SOREMA外伝 The Parallel ③

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《謎の場所》

 


ライト「集まったか?お前たち」

ドリーム「はい」

エコー「あぁ」

フラワー「…」

モーニング「ところでまた彼女が居ないようですが」

ライト「彼女は監視対象の元にいる」

エコー「ちっ。世話焼きすぎだろ、あの女」

 


ドリーム「で、今日は何のために号令を?」

ライト「あぁ。モーニング。お前のしでかした過ちで、監視対象の動向が危険な水域に達しつつあるぞ」

モーニング「えー僕ですか?」

エコー「てめぇ、とぼけてんじゃねぇぞ?俺たちはな、この世界全てを守る義務があるんだ。たった6人でだ!それをお前が余計なことをしたせいで…!」

 


ライト「まぁまぁ。怒っていても埒が明かない。こうしている間にも私の監視対象は着々と帰還準備を進めている。そうだな、フラワー」

フラワー「…はい」

ライト「これより我々は次の段階、直接介入に警戒ギアを上げる。平行世界を介して記憶を呼び起こす事象が起きれば起きるほど、世界の衝突は避けられなくなる。だから我々は何としてでも、監視対象と”バイパス”達の邂逅を阻止するのだ…!」

 


────

 


《ツチツチバーガー1号店》

 


幸二「もぐもぐ…ここのハンバーガーうめぇなぁ!」

葉月「最近できた新しいハンバーガーショップらしいわ」

榊「実に美しい」

 


するとそこに美少女の店員がやってくる。

 


???「おいしいですか?ありがとうございます!」

 


幸二「…!あ、あなたは!」

葉月「第2支部の…!」

榊「?」

 


幸二・葉月「莉茉さん!!!」

 


莉茉「え…?あ!名札ですね!はい!こんにちは!莉茉といいます!初めまして!」

 


越前莉茉。魔裁組第1支部実働班所属の魔法使いで、青のエレメントと桃のエレメントの二色使い。そして公式設定で美人であり、ミス魔裁という異名もある。

 


幸二「やはり初めましてか」

葉月「もう1人くらいこっちサイドの人いてもいいと思うんだけどなぁ」

莉茉「こっち…サイド?」

 


俺達がテーブルで話し込んでいると、裏で怪しい影が暗躍していた。

 


ドリーム「…(あれがライトとフラワーの監視対象…確か名前は…天堂幸二と虎走葉月!そして、あの店員が”バイパス”の、越前莉茉!早く彼らを離さないと…!)」

 


ドリームは莉茉と同じ服装に着替える。

 


???「あの、店員さん!」

 


ドリーム「(あ、私?)あ、はい!」

 


???「ハンバーガー1つ!インスタで映えさせたいから、ソース超超超超大盛りで!」

 


────

 


ドリーム「(ちっ、邪魔が入った…!てか、あの莉茉って子、いつまで話してるの?普通の飲食店ならクビよ?まぁいいわ、記憶は書き換えたから、私が干渉して…!)」

 


ドリームは俺達のテーブルに割って入ってくる。

 


ドリーム「あの、莉茉ちゃん?そろそろいいかしら?」

 


莉茉「あ、あ、えーっと…ピピピピ…ユメさん!すみません!」

ドリーム「うん。あとこれからここのテーブル、私が担当するから、あなたは向こうの水色の髪のお客さんの担当して!」

莉茉「あ、はい…!」

ドリーム「(これでこいつらを引き離せる…!)」

幸二「…(おいこの店員、余計なことするな!)」

葉月「…(まだキーワード聞き出せてないのに…!)」

榊「実に美味」

幸二・葉月「いつまで普通に食ってやがる!」

 


幸二「てか、さっきあの店員、水色の髪の客っつったか?」

葉月「あ、うん、言ってたけど…」

 


ホワホワホワ…

 


恐らく俺たちは同じ顔をイメージしただろう。

 


幸二「…まさか」

葉月「まさかね」

 


???「ねぇーちゃん!コーラ超超超超遅いんだけど!!!」

 


幸二・葉月「絶対あの人で草ァ!!!!」

 


ピュン!!!

 


俺達は美味しくバーガーを召しあがる榊を置き去りに、”水色の髪の客”の元へ向かった。

 


幸二「あなた、ジャスティンさんですよね?」

葉月「神野…なんだっけ…?」

ジャ「…超誰?」

 


”水色の髪の客”は、謎のゴーグルをつけて、ナゲットをムシャムシャと食いながら、きょとんとした。

 


幸二「…まぁいいや!あなた、お名前は?」

ジャ「…ジャ」mgmg

幸二「ジャ?」

葉月「ジャ…ス…?」

ジャ「ジャ」

幸二「ジャスティ…?」

ジャ「ジャ」

葉月「続きは?」

ジャ「ジャ」

 


幸二「ジャ?!?!お前の名前は、”ジャ”なのか?!」

ジャ「うん。僕は”ジャ”。よろしく」

 


幸二・葉月「”ジャ”だと〜?!??!!!!」

 


幸二「おいおい目を覚ませ!君の名前は、ジャ なんかじゃないはずだ!そうだよな!」

葉月「ジャスティンって長くて文字数の圧迫になっちゃうから、「」の前に”ジャ”しか付けられないから、その恨みと自虐でジャって名乗ってるだけよね?」

幸二「君の本当の名前は神野ジャスティン護だ!!!」

 


ジャ「…なんかよくわからないけど、とりあえず今の名前は”ジャ”だから。また名前変わったら教えるよ」

幸二「は?こいつぶっ飛んでんな」

葉月「あなた、魔法使える?」

ジャ「うん。使えるよ」

幸二「え」

葉月「マジっすか?!」

ジャ「エクスペクトパトローナム!」

幸二「それ他作品じゃボケ!」

葉月「何この人私達の世界以上にぶっ飛んでるわ」

幸二「こうなったらこの人にありとあらゆる情報をぶつけて、キーワードを吐かせるんだ!」

葉月「おう!」

 


────

 


ドリーム「失礼します、コーヒーでございま、」

 


榊「ありがとう。うん。いい香りだ」ボッチー

 


ドリーム「(なんでアイツらが居ないのよ!!!)」

榊「君、綺麗だね」

ドリーム「あ、ありがとう…じゃないわ!あいつr…あのぉ、お連れ様はどちらに」

榊「彼らは向こうのテーブルに移動したよ」

ドリーム「はぁ?!」

 


ドリームは俺達のテーブルを見たが、そんなことはお構い無しだ。とにかく俺達はジャにキーワードを吐かせることに必死だった。

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「スノウジェム!」

ジャ「Rin音?」

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「氷結のアリア!」

ジャ「お酒?」

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「硬金氷鬼!」

ジャ「平仮名じゃだめ?」

 


葉月「白のエレメント!」

幸二「ジ・エターナル!」

ジャ「うわぁ厨二病だぁ」

 


葉月「はぁ…はぁ…全くだめね…」

幸二「はぁ…はぁ…まてまて、なんでお前が息切れしてるんだ?」

葉月「だって…こんなに羅列しても、何も思い出してくれないから…」

幸二「羅列してるのは俺なんだが?お前、ただの「白のエレメント!」botじゃねぇか」

葉月「とにかく、続けましょ」

幸二「いや、闇雲にやっても仕方ない…!他の方法でいくぞ!」

 


莉茉「あの…お紅茶お持ちしました…」

幸二・葉月「ちょっとすっこんでろ!!」

莉茉「は、はいぃぃぃ!!!」

 


ドリーム「(どうなってるの?この空間にバイパスは彼女1人のはず。現に、あのよく分からない男からは、何も感じない…とにかく、越前莉茉と彼らを監視しながら、このままやり過ごすしかなさそうね)」

 


幸二「五百旗頭渚!なぎちん!わかるだろ!」

ジャ「なぎちん?██████?」

幸二「コンプラ!!!」

 


葉月「はぁ…なんでこんなに思い出してくれないの…?」

 


”ジャ”は表情一つ変えずにポテトをムシャムシャしている。

 


幸二「もう分かった!おいジャ!右手を出してみろ!」

ジャ「右手?はい」

幸二「手を上に向けて、薬指と親指で輪っかを作れ」

ジャ「こう?」

幸二「あぁそうだ」

葉月「なるほど!エレメント顕現を再現するのね?」

幸二「そのままほかの指を丸めて、マ!って言いながらさっきの形に手を戻すんだ!」

ジャ「こう?」

幸二「そうだ!じゃあ声を出してやってみろ!」

ジャ「せーの!マ!!!」

 


シーン

 


ジャ「これで何が起きるんだい?」

 


何も起きなかった。何故だ…!何故この人は何も思い出さないのだ!!!

 


ジャ「残念だけど、僕は君達が探してる人では無いと思うよ」

幸二「いやアンタ、どっからどう見ても神野ジャスティン護だろ?!」

ジャ「いや、僕は今”ジャ”と名乗ってるんだよ。だからその神野君ではないんだ」

葉月「はぁ。なんだコイツ」

幸二「ぐぬぬぬぬぬ…!!!」

 


ダメだ、一旦退こう。

 


俺たちは元の席に戻る。

 


榊「おかえり」

幸二「ただいま。じゃねーよ!家みたいにくつろいでんじゃねぇ!」

榊「コーヒー美味いぞ。2人もどうだ」

 


ぐぬぬ…あの”ジャ”はとりあえず無視しよう。そうなったら莉茉さんを目覚めさせるしか…

 


ドリーム「(あいつら、あの水色に絡むのをやめた…次の狙いはおそらく…越前莉茉…!)」

 


すると、水色の男が、俺達のテーブルに紅茶を運んでくる。

 


ジャ「これ君たちのだよね?さっきあの子が運んできたけど、持っていき忘れてたから、はい」

葉月「あ、ども」

幸二「ぐぬぬぬ」

ジャ「じゃあね」

 


とりあえず紅茶を啜る。

 


幸二「ん?葉月、お前のティーカップ、なんかついてるぞ」

葉月「え?」

幸二「カップの底」

葉月「ん?何これ」

幸二「ん?プリクラか?」

榊「?」

葉月「あーーーー!!!!!!!」

 


幸二「ん?何だ」

 


葉月「これ…キスプリ!!!」

 


幸二「キスプリ!?!?」

榊「キスしながらのプリクラか?!」

幸二「見せろ!見せてみろ!!」

葉月「ちげえわこの下心ゴミ男共!!」

幸二「言い過ぎィ!」

 


葉月「これ、私が好きなアイドルKiss & Princeの王寺君と、この女の子は…」

幸二「ん?これ」

葉月「莉茉ちゃん?!」

 


そのプリントには、アイドルと映る莉茉さんの姿があった。プライベートと言うよりは、撮影会で撮った写真の様だが。

 


莉茉「は、はい!」

ドリーム「(まずい!)私が伺います!」

 


ドリームがやってくる。

 


葉月「ちょっと?莉茉ちゃん呼んできて?」ゴゴゴ…

榊「葉月くん。怒っているのかい?」

葉月「ううん?ちょっと」

 


ものっそい笑顔だがものっそい怖い!怖い!

 


ドリーム「私じゃダメでしょうか?」

葉月「ダメに決まってんだろうが!」

 


そこへ莉茉さんが現れる。

 


莉茉「何か…私…不手際を…?」

葉月「これは何かな?」

莉茉「はっ!それは!!」

葉月「これって、誰と誰?」

莉茉「それは…」

葉月「ん?言ってみて?♡」

莉茉「…」

葉月「ん?」

 


莉茉「駆け出しアイドル!!Kiss & Princeの王寺君と私です!!!」

 


葉月「は?!」

榊「駆け出しアイドル?」

 


おいおい。キスプリが駆け出しアイドルだと?メンバーの名前まではあまり知らんが、キスプリって名前は全国区だろ!渋谷とかこいつらの広告で溢れてるぞ?テレビでもみるし!どうなってる?

 


葉月「キスプリが駆け出しアイドル?!」

 


莉茉「へ…?あなた、キスプリご存知なのですか…?」

葉月「当たり前だろうが!!!あんた私が何年キスプリ推してると思ってんだコラ!!今でこそ東京ドームやら京セラで2daysとかやってるけどな!最初の方はクッソみみっちい箱でせこせことライブやってたんだぞ?!こんなチェキ持ってるってことは?あんたも古参なんか知らんけどナァ!誰にキスプリ愛は負けねぇんだわコラ!!」

莉茉「キスプリが…東京ドーム…?」

葉月「…?」

 


莉茉「そんな…夢みたいな事が…!」

葉月「へ?」

 


莉茉さんは、葉月の手を取って言った。

 


莉茉「ありがとう!私、正直担降りしようか迷っていたんです!正直今のキスプリは低迷期でCDもあまり売れない!でもあなたはそれでも東京ドームでライブできる様になるって信じて推し続けるのですね!嬉しいです!こんな近くに同志がいてくれて!私決めました!キスプリがドーム公演でシンデレラカールを3回歌うまで、キスプリを応援します!CD100枚!チェキ会全国巡礼!絶対に絶対にキスプリをドーム公演に連れていきます!!」

 


葉月「…?ちょっと?莉茉ちゃん?」

 


どういうことだ?俺たちの世界ではキスプリは日本中を熱狂させるアイドルだが、この世界では地下アイドルということか?

 


莉茉「最新シングル”スワンの翼”は10枚買ってそれで十分だと思っていましたが、今から90枚買い足します!来月に出るシングル”人魚の煌めき”は200枚予約します!私がキンプリを買い支えないと…!!!」

 


葉月「スワンの翼?人魚の煌めき?そんな曲あったっけか」

 


莉茉「ありがとう!あなた、お名前は?」

葉月「虎走葉月だけど」

 


莉茉「葉月さん…うっ!!!!うわぁぁぁ!!」

ドリーム「…!(始まった!!記憶の呼びかけが!!)」

莉茉「葉月さん…!!葉月さん…!!」

ドリーム「ちょ、莉茉ちゃん!!落ち着いて!!(”ピースワード”を聞かせる訳にはいかない…!早くこの場を去らないと…!)」

 


なるほどな。トリガーはそれか。

 


ドリーム「(記憶の呼びかけ=ピースワードが降ってくるトリガーは、対象の”名前”だけでは引けない筈…!でも今、2人は魔法に関する話題を出してなかった…!一体どこにトリガーが…?!)」

 


スワンの翼、人魚の煌めき。これは莉茉さんのエレメントの技名だ。何の因果か、俺たちの背中を押してくれてありがとうな…キスプリ!

 


って何言ってんだ俺は。

 


莉茉「…!カギ!!」

 


幸二「!!」

葉月「カギ!!」

榊「!!」

 


ドリーム「(クソ!!聞かせてしまった!!)」

 


────

 


ライト「…ぬかったな。ドリーム」

 


────

 


莉茉はその場に倒れこんだ。

 


莉茉「はぁ…体に力が入らない…」

 


ドリーム「…!クソ!!クソ!!」

榊「?ユメさんでしたよね」

ドリーム「…あ、はい…」

榊「どうしたのかい?そんな汚い言葉、あなたには似合わないよ?」

ドリーム「…」

榊「君は綺麗なんだから」

ドリーム「…」

 


葉月「莉茉ちゃん!!大丈夫?!」

莉茉「は、はい…なんか、頭に声が響いて、何となく、葉月さんに伝えるべきなのかなって思って…」

葉月「うん。ありがとう。受け取ったよ」

莉茉「私が聞こえたのは、カギの二文字だけ。何の意味があるのかは分からないけれど…」

葉月「大丈夫」

ドリーム「…」

 


莉茉「…私」

葉月「?」

 


莉茉「モデルを目指しているんです」

葉月「…!」

 


莉茉「どうしても王寺君と近づきたくて」

葉月「もしや、ガチ恋!」

莉茉「いえ、恋ではないと思います。憧れに近い感情といいますか」

葉月「ほう」

莉茉「私、元々引っ込み思案で、何をやっても中途半端だったんです。でも、王寺君をみて、明るく、何でも挑戦してみようって、思えるようになったんです」

葉月「…」

 


莉茉「だから、もっと有名になって、王寺君に見つけて貰えるようになったら、感謝の気持ちを伝えたいなって思って」

葉月「…」

莉茉「もちろん、キスプリは私が買い支えます。だからお互いに大きな舞台で、一緒に輝きたいって、思うんです」

葉月「莉茉ちゃん…」

莉茉「私、変ですかね?」

 


葉月「そんなことないよ」

莉茉「?」

葉月「莉茉ちゃんみたいなファンがいてくれることが、キスプリにとって一番の幸せだと思う」

莉茉「葉月さん…?」

葉月「私達が知ってる莉茉ちゃんも、心身綺麗な人なんだ」

莉茉「え?」

葉月「あ、ううん。気にしないで。だからそのまま、綺麗な人でいて欲しいな」

莉茉「葉月さん…!ありがとう!」

葉月「私も戻ったら、挨拶しにいこっと」

ドリーム「…」

 


────

 


ライト「ドリーム」

 


ドリーム「…はい」

 


ライト「未熟なお前に”パラドックスキー”を預けておくのは危険だ。お前からキーを剥奪する。そしてお前を、パラドックスエージェントから追放する」

 


ドリーム「…はい」

 


────

 


ドリーム「…」

 


榊「どうしてそんなに暗い顔をしているんです?ユメさん」

夢「…」

榊「彼女達と同じように、皆平等に未来がある。もちろん君にも」

夢「…」

 


幸二「2人とも、そろそろ行くぞー」

葉月「あ、うん!まって〜」

榊「おう」

 


会計を済ませる。

 


莉茉「ありがとうございました!」

夢「…ありがとうございました」

 


榊「また道が交差することがあったらその時は」

夢「…?」

榊「今よりさらに輝いているあなたに会えること、楽しみにしてるよ」

 


夢「…!」

 


────

 


《謎の場所》

 


エコー「おいライト、ドリームを追放したって本当か?!」

ライト「あぁ。彼女は力不足だった。彼女の体は、体の持ち主にお返しした」

エコー「でもこれで5人になっちまったじゃねぇか」

ライト「大丈夫。代わりが見つかるには時間がかかりそうだから、鍵を預けるのにちょっとした助っ人を用意した」

エコー「助っ人?」

 


そこへ現れたのは、水色の髪に、謎のゴーグルをした長身の男。

 


エコー「お前、名前は?」

ジャ「そうだなぁ、ここでの名前は…」

エコー「…」

ジャ「”ジャスティス”とでも言っておこうか」

 


────

 


幸二「おい葉月。今手に入れたキーワードってなんだっけ」

葉月「パラドックス、エージェント、持ってる、カギ、よ」

幸二「んだよまだ4つしかねぇのかよ」

葉月「あんたが兄貴からしっかり聞いておけばもう1つあったのよ!!」

幸二「あれは無理だ仕方ない」

葉月「ちっ。自分のミスだけ棚に上げやがって」

幸二「ふんだ」

 


榊「全く、君達は本当に素直じゃないね」

幸二「は?榊そりゃどういう意味だ?」

榊「私のいた緊迫感のある世界ではね、君達みたいなボーイ&ガールはとっくに結婚しているよ」

 


幸二・葉月「け、けっこん〜?!?!」

 


榊「あぁ。いつ死んでしまうか分からない…想いを伝えるのに、伝えるべき時なんて用意できない、そんな世界だからね」

幸二「…」

葉月「そんなに大変なんだ」

 


榊「分からないが、後回しに出来るってことは、幸せなんだと思う」

 


幸二「…」

葉月「…だとしても、こいつとはそんなんじゃないし」

幸二「同感だ」

 


榊「まぁいいさ。話を戻そう。このキーワードの中でやはり気になるのは、パラドックスとエージェント、だな」

幸二「そうだな、この2つの意味がわからない事には、いくら文章が出来上がっても、帰り方が分からんぞ」

葉月「そうね」

榊「調べてみようか」

幸二「どうやって?」

榊「ま、ググッたり?TwitterとかYouTubeで見てみたり?最近はTikTokもか?」

幸二「TikTokってそんな有益な情報載ってんのか?」

 


葉月「さぁ。私、YouTubeで調べてみる〜。サカキンはGoogleで、コージ君は得意そうだからTwitterよろしくぅ」

榊「承知」

幸二「Twitter得意そうって他二つに比べて悪意を感じるんだが」

 


葉月「えーっと…ん?んーーーー?!?!」

 


幸二「なんだ?有益な情報あったのか?」

榊「どうした?」

 


葉月「こ、これみて!!!」

 


3人で、葉月の小さなスマホでとあるYouTubeの動画をまじまじと見る。

 


葉月「ちょっとくっつかないで変態!」

幸二「見えねぇんだから仕方ねぇだろうが!」

 


そこには3人の男女が映っていた。

 


???「どうも、黄色のはるるです!」

???「赤のいぬきゃいです!」

???「緑のたくちゃんです!」

 


???「せーの、シンゴーズでーす」”

 

 

 

幸二「はるる?」

葉月「いぬきゃい?」

榊「たくちゃん?」

 


幸二・葉月・榊「シンゴーズ?!!」

 


幸二「こいつら、まちがいない!」

葉月「ええ!」

榊「知り合いか?」

 


幸二「そう!武智はるかと!」

葉月「えーっと…あと2人だれだっけ」

幸二「可哀想に」

 


いぬきゃい「いぬきゃいだワン!!」

たくちゃん「たくちゃんだ!!」

いぬきゃん「いやお前はただよ秋田犬だワン!」

たくちゃん「そなたこそ土佐犬だワン!」

はるる「まぁどうでもいいけど!本日の企画はー?!────」”

 

 

 

なんだこれ。

 


────

 


幕張メッセ

 


幸二「うっわ。人多」

榊「想像以上だな」

 


俺たちは、謎のYouTuber”シンゴーズ”を探すため、YouTuber フェスタなるものにやってきた。どうやらシンゴーズはこのフェスに登壇するらしい。

 


葉月「うぉーー!!東北オンエア!!!あ!!!あっちにはゴムドット!!!!」

幸二「YouTuberとか好きなのか」

葉月「そりゃあ乙女の嗜みですわよ」

幸二「世も末だな」

葉月「あ゛?」

幸二「やんのか小娘」

榊「おい2人とも、あれ!」

 


榊が指を指した先には、ステージの上でスポットライトに照らされる3人組がいた。

 


はるる「どうも、黄色のはるるです!」

いぬきゃい「赤のいぬきゃいです!」

たくちゃん「緑のたくちゃんです!」

 


「せーの、シンゴーズでぇぇぇす!!」

 


きゃぁぁぁぁぁ!!!!

 


会場は黄色い声援で大盛り上がりだ。そして俺は恐らく死んだ魚のような目で彼らを見ていた、だろう。

 


────

 


一通り彼らのショーケース?公開収録?を見た後、俺と榊は葉月に引っ張られ、ステージ袖へと移動する。

 


幸二「おいおいどこに行くつもりだ?」

葉月「決まってるでしょ!はるか達に会いに行くんだよ!」

幸二「正気か?流石につまみ出されるぞ!関係者以外立ち入り禁止って文字が読めないんですか小娘さん?!」

葉月「私達は関係者だ!」

 


脳筋乙。

 


すると3人がステージを降り、扉の向こうへと行こうとするのが見える。

 


榊「おい!3人が裏に行ってしまうぞ!」

葉月「まずい!ちょー!!!はるかぁぁぁぁ!!」

 


────

 


はるか「…?今私の名前を…?」

拓郎「ん?!気の所為だろう!」

犬飼「いや、俺にも可愛い仔猫の声が聞こえたぜ?」

 


葉月「はるかぁぁぁぁぁ!!!」

 


葉月は俺達の手を引き、人混みをかき分け、はるからの元へ突っ切る。

 


警備員「ちょ、お客様!これ以上演者に近づかないで!」

葉月「はるかぁぁぁぁ!!!」

はるか「ほら、聞こえた」

拓郎「確かに!どこだ?」

犬飼「あ、向こう、警備員がタムろってるぜ」

 


葉月「話を聞いて!!!はるか!!!!」

 


はるか「…!(あの子、なんで私の本名を?)」

犬飼「ありがとう。愛しき仔猫ちゃん」

拓郎「元気なファンだな!」

 


葉月は警備員ともみくちゃになりながらも、呆然とこちらを見る3人に話しかける。

 


葉月「はるか!少しだけ話を聞いて!」

警備員「困ります!」

はるか「待って」

警備員「…?はるるさん?」

 


はるか「この子、裏に通していいよ」

 


えー!ゴリ押しは正義ってか?!

 


葉月「はるか!!」

はるか「ねぇ君さ、どうして私の名前知ってるの?」

葉月「それは後で説明するから、」

 


はるか「君、私と会ったこと、ある?」

 


葉月「…!覚えてるの?」

警備員「とにかく!他のお客様に見つからないうちに裏へ!」

 


なんやかんやで俺達3人は裏へと移動した。

 


────

 


はるか「わからないけど、なんか懐かしい感じがした。君達からは」

葉月「…!そうだよ!私達は仲間なの!」

拓郎「仲間?」

犬飼「うん。君、可愛いね。その瞳、麗しい。今日から君は、ペルシャだ」

葉月「犬飼は黙ってろ!」

犬飼「何だこのガキァ!てかなんで俺の本名知ってるんだコラァ!」

 


幸二「俺達とお前らは、魔法を駆使して、戦う仲間なんだ。別の世界では」

はるか「魔法?」

拓郎「別の?」

犬飼「世界?」

幸二「あぁ。こいつ(榊)は違うけど」

榊「左様」

 


幸二「岩田拓郎さん。あなたは私達に協力してくれる岩の魔法使い。魔裁組の協力者だ」

拓郎「僕の本名まで…!うっ…!」

はるか「!!たくちゃん!!」

拓郎「すまん…少し目眩が…」

 


幸二「犬飼博斗。お前は五百旗頭渚の助手として、研究班で活動する博士見習い」

犬飼「コラァ!お前見るからに年下だろうが敬語使え!!って…うっ…なんだ…この感覚…!いお…きべ…?」

幸二「あぁ。お前はその五百旗頭っていう人に心酔してる」

犬飼「…!!知らない…知らないはず…なのに…!」

 


はるか「じゃあ、私は?」

幸二「…」

はるか「そこの人はよく分からんけど、君たち2人はどこか懐かしい気がして…」

幸二「…」

 


武智は、俺に1歩近づく。

 


クンクン

 


幸二「……?」

はるか「懐かしい匂い。なんだろう?会ったことないよね?でも、私も君達の仲間だったのかな?」

幸二「そうだ。武智はるか。魔裁組第2支部実働班のメンバー。黄のエレメントの使い手」

はるか「魔裁組…エレメント…?」

 


幸二「そうだ。覚えていないか?折紙山でのこと」

はるか「おりがみやま?」

幸二「たしかお前には弟がいたな。名前は確か…優(まさる)」

はるか「…!」

 


拓郎「君、その話は…!」

犬飼「いきなりなんなんだ!もうその辺に!」

 


はるか「いいよ」

 


拓郎「はるる!」

犬飼「でも!」

 


すこし頭を抑えて、武智は真っ直ぐ俺を見て言った。

 


はるか「続けて欲しい」

 


幸二「…俺たちの世界のお前は、虐められた弟を守る為に拳を振るう。そのせいで一度は罪を犯してしまうんだ」

はるか「…!」

拓郎「なんだと?」

犬飼「はるるはそんな奴じゃねぇ!」

 


幸二「分かってる…!武智、お前は出所した後、その拳を、世のため人のために使う為に、魔裁組に加入するんだ。たくさんの人を魔者の脅威から守る為に」

葉月「そうだったのか」

榊「正義感の強い、逞しい子だったんだな」

 


はるか「魔者……う…うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 


葉月「はるか!」

 


犬飼「はるる!!!!」

拓郎「大丈夫か!!!!」

 


???「おーっと、これ以上はやめてもらおうか」

 


そこに人相の悪い謎の青年が現れる。

 


エコー「我が名はエコー。パラドックスエージェントの狂犬と呼ばれし男だ」

 


拓郎「パラドックス?」

犬飼「エージェント?」

拓郎「そんなクリエイター聞いたことあるか?」

犬飼「ねーな?お前新人か?」

 


エコー「黙れ!!!!」

犬飼「ひぃ!」

 


葉月「パラドックス…エージェント?!」

幸二「その文字列…!」

 


エコー「あぁ。だがそんな名前なんざどうだっていい…お前らに忠告だ。天堂幸二、虎走葉月!」

幸二「…!(こいつら、俺達の名前を…!)」

葉月「…!」

榊「…(私は無視?)」

 


エコー「今すぐここから立ち去れ」

 


葉月「なんでよ!てかアンタ、どうして私達を知ってるのよ!」

エコー「へん。そんなこと、教える価値もない」

幸二「嫌だ、と言ったら?」

エコー「心を折る」

幸二「…!」

 


はるか「うっ……」

バタン

 


拓郎・犬飼「はるる!!!!」

葉月「はるか!!!」

 


武智はその場で倒れた。

 


幸二「武智!」

 


俺が武智に駆け寄ろうとすると、透明なシールドが出現し、俺と武智達を隔てた。

 


武智サイドには岩田さんと犬飼、そして何故か榊。

俺達は2人と、エコーと名乗る青年、とに別れた。

 


エコー「この壁は簡単には破れない。どうだ?”魔法”は久しぶりか?」

幸二「…!こいつ、魔法のことを!」

葉月「あんた、一体何者なの?!」

エコー「さぁ。お前らが俺に勝てたら教えてやってもいい。ま、無理だろうけどな」

葉月「…!」

 


エコー「残念ながらこの魔法はお前らの世界の魔法とは違う…故にお前たちは魔法を使用することが出来ないのだ」

幸二「戦うって…どうやって?」

 


エコー「もちろん、リアルファイトさ」

 

 

 

ビュン!

 

 

 

エコーが高速で俺に迫る!!

 


エコー「くたばれ!!!天堂幸二!!!」

 


ドッカーーーーン!!!

 


幸二「…うっ!」

 


俺は顔面を思い切り殴られ、シールドの壁に打ち付けられる!

 


葉月「コージ君!!!」

 


シールドの外から榊がこちらに何か必死に語りかけているようだが、何も聞こえない。

唇が裂けたようで、すこし流血する。

 


幸二「ちっ…」

エコー「どうだ?久々の血の味は」

幸二「あぁ。最高だよ」

エコー「…」

 


幸二「久々のリアルファイトなんでな、少し鈍っちまったみてぇだが…」

エコー「…?」

 


ビュン!

 


俺はエコーに超高速で迫る…!!!

 


幸二「魔法使いを舐めるなァ!!!!」

 


ドッカーーーーン!!!!!

 


俺はエコーを殴り飛ばした!

 


葉月「魔法関係ないただのパンチで草ァ!!!」

 


エコー「ぐはっ…!!!」

 


エコーはふらつきながら立ち上がる。

 


エコー「ふっ。効かないね」

幸二「そいつは残念だ」

 


ビュン!!

 


ボコッ!ガンッ!シュッ!ヒュンッ!ドンッ!ガコッ!ドゴッ!ボガッ!

 


高速で拳をぶつけ合う!

 


葉月「コージ君!そいつ、カギを持ってるかもしれない!」

幸二「…!」

エコー「ちっ…!そこまで気がついてるのか…!」

 


殴り合う隙に一瞬、エコーの胸元にちらりと光が迸る。

 


幸二「…(あれが、鍵か?)」

エコー「くたばれぇぇぁぁ!!」

 


エコーの右ストレートを寸前でしゃがんでかわす!

 


その時、その光は鮮明に俺の面前に現れた。

 


これがカギ…なのか?

 


バシッ!

 


俺はその光を掴み、エコーの胸元から引きちぎった!

 


エコー「…!しまった!」

幸二「なんだか分からねぇこのお宝は貰ってくぜ?」

エコー「くっ…クソが!!!!」

 


俺はエコーに回し蹴りを喰らわせる!

 


エコーは吹き飛び、シールドの壁に頭をうちつけた。

 


エコー「う…うぅ…」

 


エコーは気を失った。

幸二「はぁ…はぁ…」

葉月「…!」

 


すると、シールドは無くなり、榊らの声が耳に飛び込んでくる。

 


榊「大丈夫か!天堂幸二!虎走葉月!」

葉月「大丈夫!」

 


気を失ったエコーを端に運び、俺は武智の元へ行く。

 


幸二「意識が戻ったか…?武智…!」

はるか「う、うん…」

犬飼「無理するな」

拓郎「今日はもう帰ろう」

 


すると武智は重い口を開く。

 


はるか「…私の弟…優は死んでしまったんだ」

幸二「…!」

葉月「!!」

 


はるか「病弱で、太陽の下をまともに歩けないくらい、ずっと病院の中で過ごす生活。生まれてからずっとそうだった」

犬飼「はるるは、そんな優君のために、毎日学校帰りに病院に通っていた」

拓郎「でもある時…」

 


はるか「容態が急変して、直後には…」

 


葉月「…そんなことが」

榊「…」

 


はるか「悲しくて仕方なかった。毎日泣いた。でも少し経って、どこからか、優の声が聞こえた気がしたの。笑ってるお姉ちゃんが見たい…って」

幸二「…」

 


はるか「私も、闘病生活の中でも、前向きに生きてる優の笑顔が大好きだった。きっと優は天国から私を見守ってくれてる。私が泣いてばっかりじゃ喜ばない。だから私は、優に元気な姿を見せようと…優に笑顔になって欲しくて、この仕事を始めたの」

葉月「そうだったんだ…」

榊「ぐすん…なんだか…いい話だ…!」

 


はるか「そうだ、さっき頭がくらくらしてた時に、思い浮かんだことがある。きっとこれを誰かに伝えないといけないような…そんなことが」

幸二「…!」

葉月「それって!」

榊「教えてくれるか…?」

 


はるか「6」

 


葉月「6?」

幸二「今度は数字か…?」

 


拓郎「僕は確か…6人…と言われたような」

犬飼「いや、俺は6つ…だった気がするが?」

 


幸二「6…6人…6つ…分かった。感謝する」

 


はるか「何か役に立つの?これが」

幸二「あぁ。俺達は元の世界に戻らないといけないから、その為のキーワードみたいなものなんだ、それが」

はるか「そ、そうなんだ。なんか、難しくてよく分からないね」

スタッフ「シンゴーズさん!次の出番です!」

はるか「あ、はい!」

 


────

 


エコー(?)「…うぅ、頭が…ん?ここはどこだ?俺はなんでこんなところに?」

 


────

 


幸二「お別れみたいだな」

はるか「うん。今日はなんか、ありがとう」

幸二「え?」

はるか「大切なことを、思い出した気がした」

幸二「…そうか」

 


葉月「頑張ってね!YouTube!」

犬飼「あぁ!ありがとう!ペルシャちゃん」

葉月「おめぇに言ってねぇよ犬飼」

犬飼「本名で呼ぶな〜!!!!」

 


拓郎「行くぞ2人とも!」

はるか「う、うん!」

犬飼「そうだな!」

 


3人は、他のブースへと移動し始めた。

 


弟の為に…か。

 


違う世界でも、変わってるものと、変わらないものが、あるんだな。

 


────

 


────

 


とある病室

 


点滴に繋がれた男と女…

 


心電図は薄弱な彼らの拍動を無機質に記録する。

 


善能寺「少しまずいことになったわね…何が起きてるのかしら…」

 


医者の羽田は言う。

 


羽田「よく分からないけれど…彼らの体に宿った魔導書が突然、彼らの体を蝕み始めたのよ。今彼らは必死に抗ってる…」

 


善能寺「…成程」

 


羽田「まるで彼らの体が、突然”マヂカラへの適応力を失ったみたい”」

 


羽田「このままだと”3人”とも…魔者になるか…死に至るか────」

 

 

 

301号室 天堂幸二

302号室 虎走葉月

 

 

 

そしてもう1人…

 

 

 

────

 


虎走邸

 


葉月母「君が噂のコージ君ね!!!はーちゃんから話は聞いてるわぁ!」

葉月「ちょ、ママってば!」

 


そして俺は何故か今、こいつの家で晩飯をご馳走になっている。

 


葉月母「今日は奮発して、グラタンつくっちゃった!」

葉月「わー!美味しそう!!!」

 


虎走の母、スリムで美形…というか可愛らしい印象。あ、別に狙ってるとか、変な目で見てるとかでは無いぞ?

ってか若い。何歳だこの人。

 


葉月母「コージ君はさ、彼女とかいるの?」

幸二「ぶっ!いや、いませんし、作る気も…」

葉月母「だったらはーちゃんとかどう?!結構いい子なのよぉ!」

葉月「ぶっ!ちょっとママやめて!そういう関係じゃないから!」

葉月母「そうなのかなぁ?最近急によく話題に出すから、てっきり”ソウイウ関係”なのかな〜って」

幸二・葉月「ち・が・い・ま・す!」

 


葉月母「まぁ、仲がよろしいことで。あ、そうだ、デザート作らないと♪」

 


ママはキッチンに消えていった。

 


幸二「てか、このグラタン、美味いな」

葉月「でしょー!こっちの世界でもママのグラタンは絶品だね!」

幸二「よかったな」

 


葉月「そういえばさっきのあれ…」

幸二「これの事か?」

 


俺はさっきエコーって奴から奪い取ったカギのようなものをテーブルに置いた。

 


葉月「カギ…だよね」

幸二「あぁ。このカギが元の世界に戻るためのカギ…なのか?」

葉月「どうなんだろう。はるか達が言ってた6ってのも気になるわね」

幸二「分からない。手がかりがまだ少なすぎる。明日は別の誰かを当たってみよう」

葉月「心当たりあるの?」

幸二「…実は全くない」

葉月「なんだよ!」

 


幸二「今までは運良く探し当てられたが、他のメンバーはどこで何をしてるのか…」

葉月「確かに」

 


幸二「そういえば、榊は?」

葉月「なんかジョギングするからまた明日って」

幸二「ほーん」

 


────

 


《夜の公園》

 


榊「はぁ…はぁ…このままでは、体力が低下の一途を辿ってしまう…!」

 


榊は夜の街をジョギングする。

 


榊「はぁ…はぁ…はぁ…待っていろ佐久間達…早く帰って…ゼクシーザを倒さねば…」

 


そこへ、”水色髪の男”が現れる。

 


ジャ「久しぶりだね」

榊「…!君は?あぁ!コーヒー屋の!」

ジャ「そっか。君とはそこが最後だったね」

榊「?」

 


ジャ「榊天慈、君に協力して欲しいことがあるんだ」

榊「協力?」

ジャ「あぁ。君の存在を利用したい。もう時間がないんだ」

榊「…何の話だ?」

 


ジャは、榊に住所が書き込まれた紙切れを渡す。

 


ジャ「ここに行ってみてくれ」

榊「ここは?どこだ」

ジャ「大丈夫。安心安全な場所だから。少し遠いけど」

榊「…?」

ジャ「あぁ、1人で行っちゃダメだよ?”この世界の仲間”を連れて、行ってらっしゃい」

榊「…何が目的だ!」

 


ジャ「さぁ。でも早く行かないと、皆が不幸になるよ?君も君の仲間も…ね」

 


榊「なんだと?それに何故私の名前を!名乗った覚えはないぞ!」

 


ジャ「あ、あとそうだ、これ」

 


ジャは、榊に”あるもの”を渡した。

 


榊「…!これって、まさか?」

 


ジャは、姿を消した。

 


榊「……?」