SOREMA外伝 The Parallel ④

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SOREMA外伝 The Parallel 4

 


《謎の場所》

 


モーニング「あらあら。2人もエージェントが役目を終えてしまいましたね」

ライト「…」

ジャスティス「しかも彼らは、世界同士の接近を更に近づけてる」

ライト「このままだと、世界が正面衝突して、どちらの世界も無事ではいられない…」

モーニング「パラドックスキーも1つ取られちゃったしね…あーあ。安心安全に世界を渡り歩ける僕達だけの特権なのにー」

 


ライト「これ以上世界が危機に向かうようなら…最終手段を取らないといけなくなるかもしれない」

ジャスティス「何それ」

ライト「監視対象の”消去”だ」

ジャスティス「…成程」

 


ライト「天堂幸二、虎走葉月という人間はどの世界にも”いなかったことにする”。世界の為に個人を犠牲にするのはあまり好ましくないやり方だがやむを得ん。それが私たち、世界の秩序を守るパラドックスエージェントの仕事だ」

 


フラワー「…それでいいのかな」

 


ライト「?」

 


フラワー「なんていうか…2人がちょっと、可哀想だよ」

ライト「…仕方の無いことだ」

ジャスティス「…」

 


モーニング「いっその事、パラドックスキーで2人を送り届けてあげたらどうです?」

ライト「それはエージェント規律に反する。如何なる理由があろうとも、個人の未来に肩入れしない。我々の鉄の掟だろう」

モーニング「全く、お堅いねぇ、ライトは」

ライト「…」

ジャスティス「…」

 


???「でも少し大変なことになりそうよ?」

 


フラワー「…!」

ジャスティス「?」

モーニング「おぉ!久しぶり!」

ライト「遅かったな、”スカイ”」

 


────

 


《謎の孤島》

 


俺たち3人は今、謎の孤島へやって来ていた。

 


時を戻すこと、今朝。

 


────

 


幸二「榊…なんでそれを…?」

榊「あぁ、昨日の夜、青髪の青年が接触してきたんだ。確か名前は…」

幸二・虎走「ジャ?!」

榊「あぁ、そうそう。そして彼がこれを」

幸二「なんでその”カギ”をジャスティンさんが持ってるんだぁ?!」

 


そう、榊は昨晩、ジャからキーを受け取っていたのだった。榊はキーを俺に預けた。

 


葉月「2つある…これ、どっちかが本物でどっちかが偽物ってこと?」

幸二「いや、よく考えろ。6っていうキーワード。これって6つあるキーを集めろってことじゃないのか?」

葉月「…!成程!」

幸二「ジャスティンさんもエコーと同じパラドックスエージェントで、パラドックスエージェントは6人。そしてそれぞれキーを持ってる…みたいな感じか?」

榊「そういうことか」

幸二「でもなんでジャスティンさんがパラドックスエージェントなんだ?こっちの世界のジャスティンさんなのか?それとも…?あぁ!!もうわからん!こんがらがってきた」

 


パチパチパチパチ…

 


そこにモーニングが手を叩いて現れる。

 


モーニング「ご名答。君達の導き出した答えはだいたい正解だ」

幸二「お前は…!」

葉月「…!」

榊「何の用だ」

 


モーニング「僕のヒントからよくここまで辿り着いた。褒めてあげよう」

幸二「そんなことを言うためにここに来たのか?」

葉月「あんたもパラドックスエージェントなの?」

モーニング「さぁ、どうだか」

榊「…!」

 


モーニング「一つだけ忠告してあげよう。君達、急いだ方がいい」

 


幸二「?」

葉月「は?」

榊「…!」

 


モーニング「君達が”存在し続けたい”なら、早く世界を手繰り寄せるんだ。敵は案外、近くにいるものかもしれないよ」

 


幸二「何を言ってやがる」

葉月「分かるように説明しなさい」

 


モーニング「じゃあ、僕はこれで」

 


するとモーニングの周りに突風の渦が現れる!!!

 


幸二「ちっ…!またこれか!!!」

 


風が止むと、モーニングは消えていた。

 


葉月「はぁ…急げって…どういうこと?」

幸二「分からない。分からないが、俺たちにあまり時間は残されていないのかもしれない」

榊「あぁ。青髪の青年も同じことを言っていた」

幸二「!」

榊「そしてここに行くようにと、地図を」

幸二「…!」

葉月「この場所って…!!」

 


────

 


そして俺達は孤島へと到着した。

 


この孤島、俺たちの世界では…

 


ロスト・フロンティアと呼ぶ。

 


────

 


《謎の場所》

 


ライトは険しい顔で1人、2つの地球を眺めている。

 


ライト「パラドックスキーが世界同士を呼び寄せている…」

 


 


ライト「そして…”スカイ”が言っていたあの事…本当ならば我々は何もせずとも監視対象を”消去”できてしまうということになる…」

 


────

 


《とある病院》

 


ピッ    ピッ    ピッ …

 


心電図モニターの音が響く。

 


ジャスティンは、目を覚まさない幸二を神妙な面持ちで見つめる。

 


ジャ「…」

 


────

 


幸二「おいおい、ここロスト・フロンティアだった島だよな?」

葉月「なんか雰囲気違うね。これはこれで気味悪い」

 


ロスト・フロンティアは、かつての要塞のような島からうってかわり、お城のようになっていた。

 


榊「ここであってるんだよな」

幸二「地図が指し示してる場所は間違いなくここだ。それにアンタ、この場所に来た記憶はないか?」

榊「ない!」

 


お前あんなにここで好き勝手やってたのに!別人なんだろうけど!

 


榊「ここに私達が会うべき人間がいるということだが」

幸二「そうだな」

 


???「ここは立ち入り禁止よ」

 


どこからか、突き刺すような女性の声がする。

 


???「立ち去りなさい!部外者!」

 


ザザッ。

 


幸二「…!あなたは!」

 


そこに現れたのは…

 


安西「あなた達何者?ここは研究機関500(ファイブダブルオー)が所有する特別施設よ。あなた達のような部外者は立ち入り禁止よ」

幸二「安西…さん?!」

 


安西亜珠。魔裁組第2支部研究班の班長助手である。性格は優しく温厚、世話焼きと言ったところだが…

 


安西「分かったらとっとと帰りなさい!!」

 


どうやら性格は真逆らしい。さすがパラレルワールド

 


幸二「安西さん!聞いて欲しい話があるんです!」

安西「なんですって?どうしてあなた、私の名前を?」

葉月「私達のこと覚えてませんか?お願いします!こいつの話を聞いてあげてください!少しだけでもいいので!」

榊「ついでに私の事は覚えていないか?!」

幸二「やめとけ覚えてたら殺されるぞ」

 


安西「…どちらにせよ、ここで引き返さないなら、土足で入ったペナルティとしてここで捕えるわ」

 


安西さんが手を鳴らすと、スーツの男達が俺達を取り囲んだ!

 


幸二「…ちっ」

葉月「話を聞きいれてはくれなそう」

 


幸二「五百旗頭渚!この名前に聞き覚えは無いですか!!」

安西「は?五百旗頭渚?」

幸二「はい!(頼む…思い出してくれ…!)」

 


安西「なんであなたが五百旗頭の名前を知ってるの?」

幸二「え?」

葉月「記憶が…ある?」

 


幸二「覚えているんですね!五百旗頭さんのこと!」

安西「覚えてるって何よ?だってこの施設の主は…」

 


安西さんが続けようとすると、ガラガラとキャリーバッグの音を立てて、サングラスを着けた薄着ナイスバディの少女が現れる。

 


???「エクスキューズミ〜ちょっとどいて〜」

 


スーツの男達はしどろもどろになりながら道を開ける。

安西「?次から次へと、あなた何者?」

 


少女はサングラスを外す。

 


美波「呼ばれたから来たんだけど。私、南野美波。ナイストゥーミーチュー」

 


み、南野?!

あの南野美波なのか?今俺の目の前にいるのはいかにもザ・帰国子女と言わんばかりの服装や雰囲気のイケイケ風バイリンガールなのだが?

 


美波「あなた達のボスに呼ばれて来たの。研究の手伝いが必要なんでしょ?」

安西「…そう、なの?(なんでそういう重要な事を私に言わないの!”あの人”は?!)」

 


南野美波。魔裁組第2支部実働班のメンバー。紫のエレメントの使用者であり、回復魔法の使用者でもある。普段は大人しく、あまり口数が多い方ではないが、底力は凄い。

 


葉月「み、みなみちゃん?」

美波「そうよ。What's going on?」

葉月「うぅ…キャラが違いすぎて胃もたれしそう…」

幸二「よ、よく分からないが南野、そして安西さん!魔法について話したいことがあるんだ!」

美波「Magic?Are you a magician?a wizard?lol

幸二「はは。ついていけねぇ」

 


安西「とにかく、あの人の許可が降りるまではここに…」

 


???「いーよー」

 


安西「!!」

美波「?」

幸二「!!」

葉月「!!」

榊「?」

 


そこに、聞き慣れた声がする。

 


声の主は、城の上の方の窓から身を乗り出して、俺達を見ていた。その声の主こそ…!

 


五百旗頭「みんな入っちゃいなよ〜!」

 


幸二・葉月「五百旗頭渚!!!!」

 


五百旗頭渚。魔裁組第2支部研究班の班長であり、魔法界人間国宝の1人。エレメントシステムの先駆者であり、各色のエレメントの技術を確立した功労者。性格はぼーっとしていて、どこか抜け感があるが切れ者である。

 


五百旗頭「かもんかもん!」

 


安西「はぁ…全くあの人ったら」

美波「んじゃ、お邪魔するわね〜。サンクスフォーユアヘルプ」

 


南野はキャリーバッグを引いて城の中へ入っていく。

 


美波「あ、これ持ってて」

スーツ男A「あ、は、はい…」

 


美波「うわ〜So beautiful…!」

 


幸二「…俺達も行こか」

葉月「そうだね」

榊「…」

 


俺達も、城の中へと続く。

 


────

 


そして、この様子を草陰から監視していた人間がいた…

 


フラワー「…」

 


────

 


五百旗頭「ようこそ!我が五百旗頭キャッスル!そして、秘密組織ファイブダブルオーへ!」

 


五百旗頭さんの全く秘密感のないヘラヘラした挨拶と共に、安西さんが紅茶を持ってくる。キャラこそ違えど関係性は案外似たようなものなのか。

 


五百旗頭「で、まずは美波ちゃんだ。初めまして、日本の天才、五百旗頭渚ちゃんでぇーす!」

美波「この人が新しいボス?oh my gosh…かなり飛んでるわね」

安西「まぁ、そこは同意だわ」

 


美波「私は南野美波。あなた達の研究の為にはるばるロスから来たの。よろしく」

安西「えぇ、よろしく」

五百旗頭「ま、お堅い話は後で後で!美波ちゃんはどんな男が好きなの〜?」

 


位置変えゴリラ見てぇなこと聞くな。この人。

 


美波「そうねぇ。日本の男はヒョロい男が多いから、ビッグで逞しい男が好きね」

 


向こうと全然ちげぇぇぇ!

 


榊「この子も、君達の仲間なのか」コソコソ

葉月「そうだけど、キャラ違いすぎて草って感じ」コソコソ

 


その様子をフラワーは盗み見る。

 


フラワー「…」

 


五百旗頭「で、君達は?招いた覚えはないけど?」

 


幸二「あ、はい、僕達は御三方に聞きたいことがあって」

五百旗頭「御三方?私と?」

幸二「安西さんと、南野、君だ」

安西「…?」

美波「ミー?」

 


幸二「えーっと、まずこいつの顔に見覚えないですか?」

榊を前に出す。

 


榊「え、私?」

 


五百旗頭「うーん、ない」

 


ダメか。

 


五百旗頭「あなた男前ね。私と働く?」

 


引き抜くな!

 


榊「うーん、貴方の様な聡明な方と働けるのも悪くないが…待っている人がいるのでね」

 


乗り気になるな!

 


五百旗頭「なんだ妻子持ちか…はいはい」

榊「あ、いや、待ってるってそういう意味では…」

五百旗頭「え、じゃあどういう意味?」

榊「私の、恋人は、この国さ!」

 


言いたかっただけだろ。

 


美波「なにそれ」

安西「構うだけ無駄よ」

 


榊「僕は別の世界で、人々をゼクシーザの驚異から守る、光の戦士なのだよ!」

五百旗頭「別の世界…ゼクシーザ…?」

 


ギィィィン…!

 


五百旗頭「…うぅ…!!」

幸二「…!(来るか…!)」

 


フラワー「…!」

 


安西「五百旗頭!…うぅ…って私も…!!」

葉月「2人とも…!」

美波「ちょっと、あなた達、どうしたの?」

 


一方榊は、自分の世界に入り込み演説?を続ける。

 


榊「私はか弱い人々の為に、ゼクシーザという悪を滅ぼす!それが正義なのだ!これ以上、犠牲を出さぬ為にも、私は元の世界に帰らねばならないのだ!」

 


お前がここでそういうこと言うとめっちゃパンチあるな。

 


美波「でも、その話少し興味あるわ。”私達の研究”ともシナジーがありそうだし」

五百旗頭「その…話…詳しく…聞かせてもらえるかしら…」

幸二「…?」

葉月「どういうことですか?」

安西「私たちは…パラレルワールドの可能性について研究しているのよ…!」

 


幸二「…!」

葉月「…!」

榊「なんと!」

 


────

 


少し落ち着いて、俺達は今日までのことを話した。

 


五百旗頭「んなるほどねぇ。君達の世界は魔法ってものがあって、私はそこでも天才扱いされてるってわけねぇ!さすが私だわ〜!!」

安西「自惚れるのは後。これは研究にとって大きな進歩となるデータよ!それで、どうやってこの世界へ来たか、覚えてる?」

幸二「確か…雷」

葉月「あ!そうそう!雷!私その時支部…あ、いや、東京タワーにいて!」

幸二「俺もだ。スカイツリーに居た時に、落雷が…」

榊「私も戦闘中に…」

美波「なるほどねぇ」

 


安西「まず私達の結論では、パラレルワールドは存在するということになっている。あなた達の存在も、その証明に繋がると思うわ」

幸二「はい」

安西「世界はそれぞれ独立して動いているけれど、約100年に一度、大世界…つまり、世界の集合体の調和を保つ為に、世界同士が接近するの」

幸二「世界の接近?」

安西「それが何のために行われるかは分からないけど、そのようなものがあるって事だけは本当よ」

榊「成程」

 


美波「そしてその世界同士がapproach(接近)する時、小さなfriction(摩擦)が生まれる。そうよね?」

安西「そう。静電気みたいなものね。それがあなた達が浴びた落雷の正体よ」

五百旗頭「そゆこと〜」

 


葉月「はぁ。難しくてよくわかんない。コージ君聞いといて、ちょっとトイレ」

幸二「お、おい!」

榊「まぁいい。私達が聞こう。続けてくれ」

 


葉月は席を外した。

 


安西「その落雷に巻き込まれた人間がどうなるのか、今まで分かっていなかった。でも今回の事から考えると恐らく」

五百旗頭「落雷に巻き込まれた人間は、並行世界に飛ばされる」

安西「…でも、同じ世界に同じ人間は2人と存在出来ないはず」

美波「だからもう1人の彼らはautomatic(自動的)に彼らが元いた世界に送られる、ってことじゃない?」

幸二「…(確かモーニングとか言う奴もそんなことを言っていたような…)」

 


美波「まぁでも残念だけど、あなた達が元の世界に戻ることはimpossible。不可能よ」

安西「100年後また落雷に打たれて、運良く戻れれば御の字、と言ったところでしょうね」

 


幸二「いえ、それがそうでもなさそうなんですよ」

安西「なんですって?」

五百旗頭「ん?なに?」

 


幸二「パラドックスエージェント…って知ってますか?」

安西「パラドックス?」

美波「agent?」

 


幸二「はい。俺達が最初にこの世界に来た時、モーニングと名乗る謎の人間が接触を図って来ました。奴は人智を超えた俺達の世界で言う魔法のような力を使っていました。そしてそいつが俺達に元の世界で関係のあった人物と接触するよう、間接的に促したんです」

安西「ほう」

 


幸二「そして俺達は、かつての仲間を探し、俺達の世界の記憶を引き出すよう語りかけた。すると彼らは揃って、頭を抑え、キーワードのようなものを頭に浮かべた。まるで他の誰かから、俺達に伝えるよう言われた、とでもいうように」

美波「へぇ」

安西「興味深い…」

 


幸二「先程の五百旗頭さんや安西の反応も同じようだった。だから、もっと俺達の世界の記憶を呼び起こせば、キーワードが導き出せるはず…!」

美波「I see...」

安西「でもそんなこと初めて…」

 


五百旗頭「ふっふっふっ」

 


安西「…?五百旗頭?」

幸二「…?」

 


五百旗頭「はっはっは!本当にいたのね!パラドックスエージェントは!!!」

 


美波「ちょ、大丈夫?頭」

榊「…!」

幸二「ど、どういうことですか?」

 


五百旗頭「私の仮定と一致したのよ。絶対に居ると思ってた、世界同士を監視し、私達のそれとは一線を画す、超越した存在が。大世界の秩序を守る存在がね!嬉しいわ〜!」

安西「そ、そうなの?五百旗頭?」

 


五百旗頭「そうよぉ。私の仮定では、そのパラドックスエージェント…私は監視者と呼んでいたわ。監視者は、複数存在し、別世界から紛れた人間を監視する。そして、大世界全ての人間を超越した力で管理する。それが貴方の言うパラドックスエージェント、なのね」

幸二「分からないですけど恐らくそうですね。今まで集めたキーワードはパラドックス、エージェント、カギ、持ってる、6、6つ、6人」

五百旗頭「てことはパラドックスエージェントは6人いて、カギは6つある!これで決まりね!」

幸二「そういうことです」

美波「Unbelievable!」

 


榊「そうだ、あれ、見せてやったらどうだ?」

幸二「あ、忘れてた」

五百旗頭「ん?」

 


────

 


葉月はトイレを済ませ、元いた部屋に戻ろうとする。

 


葉月「はぁ〜。難しすぎてわからんっつうの。てか、本当に元の世界に戻れるのかねぇ」

 


ため息をついていると、部屋の入口で”とある少女”の、幸二らを覗いている後ろ姿を目撃する。

 


フラワー「…」

 


彼女の手には、幸二が手にしているカギと同じもが握られていた。

 


葉月「…君は?」

 


フラワー「…!!」

 


フラワーは、慌てて振り向く!

 


葉月「あれ?花ちゃん?」

フラワー「…!!」

 


幸二らは、葉月の声に気が付き、全員振り返る。

 


フラワー「あ、いや、その…」

安西「また来客?あなた、いつから居たの?」

五百旗頭「まぁまぁ、いーじゃんいーじゃん?」

 


葉月「ねぇ…なんで、ここにいるの?」

幸二「ん?知り合いか?」

葉月「うん、この子、この世界の私の友達…なんだけど…」

幸二「そういえば、あの顔学校で…!」

 


葉月は不安そうな顔でフラワーを見る。

 


フラワー「……」

 


葉月「ねぇ、その手、何持ってるの?」

フラワー「……」

葉月「見せて?」

フラワー「……ごめんなさい!!!」

 


葉月「!!」

 


フラワー「私…パラドックスエージェントなんです!!!」

 


葉月「…え?」

安西「彼女が…」

五百旗頭「パラドックス、エージェント?!?!」

 


フラワー「騙しててごめんなさい。これ…」

フラワーは手に隠し持っていた3つ目のパラドックスキーを葉月に渡す。

葉月「これって…」

 


フラワー「ごめんなさい…!私、葉月ちゃんの監視役として、葉月ちゃんを騙してたの…!ごめんなさい!」

葉月「ちょ、花ちゃん?」

フラワー「私はフラワー。本当はこの世界の葉月ちゃんの友達なんかじゃない。私はパラドックスエージェントとして、監視対象の葉月ちゃんを監視してただけなの!」

葉月「…ごめん、難しくてよく分からない!」

 


フラワー「本当は…本当は…あなた達を元の世界に帰らせないために、あなた達と彼女(五百旗頭)達…”バイパス”の人達を接触させない事が目的で来たの。このパラドックスキーも、渡すつもりもなかった…」

葉月「…」

フラワー「あなた達特異点が元の世界に帰ろうとして、友達達に記憶を与え続けると、接近して離れていく筈の世界がまた接近して、ぶつかって壊れちゃうから、私達はあなた達を妨害して、世界の破壊を阻止しないといけないの…!」

 


成程、俺達がしていたことは図らずもこの世界の危機を呼んでいたということか。

 


フラワー「でも、あの日学校の屋上で…」

 


幸二「…!」

 


フラワー「彼の想いを聞いて、可哀想だなって思った…何とか元の世界に戻してあげたい…って」

幸二「…!聞いてたのか」

葉月「それでこの鍵を…?」

フラワー「この鍵は私達じゃないと使えない鍵。でも、6つ揃うと、元の世界に戻ることができるかも」

幸二「かも?」

フラワー「確実ではないけど、可能性はある」

榊「運が絡むということか」

フラワー「でもこのままあなた達が行動を続けていると、世界が壊れちゃう…はずだったんだけど」

 


葉月「はずだった?」

 


フラワー「急いで、あなた達には時間が残されてない!」

 


幸二「なぁ!その、時間が残されてないってのは、どういう意味なんだ?!」

フラワー「早くしないと…しん……」

 


バタッ

 


フラワーは気を失ってしまった。

 


五百旗頭「ちょ!あなたには聞きたいことが沢山あるわ!!安西!!手当!!」

安西「承知!ちょっと待ってて!おいそこの男達!担架持ってきて!」

美波「oh  my  gosh....」

 


────

 


結局、フラワーは俺たちが帰るまで目覚めなかった。

 


五百旗頭「今日はありがとう!研究のことならいつでも呼んで!」

安西「気をつけて帰るのよ」

 


幸二「見送りまですみません、また世話になるかもしれません」

美波「ま、これからもウィンウィンで仲良くしましょ」

葉月「この世界に残ってればね」

榊「では行こうか」

 


五百旗頭「ばいば〜い!!」

 


────

 


俺達は船にのり、帰路に着く。

 


葉月「花ちゃん、なんか怪しいと思ってたんだよなぁ」

幸二「そういえば彼女、倒れたまんまで大丈夫だったのか?」

葉月「五百旗頭さん達に任せておけば大丈夫っしょ!」

幸二「薄情だな!」

 


────

 


その頃、五百旗頭キャッスルでは。

 


花「は!目覚めた!」

安西「!!ちょっと五百旗頭ー!!パラドックスエージェントが目を覚ました!」

五百旗頭「今行く!!!」

花「えーっと、ここどこ?!」

 


安西「ここは研究施設の中よ。パラドックスエージェントの貴女には沢山聞きたいことがあってね、協力してくれるかしら?」

美波「…」モグモグ

 


花「えー?!何言ってるかわからない!!!そんなことよりバイト行かなきゃ!!ばいばい!!!」

 


ピューーーーン!!

 


花は全速力で立ち去っていった。

 


安西「は〜?!」

 


そこへ五百旗頭が現れる!

 


五百旗頭「おっはよう!パラドックスエージェントぉ!!!」

 


 


五百旗頭「あれ?パラは?」

安西「よく分からない。どっかに消えたよ。てか何よその呼び方」

五百旗頭「ぐぬぬ…!!!私の研究がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 


美波「to be continued…ってわけね」

 


────

 


幸二「これで残す所鍵は3つだな」

榊「だがパラドックスエージェントを見つけられない限り、鍵は見つからないぞ」

幸二「…そうだな」

葉月「やっぱり、魔裁組の人達を探し続けるしかないのかな」

幸二「どうだろう。五百旗頭さん達の元にキーワードは降ってこなかった。もうキーワードは出尽くしたのでは無いかな…」

葉月「そ、そんな…」

幸二「でも一つだけ、気になることがある」

葉月「?」

 


幸二「あのモーニングとやらが残した言葉”敵は案外近くに…”って言葉、少し心当たりがある」

榊「どういうことだ、まさか、私?!」

幸二「おい!話をややこしくするな!」

葉月「え、私?!」

幸二「そうじゃねぇよ!もう呼び出してある」

葉月「え?」

 


スタスタスタ…

 


一人の男が現れる

 


幸二「来てくれたんだな、俺の親友…いや」

 


榊「?」

葉月「?」

 


幸二「パラドックスエージェント、さん」

 


ライト「…」

 


葉月「あれ…この人って確か…」

榊「友達か?」

 


幸二「あぁ。山田光、だよな」

 


ライト「いや、僕の名前はライト。君の言う通り、パラドックスエージェントだ」

 


────

 


《とある病院》

 


職員「お客様、面会希望でしょうか?」

???「はい」

職員「面会希望者のお名前は…」

???「天堂幸二、虎走葉月…それと──」

 


職員「…以上3名ですね、ありがとうございます。では来院者様のお名前をお願い致します」

 


朝「はい。三ツ木朝といいます」

 


────

 


ライト「…」

幸二「キーを渡して欲しい」

ライト「それは出来ない」

幸二「…」

 


ライト「君達には申し訳ないが、世界の為だ」

 


幸二「…」

葉月「何とか方法はないの?!」

 


ライト「パラドックスキーを我々以外の人間が使うことは許されていない。他に方法はない。以上だ」

葉月「ケチ!」

 


榊「我々は、ずっとこの世界で一生を過ごしていくというのか…?」

 


ライト「…」

 


幸二「お前の仲間は、俺達に時間が残されていない…と言った。それはどう言う意味だ?」

 


ライト「…」

 


葉月「私達が元の世界に戻れるようになるには制限時間があるってこと?」

 


ライト「…」

 


榊「まさか…世界の衝突による滅びが始まるということか?」

 


ライト「…」

 


幸二「それは無いだろう。だとしたら、黙ってお前たちエージェントが見ているはずがない」

 


ライト「…」

 


幸二「俺達は、どの世界にも存在出来なくなる…違うか?」

 


葉月「え!!」

榊「!!」

 


ライト「…!」

 


幸二「最悪だ、その反応、図星なのかよ。どうせあれだろ、別世界の人間は、その世界に適応出来ずに、時間が経過するとその場に居られなくなる…といったような話か」

 


ライト「いや全く違う」

 


幸二「違うんかい!!!!」

 


ライト「全てを話そう。君達にはそれを知る権利がある」

幸二「…!」

葉月「…!」

 


ライト「君達のした行動は、離れゆく世界を再び近づけた。故に、このままだと世界は衝突し、崩壊する、はずだった」

幸二「…」

葉月「…」

 


ライト「この世界の君達は、君達が元いた世界の君達と生まれ変わり、魔法使いとしての人生を歩もうとしていた。だが、この世界の君達には魔法への耐性がない。故に今、元いた世界では君達が魔法に冒されている」

 


幸二「…!」

葉月「…!」

幸二「成程、この世界の俺達にはマヂカラへの耐性がない…!だから…!」

葉月「魔導書のマヂカラが体を…!」

 


ライト「そしてこのままだと、魔法の世界の君達は死に至り、そして…」

 


幸二「俺達は、存在出来なくなる…」

 


ライト「そういう事だ」

 


葉月「でもおかしくない?こっちの世界では死んじゃった人も、向こうの世界では生きてたりする!そういう場合はどうなるの?」

 


ライト「それは世界の正史によるものである故、問題は起きない。

榊「正史?」

ライト「運命といった方がわかりやすいかな。だが今回は、本来死ぬ運命ではなかった人間が、世界を渡ったことで死ぬ。その場合連動する運命が書き換えられ、全てを無かったことにする。故に君達も、無かったことになってしまう」

葉月「…そんな」

幸二「…!」

 


ライト「そして榊天慈」

榊「…何だ!」

 


ライト「君は誰かに呼ばれてこの世界に来ている」

 


幸二「!」

葉月「え!サカキンが?」

 


榊「どういうことだ?」

 


ライト「本来、摩擦によって世界を渡った特異点のデータは全て我々パラドックスエージェントに共有され、それを元に我々は特異点を監視する。だが、君のデータだけはどこにも共有されていなかった。君もまた、特異点だというのに」

 


榊「…?」

 


ライト「君は意図的にこの世界に連れてこられている」

 


榊「…なんだと?!」

 


ライト「理由は分からない、だが何者かが君をここに呼び出し、何かを企んでいるということだ」

 


幸二「何者って…誰なんだよ、そりゃ!」

 


ライト「分からない。だがこんな事をできる存在は限られている」

 


榊「…」

幸二「…」

葉月「…」

 


ライト「榊天慈、君はずっとこの世界で、残りの人生を過ごすことになるだろう。君を連れてきた者を明らかにし、その歪みを戻すことが出来なければ」

 


榊「…!」

 


ライト「最後に、天堂幸二、虎走葉月。申し訳ないが、君達の命は短い。残りの余生を楽しんでくれ。もう無駄なことをする必要は無い。それを伝えに来た」

 


幸二「…!」

葉月「嫌だ…嫌だよ…」

榊「何て事だ…!」

 


ライト「では、失礼する」

 


幸二「俺は…」

 


ライト「…」

 


幸二「こんな所で…終われない!」

 


ライト「…!」

榊「!」

葉月「!」

 


幸二「俺はまだまだ、向こうに帰ってやらないといけないことが沢山ある!まだまだ俺は、やるべき事を果たせてないんだ!」

 


ライト「…」

 


幸二「もっと誇り高き魔法使いになって、平和な世界を作りたい!誰も魔法で泣かない世界を、俺は作るって、兄さんと約束したから!」

 


ライト「…」

 


幸二「それに、きっと待ってるんだよ。待っててくれてるんだよ!俺の仲間達が!皆!俺達の帰りを待ってる!だから俺は、最後の最後まで諦めない!」

 


葉月「コージ君…」

 


幸二「お前がどうしようと知ったことか!俺は力づくでもお前からキーを奪うぞ。体が消える直前まで俺は諦めない。きっと俺の仲間ならみんなそうしたはずだ。並大抵の覚悟で魔法使いやってねぇんだよ!俺達は…!!」

 


葉月「…わ、私も!同じ!最後まで、諦めない…!」

 


榊「君達…」

 


ライト「…」

 


幸二「だから、俺達は、」

 

 

 

チャリン…

 

 

 

すると、甲高い音を立てて、なにかがライトの手元から零れ落ち、地面を跳ねて俺の足元へと転がる。

 


ライト「…」

 


俺はそれを拾い上げる。

 


幸二「これって…」

 


それは、ライトが持っていたパラドックスキーだった。

 


葉月「カギだ…!あなた!」

ライト「…見なかったことにしてくれ」

 


ライトは、俺達に背を向けて歩いていく。

 


幸二「…助かった!」

 


ライト「…(なら足掻いてみるがいい。最後まで…うっ…頭…が…)」

 


ライトの姿は見えなくなった。

 


幸二「これでキーは4つ…」

葉月「あと2つ…これなら、本当に帰れるかも!!」

榊「…(俺を呼び出したのは、誰なんだ?)」

 


幸二「待っててくれ…皆!」

葉月「そういえばさ、もう実働班の人にはみんな会ったっけ?」

幸二「伊藤は会ってないな」

葉月「会いに行けないアイドルで有名ないろは坂46になってたしなぁ…」

幸二「あともう1人、消息すら掴めてない奴がいる」

葉月「あ…」

 


幸二「そう、油木一善」

 


────

 


《とある病院》

 


朝「天堂幸二。もう少し生きてみたいでしょう」

 


幸二は目を覚まさない。

 


朝「ふふふ。分かります。君の魂がそう叫んでいます。良いでしょう。君に少し時間をあげよう」

 


ドクンッ。

 


ギロッ!!!!

 


幸二は目を開けた。

 


体は動かないまま、真顔で呼吸のみを繰り返す。

 


朝「ふふふっ…!もう少し、もう少しなのです…!」

 


朝は部屋を移動する。

 


朝「あと2人…君達も生きていたいでしょう?虎走葉月…そして…」

 

 

 

303号室。そこで眠っている青年…その名は。

 

 

 

朝「油木一善…!!!」