SOREMA -それ、魔!- 7
SOREMA -それ、魔!- 7
「化け物」
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第55話 「ビーナスリングギンザ」
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《銀座/ビーナスリングギンザ》
”VENUS RING GINZA”
そこは、銀座のとあるジュエリーショップ。今日は、数名の女性がチラホラと見えていた。
一善「...マヂカラ反応は?」
三太郎「なんか、急に弱まった...?」
幸二「俺達を警戒して弱めたのかもな。だが完全に隠しきれるわけはない。店員と客、一人一人近づいて調べよう」
一善「わかった」
三太郎「おうよ」
幸二「魔者の場合逃げ出すかもしれん。慎重にな」
3人は、広い店内にいる人間一人一人に近づいて、反応を探る。
一善「(このお客さんではない...)」
幸二「(この人もちがうな...)」
三太郎「(あの店員も普通だな...)」
老女「この指輪、素敵ねぇ」
ある店員「えぇ、とても貴女にお似合いでございます、一度嵌めてみてはいかがです?」
老女「まぁ!よろしくって?」
一善「(...指輪か)」
ある店員「もちろん!どうぞ、左手にこちらを」
老女は、店員に進められ、高額の指輪を手に嵌めた。
ある店員「ヒェッ」
モワッ!
一善「...!!!」
老女「まぁ!本当に綺麗ですこと。気に入ったわぁ」
ある店員「ありがとうございます。どうでしょう。決して悪くないお買い物だと思いますが...」
老女「決めたわ。これ、買わせてちょうだい」
ある店員「ありがとうございます!」ニチャア
一善「...(あの店員、さっき一瞬マヂカラ反応が出た気が)」
幸二「どうだった?」
三太郎「なんか、怪しい奴いなかったなぁ。勘違いか?」
一善「...」
幸二「こうしてる間に他の店で被害が出る可能性もある。もう一度、分かれて一から捜索しよう」
一善「...わかった(確かに、幸二の言う通りだ。俺の勘違いかもしれないし、外は2人に任せて、俺は1人でここに残ってあの店員を監視しよう)」
三太郎「何かあったら連絡くれー!」
幸二「承知」
2人は店を出ていった。
一善「...!」
一善が店内に視線を戻すと、その店員は姿を消していた。
一善「(消えた...?)」
一善は、慌てて店を1度出た。
一善「(マヂカラの気配が全く無くなっている...?しまった!!ということは、さっきの老女は?)」
一善は、指輪を買った老女を探した、すると、店から東の方向に歩いているのが見えた。
一善は、その老女を追いかけた。
ーーーーー
プルルル プルルル!
幸二と三太郎の元に一善から着信が届く。
幸二「一善?」
三太郎「どした!」
一善「もしかしたら、魔者を見つけたかも!さっきの店から東の方向!」
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第56話 「連続殺人鬼」
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《銀座》
三太郎「(...さっきの方向から東?!東ってどっちだ、右か?わかんねぇ!!ん?でも少し匂うぞ?)」
幸二「(やはりあの店にいたのか?!それとも別の店...だとしても、かなり近くにいた筈だが、気配を消すのに長けているな...気を引き締めろ!)」
一善は、老女を走って追いかけた。すると、老女は、道端から、'あ'る'男に腕を捕まれ、引きずり込まれた。
一善「!!!!」
一善は、老女が消えた角を右に曲がった。少し見上げると、狭いビルとビルの間に、ほぼ人間の形を象った不気味な魔者が、老女を捕らえていた。緑の髪に白い顔、赤い瞳の魔者だ。
老女「キャー!化け物!高い!助けてぇ!!」
一善「お前が連続殺人鬼だな!」
魔者「ヒェッ。さっき店にいた小僧か。何の用だ?」
一善「その女性を離せ。話はそれからだ」
魔者「話?!俺はお前と話すことなどない。今なら見逃してやるから、さっさと失せろ」
一善「ふざけるな、俺がお前を退治して...」
一善「(...この魔者も”人”だったんだよな…)」
そこへ三太郎と幸二がやってくる。
三太郎「一善!!!」
幸二「あれが魔者か!!!!」
宝禪「ヒェッ!魔者魔者五月蝿いわ!私の名は宝禪(ほうぜん)」
幸二「お前、何人殺した?」
宝禪「殺した?そんな下品なものでは無いぞ。私のコレクションは、これで10体目だ」
幸二「10人ってことか?!」
三太郎「こいつが女の子の手集めてるスーパー気色悪い野郎で間違いなさそうだな」
宝禪「気色悪い?!お前に何がわかる。私の芸術は、物体では無い。概念なのだ」
三太郎「は?」
宝禪「人は自らの心を満たす買い物をすると、自分にご褒美を与えた心地になるよなァ。その時はさぞ幸福だろう。そして、私はそこから深い絶望にたたき落とすことに快楽を感じるのだ!」
一善「...」ピキッ
幸二「こいつ...クソだな」
宝禪「切り取った手は、その希望と絶望の象徴。哀しく光る宝石、零れ落ちる涙と喚き声。アァ、なんて美しいんだ!!!!!この記憶を永遠にするべく、私は手を保管している。いつでも、どこでも思い出せるようにな...」ボトボトボトッ...
宝禪は、手の平の口のような部分から、数個の手を地面に落とした。どの手にも綺麗で新品の指輪が嵌められている。
一善「...!」
三太郎「キモっ!」
老女「助けてぇ!!!」
宝禪「ヒェッヒェッ!いいぞ!もっと喚け!泣き叫べ!!お前も私のコレクションとなるのだ!!!」
バァァァァン!!!
幸二は、宝禪へエレメントの弾を飛ばした。
宝禪「ヒェ〜〜〜!!!」
宝禪は、手から老女を零した。
老女「落ちるぅ!!」
三太郎が、即座に落下地点にまわって、老女をキャッチした。
三太郎「大丈夫か?おばあちゃん」
老女「もう、、、だめよ、、、、」
老女は恐怖のあまり気絶した。命に別状なし。
三太郎「誰か!この人を助けてくれ!」
三太郎は、近くの一般人に老女を預けた。
幸二「もうお前の御託に付き合ってられない」ドン!
三太郎「マジで、思いっきりぶん殴ってやる」ドン!
一善「”この手”(ひと)たちの無念、俺たちが晴らす」ドン!
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第57話 「宝玉の書」
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《銀座/ビルの狭間》
宝禪「フッ、私を嗅ぎ分けられない程度の雑魚だと思っていたが...何してくれるんだ!!!!」
宝禪は印を結んだ。
幸二「来るぞ!」
宝禪「蒼魔導書 第三十二章 宝玉ノ一!金剛棘地獄!」ガシガシガシ!!!
宝禪は、ビルの壁から、尖った金属を次々と生やした。
ガシガシガシガシ!!
幸二「まずい!」
三太郎「黄のエレメント!スクリューストライク!」パキィン!!
三太郎は、金属の塊を砕いた。
一善「でかした!」
三太郎「このトゲトゲは俺が何とかする!2人は本体を叩け!」
幸二「青のエレメント!ドライブ・THE・スネーク!」
幸二は、金属の棘をくぐりぬける弾道で、攻撃した。
宝禪「ヒェッ!なんだ、この弾道はァ!」
バクシュシューーーン!!
宝禪「ヒェッーーーーー!」
一善「三十七章!操蟲ノー!三剣黄金蟲!」
つのキング「ウォーーー!」
一善「つのキング!奴を高い所へ!」
つのキングは、宝禪を掴み、ビルの狭間を上に抜けた。そして、広めのビルの屋上に叩きつけた。
宝禪「...」
幸二と三太郎も屋上にやってきた。
宝禪「久しいな、”高所”は」
幸二「お前の死に場所だよ」
一善「覚悟しろ」
宝禪「ふふっ、そうだな、まずは...」
ビュン!!
そう言うと、宝禪は、一瞬で、幸二の目の前に移動した。
宝禪「お前からだ」
幸二「(速い...!)」
ドーーーーーン!
幸二は、隣のビルの低い屋上まで飛ばされた!
三太郎「(早すぎる...!)」
一善「つのキング!いくぞ!」
宝禪「宝玉ノ三 白金豪雨!!!」ザザザザッ!
宝禪は、槍のような金属を、雨のように降らせた。
三太郎「うわぁ!!」
一善「つのキング!あいつの動きを封じろ!」
つのキング「ウォー!!!」
つのキングは、宝禪に向かって飛びながら突進した。
宝禪「ヒェッ。がらくたが。宝玉ノ六 紅玉拳」グゥィン!!
宝禪は、拳に赤い金属の玉を纏い、つのキングに高速の連撃を食らわせた。
ダダダダダッ!
つのキング「ウォーー!」バコーーーン!!
一善「つのキング!!!」
三太郎「黄のエレメント!!!ガントレットバスター!!」ゴロゴロォ!!
宝禪「宝玉ノ四 虎目石の盾」ガァン!
三太郎「うぉーーー!(くそ!硬ぇ!)」
宝禪「そのまますっとべ!!!」バァン!!
三太郎は、宝禪の繰り出した盾諸共、吹き飛ばされた。
一善「(こいつとつのキングの相性はまだ分からない。なら...)緑のエレメント!!舞姫!!」シュッ!
宝禪「宝玉ノ八 紫水晶!!!!」パキーーーーン!
一善の拳は宝禪に受け止められ、拳から、徐々に紫色の水晶に飲み込まれていく。
カチカチカチカチ.......
一善「(...抜けない)」カチカチ...
宝禪「ヒェッ。雑魚が」カチカチ...
幸二「(...距離が取れたのは俺にとっては好都合だ。だが、一善や三太郎がこのままでは...!)」
三太郎「(...くっそ!一善が危ない!でも迂闊に近寄れない!どうする!)」
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第58話 「攻守交替」
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《銀座/とあるビル屋上》
幸二「青のエレメント!ニードル・THE・ショット!」
宝禪「宝玉ノ四 虎目石の盾」ガァン!
幸二「(くそ...視界の外から撃ったはずが防がれた!)」
宝禪「ヒェッヒェッヒェッ!」
一善は、既に全身が水晶に蝕まれ、動けない状態となった。
一善「(くそっ!体が、動かない...!)」
幸二「一善!!!!」
三太郎「くそ!あの技を全員受けたら終わりだ!なら遠くから!!黄のエレメント!ジャスティス・THE・ハンド!!!!」バコーーーン!!!
宝禪「学習しない雑魚共め。虎目石の盾!」ガァン
三太郎「くそ!!」
つのキング「ウォーーー!」
三太郎「つのキング!?」
幸二「?!」
ピタッ
すると、つのキングが水晶化した一善にくっついた。
幸二「...?なにしてる?」
三太郎「寂しいのか?」
つのキング「ウォーーーーー!」
宝禪「ヒェッヒェッヒェッ!お前ら如きの攻撃は効かず、俺の攻撃で戦闘不能。泣き喚くしか出来ないって訳だ。ヒェッヒェッヒェッ!これぞまさに芸術!!!愉快だ!!!!」
幸二「(くそ!威力だけなら三太郎の方が上だ。だが近距離はリスクがある、だが距離をとってもその攻撃も防がれる。どうする...?)」
すると、水晶が何故か溶け始め、一善が出てきた。
幸二「?」
三太郎「あ!」
宝禪「?!?!?!?!」
一善「ん?なんか戻った」
宝禪「(何が起こったんだ?!紫水晶は、私が術を切らさない限りは破られない筈。どうして)」
一善「つのキングがやってくれたのか?」
つのキング「ウォーーーーー!」
幸二「(何が起こったのかは分からないが、つのキングの能力で水晶を溶かしたのか?)」
三太郎「よし!これでまた振り出しだ!!」
宝禪「ヒェッヒェッ!振り出しに戻っただけで、お前たちに勝ち目はなさそうだが?」
三太郎「なら何回でも拳で抵抗するだけだ!!」
宝禪「ヒェッ!馬鹿め!」
三太郎「黄のエレメント!!ガントレットバスター!!!!」
宝禪「宝玉ノ八 紫水晶!!!」カチカチーン!
三太郎「(くそ!さっきの技だ!)」カチカチカチカチ...
幸二「(今度は三太郎が!)」
三太郎の攻撃は受けられ、次第に三太郎の腕が水晶にのまれていく。
一善「つのキング!あれを溶かせるか?!」
つのキング「ウォーーー!!!」ビチョッ!
つのキングは、口から謎の粘液を、三太郎の腕に向かって吐き出した。すると、固まり始めた水晶が蒸発し始めた。
ジュッ....ボヤァァァァ!!!!!!
宝禪「?!」
三太郎「へっ。やってくれると思ってたぜ!!」
宝禪「(術が、、溶けていく?!)」
幸二「(なるほど、一善の能力と、敵の能力では、一善の能力が優位ということか...)」
三太郎「喰らえ!!!!ぬぉぉぉぉぉぉ!!!!」
三太郎は、そのまま拳を振り抜いた。
バリィィィイン!!!!!!
宝禪「ヒェーーーーーーーーーー!!!!!!!」
バッコーーーーン!!!
宝禪は、その場に叩きつけられた!
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第59話 「フィナーレ」
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《銀座/とあるビル屋上》
シュゥゥゥゥ....
三太郎「やったか?」
幸二「...?」
一善「...!」
宝禪「...」
幸二「いや、まだだ!!!」
宝禪はムクっと立ち上がった。宝禪は、口から出た血を手で拭って舐めた。
宝禪「...どうやら、お前らは俺を怒らせた様だ」
一善「...!!」
幸二「...!!」
三太郎「なんだと?!」
宝禪「もういい...少しは”美しい死”を与えてやろうと思ったが、それもよそう」
宝禪は、地面に手のひらを置いた。
ズズズズ.....!!!!
ギュララララ.......!!!!
一善「(地面?何をした?)」
宝禪を中心に、地面一体に虹色の水晶が生えた。そして、一善ら3人の足を飲み込む。
幸二「なんだ...これ」ガチッ!
三太郎「足が抜けねぇぞ?!」ガチッ!
一善「...!!」ガチッ!
つのキング「ウォーーーーー!!」ビチャッ!
つのキングは、口から粘液を放出したが、粘液は蒸発して消えてしまった。
宝禪「ヒェッヒェッ。お前と俺では”格”が違う。例えお前の能力が優位に達していても、練度が劣っていれば術は効かん」
一善「!」
宝禪「もうフィナーレだ。さぁ、死ね!雑魚魔法使いども!!!宝玉ノ十!!最終奥義!!!」
宝禪の頭上に巨大な宝石の塊が現れた。
一善「あれは...!!!!」
幸二「な、何だこの大きさ...!!!!!!」
三太郎「これはやべぇだろ!!!!!!」
宝禪「金剛超新星ッ!!」ド ン ! !
幸二「(あれが落ちたら...俺たちだけじゃない、下の人間たちもマヂカラの余波を受けて死ぬ...!)」
一善「(足が動かないから、逃げようにも逃げられない...!)」
三太郎「(何とかして落下を防がねぇと...)」
幸二は、頭上の巨大な塊に攻撃を放つ。
幸二「青のエレメント!!!ミリタリー・THE・アサシン!!!!」
カァン...
三太郎「黄のエレメント!!!ジャスティス・THE・ハンド!!!」
キィン...
一善「2人の高威力技が全く効いてない...?」
シュゥゥゥゥ....
つのキング、消滅。
一善「(つのキングが消えてしまった...俺のマヂカラも限界か...!)」
宝禪「ヒェッヒェッ...ここは”お前たちの死に場所”だ。絶望を添えてやろう」
ゆっくりと巨大な塊が地面に近づく。
ゴゴゴゴゴゴ...!!!
一善「...!」
幸二「くっ...!」
三太郎「うわぁぁぁ...!」
3人が目を閉じたその時だった...
ピカッ
バ リ バ リ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ン !!!!!!!
一善「...?!」
幸二「...何が起こった?」
三太郎「塊が、消えた?」
キラキラキラ......
空に浮いた巨大な宝石の塊は霧散し、そこには男の影が1つだけ残った。
宝禪「ヒェッ?!何が起こった!!!」
スタッ...
幸二「...!」
一善「...!?」
三太郎「あっ...!」
ジャスティン「3人ともご苦労だった。後は、俺がやるわ」ド ン !
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第60話 「神野ジャスティン護」
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《銀座/とあるビル屋上》
宝禪「...何者だ貴様!!」
ジャ「俺?俺は魔法使い...いや、白のファンタジスタさ」ド ン !
一善「...!」
幸二「ジャ、ジャスティンさん!」
三太郎「ジャスさん!!」
ジャ「みんな、こいつが例の殺人鬼?」
三太郎「そうだ!」
幸二「かなり知能の発達が見られます!」
ジャ「なるほどねぇ...」
宝禪「ヒェッヒェッ...(何人来ても同じこと...)」
ジャ「君、ひとつ言わせてもらってもいいかな」
宝禪「なんだ」
ジャ「俺さ、君みたいな陰湿な奴、本当にキライなんだよねぇ...」ピキピキピキッ!
宝禪「...!」
ジャスティンは、地面を思い切り踏みつけた。
バァァァァァァァン!!
その瞬間、地面に生えていた虹色の結晶が一瞬にして崩壊し、消えた。
宝禪「は?!」
一善「!!」
三太郎「これで動ける!!」
宝禪「(何が起こった?まぁいい)ヒェッ、動揺することも無い。また振り出しに戻っただけだ。3人も4人も同じこと」
ジャ「ははっ。いや、申し訳ないけど、君如き俺1人で有り余るくらいだと思うけど?」
宝禪「ヒェッヒェッ。御託を抜かすn...」
ジャ「遅いな」
ビュン!!!!!
ジャ「白のエレメント!硬金氷鬼(かたかなひょうき)!」
宝禪「?!」
ドゴーーーーーン!!!!!
宝禪は、遠くのビルの屋上広告の壁に叩きつけられた。
パラパラッ
宝禪「はァ...速い?!」
体勢を立て直そうとする宝禪へ、ジャスティンは連撃を食らわせる。
ジャ「今度は受け止めて見てよ。白のエレメント、イエティの鉄槌!」ガァン!
宝禪「ヒェッ!宝玉ノ四 虎目石の盾!」ガッ!
バリィィィイン!
宝禪の盾はまるで薄い硝子の様に粉々になった!
宝禪「?!(虎目石の盾が、1秒も持たない?!)」
三太郎「(あんなに硬かったあの技が!)」
一善「(まるで”何も無かったように”いとも簡単に...!)」
ガァァァァァン!!!
宝禪「ヒェーーーーーー!!!」
宝禪は、空中に飛ばされた。ジャスティンの猛追は収まることなく、空中で蹴りを食らわせては追いかけてを繰り返す。
宝禪「トビュゥ!」 「ゲホッ!!」 「グワッ!!」
ジャ「本当はもう(ガンッ!)楽にしてあげてもいいけど(ガンッ!)君みたいな残忍なカスは(ガンッ!)嬲り殺したくなるクチなんだよ(ガァンッ!)」
宝禪「グハッ!...ガハッ!ハァ...モウ...ユルチテ....」
ジャスティンは、空中に浮いたまま、宝禪の胸ぐらを掴んだ。
宝禪「.....」ピクピク...
ジャスティンは宝禪を掴んだまま下を見る。
ジャ「(突き落としてやりたいけど、人が多いな。なら...)」
宝禪「ヒェッ...ヒェッ...」
ジャ「もう疲れたから、終わりにするわ」
宝禪「ヒェッ!」
ジャスティンは、宝禪を更に空中に投げた。そして、宝禪の方向を見向きもせず、指を鳴らした。
パチン!
ジャ「白のエレメント ジ・エターナル」
ドッカーーーーーーーン!!!!
一善「!!!(爆発四散...?!)」
三太郎「(瞬殺...!!!)」
幸二「(これが、神野ジャスティン護...)」
ジャ「絶望する隙なんて与えないよ」
パサッ
残ったのは1冊の魔導書と、爆音の中の静けさだけだった。
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第61話 「追憶調査」
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《銀座/とあるビル屋上》
幸二は、地面に落ちた魔導書を拾い上げた。
ジャ「とりあえず、魔導書の回収はこれで良しと。次に君たちだ。怪我は?」
三太郎「全身傷だらけだわ!」
ジャ「手を出して」
ジャスティンは、白い光を三太郎に当てた。
これは、簡易的な回復治療である。マヂカラによって受けたダメージを、マヂカラを流すことによって整え、治療する。
三太郎「ぷはー!!げんきいっぱい!!」
ジャ「完全に治ってはないぞ、まだ安静に」
幸二は、魔導書に封をし、座り込んだ。
ジャ「とりあえず、もう辺りのマヂカラ反応はほぼないから、いつも通り水撒いて帰っていいよー」
幸二「(ジャスティンさん。あの程度の敵を相手に圧倒...強すぎる。俺はここに10年もいるんだぞ...なのに、何も出来なかった、、悔しい...悔しくてたまらない...)」
一善「ジャスティンさん」
ジャ「ん?」
一善「魔導書って、そのまま封をして、保管するんですか?」
ジャ「と言うと?」
一善「いや、いつも第1支部に持っていくから、研究室には持ってかなくていいのかなって。なんか研究に役立ちそうだけど」
ジャ「なるほど、グッドクエスチョーン!魔導書を手に入れたらね、第1支部で”追憶調査”ってモノが行われるんだ」
三太郎「ついおくちょうさ?」
ジャ「そう、俺も詳しくは知らないんだけど、”記憶を読める履術者”がいて、その人が、魔導書に宿った記憶を探るんだ。例えば、魔者になってしまった人が、どのようになったのか、何故なったのか。これらの情報は、組織的魔法犯罪を暴くことだったり、犠牲者の遺族への情報提供などに役立てられている」
一善「なるほど(記憶を読める履術者...?)」
三太郎「てか、さっきの魔者、あいつは魔者か?ほぼ人間じゃん見た目」
ジャ「あれは魔者だよ。恐らく、元の人間とは人格が異なってる。知能の高い魔者は、人間の姿をしたまま生活できる。マヂカラを上手く隠すことで、普通の人間にも可視化されるようになるんだ」
三太郎「卑怯な野郎だ。死んでも腹立つな」
ジャ「じゃあ、俺はこいつを届けてくる。そういえば、この間の人形の書の追憶調査、分かり次第結果教えるよ。じゃあね」
シュン!!
ジャスティンは姿を消した。
三太郎「ははっ、一番の化け物はジャスさんだったわ」
一善「だね」
三太郎「てか、ジャスさんクラスなら、物を転送するくらい余裕なんじゃねぇの?わざわざ届けに行かなくても」
幸二「魔導書は基本的に自分の手で持っていくのが好ましい。どこで誰に取られるか分からないからな。人の手を離れるのは危なすぎる」
三太郎「ふーん。そういえば、この間の人形の本は、なんで消えたんだ?」
幸二「恐らく、つぐみちゃんは、俺たちが幼稚園に行った時点で本を”読み終えていた”んだ。だけど完全にマヂカラが宿っている訳じゃなかった。だから、マヂカラが完全に乗り移った瞬間に、魔導書が消えたんだ」
三太郎「なるほど。難しいねぇ」
幸二「俺は帰る。お前らも気をつけてな」
三太郎「おう!じゃあな!」
一善「じゃあ」
3人はそれぞれ帰路に着いた。
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第62話 「化け物」
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《文京区/幼稚園までの道》
銀座での戦闘から数日後・・・
一善「...」
一善は、幼稚園に、事件後の様子を伺いに出た。
ーーーーー
回想──
ジャ「そういえば、人形の書、解析終わったみたいよ」
一善「どうでしたか?」
ジャ「履術者の女の子は、道で落ちてた魔導書を拾ったみたい。その前の履術者については不明」
一善「なるほど」
ジャ「それからあの夜の事だけど──」
一善は、駆けつける前の様子を全て聞いた。駆けつけた時に、魔者となったつぐみの前に積まれていたズタボロになった本を思い出す。
ーーーーー
《幼稚園》
幼稚園には、先生と、つぐみの両親が一善の元に訪れていた。部屋に案内され、そこで一善は、全て本当のことを話した。
先生「...そんなことが...」
つぐみ父「娘は...もう戻ってこないんでしょうか?」
一善「...はい」
つぐみ母「つぐみ...!」
つぐみ母は、その場で泣き崩れた。
つぐみ父「どうして、なんでうちの子だけが...」
つぐみ母「グスン...」
つぐみ父「申し訳ないが、とても直ぐには受け入れられません。魔法のことも、つぐみのことも」
一善「その気持ち、痛いほど分かります。僕の母親も、魔法の犠牲になりました」
両親「...!」
つぐみ母「そうなんですね...」
一善「あと、これを」
一善は、生前つぐみがしていた赤い髪飾りを渡した。
つぐみ父「これ、私がつぐみに買ってあげた...」
つぐみ母「...」
先生「...」
ーーーーー
一善はその場を後にした。部屋を出ると、つぐみをいじめていた少女達がこちらを見ていた。
女子A「お兄さん...」
一善「君たち、あの時の子達だね。無事でよかった」
女子B「怖かったよォ」
女子C「思い出したくないよォ」
一善「ごめんね。怖い思いをさせて」
一善は、彼女らを慰める。すると、彼女らの内の一人が口を開く。
女子A「絶対、つぐみちゃんのせいだよ」
一善「...!」
女子B「そうだ、つぐみちゃんのせいよ!」
女子C「つぐみちゃんがいなければ、化け物なんてこなかったもん」
一善「...?!」ピキピキッ...!
女子B「つぐみちゃん、化け物に食べられちゃったんだって!」
女子C「違うよ、化け物から逃げて戻れなくなっちゃったんだよ」
女子A「まぁ、どっちでもいいわよ。もうつぐみちゃんはいないんだし...」
一善「?!」
女子A「いい気味」
一善は、生前のつぐみの記憶を思い起す。そして、一善は、目の前の幼い'化'け'物'達を前に、必死に殺意を抑えて、小さく呟いた。
「お前らのせいだよ」
女子達「...?お兄さん?」
一善「(言っても無駄か)」
女子達「?」
一善は、笑顔を作りなおし、別れを告げる。
一善「じゃあ、みんなも元気でね」
女子A「う、うん」
女子B・C「...」
女子達は、去りゆく一善の背中を呆然として見ていた
一善「あ、あと一つだけ」
女子達「?」
一善「お前ら、本当に”ゴミ”だよ」
本当の化け物とは、果たして。
────
第63話 「嵐の前の静けさ」
────
《第2支部》
ジャ「それで、宝玉の書の方の追憶調査に関しては、被害者の男性は元々宝石商だったらしい。でも売上が落ち込んで、藁をもすがる思いで手に取った指南書が、あの本だったって訳」
幸二「え、販売されてたってことですか?」
ジャ「そこなんだよ。多分、”魔導師”が手を引いていたか、もしくは、魔導書を売買している奴らがいるか」
幸二「なるほど...」
ジャ「精神的に弱っている人間は特に、魔導書に手を出しやすい。ついでに飲み込まれやすい、つまり?」
幸二「魔者が生まれる」
ジャ「そう。つまり、魔者が生まれて良しとする者が、なにか企んでいるのかな」
幸二「魔導師ですかね?」
ジャ「特に匂うのは”奴”だな。”4年前の事件”から明らかに事件数が増えている────」
幸二「...」
ジャ「俺たちの望みは、”そいつ”を殺さない限り果たされることは無い」
ジャスティンは、拳を強く握りしめた。
ーーーーー
──そして、銀座事件後、一善らは、小さな任務をいくつかこなし、2ヶ月が経とうとしていた。
ジャ「10月になったねぇ」
一善「そうですね」
三太郎「ワクワクワクワクワクワク」
幸二「(なんだこいつ...?いつも以上に落ち着きが無さすぎる)」
ジャ「さぁみんな!!この10月には、何があるか知ってるかな〜?!?!」
三太郎「紅白ゥ!!!!!!」
ジャ「せいかーい!!!!」
三太郎「俺はこの紅白にかけてこの2ヶ月更に特訓を重ねたぜ!!」
幸二「(目指すべき方向性がなんか違うわァ!)」
一善「ジャスティンさん、俺ちゃんと紅白のこと分かってないんですけど、なにやるんですか?前に幸二がサラッと説明してくれたけど、まだよくわかんなくて」
ジャ「説明しよう。紅白魔法合戦とは、今年で4回目を迎える、第1支部と第2支部合同の超一大イベントなのだ!!」
三太郎「ひゃっほーーーう!」
幸二「(そんな大袈裟なイベントだったか?)」
ジャ「やることは1つ。とある無人島を舞台に、チーム戦で脱出ゲームをするんだ。詳しくは当日までに説明するけど、要は第1支部と第2支部対抗の徒競走って感じだな」
幸二「(だいぶ違う気が...汗)」
三太郎「え?!チーム戦って?支部同士で戦うのか?!」
ジャ「そだよ」
三太郎「は?!じゃあ俺は幸二と味方ってことか?!俺こいつと戦うのを楽しみにしてたのに?!なんだよそれェ!!!」
幸二「お前はバカなのかな?!」
ジャ「あと、俺は出ないから」
幸二「は?!」
一善「え、なんで」
ジャ「7人までだから、俺はパス」
幸二「確かに第2支部は8人いて、1人は出られませんが、何もジャスティンさんじゃなくても良くないですか?」
一善「僕出たくないです」
ジャ「もう無理でーす。あと、敵の虎のしっぽギャフンって踏んできたから、向こうは多分本気モードでーす」
一善「(おわた...)」
幸二「(この人マジか...)」
三太郎「うぉーーーーー!!!いや、その方が断然燃えるぜーーー!!!!待っとけ第1支部ゥ!!!!」
SOREMA 2nd SEASONに突入!
SOREMA -それ、魔!- 8 に続く。
第55話 「ビーナスリングギンザ」
第56話 「連続殺人鬼」
第57話 「宝玉の書」
第58話 「攻守交替」
第59話 「フィナーレ」
第60話 「神野ジャスティン護」
第61話 「追憶調査」
第62話 「化け物」
第63話 「嵐の前の静けさ」