草も生やせない、恋をした。④「落ちたのは落雷」

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第4話「落ちたのは落雷」


《ツチツチバーガー2号店》


ソラ「ハナ!!!」

ハナ「ういっす」

田中「あ、お友達?」

ソラ「はい!大学の!」

田中「そっか!!!好きなとこ座っていいので!!!どうぞ!!!」

ソラ「適当にすわりな?」

ハナ「ありがと!」

ハナは角の席に座り、私はおしぼりを置きに行った。

 

ユメ「楽しそうですね」

田中「そうだね!!!ユメちゃんは??最近どう???」

ユメ「うーん、、まぁまぁかな笑」

田中「へー!!まぁ悪くないならいんじゃん?!」

ユメ「もー、ほんっとてきとー笑」

田中は分かりやすく鼻を伸ばしながら、ユメをカウンターに通した。


私はハナの注文を持ち帰りつつ、ユメにドリンクをすすめる。

ソラ「ドリンク何飲まれます?ワインがオススメですけど」

ユメ「ふふっごめんなさい笑。私、未成年なんです」

ソラ「えー!!!!」

ユメ「ごめんなさい笑、老けて見えるかな、、」

ソラ「いやそんなことないです!!!綺麗過ぎて大人っぽすぎて、大人っぽいなーって!!」


ユメは所作からなにやらが洒落ている。ゆっくり動く細い指、神経が通っているかのような綺麗な黒髪、瞬きする度に綺麗な何かを撒いているようなまつ毛。さすがモデルと言ったところだ。


ソラ「結構1号店には行くんですか?」

ユメ「ええ。割とここのハンバーガー好きで」

ソラ「美味しいですよね!ありがとうございます」

ユメ「本当に美味しくて」

ソラ「田中さんとは元々お知り合いですか?」

ユメ「いえ、ここに通いだしてからですね」


ユメは淡々と、微笑みながら質問に答えてくれた。未成年とは思えない余裕を纏っていた。


ソラ「いつからここに通ってる感じですか?」

ユメ「3年くらい前ですかね?」

ソラ「結構な常連さんなんですね!」

ユメ「彼氏がハンバーガー大好きで、常連だったんですよ。それに釣られて私も笑」

ソラ「へぇー!!彼氏さんいるんだ!!さぞ素敵な男性なんでしょうね」

ユメ「ふふっ笑そうですかね」


そこにハナがやってくる

ハナ「私もお客さんなんですけどー?放ったらかしですかー?」

ユメ「ごめんなさい!お友達ですもんね」

ハナ「ってなにこの美人!可愛すぎる!」

ユメ「ありがとうございます笑」

ソラ「ごめんハナーもうすぐ出来るから」

ユメ「隣どうですか?」

空いたカウンターの隣を見つめながら言う。


ハナ「こんな美人の隣で食べていいんですか?」

ソラ「ユメさんがいいなら」

ユメ「ユメでいいですよ。年下なので笑」

ハナ「じゃあユメちゃんの隣は私が頂いた!!」

わちゃわちゃとカウンターで、ハナらは会話に花を咲かせていた。


一方厨房では、男3人が、せっせと注文を捌いていた。

田中「今日は女子が騒がしいな!!さて、野郎は肉焼くか!!」

ヒビキ「うっす」

アサ「そっすね」

田中「?」

アサは申し訳程度の微笑みを浮かべた。田中はアサをどこか心配そうに見つめた。


その頃ヒビキは寡黙に野菜を切り続けた。草。


ーーーーー

 

ソラはハナらの居るカウンターに料理を運ぶ。

ソラ「はい、こちらハワイアンクワトロバーガーです」

ハナ「ギャーうまそー!!」パシャパシャパシャパシャ

ユメ「私もこれ好きです」

ハナ「よーし!いただきまー...」

大口を開けて、分厚いハンバーガーを頬ばろうとしたハナは、隣の美少女にちらっと視線を飛ばし、我に返る。


ハナ「うわー私ブスだなぁー」

ユメ「そんなことないですよ。かわいいですよ笑」

ハナ「そうかな?どうかな?どうかな?どうかな?どうかな?田中圭!」

田中「バーベキューで!!!!」


ソラ「ユメちゃんは?食べていかないんですか?」

敬語とタメ語が混雑したぎこちない日本語で尋ねる。

ユメ「ごめんなさい。今日はもう行かなくっちゃ」

ハナ「え、ユメちゃん食べないの?」

ユメ「少し仕事の打ち合わせがあって」

ハナ「そうなんだ、仕事って何してるの?」

ユメ「モデルです」

ハナ「うっそ!!!どおりで可愛いわけだ!!」

ソラ「そのくだりもうやったのよ」

ユメは顔に手を当てて笑った。


ユメ「じゃあそろそろ私は...」

ソラ「ありがとうございました!」

ユメ「楽しかったです笑」

ハナ「お邪魔してごめんねーありがとう!」

ユメ「いえいえ!またここで会いましょう笑」

ハナ「またねー!」

田中「え、もういっちゃうの?!おい!!!」

厨房にも大きな声が響き渡った。

田中が出てきた時にはもうユメは店を出ていた。


ハナ「ユメちゃん行っちゃった...美少女...」

ソラ「可愛かったなあ...」

ハナ「でも何しに来たんだろ」

ソラ「暇つぶし...?」


ーーーーー


ハナ「ごちそうさまでした!ビールおかわりください!」

ソラ「飲みすぎじゃない?大丈夫?」

ハナはハンバーガーを平らげた後、ツマミのポテトとステーキの盛り合わせを肴に飲んだくれていた。

ハナ「うービール持ってきてー」

ソラ「ほんとにいいの?帰れる?」

ハナ「うーかえるー」

ソラ「もうかえれば?」

ハナ「うーまだいけるー」


すると厨房の奥からアサが頭をかきながらやってきた。

アサ「そろそろ俺あがりますね?」

田中「え!!今日早上がりだっけ??」

アサ「いや、人足りてるでしょ」

田中「そうだな!!いいけど!!どうせ暇なら飲んでいけよ!!」

アサ「今日はあがれるなら、近くで用事済ませたいので、すみません」

田中「珍しいな!!そか!!じゃあお疲れ!!」

ヒビキ「お疲れ様です」

アサ「おぬー、あ、ヒビキ、今度Switch持ってこいよ?」

ヒビキ「なんでですか?」

アサ「俺とバトルしろ!全国対戦ランキング最高順位7582位の俺の実力見せてやる!」

ヒビキ「すみません。自分最高17位です」

アサ「ガチ勢(粗品)」


ソラ「もう帰るんですか?」

アサ「僕はレディとのデートが待っているのでね(イケボ)」

ソラ「いや元々ラストまでだったじゃないですか嘘乙です」

アサ「草。おぬかれー」

ソラ「お疲れ様です」


アサは胡桃色のボアブルゾンに着替えて、真面目な顔で、足早に出ていった。


ーーーーー


ハナはカウンターでお酒を流し込み、他のお客もちらほらと見えたがぱらぱらと帰っていった。

田中「なんか雨降ってきたぞー!!」

ソラ「マジですか?」

ヒビキ「...」

ソラ「今日傘ないなー、、」


店には田中と私とハナとヒビキだけになった。もうラストオーダーの時間であるが、ヒビキとはまだ一言も交していなかった。どうしよう。話しかけてみるか。私は厨房の奥にいるヒビキに話しかけた。

ソラ「傘持ってる?」

ヒビキはじっとこっちを見た後、首を横に振った。

ソラ「帰り私の傘入る?駅までなら送るよ?」

ヒビキ「いい」

ソラ「そっか、、」


少し安堵のような、生ぬるい感情が沸いた。まぁまぁ自分にしては上出来な程度には話せたのではないかと思った。


一方外では、中から見える道路沿いの人が、全員傘を握りしめ、木々が全て同じ角度で傾いて見える程に、風が強くなっていた。

田中「ヒビキー!外の看板かたしてくれないか!!風が強くなってきた!!」

ヒビキ「はい」

田中「ぎゃはートイレトイレ、、」


ヒビキが外の看板を中にしまうべく、厨房の外へ出た。髪の毛の先を少し濡らしながら、看板を雨風の当たらない所へ移動する。そして、厨房に帰って来ようとしたその時。

ハナ「うぅーーさけぇー、、?」

ヒビキ「?」


ハナとヒビキの目が合った。


ハナ「え、好きです」


(トゥンク)(恋に落ちる音)


ヒビキ「...は?」

 

ソラ「え?」

ハナ「好きです!」

ヒビキ「?!」


ソラ「えー?!?!?!?!」


外では落雷が落ちた。

 

 

第5話に続く。