SOREMA -それ、魔!- 38

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SOREMA -それ、魔!- 38


「ありがとう」

 

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第323話 「千巣万之助」

 

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《魔導結界・神殿》


デュマは、千巣の腹部に薙刀を突き刺している。

千巣「ハァ......ハァ......」

デュマ「へぇ...その傷で死なないんだぁ...凄いね、君」

千巣「ハァ...魔法使い特級舐めんなよ...!」

デュマ「特級??ははっ!すごーい!でもさ、もうもたないっしょ」


デュマは、突き刺さった薙刀を引き抜く...!

千巣「ぐっ……!!」ギリギリィ…!

デュマ「ふふふふっ」


千巣は、膝をつく。


ドババッ…!

地面は赤く染まる。


デュマ「あーあ。せっかくの綺麗な風景が君の血で台無しだよ…」

千巣「…!赤のエレメント!!!」

デュマ「は?」


千巣「紅の絨毯!!!!」


千巣の足元から地面にエレメントが広がる…!

デュマ「…!?(地面が…真っ赤に…!)」

千巣「風景…?俺が真っ赤に染めてやるよ…!!」


ボワァァァァァン…!!!

地面から凄まじいオーラが昇った!!


デュマ「ぐわぁぁぁぁ!!!」ボガァン!!

千巣「(連撃だ…!)!!!雄叫火!!!!!」ボワッ!!

デュマ「ぐはっ…!(なんなんだ?!こいつの底力は…!!)」ボガァン!!


千巣「…ハァ……ハァ…」

デュマ「くっ…ふふふっ…!はぁ…君もしぶといねぇ…!」


千巣「…!」

デュマ「(こいつ…この期に及んで目が死んでない…!まだ何か企んでいる…!?)」

千巣「(正直言って…もう限界が近い…もう…駄目だ…だが…!)」グッ…!

千巣は、刀を強く握った。


デュマ「もうやめときなよ。痛いでしょ?楽にしてあげるから」

千巣「…ありがた迷惑だ」

デュマ「ふふふっ。でもそんなズタボロの君に何が出来るってのさ?」


千巣「大切な人を守ること…!」


デュマ「?!」


千巣「いくぜ魔者…俺は……!」

デュマ「…!」

 


千巣「”現役最強の魔法使い”だ…!!!!」

 


ゴゴゴゴゴゴ…!!!!!

 

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第324話 「紅蓮の華」

 

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《魔導結界・神殿》


千巣「千紫万紅流居合…!!究極奥義!!!」

デュマ「…!!!」


千巣「俺の魂は決して滅びない…!紅・鳳凰…!!!!いや…」

ゴゴゴゴゴゴ…!!!!

デュマ「…!!(なんだ!!この凄まじいマヂカラ…!!!)」ゾクッ!!!!!

 


千巣「紅蓮・鳳凰!!!!!!」

 


デュマ「だったら俺だって…!!鏡分身!!!!」

デュマは薙刀を構え、数十体の分身を作る…!!


デュマ「集!!!!」


バッッッッッ…!!!!!!


デュマの分身は、全て本体と重なった!!!


デュマ「これで俺は…本来の何倍もの力を集約させた…!!!(この攻撃さえ凌げば…!!!!)」


千巣「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

デュマ「ぬぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

ド        ッ          カ          ー         ン ッッッ!!!!!!!

 

 

 

二人の攻撃はぶつかりあった…!!

そして、爆風によって、二人は後方に転がる…!!


デュマ「うわぁぁぁぁぁ!!!」ボガァァン!!


ドサッ!!


ガーーーン!!


デュマは、少し経って起き上がった。

デュマ「ハァ…(あいつは…?どうなった…?)」


デュマが目をこらすと、千巣は血を流して倒れていた!!!


デュマ「…!」ニヤッ

千巣「………」


デュマ「へへっ。勝ったぁ…!」ニチャア…


千巣「………」


デュマ「ハァ…これでシェイクスピア様に叱られずにすむなぁ…!こいつの首、刈り取ってやろっと!」


デュマが、倒れる千巣に向かって手を伸ばす。

 

 

ドクン…!!!!

 

 

デュマの動きが止まる。そして、デュマの視界が乱れ、倒れていたはずの千巣が消える…!


ズザザザ...!


デュマ「何だ…?何が起こってるんだ…?」

 

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第325話 「森羅万象」

 

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《魔導結界・神殿》


デュマ「…?!」

デュマが辺りを見回すと、後方に、刀を地面について、立っている血塗れの千巣の姿があった!


デュマ「…?!どうなっている?!」

千巣「ハァ…ハァ…これはお前が見たがっていた、俺の能力だよ…お前が見てたのは幻…俺が見せたものだ…」

デュマ「(幻術…?!)」

千巣「冥土の土産に丁度いいだろう…?」


デュマ「なるほどねぇ…すごい能力だね。でもさ、その感じじゃ、もう動けないんでしょ?立っているのが限界って感じだよね?」

千巣「……ほざけ」

デュマ「ふふふっ!じゃあさ、君が絶命するのをこの目で見ててあげるね。ずーっと、見ててあげる!」

デュマは目を見開いてまくし立てた。

千巣「なら…最期に俺の”とっておき”を見せてやるよ。よく見とけ…!」

デュマ「…?!」

 

千巣「(…この術を使うと、俺の五感は永遠に失われる…だが…もう手遅れだよな)」

デュマ「強がってないでさ、早く死になよ」

 

 

千巣「死ぬのはお前だよ」

 


デュマ「?!」

 

千巣「赫魔導書 四十六章奥義…!!」

デュマ「…!」

 

千巣「四十六眼!!!!森羅万象!!!!!」

 

 

シュゥゥゥゥゥウウウウウウウ…!!!!!!!

 

 

デュマ「!!!!!!」

デュマの身体中の全神経に衝撃が走る!!!!

 

 

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキィ!!!!

 

 

森羅万象。四十六眼奥義。この技を使うと、自身の五感が永遠に失くなる代わりに、被術者にこの世に存在する永遠の五感を、一瞬で全て与える…

 

つまり、被術者は、死ぬ。

 

デュマ「あ゙ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

千巣「……」

 

デュマ「!!!(痛い…!冷たい…!辛い…!臭い…!眩しい…!全ての感覚がはち切れる程の刺激が一瞬で…!!!)」


千巣「ご愁傷さま」


デュマ「ーーーーーーーーー!!!!!!」

 

デュマは、断末魔をあげて滅んだ。

 

千巣「......」

 


バタッ...

 


千巣は、その場に倒れた。


千巣「…皆…ごめん……」


ドビュシャーー!!!


千巣は口から大量の血を吐いた。

 

 

そして、結界は崩れ始めた。

 

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第326話 「光の中に」

 

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豊洲

一善らは、白い玉を囲って見張っている。


キィィィィィィィン!!!!!


すると、白い玉が激しく光始めた!!!


ジャ「…?!」

幸二「なんだ…?!」

三太郎「眩しい!!!!」

一善「!!!!!」

 


パ       ァ       ン       !!!!!


...

 

そして、光が収まった。

全員が目を開ける。


ジャ「…?」

一善「皆、大丈夫?」

三太郎「あ、あぁ。なんともねぇ」

幸二「な、なんだったんだ」

 

 

ジャ「…え?」

 

 

三太郎「ん?どうした?ジャスさん」

ジャ「あれ…って」

幸二「…?」


3人は、ジャスティンが指した方を見る。


一同「!!!!!」


そこには、千巣が血塗れで倒れていた。


一善「千巣さん?!!?!」

幸二「千巣先輩!!!!!?!?!」

三太郎「アニキ!!!!!!!!?!」


4人は、千巣の元へと駆け寄る。


一善「千巣さん!!しっかりしてください!!」

幸二「この傷…!何があったんですか!!」

三太郎「アニキ!!おい!アニキ!!」


ジャ「千巣さん…?」


千巣「皆…」

千巣の腹部からは酷く出血している。


三太郎「お、おい!救急車…救急車を!」

幸二「研究班の医療チームを呼ばないと!」

ジャ「……」

一善「千巣さん!!今止血しますから!!」


千巣「いや…もう駄目だ」


一善「?!」

三太郎「?!」

幸二「何で…?!」


千巣「見れば分かるだろ…助かる傷じゃない…」

 

────


森羅万象を使ったおかげで…痛覚も鈍ってる…少し話せそうだ…

 


ジャ「千巣さん……どうして…」


千巣「皆…ごめんな…俺は弱かった…」

三太郎「弱かったってなんだよ!!俺たちのアニキが!!弱いわけねぇだろ!!」

幸二「やめてくださいよ!!!そんな言い方、もう諦めたってことですか!!」

千巣「俺は...もう長くない......あぁ...死ぬのか...ここで...」

一善「何言ってるんですか...?嘘......ですよね...?」


千巣「お前達に…最期に少し聞いて欲しいことがあるんだが…聞いてくれるか?」


一善「千巣…さん…?」

三太郎「…!」

幸二「…!」


ジャ「………」

 

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第327話 「灯滅せんとして光を増す」

 

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豊洲


千巣「魔者を…一人倒した。ノベルの幹部級だった…魔導書は…手に入らなかった」

三太郎「そんなこと…!」

幸二「千巣先輩!それは今いいですから…!しっかり傷を…!」

4人は、目に涙を溜めながら、千巣を見ていた。

千巣は、震えた手で一善の手を掴む。

一善「…!」


千巣「(駄目だ…もう手の感覚がない…)」

一善「千巣…さん…」

千巣「ノベルは...…白鶯は必ずお前達が倒せ...死んでいった仲間の分まで…皆の仇なんだ...お前達なら絶対に倒せる…この悲しみの連鎖をくい止められる…!」

一善「…!」

幸二「…!」


千巣「ジャスティン。皆のことを宜しく頼む。皆が不安や恐怖を感じた時...お前が導いてやってくれ。お前は強いから大丈夫。な...…!」

ジャ「………!」


千巣「幸二。長い間世話になった。家族を大切にな。そして、誰よりもしぶとく生き抜け。必死にくらいつけ…!死ぬなよ...!」

幸二「…先輩…!」


千巣「三太郎。もっと強くなれ...!まだまだやれる。なんせお前はスーパーヒーローになる男だ。お前なら必ずなれる。夢を叶えろ…!」

三太郎「うぅ……ア゙ニ゙ギィ…!」

 

千巣「一善。お前の努力を...皆ちゃんと知ってる。ここまで一人で戦ってきた訳じゃないんだ」

一善「...!」


千巣「折れそうな時はいつだって...己の”戦う理由”を思い出せ...!そして鼓舞しろ!」


一善「!!!!」

千巣「そうすれば、お前は誰にも負けない」

一善「…!!千巣さん…!!千巣さんっ!!!」


千巣「魔裁組全員の健闘を祈っている」

三太郎「ア゙ニ゙ギィ……嫌だ…嫌だよぉ…!」

幸二「もう少し…一緒に生きてくれよ!!先輩!!一緒に魔法の無い世界を作るって...!!」

ジャ「………!」

ジャスティンの静かに噛み締めた唇の横を、一筋の涙が伝う。

一善「……」

 


千巣「それと…もう一つ…俺の妹の…」

 

そこへ、ひえりがやってきた。

 

ひえり「…?!お兄…ちゃん…?」

千巣「ひえり…か?(…視覚も聴覚も大分弱ってきた…)」


ひえり「お兄ちゃん…?お兄ちゃん…!!」

ひえりは、千巣の元へと駆け寄る。

ひえり「お兄ちゃん!お兄ちゃんってば!!」

千巣「ひえり…何でここに…?」

ひえり「何でって…お兄ちゃんが…インスタのDMで…今すぐ来いって…言うから」

千巣「は…?なんだよ......それ」

ジャ「……」


ひえり「ねぇ…お兄ちゃん…何その傷…」


千巣「ごめんなひえり…お兄ちゃん…逃げられなかった…ただ弱いだけだった…」

ひえり「何で…何で………」

ひえりは、千巣に抱きついた。

 

────

 

周りの人の反応で、お兄ちゃんがもう助からないことがわかった。

 

死なないって言ったじゃん。逃げて帰ってくるって言ったじゃん...!お兄ちゃんのバカ...お兄ちゃんの大嘘つき!!!!なんで...どうして...


でも...泣きたくない...お兄ちゃんの頑張りを...無駄にしたく...ない

 

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第329話 「涙」

 

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豊洲


千巣は視力をほとんど失った。

千巣は、目を閉じる。


千巣「ひえり…お兄ちゃん、ひえりにたくさん謝らないといけないことがあるんだ」

ひえり「なんのこと?」

千巣「ひえりのプリン…勝手に食べた」

ひえり「ははっ…そんなこと…?!」

ひえりは、涙を精一杯堪えて、明るい声を作る。


千巣「また美味しいプリン...買ってやりたかったけど...」

ひえり「…!」

 

 


ダメだ…嫌だよ…泣いちゃうよ…これが、最後なの…?そんなの…嫌に決まってるじゃん…何で私だけ…一人ぼっちにするの?神様…!教えてよ…!

 

 

千巣「一つ、後悔があるとすれば…お前がステージの上で輝いている所...やっぱり見たかったな...」

 


ひえり「本当だよ…!めっちゃ凄いのにな!私!」

 


千巣「見たかったなぁ…残念だ」

 


ひえり「何言ってんの…!私は超すごいアイドルなんだよ?」

 

 

千巣「あぁ。きっとそうだな」

 

 

ひえり「だからもっともっともーっとすごくなって、お兄ちゃんがどんな所にいても、嫌でも目につくくらい活躍するんだから!テレビ見ないお兄ちゃんでも...もう嫌になるくらい...笑ってるところ...見せつけてやるんだから...!」

 


ひえりは、涙声になっても、明るく振る舞う。

一善と幸二は、肩を震わせて泣いている。

三太郎は嗚咽して、目元を腕で拭っている。

ジャスティンは静かに涙を流し、兄妹のやり取りを見ている。

 


ひえり「だから見ててね!私、誰よりも凄いアイドルになるから!」

千巣「ははっ。当たり前だろ?世界で一番可愛い、俺の妹だ」

ひえり「…!!!」

千巣「どんな生き方をしても、俺はずっとお前の味方だよ」

ひえり「うぅ…」

ひえりの堪えていた涙が溢れた。ひえりは千巣にしがみつく。

 


ひえり「…うぅ…お兄ちゃぁん!!」

千巣「ひえり…」

ひえり「うぅ…うぅ…お兄ちゃん…嫌だ…嫌だよ!!!」

千巣「…ごめんな…ひえり…」

ひえり「うぅ……」

 

 

 

駄目だ…もう全く聴こえない…目も見えない…

 

 

 

焔 ”お前は強いよ。万之助…!”

 


千巣 ”……!!焔…!”

 


焔は、微笑み頷いた。

 

 

俺の人生は、ドラマチックなものではなかった。誰よりも非凡で、誰よりも平凡な人生だった。


だけど、最後になって気づきがあった。


俺は…俺の人生で、かけがえのないものを、既に手にしていたのだ。


それは、”この人生”でなければ存在しえなかった、かけがえのない”日々”全てだ。

 

 

千巣「皆のお陰で...そしてひえり...お前のお陰で思えたことがある...」

 

ひえり「…!」

三太郎「…!」

幸二「…!」

ジャ「…!」

一善「…!」

 


千巣「俺は...!」

 


閉じた瞼から、涙が零れる。

 

 


千巣「俺に生まれてよかった...!」

 

 

 


千巣万之助 死亡。

たった一人の、愛する妹の腕の中で、安らかに息を引き取った。

 

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第330話 「ありがとう」

 

────


翌日、千巣の訃報が魔裁組メンバーに伝えられる。


ヒメ「...!」

 

 

莉茉「そんな…千巣さんが…」

 

 

美波「!!!あんなに強かったのに…」

 

 

はるか「そんな…嘘だろ…?」

 

 

虎走「!!!!」

九頭龍坂「千巣はん……!」

 

 

村松「………!」

ラキラキ「クゥゥゥゥン…」

 

 

五百旗頭「そう…千巣くんが…」

犬飼「マジかよ…あいつが...まさか…」

安西「…!」

 

────

 

プルルル… プルルル…

 


麗美「はい、もしもし」

 


・・・

 


麗美「……」

ガッシャーーーーーン!

麗美スマホは、麗美の指を滑り落ちて地面に落ちた。

画面には大きなヒビが入った。

 

 

麗美「何で……何でだよ………!」

 

 

麗美は、肩を震わせ、膝から崩れ落ちた。

 

────

 

豊洲

 

昼下がり。4人は再び豊洲を訪れていた。

普段と何も変わらない海辺のコンクリートの上には、ハルジオンの花束や、冷めたカレーライスが置かれていた。

一善「…」

幸二「…」

三太郎「…」

ジャ「…」


三太郎「アニキ…アニキ…!!!」

ジャ「…」

一善「千巣さんは、たった1人でノベルの幹部を2人も倒した」

ジャ「凄い人だ」

幸二「でも、魔導書は…」

ジャ「ノベルに奪われたかもな…だが、そう簡単に次の適合者は見つからないだろ。それまでに俺達がノベルを叩く…!」


三太郎「なぁアニキ…アニキでも勝てない敵に…俺達が勝てるのかな…!」

幸二「…」

一善「(千巣さん…)」


ジャ「逃げたらダメだ。ダメなんだ」

一同「…?」

 


ジャ「ここで逃げたら俺達は、失くした物ばかり数えないといけない」

 

 

ジャスティンは遠くを見つめた。


一善「…!」

三太郎「…!」

幸二「…」

 


ジャ「そんなこと、俺はしたくない。俺達は、やらないと。やらないと…!」

ジャスティンは肩を震わせ、自分に言い聞かせるように、拳を強く握りしめて言った。

 


幸二「......…」

一善「ジャスティンさん…」

三太郎「…」


幸二が大きく深呼吸した。

 

一同「?」


幸二「”強き魔法使い”たる者!!それは戦いに秀でるのみの者ならず!それは、誇りと、勇気と、慈愛の精神を持つ者である!!!」

 

一善「!!!」

三太郎「!!!」


幸二「天堂家の家訓です。その...だから...俺が言いたいのは...千巣先輩は…誰よりも…強い魔法使いだった……!」

 

幸二は涙を流して言った。

一善「…!」

三太郎「…!」

ジャ「…!」


幸二「俺達も頑張ろう…!!!見るべきものは過去じゃない!!!未来だ!!!いつか天国の仲間達に、笑って報告出来るように!!!」

一善「……!うん……!」

三太郎「おぅ………そうだな……!!」

ジャ「あぁ…!絶対に負けない…!」

 

一善「…」

 

 

千巣さん。

 


当たり前になりすぎて、忘れていたことがありました。

戦う理由です。

俺はもっともっと強くなりたい。でも、敵を倒すための力より、誰かを守るための力が欲しい。

俺は、自分の戦う理由…それを守るために、これからも戦います。

 


”一日一善”

 


ありがとう。千巣さん。

 


そっちでゆっくり、休んでください。

 


俺達が、必ず、平和への道を作ります。

その日まで、俺達を見ていてください。

 

SOREMA -それ、魔!- 39へ続く。

 

第323話 「千巣万之助」

第324話 「紅蓮の華」

第325話 「森羅万象」

第326話 「光の中に」

第327話 「灯滅せんとして光を増す」

第328話 「涙」

第329話 「ありがとう」

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