SOREMA-それ、魔!- 11

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SOREMA-それ、魔!- 11

 

「この街の涙」

 

────

 

第91話 「腹拵え」

 

────

 

《第1支部

 

一善・三太郎「腹減ったぁ、、」

千巣「よし、もう夜だし、腹ごしらえすっか」

一善・三太郎「!!!」

 

千巣「今日はカレーかな」キラリン!

一善・三太郎「カレー!!」

 

豊洲

 

千巣は、一善と三太郎を”とある場所”に連れてきた。

一善「オフの時はメガネなんですね」

千巣「いや、俺”見えすぎちゃう”からさ、これは特殊なメガネ」

一善「?なるほど?」

三太郎「てか、遠くね?俺めちゃくちゃ腹減ったんだけども...?」グゥゥ...

一善「確かに、これどこ向かってるんですか?」

千巣「俺の家」

 

一善・三太郎「マジか!!!」

 

豊洲/とあるタワーマンション

 

千巣の家は、タワーマンションの高層階の一部屋である。エレベーターに乗る

 

一善「ここに住んでるんですか?」

千巣「まぁ、いくつかある家の1つだよ」

三太郎「もしかして、クソ金持ちか?」

千巣「まぁ父も母もいない割には」

三太郎「居ない?」

千巣「2人とも病気でぽっくりいっちまった」

一善「ってことは、ここに1人で住んでるんですか?」

千巣「いや、」

 

ピンポーン!

 

三太郎「50階?!」

一善「ホントにあるんだ、50階なんて...」トホホ

三太郎「めちゃくちゃ景色良さそうだな!」

 

千巣はいくつかのドアを通り過ぎ、1つのドアの前で止まった。

 

千巣「ここね」

一善「ん?表札の名前が違う」

そこには”堆”という文字が書かれていた。

三太郎「ん?堆(あくつ)?あんたの苗字、せんすじゃねえの?」

千巣「せん”の”すな」

一善「てか、堆ってよく読めるね」

三太郎「”あくえり”っているだろ。堆ひえり。いろは坂46の!知らねぇの?」

一善「さぁ」

三太郎「お前人生損してるな。あんなに可愛い子知らないなんて。俺めちゃくちゃ好きなんだよなぁ〜あくえり」

一善「ふーん」

 

ガチャ

 

千巣「ただいま〜」

 

???「あ、万くんおかえり〜」

 

一善「おじゃましま〜!!!!?!!?!」

三太郎「え、お前は?!?!!!!」

???「え?な、なんでアンタらが?!?!」

一善「それはこっちのセリフで...」

 

まさかまさかの展開に────?!

 

────

 

92話 「カレーライス」

 

────

 

豊洲/堆家》

 

一善「おじゃましま〜!!!!?!!?!」

三太郎「え、お前は?!?!!!!」

???「え?な、なんでアンタらが?!?!」

一善「それはこっちのセリフで...」

 

三太郎「お前、空見麗美じゃねえか!!!」

麗美「ちょっと!どういうことよ!!」ドン!

 

そこには、エプロンをした麗美が居た!

 

麗美「ねぇ、誰か呼ぶなら連絡してって、言ったよね!」

千巣「あれ、言ってなかったっけ」

三太郎「いや!まずなんでお前がいるんだ?」

一善「もしかして...」

三太郎「もしや...2人って...」

 

麗美「は?もしかして、”付き合ってる”とか思ってるんじゃないわよね?違うから!誰がこんな人と!」

千巣「(こんな人って、酷くない?)」

 

麗美「私達、幼なじみなの」

一善「え?」

三太郎「そうなのか?」

千巣「俺たち千巣家と、麗美の空見家は、どちらも”赫魔導書”を保持する魔法使いの家系として古くから交流があってな。今もこうやってよく家に行き来してる訳よ」

麗美「ちなみに幸二くんのとこもね」

一善「え、お2人とも、赫魔導書の履術者なんですか?」

麗美「そうよ」

 

三太郎「※あかまどうしょってなんだ?」

千巣「ほいよ」ポン

千巣は魔導書をテーブルに置いた。

一善・麗美「(すげぇ軽いテンションで出てきたァ!)」

三太郎「すげえ!なんか赤いぞ?!これ本物か?!」

千巣「うん。そだよ

※赫魔導書・・・4巻参照

 

一善「こんな普通に本棚に置いといていいんですか?」

千巣「さすがにこんなに高いところまでマヂカラは宿らないし、ここ豊洲じゃん?海近いし、まぁ魔者は来ないね」

一善「なるほど」

 

──────

 

三太郎「じゃあ2人とも、生まれた時から魔法使えるのか?」

千巣「まぁな。麗美が魔裁組に正式に加入したのはここ数年だけどな」

麗美「ほんっと!私はすぐにでも入部したかったのに、親がうるさくて!生まれた時から魔法使えるんだから、自分の身くらい守れるっつうの!」

一善「何歳から魔裁組って加入できるんですか?」

千巣「10歳。最初は殆ど任務とか付き添いで行くかどうかくらいだけどな」

一善「そうなんですね」

 

千巣「そうだ、最近麗美の家族に会ってないなぁ、お母さん達によろしく言っといてよ」

麗美「シドとララも、万くんに会いたがってたよ?」

千巣「また今度遊び行くって言っといて」

 

麗美「てかもう!人連れてくるなら言っといてよ」

千巣「ごめん。カレー足りなければ、Uber頼むから」

麗美「6人前まではあるわよ!」ドン!

一同「有能ッ!」

 

麗美「勘違いしないで。”3人前”を2日分で作ってただけだから」

三太郎「3人前?2人前じゃなくて?」

 

ガチャ!

 

一善「?」

???「ただいまー」

三太郎「(ん?どっかで聞いたことのある声)」

 

麗美「あ、おかえりー」

千巣「おかえり」

 

すると、黒い帽子を外しながら、1人の美少女がリビングにやってきた。

ひえり「わーお。人がいっぱいだぁ」

千巣「こいつら俺の後輩」

ひえり「へー!はじめましてだぁ」

一善「ど、どうも」

三太郎「え、え?!?!?!」

 

ひえり「初めまして。堆ひえりです」

 

一善「?!」

三太郎「え?え?!本物?!?!」

ひえり「うん!汗と涙と輝く笑顔!塩分チャージ!あくえりです!!」

三太郎「本物だぁーーー?!?!?!」

千巣「あ、これ俺の妹」

三太郎「妹ーーーーーー?!?!!!?!」

 

────

 

第93話 「アニキ」

 

────

 

豊洲/堆家》

 

三太郎「おいおいおいおい!本当か?本当に妹なのか?本当にあくえりの兄なのかあんた?」

三太郎は、千巣の襟元を掴み、揺らしながら言った。

 

千巣「フラフラフラ」

麗美「本当よ。この2人は兄妹なの」

ひえり「はい!」

 

一善「でも、苗字が違いますよね。堆さんと千巣さん」

麗美「生前にご両親が離婚されているの。不和とかではなく、家庭のためにね。魔法使いの家系では、直系と傍系で苗字を変えておくことはよくあるのよ。魔法を広めすぎないためにね。それに、ひえりちゃんの職業柄、色々嗅ぎつけられないようにっていう配慮もあるのよね」

ひえり「そゆことでーす」

三太郎「わっかんねぇー!!」

一善「なるほど」

三太郎「けど、血は繋がってるってことか!」

千巣「そう」

三太郎「今日から、アニキって呼ばせていただきます」

千巣「無理」

 

麗美「もうすぐカレー出来るけど、何?アンタらも食べるの?」

一善・三太郎「いただきます!!」フガ!

 

〜カレー完成〜

 

一同「いただきますー!!!」

千巣「うまい!うまい!うまい!」

麗美「黙って食え」

三太郎「えへへへ////」ニヤニヤ

ひえり「....」ジトー

一善「(あんなに腹減ってたのに、ひえりちゃん見すぎて一口も減ってないッ!)」

三太郎「最高っス。アニキ」

千巣「マジ無理」

 

一善「ひえりさんは、魔法については知ってるの?」

ひえり「うーん。ちょっとだけ見えるけど、ほとんど一般人と同じですねぇ。お兄ちゃんが何やってるかもいまいち分からないし」

三太郎「ひえりちゃん!後でサインちょうだい!」

ひえり「1回5000円で」

三太郎「塩対応!!(でもこれもいい!)」

 

一善「千巣さんも、本好きなんですか?」

千巣「なんで」

一善「本棚があったので」

ひえり「私も、お兄ちゃんの影響で最近読書するようになったよ!」

千巣「おーなんて本?」

ひえり「”やはり私はそこらの青春ラブコメよりもモテている”」

千巣「まさかのラノベ」ワタシモイル...

 

一善「千巣さんは、どんな能力を使うんですか?」

千巣「第四十六章、知覚の書」

三太郎「フォーティーシックスじゃん!」

麗美「そこかよ」

一善「(数字が大きい...)どんな能力なんですか?」

千巣「ま、また今度教えるよ」

 

 

ひえり「麗美ちゃんー食べ終わったらスマブラやろ〜」

麗美「いいけど、あんた弱いじゃん」

ひえり「麗美ちゃんに負けないように練習したんだもん!」

麗美「ほんとか〜?片付け終わったら相手してあげる」

千巣「俺もやろ」

三太郎「自分もいいっスカ?w」

麗美「その話し方キモイやめろ」

 

────

 

第94話 「この街の涙」

 

────

 

豊洲/堆家》

 

22時頃────

 

麗美「じゃ私帰るわ」

千巣「おう。ありがとな、色々」

ひえり「麗美ちゃんまた来てね!」

麗美「じゃあねひえりちゃん。仕事頑張ってね」

ひえり「はい!スマブラも今度は負けません!」

麗美「はいはい」

一善「俺らも帰ろう」

三太郎「え、もうちょっとここにいない?」

一善「ダメだよ迷惑だ」

三太郎「ぴえん、、」

千巣「じゃあ明日また」

三太郎「明日もよろしくお願い致しますアニキ!」

一善「(こいつ完全に特訓後のひえりちゃんに味をしめているゥ!)」

ひえり「また来てくださいね?」

三太郎「うん!ありがとー!」

ひえり「一善さんに言ったんです三太郎さんはもういいです」

三太郎「ぐはっ(でも認知貰えたからいい...!)」

 

ガチャッ

 

3人は帰った。

ひえり「…」

千巣「ふぅ…」

 

ひえり「なんか、一気に減ると寂しいね」

千巣「そうか?風呂入ってくるわー」

 

ギュッ!

 

千巣「…?!」

ひえり「お兄ちゃん...」

千巣「おい、いきなりどした」

 

ひえり「いつまでやるの?魔法使い...」

千巣「それは、魔法がなくなるまで...」

ひえり「...」

千巣「?」

ひえり「本当は、もうやめてほしい...でも」

千巣「...」

 

ひえり「...お兄ちゃんが血を流した分だけ、この街の涙がひとつ減るんだよね」

千巣「...どうだろうな」

 

ひえり「私たちのために、ありがとう」

千巣「...おう?」

 

ひえり「お兄ちゃん...死んじゃ嫌だよ...?」

千巣「ふっ。安心しろ。俺は死なん。俺は弱いから、負けそうになったら逃げて帰ってくる」

ひえり「ははっ。ダサ笑」

千巣「...笑」

 

──その日から、一善と三太郎は千巣の元で特訓を続け、2週間が過ぎようとしていた。

 

《東京駅》

 

とある日の昼下がり。一善と三太郎は、千巣の指示で、東京駅に集められた。

一善「言われたんで来ましたけど、今日は特訓ですか?」

千巣「いや。魔者狩りだ」

三太郎「お!久々だぜ!」

一善「駅に(魔者が)出るんですか?」

千巣「いや、違う。お前らこれ、」

 

千巣は新幹線のチケットを2人に渡した。

三太郎「え!これ新幹線のチケット!」

一善「?」

 

千巣「今から京都行くぞ!」ド ン !

 

────

 

第95話 「魔者狩り遠征」

 

────

 

《新幹線車内》

アナウンス「次は、品川〜品川〜」

 

一善「京都に行くんですか?」

千巣「あぁ」

三太郎「アニキ、京都に魔者がいるってのか?」

千巣「信じ難いが、多分いるな」

一善「魔導書は関東にしかないんじゃ...」

千巣「出土したものは基本的に東京を中心に見つかってるんだが、人の手でどっかに運び込まれた可能性もあるだろ?」

一善「てことは、日本のどこにでも魔者が出てもおかしくないってことですか?」

千巣「いや、世界中だ。この間魔者が出たかもとの事で、ロサンゼルスに行ってきたし(ハッタリだったけど)」

一善「今後探すの苦労しそうですね」

千巣「ま、街全体にマヂカラ反応が出るのは東京だけだし、殆どは東京にあると思うけどな。魔者が海や山を超えて移動できるとは到底思わんし」

一善「なるほど」

 

千巣「ま、今回の任務は例外中の例外。本当に魔者かは分からんが、油断せず心してかかるように」

一善「はい」

三太郎「京都!!テンション上がってきた!!」

千巣「(言ってる側からお遊び気分だなこいつ…)」

 

《第2支部

はるか「えー?!アイツら京都行ってんの?!いいなーー」

莉茉「京都で起きてる不審な死亡事故が、もしかしたら魔者のせいなんじゃないかって」

美波「京都にはマヂカラを監視するレーダーとかないから、憶測かもだけどって渚ちゃんが言ってた」

麗美「でも、なんか京都って、魔者なんかより恐ろしい怨念とかこびりついてそうじゃない?雰囲気的にw」

はるか「ちょ、怖いこと言うのやめれ」

 

《京都》

夕方、3人は京都駅に着いた。

三太郎「京都だーーーー!!!!」

一善「久しぶりだ京都!で、千巣さん、魔者を探すんですよね?」

千巣「あぁ。京都にはマヂカラを測る設備とかないから、俺たちの感覚だけが頼りだ」

一善「それ、厳しくないですか」

三太郎「人も多いし、京都って言ったって広いぞ?」

 

千巣「いや、死亡事故が起こってるのはだいたい同じエリアだ。だから、おおよそ目星はついてる」

一善「なるほど?」

 

千巣「それに、”こういう案件”だからこそ、俺が来た」

三太郎「?」

 

────

 

《京都/四条大宮

 

千巣「まず、死亡事故が起こっているのは、全て京都の市街地の中。この地図を見てくれ」

3人は、京都の地図を覗き見た。

三太郎「この地図、手作り?すげえな」

千巣「小町に作ってもらった」

一善「(あの京都弁の女の人か...)」

三太郎「その小町って人連れてくれば良かったんじゃね?」

千巣「なんか推しの舞台見に行ってるらしいぞ」

三太郎「その気持ちはわかる」

 

千巣「この九条通り、西大路通北大路通、そして、鴨川。この4つの線に囲まれたエリアの中に、魔者は潜んでいる」

一善「なるほど」

千巣「特に仏閣や、文化物の周辺は注意だ。被害にあった'若'者は、全員文化物付近で死亡している」

三太郎「要はこの中でマヂカラを嗅ぎ付ければいいんだね!」

千巣「人間に擬態できる個体の場合、マヂカラの気配を抑えてる可能性もある。注意しろ」

三太郎「銀座の時とおんなじだな!わかった!」

一善「俺はこっちから探します!」

 

3人は、バラけて魔者を探し出した。

 

千巣「さぁ、見つけてやるぞ?魔者さん」

 

キィィィィィン!!

 

千巣「四十六眼!!!!!」

 

千巣の虹彩が紫に光る!

 

この妖しい眼の輝きは────?!

 

────

 

第96話 「四十六眼」

 

────

 

時刻は午後9時、3人は集合と解散を繰り返し、マヂカラの反応を探す。

 

《京都/京都タワー

三太郎「魔者どこだー?東京と違って全然マヂカラを感じない!とはいえ、高いところの近くは居ないか」

 

《京都/北野天満宮

一善「つのキング。ここら辺にマヂカラの反応はあるか?」

つのキング「ウォーーーー!!」

一善「(やっぱり、言葉では何を言ってるかわからない...)」

 

 

回想──

 

 

《第1支部

一善「村松さん!疎通って、コツとかあるの?」

村松「...ない。私は昔からできたから」

一善「...そっか」

村松「...でも、一つだけ」

一善「ん?」

村松「心がけるのは」

一善「...?」

 

村松「良く聞こうとすること」

 

一善「...!(よく聞く...か)...それって、魔獣の声をってことかな?」

 

シーン...

 

一善「ってあれ?いない」

 

村松は姿を消していた──

 

────

 

《京都/北野天満宮

一善「(よく聞く...)」

???「ちょっと、そこの人!大きな虫を連れてはる!」

一善「?」

 

《京都/四条河原町

千巣「(マヂカラの通った痕跡が”視える”。近くにいるのか?)」

 

千巣万之助は、蒼魔導書”赫魔導書”第四十六章 知覚の書の継承履術者である。この能力を継承した者には、特殊な目”四十六眼”が継承される。この眼は様々な能力の使用を可能にし、その1つに、”マヂカラの可視化”が存在する。

 

千巣「鴨川の方か?」

 

千巣、鴨川方面に進む。

 

 

《京都/京都御所

三太郎「広いなぁ…!でも、マヂカラは感じられねぇな。ほかあたるか!」

 

《京都/四条大橋

千巣「...?」

千巣の目線の奥に現れたのは、マヂカラを全身に纏った、老人の様な魔者だった。

 

千巣「...見つけたぜ」

 

魔者は、俯きながら、こちらへ歩いてくる。

千巣「...」

魔者「...」

 

すれ違いざまに呟く。

千巣「...バッチリ見えてるぞ。おじいちゃん」

 

魔者「?!」

 

────

 

第97話 「月下の少女」

 

────

 

《京都/北野天満宮

 

一善「君は...?」

 

一善に話しかけたのは、赤い着物に身を包んだ、一善と同じか少し下くらいの少女だった。名前をまつりと名乗った。肌の色は透き通るように白く、後頭部に作ったお団子に刺さった簪は、四葉のクローバーを象っていた。

 

まつり「あんた、お名前は?」

一善「油木一善...これ(つのキング)、見えるの?」

まつり「うち、昔からけったいなもんが見えてな」

一善「...(この子にはマヂカラが流れているのか)」

まつり「せや、一善はんやったっけ?あんたに見せたいもんがあるんや」

一善「?」

まつり「こっち、きよって!」

 

まつりは、細く綺麗な指を一善の手に絡ませ、下駄の音を鳴らしながら走り出した!

一善「///ちょ、あの!君!俺はやることが!」

まつり「ややこしいことはあとや!はよう!」

一善「!!!」

一善は、まつりに連れられ、月明かりに照らされた京の都を走る。

 

《京都/四条大橋

 

千巣は、翁の魔者と対峙する。

魔者「儂が見えるのか?」

千巣「あぁ。ばっちり」

魔者「儂に用か?(この小僧...何者だ)」

千巣「物騒な事が”京都(ここ)”で起こってると耳にして...お祓いに馳せ参じた迄」

 

魔者「なるほど...稀にいる、魔導の導き(=マヂカラ)を得たただの小童かと思えば、魔者狩りじゃったか)」

千巣「魔裁組を知ってるのか?」

贔薫「儂の心の安寧を乱す、悪しき存在よ」

千巣「...?」

贔薫「儂の名は贔薫(ひいくん)。”およそ100年前”、東の魔者狩りから逃げてこの地へ辿り着いた」

千巣「...!!!まさか、山を越えたのか?」

贔薫「険しい道もまた一興。この身も、一度は魔導の導きを失いかけた。だが魔者狩りに狩られる恐怖から逃れられるならば本望」

千巣「...そしてここに住み着いたって訳か」

贔薫「左様。京の都は、儂にとって宝。他の魔者も、魔者狩りもおらぬ。儂だけの都じゃ」

千巣「どういうわけか知らないが、まぁいい。若者殺しの犯人はお前だな」

贔薫「だったら何じゃ?都を出ていくつもりは無いぞ小童」

 

千巣「聞いてなかったのか?”祓う”っつってんだよ」ドン!

贔薫「...儂の安寧を汚すものは、命の灯火を消すまで...」ドン!

 

《京都/祇園

三太郎、舞妓とすれ違う。

三太郎「エヘ。やっぱいいなぁ京都///…ん?なんか向こうからマヂカラの反応一瞬があったような。アニキか?一善か?それとも魔者か?とりあえず行くぞ!」

 

────

 

第98話 「”走”」

 

────

 

《京都/四条大橋

 

贔薫「ハッ!!!」

贔薫は、空間を殴った。すると、衝撃波が千巣へ向かって飛んだ!

千巣「(衝撃波か)」ヒュン

贔薫「上手く避けたな。ならこれはどうじゃ、三十章 波動の書 虚空百裂拳舞!」バンバンバンバンバ...!

 

贔薫は高速で、何発も衝撃波を出した。

千巣「”運”!夜叉!!」シャキーーーン

千巣は、剣で降り注ぐ衝撃波を相殺した。

贔薫「防ぎきれるか?」

キンキンキンキンキン...!

千巣「(連撃か!人通りは少ないとはいえ、弾いたマヂカラで被害が出たらまずい!)」

贔薫「もっとじゃ!!」バンバンバンバンバンバン

千巣「(キリがない...!)」キンキンキンキンキンキンキンキンキンキ

 

するとそこに、若い男女と”虫”が現れる。

まつり「あっこや!」

一善「!!!千巣さん!と魔者?」

千巣「(一善の声?!誰かと一緒か?)」キンキンキンキンキン

贔薫「なんじや?」バンバンバン

贔薫は、一善らの方向に衝撃波を一発放った。

 

ビュン!!

 

千巣「一善!避けろ!(そこにいるのは女の子か?当たったら死ぬぞ...!)」

一善「?!」

 

つのキング「ウォーーーー!!」

カキーーーン

 

つのキングは、贔薫の攻撃を弾いた。

贔薫「...魔獣使いか」

一善「ありがとう?!つのキング(何が起こったんだ?)」

つのキング「ウォーーーー!!」

 

まつり「あいつや!一善はん。あんた強いやろ?あのあやかし払ってくれはる?」

一善「...?!(この子、俺をこいつの所に?)」

千巣「一善!この魔者は、見えない衝撃波を飛ばす!気をつけろ!」

一善「見えない衝撃波?」

 

贔薫「虚空百裂拳舞!」バンバンバンバンバンバン!

一善「!!?!?!」

???「俺が君を守る!」

一善「(またこの声だ...!)」

千巣「一善!!」

一善「はい!(まずはこの子...まつりちゃんを守らないと...!)」

一善は、まつりに背を向け、贔薫の攻撃に構えた。そして、後ろに立つまつりの手を握った。

一善「捕まっててね。まつりちゃん」

まつり「///?!」

 

一善「”走”!」

 

パッ!

 

贔薫「消えた?」

贔薫の攻撃は、間一髪で2人には当たらなかった。

 

────

 

第99話 「蹴鞠」

 

────

 

四条大橋下》

シュゥゥゥ...

一善は、まつりと橋の下に移動した。

まつり「あんた、いけるか?」

一善「うん。大丈夫。まつりちゃん。連れてきてくれてありがとう。ここは危ないから、少し遠くに行ってて。勝ったら戻ってくる」

まつり「ほんま、守ってくれはってありがとう!怪我しいひんようにな」

 

そしてまつりは、飛んできたつのキングの頭を撫でた。

まつり「ほんま、かいらしいなぁ」

つのキング「ウォーーーー!///」

 

まつり「まってんで。一善はん」

一善「うん。ありがとう。まつりちゃん」

 

四条大橋

贔薫「(あの小童...何処へ...?儂も勘が鈍ったのお)」

千巣「(一善。走を使いこなせている。かなりの成長だ)」

贔薫「まぁ良い。一人一人片付けてやるかのぉ」

千巣「俺、弱いけどあんたよりは強いよ」

 

贔薫は、自らの腕に波動を纏った。

贔薫「戯言を抜かすなァ!極真肉塊拳舞!」バァン!

千巣「赤のエレメント...雄叫火!」

 

ドォン!

 

贔薫は、橋の手すりに飛び乗った。

贔薫「剃空飛行蹴撃!」シュッ!!!

贔薫は後ろへ飛び、虚空に蹴りをいれた。

千巣「(ちっ。蹴りも衝撃波になるのかよ)」

シャキーーーン!

千巣は、衝撃波を真っ二つに切った。

贔薫「虚空百裂拳舞!!」バンバンバンバンバンバン

千巣「面倒くさ!赤のエレメント!!唐紅!!!」

 

ボワッ!!

 

贔薫「...!(全ての攻撃が霧散した?!)」

千巣「(ここは危ない!せめて河川敷まで行ければ...!)」

贔薫「剃空飛行蹴撃!」

千巣「また蹴りか、なら...」

千巣は、脚にエレメントを纏った。

千巣「蹴鞠は俺も得意だぜ?赤のエレメント!血照天(けっしょうてん)!!」

贔薫と千巣は空中で蹴りあった。

 

バキボキ!

贔薫「(脚に亀裂が...!)」

千巣「吹っ飛びやがれ...!」

 

ドゴーーーーーン!!!

贔薫は、河川敷の砂利道にめり込んだ。

 

パラ...パラッ...

 

贔薫「お主...儂を怒らせたな」フラッ

千巣「こっちはとうにキレてるぜ?クソジジイ」

 

一善「千巣さん!!」

つのキング「ウォーーーー!!!」

 

パァン!!

三太郎「三太郎参上ーーーーー!!!!」ピューーン!

三太郎が、橋の上から飛んできた。

 

千巣「ふっ」

三太郎「アニキ、魔者京都にもいたんだな!」

千巣「あぁ。でも気をつけろ...こいつ、相当イカれてやがる」

 

────

 

第100話 「痴れ者」

 

────

 

四条大橋→鴨川河川敷》

千巣「(何がイカれてるって色々あるが、まずここは川の真横だぞ?!なぜ逃げ出さない?魔者は水が苦手って相場で決まってるだろ?山を超えるような魔者がビビることも無いのだろうが...)」

 

贔薫「...」

千巣「おいジジイ。退治しちまう前に一つ問うが、、なぜ殺した?」

贔薫「...?」

千巣「報告が上がっているのは3件だが、”それだけ長く”生きてるんだ。もっと殺してるな?」

三太郎「こいつ、どんだけ生きてるの?」

千巣「100年以上」

三太郎「マジかよ!不死身かよ!」

一善「魔者って寿命ないんですか?」

千巣「寿命はある。ただ、俺たちと違って個体差が激しく、人間の3倍以上生きる個体もある」

三太郎「やべえな」

 

贔薫「儂も無意味な殺生は好かぬ。儂が殺した者共は、全て儂の心の安寧を踏み躙った痴れ者共じゃ」

千巣「...?」

贔薫「都の汚れは即ち儂の心の汚れ。儂が葬ったのは、都を荒らしおった者や、宝に泥をつけた者など。どうじゃ、死んで当然であろう?」

三太郎「どゆこと?アニキ」

千巣「要するに、京都の治安を乱す奴が許せなかったってことだろ。ポイ捨て落書き騒音騒ぎ、ってとこか?」

贔薫「左様」

 

千巣「確かにどれも許される行為では無いが、お前のさじ加減でそれらを勝手に裁いていいということにはならない」

贔薫「儂はこの都の守り神じゃ。心の安寧を脅かさんとする者は何人足りとも排除するまで」

 

千巣「とことんクソだな」

三太郎「お前はただの人殺しだ。自分勝手なやり方で街のヒーロー面してんじゃねえよ...」ドン!!!

 

一善「ここでお前を退治する」ドン!!

 

千巣「2人共。あいつは見えない攻撃を仕掛けてくる。攻撃を仕掛ける直前の予備動作を見極めろ」

 

三太郎「あぁ。アニキ」

一善「...!」

 

贔薫「ハッ!!!!」

 

ピューン!!

 

三太郎「!!!!」ドァン!!

一善「三太郎!!」

三太郎に攻撃がヒットする!

千巣「(防げないか...!)」

贔薫「ふっ。口先だけのようじゃな!ハッ!!!」

 

ピューン!!

 

一善「うわぁ!!!(くそ!速い...!)」ドァン!!

 

千巣「赤のエレメント!雄叫火!!」ドワァ!!

贔薫は後ろに飛んで避けた。

千巣「ちっ!」

 

その様子を、まつりは遠くから見ていた。

まつり「信じてんで...」

 

SOREMA -それ、魔!- 12へ続く。

 

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第91話 「腹拵え」

第92話 「カレーライス」

第93話 「アニキ」

第94話 「この街の涙」

第95話 「魔者狩り遠征」

第96話 「四十六眼」

第97話 「月下の少女」

第98話 「”走”」

第99話 「蹴鞠」

第100話 「痴れ者」