SOREMA -それ、魔!- 5

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SOREMA -それ、魔!- 5

「エマージェンシー」

 

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第39話「サーフハウス」

 

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《とある海辺の家/サーフハウス》

ザパーン ザパーン...

ミーンミーン ミーンミーン...


善能寺「久しぶりね。ヒメ」

ヒメ「お久しぶりです」


久品 ヒメ。20歳。第四十七章 追憶の書の履術者。


善能寺「体はどう?」

ヒメ「何も問題ありません」

善能寺「それはよかった。では、行きましょうか」

ヒメ「承知致しました」


ヒメは、黒いパーカーを頭から被って、善能寺が手配した黒い車に乗り込んだ。


ヒメ「...」

ヒメは車の中から、ただ窓の外を見ていた。

 

ーーーーー


《文京区/とある住宅街》


幸二「(こんな任務なら俺一人でいい。かえって足でまといだ...)」


三太郎「なぁ幸二?お前って強いんだろ?いつか勝負しようぜ!」

幸二「魔法使い同士の戦いは基本ご法度だ──」


ーーーーー


数日前────

ジャ「君たち3人に、次の任務を与える」

幸二「...」

三太郎「お!なんでもいいぜ!やってやる!」

一善「どんな任務ですか?」


ジャ「ズバリ、魔導書探しだ────」

 

ーーーーー


3人は同じ方向へ、ばらばらと歩く。


幸二「(こいつらが魔法使いの顔?まだただのガキんちょと、辛気臭い一般人じゃないか...ジャスティンさんはこいつらの何を...?)」


三太郎「なんでダメなんだよ?!お手合わせ位いいじゃん?」

幸二「ダメだ。度が過ぎた戦闘行為は、協会から”魔導師認定”されるぞ」

三太郎「まどうし?」

一善「前にチラッとジャスティンさんが言ってた。なんなの?魔導師って」

幸二「悪の魔法使い。人間と魔者の中間ってとこだな。つまり”クズ”だ」

三太郎「おいおい、俺をクズ認定するってか?」

幸二「(どういう解釈をすればこうなるんだ...)」

一善「ってことは...(俺のお母さんを殺したのは、ひょっとして人間...?)」

幸二「最悪な魔導師は人を殺めたり、魔法を私利私欲のために使ったりする。お前たちも、出会ったら気をつけろ」

三太郎「出会ったらどうするの?」


幸二「俺たち魔裁組が、処罰する」


一善「...!」

三太郎「...うげ!殺すのか?!」

幸二「凶悪な魔導師に限るが、ま、そもそも凶悪でないと魔導師にはならない。つまりほとんどの魔導師が死刑。一般の犯罪と違って、普通の人間じゃ一人でも抑えきれないからな。現在でも”魔法界指名手配犯”となっている魔導師も何人かいる」


三太郎「でも、俺、人は殺したくないぞ?」

幸二「ならここを辞めろ。いつか、人を殺さないといけない時が来るかもしれない。俺たちの敵は魔者だけでは無いのだ」

一善「...(俺も人は殺したくないな...)」

幸二「とはいえ、魔導師は人間だが、魔者でもある。”魔者を殺すのと同じ”だよ」

一善「ふーん」


幸二「着いたぞ。研究班曰く、魔導書が発現したとされる可能性が一番高いスポットがここだ」

三太郎「ここ...って!!」

 

一善「...幼稚園?!」

 

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第40話 「呪われた幼稚園」

 

────


《とある幼稚園》

ワーワー

キャーキャー


3人は、幼稚園の先生に事情を話し、中へ招かれた。三太郎は園児に懐かれ、グラウンドで遊んでいた。

三太郎「まてまて〜」

園児A「きゃ〜逃げろ〜!!」

園児B「お兄ちゃんから逃げろ〜!!」


幸二「ふっ、あいつももはや幼稚園児だな」

一善「だね笑」


一善と幸二は、先生に話を聞くべく、別室に向かっていた。


先生「青い変な本?」

幸二「はい、見覚えのない本が、最近見つかったりしてないでしょうか?」

先生「そうねぇ。絵本は私たち教員が、1ヶ月に1回ほど買い揃えてますけど、その中に無ければ、私たちは分からないですねぇ...」

先生は、首を傾げた。


先生「その本が、どうかされたのですか?」

一善「実は、魔h..」

幸二「私たちのサークルの所有物なんです。この辺りをフィールドワークしている際に落としてしまって...子供たちが間違えて持ち込んだりしてないかなと。今研究発表前で少し困っていまして」

一善「?」

先生「あら、大変ねぇ」

幸二「1度、絵本を一通り確認させて頂いてもいいですか?」

先生「もちろん!あちらの部屋にありますので、どうぞご自由に」

一善「…?」


2人は、奥の部屋の、誰もいない教室へいき、本棚の中を探した。


ゴソゴソゴソ...

一善「...さっきなんで嘘ついたの?」

幸二「本当のことを言って、大の大人が信じるか?」

一善「...確かに」

幸二「俺たちの任務は、魔導書を回収する事、及び、人々の安全を守ることだ。魔法について広めることではない。過程より結果だ」

一善「なるほど...」


幸二「あったか?こちらには見当たらない」

一善「...こっちもないね」

幸二「よし、次は向こうに...」


ゾ     ク       !!!


一善「...!!」

幸二「...!!」

2人が本棚から離れようとすると、背中から、強い力のようなものを感じた。


幸二「一善、いいか...振り返るぞ」

一善「...うん」

幸二「構えろ」


バッ!!!


2人が振り返ると、そこには、黒く綺麗な髪が印象的な、頭に赤い髪飾りをした1人の少女が佇んでいた。しかし、その手には、青く不気味な本が見えた。


少女「お兄ちゃん達、誰?」


幸二「(あれだ...!)」

一善「(あった...魔導書!!)」

 

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第41話 「ある少女」

 

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《幼稚園/本棚のある部屋》


本を片手に佇んでいる少女の表情は暗く、物憂げな目でこちらを見ていた。


幸二「...!」

一善「きみ、お名前は?」

少女「つぐみ」

幸二「つぐみちゃん。その手にある本を今すぐこちらへ渡すんだ」

つぐみ「何でよ」

一善「幸二。もっと優しく」

幸二「あれは危険だ。最悪力づくで奪うぞ」

一善「ちょっと待って」


そう言うと、一善は、つぐみの元へ歩み寄った。


一善「つぐみちゃん。本好きなの?」

つぐみ「うん」

一善「どうして?」

つぐみ「本しか、友達がいないの」

幸二「...」

一善「友達、いらない?」

つぐみ「皆、私の事、嫌いなの」

一善「つぐみちゃんは?自分のこと、嫌い?」

つぐみ「...!」

一善「ごめん。変なこと聞いちゃったね。お兄ちゃんも本、好きなんだ。お兄ちゃんはもっと難しい本を読むんだ」

つぐみ「難しい本?」


一善「うん。僕も、あんまり友達がいなくてね。でも、本を読むと、楽しいし、辛いことも忘れられる。本の中では、色んな人と出会えるから」

つぐみ「そうだね──」


様子を伺いに、先生がやってきた。

先生「つぐみちゃん。いつも1人でいいって、聞かなくて。私達もなんとかしてあげたいんですけどね、余計なお世話なのかしら。本が大好きみたいで...」

幸二「...そうなんですね」

 

一善「つぐみちゃん。その本、どこで拾ったの?」

つぐみ「覚えてない」

一善「そっか。もしも良かったら、俺の本と交換しない?今日ここで会えたしるしに」

つぐみ「お兄ちゃん?」

一善「その本、俺も読んでみたくて。俺も、つぐみちゃんがきっと気に入るような、楽しい本たくさん持ってくるよ!」

つぐみ「...」


一善「俺の友達になってくれない?」

つぐみ「...!」


つぐみは、そういうと、一善に魔導書を手渡した。

幸二「...!」

一善「ありがとう。明日また、ここに来るね」

つぐみ「うん。またね。お兄ちゃん」


つぐみの顔は、最初よりも明るくなった。

 

幸二「ありがとうございました。先生」

先生「とんでもないです。あなたも、ありがとうね」

一善「僕は何もしてません。また明日も、つぐみちゃんに会いに来ます。大丈夫、でしょうか?」

先生「もちろん!明日も待ってますね!」

一善「ありがとうございます!」


幸二は、グラウンドで、園児達とじゃれつく三太郎を呼んだ。

幸二「おい三太郎!!!帰るぞ!!!」

三太郎「ちょっとww今行くから待ってww!」


ワーキャー! ワーキャー!


幸二「置いてくか」

一善「それがいいと思う汗」


去っていく一善らを、つぐみはじっと見ていた。そして小さく、手を振った。

 

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第42話 「一件落着」

 

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《幼稚園からの帰り道》

幸二「今回は助かった。一善」

一善「俺は何もしてないよ。でも、魔導書が手に入って良かったよ」

幸二「そうだな。封を貼ろう」


幸二は、ジャスティンが持っていたのと同じテープを、魔導書に巻いた。


幸二「第四十一章 人形の書。これはかなり大物だな」

一善「そうだね」

幸二「俺の本家の”赫魔導書”よりも大きい」

一善「え?幸二、履術者なの?」

幸二「俺ではない。俺の兄がな。俺の実家、天堂家は、昔から赫魔導書を家宝として成り立つ魔法使いの家系なんだ」

一善「お兄さんがいるんだ」

幸二「まぁな。でも、ずっと会ってないよ」

一善「魔裁組にはいないの?」

幸二「前はいたよ。”やらかして”退学処分になってから、どこで何してるやら。最悪魔導師になってるかもな」

一善「...?」


三太郎「ぉぃてくなよおー!!!!」

ダッダッダッダッダッ!!!!


一善「三太郎」

幸二「大きな幼稚園児」

三太郎「誰が幼稚園児だ!!!ぶっ飛ばすぞ!!!」

幸二「普通の喧嘩なら受けて立つぞ?」

一善「やめなよ二人とも!」

三太郎「ふんっ!こいつとはそりが合わねぇな」

幸二「同感だ」


三太郎「ちぇ。てかなんでこいつとはやり会えねぇんだよ。普通戦って稽古するんじゃねえのかよ。漫画とかでよくあるじゃんそういうの」

一善「漫画の読みすぎ」

幸二「ま、そういうの全くなしでもないぞ?」

三太郎「ん?」

一善「?」


幸二「1年に1回だけ開かれる、魔法協会と魔裁組が合同で開催するイベント。”紅白魔法合戦”。このイベントでは、チーム戦で別れて、魔法使い同士の戦いが繰り広げられるんだ」

一善「えぇ...出たくない...」

三太郎「なんだそれ!!!超超超超たのしそう!!」

一善「超繰り返すの、ジャスティンさんの口癖うつってるじゃん」


幸二「次は3ヶ月後にある。俺はそんなに興味無いが、馬鹿が好きそうなイベントだな」

三太郎「誰が馬鹿だコラ!!!」

幸二「お前だよ金髪ゴリラ」

三太郎「はぁ?!うるせーしらけノッポ」

一善「w」

 

ーーーーー

 

次の日


《幼稚園》

一善「おじゃましまーす」

つぐみ「あ、お兄ちゃん」

 

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第43話 「暗雲」

 

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《幼稚園》

つぐみ「本、持ってきてくれた?」

一善「うん!たくさんもってきたよ」


一善は、今は誰もいなくなった家に帰り、本棚の中から、昔読んでいた絵本を持ってきた。


つぐみ「すごい、こんなにたくさん!」

一善「どれでも、好きなものを読んでいいよ」

つぐみ「これは?」

一善「これはねー、ぐれとぐろ。少し悪ぶったねずみさんと、少しホラーなねずみさんのお話だよ」

つぐみ「こっちは?」

一善「これはねー、スイマー。海を泳ぐお魚さんたちが、みんな眠くなっちゃうお話だよ」

つぐみ「どれも面白そう!ありがとう!」

一善「こちらこそ。これはお返しだよ。ありがとう」


つぐみ「私、自分のこと、少し好きかも」

一善「ん?」

つぐみ「今、私、笑えてるよね?」

一善「うん!いい笑顔!」

つぐみ「笑ってる時の私が一番好き。最近、あんまり笑えてなかったから...」

一善「そうなんだ。俺も、今のつぐみちゃん、好きだよ」

つぐみ「(トゥンク)」


一善「あ!っあ!あっ!いや、いや、ソーイウ意味じゃなくてね!あ、その、えーっと...」

つぐみ「ふふふ笑」

一善「(よかった。つぐみちゃん、笑ってる)」


その2人の様子を何人かの女子の園児が傍から見ていた。


女子A「あれ、なんなの?」

女子B「つぐみちゃんだけ、特別扱いじゃん?」

女子C「友達いないくせに」


女子A「やっつけちゃおっか──」

 

ーーーーー

 

夕方になり、一善は、第2支部に帰る時間になる。

先生「ありがとうございました。つぐみちゃんもとても嬉しかったよね?」

つぐみ「...」

一善「また、少ししたら様子見に来ます。これ、僕の連絡先なんで、何かあったらまた呼んでください」

つぐみ「...」

先生「つぐみちゃん。お兄さんにありがとうは?」

つぐみ「...ありがとう」

一善「またいつか、遊びに来るからね」

すると、つぐみは、一善に抱きついた。


つぐみ「絶対だよ?お兄ちゃん」

一善「うん。もちろん」


一善は、つぐみらに別れを告げ、夕日を背に、第2支部へ向かった──

 

ーーーーー

 

《幸二・三太郎サイド/第2支部


三太郎「幸二ー、ジャスさんと一善は?」

幸二「一善は昨日の幼稚園、ジャスティンさんは知らん。昨日から見てない」

三太郎「ほーん。そう言えば、魔導書どうした?」

幸二「ジャスティンさんに渡すまで、俺の金庫に保管してある」

三太郎「ふーん」


幸二「...(そうだ、コンビニ行こ、財布金庫だよな)」

幸二は、金庫に財布を取りに行った。


ガチャ ガチャ


幸二「?!」


「ない!!!!」


三太郎「?!」

三太郎が、金庫へ向かう。


三太郎「どうした!!!幸二!!!!」

幸二「ないんだよ...ここにあったはずの魔導書が!!!!」

 

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第44話 「怪事件」

 

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《幸二・三太郎サイド/第2支部

三太郎「魔導書がなくなった?!」

幸二「あぁ。でもここにずっと置いてあった。鍵は俺しか持ってないし」

三太郎「入れ忘れたとかじゃん?!」

幸二「確実に入れた!!」

三太郎「じゃあお前が盗んだのか?!」

幸二「だったら言わないだろ!!普通!!無くなったんだよ!!マジで!!」

三太郎「ならやべえだろ!!探すぞ!!」

 

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《つぐみサイド/幼稚園》


夜。園児と先生は、広い部屋に集まっていた。


先生「今日はお泊まり保育です!みんな!先生の言うことをよ〜く聞いて、楽しく過ごしましょう!」

園児達「はーーーい!!」


つぐみ「...」


女子A「ねぇ、どうする?」

女子B「私持ってきたわ。ハサミ」

女子C「私はペン!」


女子A「さ、楽しくやろうね」

 

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《幸二・三太郎サイド/第2支部


三太郎「おいまずい!マジでどこにもねぇ!」

幸二「奥の部屋は?あとは厨房!」

三太郎「探したよ!研究班ルームは?!」

幸二「可能性は低い!後回しだ!あんまり皆にバレないようにしろよ?」

三太郎「お前の失態だろ!んなもん知るかア!」

幸二「連帯責任だとお前も他人事じゃねえぞ!」


プルルル プルルル

幸二に電話がかかってくる。


幸二「もしもし!」

自動音声「東京都文京区──に、レベル4相当のマヂカラ反応あり、繰り返す、東京都──」

三太郎「こんな時に魔者かよ!」

幸二「...!でも、この住所って...」


《一善サイド》

一善。帰路の途中。引き返し、幼稚園に向かって走る。日は沈み、辺りは静けさを保っていた。


そんな一善の元にも同じ自動音声がかかっていた。


自動音声「東京都文京区──に、レベル4相当のマヂカラ反応あり──」


ダッダッダッ...


一善「(この住所、つぐみちゃんの幼稚園だ。魔導書は回収したのに、なんで?別の魔導書か?もしくは魔者、それとも魔導師...?とにかく、みんなが危険だ、早く行かないと...!)」

 

ーーーーー

 

《つぐみサイド/幼稚園》


自動音声が流れる少し前────


女子A「あははははは!ざまぁみろ!つぐみちゃん」

女子B・C「クスクスクスクス」


誰もいない教室。

そこには、つぐみと、女子児童3人だけがいた。つぐみの前には刻まれ、落書きをされた本が山積みになっていた。


女子A「あんただけ、ずるいわよ。何もしないでいいくせに、こんなにプレゼント貰ってさ」

女子B「ずっと気持ち悪いって思ってたけど、本当に気持ち悪いよ!つぐみちゃんw」

女子C「てか、この'”ゴミ”、くさいから片付けて」


女子3人「あはははははははは!!!」


つぐみは涙を目に貯めながら、身体を震わせる。

つぐみ「...謝って」


女子3人「...?」


つぐみ「お兄ちゃんに謝って!!!!」


女子A「やだ」


つぐみ「....」


女子3人「あーっはっは!!!」


つぐみ「...ぅ...うぅ...うわぁぁぁぁぁぁ!!ぁ!!!!」

ゴゴゴゴゴゴ...!!!!!


女子3人「...!」


つぐみの身に、一体何が?!

 

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第45話 「エマージェンシー」

 

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《幸二・三太郎サイド》

2人は、幼稚園へ移動中。

幸二「...(レベル4...かなりのマヂカラだ。魔導書が消えたこと、そしてこの幼稚園からの反応...恐らく”そういうことだ”)」

三太郎「マヂカラがあるなら、魔法陣でワープできないのか?!」

幸二「流石に遠すぎる!もう少し近づいてからだ!」


《一善サイド/幼稚園》

一善、幼稚園に到着。

一善「(うわ...かなりのマヂカラが充満してる...どこからだ?)」


きゃぁぁぁぁぁ!!!!


一善「(奥か!)」


《幼稚園/本棚のある部屋》

ガラガラガラ!!

先生「どうしたの?!Aちゃん!!」

女子Aは泣きじゃくっていた。

女子A「つぐみちゃんが、いなくなっちゃって..」

先生「つぐみちゃんが?」

女子A「しかも、Bちゃんは、、Bちゃんは、、?」

先生「...?!」


女子A「お人形になっちゃった!!!」ド    ン!!!

 

先生「はい?!」

女子A「Cちゃんも、同じ、、うわぁぁぁぁん!」

床には、ズタボロになった本の山と、”2体の人形”が投げ捨てられていた。


そこへ一善が駆けつける!

ガラガラガラ!!

先生「あ!」

女子A「...!」


一善「ハァ...ハァ...」

先生「さっきの!」

一善「皆さん、ここから避難してください」

先生「?」

一善「ここには、”魔者”が居ます」


先生「魔物?」

一善の目には、大きく、継ぎ接ぎのある不気味なぬいぐるみのような魔者がハッキリと映っていた。園児2人が人形と化したのは、魔者の仕業である。


一善「はやく!!!みんなを連れて逃げてください!!」

一善が、目を先生の方向に逸らした隙に、魔物が女子Aを掴んで、持ち上げる。


女子A「キャーーーー!!化け物!!!」

この瞬間、魔者に触れられた女子Aは、魔者を視覚。そして、不自然に地面から浮かび上がった女子Aを見て、先生も動揺を浮かべる。


先生「あわわわわわ」


一善「しまった!」


そして、魔者は、本の山の上に、女子Aを叩きつけた。女子Aは、人形になった。


一善「...!!」

魔者「グルルルゥ....」

一善「(あそこにある本って....)」

一善は、つぐみにあげた本がズタボロになっているのを見る。

魔者「キィィィィアアアアア!!!!」


一善「行くよ。つのキング!!!」

ドロンッ!!


つのキング「ウォーーーーー!」

 

────


第46話 「退避命令」

 

────


《幼稚園/本棚のある部屋》

一善「つのキング。行くよ」

つのキング「ウォーーーーー!」


一善「緑のエレメント...巌窟王!!」

つのキング「ウォーーーーー!」

一善は、つのキングの肢体に、エレメントを付与。つのキングは、倍速で動くことが出来る。


一善「切り裂け!つのキング!」

つのキング「ウォーーーーー!」


つのキングは、ぬいぐるみの魔者を四方八方から高速で切りつけた。

魔者「ギャリャヤリャァァォ!!!」

一善「(効いてる...!攻撃に手応えがある。これなら、このままつのキングで...)」

魔者は、つのキングの連撃に為す術なく、動きを止めた。

一善「よし、つのキング!正面から貫け!!」

つのキング「ウォーーーーー!」


つのキングは、羽を広げ、少し助走をつけて正面から貫かんとした。しかし、魔者は、つのキングを、裏拳で払ってしまった。

一善「...?!」

その瞬間、つのキングは、小さいカブトムシの人形になってしまった。


ボテッ...


一善「つのキング?!!!」


魔者「キィィィィアアアアアヤヤヤ!!!」


一善「(つのキングまで人形に...ごめんな...)ならば、緑のエレメント、草枕!!」ジャキーーーン!!

一善は、魔者を斬りつけた。

魔者「グヘェア!」ブシュー!!!

一善「まだだ!緑のエレメント、伽羅枕(きゃらまくら)!!」

魔者「ブヘェア!!」ブシュー!!!

 

一善は、魔者の右足と左腕を切り落とした。


魔者「フゥ...」

一善「(回復が遅い。この魔者はあまり強くない...?)」


そこへ、幸二と三太郎が駆けつけた。

三太郎「一善!!!!」

幸二「...!!」


一善「2人とも!」

幸二「状況を確認したい」

一善「この魔者は触れると対象を戦闘不能にさせる。恐らく、人形の書の怪物だ。でもなんで?回収したはずなのに!」

幸二「承知した」


グゥウィン!!!!

魔者が、切れた四肢を再生させた。

魔者「キャエオォオオオオォォ!!!」ブゥン!!!

魔者が、園庭に逃げ出した!

幸二「このままだと周辺に被害が!」


魔者が逃げた先に、別の教員が、外でタバコをすっていた。

教員「風?なんだ?」

魔者は、教員を飲み込み、教員は、人形となった。

三太郎「初見殺しすぎだろ...!この能力」

幸二「...(一善らはまだ、普通の人間。少し毛が生えた程度の、ただの人間。死なせたら俺の負けだ)」

三太郎「まぁ、行くぜ!」

幸二「三太郎!一善!お前たちは逃げろ!」

三太郎「は?」

一善「...?!」


幸二「こいつは俺一人が請け負う。お前らは、園児らと共に避難!命令だ!」

三太郎「なんでお前に命令されなきゃならねぇんだよォ!

幸二「(従ってくれ...!お前達、マジで死ぬぞ?)」

魔者「キィィィィアアアアア!!!」


幸二「青のエレメント...ハート・THE・トリガー」


バキューーーーン!!!!

 

SOREMA -それ、魔!- 6 へ続く。

 

第39話 「サーフハウス」

第40話 「呪われた幼稚園」

第41話 「ある少女」

第42話 「一件落着」

第43話 「暗雲」

第44話 「怪事件」

第45話 「エマージェンシー」

第46話「退避命令」

 

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