SOREMA -それ、魔!- 63

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SOREMA -それ、魔!- 63

 

 

 

 

 

 

 


揺らぐ記憶

 

 

 

 

 

 

 


【ノベルウォー現在の動向】

・渋谷

ジャスティン〇 vs サド●

 


・池袋

莉茉● vs クリスティ●

はるか、村松、TORA合流→白鶯を探す

 


・上野

唯・百目鬼〇 vs ユゴー

唯、百目鬼は単独行動中

美波、描写の書の履術者に

 


・新宿

麗美・ルカ〇 vs セリーヌ

 


赤坂見附

虎走〇 vs アール・カルマ & 魔者数体●

新宿・赤坂見附組によって、全魔者を除去。

 


・品川

幸二・三太郎〇 vs ウルフ●

幸二ら、唯を探す。

 


・東京(結界前)

一善

 


・皇居周辺

九頭龍坂・岩田

強いマヂカラ反応あり

 


・上空基地

五百旗頭・ひえり

ヒメ、外へ

 

 

 

 

 

 

 


第506話 「白鶯現る」

 


《新宿》

 


麗美とルカの元に、ひえりから連絡が入る。

 


ルカ「ひえりちゃん?」

『ひえり:ルカさん!!!大変です!!!』

ルカ「なにがあったの?」

麗美「?」

『ひえり:白鶯が...!』

ルカ「...!!!」

 

 

 

《九段下・武道館前》

 


岩田「...あの禍々しいオーラ...奴が噂に聞いた...!」

九頭龍坂「間違いない...!」

 

 

 

白鶯「どいつもこいつも使えないゴミだらけだ...力を与えた物達とはいえ、'や'は'り他人は信用するものでは無い...!」ドン!

 

 

 

魔者達が消え去った筈の九段下付近、邪悪なオーラと共に白鶯が姿を表した...!

 


白鶯「まぁいい...本当の目的はここからだ...」

 


九頭龍坂「...!アンタが...!」

岩田「魔裁組、この街を脅かす巨悪め...!生きていられると思いなさんな...!」

 


岩田は岩を全身に纏い、巨大な石像の様な姿になった...!

 


ゴゴゴゴゴゴゴ...!!!

 


岩田「悪は我々の手で滅ぼさん...!蒼魔導書赫魔導書第六章...!岩の書・最終奥義...!石司無双(ごくしむそう)...!!」

 


白鶯「ほう。面白い」

岩田は巨大な姿で、白鶯に殴りかかる...!

九頭龍坂「まるで...巨人!」

岩田「悪霊退散...!緑のエレメント!”勇皇邁進(ゆうおうまいしん)”...!!!」

 


巨大な岩の拳が白鶯に迫る...!

 


ゴゴゴゴゴゴゴ!

 


白鶯「ふっ」

 


ピタッ

 


その瞬間、岩田はまるで時が止まったかのように動かなくなった。

 


九頭龍坂「?!」

 


白鶯「おい...誰を滅ぼすって?」

 

 

 

バ        ァ          ン          !!!!!!!

 

 

 

その瞬間、岩田の岩の鎧は全て一瞬にして砕け、空中に生身の岩田が現れた!

 


岩田「?!?!」

白鶯「遅い...」

 


パッ

 


白鶯は宙に浮かんだ岩田の背後に移動し、岩田を武道館の屋根に蹴り落とした!!!

 


ドッカーーーーーーーーン!!!!!!!!

 


岩田は気絶してしまった。

 


九頭龍坂「岩田はん!!!!」

白鶯「口程にもない」

九頭龍坂「...!!」

 


九頭龍坂は、持っていた薙刀を握り返す。

 


九頭龍坂「アンタ...ようやってくれますなぁ」

白鶯「?」

九頭龍坂「返せよ」

白鶯「?」

九頭龍坂「私の大事な仲間達を返せよ!!!」

 


白鶯「なんの事だ?」

 


九頭龍坂は、薙刀にマヂカラを込めながら続ける。

九頭龍坂「簡単に人の命を奪えるアンタにはわからんか。もうこれ以上はやらせん」

 

 

 

 

 

 

 


第507話 「繋がっていく想い」

 


《九段下》

 


九頭龍坂「簡単に人の命を奪えるアンタにはわからんか。もうこれ以上はやらせん」

白鶯「...」

九頭龍坂「伸!!!」

 


九頭龍坂は、薙刀の鋒を白鶯の顔面まで伸ばす!

白鶯「...」

ピタッ

 


白鶯は時間を止め、寸前で薙刀を止める。

 


白鶯が九頭龍坂を襲おうとするが、薙刀は空中に浮いており、持ち手を持っていた筈の九頭龍坂は姿を消していた!

 


白鶯「?」

その瞬間、白鶯の周りに散らばっていた瓦礫やガラス片が白鶯を囲むように伸び、白鶯を前後左右から突き刺した!!

 


白鶯「...!」

九頭龍坂は、白鶯の裏に回り込む!

 


九頭龍坂「ドアホ。アンタがどれだけ強いか知らんけど、'そ'の'能'力、姐さんより使いこなせるわけないやろ」

白鶯「...(なるほど。鬼屋敷の能力のタネはバレてるということか。まぁいい)」

九頭龍坂「死ね!」

 


九頭龍坂はもう一本の槍で、白鶯の心臓を突き刺す!!!

 


グサッ!!!

 


九頭龍坂の攻撃は、心臓に突き刺さり、白鶯は口から吐血した。

しかし、その顔は笑っている。

 


白鶯「成程。油断したとはいえ、その機動力は賞賛に値する。お前が望むなら、更なる力をお前に与えてもいい。俺に忠誠を誓うならな」

九頭龍坂「アホか(...ちっ。コイツ、不死の書の履術者やった...!心臓突っついても無駄っちゅうわけか!ほんなら!)」

九頭龍坂は、手に魔導書ゲッターを嵌め、白鶯の背中に手を伸ばす!!

 


九頭龍坂「はぁぁぁぁ!!!」

白鶯「愚か」

 

 

 

グワァァァァァァン!!!!

 

 

 

白鶯から謎のオーラが発出し、九頭龍坂は”眠り”についてしまった...!!

 


白鶯「折角生き延びるチャンスをやったのに、馬鹿な女だ。くだらん思想に身を切って死ね」

 


白鶯が九頭龍坂に手をかけようとしたその時...!

 

 

 

カッチーーーーン!!!

 

 

 

白鶯の動きが一瞬フリーズした!

 


白鶯「...今度は誰だ?」パリィン!

ジャ「とうとう現れたな...白鶯!」

白鶯「...?」

 


ジャスティンが、渋谷から地下鉄のトンネルをたどって最速で九段下にやってきた!

 


白鶯「お前は?」

ジャ「名前なんて知らなくていい。ただ1人の人間さ。お前に恨みを持つ数え切れない人間の内のな」

白鶯「ふはっ。逆恨み集団の1人か。それはご苦労」

ジャ「...(理子姉さん。あなたの叶えられなかった願い...僕たちが叶えます...!)」

白鶯「見るからにお前、履術者ではなさそうだが?」

ジャ「あぁ。違うな」

白鶯「話にならん。どうせ胡散臭いエレメントととやらの魔法使い擬きだろう?くだらん」

ジャ「思ってるがいいさ。痛い目見るぜ」

白鶯「ほう?」

ジャ「お前は魔裁組(俺たち)が裁く...!」

 

 

 

 

 

 

 


第508話 「剣を持った魔導師」

 


《東京 / 魔導結界・蝕》

 


白鶯出現から時を遡ること数十分、

 


一善は単独で結界に足を踏み入れた。

 


一善「...」

 


一善の踏み入れた結界は、東京駅舎が緑に覆われ、草木に蝕まれた様な、また、時の流れが止まったような空間だった。

 


一善「今までの結界とは少し違うな...元いた場所の造形がそのまま基になってる...」

 


一善は辺りを警戒しながら足を進める。

 


一善「(魔者はどこだ...?マヂカラが分散して気配が読みづらい...!)」

 


すると、一善の背後に謎の影が現れ、一善を襲う...!

 


???「...!!!」

一善「!!!」

 


一善は、背後に気配を感じ、エレメントの剣を後方に振る!!

すると、謎の影の正体は、その攻撃を後方に飛んで避けた。

 


一善「...現れたな、魔者」

ダザイ「...」ドン!

 


現れたのはダザイ。赤く染まった剣を構え、一善を狙っている。

 


一善「...(ん?気配が魔者と少し違う...魔導師か?人間なら俺よりも若いな)」

 


2人は間合いを取って睨み合う。

 


一善「君、魔者?人間?」

ダザイ「...」

一善「人間だよね?」

ダザイ「...だったら?」

一善「いいや。特に関係はない」

一善は、エレメントの剣を握る。

一善「おいで、つのキング」

つのキング「ウォーーーーー!!!」

 


空の魔法陣からつのキングが飛んでくる。

 


ダザイ「...」

一善「...!!!!」

一善は、ダザイに斬りかかる!

 


ダザイは一善の攻撃を剣で受けつつ、つのキングの突進も避ける!

 


キィン!カァン!キィィン!!カァンン!!スパッ!!!キィン!!

 


ダザイ「...!!」

ダザイは、一善の首元に剣を振るう!

一善「...!(隙あり!)」

一善はしゃがんで避けるも、ダザイは剣を途中で引っ込める!

ダザイはしゃがんだ一善を足で蹴り飛ばす!!

 


一善「...!(反応が早い...!!)」

 


ドゴーーーーーン!!!

 


ダザイにつのキングが突進する!!

ダザイは、剣でつのキングの攻撃を受ける!!

 


そして、隙を見て立ち上がった一善が、ダザイに攻撃を加える!

 


一善「緑のエレメント...!草枕!!!」

 


ダザイは攻撃を避け、一善とつのキングに返しの一撃を食らわせる!!!

 


ダザイ「”玄武の構え”」

 


ドゴーーーーーン!!!

 


一善「いって...!」

つのキング「ウォーーーーー!!!」

 


ダザイ「...」

 

 

 

 

 

 

 


第509話 「追憶の声」

 


《魔導結界・蝕》

 


一善は膝をつく。

 


一善「ハァ...(強い...!一撃の重さもさることながら、何よりもその反応速度...!まるで、こっちの攻撃が”来ることが分かってる”みたいだ)」

ダザイ「...」

 


ダザイは、素振りで剣を上から振り下ろしながら、一善が立ち上がるのを待つ。

 


一善「...(相手の反応の速さを見るに、二手から攻めた方がいい。つまりつのキングはこのまま実体を保ち続けたいが、もうすぐつのキングを保つためのマヂカラは切れてしまう...何とか相手の隙を作らないと...!)」

 


一善は立ち上がる。そして、一度つのキングを解除する。

ダザイ「...」

一善「その足さばき...剣道だよね(つのキングを一度下げて、マヂカラを回復させよう)」

ダザイ「...」

一善「何故白鶯に加担する?」

ダザイ「どうだっていいだろう」

一善「まぁね。悪は滅ぼさないと」

ダザイ「...」

一善「でも君、そんなに強いのに、どうして魔導師になったの?」

ダザイ「お前には関係ない」

一善「...ま、話す気がないならいいよ」

 


一善は、回復させたつのキングをダザイの背後に召喚する。

 


一善「ここで死んでくれ」

つのキング「ウォーーーーー!!!!」

つのキングがダザイを背後から襲う!

 

 

 

グシャッ!!!!

 

 

 

ダザイは、ノールックでつのキングの位置を把握し、剣で串刺しにした!!

 


一善「?!」

ダザイ「...」

 


ズバッ!!!!

 


ダザイ「”白虎の構え”」

ダザイは大きく剣を振り下ろし、つのキングを一刀両断した!!!

 


一善「つのキング!!!(くそ...!一撃でつのキングが...!しばらく召喚出来ない...!)」

一善はダザイが後ろをむいている隙に攻撃を仕掛ける!

一善「”走”!緑のエレメント!潮騒!!」

 

 

 

しかし、ダザイは一善の攻撃を察知し、剣先を一善に振り向けた!

 


一善「!!」ピタッ

ダザイ「...」

一善「...(全部読まれてる...!何でだ?!)」

 


一善は一旦退く。

 


一善「...(おかしい。いくらマヂカラの気配を察知する能力が高いとはいえ、この結界で蔓延するマヂカラの中、相手の攻撃をあそこまでピンポイントに理解するのはかなりの労力がいるはず。それ程の実力者なのか...?)」

 


一善は考える。そして、辺りを見回す。

 


一善「...(なにか魔導書の能力で、視界を共有するようなものがあるのか?視界が360°常に展開されているとか...?)」

 

 

 

???”思い出して...!”

 

 

 

その時、一善の脳裏に、一善に馴染みの深い声が木霊する。

 


一善「??」

冬美”思い出して...!!!”

一善「...お母さん...?!」

 


それは、一善の母、油木冬美こと、伝説の魔法使い、日暮真理の声だ。

 


一善「お母さん...?思い出すって...?」

冬美”あの日のこと...思い出して...!”

 

 

 

 

 

 

 


第510話 「聖夜のこと」

 


《魔導結界・蝕》

 


それ以来、冬美の声は聞こえなくなってしまった。

 


一善「思い出す...あの日のこと...」

 


ダザイは、剣を振るって、一善が動き出すのを待つ。

 


一善「...!!!」

 


一善は思い出した。

あの日...あの3年前のクリスマスの事。

 


白鶯に殺されたお母さんの事。

 


その時...白鶯に奪われた、あの時お母さんが持っていた書物の名前!

 


第四十九章 予知の書!!!

 


一善「...(そうか、白鶯が持っていたならば、ノベルの誰かが履術していたとしても不思議ではない。もしかしたら、こいつは相手の攻撃を”予知”出来るのかもしれない...!)」

 


ダザイ「...」

一善「もしかして、君、攻撃を予知できる?」

ダザイ「...」

一善「ねぇ」

ダザイ「答える義理がどこにある」

一善「蒼魔導書第四十九章、予知の書。それが君の力、違う?」

ダザイ「...だったら?」

一善「その本、元々僕たちが拾った本だから、返して欲しいなって思って」

ダザイ「断る」

一善「じゃあ力づくで奪わせてもらう」

ダザイ「...」

 


一善「お前がその力をどこで、誰に貰ったかは知らないけど、お前のボスはその力を奪うために俺の母親を手にかけたんだ...!」

ダザイ「...!」

一善「緑のエレメント!虞美人草!!」

一善はダザイに迫る!!

 


グシャッ!!!!

 


ダザイは、一善の攻撃を受け、右肩に攻撃をもろに食らう!!

 


一善「?!(当たった...?!)」

ダザイ「...!!」

 


ダザイは肩を押え、地面に膝をつく。

 


一善「...?(避けなかった?いや、この動揺ぶり...きっと予知もオートでは無いんだな。つまり、予知の準備が出来てない時に攻撃をしたから、当たった...ということなのか?)」

 


一善は攻撃を重ねる!!

ダザイは立ち上がり、剣で攻撃を捌く!

 


キィィン!カァンン!キンッ!!カァン!!ズバッ!

 


ダザイは、突きの構えをする!

ダザイ「”蒼龍の構え”...!」

一善は右に体を躱す

 


ダザイ「...!読めてる!」

ダザイは、一善が右に体をずらすと同時に一善の腹部に蹴りを入れ、一善を吹き飛ばす!

ダザイ「...!」

一善「...(くっ...読まれた...!)」

 


ドゴーーーーーン!!!

 


一善「ハァ...ハァ...(くそっ...しっかり読まれると厄介だ...どうすれば...!)」

 


すると、そこへとある少女の声がする。

 


一善「?!」

ダザイ「...!」

 


ヒメ「一善!!!!!」

一善「ヒメ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第511話 「読めない」

 


《魔導結界・蝕》

 


ヒメ「一善!!!!!」

一善「ヒメ!!!!」

 


ヒメは一善を追って結界の中へ入ったのだった。

 


ヒメは、一善に抱きついた。一善はそれを迎えて抱きしめる。

ダザイ「...」

 


一善「ど、どうしてここに...?」

ヒメ「いてもたっても居られなくて...ひえりちゃんに、一善の場所を聞いたから、ここにいるかなって...」

一善「そんな無茶しなくても...」

ヒメ「でもそんなこと行ってられないくらい緊急事態なの...!今近くの援軍も呼んだから!」

一善「ありがとう...!」

 


すると、ダザイがやって来て、ヒメの顔に剣先を向けた。

 


ダザイ「おい女。下がれ」

ヒメ「!」

一善が前に立つ。

一善「俺の兄弟に手を出すな。出したら殺す」

ダザイ「...」

ヒメ「...」

ダザイとヒメは睨み合う。

ダザイの剣先は少し震えて見える。

一善「?」

ダザイ「聞こえなかったのか?女。下がれと言っている」

ヒメ「...」

 


パァン...!

 


ヒメは剣をグローブのついた手で払った!

 


ダザイ「...!」

一善「...(あっぶな!)」

 


そして、ヒメはダザイの頬を強くビンタした!

 


ペシィン!!

 


ダザイ「...!」

一善「...!」

ヒメ「...」

 


ダザイは少しふらつく。

 


ダザイ「...(なんだ...痛みはそこまで無い...だがこの...なんだ...?記憶が揺さぶられる感覚は...?俺は今、何故ここに?そして、この”謎の記憶”はなんだ...?)」

 


一善は、ふらついたダザイの隙を攻撃する...!

 


一善「今だ...!」

 


一善は、ダザイの腹に魔導書ゲッターを嵌めた手を伸ばす!

 


ダザイ「!」

 


ダザイは一善を追い払うように剣を払う!!

 


ブヲォン!!!!

 


一善は後ろに退く。

 


ダザイは動揺しながらも、一善とヒメを前に体勢を整える。

 


ダザイ「...(ハァ...落ち着け...未来を読め...)」

ダザイは蒼魔導書第四十九章 予知の書の履術者。対象となる人物の少し先の未来を読むことが出来る。

 


一善「恐らくだけど、あいつはこっちの未来を読める。だから攻撃を避けられる。でも毎回避けられる訳じゃないみたいだ。俺が攻撃を畳み掛けるから、見て指示を出してくれ」

ヒメ「私も戦うわよ」

一善「無理はしないでね」

ヒメ「分かってる」

 


ダザイ「...(あの男は右から剣を振るう...あの女は...?)」

 


ダザイがヒメの未来を読もうとするが...

 


ダザイ「...?!読めない...?!」

 

 

 

 

 

 

 


第512話 「揺らぐ記憶」

 


《魔導結界・蝕》

 


ダザイ「...(なぜだ...あの女の未来だけ...読めない...!!)」

 


一善は、ダザイが読んだ未来通り、'右'か'ら攻撃をする!

 


キィン!

 


ダザイは剣で一善の攻撃を受け止める...!

 


ダザイ「...(あの女は?!背後か?!)」

 


ダザイは、一善を払い除け、背中に注意を払う!

 


しかし、ヒメは一善の裏から、ダザイの真正面に現れた!

ヒメは、ダザイに魔導書ゲッターを伸ばす!

ダザイ「しまった...!」

ダザイはヒメに蹴りを喰らわせようとする...!

 


しかし、ダザイの脳裏に”謎の記憶”が過る。

 


ヒメ「...!(蹴られる!)」

 


ヒメが腹に力を入れた途端、ダザイは何故か足を引っ込めた。

 


ヒメはバランスを崩すも、魔導書ゲッターを着けた手はダザイに命中。しかしゲッターはダザイと反発し、ヒメは一度退く。

 


ヒメ「...まだ早かったわね」

一善「もう少し消耗させないと...(今、攻撃を留めた...?なぜ?)」

 


その後も、ヒメと一善で連携して攻撃するも、一善の攻撃は全て読まれ、ヒメの攻撃はヒットするも、大したダメージは与えられず、膠着状態が続く。

 


一善「...(俺の攻撃は全て弾かれる...でもヒメの攻撃は当たる...ヒメに攻撃しないのは好都合として、相手はなぜヒメの攻撃を避けようとしないんだ...?)」

ヒメ「...(私の攻撃は当たる...けど十分なダメージを与えられない...”あの人”が来てくれれば...それに私にだっていつ手を出してくるか分からない...慎重にいかないと...!)」

 


ダザイ「...(ハァ...あの女の攻撃は大したことない...だから男だけ対処しておけば問題はない...だがなんだ...?あの女、未来が読めないのはあいつの能力故か?履術者同士の相性で劣っているということか?それに攻撃される度に記憶がとびとびになる...!吐きそうだ...!)」

 


ヒメ「あなた、何で私には手を出してこないのかしら」

ダザイ「...」

ヒメ「なんか、舐められてるのかしら?」

ダザイ「...!」

ヒメ「しかも私の攻撃は避けようとしないわよね、」

一善「ちょっとヒメ...!変に刺激したら身が危ないよ?」

ヒメ「そしたら一善が守ってよ」

一善「まぁ。そりゃ守るけども」

 


ダザイ「......」

 


ダザイは謎の記憶を見ていた。

 


”もういいの...温(ゆたか)...”

 


ダザイ「...!!!」

 


一善「?」

ヒメ「?」

 


ダザイ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 


一善「!!!」

ヒメ「!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第513話 「咲山温」

 


回想──────

 


咲山温(さきやまゆたか)という少年がいた。

 


彼が住んでいたのは、寂れた団地街。

 


元号が二つ前から変わっていないような街である。

 


その街は通称”捨てられた街”。行政から見放された街である。街をふらつくヤクザやホテル街に入り浸る怪しい人々、公園を見ればゴミに囲まれたホームレス。街全体が暗い表情をしている。

 


温の家は、温の実父が過去に夜逃げし、シングルマザー。

母親、キキ(綺姫)。水商売紛いの事をして生計を立て、今は謎の半グレ男、戸倉と同棲している。毒親

戸倉。キキの恋人。温らの家に住み、暴虐の限りを尽くしている。クズ。

温。高校生の年だが、高校には行かせて貰えていない。毎日アルバイトをして、月に12万を戸倉に渡している。

 


そしてもう1人、姉の優子。

 


優子。温とは年子。引きこもり。キキや戸倉の虐待の対象。元々は活発な少女だったが、実父の夜逃げ、キキの虐待、戸倉がやってきたことにより精神を病み、引きこもりになってしまう。戸倉の暴力により、一時は耳が聞こえないほどだったが、温が月に12万を渡すことで、その後直接的な暴力はなくなった。

 


団地の一室 / 温の家》

 


温「これ、今月分です」

戸倉「おん」

 


戸倉は、温から茶封筒を預かる。

乱暴に封筒を破ると、中から札束と小銭が出てくる。

 


温「...」

戸倉はお金を数えると、逆上し始めた。

 


戸倉「はぁ?!てめぇこれ、12万足りねえじゃねえか?!おい、これ約束が違ぇよなぁ?!」

温「今月はシフトがキツキツで、これが俺が稼いだ全額なんだよ...!勘弁してくれ」

 


温は毎月12万以上稼ぎ、その浮いた分を自分の貯金として足しにしていた。

いつか姉の優子とここを出て、幸せに暮らすための貯金をしていたのだ。

 


戸倉「そんな事が通用すると思ってんのかなぁ?!おいキキ!!見ろよこれ!!」

キキ「全く。アンタは本当につかえないわねぇ。前の男とおんなじ」

戸倉「おい、あの女呼んでこい」

キキは、奥の襖を開ける。充満した腐敗の香りの中に、ボロボロになった優子が震えて座っていた。

キキ「うわくっさい...ちょっとアンタ!!換気くらいしなさいよ!!」

優子「...お母さん...」

キキ「ちょっと、あの人が呼んでるから!出てきなさい!!!」

キキは、優子の髪を鷲掴みにし、戸倉のいるリビングに連れ出した。

 


戸倉「相変わらずみすぼらしいなぁ。キキの娘とは思えねぇ...」

 


ドカッ!!!!

 


戸倉は優子の腹を思い切り蹴り飛ばす!!

温は、優子に被さるようにして優子を守る。

 


温「頼むよ...!姉ちゃんにはこれ以上手を出さないでくれ...!来月13万払うよ...!だからそれで勘弁してくれ!!」

 


戸倉「あぁ?!足りない分上乗せすればそれでチャラってか?!違ぇだろ?!来月は15万だ!!それが出来ねぇなら黙って見てろ!!」

戸倉は温を蹴り飛ばし、優子を更に蹴る。

 


温「わかった...なんとかするから...!頼むよ!!もうやめてくれ!!!」

 


ひとまずその場は収まり、2人は温から奪った茶封筒を持って、夜の街へ消えていった。

 


温「お姉ちゃん...傷...大丈夫...?」

優子「うん...ごめんね...私のせいで...」

 


優子は、精神はおろか、二人の虐待により手足も自由に動かせなくなっていた。

 


優子「私も働ければ...もっと温が自由になれるのに...ごめんね...」

温「いいんだよ。俺、頑張るから...!そうだ!これ見てよ!!」

 


温は、二人に絶対にバレないように、優子の部屋の奥の奥に、貯金箱を置いていた。

 


温「今はまだ全然だけど...このお金が貯まったら、二人でここを出よう!それで健康に暮らすんだ!」

優子「温...」

温「これは2人だけの内緒ね!俺は姉ちゃんと2人で、外へ出るんだ!」

優子「うん。内緒にするね。ありがとう、温」

温は優子を抱きしめる。

 


温「俺が姉ちゃんを守るから...ね!」

SOREMA -それ、魔!- 62

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SOREMA -それ、魔!- 62

 

 

 

 

 

 

 


リフレイン

 

 

 

 

 

 

 


【ノベルウォー現在の動向】

・渋谷

ジャスティン〇 vs サド●

 


・池袋

莉茉● vs クリスティ●

はるか、村松、TORA合流

 


・上野

東海林・百目鬼〇 vs ユゴー

東海林、百目鬼は単独行動中

美波、描写の書の履術者に

千巣?、上野→池袋→後楽園方面に移動中

 


・新宿(結界前)

麗美・京金

 


・品川(結界・煙)

幸二・三太郎 vs ウルフ

 


・東京(結界前)

一善

 


・表参道→外苑前

虎走 vs アール・カルマ & 魔者数体

 


・皇居周辺

九頭龍坂・岩田 vs 魔者

 


・上空基地

五百旗頭・ひえり

ヒメ、外へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第499話 「泥仕合

 


《魔導結界・雷》

 


ウルフ「ゴボホビビボ!!」

三太郎「幸二!」

幸二「わかってる!!!青のエレメント!!」

するとウルフは素早い動きで幸二の脇腹にパンチを食らわせる!!

 


幸二「ぐはっ...!!!」

 


幸二が横たわると、ウルフは幸二の足を踏みつぶした!!

幸二「!!!」

幸二は、指をウルフに向け、攻撃を放つ!

バァン!バァン!

ウルフには効かない。

 


幸二「...!!」

ウルフは、幸二の足を踏みつぶしながら、右の2本の腕を振りかぶる!!!

 


ゴリッ!ゴリッ...!!

 


ウルフの腕は更に膨張した!

幸二「あれを食らったらやばい...!!」

ウルフ「ゴボホビビボ!!!!」

幸二「...!!!」

 

 

 

三太郎「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

三太郎は、左手で力の入らなくなった右手を支えながら、マヂカラの球を作り出した。

 


幸二「!!!」

 


三太郎「俺の魂の一撃だ!!朱のエレメント!!!超!特大!!イグナイトストライカー!!!!」

 

 

 

三太郎は巨大な赤いオーラをウルフにぶつけた!!!!

 

 

 

ドッカーーーーーーーーーーーン!!!!

 

 

 

 


ウルフ「ゴボホビビボ!!!!!!」

 

 

 

ウルフは、その口から魔導書を吐き出した!!

 


幸二は、落ちた魔導書を拾った。

 


ウルフは地面に倒れ、体が崩壊し始めた。

 


幸二は、三太郎の元へ再び駆け寄った。

 


幸二「三太郎...!お前!」

三太郎「ハァ...きっつ」シュゥゥゥ...

三太郎は煙のでる右腕を幸二の肩に回しながら言った。

 


すると、結界が壊れ、元いた風景が戻った。

 

 

 

三太郎「くそっ...この腕じゃ...さっきみたいにはやれねぇかも...お前の言う通り足でまといかもな」

幸二「...」

三太郎「折角俺だけのエレメントが出来たのに...!」

幸二「いや、まだ希望はある」

三太郎「?」

幸二「東海林さんだ。彼女なら、お前の腕を治せるかもしれない」

三太郎「確かに。でも唯さんだって、他の人助けたりで忙しいんじゃねぇか?」

幸二「だとしても、今のお前は優先的に治す価値がある。より沢山の人を助けるためだ。俺が証明する」

三太郎「...」

幸二「とにかくまずは東海林さんの居場所を確認して、連絡するぞ」

三太郎「...ありがとな」

幸二「犠牲者が出たってのも気になる」

三太郎「...」

幸二「とりあえず行くか」

三太郎「おう」

 


幸二、三太郎コンビ、辛くも勝利──────!

 

 

 

 

 

 

 


第500話 「美醜」

 


《新宿・結界前》

 


麗美とルカは結界に足を進める。

 

 

 

《魔導結界・裂》

 

 

 

新宿を模した結界。

靖国通り跡地には大きな亀裂が入り、建物は倒壊している。

 


麗美「何これ」

ルカ「これも白鶯の趣味ってわけ...?気持ち悪」

 


すると、麗美とルカを大きな揺れが襲う...!!

 


麗美「...!」

ルカ「...!」

麗美地震?」

ルカ「そうみたいね」

麗美「ここにいる魔者の仕業かな」

ルカ「とっとと見つけてしばくわよ」

 


そこへ、セリーヌが現れる。

 


セリーヌ「フッ。ようこそ!大ハズレの結界へ!」

麗美「...?誰?」

ルカ「魔者...?いや、魔導師?」

セリーヌ「私はセリーヌ。ノベルの魔導師よ」

ルカ「人間ってことなら話は早いわ。とっとと殺して次行くわよ」

麗美「いやでも魔導書とらないと」

ルカ「あ...そっか。面倒ね」

セリーヌ「あらあなた達...さっきから何話してるの?聞こえてるわよ?」

麗美「聞こえてんならわざわざ言わなくてもいいだろ」

セリーヌ「チッ。可愛くないわね」

 


そんな会話の最中、ルカがセリーヌの背後に高速で回り込んだ!

 


セリーヌ「...!」

ルカ「遅すぎるわ」

 

 

 

ゴボッ!!!!

 

 

 

ルカは、セリーヌの背中に魔導書ゲッターをつけた手を突っ込んだ!

 


麗美「!」

ルカ「うぉぉぉぉぉ!!」

セリーヌ「ふっ...!」

 


バッ!!!!

 


ルカは、手に魔導書を掴んで引っこ抜いた!

麗美「やった!」

しかし、ルカの手に収まっていたはずの魔導書は、すぐに霧散してしまった!

 


ルカ「何?!」

セリーヌ「背中に触るんじゃないわよ!」

 


ドカッ!!!

 


セリーヌは、ルカを蹴り飛ばす!

 


ルカ「ちっ...(今間違いなく手に取ったわよね...何で?)」

セリーヌ「フッ。残念だったわね」

 


ルカは麗美の隣に並ぶ。

 


麗美「そういえば、アンタにそっくりな魔者が街中で暴れ回ってるけど、なんか関係あるの?」

セリーヌ「あるっていったら?」

麗美「別に。どうせぶっ殺すから関係ないわ」

セリーヌ「殺す?私を?アーハッハッハ」

麗美「は?何?」

ルカ「おかしくでもなった?」

 


セリーヌ「やれるもんならやってみなさいよ。この醜女共が」

麗美「...醜女?」ゴゴゴゴ...!

ルカ「まさか、私達に言ってるんじゃないわよね?」ゴゴゴゴ...!

セリーヌ「フッ。他に誰がいるのよ」

麗美「私はどうみたって可愛いだろうが!」

ルカ「そしてこの子より私の方が美しい」

麗美「は?」

ルカ「どう?これでも私達が醜女?」

 


セリーヌ「わかったわ。なんかアンタ達...物凄くムカつくわ...私をイラつかせる才能があるみたいね...そこまで自分に自信があるなら汚してやるわよ...そのお顔...!」

 

 

 

 

 

 

 


第501話 「女の戦い」

 


赤坂見附

 


虎走 vs アール・カルマ サイド

 


アールとカルマは、セリーヌ本体と契約し、各地に散ったセリーヌの魔者の配置を変えることができる。2人は、次々に魔者を召喚する。

 


虎走は孤軍奮闘中。

 


虎走「チッ...マジでうじゃうじゃうざい!ジャスティンさんとも離れちゃってるし!」

 


ドカーーーン!!ドカーーーン!!

 


アール「揺るぎないこだわり。こちとらハナから百万馬力!」

カルマ「白日の下に晒す、お前を腐らす」

虎走「...(こいつら別に強くはない...私の能力と相性はいい...でも...)」

 


ドカーーーン!!!

 


虎走の攻撃は、アールとカルマの顔面に命中する...!

 


虎走「...(私の攻撃を何度もモロに受けて何であんなにピンピンしてるのよ!)」

アール「これはノーガード戦法。履き違えんな本番と稽古!」

カルマ「上手に韻踏むなぁお前!やっぱアール強イッ!」

虎走「...あーもう!!!」

 


ドカーーーン!!!

 

 

 

《新宿 / 魔導結界・裂》

 


麗美とルカはセリーヌを追い詰める!!

 


ルカは槍の魔具を取り出して、セリーヌに襲いかかる!

 


ヒュン!ヒュン!

 


ルカ「あら、防戦一方みたいだけど、大丈夫?」

セリーヌ「チッ...黙れ!」

ルカは槍に黄のエレメントを纏わせて、セリーヌの左肩に突き刺す!

ルカ「失せろァ!!!」

 


グサッ!!!!

 


セリーヌ「キャァァァァァァ!!!」

麗美サウンドワン!RED-POP!!」

麗美は、セリーヌに赤のエレメントで強化した技を繰り出す!!!

セリーヌ「ギャァァァァァァ!!!」

 


セリーヌはうつ伏せに倒れる。

 


ルカ「アンタ、さっき大ハズレの結界って言ってたけど、大当たりの間違いじゃない?」

麗美「クソ弱いわ」

セリーヌ「...」

麗美は、セリーヌの大きく空いた背中に馬乗りになり、魔導書ゲッターを突っ込んだ。

麗美「あった」

 


バッ!!!!!

 


麗美は、魔導書を取り出したが、またその魔導書は消えてしまった。

麗美「まただ...」

ルカ「ねぇアンタ、なんでこうなるの?」

セリーヌ「チッ...教えるわけないだろーが!バーカ!!」

ルカはセリーヌの顔面を踏む。

 


ルカ「アンタ人間なんだし、痛いわよね?ほら、言いなさいよ」

セリーヌ「ギャァァァァァァ!私になんてことを!!」

ルカはさっき刺したセリーヌの左肩を見る。

ルカ「...?(治ってる?こんなに早く?自分で治癒したの?)」

セリーヌ「!!!」

するとセリーヌは起き上がり、2人を蹴り飛ばした!!

 


セリーヌ「あぁ...痛い...痛い...」

セリーヌの顔から流血する。

 


セリーヌ「アンタ達がどれだけ頑張ろうと、私の事は絶対に倒せない。それだけは言えるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第502話 「セリーヌ

 


《魔導結界・裂》

 


3人の足場に大きな揺れが襲う!

 


麗美「!!!」

ルカ「!!!」

降りかかる瓦礫から2人は身を守る。

 


ルカ「勝てないってどういうことよ」

セリーヌ「何でアンタ達に教えないといけないのよ」

麗美「あんたもしかして、本体じゃない?」

セリーヌ「は?」

ルカ「?」

麗美「アンタみたいなのが街中にいたから、あっちが本体なのかなって」

ルカ「でも、あの魔者に知能があるようには思えないけれど」

麗美「確かに」

 


ルカ「てかアンタ、本当に人間?傷が治るのが随分早いけれど」

セリーヌ「ま、それは教えたところでどうにもならないから教えてやるわ。私は人間よ。でもシェイクスピア様に魔者の様な治癒力を貰ったの」

麗美「ほう」

セリーヌ「人間として生きながらえながら、魔者としての強さを持つ。魔者なんて、気持ち悪くてなりたくもないし。今の私が、生物として最強なのよ...!」

ルカ「魔者が嫌なら人間のままでいたら良かったじゃない。そんなに長生きしたい?」

セリーヌ「長生き...そういう問題じゃあないのよ」

ルカ「?」

 


セリーヌ「私は、誰よりも美しくありたいの」

ルカ「?」

セリーヌ「確かに私は、力を貰ったわ。もう傷がつくことは無い。でもこの、顔の大火傷だけは、一生消えないのよ...!」

麗美「?」

セリーヌ「この傷は子どもの頃に出来たもの。私はこれが原因で虐めを受けた。その影響は家庭にも及んだわ。でも両親は私を捨てた。守ってくれなかった。私は全身を整形して、この歌舞伎町で生きると決めた」

ルカ「...」

セリーヌ「でもこの傷がある事で!誰も私を本気で愛してくれなかった...!私は絶望した」

麗美「...」

 


セリーヌ「だから、私は人間を全て消し去って、この世で1番美しい女になるって決めたのよ!」

ルカ「...」

セリーヌ「人間は醜い...でも私は違う...!私はアンタ達みたいな醜女が大嫌いなのよ...!!!」

麗美「!」

セリーヌ「どうせ昔から愛情を注がれて生きて来たんでしょう?周りから大切にされて生きてきたんでしょ?そういう奴が振り翳す正論が大嫌いなのよ!!!私は全部ぶっ壊すって決めたの。私こそが、美しい存在だと証明する為に!!!」

 


麗美「...」

ルカ「...」

 


セリーヌ「今私の美しい分身達が、この街のありとらゆる汚い物を破壊しているわ...!東京が堕ちたら次は日本。次は世界...!全て魔導書を手に入れたら、この星は私達の物になる...!」

 


麗美「...」

ルカ「...」

 


セリーヌ「私は絶対に死なない...!分身が一体でも残っていれば、私は命をストックし続けられる...!そしてこの戦いでアンタ達を滅ぼしたら、正真正銘、不死の体をシェイクスピア様に頂ける...!私こそが、美の化身となるの...!」

 


麗美「なるほど」

ルカ「要は」

麗美「分身ごと全部やっつければいいってわけね」

セリーヌ「ギクッ!」

ルカ「ってことは何?アンタもう2回死んでるって訳?」

セリーヌ「ギクッ!」

麗美「え、どういうこと?」

ルカ「魔導書を2回取り出したじゃない?あれでどっかの分身が2体死んだってことじゃないかしら?」

セリーヌ「ギクッギクッ!ま、まさか...そ、そんなわけ」

麗美「あれぇ?嘘つくの下手ぁ?」

ルカ「そんなんじゃ、顔面以前に歌舞伎町で生きるなんて無理よ」

セリーヌ「カッチーン!何も分かってないクソガキが!ぶっ殺してやる!」

麗美「クソガキだ?こっち(ルカ)なんかもうアラサーだぞ?」

ルカ「は?!アンタはマジな方のクソガキなんだから黙っとけし!」

麗美「おばさん!行くよ!」

ルカ「黙れ大人の味も知らんガキが」

麗美「!!!!むっかつく!」

セリーヌ「(醜すぎるだろ)」

 

 

 

 

 

 

 


第503話 「残り物」

 


赤坂見附

 


虎走孤軍奮闘中

 


アール「お前に浮べてるぜ薄ら笑い。誰一人俺ら倒す器じゃないんだよ」

カルマ「気づいてるかお前、今世紀最大のピンチよ」

虎走「...(ん?あの2人は相変わず死なないけど、魔者の召喚は減ってる?限界あるのかな?)」

アール「(セリーヌ様のマヂカラが枯渇中?)」

カルマ「(やばい...追い詰められてる?え?)」

 


アールとカルマは、白鶯による不死身化の実験体である。未完成であるが、不死の能力を他人に譲渡する実験の実験体である。その為、普通の人間なら死に値する攻撃を受けても死なない。

 


するとそこへ、眩い光が通りかかる!!

 


虎走「...!!何?!」

 


千巣?「おう。葉月か」

光に包まれた千巣?が現れた。

虎走「!?!?!!先輩?!?!?!」

千巣?「おう。どう言う状況?」

アール「誰やねん」

カルマ「上手に韻踏むなぁアイツ」

 


虎走「あがががが。どういう状況って、こっちが聞きたいんですけど」

千巣?「葉月、悪いが時間が無い。俺は何をすればいい?」

虎走「...じゃあ!魔者を斬れるだけ斬って!あとあの魔導師2人、死なないの!だから何とかして!」

千巣?「ほう」

 


千巣?はアールとカルマを見る。

アール「ギクッ!」

カルマ「ブルッ!」

 


千巣?「了解」

 


アール「...!まかすとこまかす!!カルマ!!」

カルマ「セリーヌ様が僕だけに秘密で教えてくれた呪文...!」

 


カルマは印を結ぶと、頭上に大きな魔法陣が出来る。そこから数百体ものセリーヌの魔者が現れる!!

 


アール「誰やか知らんけど大丈夫しっかりもてなすぜ。教えるバトルの厳しさボケナスめ」

カルマ「全ての魔者をここにかき集めた。マヂカラのウェイトに差がありすぎる」

魔者達「ギュリァヤァァァ!!!」

 


千巣?と虎走は、魔者達に囲まれる。

千巣?「いけるか?葉月」

虎走「はい...!(私だって...私たちだって...!)」

 

 

 

──ただ、生き残っただけじゃない。

 


小町も、静ちゃんも。私だって、強くなる為に沢山特訓したんだ!

天国へ行っちゃった仲間の分まで、私達が強くならないとって...!!!

 


こんな所で...負けてられない...!!!

私に出来ることをしないと...!!!

 

 

 

千巣?「こいつらは任せた...!」

虎走「...!はい!」

 

 

 

ビュンッ!!!!!!

 


千巣?は、数百体の魔者に見向きもせず、アールとカルマの方へと瞬間移動した!

 


アール「!!」

カルマ「!!」

 

 

 

虎走「2、300体って所かしら上等よ...!」

魔者達「...!!!!」

 


虎走「奥義!!!爆裂ノ特!!!スターマイン!!!!!」

 


ドカドカドカドカドカドカドカーーーン!!!!!

 


虎走の周りに終わらない爆発が連続で起爆する!!

魔者達は巻き込まれて続々と消滅して行く!!!!

魔者「ギュリァヤァァァ!!!」

 

 

 

アール「なんや、その目付き」

カルマ「ゴリゴリくんなこのロン毛が」

千巣?「!!!!」

 

 

 

ズ          バ          ッ          !!!!

 

 

 

千巣?は、アールとカルマの首を一撃で撥ね飛ばした!

そして、千巣?は浮いた2つの生首を持ち上げる。

 


アール「...どうあがいてもしゃあない」

カルマ「ダメだ...こいつ...強イッ!」

 


千巣?「眠れ...!”虚”...!!」

 


千巣?は四十六眼?の能力で、アールとカルマを永眠させた!!

 

 

 

魔者「ギュリァヤァァァ!!!」

 


すると、爆発に巻き込まれていた魔者の内の数体が、北西に向かって超高速で移動し始めた!

 


魔者「ギュリァヤァァァ!!!」

魔者は、街を切り裂きながら、進む。

虎走「ぎゃっ!数匹逃がしちゃった...!」

千巣?「いや、よくやった。俺はアイツらを追う。お前は誰かと合流しろ」

虎走「...先輩?」

千巣?「後は頼んだぞ」ポンッ

千巣?は虎走の頭に手を乗せた。

 

 

 

ビュン!!!!!!

 

 

 

 


千巣?は消えた。

 


虎走「...なんだったんだろう...夢でも見てたのかな?」

 

 

 

 

 

 

 


第504話 「差し込んだ光」

 


《上空基地》

 


ひえり「...!!」

五百旗頭「?」

ひえり「街のマヂカラ反応がほぼ赤坂見附に集まって消えました!」

五百旗頭「...?!どういう事かしら」

ひえり「分からないですけど、葉月さんは無事っぽいので連絡してみます!」

五百旗頭「私が連絡するわ!」

 

 

 

ひえり「...?!ん?!」

五百旗頭「?!」

ひえり「皇居の近く...これって...」

ひえりは、皇居の近くに禍々しく得体の知れないマヂカラ反応を確認。

 


五百旗頭「...どうしたの?」

ひえり「......まさか!!!」

 

 

 

《魔導結界・裂》

 


麗美とルカは何度もセリーヌを殺す。

 


ルカ「どうせ死なないんだったらわざわざ魔導書抜かなくてもいいのよね?」

麗美「いつ最後の一機になるか分からないし、一応ゲッターで抜いた方がいいかも」

ルカ「チッ。面倒臭いわね!」

 


2人は、セリーヌをコテンパンにしていた。

 


ルカ「ハァ...ハァ...答えなさいよ。アンタ、あと何機なの?」

麗美「まだ余裕ある?そしたら普通に殺すけど」

 


すると、セリーヌの顔が青ざめる。

 


ルカ「...!」

麗美「...!」

 


ルカ「もしかして、もう相当削られてる?」

麗美「え、そうなの?」

セリーヌ「...まさか!まだ数千体は...残ってるわ!!それに、まだ分身を増やすことだって出来るんだから...!」

ルカ「じゃあやってみなさいよ」

麗美「そんな力残ってるならね」

セリーヌ「...!!」

麗美「無理なんだ」

セリーヌ「ち、違うわよ!ほら、今頃どこかで私の魔者が大量発生してるわ...!」

 


ガリガリガリガリ!!!!

 


その時、結界の壁を何者かが破壊した!

セリーヌ「!!」

麗美「?」

ルカ「?」

 

 

 

魔者「ギュリァヤァァァ!!!!」

 


なんと、赤坂見附からやってきた数体の魔者である!!

 


これは、鏡像の書の、長時間分身を自律させておくことの副作用である。

分身には一定時間を過ぎると、本体に帰属したがる、帰属本能がある。アールとカルマはその本能を制御する旗振り役であった。しかし、2人が同時に葬られた為、分身の帰属本能が暴走し、セリーヌの結界内にまでやってきてしまったのだ。

 


セリーヌ「!!(私の魔者のストックは私含めてあと5体...!つまり、ここにいるので、全部!!)」

 


麗美「何こいつら」

ルカ「なんか増えちゃったけど、強くはなさそうね」

 


バリィィィィィン!!!!

 


するとそこへ、千巣?が現れる!

麗美「!?!!?」

ルカ「?!?!?!」

 

 

 

まさかの再会──────?!

 

 

 

 

 

 

 


第505話 「リフレイン」

 


《魔導結界・裂》

 


セリーヌ「な、何なのよ...!次から次に!(落ち着け、数では有利なはず。少し逃げ回って、マヂカラを回復させてまたストックを増やせば...!)」

 


魔者「ギュリァヤァァァ!!!!」

 


千巣?「麗美!京金!これで全部だ!こいつらを倒せば終わりだ!」

 


麗美「!!」

ルカ「!!」

 


千巣は、4体の雑魚魔者を滅ぼさんと、剣を握る...!

ルカは斧を握る!

 


千巣「千紫万紅流...!月光狩り!!!」

ルカ「くたばりやがれ!!」

 

 

 

ズバッ!!!!!!

 

 

 

魔者「ギュリァヤァァァ!!!!!」

魔者4体は消え失せた!

 


セリーヌ「きぃぃ!」

 


ルカ「今よ!」

麗美「...!!」

 


麗美セリーヌの胸元に魔導書ゲッターを突っ込む!

 


麗美「おしまいよ」

セリーヌ「嫌だ...!嫌だ!嫌だ!!私は!!この世で誰よりも!!!美しくなるん...!」

 


ガバッ!!

 


セリーヌ「だ......」

 


麗美は、魔導書を引っこ抜いた。

魔導書は麗美の手をすっぽ抜け、ルカへと渡る。

 


セリーヌの体は崩れ落ちていく。

 


セリーヌ「そんな...私が...私......」ボロッ

 

 

 

ルカ「...終わったわね」

麗美「...」

ルカ「不幸との付き合い方なんて、きっと誰にも分からない」

麗美「...」

ルカ「自分で折り合いを付けるしかないのよ、どうしても」

麗美「...」

ルカ「ていうか、人間なのに、消えちゃうのね。魔者と人間の区別ももうないってか...」

 


そして麗美とルカは、光の方を見る。

 


ルカ「...」

麗美「ねぇ...万くん...?万くんなの...?」

 


千巣?は光を更に増していく。

 

 

 

ルカ「...(あれは本物の”あの人”じゃない...何かの幻ね。分かるわよ。当然でしょ。本当に、魔法ってものは、趣味が悪いわ...)」

 

 


麗美「...!」

千巣?は麗美に優しく微笑んだ。

 


麗美は、光に向かって走る。

 

 

 

麗美「...!...!」

 

 

 

パッ!!!!!!

 

 

 

麗美が光に抱きついた途端、光は消えてしまった。

結界は壊れ、元の風景に戻った。

 


麗美は膝をついた。

 

 

 

ルカは、麗美に声をかける。

 


ルカ「まだ終わってないわ。立ちなさい」

麗美「...」

ルカ「死んだ人は戻らないの。あなたも分かってるでしょ」

麗美「...」

ルカ「ほら、早く」

ルカは、麗美に手を差し伸べる。

麗美「...」

麗美はルカの手を握り、立ち上がる。

 


ルカ「よしと、次はどこへ行けばいいのかしら」

 

 

 

そこへ、ひえりから連絡が入る。

 


ルカ「ひえりちゃん?」

『ひえり:ルカさん!!!大変です!!!』

ルカ「...!!」

麗美「?」

 

 

 

 

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 61

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SOREMA -それ、魔!- 61

 

 

 

 

 

 

 


右腕

 

 

 

 

 

 

 


【ノベルウォー現在の動向】

・渋谷

ジャスティン〇 vs サド●

 


・池袋(結界・煙)

莉茉● vs クリスティ●

はるか、村松、TORA合流

 


・上野

東海林・百目鬼〇 vs ユゴー

東海林、百目鬼は単独行動中

美波、描写の書の履術者に

千巣?、上野→池袋→後楽園方面に移動中

 


・新宿(結界前)

麗美・京金

 


・品川(結界前)

幸二・三太郎

 


・東京(結界前)

一善

 


・表参道→外苑前

虎走 vs アール・カルマ & 魔者数体

 


・皇居周辺

九頭龍坂・岩田 vs 魔者

 


・上空基地

五百旗頭・ひえり

ヒメ、外へ

 

 

 

 

 

 

 


第492話 「マイヒーロー」

 


回想──────

 


三太郎は、幸二に飛ぶ打撃の特訓をつけてもらう。

 


三太郎「ちっ...!もう1回!!赤のエレメント!!」

幸二「黄色だろ」

三太郎「うりゃぁぁぁ!!!!」

三太郎は何度も試行回数を重ねる。

 


幸二「俺がエレメントを飛ばす時は、弾を遠くに飛ばすイメージでやってるが、黄のエレメントだとエレメントを遠距離で弾き飛ばすのは難しいかもな」

三太郎「あぁ。ジャスティス・THE・ハンドでも、威力を保ったままだと中距離が限界だ」

幸二「発想を変えないと、頭打ちかもな」

三太郎「じゃあどうすりゃいいんだぁー?!?!」クシャクシャ

幸二「逆に、自分を大きくイメージするのはどうだ?」

三太郎「ん?」

幸二「俺はお前とは反対に、自分の近くでエレメントを操作するイメージをしてないから、なるべく遠くに遠くにって、自分を小さくイメージしてるんだ」

三太郎「おん」

幸二「お前の黄のエレメントの特性を活かしながら攻撃範囲を拡げたいなら、逆にお前自信を過剰に大きくイメージして、巨人になったようなイメージで攻撃すれば、今までと同じ感覚で距離も伸びるんじゃないか?お前はマヂカラを腕で練る癖があるから、腕からエネルギーの核を動かさない方がいいと思う」

三太郎「...なるほど、ひょっとしてお主天才か?」

幸二「いや、俺が前にやってダメだったから、お前なら出来るんじゃないかって思って」

三太郎「ふーん、照れちゃうなァ」

幸二「バカ。黙ってやれ」

 


三太郎「なるほどな、アニキに近づくイメージが湧いたぜ!!」

幸二「(千巣先輩が亡くなって長く経ってないが)お前が目指してるのはヒーローじゃなかったのか?」

三太郎「まぁな。でも周りの皆のいい所は吸収したい。それがスーパーヒーローに近づく第1歩だ」

幸二「なるほど」

三太郎「アニキ、ジャスさん。一善も。他にもすげえ人が沢山いるから、俺は頑張れる。自分もそうなりたいからさ」

幸二「...」

三太郎「お前だってすげえよ?幸二」

幸二「急に褒めるな。気持ち悪い」

三太郎「素直じゃねぇな。ま、いいけどさ!!」

 


三太郎は、幸二に言われたイメージで技を放った!

 


三太郎「...!!これって!!」

幸二「見たことないオーラ...!三太郎お前!」

三太郎「へへっ。少し掴めたぜ...!これならいける!」

 


《魔導結界・雷》

 


ウルフ「行くぞ...!!」

 


ビュンッ!!!

 


ウルフは幸二の顔面に殴りかかる!

 


ウルフ「”大蛸殴り”...!!」

幸二「...!」

ウルフ「入ったな...!くらいな!」

 


バッ!!!

 


幸二は一瞬で避ける!!幸二の頬には切り傷が浮かぶ!

 


幸二「...!(間一髪!)」

ウルフ「避けたか...だがこれは避けられまい!」

ウルフは、幸二の腹目掛けて再び拳を振るう!

 


ガンッ!!!!

 


すると三太郎がウルフの肋に飛び膝蹴りを食らわせる!

 


ウルフ「グハッ!」

三太郎「俺も忘れんなよ...!」

 


ドゴーーーーーン!!

 


ウルフは吹き飛ばされる!!

 


ウルフ「チッ...この俺をここまで吹き飛ばすか。やるな」

三太郎「まぁな。早く本気出さねぇと。死ぬぞ?」

ウルフ「フハッ。デケェ口叩くじゃねぇか」

幸二「お前の能力はなんだ」

ウルフ「フハッ。お前、俺が教えると思ったか?敵に己の能力を」

三太郎「確かに」

幸二「納得するなバカ。一応聞いてみただけだ」

ウルフ「気に入った。教えてやるよ。どうせ教えたところで関係ないからな」

三太郎「?」

 


ウルフ「俺の能力は、蒼魔導書第四十二章 入魂の書だ」

三太郎「ほーん。で、どんな能力だ?」

すると、幸二の顔が青ざめていく。

三太郎「ん?どした?顔色悪いぞ」

幸二「四十二章...?」

 


蘇る記憶...!

 

 

 

 

 

 

 


第493話 「四十二章」

 


《魔導結界・雷》

 


幸二「四十二章...だと?」

ウルフ「どうかしたか?」

幸二「どこで手に入れた?」

ウルフ「シェイクスピアに貰ったよ。何だ?」

幸二「...」

三太郎「おい、その四十二章がどうしたんだよ?」

 


幸二「四十二章は...俺の兄貴が魔裁組を抜ける原因になった事件で、兄貴が燃やした本なんだよ...!」

三太郎「...!」

ウルフ「?」

 


幸二「俺はその本を1回手に取った。元々その本は魔裁組で保管されてたんだ。こいつが今その力を持っているのは、俺のせいなんだ」

三太郎「...なるほど?」

ウルフ「何の話だ?」

幸二「なんの運命だろうな...こいつは俺が倒さないといけないみたいだ...」

ウルフ「フハッ。面白れぇ」

三太郎「おい、俺じゃねえ。俺”達”だ」

幸二「...!」

三太郎「お前の運命も、俺の運命も、今は同じだ。運命共同体ってやつだ」

幸二「お前」

三太郎「ここを出て、こいつらを倒すまではな。ま、昔のことはよく知らねえけど、こいつを倒さないといけねぇってのだけは本当だし」

幸二「...」

三太郎「人の運命を背負えないような奴は、ヒーローになんてなれないからな」

幸二「...!」

 


三太郎「で、どんな能力だ?」

幸二「俺はこの本の能力を知ってる。かなり強力だ、注意しろ」

三太郎「だから、どんな能力、、」

 


ウルフ「グダグダうるせぇ!!!」

 


バッコーーーーーーン!!!

 


ウルフは、三太郎を殴り飛ばした!!!

 


三太郎は、ふらつきながらも立ち上がる。

 


三太郎「へっ。効いてねぇなぁ」

ウルフ「マジか...!俺の能力で強化した打撃でそんなにピンピンしてる奴ァ初めてだ」

幸二「ん?」

 


ウルフ「おい、ヒョロい方。お前がどんな能力を知ってるかは知らねえが、もうこの力はお前が知ってる四十二章じゃねぇぞ?」

幸二「...そうっぽいな」

 


三太郎「あのさぁ、さっきから俺だけ置いてけぼりなんだが。もっと分かるように説明してくれん?」

 


幸二「四十二章、入魂の書は本来、無機物に魂を注いで操る能力」

三太郎「ビッグマム的な?」

幸二「多分そうだ。だが、あいつの言うことを信じるならそれは違う」

三太郎「ほう」

幸二「三太郎、お前今、攻撃を受ける時、何かしてたか?」

三太郎「ん?マイティガイ※は常中してるけど?」

※守護を全身に纏わせる能力。22巻参照。

幸二「成程な、だからダメージが少ないんだ」

 


ウルフ「だからさぁ。能力はバラそうが関係ないっつったろ?うだうだ分析してんじゃねぇよ。オタクかよ」

 


幸二「こいつは恐らく、自分の四肢に入魂して、実際の打撃よりも大きなダメージを稼ぐことが出来るんだ」

三太郎「ほう、要は殴ると強いってことよね」

幸二「...まぁそうだな」

三太郎「でもあれだろ、その元々の能力にも注意した方がいいんじゃ、」

 


そこにウルフが間髪入れずに両手で地面にチョップを入れる!!

2人は横に躱す!

 


スタッ...

 


幸二「これは最近分かったことだが、元々魔導書に書いてある能力をベースに、ある程度自分のイメージで能力を書き加えることが出来るんだ」

ウルフ「!!!」

 


ドゴーーーンン!!!

 


2人は、ウルフの攻撃を避けながら会話を続ける、

三太郎「お前も出来るのか?」

幸二「まぁ。だがそれをやるにはかなりの労力と、それを可能にする解釈の足し引きが必要だ」

 


ドゴーーーンン!!

 


三太郎「どゆこと?」

 


幸二「あの魔者の能力は、元々の魔導書の能力から割と発展している。解釈の足し引きっていうのは、元々の能力から離れた能力を使えるようにする代わりに、元の解釈通りの能力の効果を少し弱めることを指すんだ」

三太郎「要は、自分用にアップデートしていくと、その分元々の能力も解釈が変わって使えなくなっていくってことね」

幸二「あぁ。だから、必要最小限の警戒は解かずに、まずはあいつの超パワーに対抗する術を考えるんだ」

 


三太郎「成程ね。それは俺に任せな」

幸二「?」

 


ビュンッ!!!

 


三太郎は、ウルフの寸前に迫る!!

 


三太郎「超パワーに対抗するには、超・超パワーだ!!!!!!」

ウルフ「...!!!!」

 


バコーーーーーーーーン!!!!

 


三太郎「黄のエレメント...テラボルトフィスト...!!!」

ウルフ「...ぐはっ...!!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第494話 「入魂」

 


《魔導結界・雷》

 


ウルフ「フハッ...中々やるじゃねぇか」

三太郎「へへっ。こんなの序の口だぜ?」

ウルフ「言うじゃねぇか...!」

 


ゴリッ...!

 


ウルフは右腕の筋肉を隆起させた。右腕はウルフ本人の半身分までに膨れ上がった。

 


ウルフ「これは俺の”魂の叫び”さ...己の肉体を強化してこそ魔法。ちょこまかとまやかす奴らと俺は違ぇ...」

三太郎「...」

ウルフ「俺はお前達を捻り潰し、不死の肉体を手に入れる。どうだ?最強の肉体の完成さ」

幸二「不死の...肉体?」

三太郎「そんなの、全然良くねぇよ!」

ウルフ「それはもう人間の古い価値観なのさ。老いや死が崇められる価値観はもう終わる。それは人間の時代が終わるってこった」

幸二「...!」

三太郎「...!」

 


ウルフ「”たった今”伝達が入った...お前らにとっていい知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?」

三太郎「...?」

幸二「早く話せ」

 


ウルフ「いい知らせ、6つある結界が3つ壊されたそうだ」

三太郎「...!」

幸二「皆...!」

ウルフ「直にシェイクスピア本人が後片付けをするそうだ」

三太郎「白鶯...!」

幸二「...で、悪い知らせは?」

ウルフ「魔法使いに死者がでたそうだぞ?」

幸二「!!」

三太郎「!!」

ウルフ「人間ならば仕方あるまい。最後まで戦い抜いての死ならば讃えよう。さぁ、続きを始めるぞ」

 


三太郎「...俺は信じない」

幸二「?」

三太郎は唇を真一文字に閉じて、押し殺すように言った。

 


三太郎「早くこいつ倒して、皆のとこ行くぞ!」

幸二「三太郎...(恐らく犠牲者が出てしまったのは本当だろう。魔者の話を信じ込むのも良くないが...だが今は、三太郎の言う通り、早くこいつを倒すこと、そしてここから出ることだ!)」

 


幸二は魔導書ゲッターを手にはめた。

 


ウルフ「それが妙な手袋ってやつか、注意しねぇとな」

幸二「...(こいつら、遠隔かテレパシーで情報共有してるのか...)」

 


三太郎「終わりがあるから、人は輝ける。そして、終わりがあるからこそ、人は守る価値がある」

ウルフ「どうせいつか死ぬもんをちまちま守って、本当に価値があるのか?」

幸二「限りある時間を互いのために使える。この誇らしさ、素晴らしさは、お前達には分からなくて当然だ」

ウルフ「...!」

三太郎「覚悟しろ...魔者!」

ウルフ「来いよ...!魔法使い!」

 

 

 

 

 

 

 


第495話 「雷の下で」

 


《魔導結界・雷》

 


三太郎は、気を溜める。

 


ゴゴゴゴゴゴ...!!

 


幸二「...(三太郎...特訓の成果を見せつけてやれ...!)」

三太郎「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

ウルフ「凄まじいマヂカラだ...!面白い!!!」

 


三太郎「うぉぉぉぁぁぁ!」

 


三太郎は拳にマヂカラを溜めて、ウルフに殴りかかる!!

ウルフ「!!!」

 


ガチン!!!!

 


ウルフは三太郎の攻撃を両手で受け止めた!!

ウルフ「こんなもんか...?」

三太郎「うぉぉぉぉぉ!!!」

すると、三太郎のマヂカラは更に増し、赤みを帯びて、燃えるように三太郎を包む!!そして、受け止められた右の拳に更にマヂカラを溜め込み、ウルフごと押し込む!!!

 


三太郎「ぬぉぉぉぉぉぉ!!!!」

ウルフ「!!!!!」バキバキバキバキィ!!!!

 

 

 

ドッカーーーーーーーーーーーン!!!!!!

 

 

 

ウルフは、壁を何枚も貫通し、飛ばされた!!!

 


幸二「まだ終わりじゃないぞ...!!(この雷、利用してやる...!!)」

幸二「蒼き青のエレメント!!!飛雷禍哭(ひらいかない)!!!!」

 


幸二は、結界内の雷を束ねる!!ヤマタノオロチの様な姿に変貌した雷がウルフを焦がす!!!

 


ウルフ「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」ゴロゴロピッカーーーーン!!

 


幸二「...」バチバチィ...

三太郎「やるな!幸二」

幸二「いや、まだ終わってない。見ろ...!」

 


ウルフは立ち上がり、手の甲で口元を拭う。

 


ウルフ「効いたぜ...!」

 


ウルフは宙に飛び、左足に入魂する!!

左足は大きく膨れ上がり、その左足を大きく振り上げる!!

 


ウルフ「これでも立っていられるかな?!」

幸二と三太郎の頭上に大きな影が被さる。

 


幸二「あれ受けたら」

三太郎「やべぇな」

幸二「避けるぞ!」

三太郎「いや...!」

幸二「?」

ウルフ「避ける暇があるなんて、俺は言ってねぇぞ!」

幸二「...!」

ウルフ「”白鯨落とし”!!!」

 


ドゴーーーーーン!!!!

 


ウルフは高速で巨大な左足を振り下ろした!!

 


しかし、三太郎はウルフの足裏に右の拳をぶつけてガードしていた!三太郎はウルフの足裏で食いしばる!幸二は間一髪、三太郎に助けられた。

三太郎「くっっ...!」ギギ...ギギ...

幸二「三太郎!!!」

三太郎「お前も手伝え!!」ギギギギ...!

三太郎は、今にも潰されそうな勢いだ!

幸二「...(このままじゃ潰される...!)」

ウルフ「終わりかな?」

幸二「...!操天!竜巻!!」

 


ヒュゥゥゥ!!!

ウルフは一瞬体制を崩す!その隙に幸二は三太郎を抱えて横に避ける!!

 


ドゴーーーーーン!!!!!!!

 


ウルフの攻撃は誰もいない地面に大きな穴を開けた。

 


三太郎「ハァ...くっそ...あともう少しで弾き返せたのに...!」

幸二「あいつと力比べするのは厳しいぞ」

三太郎「わかってる!でももうすぐ完成しそうなんだ...!俺の新しいエレメントが...!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第496話 「朱(あか)の力」

 


《魔導結界・雷》

 


三太郎は痺れる右手を抑えながら、ウルフに立ち向かう。

 


ウルフは三太郎の攻撃を避けながら、高速で攻撃返す!

 


ヒュッ!バッ!ガッ!ドカッ!ガチッ!ドゴッ!

 


幸二は遠くから隙を見て攻撃を放つ!!

 


幸二「青のエレメント!ハート・THE・トリガー!!」

ウルフ「!!」

ウルフは幸二の放った弾を握り潰そうと手を伸ばす!

幸二「今だ!アクセラレイト!!」

幸二がそう言うと、弾は2つ、4つと分裂し、動きを早めてウルフを四方から攻撃する!!

ウルフ「弾が割れた?!」

三太郎「よそ見してんじゃねえぞ!!!」

 


三太郎は再び拳を赤く光らせ、ウルフにアッパーを食らわせる!!!

三太郎「...(この感覚だ...!やっと出来た!!)」

ウルフ「!!!」

 


ドッカーーーーーーーーーーーン!!!!!

 


三太郎のアッパーと幸二の弾が同時にウルフに命中した!!!!

 


ウルフ「ぐわぁぁぁ!!!!」

 


ウルフは、後方に頭から倒れる。

 


幸二「今のは」

三太郎「あぁ...俺出来たぞ、黄のエレメントの進化系、俺だけのエレメント、名付けて...」

幸二「?」

 


三太郎「オレンジのエレメント!!!!」

 


幸二「ちょっとださい!!!」

 

 

 

三太郎「今の感覚を応用すれば、もっと沢山の戦い方が出来る...!間違いない!」

幸二「...(確か三太郎が打ったエレメントの色は赤だったよな。原色の黄色と混ざってオレンジか...まぁ悪くないが...)」

三太郎「このオレンジの、」

幸二「”朱”(あか)のエレメントってのはどうだ?朱色の朱で」

三太郎「朱のエレメント...かっけぇ!流石厨二病重症患者!貰うぜそのネーミング!!」

幸二「誰が重症患者やねん」

 


ウルフが立ち上がる。

 


ウルフ「エレメントだっけか...?その色がなんだよ。魔導書の魔法こそが魔法...お前達のそれはハッタリだ」

三太郎「あ?お前なぎちんの研究を悪く言ったな?許さねぇぞそれは」

幸二「...!」ギロッ

ウルフ「まぁなんだっていい...そろそろ、飽きてきたな。終わりにすっか」

三太郎「望むところだ」

幸二「...!」

 


ウルフ「超入魂!!!!」

 


ウルフは自らのみぞおちに自ら拳を突っ込む!!

 


グギッ...ゴボゴボゴボ...!!!

 


ウルフの肩から隆々な腕が2本映え、背中には肉々しい羽が2つ生えた!!

全体的に体もごっつく大きくなった!

 


ウルフは右2本の腕で宙を殴った!

 


すると、その衝撃が地面をめり込み2人を襲う!!

 


三太郎「!!」

幸二「!!」

 


幸二らは後ろに後退する。

 


ズザザザ...

 


ウルフ「これが今の俺の最善の肉体...そして不死の力を手にいれ、更なる高みへ進むのさ...!」

 

 

 

 

 

 

 


第497話 「右腕」

 


《魔導結界・雷》

 


三太郎「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

ウルフ「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 


ウルフと三太郎は、突進する!!

 


ウルフ「叩き潰してやる!!”雲丹剛拳”...!」

三太郎「朱のエレメント!!!ブレイズキャノン!!!」

 


ガチッ!!!!!!

 


2人の拳がぶつかり、空が割れる!!!

 


幸二「今だ!!」

幸二は、魔導書ゲッターを付けた手を伸ばす!!

 


バチバチバチィ...!!!

 


しかし、幸二の手は謎の波動に阻まれてしまった!

 


幸二「...くっ。まだ早いか。五百旗頭さんが言っていたな...まだ削り足りない...!」

ウルフ「あっぶねぇな!!」

ウルフは幸二に裏拳をくらわす!幸二は弾き飛ばされた。

三太郎「ブレイズキャノン!!!」

ウルフ「!!!」

三太郎とウルフは何度も殴り合う!!

そこへ幸二も参戦する。

幸二は距離を取りながら、隙を見て攻撃を図る!

三太郎「幸二!あれやるぞ!」

幸二「...!」

 


三太郎「くらえ!インパクトマグナム!!023!!」

三太郎と幸二の合体技が、ウルフを襲う!!

ウルフは、4本の手で攻撃を受け止め、受け流す!!

三太郎「くそ!」

幸二「まだだ!蒼き青のエレメント!!豪砂蒼葬!!」

ウルフ「無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」

ウルフは幸二の攻撃をかき消す!!

三太郎「幸二行くぞ!!朱のエレメント!!イグナイトストライカー!!!」

三太郎は、両手で火球のようなエレメントを作り、足蹴にして飛ばす!!

ドゴォン!

ウルフ「ぐわぁぁぁぁ!!!」

三太郎「いてぇだろ!!もう1発くらえ!!」

ドゴォン!!

ウルフ「くっ...!」

幸二「ハート・THE・トリガー、アクセラレイト!!」

ウルフ「ぐわぁぁぁぁ!!!」

 


三太郎「朱のエレメント!!!!ブレイズキャノン!!!」

三太郎はウルフに右の腕を伸ばす!!

 


ガシッ!!

 


ウルフは三太郎の腕を4本の腕で掴んだ!

三太郎「...!」

ウルフ「貧弱な腕だな...」

 


ゴ          キ          ッ          !

 


三太郎「!!!!!!!!」

幸二「三太郎!!!!!」

 


三太郎の腕は波打つ様に複雑に折れた。

 


ウルフ「お前はもう終わりだ」

ウルフは三太郎を思い切り蹴飛ばした!!!

 


ブシューーーーーーーーーーー!!!!

 


三太郎はロケットの様に勢いよく壁に激突した!

 


幸二「三太郎!!!!!!!」

 


ウルフは高速で幸二の後ろに回り、後頭部をがっちりと掴む。

 


幸二「!!!」

ウルフ「お前も再起不能にしてやらァ」

幸二「...!蒼き青のエレメント!!絶渦繚乱!!」

ウルフ「...何!」

 


幸二とウルフの周りを暴風が覆う!

 


ウルフ「うわぁぁぁぁ!!」バキバキバキバキィ!!

 


幸二は三太郎の元へ駆け寄る。

 


幸二「三太郎!腕は!」

三太郎「...悪ぃ、右腕はもう使えねぇかも」

三太郎はだらんと下がった右腕に左手をやりながら言った。

幸二「...後は俺がやる。お前の攻撃であいつの蓄積ダメージも大きい筈だ...!」

三太郎「俺だってまだ戦える!」

幸二「だが腕の使えないお前に何が出来る?お前はもう十分役割を果たしてくれた。もう用済みだ」

三太郎「...冷たいんだか、優しいんだかわかんねぇな」

幸二「マヂカラもほとんど使い果たしてる。腕でマヂカラを練るお前は残念だが、ここから先は足でまといだ...だから」

三太郎「...?」

 


幸二「俺がお前の、右腕になる...!」

 

 

 

 

 

 

 


第498話 「異形」

 


《魔導結界・雷》

 


ウルフ「まぁいい...その金髪のガキはもう戦えまい。お前を殺してから絶望の中で殺すとしようか」

幸二「...」

ウルフ「確かにお前達は中々いいものを持っていた。だが腕1つ失った位でがたつく力に価値はない」

幸二「...言っただろ。俺がこいつの右腕になるって」

ウルフ「見たところお前は近距離戦闘に適さないように見えるが。さっきからちょこまかと、遠くから小細工を仕掛けてるだけじゃねぇか」

幸二「その小細工が地味にお前を追い込んでるとも知らずにな」

ウルフ「...」

 


幸二「今逆算した結果、お前を倒すのに必要な手順は、後二手」

ウルフ「...ほぅ?」

幸二「分からなくていいさ。もう今から終わらせる」

ウルフ「フハッ。どいつもこいつも...」

幸二「操天・濃霧」

 


幸二は辺りを霧で覆った。

ウルフ「...!見えん。ならばマヂカラの気配を感じ取るのみ!!」

 


ウルフは幸二のマヂカラを探知する。

 


ウルフ「?!離れている?」

 


幸二は、走を使って、ウルフから極限まで距離を取っていた!

 


ウルフ「成程...敵前逃亡ってやつか」

三太郎「幸二?!どこだ?!」

ウルフ「ならばこの金髪から殺してやろう!友に裏切られる最期なんて、悲しいなァ!」

三太郎「幸二ー?!」

ウルフ「死ねぇ!!!!」

 

 

 

すると、ウルフの首を青いオーラの弾丸が貫いた!!!ウルフの首は吹き飛んだ!!!

 

 

 

幸二「成功したか...青のエレメント、ヘヴン・THE・ディメンション」

 


オーラに切り裂かれ、濃霧は消え去る。

 


ウルフは首を飛ばされながらも、意識を保ち言葉を吐く。

 


ウルフ「...何が起こった?」

幸二「この技は、”距離が離れれば離れる程”威力が増す技。瀕死のお前の首を飛ばすのなんて、わけないっていう話さ」

ウルフ「成程...負けたっつぅわけか。なんか、気持ちわりぃなァ...味気なさすぎだろ」

幸二「...(三太郎との特訓が生きたな。この技は三太郎のそれと真逆の発想から生まれた技...!)」

幸二「知らない間に背後にいるものだ、敗北というものは」

 


ドボッ!

 


幸二はウルフの残された胴体に手を突っ込み、魔導書を取りだした!

 


三太郎「やった...のか...!」

幸二「あぁ」バタッ...

三太郎「幸二!」

 

 

 

その時、ウルフの落ちた首の断面から手が生え、幸二の手から魔導書を奪い返した!!

幸二「しまった!!!」

三太郎「あ!!」

 


ウルフの首は、魔導書を持った腕ごとウルフの胴体に吸収され、首を失った胴体から再び首が生え始めた!

 


ウルフ「ゴボホビビボ...」

 


幸二「何なんだ...?!こいつ?!」

三太郎「復活しやがった...!!」

ウルフは、未完成の首を大きく揺さぶりながら、4本の腕をぶん回し、幸二と三太郎に襲いかかる!!

幸二「魔導書本体のイメージが暴走してるんだ!!」

三太郎「言ってる意味が全然分からねぇ!」

幸二「とにかくこいつを倒す!!!」

 

 

 

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 60

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SOREMA -それ、魔!- 60

 

 

 

 

 

 

 


妹達へ

 

 

 

 

 

 

 


【ノベルウォー現在の動向】

・渋谷

ジャスティン〇 vs サド●

 


・池袋(結界・煙)

莉茉 vs クリスティ

はるか、結界外

 


・上野

東海林・百目鬼● vs ユゴー

東海林、百目鬼は単独行動中

美波、描写の書の履術者に

千巣?、上野から西に移動中

 


・新宿(結界前)

麗美・京金

 


・品川(結界前)

幸二・三太郎

 


・東京(結界前)

一善

 


・表参道→外苑前

虎走 vs アール・カルマ & 魔者数体

 


・皇居周辺

九頭龍坂・岩田 vs 魔者

 


・上空基地

五百旗頭・ひえり

ヒメ、外へ

 

 

 

第485話 「蠍」

 


《魔導結界 / 煙》

 


クリスティは疼く傷口に手を当てて呟く。

クリスティ「この感触...成程、間違いないわ」

莉茉「...?」

クリスティ「どうやら、私たち、似た者同士の様ね♥」

莉茉「...どういう意味よ」

クリスティ「それはこれから教えてあ・げ・る♥」

莉茉「...?」

 


クリスティ「まぁ、気づいた頃にはもう遅いかもしれないケド♥」

 


クリスティは手で印を結んだ。すると、クリスティの背中からサソリの尻尾の様な触手が6本生えた!

 


莉茉「...!」

クリスティ「さぁ...一緒に楽しみましょう♥この地獄を...!」

 


《池袋 / 魔導結界外》

 


はるかは魔者を倒しきり、結界を1人で殴っていた。

 


ガンッ! ガンッ! ガンッ!

 


はるか「くそっ...くそっ...くそっ!!なんでこんなに硬ぇんだ!私のパンチでも破れねぇってか?」

 


はるかは拳から血を流しながら、何度も何度も結界の壁を殴る。

 


はるか「くそっ...!莉茉っち...!!」

 


そこへ、村松と魔獣・ラキラキがやってきた。

 


はるか「あ...!アンタは!第1支部の!」

村松「...!」

ラキラキ「ワォーーーーーーーン!」

 


すると、ラキラキは結界に向かって突進した!

 


ガァン!

 


ラキラキは弾かれた!

村松「...?(ラキラキも結界に入れない...!)」

 


ラキラキ「ワォーーーーーーーン!」

はるか「頼む!力を貸してくれ!今、中に莉茉っちが閉じ込められているんだ!もう時間も結構立ってる!この中に魔者も居て、莉茉っちが1人で戦ってるんだ!」

村松「...通信で聞いた。私達は、この結界を破りに来た」

はるか「...!ありがとう!頼む!」

村松「...(魔獣だけなら入れるかもと思ったけど...かなり高度な結界術...)」

 


はるかは再び壁を殴り続ける。

 


はるか「手応えは!あるんだ!だから!いつかは!絶対破れる!」

村松「...!わかった!」

村松は槍型の魔具を取りだし、結界に振りおろす!

 


キィン!!!!

 


村松「(硬い...!)」

ラキラキ「ワォーーーーーーーン!!」

 


ガンッ! ガンッ! ガンッ!......

 


《魔導結界 / 煙》

 


クリスティ「...外が賑やかになってきたわね...これは相当ピンチかも♥」

莉茉「...?」

 


すると、クリスティは莉茉に高速で迫る!

莉茉「...!」

クリスティ「もう手加減してられないわぁ〜!」

莉茉「...(速い...!)」

 

 

 

ブ     ス     ッ     !!

 

 

 

クリスティは、莉茉の脚に触手を突き刺した!!

クリスティ「あら...外しちゃった」

莉茉「...!!」

 


莉茉は膝をついて倒れた!!!

 

 

 

 

 

 

 


第486話 「クリスティ」

 


《魔導結界・煙》

クリスティ「...(でもこの子の武器は恐らくスピード...そこを削れたって考えましょう。次に'溜'ま'っ'た時が、チェックメイトよ...!)」

 


莉茉は立ち上がる。

 


莉茉「...(この攻撃...思ったよりもダメージが少ない...これならすぐ動ける!)」

 


ビュンッ!!!!

 


莉茉が動き出したその時...!!

 

 

 

ガクッ...!!!

 


莉茉「...?!?!」

クリスティ「ニチャア...」

 


莉茉の”脚”に激痛が走る...!!

莉茉の脚には紫の稲妻の様な紋様が浮かび上がる!!

莉茉「...(何これ...!)」

クリスティ「ふふっ♥」

 


クリスティは莉茉に近づく。

 


クリスティ「どう?私の”ポイズン”のお味は?」

莉茉「ポイズン...?毒?」

クリスティは莉茉の頬を叩く!莉茉は遠くへ飛ぶ!

 


莉茉「うわぁぁ!!」

 


クリスティ「可愛い顔が苦痛で歪んでるわァ...!そう、そうなのよっ!その顔がっ!アタシはだぁい好きなのよぉぉ!!!!!」

莉茉「ちっ...!」

莉茉は起き上がろうとするも、脚に上手く力が入らない...!

莉茉「...(動けない...!なら!)」

 


バァン!バァン!

 


莉茉は油断していたクリスティの眼球目掛けてエレメントの弾を放つ!

 


クリスティ「うわぁぁぁ!!目がぁ!目がぁ!」

莉茉「(あの弾は相手の神経を蝕むもの。私の消耗具合的に、10分視界を奪えたら御の字ってとこね...)」

莉茉は、その隙に結界中の建物に姿を隠す。

 


莉茉「ハァ...ハァ...この脚...早く解毒しないと...!」

莉茉は自らの脚にマヂカラを注ぐ。

莉茉「こんな時に、美波が居てくれたら...!いや、そんな事を考えてる暇はない...!まずはアイツを倒す方法を...考えよう...」

 

 

 

《池袋 / 結界外》

 


はるかと村松は結界に向かって攻撃を続ける。

 


ガンッ!キンッ!

 


すると、結界に僅かながら亀裂が入った!

 


はるか「...!!おい!これ!」

村松「...!」

ラキラキ「ワオーーーーーン!」

はるか「ヒビだ!間違いない!このままぶっ壊そう!」

村松「うん!」

 


すると、そこへある男の声がする。

 


???「俺も加勢しよう。強き魔法使い達よ」

はるか「...?!誰だ?」

村松「...?」

 


《結界内》

 


クリスティは目を抑えながら呟く。

 


クリスティ「...!ヒビを入れられた...それほど私も弱っているということかしら...ふふっまぁいいわ。でも早くあの子を殺さないと...私もアブナイかもねぇ...」

 


莉茉は瓦礫の陰で脚を治そうと試みる。

 

 

 

クリスティ「でも安心しなさい私。だって...私の毒は、”絶対に”治らないんだからァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 


第487話 「触手」

 


《魔道結界・煙》

 


クリスティは声を上げる。

クリスティ「可愛い魔法使いさぁん?!どこなのぉ〜?!」

莉茉は陰からクリスティを見る。

莉茉「...」

 


クリスティ「ま、隠れたって無駄なんだケド♥」

 


クリスティは口から紫のバブルの様なものを複数飛ばした!

 


クリスティ「猛毒(ポイズン)ホイップ!!」

 


ボチャッ!! ボチャッ!!

 


その内の1つが莉茉の近くに着弾する!

 


莉茉「...!守護!」

クリスティ「なるほどねん。そこねぇ〜」

莉茉は立ち上がり、姿を現す。

 


莉茉「ハァ...ハァ...」

クリスティ「あなたの自慢のスピードも、もう終わりね」

莉茉「ハァ...」

莉茉は足を抑える。

すると、クリスティの傷口に衝撃が走る!

クリスティ「ゴボッ...!」

莉茉「(私の攻撃は効いてる...これなら)」

クリスティ「ふふっ...いい毒ねぇ...ゲホッ」

莉茉「気に入ってくれたなら、もう少し欲しい?」

クリスティ「ふふっ...それも面白いわね」

莉茉「...」

クリスティ「私の毒も最高だったでしょう?私の毒は治ることは無いわ。私が'死'ん'で'もね。もうあなたは私と地獄を見るしかないのよ」

莉茉「...!(こいつ)」

その時。

 


莉茉「...!」ドクンッ!

 


莉茉は吐血した。

 


クリスティ「あら、もう回ってきたようね。1回分で常人なら致死量に値するけど...あなたタフねぇ...」

莉茉「...」ハァ...

クリスティ「ま、お外が騒がしいから...そろそろフィナーレと行こうかしら...!」グチャグチャァ...!

 


クリスティは背中の触手を漲らせる。

 


莉茉「...」

クリスティ「もう走れないアナタなんて...怖くないのよ♥」

莉茉「...それはどうかしら」

 


ガッ...!!

 


莉茉はエレメントの糸でクリスティの背中の触手の全てを縛り付けた!

 


クリスティ「...!裏から!いつの間に!」

莉茉「チューイングラブ...!ずっと張り巡らせてたのよ...!気が付かなかった?」

クリスティ「あら...私としたことが...迂闊だったわ...!」

莉茉「その迂闊が命とりになるなんてね」

クリスティ「...?」

 

 

 

バキッ!!!!!

 

 

 

莉茉はクリスティの全ての触手を縛り、切り落とした!

 

 

 

クリスティ「...!」

莉茉「これでどう...!」

クリスティ「ふふっ...やられたわ」

莉茉「それだけじゃない...!!」

 


莉茉はチューイングラブを展開したまま、クリスティの背中に突き刺した!

 


クリスティ「...!」

莉茉「これで終わりでもないわよ」

クリスティ「はぁん?」

 


ド    ク    ッ!!!

 


莉茉は、チューイングラブを伝って、クリスティに毒のように攻撃を流し込む!

 


莉茉「このチューイングラブの触手から注がれるマヂカラは、あなたの内臓から全てを喰らい尽くす。肉も骨もマヂカラも」

クリスティ「何よそれ...チートじゃない...」

莉茉「...」

莉茉は、拳を握る。

 


莉茉「これで...全て終わりよ...!」

 

 

 

 

 

 

 


第488話 「遺品」

 


《魔道結界・霧》

 


クリスティ「ハァ...まさに毒のよう...体の節々が悲鳴をあげる...なんて気持ちいいッ!!!」

クリスティは、目を血走らせ、痙攣し、吐血しながら叫ぶ。

莉茉「...ハァ...(チューイングラブ・グラトニー。この技はチューイングの応用で出来た奥義...大きなダメージを与えられる分...反動が大きく出る...今の私に耐えられるかどうか...いや、迷わずやれ!勧善懲悪...!!!)」

 


莉茉は攻撃を更に加速させる!

 


ドクドクッ!ドクドクッ!!

 


クリスティ「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

莉茉「ハァ...くたばりなさい...!」

クリスティ「ぐぬぬぬぬ...!!!うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 


クリスティは、大きな断末魔を上げた!!!!!

 


莉茉「...!!!(耳が...!!ちぎれる!!!)」

 


すると、クリスティの腹部から、もう1つの触角が突き出た!!その触角の鋒は、莉茉へと高速で迫る!!!!

 

 

 

莉茉「!!!!」

 

 

 

 


グ         サ        ッ        !!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 


触角は、莉茉の腹部を貫通した。

 

 

 

莉茉「...!」コボビュビッ...!

莉茉は滝のように吐血した。

クリスティ「決まったわァ...ァ...!最悪の悪夢(バッデスト・ドリーム)...!!」ガクガク...!

 

 

 

《池袋 / 結界外》

 


はるか達は、結界に攻撃を続ける!

 


はるか「結界の殻が剥がれてきてる!もうすぐだ!」

村松「...!」

ラキラキ「ワオーーーーーン!!」

はるか「で、手伝ってもらってなんだけど、お前誰だ?強そうだけど」

 


はるかは攻撃を続けながら、先程現れた謎の男に話しかける。

はるか「てかお前人間か?魔者か?なんかよく分からん気配だな」

 


TORA「話は後だ。俺はマスター榊が残した”最後のプログラム”に従ってここへ来た...!」

 


はるか「マスター榊?榊...どこかで聞いたような...」

村松「...!」

はるか「あ!思い出した!!榊って、なぎちん拉致ったクソ野郎だ!!!その仲間かよ!!何しにきやがった!!」

TORA「それも後だ!まずはこの結界を破壊せよ!」

はるか「やってるよ!!」

3人は、結界に攻撃を続けながら、会話する。

 


TORA「あのお方...マスターもやり方はお前達とは違ったが、ただ魔法をこの世から消し去りたいという思いは本物だった」

はるか「...」

村松「...」

TORA「あのお方はもう居ない。だが、意思は消えていない」

はるか「は?」

TORA「SSIプログラム。これは、マスターに万が一のことがあった時に、残された我々PETSの行動の指針を定める為のAIプログラムだ。残りのPETSはお前達に破壊されてしまったが、私はこのプログラムに従って、海を渡りここへ来た」

はるか「それで?」

TORA「マスターの意思、それは魔法を消し去ること。このプログラムが弾き出した最善の方法は、お前達魔裁組に加勢し、ノベルを殲滅する。というものだ」

はるか「ふーん」

TORA「それに俺は、あの戦いで、本当の強さとは何かを学習した」

村松「...」

はるか「...」

TORA「とにかく、まずはこの目標を破壊することが先決である」

はるか「ま、味方ならおけ!とりあえず中にいるりまっちを助けねぇと!」

村松「...!」

ラキラキ「ワオーーーーーン!!!!」

 


TORA、参戦!

 

 

 

 

 

 

 


第489話 「妹達へ」

 


《池袋・結界外》

 


はるからは結界に穴を開け始める!!

 


はるか「おい!行けるぞ!もう少し!」

村松「...!」

TORA「!」

ラキラキ「ワオーーーーーン!!」

 


はるか「りまっちーー!!!!無事かーーー!!!!?!?!」

ラキラキ「ワオーーーーーン!!!」

 

 

 

バッ!!!!!!!!!

 

 

 

すると、結界が霧散し、辺りは光に包まれた!!!

 


はるか「ぐわっ...!!!なんだ!!!!」

 

 

 

はるかが目を開けると、そこには莉茉が背を向けて座っていた。魔者は見当たらない。

 


はるか「りまっち!!!勝ったのか!!!!」

 


はるかが駆け寄ろうとすると、莉茉は血飛沫を吐いて、倒れた!

 

 

 

はるか「...は?」

 

 

 

バタッ...

 


はるか「りまっち...?りまっち!!!!」

 


はるかは、倒れた莉茉を抱き抱えて、話しかける。

 


はるか「おいりまっち!なんだよこの血の量!何があったんだよ!!皆!!美波か唯ちゃん!!それか救急チーム呼んでくれ!!」

村松は急いで無線で連絡を取る。

 


莉茉ははるかの膝を枕に、はるかの頬に血塗れの手をやる。

 


莉茉「だめだよ...はるか」

はるか「何がだよ!」

莉茉「治療も有限よ......もっと大事な所で使わないと...」

はるか「は?!何言ってんだよ!りまっち!りまっちが一番ヤバいだろ!」

莉茉「はるか......お願いがあるの」

はるか「...?!」

莉茉「私の家の机の中に...皆への手紙が入ってる......いつこうなるか分からないから、ずっと用意してたの......だから、戦いが終わったら...皆に渡して欲しい...」

はるか「手紙?!何の話だよ!!今助けるから!後でその話は、」

 


はるかの目に涙が溜まりだす。

莉茉「もういいの......はるかももう分かってるんだよね...?もう私は...戦えないんだ」

はるか「は?!意味わかんねぇよ!!何もわかんねぇよ!!おいりまっち!!」

はるかの頬から、莉茉の手が零れる。血でなぞられた頬が涙で滲む。

 


莉茉「今思い出した......はるか達が初めて、魔裁組に来た時のこと」

はるか「...?」

莉茉「はるかも麗美も我が強くて...大変だったなぁ......美波はマイペースだし。問題児の集まりって感じで」

はるか「...」

莉茉「でも、私ね...凄く嬉しかったんだ...同じ年代の女の子が沢山入ってきてくれて...私を頼ってくれて。沢山甘えてくれて。家族がいなくなっちゃった私にとって...大事だったんだよ。本当に」

はるか「りまっち...!何言ってんだよ!もうやめてくれよ...!」

莉茉「お願い...聞いて」

はるか「...!!」

 


莉茉「はるか...はるかは優しい子。自分よりも大切な人を考えられる、素敵な子」

はるか「...!!」

莉茉「狡い人が得をして、優しい人が損をする世の中だから...はるかやみんなには強く生きて欲しい。でも、どうか、その優しさを忘れないでね」

はるか「...!」

莉茉「その優しさに、私は救われた」

はるか「...りまっち!!」

莉茉「勧善懲悪...ね...!」

莉茉は目を閉じる。

 


莉茉「たくさんたくさん...ありがとう...私のかけがえのない、妹たち」

はるか「...りまっち...待ってくれよ...りまっち!!」

 


はるかは動かなくなった莉茉を揺さぶって叫ぶ。

 


はるか「りまっち!!りまっち!!!起きてくれよ!!!!なぁ!!!まだこっちは言いたいこと沢山あんだよ!!!なぁ!!皆で笑える世界にしようって、約束したじゃねぇか!!!まだ途中だろ!?なんで、なんでりまっちだけ...!!!」

村松「...」

TORA「...」

 

 

 

 

 

 

 


第490話 「連鎖」

 


《池袋》

 


救急チームが到着する。

 


しかし、救急チームは莉茉を見るやいなや、表情を暗くした。

 

 

 

 

 

 

莉茉は助からなかった。

 

 

 

 

 

 

《莉茉の走馬灯》

 


莉茉が目を開けると、そこには魔者になって死んだ莉茉の父親がいた。

 


父親は、そこに立って莉茉に向かって微笑んだ。

 


莉茉「お父さん...?」

父「莉茉。こっちへおいで」

莉茉「お父さん...お父さん!」

 


莉茉は父に抱きついた。

 


莉茉「ごめんお父さん!もっと、もっと生きたかった...!パパの分まで、もっと長生きしたかった...!」

父「ごめんな...守ってあげられなくて」

莉茉「もっと...もっと頑張りたかった...!」

父「俺が悪いんだ、全部、俺が」

莉茉「そんな事ない!!!」

父「...でも父さんな、ずっと見てたよ?莉茉は誰よりも真っ直ぐ頑張ってた」

莉茉「...!」

父「莉茉が大切な仲間に出会えてよかった。もう十分だ。俺は幸せだ」

莉茉「...!」

 


父「ありがとう。莉茉は俺の自慢の娘だ」

 


莉茉は父の胸で泣いた。

 

 

 

《池袋》

 


はるかは悲しみにくれ、立ち上がれずにいた。

 


TORA「行かないのか。次の目標は南東の方角だ」

村松「...」

はるか「そんな簡単によ......切り替えられるわけねぇだろうが!!!!」

TORA「...」

はるか「なんで...どうしてりまっちが死ななきゃならねぇんだ!!!どうして!!!」

 


TORA「魔法使いというものは、誰しも命を賭して戦っているものだと思っていたが、他人のことになると違うようだな」

はるか「は?」

TORA「死んだ魔法使いも、魔法使いである以上その命をかけてお前達と共に闘っていたのではないのか?」

はるか「...」

TORA「現に魔者は消えている。先刻死んだ魔法使いは、魔者の討伐し、己の任務を果たしたのだ。そこに何の文句の付けようがあろうか」

はるか「...」

 


TORA「こうしている間にも、他の魔法使いが命を落としている可能性もある。お前が仲間とやらを想うのなら、選択肢は1つしかない」

はるか「...なんだよ」

TORA「ノベルのボス。シェイクスピアを討つことだ」

はるか「...白鶯蓮源」

TORA「俺は行くぞ。マスターの意思に従い、魔法をこの世から排除する為にな」

村松「...」

ラキラキ「ワオーーーーーン!!!」

はるか「...わぁったよ。やってやる」

 


はるかは立ち上がる。

 


はるか「白鶯...生まれてきたことを後悔させてやる...!!!!」

 

 

 

するとそこへ雑魚魔者がやってきて、はるかを襲う!

村松「...!」

ラキラキ「ワオーーーーーン!」

TORA「魔者...!」

はるか「...!!」

はるかは咄嗟に魔者に反応する!

 

 

 

シャキッ!!!!!!

 

 

 

すると、はるかの直前で魔者は光のようなものに斬られて消えた!

 


はるか「?!消えた?」

 


すると光は南東方面に高速で消えていった。

 


TORA「何だったんだ?」

村松「...(一瞬見えた...あの姿って、もしかして...?)」

 

 

 

 

 

 

 


第491話 「ウルフ」

 


《上空基地》

 


五百旗頭「そうですか...越前さんが...」

ひえり「...」

五百旗頭「これ以上犠牲者が出ない事を祈るしか...」

ひえり「...ですね」

五百旗頭「そう言えば、上野の光はどうなった?」

ひえり「池袋を通って、後楽園方面に移動してます」

五百旗頭「成程」

ひえり「光の通った軌道では、魔者のマヂカラ反応が尽く消えてますね」

五百旗頭「ほう...」

 

 

 

 

 

 

《品川 / 魔道結界・雷》

 

 

 

 

 

 

結界内には雷が降り注ぎ、荒廃した品川の街並みが広がっている。

 


ゴロゴロピッカーーーーン!!

 


三太郎「なんだこりゃ、ひっでえ街」

幸二「雷...か」

 


するとそこへ、高台に1人の魔者が現れる!

 


ウルフ「おいお前ら、魔法使いだな?」ドンッ!

 


ウルフは高台から2人を見下ろし、話しかける。

 


幸二「あいつがこの結界の主だな」

三太郎「おい!!魔者!!とっとと降りてこいや!!」

ウルフ「フハッ。人間の癖に、俺に指図しやがった。おもしれぇ。降りてやろう」

 


ドッスーーーーーン!!

 


ウルフは、大きな音を立てて飛び降りた。

 


ウルフ「俺はウルフ。ノベル最強の魔者だ」

三太郎「俺は三太郎!スーパーヒーローになる男だ!!」

幸二「自分で最強を名乗るなんて、余程自信があるんだな」

三太郎「おい、お前も自己紹介しろよ」

幸二「なんでだよ!」

ウルフ「まぁ御託はいい。俺が欲しているのは血肉沸き立つ殺し合い。そこから生まれるパッション!!さぁお前達2人を俺が相手してやろう。楽しめそうになかったら即殺すぞ」

三太郎「上等だぜ。俺の新しい力のお披露目会だ」

幸二「三太郎、こいつは幹部級だ。油断はするなよ」

三太郎「あぁ。しっかり集中して、きっちり退治してやる」

 

 

 

回想──────

第39巻の続き

 

 

 

《廃校》

 


幸二「こんな所に呼び出して、なんだ?」

三太郎「悪いな。俺さ」

幸二「…?」

三太郎「もっと強くなりたい」

幸二「…!」

 


三太郎「俺、今のままじゃ、スーパーヒーローどころか、ただのヒーローにもなれてない。このままじゃダメなんだ…!」

幸二「…それで?」

 


三太郎「俺に特訓をつけてくれ…!!」

 


幸二「特訓?俺が?」

三太郎「あぁ。幸二、お前のその青のエレメントの力、俺に教えてくれないか」

幸二「いや、これは俺が青の注射を打ったから出来る業だから、黄色のお前にはもっと別のやり方があるだろ」

三太郎「でも、イメージすれば出来るかも」

幸二「ん?」

 


三太郎「確かにそうだけど、俺、決めたくない。自分の限界を」

幸二「...!」

三太郎「本気で出来るって信じれば出来る。このエレメントの力はそれを可能にする」

幸二「お前...」

 


三太郎「少しでいい!教えてくれ!」

幸二「...わかったよ。やるだけやってみるか!」

SOREMA -それ、魔!- 59

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SOREMA -それ、魔!- 59

 

 

 

 

 

 


「HOPE」

 

 

 

 

 

 

────


第478話 「芸術家」

 

────


《魔導結界・霧》

 


東海林・百目鬼 vs ユゴー

 


東海林ら、反撃開始。

 


東海林は考える。

東海林「(さっきは相手が油断してたから当たったけど...この霧の中はやっぱり視界が悪い...それに)」

 


東海林は倒れる百目鬼と目が合う。

 


東海林「(どめきんが”アレ”を使う気でいるなら、まずはこの視界をなんとかしないと...!)」

百目鬼「...?」

 


ズボッ!

ユゴー「ウップス...はぁ...やってくれんじゃねぇかぁ」

東海林「!」

ユゴーは刺さった剣を抜いた。

 


ユゴー「...姉ちゃん...ただですむとおもぅなァよ?ウップス」

東海林「思ってないけど」

ユゴー「ウップス」

 


東海林「...やってみるか」

ユゴー「...?」

 


東海林は両手を胸に当て目を閉じた。

 


シャイニィィィィィィン...!!!!!!

 


ユゴー「うぅ?」

百目鬼「わーお」

 

 

 

少し前かがみになった東海林の背中から白く輝く羽が生えた。

 


その姿は、さながら天使の様に美しい。

 

 

 

東海林「...」

ユゴー「ウップス...俺...死んだかァ?」

東海林「かもね」

 


東海林は一瞬にして空へ飛び、羽を大きく広げる!!!

東海林の後ろには眩い後光が指す!

 


百目鬼「...どっちが芸術かわかんねぇな」

ユゴー「ウップス」

 


すると、暴風が辺りに吹き荒れる!!!

 


百目鬼「...!!」

ユゴー「ウップス...!!」

 


ゴォォォォォォォォォ!!!!!

 


東海林「...(お願い!上手くいって!)」

 

 

 

パ     ァ     ァ     ァ     ァ     ン     !!!

 

 

 

東海林が大きく羽を広げると、暴風は収まり、辺り一面を覆っていた霧は全て霧散した!

 


ユゴー「!!!」

百目鬼「成程な」

東海林「出来た!」

 


辺りには、霧に隠れていた、上野の廃れた風景が現れた。

 


東海林「こんなに街がボロボロに...」

百目鬼「いや違う。これはまだ結界の中だ!こいつを倒さないと結界の外には出られない筈だ!」

東海林「そっか!じゃあこれは嘘の景色って事ね!」

百目鬼「そうだ」

東海林「ありがとう!どめきん!」

百目鬼「...」

ユゴー「あのガキ...何故ここまで知っている...?ウップス。まぁいいかァ」

 


東海林は落ちた剣を広い、切っ先をユゴーに向ける。

 


東海林「さぁ。一騎打ちと行きましょう」

ユゴー「楽しみだなァ...ウップス」

 

 

 

 

 

 

────


第479話 「ぺろり」

 

────


ユゴーの魔導結界》

 


東海林はユゴーに斬り掛かる!

 


東海林「はぁぁぁぁ!!!」

ユゴー「ウップス」

 


ビュンッ!シュンッ!パッ!シュイン!サッ!バッ!!

 


2人は目にも止まらぬ攻防を繰り広げる!!

 


百目鬼「...(ちっ。速すぎて目で追えねえよ...!ちゃんと見ろ!俺!)」

 

 

 

回想──────

 


数分前

 


戦闘中、2人は作戦会議をしていた。

 


東海林「多分あの術はマヂカラの消費が大きい。だから乱発はしてこない。それに、その術を出す時...」

東海林は百目鬼の頬に顔を近づける。

百目鬼「...?!」ドキッ

 


東海林「あいつは自分の影を出す方向に舌を出す!」

 


百目鬼「...!」

東海林「”その瞬間”を見逃さなければ...」

百目鬼「攻撃を当てられる...!」

東海林「うん...!」

百目鬼「よし、やってやる...!」

 


回想終──────

 


百目鬼は寝転がりながら、2人の戦いをみる。

百目鬼「...(あれだけ速いと一瞬ペースを崩されるだけで命取りになる。あの人が負けたら俺たちは終わりだ...!だが相手もマヂカラの消費が大きいからか術を殆ど出してこない...!次に出してくる時に!こっちも座標をずらせれば...!)」

 


百目鬼は震える手に力を込めた。

 


ユゴーは即席で作った魚の絵や、ドラゴンの絵を東海林にぶつける!

 


ガバッ!!シュィンンン!!!

 


東海林「...!!」キンキンキン!

ユゴー「ウップス。怯んでる暇はねぇぞ」キンキンキン!

東海林「くっ...!」キンキンキン!

 


ユゴーの波状攻撃が東海林を襲う!!

ユゴー「俺の芸術をみろぉ...!”サーカス”!」

 


東海林は、2本の剣で攻撃を捌く!

ユゴー「...!」

その時、ユゴーに一瞬の隙が生まれる!

東海林「...(隙が出来た!ここで決める!)」

東海林は2本の剣を勢いよく突きさす!

ユゴー「...ウップス」

百目鬼「!!!」

 

 

 

ペロッ

 

 

 

東海林はユゴーに剣を突き刺す!だが、剣はユゴーを突きぬけ、ユゴーの”影”は消える!

東海林「しまった!!」

ユゴー「決まったぜ...俺の”トリック”が...!」

ユゴーは大きな鎌を取りだし、東海林の背後に現れる!!!

ユゴー「終わりだあ!お姉ちゃん!!」

 

 

 

ザ     バ     ッ     !!!!!

 

 

 

ユゴーは大きく空間を凪いだ!!!

その場にいたはずの東海林が姿を消した!

 


ユゴー「?!?!」

東海林は上空に飛んでいた!

 


ユゴーは空を見上げる

ユゴー「...(ちっ!あの男の能力か...!!)」

百目鬼「...間に合ったぜ...」

東海林「...(ん!!私、空にいる!!どめきん!!ありがとう、助かった!!この千載一遇のチャンス!絶対に逃さない!!!これが私の”新しい”力...!!!)」

ユゴー「...!」

 


東海林は下にいるユゴーに標的を定める!!

 


東海林「覚悟なさい!!!」

ユゴー「...!!!」

 


東海林は巨大な翼を4枚生やし、突風を突き刺す!!!

辺りは過剰なほどに眩しい光に包まれる!!!

 

 

 

 

 

 

東海林「緑のエレメント!!!奥義・天司風(あまつかぜ)!!!!!!」

 

 

 

ユゴー「!!!!!」

 

 

 

 

 

 

────


第480話 「天を司る風」

 

────


ユゴーの魔導結界》

 


東海林「奥義!!!天司風(あまつかぜ)!!!!!!」

 

 

 

ユゴー「!!!!!」

 


まるで、天から罰が下ったかの様に、ユゴーは空からの光と風に飲まれる!!!!!

周囲の地面は抉られ、百目鬼の周りにも強く風が吹く!!

 


百目鬼「...!!(神々しすぎかよ...!!)」

 


光は容赦なくユゴーに降り注ぎ続ける!!!

 

 

 

ユゴー「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

光が収まると、ユゴーはうつ伏せに倒れていた。

東海林「やばい...やりすぎたかな」

 


東海林は地面に降り立つ。すると、東海林はよろ着き、バランスを崩す。

東海林「しまった...マヂカラを使いすぎちゃった...早く回復しないと...」

 


すると、ユゴーはボロボロになって立ち上がる。

 


ユゴー「ウップス...酒は...酒はどこだァ!!!」

 


ユゴーは狼狽え、暴れ回る。

 


東海林「...!」

 


ユゴー「はァ...まだ終わらんぞ...まだ潰れてねェからなぁ...ウップス」

東海林「しつこい...!」

ユゴー「ぐへへへ。ウップス」

 


ユゴーは筆を取りだし、再び東海林に攻撃を仕掛けようとする。

 


ユゴー「見せてやるぅ。俺の最高の作品をなァ...!!」

東海林「...!!!」

 

 

 

ズボッ!!!!!!

 

 

 

ユゴー「?!?!?!」グハッ

 


ユゴーが自分の腹部を見ると、青い手が腹部を貫いていた!!!

百目鬼「通り過ぎたか」

東海林「どめきん!!!」

ユゴー「...なんだァ?!」

 


ズボズボズボ...

 


百目鬼は徐々に手を引っこめる。

 


ゴソゴソゴソ...

 


ユゴー「ウップス...お前、何してやがる!!」

ユゴーは筆を握り、動こうとする!

 


百目鬼「あった」

 

 

 

ズボッ!!!!!!!!

 


百目鬼は思い切り手を引っこ抜いた!!手には魔導書が握られている!!!

 


百目鬼「最高の作品だっけ?それはあの世でどうぞ」

ユゴー「...!!!まさか!!!魔導書が!!!」

 


ユゴーの体は徐々に消え始める。

百目鬼は魔導書を片足で踏んづけ、ユゴーを見下ろす。

 


ユゴー「ウップス...まぁいい...あの世で待ってるぞ...どうせ...すぐこっちに来るんだからなァ...ウップス」

百目鬼「一生待ってろ」

 

 

 

ユゴー、完全消失。

結界が解けた。

 

 

 

百目鬼「ゴボッ...!」

百目鬼は吐血し、地面に手をつく!

東海林「...!どめきん...!」

東海林も体を引きずりながら、百目鬼に近づく。

東海林「ありがとうどめきん。間違えて倒しちゃったらどうしようって...」

百目鬼「相手がタフで助かったな」

 


東海林「どめきんも助けてくれてありがとう」

東海林は微笑む。

百目鬼「あんたが負けたら困るんでな...でも、約束は守ったぞ...」

百目鬼は1本指を立てる。

東海林「ギリギリまで...無茶するんだから...!いま回復するね...!」

百目鬼「あんたもギリギリだろうが」

 


そこへ美波がやってくる!

 


美波「着いた上野!!結界はどこ?!?!」

百目鬼「お、あいつは」

東海林「あ!美波ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

────


第481話 「HOPE」

 

────


《上野・上野公園》

 


東海林と百目鬼は木の麓に座り込む。

美波は2人を治癒する。

 


美波「ごめんなさい...着くのが遅くなって...」

東海林「いや、むしろ助かった。回復できる人が全滅したら困るし」

美波「はい...」

 


美波は百目鬼の治療を終える。

百目鬼「よし。体軽くなったぜ、次の結界行くか」

東海林「ダメだよ!無理しちゃ!」

美波「普通の傷は完治してないからね!これは応急処置だから!」

百目鬼「でも戦える奴が行かねぇと」

東海林「それはそうだけど」

百目鬼「力を出し惜しんで勝てる相手じゃないぞ。ノベルは」

 


百目鬼は立ち上がり首を鳴らす。

 


百目鬼「よし。2分休んだら次行く」

美波「!」

東海林「ほんと、無理しない方が」

百目鬼「あんたらはここで休んでな。俺は何となく結界の場所に目星がついてるんでな。雑魚い魔者狩りながら次に行かせてもらうぜ」

東海林「どめきん!」

百目鬼「大丈夫でしょ。あんたらと違って俺は雑兵。居ても居なくても変わらん戦力だ。いた方が少しばかりマシってくらいだろ」

美波「そんな事ない!」

百目鬼「ま、体は案外大丈夫そうなんで行くわ。これ預けとく」

 


百目鬼は魔導書を東海林に渡す。

 


百目鬼「じゃあ。生きてまた会えたらいいな」

東海林「どめきん!」

美波「百目鬼君!」

 


百目鬼は歩いて行ってしまった。

 


東海林「死んじゃダメだよ!!!どめきん!!!」

百目鬼は振り向かず、右手で返事して歩いていった。

 


美波「百目鬼君...大丈夫かな」

東海林「...」

 


すると東海林は、百目鬼に渡された魔導書を美波に渡す。

 


美波「?」

東海林「これ、使える?」

美波「え?」

美波は戸惑う。

 


東海林「美波ちゃん。履術者じゃないよね」

美波「え、違いますけど。え?えー!ダメですよね!え、何考えてます?」

東海林「ニコニコニコ」

美波「私、履術者にはなりませんよ!」

東海林「えー。ぴったりの能力だと思うけどなぁー」

美波「いやいや。ダメじゃないですか。許可のない履術は」

東海林「私が許可します!!!」

美波「そういう問題じゃ!」

東海林は美波の手を握る!

 


東海林「出来るよ。美波ちゃんなら」

美波「いやでも、もし上手く行かなくて、魔者になっちゃったら」

東海林「ならない。美波ちゃん。才能あるもん」

美波「いや...でも...」

 


すると2人を何者かによる攻撃が襲う!

 


東海林「!!」

美波「!!」

 


美波はエレメントの盾で東海林を守る!

 


魔者「ギェェェェェェ!!」

魔者が3体現れた!

 


東海林「この魔導書に引き寄せられて現れたのね...!」

美波「...唯さん、動けますか?」

東海林「...逃げるくらいなら、なんとか」

美波「こいつらは私がやります。唯さんは逃げてください!」

東海林「...いいの?」

美波「これくらいなら余裕です。でも数が多いので、少し時間がかかるかも」

東海林「私もやr、」

美波「ダメです!!!唯さんは皆の希望なんです!こんな所で無駄に力を使わないで!」

東海林「...わかった。気をつけてね」

東海林は立ち上がる。

 


美波「はい!出来るだけ遠くに逃げてください!」

東海林「うん...(マヂカラの消費を抑えたい。ここは陸路で逃げよう)」

美波「早く!」

東海林「ありがとう!魔導書よろしくね!」

美波「はい!」

 


東海林は走って行く。途中振り返り、美波に呼びかける。

 


東海林「希望なのは、美波ちゃんもだからね!!!」

美波「...!!」

 


そこへ魔者がまた2体現れる。

 


美波「次から次に...!!」

魔者「ギェェェェェェ!!!」

美波「5体まとめてやってやる...臆病な私はもういない!!」

 


ズズズズ...!!!

 


美波の背中から、悪魔の姿をしたオーラが立つ!

 


美波「紫のエレメント...!クイーン・ザ・サタン!」

 


魔者「ピタッ」

 


5体の魔者は動きを止めた!

 


美波「怖気付いた時にはもう終わりよ」

 


魔者は歪む空間にひねり潰され、消えた!

 


美波「はぁ...(この技...便利だけど消耗が...でも長く戦いっぱなしよりは省エネになる!)」

 


そして美波は手に持った魔導書を見つめる。

 


美波「あんな魔者が何体も...」

 

 

 

 

 

 

 

────

 

第482話 「君のイメージ」

 

────


《上野・上野公園(入口)》

 


美波は高台から街を見る。

所々煙や火が上がっている。町中からサイレンや悲鳴が聴こえる。

 


美波「私に出来ることは...皆のサポート...皆のサポート...」

美波は魔導書を見る。

 


美波「でも私に力があれば...」

 


美波は戦う仲間を思い浮かべる。

 


美波「でも、上手く使えなかったら?」

 


美波は葛藤する。

 

 

 

 

 

 

君なら、どうする?一善君。

 

 

 

 

 

 

美波はかつての一善を思い浮かべる。

 


一善”イメージしよう”

 


美波「...!」

 


一善”イメージだよ。俺達が、敵を倒して、五百旗頭さんとまたここで任務に励む日々を、頭に浮かべるんだ”

 


一善”突破口が見えないなら、イメージすればいい。後はそこへ向かって進むだけだから”

 

 

 

 

 

 

 


美波「...君なら、やるね」

 

 

 

美波は魔導書を握りしめる。

 


美波「イメージ...イメージ...イメージ...」

 


美波は目を閉じる。

 

 

 

 


すると、誰かの叫びがこだまする。

 


助けてくれ...!!

 


助けて...!!

 


お願い...助けて...!!!!

 

 

 

 


美波は目を開ける。

 


美波「一か八か...いや、確実にこの力を...役に立てるんだ...!!!」

 

 

 

美波は、魔導書の表紙に手をかけた...!!!!!

 


美波は眩い光に包まれる!!!!

 


美波「!!!!」

 

 

 

 

 

 

 


そして、気がついた時には、魔導書は消えていた。

 

 

 

 


美波は空になった手の平を見る。

 


美波「...これなら...!」

 

 

 

ピピッ

 


そこに通信が入る

 


『東海林 : 今私とどめきんで上野の結界解除しました!私は安全なところにいます!』

『ひえり : 唯さん!』

『虎走 : 私は今神宮球場の入口!!魔者と変な魔導師2人を追ってます!!』

『九頭龍坂 : こっちは岩田はんと皇居の南や!魔者が多すぎて太刀打ち出来ひん!』

『ひえり : 皆さん!まずは目の前の魔者を皆さんお願いします!!こっちの想像以上に数が多いので!!すみません!!』

『九頭龍坂 : 死ぬ気でやっとるけど、やったらやったで何体も何体もキリあらへん!心折れそうや...』

『岩田 : やるしかないだろう!九頭龍坂殿!あっ』バシュッ

『九頭龍坂 : 背中取られとるで』

『岩田 : 済まない!恩に着る!』

 


美波「皆、色んなところで必死に戦ってる...こんな時...皆の希望があれば...」

 

 

 

!!!

 

 

 

美波は閃いた!

 


美波「筆!」

 


ボンッ!!

 


美波は筆を取りだし、空中に'そ'の'能'力'で”あるもの”を描き始めた。

 


美波「もっと、もっと細くなれないの?!」

筆「ボンッ」

美波「よし!」

 


カキカキカキカキ...

 

 

 

 

 

 

────


第483話 「ホクロ」

 

────


《上野公園》

 


美波「あれ...'ホ'ク'ロどっちだっけ...まあいっか...」

 


美波は空中にとある人物の絵を描き終えた!!

 


美波「上手くいくといいけど...どうかな」

 

 

 

パ     ァ     ァ     ッ     !

 


強い光が美波を包んだ!!!

 

 

 

美波「眩しい!」

美波は腕で目を覆った。

 

 

 

そして、光が収まると、そこに現れたのは、あの男(?)だった!!

 


美波「...お久しぶりです」

???「俺は...強い」

 


ドン!!!

 

 

 

千巣?「俺は...”強い”!!!!!」

 

 

 

《上空基地》

 


ひえりは上野に強いマヂカラ反応を確認する。

 


ひえり「ん?上野ってもう結界は解除したのでは?」

 


ひえりは上野方面を見る。

 


ひえり「...?!?!?!あれって?!?!?!」

五百旗頭「どうしたの?」

ひえり「お兄ちゃん...?」

五百旗頭「え?」

ひえり「いや、美波さんと...お兄ちゃんっぽい人が...」

五百旗頭「まさか」

ひえり「いやでも...人間の気配じゃないって言うか」

ひえりは目を擦り、再び2人を見る。

 


五百旗頭「疲れているのかしら。無理もないわ。少し休んだら?」

ひえり「いえ...まだ休めせん...」

五百旗頭「...」

ひえり「...(まさか...お兄ちゃんが生きてるわけ...ないよね。うん。でもきっと、お兄ちゃんも守ってくれてるんだね。ありがとう。少し、元気でたよ...!)」

 


《上野》

 

 

 

蒼魔導書第四十五章 描写の書 の能力

 

 

 

この能力で実在の人物を書くと、それを書いた人物が持つ、書かれた人物に対する人物像が具現化し、独立して現れてしまう。現れた像は自我を持ち、一定時間動き回る。

 


今、美波の前に現れたのは、美波がイメージする千巣万之助。

もちろん、本物の千巣ではない。あくまで美波のイメージの千巣なので、実際の千巣の人物とは異なってくる。

 


美波「あ、あの...」

千巣?「久しぶりだな。美波」

美波「会話...出来るんですね」

千巣?「会話。まぁな」

美波「あの、お願いがあって...」

千巣「お願い?」

美波「皆を...守ってください...!!」

千巣?「?」

美波「今魔者が沢山人を襲ってて、仲間は結界に閉じ込められたり、魔者と戦ったり、皆ボロボロなんです...だから千巣さんの力が必要なんです...」

千巣?「...」

美波「お願いします...」

 


そこへ、魔者が現れる!!!

 


魔者「ギェェェェェェ!!」

美波「!!!」

 

 

 

 


ズ          バ          ッ          !

 

 

 

 


魔者は千巣?の攻撃により一刀両断された!

 


この攻撃も、美波の想像の中の千巣を具現化したものである。

 


千巣「...了解」

美波「!!」

 

 

 

ピュゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

千巣?は一瞬で目の前から消えた!!

 


美波「...!※速すぎる...!!」

※美波は千巣はこのくらい速く移動すると思っている。

 

 

 

美波「とにかく...これで...大丈夫かな?私も皆に加勢しないと...!」

 


美波は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

────


第484話 「最速の女」

 

────


《池袋 / 魔導結界・煙》

 

 

 

 


結界の中

莉茉 vs クリスティ

 


結界の外

はるか

 

 

 

 


莉茉はクリスティと対峙する。

 


莉茉「...(こいつも何かの魔導書の履術者...)」

クリスティ「むふ♥」

莉茉「...(残念ながら結界内で履術者はアイツだけ...魔導書ゲッターは使えない)」

クリスティ「あら、考え事?♥」

莉茉「...(仕方ない...魔導書が奴らの手に戻るとしても、ここはアイツを倒す以外、助かる手はない...!)」

 


ビュッッッ!

 


莉茉は凄まじい速度で消えた!!

 


クリスティ「...!!速い!!残像が見えたわ」

 


ガッッッッッ...!!!!

 


莉茉は、クリスティの背後に現れ、クリスティの顔面に強烈な蹴りを食らわせた!!!!

 


クリスティは顔面から吹っ飛ばされた!!

 


クリスティ「...やるわねぇ...」

クリスティは蹴られた部分に手をやる。

莉茉「連撃注意よ」

クリスティ「?!」

 


バァン!バァン!!

 


莉茉はクリスティの眼球目掛けて高速のエレメントの球を飛ばした!!!!

 


クリスティ「ぐはっ!!!!」

クリスティは攻撃を受けながらも、立ち上がる。

クリスティ「てかさっきから、頬がジンジン痛いわね」

莉茉「ただの打撃じゃないのよ」

クリスティ「じゃあ何よ」

莉茉「自分で考えたら?」

 


ド    カ     ッ     !!!!!!

 


莉茉は高速でクリスティのみぞおちに蹴りを食らわせた!!!

 


クリスティ「...!!(なんつう蹴り...!!!)」

 


クリスティはまた吹き飛ばされる!!

 


クリスティ「...蹴られた部分が痛み続ける...成程...!!」

 


ガァァンンン!!!!

 


クリスティ「!!!!」

莉茉のかかと落としがクリスティを襲う!!!

 


クリスティ「グハッッ...!!!(速すぎんのよ...!!)」

莉茉「...!!!」

ドカッ!!

莉茉はクリスティを蹴り飛ばした。

 


莉茉「...(私の弱点だった近接戦...少しは克服できたかな...?)」

 


莉茉は斧の形をした魔具を取り出す...!!

 


莉茉「...(青のエレメントを使った遠距離攻撃だと、マヂカラの消費が少し大きい...!でも近接と魔具なら、消費を抑えて戦える...!!)」

クリスティ「ぐへ?」

 


莉茉「はぁぁぁ!!!!」

 


ザァン!!!!!!

 


莉茉は斧でクリスティを斬りつける!!!!

 


クリスティ「ぐはぁぁぁっ!!!!」

 


クリスティは血飛沫を上げて仰け反った。

 

 

 

莉茉「...(桃のエレメントでじわじわ削ってるはずだけど...流石にしぶといわね)」

クリスティ「はぁ...あなた...やるわね...」ポタポタ...

莉茉「...」

 


クリスティは疼く傷口に手を当てて呟く。

クリスティ「この感触...成程、間違いないわ」

莉茉「...?」

クリスティ「どうやら、私たち、似た者同士の様ね♥」

莉茉「?!」

 

 

 

 

 

 

SOREMA -それ、魔!- 58

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SOREMA -それ、魔!- 58

 

 

 

 

 

 

”Blizzard”

 

────


第471話 「氷」

 

────


【ノベルウォー現在の動向】

・渋谷(結界・炎)

ジャスティン vs サド

 


・池袋(結界・煙)

莉茉 vs クリスティ

はるか、結界外

 


・上野(結界・霧)

東海林・百目鬼 vs ユゴー

美波移動中

 


・新宿(結界前)

麗美・京金

 


・品川(結界前)

幸二・三太郎

 


・東京(結界前)

一善

 


・表参道

虎走 vs アール・カルマ & 魔者数体

 


・上空基地

五百旗頭・ひえり

ヒメ、外へ

 


ーーーーーー

 


《第2支部 / 実験室》

黒髪のジャスティンと五百旗頭。

テーブルには空になった注射器が置かれている。

 


ジャ「五百旗頭さん。僕はなれたんでしょうか?魔法使いに…」

五百旗頭「ジャスティンくん。正直に言うと、成功とは言い難いわ」

ジャ「...!」

五百旗頭「貴方に打ったのは、赤のエレメント。だから本来はオーラが赤く光る筈なの。または原色持ちと言って、既に体にマヂカラが流れている場合、色が自動的に決まる人もいる。でも、貴方の指から上がったオーラの色は”無色”。だから...」

 


ジャ「そ、そんな…!」

五百旗頭「ごめんなさい…私の実力不足で」

ジャ「悔しいですけど…自分で志願したことですから」

五百旗頭「私も悔しい…!」

 


五百旗頭は涙を流した。

 


ジャ「五百旗頭さん...」

五百旗頭「ごめんなさい...でも、貴方の体には確かにマヂカラが流れたわ。だから、これからは魔者がその目で視認出来るようにはなる...でも、これ以上のことが出来るようになるとは、必ずしも言ってあげられない...」

 


五百旗頭はメガネを取って目元を拭う。

 


ジャ「五百旗頭さん!僕!」

 


五百旗頭「…?」

ジャ「僕、もう少し足掻いてみます。可能性は0じゃないんですよね?なら、魔法使いになった自分をイメージし続けます!五百旗頭さんの研究を無駄にはしない…!」

五百旗頭「…!」

 


ジャ「想像(イメージ)をやめてしまったら、死ぬのを待つだけだ。そんな人生、僕は嫌だから…!」

 


回想終わり────

 

 

 

 


《魔導結界・炎》

 


ジャ「(俺のこの力は...”失敗”なんかじゃない...!この力はなぎちんや姉さんから確かに渡された...バトンなんだ...!)」

サド「...」

ジャ「おい...覚悟は出来たか?」

サド「何の覚悟だ?」

ジャ「消し炭になる、その覚悟だよ...!」

サド「ふっ。戯言か」

ジャ「その余裕もいつまで続くか、”これ”を見ても正気でいられるか見ものだな...!」

 


ジャスティンは、右手と左手の指と指を重ね合わせて、目を据わらせる。

 


サド「何をする気か知らないが、まぁいい。この紅蓮の炎の中で、消し炭になるのはお前だ...!」

 


サドは瞬間移動し、ジャスティンに迫る!

 

 

 

ジャ「...こう言うんだっけな」

サド「...!」ビュンッッ!!

 

 

 

サドの拳がジャスティンに届かんとしたその時...!!!

 

 

 

 


ジャ「”魔導結界展開”!!!!!!」

サド「?!?!?!?!」

 

 

 

 


ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ...!!!!!!!!

 

 

 

キ            ィ          ィ          ン     !!!!!!!

 

 

 

辺りの燃え盛っていた景色は、一瞬にして凍結した!!!辺り一面は白く、凍てつく空気にのまれた。

 


これが、ジャスティンの魔導結界展開。

 


サド「...まさか...?!?!」

ジャ「ここがお前の墓場だよ」

 

 

 

 

 

 

────


第472話 「サド」

 

────


ジャスティンの魔導結界》

 


サド「...(これは、少し仕様が異なるが、魔導の力による結界で間違いない...!だが、何故この男が?)」

ジャ「どう?出来栄えは」

サド「そう簡単にできるモンじゃないがな...貴様...」

ジャ「これは、僕にしか出来ない超技さ」

サド「...」

 


ジャ「...(百目鬼に教えて貰った魔導結界の仕組み。百目鬼は殆ど分かってなかったけど、彼の少しのヒントと、俺の”覚醒”したエレメントの力で、膨大な量のマヂカラをコントロール出来る術を知れた。結界が既に貼ってあったおかげでマヂカラの土俵があったのは救いだな。おかげでタダ乗り出来た。これならアイツを封殺出来る...!!)」

 


サド「成程な。見くびっていたよ。少しはやるようだ」

サドは、顔についたガスマスクを投げ捨てた。

ジャ「...!!」

サドの素顔が顕になった。ガスマスクで覆われていた部分は巨大な口があり、何十本もの長く鋭利な牙が禍々しく生えている。

サド「...」ググゥ...

ジャ「...」

サド「さぁ...どうやって殺してやろうか」

ジャ「こっちのセリフだよ...!」

 


ジャスティンはサドに迫る!

 


ジャ「白のエレメント!イエティの鉄槌!!」

ドゴーーーーーン!!!

サドは攻撃を躱す!

サド「...(恐らくこの結界のせいでこの男の技の威力が上がっている...だが)」

サドは素手ジャスティンを殴り飛ばす!!

サド「魔導拳法...!”カルバリン”...!!」

ジャ「...!」グハッ

サド「さっきまでの威勢はどうした?」

サドはジャスティンに追撃をくらわす!

サド「”カロネード”!!!」

ジャ「...!」ズズズッ...

 


ジャスティンは押されながらもサドの右手を掴む!

ジャ「白のエレメント!アイスティネイル!!」

ズバッ!!!

サド「...!!」

サドの右手が吹っ飛ぶ!

ジャ「白のエレメント!一貫ピック!!」

ジャスティンは、手にアイスピック状にしたエレメントを握り、サドの顔面目掛けて突き刺す!!

 


サド「...!!!」

 


ガブッ!!!!

 


ジャ「...!」

サドはジャスティンの攻撃を牙で受止め、噛み砕いた!

ジャ「くそっ...!」

サド「甘いな」

サドは回転し、再び生やした右手でジャスティンに裏拳をくらわす!!

サド「魔導拳法...!”カノン”!!」

 


ジャスティンは飛ばされる!

 


ジャ「...!くっ!どこだ?」

ジャスティンが目を開けると、サドは消えていた。

ジャ「出てこい!魔者!」

 


すると、ジャスティンの腹を衝撃が襲う!

 


ジャ「...!」グハッ!!

サド「ずっとここにいたぞ?」

ジャ「...!?」

 

 

 

 

 

 

────


第473話 「一手」

 

────


ジャスティンの魔導結界》

 


ジャ「...!」グハッ!!

サド「ずっとここにいたぞ?」

ジャ「...!?」

 


サドは、ジャスティンの目の前に現れ、ジャスティンの腹に前蹴りを食らわせた!

ジャ「...?なんだ?能力か?」

サド「まさか俺が無能力の魔者とでも思っていたのか?」

ジャ「...(確かに、こいつはまだ能力を明かしてなかったが...!)」

 


サドは再び消える。

 


ジャ「速い...!いや?これは、速さの問題か?」

 


ドカッッ!!!

 


サドは背中からジャスティンを蹴り飛ばす!

 


ジャ「うわぁぁ!!」

サド「やはりつまらんな。手加減してやろうか?」

 


ジャスティンは前に倒れ、手をつく。

ジャ「...(後ろから...!わかったかもしれない。こいつの能力は恐らく...!!)」

 


すると、サドの爪先がジャスティンの顔面を蹴り上げる!!

 


ジャ「!!!!」ガハッッッ!!

サド「...」

 


ジャスティンは飛ばされながらも、バランスを取り戻し、足を広げて地面に着地する。そして、顔面の血を腕で拭う。

 


サド「...」

ジャ「お前、消える能力者だな」

サド「あぁ。如何にも」

サドは腕を背景の色彩に同化させながら言った。

 


サド「魔導書第二十九章 透過の書。俺は背景に自身を同化させることが出来る」

ジャ「...ご丁寧にどうも」

サド「教えた所で力の優劣に変動あるまい...」

スススッ...

 


サドは再び姿を消した。

 


ジャ「...(姿を消したな...いや、だが、マヂカラの流れを感知すれば、視界から消えても動きを追えるかもしれない...!)」

ジャスティンは目を瞑り集中する。

すると、サドはジャスティンの背後に現れる!

ジャ「...」

ジャスティンは全く気が付かない...!

サド「ふっ。無駄だぞ?」

ジャ「...!!」

 


ドカッッ!!!!

 


ジャスティンはサドに殴り飛ばされる!!

ジャ「ぐわぁぁっっ!!!」

 


サド「残念だが、透過中の俺のマヂカラは、余程のモンがねぇと追えないぞ」

ジャ「...(ちっ...千巣さんや粟生屋さんの能力なら追えたかもしれないが...俺は二人じゃない...なら...!!)」

サド「ふっ...」

スススッ...

サドは再び消える。

 


ジャ「簡易エレメント...!!マヂカラを追え!!」

 


ジャスティンはシャボン玉の様な透明なエレメントを幾つか繰り出した。

 


これは、前に莉茉との協力技で繰り出したのと同じ簡易エレメントの一種。攻撃能力が無いのが特徴で、今回はマヂカラが流れる場所に集まる習性を持った簡易エレメントである。

 


ジャ「...(俺自身が追えなくても、奴の場所さえ分かれば...!)」

 


しかし、エレメントの玉は動かない。

 


サド「...ふっ愚かな!」

サドはまた背後に現れ、ジャスティンに迫る!

ジャ「...!!」

 


バッ!!!

 


ジャスティンはサドの攻撃を避けた!

 


サド「今度は避けたか」

ジャ「...(簡易エレメントは俺のマヂカラには反応しない。動かなかったということは、やはり消えた状態のあいつには反応しないということか...)」

サド「戦意喪失か?」

ジャ「まさか。(なら、やってみるしかないか...!)」

サド「?」

 

 

 

 

 

 

────


第474話 「バッドエンド・ドラッガー

 

────


ジャスティンの魔導結界》

 


囚われるな...漲らせろ。

己の限界を超える為に...

 


目の前の魔者を葬る為に、己の復讐を果たす為に...

 


俺は、こいつに何を奪われた?

 


何を失くした?

 

 

 

ジャスティンは、足元に散らばったペンダントの欠片を拾い集める。

 

 

 

どんなに明るく生きようとも、人には退いてはならない一線がある。

 


本当の意味での笑顔を取り戻す為に、

 


例え誰かが悲しむとしても、

 


今は、

 


怒れ。

 

 

 

 


ジャスティンは、じっと待つ。

サド「考えたって無駄だぞ」

ジャ「...」

サド「何もしないならこっちから行くのみ」

 


サドは瞬く間にジャスティンに迫る!

 


ジャ「...!結界操魔法!エッジ・オブ・アイス!!」

サド「...!」

走り来るサドの地面から氷の棘が生え、サドを凍らせる!!

サド「...(くっ...動けない)」

ジャ「今だ!!白のエレメント...!」

ジャスティンはサドに迫る!

サド「...!!!!」

 


パリィィィンン!!!!

 


すると、サドは氷を破って再び姿を消して距離を置く!!

 


ジャ「ちっ...これならどうだ!白のエレメント!!月白!!!」

 


ヴォォォォォォォン!!!

 


ジャスティンを中心にエレメントの波動が広がる!!

 


サド「ぐはっ...!!」

ジャ「...!!」

 


サドは、薄っすらと姿を現した!

サド「ちっ...」

サドは姿を現し、膝をついた。

 


ジャ「成程。姿を消していても攻撃は当たるんだね」

サド「...」

 


すると、ジャスティンは青い手袋=魔導書ゲッターを取り出し、手にはめた。

 

 

 

回想──────

数日前

 


《第2支部 ・ 研究班ルーム》

 


五百旗頭はジャスティンに魔導書ゲッターを手渡した。

 


ジャ「これを俺に?」

五百旗頭「ええ」

ジャ「でも、俺、履術者じゃないですよ」

五百旗頭「いいの。あなたのエレメントは特別だから」

ジャ「?」

五百旗頭「最初の貴方のエレメントは他のエレメントよりも魔導書に近い成分が強めに入ってる。だから履術者でなくてもゲッターが作用するかも」

ジャ「成程...」

五百旗頭「私は成功を確信してるわ。ま、これがあなたじゃなければ、わからなかったけどね」

ジャ「え?」

 


五百旗頭「あなたは不可能を可能にする男。でしょ?そのあなた自身の”イメージ”で」

ジャ「...はい!」

 

 

 

回想終わり──────

 

 

 

サド「...?」

ジャ「色々勉強させてもらったよ」

サド「...」

ジャ「もう終わりだな」

サド「?」

ジャ「見せてやるよ。最高のバッドエンドを」

サド「...?」

 

 

 

 

 

 

────


第475話 「Blizzard」

 

────


ジャスティンの魔導結界》

 


ジャスティンは、エレメントの球をサドに飛ばす!!

 


ビュンビュン!!!

 


サドはそれらを軽く躱す。

サド「当たらん、当たらんなぁッ!!!」

ジャ「エッジ・オブ・アイス!!」

 


パリィィィンン!!

 


サドは足元から再び凍りつく!!

ジャスティンは、凍りついたサドに迫る!

 


パリィィィンン!!!

 


サドは氷を破り暴れ回る!!

 


サド「二度も同じ技を...!舐められたモノだなァ!!!」

サドは再び姿を消す!!

ジャ「そう来ると思ったよ...!!!」

サド「...?!」

 

 

 

ジャ「月白・反転!!!!!」

 


サド「?!?!?!」

 

 

 

 


パ    リ    ィ    ィ    ィ    ィ    ィ    ィ    ン!!!!

 


ジャスティンの結界が全て破れた!!!!

 


サド「結界を...破った...?!」

ジャ「ふっ...イメージ通りだ...!」

 

 

 

ド   ク    ン!!!

 


消えた筈のサドを猛烈なダメージが襲う!!!

 


サド「うわぁぁぁぁ!!何だ...これは!!!」

 


サドはまるで360°とめどなく攻撃を浴びせられる状態に陥った!

 


バキシュバキシュバキシュバキシューーー!!!!

 


サド「くっ...!!何だこの攻撃は...!!(消える為のマヂカラが生み出せない...!!)」

 


サドは姿を現し、悶絶している!

 


ジャ「ターゲット...ロックオン...!!」

サド「しまった...!」

ジャ「見せてやる...全てをかき消す吹雪...!」

ジャスティンは両の腕にマヂカラをチャージする...!!

サド「...!」

 


ジャ「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

サド「!!!!」

 

 

 

 


ジャ「白のエレメント...!!ファイナルクロスブリザードォォォ!!!!!!」

サド「!!!!!!!」

ジャ「うぉぉぉぉぉぉぉぉああああ!」

サド「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 


ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ!!!!

 


それは目にも止まらぬ速さの百裂の拳!!!

サドは何も出来ない!!!

 


ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ!!!!

 


ジャ「うぉぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!!!」ドカドカ!

サド「...!!!!」グハッ ドカッ ボカッ ゴハッ...!!

 


ジャ「おりゃあ!!」

 


ニュルッ!

 


ジャスティンは、サドの腹部に青い手袋の着いた手をねじ込んだ!

 


ジャ「...いける!!!」

 

 

 

ズ     ボ     ッ     !

 

 

 

ジャスティンは勢いよく手をサドから引き抜いた!!!

 


サド「...!!!!それは...!!!!」

ジャ「終わりってことだよ」

 


ジャスティンの手には、サドの身体に眠っていた魔導書がしっかりと握られていた!

 


サド「くっ...愚かな...」

サドの身体は足元から崩れ去る...!!

サド「馬鹿な...そんなことが...!!!」

ジャ「...」

サドは下半身が殆ど消失し、上半身にかけてどんどん消えていく。

サド「ありえない...ありえないッ!!!」

サドはいよいよ、顔面を残して消える。

サド「お前らに未来はない!!フハハ!!愚かn」

 


ド     カ     ッ     !!

 


ジャスティンは、サドの顔面を蹴りあげた。

サドの顔面はバッサリと消えた。

 


ジャ「...」

 

 

 

 

────

 

第476話 「描写の書」

 

────


月白・反転

 


ジャスティンが月白を放った時、マヂカラの流れはジャスティンから放射状に放たれたものと、ジャスティンの結界を形成する周囲に集まっていた。

サド視点からすると、ドーナツのように囲まれた状態となっていた。

 


ジャスティンはそのサドを囲う空白部分に目をつけ、自ら放つマヂカラと、結界のマヂカラを0にする代わりに、空白部分に全てのマヂカラを注いだ。

 


空白部分に存在する存在=サドはマヂカラの圧に押しつぶされるようなダメージを受け、動きが静止した。

 


これが、マヂカラの範囲を反転させる技、月白・反転である。

 


《渋谷 / MODI前》

 


ジャスティンは、ポケットから壊れたペンダントを持ち出して言った。

 


ジャ「一つ、終わったよ。あと少しだから...」

 


ジャスティンは辺りを見回す。

 


ジャ「あと少し...だ!」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

《上野 / 魔導結界・霧》

 


東海林・百目鬼ペア vs ユゴー

 


3人は戦闘中。

 


百目鬼ユゴーに攻撃を仕掛ける!!!

 


百目鬼「くらえ!!!朝霧!!!」

 

 

 

バチッ!!!!!!!

 

 

 

百目鬼ユゴーに攻撃をヒットさせた...はずだった。

 


ユゴー「ウップ。当たってないよ〜」

ユゴーは瓢箪を傾け、顔を赤らめて話す。

百目鬼「何故だ?確実に当てただろ今。分身か?それとも瞬間移動...?」

東海林「違う!多分こう!!!」

 

 

 

ピュン!!!!

 

 

 

東海林は二本ある剣の片方を投げた!!!

しかしその軌道は明らかにユゴーの右にズレている!!

百目鬼「外した...!」

東海林「ううん」

百目鬼「?」

 


ブスッ...!!!!

 


ユゴー「うぃえ...?」ブシュッッッ!

剣はユゴーにヒットし、血が吹き出る!

ユゴー「はぁ...いてぇなぁ...ウップ」

ユゴーは座り込む。

 


百目鬼「途中で軌道を変えたのか?まぁアンタの魔法なら出来るだろうが」

東海林「いや、違う。外させたのは魔者の”魔法”よ」

百目鬼「そうなのか?」

東海林「あの魔者の魔導書は、魔導書第四十五章 描写の書よ」

百目鬼「それって、元々魔裁組が持ってたやつだよな」

東海林「うん。どめきんが入ってくる前にいた人が使ってた」

東海林は少し顔を暗くした。

 


百目鬼「...」

東海林「あの魔者は恐らく影と背景を書き込んで、自分の位置を私達に錯覚させてるの!だから攻撃が当たらない。それにこの結界の霧。これも私達の距離感を絶妙にずらしてる」

百目鬼「...成程。トリックアート的な感じか」

東海林「そう!飲み込みが早い!さすがどめきん!」

百目鬼「どうりで俺の位置交換の座標(ピント)も合わなかったわけだ。でも、どうやって見抜くんだ?本来いる場所は」

東海林「多分あの術はマヂカラの消費が大きい。だから乱発はしてこない。それに、その術を出す時...」

東海林は百目鬼の頬に顔を近づける。

百目鬼「...?!」ドキッ

 


東海林「──────」

 


東海林は百目鬼に耳打ちする。

百目鬼「...!」

東海林「”その瞬間”を見逃さなければ...」

百目鬼「攻撃を当てられる...!」

東海林「うん...!」

百目鬼「よし、やってやる...!」

 


ユゴーはふらつきながら立ち上がる。

 


ユゴー「おい...お前さん達...魔者を前にイチャコラするなんて...いい度胸だねぇ...ウップ」

百目鬼「お前の方こそ、魔法使いを前にして潰れて座り込むなんて、余程死にたがりか?」

ユゴー「ウップ...言うねぇ...」

東海林「行くよ!どめきん!」

百目鬼「あぁ...!」

 

 

 

 

 

 

────


第477話 「ユゴー

 

────


《魔導結界・霧》

 


百目鬼ユゴーに攻撃を仕掛ける!!

 


百目鬼「...!!!」ビュンッ!!

ユゴー「ウップ」...!

百目鬼「フッ」

 


パッ...!

 


ユゴー「消えた...ウップ」

 


百目鬼ユゴーの背後に移動した!

百目鬼「(術は発動してない!紫のエレメントを纏わせて...!)くらえ!!!」

百目鬼がエレメントを纏った妖鋏・加具土命を突き刺す!!!

東海林「...(すごい...!武器にエレメントを纏わせるなんて...結構難しいよね?)」

 


ガシッ!!!

 


ユゴー百目鬼の鋏を受け止めた!!

百目鬼「...!」

ユゴー「攻撃は当たったな。でも止められちゃあ意味ないよねぇ...」

百目鬼「クソっ!!」

東海林「どめきん避けて!!」

百目鬼「...!」パッ!

そこへ東海林が畳み掛ける!

 


東海林「剣の舞!!!」

翼の生えた剣がユゴーの周りを廻る!!

ユゴー「ウップ...酔うなぁ」

ユゴー百目鬼の鋏を模写し、手に持った!

百目鬼「あいつ...!」

東海林「...!」

ユゴーは鼻歌を歌いながら剣の翼を切り刻んだ!

東海林「...!」

 


ユゴー「良い切れ味だな。ウップ」

百目鬼「ならどっちが本物か試してみるかぁ?!」

 


百目鬼は鋏をもってユゴーへ再び迫る!

 


その時、ユゴーは舌を右にペロリと出した。

 


百目鬼「...!!」

 


スカッ!!!!!

 


百目鬼は攻撃を空ぶった!!

 


百目鬼「クソっ...”見えた”のに...!」

ユゴー「ウップ」

 


バシューーーーーーン!!!!

 


ユゴー百目鬼の脇腹を切り裂く!!!!

百目鬼「うわぁぁぁぁ!!!」ブシャーーーー!

東海林「どめきん!!!!!」

 


百目鬼はふらつきながら座り込む。

 


ユゴー「どっちが酔いどれか分からんな。ウップ」

東海林は百目鬼に駆け寄る。

東海林「出血がすごい...今治すから...!」

東海林は傷跡に手を当てる。

百目鬼「...(クソっ...足引っ張っちまった...)」

 


ユゴー「ウップ。黙って見てると思ったら甘いよ」

百目鬼「...!」

東海林「...!」

 


ユゴーは大きなギリシャの石像のような絵を顕現させた!

ユゴー「”ミュージアム”...!」

 


ピカッ...!

 


バシューーーーーーーーーーーーン!!

 


石像の目から出た破壊光線が2人を襲う!

 

 

 

シュウゥゥゥ...

 


ユゴー「ん」

焼け焦げた地点に2人は居なかった。

ユゴー「どこだ?それとも灰になったか?」

 

 

 

パッ

 


2人は百目鬼の術で間一髪逃げていた。

百目鬼「ハァ...ハァ...」ブピュッ!

百目鬼は吐血した。

東海林「どめきん!もう術使わないで!」

百目鬼「でもアレうけてたら死んでたろ」ハァ...

東海林「...そうだね...ごめん!!ありがとう〜!!」

東海林は泣きながら百目鬼に抱きついた。

百目鬼「痛てぇよ!てかどういう情緒だよ!///」

東海林「とりあえず、止血は出来た。でももう動かないで」

 


東海林は立ち上がり、腕に魔導書ゲッターを装着しながら、寝転がる百目鬼に背を向けて言う。

百目鬼「いや、でもアンタ1人でやれるのか?」

東海林「少し戦って、戦いの勘が戻ってきた」

百目鬼「だとしてもアイツ相当やべえぞ」

東海林「私は誰よりもあの能力を知ってる」

百目鬼「...」

 


東海林「それに、舐めないでよね。私こう見えても元特級だから」

百目鬼「...ひとつ聞いていいか」

東海林「...?」

百目鬼「この戦いで、俺が術を使えるのは、何回だ?」

東海林「だから...!」

百目鬼「何回だ?」

 


百目鬼は真剣な表情で東海林に問う。

 


東海林「...ほんとにほんとにほんとにオススメしないけど...1回。1回だけなら!」

百目鬼「...」

東海林「流れ弾避ける為に取っておいて」

百目鬼「...あぁ」

 


ユゴー「優しい女の子が頑張って...偉いなぁ...ウップ」

東海林「そんなこと言ってられるのも今のうちよ」

ユゴー「その手袋着けて顔つきが変わったなぁ...なんかのおまじないか?」

東海林「おまじない...そうね。悲劇を終わらせるおまじないよ」

ユゴー「ウップ...いいねぇ」

東海林「そういえば、背中。気をつけたら?」

ユゴー「...?」

 


グサッ!!!!!!

 


ユゴーは背後から翼の生えた剣に刺された!!

 


ユゴー「ウップス!」グハッ...!

東海林「もっと苦しませてあげる」

グリグリグリグリ...

東海林は剣を操り、ユゴーの内蔵を抉る!

 


ユゴー「あぁ...痛てぇ...!」

東海林「優しい女の子だって思ったでしょ?私、結構獰猛なんだ」

ユゴー「...!」

百目鬼「...」

SOREMA -それ、魔!- 57

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SOREMA -それ、魔!- 57

 

 

 

 

 

 

「引導」

 

 

────


第464話 「一善、前へ」

 

────


《東京駅・丸の内駅前広場》

 


一善「...」

 


一善は、大きくなった結界の前に立ち塞がる。

 


魔者「ギェェェエ...!!!」

2体の魔者が一善に飛び掛る!

一善「つのキング」

 


グシャッ!!!

 


魔者2体はつのキングによって切り裂かれる!

つのキング「ウォーーーーーー!」

一善「...」

一善はつのキングの頭を撫でる。

そして、再び、結界を見つめる。

 


一善「...(今、同じような結界が、他にも現れてる。皆は無事だろうか。街の被害はどうなってる?)」

 


一善は、イヤホンから通信する。

 


一善「一善です。結界を見つけました。東京駅です」

 


ザザザザ...

 


返答はない。

 


一善「...(回線がパンクしてるのか...皆に届いてるか?)」

 


一善はマイクを切る。

 


一善「行こう。つのキング」

つのキング「ウォーーーーーー!!!」

一善が足を踏み入れようとしたその時...!

 


『ザザザ...一善!!』

 


一善「...!」

 


『ヒメ : 一善...!!』

一善「ヒメ!」

『ヒメ : 無事でよかった!』

一善「...うん!」

『ヒメ : ザザザ...ファイト!』

一善「...!ヒメも!」

 


ブチッ

 


通信が切れた。

 


一善「...(いつもの結界と同じなら、この後外の世界とは連絡が取れなくなる...)」

つのキング「...」

一善「必ず帰ります...!」

 


ゾゾゾッ...

 


一善は結界に入る!

 


《上空基地》

 


ひえり「...!」

五百旗頭「どうかした?ひえりさん」

ひえり「今...一善さんの声が...うっすら」

五百旗頭「...」

 


ひえりは東京駅の方向へ目をやる。

 


ひえり「!一善さんは、東京駅の結界の中かと!!マヂカラの痕跡が残ってます!」

五百旗頭「今現在の皆からの連絡を整理するとこうなるわね」

 

 

 

【ノベルウォー現在の動向】

・渋谷(結界・炎)

ジャスティン vs サド

 


・池袋(結界・煙)

莉茉 vs クリスティ

はるか、結界外

 


・上野(結界・霧)

東海林・百目鬼 vs ユゴー

美波移動中

 


・新宿(結界前)

麗美・京金

 


・品川(結界前)

幸二・三太郎

 


・東京(結界前)

一善

 


・表参道

虎走 vs アール・カルマ & 魔者数体

 


・上空基地

五百旗頭・ひえり

ヒメ、外へ

 

 

 

 

 

 

────


第465話 「朱里」

 

────


《上空基地》

五百旗頭「他のメンバーの居場所は?」

ひえり「はい。九頭龍坂さんと岩田さんが九段下付近で、魔者の相手をしています!」

五百旗頭「粟生屋君は?」

ひえり「粟生屋さんは...えーっと...」

ひえりは粟生屋さんを探す。

五百旗頭「通信してみるわ。粟生屋君に」

 


五百旗頭が、粟生屋に通信しようとしたその時。

 


ウィーーン

 


善能寺「仕掛けてきたわね...」

五百旗頭「...!善能寺さん!」

ひえり「...!」

 


善能寺「ごきげんよう。そんな呑気に挨拶している場合ではないけれど」

五百旗頭「はい。東京が混乱しています。前代未聞の大事件」

善能寺「私が魔法協会のトップに就任してから、今日が一番の一大事よ」

善能寺は、所々煙の上がる東京の街を眺めた。

そして、目を瞑り手を合わせる。

 


善能寺「今回のことで、もう犠牲者が出ています。皆も頑張ってくれているけれど、それぞれに出来ることは限界がある...」

五百旗頭「...」

ひえり「...」

善能寺「白鶯君...貴方が望む世界は、どんなものなの...?」

五百旗頭「...」

 


善能寺はそう呟き、一呼吸おいて続ける。

 


善能寺「これまでに魔法の犠牲になってしまった人の数は数しれない。今日まで悲しみの連鎖は繰り返されてきた。でも、今日、私はそれを終わりにしたい」

ひえり「...!」

五百旗頭「...!」

善能寺「私は、こうやって安全な所で皆に託す事しか出来ない...剣を振ったり、魔法を使うことが出来ない...」

 


善能寺は、視線を少し上へ向けた。

 


善能寺「だから...どうか皆さん...!魔者を...魔法を...今日で終わらせて欲しい...!」

五百旗頭「...皆同じ思いです」

ひえり「...」

ひえりは、何かを思い出して小さく涙を流す。

 

 

 

 

 

 

渋谷

 

 

 

 

 

 

《魔導結界・炎》

ジャスティン vs サド

 


ジャ「...」

ジャスティンはサドを前に、策を練る。

 


ジャ「...」

サド「...攻撃して来ないのか?」

ジャ「フッ。余裕だな。ならお言葉に甘えて...!」

 


ビュンッ!!

 


サド「...!」

ジャスティンは、一瞬でサドの背後に回る!

 


ガンッッッッ!!!

 


ジャスティンは、サドの脊柱に強烈な前蹴りを食らわせる!!

 


サド「ぐはっ...!!」

ジャ「まだまだぁ!」

ジャスティンは何度もサドを蹴りつける...!!

サド「...!!」

ジャ「うぉぉぉあ!!」

 


ドッカーーーーーン!!!

 


サドは、燃えるコンクリートの壁に突っ込んだ!!

 


パラッパラッ...!!

サド「ハァ...成程...」

ジャ「人なら死んでるぜ、もう」

サド「魔者で良かったよ」

ジャ「こちらこそ」

サド「は?」

ジャ「しぶとい方が嬲り殺し甲斐が有る...!」

サド「...!」

 


ジャ「お前は覚えてるか...?7年前のクリスマス...!」

サド「はて」

ジャ「お前ら魔者にとっては大したことの無い年月だろうが...俺にとって今日までは長い日々だった...!」

サド「何の話をしている?仇がどうのと言っていたが?」

ジャ「覚えてないか?お前が7年前に殺した、赤茶の髪の少女を...!」

サド「...?」

 


ジャ「”朱里”。お前が殺した少女の...俺が愛した”親友”の名だ!!!!」

サド「...?!」

 

 

 

 

 

 

 


第466話 「引導」

 


《魔導結界・炎》

 


ジャスティンは、サドに高速で接近し胸ぐらを掴む!!

サド「...!」

ジャスティンは、胸につけていたペンダントを出し、卵形になっている飾りを開く。中には赤茶の髪の少女の写真が入っている。

ジャ「見ろ!お前が殺した!まだ18歳だったんだぞ!!!」

サド「?」

ジャ「何故殺した?!何故だ!!何故なんだよ!!!朱里は誰にでも好かれるような、健気で優しい女の子だった!!なんで殺されないといけなかったんだよ!!!」

サド「...煩い」

ジャ「!!」

 


サドはジャスティンの手を振り払い、ジャスティンを蹴り飛ばす!!

 


ドカッ!!!!

 


ジャ「...!!!」

 


蹴り飛ばされたジャスティンは壁に当たり、地面に尻をつく。

ジャスティンは胸のペンダントをしまおうとするが、そのペンダントが既に自分の首元から離れていることに気がつく。

 


ジャ「...?ない...!」

ジャスティンが辺りを手探りで探していると、目前にサドが現れ、顔面を蹴りつける!!

ジャ「ぐはっ...!!」

 


サド「気が動転して正気で居られなくなったか?魔法使い。目の前に俺が居るというのに」

ジャ「...!」

ジャスティンは口から血を流し、サドを睨み上げる。

 


サド「お前が探しているものはこれか?」ジャラ...

ジャ「...!!」

サドは、ジャスティンのペンダントを引きちぎっていたのだ。サドはペンダントを手からぶら下げ、ジャスティンに見せる。

 


ジャ「...(俺としたことが...くそっ...!)返せ!!」

サド「...」

サドは、ペンダントを怪訝な目で見る。

 


サド「...古いな」

 


ポロッ...

 


サドは地面にペンダントを落とす。

ジャ「...!」

サド「...」

 


グ    シ    ャ    ッ   !!!!!!

 


ジャ「!!!」

サドはペンダントを踏み潰し、ペンダントは粉々になってしまった。

 


キラキラ...

 


サド「お前のような年頃の男が着けるにはちと古臭くないか?もっといいものを与えてやろうか?」

ジャ「.........」

サド「色合いや形状、全て似合っていなかった。良かったな」

ジャ「お前......」

サド「?」

 


ジャスティンから白いオーラが勢いよく発出する!!!!

 


ボワァァァァァァ!!!

 


サド「!!!」

 


サドは、辺りの瓦礫と共に吹き飛ばされる!!

 


ジャ「...」

体全体に白い閃光を纏ったジャスティンは、サドへ近づいていく。

 


サド「...(先程に比べてマヂカラ量が増している...?)」

ジャ「例えこの身滅びようと、神がお前を赦そうと...」

サド「...?」

ジャ「お前が死のうと、俺はお前を許さない」

サド「...ほぅ」

 


ジャ「...(少しばかり早いが、今日はまだ”切り札”がある。出し惜しみなく”覚醒させてやる”(おこしてやる))」

サド「...」

ジャ「死んでも覚えておけ、俺は、白のファンタジスタ。究極のエレメントの使い手」

サド「?」

 

 

 

ジャ「お前に引導を渡すのは、俺だ!!!」

 

 

 

サド「...!!!!」

 

 

 

 

 

 

────


第467話 「眩い光」

 

────


回想──────

 


18の歳のクリスマス。俺(ジャスティン)は、親友であり、想い人の朱里とデートに出かけていた。

 


《東京某所のイルミネーション》

 


ジャスティンと朱里はイルミネーションの中を並んで歩く。

 


朱里「護ってさぁ、彼女とかいないの?」

ジャ「え、いや、いないけど?」

朱里「だよねぇ〜。だって、いたらこんな日に私なんかと遊ばないもんね〜」

ジャ「あっ。うん」

朱里「...」

ジャ「...」

朱里「そういえばさ、もう”理子さんの施設”で働いて1年以上経つでしょ?どう?最近は」

 


理子さんの施設。魔裁組のことだ。朱里には魔法の事は話してない。姉さん(理子)との関係は話したが、魔裁組の事は、姉さんも働く教育施設として話を通している。そもそも、俺がこの時に魔裁組でしていたことは、研究班の雑用みたいなもので、実戦の訓練はしていなかったから、実質本当のことを言っているようなものだった。

 


ジャ「あっ。うん!いい感じよ〜」

朱里「何よ。いい感じって笑」

ジャ「いや。楽しいなぁみたいな?」

朱里「ひょっとして、好きな人でもいる?その施設に」

ジャ「あっ、いや!」

 


朱里と俺は、中学で出会った。

カナダで生まれた俺は、友達と呼べる友達もおらず、日本の文化にもさほど馴染めずにいた。

姉さんは時々気にかけてくれていたが、俺は基本的に孤独だった。

そんな時、唯一と言っていい友達が朱里だった。

朱里は、1人でいる俺に話しかけてくれた。他にも話しかけてくれる人はいたけど、不慣れな対応から、去ってしまう人が多かった。

でも朱里は、何度も何度も俺に話し掛けてくれた。

 


朱里は友達が沢山いた。休み時間も放課後も、周りには男女問わず友達が沢山いて、先生達からも愛されるような人だった。

 


そんな朱里が自分に話しかけてくれて、俺は素直に嬉しかった。そしてどんなときも、朱里は優しかった。

 


朱里「護はさ、幸せになるべき人だよ」

ジャ「え?」

朱里「私ね、護と一緒にいると楽しいの。落ち着くの」

ジャ「...」ドキドキ...

朱里「幸せには限りがあるのかな?だから、誰もが幸せになれるわけじゃない、不平等な現実がある」

朱里は左胸に手を当てて話す。

ジャ「...どうしたの?」

朱里「いや、なんでもないよ。このイルミネーションの一つ一つの光みたいに、たくさんの命が今も光ってるんだなって思って...ね」

ジャ「...なんか、ロマンチックだね」

 


突飛推しもない言葉に、俺はまともに答えることが出来なかった。

 


朱里は少し間を置いて再び切り出す。

朱里「護も恋とかするんだねぇ〜。中学の時、あんなに静かだったのに、マセちゃってさ〜!」

朱里はジャスティンを肘でどつく。

ジャ「いや、いないって!」

朱里「え、いないの?」

ジャ「うん。そういう感じで見てないし、皆のこと」

朱里「え、じゃあ、こんな歳になっても、恋愛とかしたことないの??」

ジャ「(マセてるとか言ってた癖にどっちだよ)」

朱里「ねぇ!どうなの!!」

 


朱里は、ジャスティンの顔をじーっと覗き込む。

 


ジャ「...(ここで言わないと...!)」

朱里「じっー」

ジャ「お、俺は...!」

 


その時だった!!!

 

 

 

 

 

 

────


第468話 「No title」

 

────


回想──────

 


《東京某所のイルミネーション》

 


朱里「ねぇ、どうなの!」

 


朱里は、ジャスティンの顔をじーっと覗き込む。

 


ジャ「...(ここで言わないと...!)」

朱里「じっー」

ジャ「お、俺は...!」

 


その時だった!!!

 


キャーーーーーー!!!

 


遠くから悲鳴が聴こえる!!

 


朱里「ん?なにか聞こえた?」

ジャ「あっ...え?」

 


俺は、この時、自分の心拍音しか聴こえない程に高ぶっていた。咄嗟に俺は辺りを見回す。

 


一般人「誰か来て!!!人が!!」

ジャ「...!」

朱里「...!」

ジャ「ちょっと見てくる!!」

ジャスティンは、声のする方へ人をかき分けて走った。

朱里「ちょ、ちょっとって!護!?」

 


ジャスティンが駆けつけると、そこでは人が血を流して倒れていた。

 


ジャ「...(事故か?まさか、魔者の仕業じゃないだろうな...?)」

 


ジャスティンは、マヂカラが見える半透明のシートを目元にかざし、遺体を見る。

ジャスティンはまだ魔法使いではないので、マヂカラが見えない。

 


ジャ「...!」

ジャスティンは遺体の一部にマヂカラ痕らしきものを発見する!

ジャ「...!(これは、魔法でやられてる...!)」

 


一般人「とりあえず、警察と救急車を...!」

ジャ「いえ!皆さん早く逃げてください!!ここは危険です!!!」

一般人「?!」

ジャ「早く!!」

一般人「ひょっとして、やっぱり殺人とか...?」

ジャ「とにかくここは危険です!逃げてください!!」

一般人は我先にと逃げ出した!ジャスティンは、シートをかざしながら辺りを見回す。

ジャ「(スマホどこだ...?実働班の人に連絡しないと...)」

ジャスティンはシートを持つもう片方の手で、ポケットからスマホ取り出す。

追いかけてきた朱里は少し離れてその様子を見る。

朱里「ハァ...ハァ...護?!」

 

 

 

俺は、シートを通して、魔者を探した。マヂカラ痕に残ったマヂカラの強さから判断して、瞬間移動していなければ、魔者が近くにいてもおかしくないと思ったからだ。

 


朱里「ちょっと護?!何してんの??」

朱里はジャスティンの近くへ駆け寄る。

ジャ「朱里...!!」

ジャスティンは横目に朱里を確認する。

朱里「どうしたの?護?!何かあった?!」

ジャ「朱里!ここは危険だ、今すぐ逃げ...」

 

 

 

俺はシートを通して朱里を見た。

その時にはもう遅かった。

 

 

 

朱里の背後に、ガスマスクの魔者が立っていた。

 

 

 

 


────────────

 

 

 

 

 

 

────


第469話 「悪夢から醒めた悪夢」

 

────


数日後

 


《第2支部

 


ジャスティンは、暗い部屋に1人籠る。

 


ジャ「...」

 


俺は朱里を失い、途方に暮れていた。

そして、何も守れない自分の無力さに腹が立ち、力を欲しがっていた。

 


コンコン

ノックする音がする。

 


ジャ「!」

 


ガチャッ

 


皆藤「...護」

ジャ「...姉さん」

 


皆藤は、沈むジャスティンに声をかけにやってきた。

 


皆藤「...聞いた」

ジャ「...」

 


皆藤「私達が、もっと早く駆けつけられたら...」

ジャ「...」

皆藤「...ごめんなさい」

ジャ「...」

 


ジャスティンは、唇を噛み締める。

 


ジャ「姉さん。俺、悔しいよ...」

皆藤「...」

ジャ「俺が...俺が戦えていたら...」

皆藤「...」

ジャ「俺が強ければ...!」

皆藤「護...」

 


ジャ「俺、何も護れなかった...!!!」

ジャスティンは、大粒の涙を流し、潰れた声を絞り出した。

 


皆藤「...(私が、護に戦いを教えていたら、結果は違ったのかもしれない...護に力を与えていたら、もしかしたら...目の前にあるものは、残酷な現実だけ。起こってしまったことはもう変えられない...現実を塗り替えることは、これから行動を重ねていくことでしか出来ない...なら、せめて私ができることは...)」

 


ジャ「姉さん...」

皆藤「...?」

ジャ「俺に...魔法使いを教えてくれ...!」

皆藤「...!」

ジャ「もう、この手から救える命を零したくないから...!」

皆藤「...(護は強い。心が強い。護のしなやかで真っ直ぐな心なら、この魔裁組の光になってくれるかもしれない...!)」

 

 

 

《黒の孤島》

 


皆藤とジャスティンは特訓を重ねる。

 


ジャ「とぅ!はぁ!!!」

 


ゴーグルをつけたジャスティンは、動く木々の中を颯爽と駆け抜ける。

 


皆藤「...」

皆藤はその様子を見ている。

 


ジャスティンは、地面に尻をつく。

ジャ「ハァ...どう?姉さん?」

皆藤「...」

ジャ「姉さん?」

皆藤「...あ、うん...よかったよ!その調子」

ジャ「俺もこんなゴーグル付けなくてもさ、姉さんみたいに魔法が使えるようになりたいよ〜」

皆藤「...」

ジャ「俺、姉さんを超える最強の魔法使いをめざしてるんだ!」

皆藤「...そう」

 


思えばこの時、姉さんは元気がなかったような気がする。

チームの解散、東海林さんの入院、粟生屋さんの退部、朱里の事。全て抱え込んで、それでも明るく振舞ってくれてたんだと思う。

エレメントの研究も、俺や仲間のために、誰よりも時間を削って没頭していたと、後からなぎちんから聞いた。

 


皆藤「今、五百旗頭さんとエレメントの研究をしてるわ。完成したら、護にもその力を使って欲しい」

ジャ「うん!もちろん!」

 


皆藤は、しゃがんでジャスティンに優しく語り掛ける。

皆藤「今はそのための基礎固め。体術が出来ないのと出来るのでは大きく差がつく。魔法って、すぐに強くなれるような夢のような力じゃないからね」

皆藤は、儚く笑った。

ジャ「はい!」

皆藤は、両手の人差し指を、ジャスティンのこめかみにそっとおいた。

 


皆藤「大事なのは、イメージ。どんな時も、イメージすることが、前に進む原動力になる。これは忘れないでね」

 


ジャ「はい...!頑張ります!姉さん!」

 


ジャスティンは、胸にぶら下げた卵形のペンダントを握りしめて言った。

 

 

 

 


そして、二度目の悪夢が、俺に降り掛かってきた。

 

 

 

 

 

 

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第470話 「水」

 

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《第2支部

 


不死の書が盗まれた日。俺は魔裁組の一員として、辺りの捜索にあたっていた。

 


そして俺は、姉さんの訃報を聞いた。

 


五百旗頭「皆藤さんは...」

ジャ「え...?」

 


ーーーーーー

 


俺は泣いた。身体中の水分が枯れ果ててしまう程に泣いた。この世に神様がいるなら、どうしてここまで酷いことが出来るのか。

 


俺は怒った。

 


そして自分に言い聞かせた。

怒れ、怒りに支配される程に怒れ。この怒りを止めてはならない。どんな絶望に立たされても、前へ進むために。

 


その矛先は白鶯という男へ、そして、魔法というものが牙を剥くこの世界そのものへ向いた。

俺は決意した。この世から魔法を無くそうと。

魔法の無い、平和な世界を作ろうと。

 


ーーーーーー

 


ジャ「五百旗頭さん!!!」

五百旗頭「神野くん?」

ジャ「僕に力をください...エレメント、もう完成していますよね?俺に、俺にその力をください...!」

五百旗頭「...?」

ジャ「今の僕じゃ、まだまだなんです。俺はもっともっと強くなって、この魔裁組を強くして、平和な世界を作りたい。その為には、どんな力だって欲しい。だから!エレメントの力を俺にください...!」

 


俺は無我夢中でいた。土下座までした。

 


五百旗頭「...顔を上げて。神野くん」

ジャ「...」

ジャスティンは顔をあげずに耳だけ傾けた。

 


五百旗頭「エレメントはまだ未完成よ。だからあの力はまだ貴方に預けられない」

ジャ「...!」

五百旗頭「だから、もう少しだけ...」

ジャ「嫌です」

五百旗頭「...?」

 


ジャ「もう少しだけ待って欲しい。そう言うつもりでしたよね。でもごめんなさい。僕もう嫌なんです。待ってるだけだなんて...!」

五百旗頭「...!」

 


ジャ「いつ完成するんですか?まだまだなら、僕も手伝います...!僕にできることならなんだってする...!僕は今すぐに...力が欲しい...!だから...だから...!」

ジャスティンは、血走った目で五百旗頭に問いかけた。

五百旗頭「...(ここまで言うか...)」

 


ジャ「...」

五百旗頭「後悔しない?」

ジャ「!」

五百旗頭「しないんだったら、ついてきて。見せたいものがあるの」

 


俺はなぎちんに連れられて、研究室の奥へと向かった。

 


そこには、注射器のようなサンプルがいくつか並んでいた。

 


ジャ「これは...?」

五百旗頭「これが、エレメントの元となる、エレメント注射よ」

ジャ「注射...?」

五百旗頭「ええ。エレメントは、この注射を打つことで、誰でも使えるようになるの。1本を作るのにかなり時間を要するけど、将来的には、どんな人でも魔法使いと同じ力を手にすることが出来るものになるはずよ」

ジャ「凄い...」

五百旗頭「でもこれは未完成。まだ治験の段階なの」

ジャ「というと...」

五百旗頭「人体実験をして、これの効果を確かめたい」

ジャ「...!」

 


俺は唾を飲んだ。この注射1つで、俺の運命が変わるかもしれない。勢いでここまできたものの、ここで改めて現実と向き合う。だが、迷ってはいられない。

手を伸ばすべきだ。俺の心の声がした。

 


ジャ「その治験...僕が受けてもいいですか?」

五百旗頭「...!」

ジャ「その注射、もし成功したら、俺は魔法使いになれるんですよね?」

五百旗頭「そうね。体にはマヂカラが流れ、成功したら技や魔法のようなものを使えるようになるでしょうね。魔具や体術を強化する効果がある」

ジャ「僕にやらせてください...!もう、後悔したくありません...!俺はこの力で、姉さんのような強い魔法使いになりたい...!」

五百旗頭「後悔しない?失敗したらどうなるか分からないわ。それでも?」

ジャ「はい。五百旗頭さんや姉さんが作ったものを俺は信じます」

五百旗頭「...わかったわ」