるな。守れる命から守れ、ということだ」

三太郎「...なるほど」

千巣「賛同できないならば他をあたるんだな。別に、好きにすればいいんだから」

一善「(救えたかもしれない命...か)」

三太郎「…わかったよ。あんたが言うなら間違いねぇんだろうよ」

 

────


第90話 「基礎魔法」

 

────


《廃校》

千巣「今から教えるのは、移動手段としての基礎魔法”走(そう)”と、相手の技を受けるための基礎魔法”守護(しゅご)”だ。マヂカラが流れている人間なら誰でも出来る」

一善「基礎魔法...ですか」

千巣「そう。他にも、魔法陣から道具を召喚する”運(うん)”、受けた傷を癒す”療(りょう)”などがある。だがまずはこの2つだな」

三太郎「よし!やってやるぜ!」

一善「お願い致します!」


千巣「まずは”走”だ。これは指を三本立てて...」


千巣「走!」

シュン!


千巣は高速で遠くに移動した。

三太郎「すげぇ!急にあそこまで移動した!」

一善「かなりの距離だ」


千巣「こんな感じで使う」(元の場所に戻ってきた)

三太郎「ビクッ」

一善「これ、どこまででも行けるんですか?」


千巣「”円陣”って分かるか?要するに、自分のマヂカラが作用するおおよその範囲の事だ。それはその人間のマヂカラの強さによって異なるんだが、その中であれば基本的に移動可能だ」

三太郎「俺もやってみてぇ!」

千巣「走のコツは、移動した先の地点から見える景色を想像することだ。ま、何回かやってたらできるようになるっしょ。できるようになったら呼んでくり〜」


千巣は、魔法陣の中に消えた。


三太郎「え!行っちゃったんだけど!何あの人!」

一善「とりあえず、やるしか無さそうだ...」


一善と三太郎は、走の練習を繰り返し行った。

 

ーーーーー

 

《第2支部/研究室ルーム》


五百旗頭「あれ、犬飼今日休みだっけ?」

安西「犬飼くん今日なんか推してるアイドルのライブなんだってよ!」

五百旗頭「ふーん。なんて人?」

安西「いろは坂46って知ってる?」

 

ーーーーー

 

《第1支部

夜──


一善「ハァ!!」バタンッ

三太郎「ハァ!!」バタンッ


虎走「あ、新人の子だ」

九頭龍坂「そんなに息荒らげて、お茶でも飲みはる?」


千巣「あ、2人とも。どう?出来た?」

一善「ゼェ...」

三太郎「ハァ...」

2人は、くたびれながら、親指を出した。


《廃校》

千巣「よし、やってみ」


一善「ハァ...ハァ...走!」 ピュン!

三太郎「走!」 ピュン!「痛っ」ドテッ

三太郎は、壁にぶつかった。


千巣「ま、第1段階はいいだろ。合格だ。後はコントロールが出来れば完璧だな」

一善「ハァ...ハァ...」バタンッ!

三太郎「ハァ...」バタンッ!


虎走「ぎゃは。大丈夫?」

九頭龍坂「あんまいじめたらあかんえ」


一善「...」グゥ.....

三太郎「...」グゥ.....


一善・三太郎「腹減った...」

 

SOREMA -それ、魔!- 11に続く。

 

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第81話 「現れたのは」

第82話 「声」

第83話 「あと5分」

第84話 「完敗」

第85話 「これから」

第86話 「BBQ」

第87話 「見上げた流星

第88話 「交換留学」

第89話 「賭けられる命」

第90話 「基礎魔法」