SOREMA -それ、魔!- 35
SOREMA -それ、魔!- 35
「魔法使い」
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第299話 「兄と妹」
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《都内 / とあるスタジオ》
いろは坂46の新曲のMV撮影が行われている。
♪♪〜
ソロシーン撮影中。
監督「はい!ひえりちゃんの撮影終わりね!次○○ちゃんおいで!」
ひえり「ありがとうございました!」
メンバーA「ひえりーお疲れ」
ひえり「ありがとう〜!」
メンバーB「メッチャ可愛かった!」
A「マジで!」
ひえり「ありがとう!ちょっと控え室行かない?お腹空いた」
《控え室》
ひえり「お疲れ様でーす!」
A「うわぁーケータリング美味そうー!カレーだ!」
B「んね!私沢山食べちゃお!」
A「あんたマネージャーに痩せろって言われてたじゃんw」
B「あー無視無視。好きなだけ食わせろってんだよ!」
3人は、カレーを食べる。
A「ねぇねぇ、ここだけの話、2期生の野田ちゃん別れたらしいよ!前の男と」
B「マジ?」
ひえり「(ウチ、恋愛禁止なんだけどなぁ...)」
A「ま、社員とはいえ、コンビニ店員とは釣り合わないっしょwウチら」
B「確かにー!それはキツいわ」
A「てかさ、彼氏がコンビニ店員ってどう?私いくらお金あっても無理だわ。しょぼいしw」
B「それなー!私たちにはやり手のIT社長とかじゃないとキッついわ」
A「ねね、農家とかは?ヤバくない?!」
B「無理無理!有り得ないっしょ!」
ひえり「あのさ、しょぼい話すんのやめてくれる?」
A・B「?」
ひえり「2人共さ、コンビニ行ったことないの?普段お世話になってる癖に、その言い分はなに?その人達を下に見てるってこと?だよね?」
A「え、何?ウケるんだけど」
ひえり「その人の本質も知らないで、肩書きとか職業で人を見下す人は漏れなくクズだって。お兄ちゃんが言ってた」
B「あはは、何それw」
A「ひえりってぇ、もしかして────」
《堆家》
仕事後────
2人は夕食をとっている。
ひえり「そしたらー、「もしかして、ブラコン?」って言われてさー!ほんっと、なんなの?」
千巣「いいんだぞ、ブラコンで」
ひえり「嫌だよ!気持ち悪いもん!」
千巣「直球だな」
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第300話 「魔法使い」
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《堆家》
会話は続く。
ひえり「でも、皆は知らないんだよ!お兄ちゃんが皆の命をめっちゃ守ってることを!皆、魔法使いなんてやってるとか言ったら、絶対笑うよ?」
千巣「別にいいよ。むしろ知られたくない。俺は、魔法使いとか関係なく、俺の本質を分かってくれる人間しか相手にしない」
ひえり「なんか、それはそれで面倒臭いね」
千巣「どっちだよ...」
ひえり「あ、あとね!今度新曲が出るんだけど、その時のリリイベがね──────」
ひえりは、千巣に仕事の話や、日常の話を延々のと聞かせる。千巣は、その様子を時々反応しながら笑って聞いている。
千巣「...笑」
────やっぱ、家(ここ)はいい...俺が魔法使いであることを一瞬でも忘れさせてくれる...
俺はこいつの兄である。今はそれ以上のことは必要ない。
もう当たり前になってしまった、俺にとっての”戦う理由”。
それを、ひえりが思い出させてくれる...
千巣「ところで、いつアイドル辞めるんだ?」
ひえり「え、今の会話の何処に辞める要素ありました?」
千巣「いや、俺アイドルとか興味無いし、お前は俺だけのアイドルで、この家のアイドルで...」
ひえり「キモ」
千巣「グサッ」
ひえり「てかさ!お兄ちゃんもイベント見に来てよぉ!1回もライブ来てくれてないじゃん!私こう見えて結構人気ある方なんだよ?テレビとかみないお兄ちゃんには分からないと思うけどっ!」
千巣「意外と予定合わないしなぁ。それになんか怖ぇし」
ひえり「今度のライブ、家族は招待出来るから、絶対来てね!」
千巣「そうか。ま、頑張ってな。怖いオタクに絡まれたらお兄ちゃんに言うんだぞ?殺すから」
ひえり「うわっ怖っひくわ」
千巣「ごめん...」ピエン
────人生というものは、生まれた時に全てが決まるといっても過言ではない。俺はそう思う。
俺は生まれつき魔法が使えたし、当たり前のように魔裁組に所属した。
両親が死んだ時は流石に驚いたが、それ以外に、ターニングポイントのようなものは数える程しかなかった。
この仕事をしていると、死別は日常だ。初めて、”任務での死別”を経験して以来、死別は当たり前のものになった。普通の人間における転機は、俺にとっては通過点でしかない。
だから、毎日がダラダラと通り過ぎていくだけなのだ。
もしも俺が魔法使いじゃなければ、もっと違う感受性や価値観を持って生きていただろう。でも常に死を意識して生きていくと、それが日常になる。
辛いものに慣れると、激辛料理が全く辛く感じなくなるのと同じように。
魔法を知らない世界で、もっと別の人生を歩みたいと思ったことは何度もある。ドラマチックで、ジェットコースターのような人生。小さなことで喜び、悲しみたかった。
まぁ、そんなこと、今更出来るはずはないのだが。
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第301話 「スターリーランド」
《スターリーランド》
ここは、千葉。スターリーランド。関東で1番人気のある遊園地。今日も沢山の人が訪れ、閉園時間を迎えようとしていた。
デュマ「皆...幸せそうだね」
デュマは、園内の城の上空からエリアを見渡す。花火を背に、出口へ向かう人々を見下ろす。
デュマ「普通の人間がマヂカラのピークを迎えるのは、26歳。だから、将来有望な若い子がたくさんいる場所を考えたんだけど...やっぱりここだよね。スターリーランド!」
デュマは、夜風に吹かれながら、硬度の書を持って佇む。
デュマ「カフカ、気持ち悪いけど、良い奴だったのになぁ...残念。でも大丈夫だよ?」
デュマは地面に飛び降りた。
デュマ「代わりなんて、いくらでもいるから...!!」
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《ヘリコプター》
一善、幸二、三太郎の3人は、ヘリコプターでスターリーランドに向かう。
運転手「まさかあんな所に魔者が出るなんてな!」
幸二「ノベルの仕業でしょうか?」
運転手「分からねぇ!お前らも気をつけろよ!」
三太郎「運転手さん!あとどれ位で着く?」
運転手「もうすぐだ、ほら、タワホラが見えてきた」
三太郎「うぉーーー!あ!あれビッグワンダーじゃね?!」
幸二「遊びに行くんじゃねえんだぞ」
三太郎「分かってるわ!俺だって...遊んでるわけじゃねえよ」
幸二「...」
一善「(ノベルの魔者だろうか?だが蝶々紙の魔者ではないだろう。マヂカラレベルは5。だから3人派遣されてるんだ)」
ヘリコプターは、園内の人気(ひとけ)が少ないスポットで滞空する。
運転手「よし、ここで降ろすぞ」
一善「はい!ありがとうございます!」
幸二「行くぞ」
三太郎「待ってろ魔者!!」
ビュン!
ビュン!
ビュン!
3人は、スターリーランドに降り立った。
幸二「向こうだな」
一善「うん」
三太郎「やってやろうぜ...!」ポキ ポキ
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《スターリーランド》
デュマは、帰ろうとする1組のカップルを見つける。
デュマ「ラブラブだねぇ...って!」
デュマは、男子の顔を遠くから凝視する。
デュマ「あの子!!カフカにそっくり!!!」
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第302話 「残影」
《スターリーランド》
女子「今日...楽しかったね...///」
男子「そうだね...///」
女子「あのさ...また...来たいな...///」
男子「!!!」
女子「...?」トゥンク...
男子「あ...あのさ!(俺だって...男だ!ここで、俺は...言う!)」
女子「?」
男子と女子は向き合う。
男子「あ、あの...俺は...」
女子「...」
男子「君の...ことが...」
女子「!!」
男子「すっ...」
そこへ、デュマが現れた。
デュマ「やぁ!」
女子「!!!」
男子「好きです!!!!!」
女子「!!!!」
デュマ「見えてないのかなー?ねぇってば!」
女子「...!?(だ、誰...?!)」
男子「だから...もし良かったら...」
女子「ねぇ...後ろ?」
男子「え...後ろ...?」
男子は後ろを振り向くが、背後のデュマに気が付かない。
男子「何も...ないよ?」
女子「え...?な、何言ってるの?そこに、人が」
男子「え?」
デュマ「なるほどねーん。俺が見えるんだねぇキミは。この男の子とは違って。魔者に向いてるよ!」
女子「何...言ってるの?魔物...?」
デュマ「でも、俺が気に入ったのはこの男の子の方なんだよねー」
男子「どうしたの?」
女子「...!」ガクガク...!
デュマ「だって、声も顔も不器用なとこも全部全部そっくりだもん!カフカに」
女子「...?!」
デュマ「だから、これをあげるよ!」
デュマは、男子の背中に魔導書を突っ込んだ!
グシャッ!!!
男子「!!!!!!」
女子「きゃぁぁぁぁぁ!!」
デュマ「さぁ、どうかな?異形にはなっちゃだめだよぉ?ま、ダメだったら、センスありそうなそこの女の子で試すからいいけど」
ゴゴゴゴゴ...!
すると、男子から角が生え、目が赤くなった!
女子「あぁ...!」
デュマ「おぉ!!!すごーーーい!!!まんまカフカじゃーーーん!!!やったーーー!!」
男子「うぅ......!」
デュマ「君は今日から、カフカ2だ。俺はデュマ。よろしくね」
カフカ2「うぅ......!!ギャァァァア!!!」
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第303話 「妙案」
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《スターリーランド》
カフカ2は、女子に襲いかかった!
グサッ!!!!!
女子「きゃぁぁぁ!」
デュマ「仕方ないよねぇ。大好きなんだもんね」
カフカ2「グルルルゥゥゥ...!」
女子「やめて...やめて...!」
デュマ「ま、あとは好きにしていいよ。また迎えに来るね。俺はちょっと散歩してこよーっと」
デュマはその場を離れた。
カフカ2「グルルルゥゥゥ...!!」
女子「誰か...助けて...!!」
カフカ2「ヴギャァァァァ!!!」
女子「!!!!」
ダッダッダッ...!!
三太郎「黄のエレメント...!プラズマブレッド!!!」
ドッゴォォォォォォン!!!
三太郎は、カフカ2を殴り飛ばした!
カフカ2「ギャァァァ!!」
女子「あ、あなたは?」
三太郎「もう大丈夫。傷口を塞いで」
幸二「あの魔者は?」
女子「分からない...けど、変な人が、本を...!」
一善「あの人は、元々知り合い?」
女子「あの人は...私の...」
幸二「...?」
女子「こ、恋人です!!」
三太郎「そっか...!」
幸二「...」
一善「でも...殺さないと」
幸二「...残念だが、君の恋人は」
三太郎「いや、待てよ」
幸二「?」
一善「?」
三太郎「生け捕りってのは、どう?」
幸二「...?」
一善「...?」
三太郎「さっきの魔者、この子の恋人、そんな強い魔者じゃないでしょ?恐らく、その人を魔者にしたやつが、マヂカラレベル5の本丸だと思う」
幸二「確かに」
一善「だから?」
三太郎「俺達が魔法を無くすまで、縛っておけば、魔法そのものが無くなれば、その人も元に戻るかも!」
幸二「だが、魔者が人間に戻った試しはないんだぞ?」
三太郎「でも、魔法を封印したこともないよな」
幸二「...!」
一善「...」
三太郎「だから、あの魔者は生け捕りに」
ズバッ!!!
カフカ2「グルルルゥゥゥ!!!!」
カフカ2が襲いかかってくる!
一善「...!(この魔者って...?!)」
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第304話 「迷い」
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《スターリーランド》
幸二「青のエレメント!ブルー・THE・ブラッド!」
バァン!!!
カフカ2「ギュルリャァァァ!!」
三太郎「大人しくしろ...!黄のエレメント!スクリューストライク!!!」ドゴォン!!!
カフカ2「!!!」
三太郎「俺のエレメント!!羽交い締め!!!」
三太郎は、カフカ2を羽交い締めした。
一善「ねぇ」
幸二・三太郎「?」
一善「この魔者、俺、一度倒したことある」
幸二「そうなのか?」
三太郎「それって...?」
カフカ2は、抑えられたまま、指を液状化させて、長くした。そして、三太郎へ突き刺す!
ズバッ!!
一善は、三太郎に襲いかかった指を切り落とした。
一善「...柔いな」
幸二「...?」
一善「こいつの能力は、ものの硬さを操る能力だ。俺はこいつとそっくりの魔者を一度倒した。その時、魔導書は回収出来なかった」
幸二「回収出来ない?」
三太郎「魔導書の魔者なのに、魔導書が出ない?」
一善「分からないけど、この女の子の話によると、魔導書はこいつの中だ。でも、多分殺しても本は出てこない」
三太郎「じゃあなおさら!」
一善「でも魔者なんだ。殺さないと」
幸二「...」
三太郎「いや、一善?この人は」
一善「関係ないよ。もし牢獄で封印出来たとしても、何が起きるかわからないだろう。それに、ここで殺せば魔導書を手に入れることが出来るかもしれない。だったらここで殺すべきだ。それが俺たちの任務だ」
三太郎「それは、正しい。けど、それでいいのかな...?」
幸二「...」
一善「幸二は?幸二もそう思うだろ?」
幸二「...」
三太郎「早くしねぇと、他の魔者が!」
幸二「...!」
一善「...」
三太郎「多数決!多数決で!」
女子「あの...」
一同「...?」
女子「どうか...どうか、その人を助けて下さい...!これから、ずっと一緒にいたいなって、初めて思えた人なんです...!何でもします...だから...どうか...」
三太郎「!!」
幸二「...!」
一善「...」
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第305話 「助けたい」
《スターリーランド》
三太郎「俺は、生け捕り派」
幸二「...」
三太郎「一善は...ここで、殺すのに賛成なんだな」
一善「...うん」
幸二「...」
三太郎「幸二は?」
一善「幸二」
幸二「俺は...」
三太郎「?」
一善「?」
幸二は、悩んだ。
色々な考えが、頭を巡る。
そして、口を開く。
幸二「この人を、助けたい」
三太郎「!!!」
一善「!!!」
幸二「わかるよ...一善。俺は、本当の意味で魔法使い失格かもしれないな。でも...」
一善「...」
三太郎「...」
幸二「目の前の人を見殺しにして、最後、人助けが出来たと、胸を張って言えるだろうか...!」
三太郎「!!」
一善「...」
幸二「この人は殺さない。ありたっけの吸魔の札でぐるぐる巻きにして、魔裁組の地下牢に封じ込めよう。青木葉の時みたいに」
三太郎「幸二...!」
一善「...」
女子「...!」
そして、幸二は、女子に語りかける。
幸二「二人には少し辛い思いをさせる。だが、彼を待っていてやってくれ。どれだけ長くなろうとも、俺達が必ず、君たちの未来を守る」
女子「...!!!ありがとうございます...!」
三太郎「(俺が考えた案なのに...カッコつけやがって!)」
幸二「この魔者は、俺と三太郎で封印する。一善は、他の魔者が居ないか、園内をあたってくれるか?」
一善「...わかった」
幸二「頼む」
一善「そっちは、頼んだよ」
三太郎「おう...」
一善「つのキング」
ボワァン!
つのキング「ウォーーーーーー!」
一善「行くよ...!」
一善とつのキングは、奥へ走っていった。
三太郎「これで、よかったんだよな」
幸二「...もう決めたことだ。良いも悪いも考えるな」
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第306話 「デュマ」
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《スターリーランド / デュマサイド》
デュマは、園内を散歩する。
デュマ「なんか、カフカ2君のマヂカラの気配が弱まってるなぁ。それに、なんだろう。他のマヂカラの気配が強まってる?もしかして、魔者狩り?」
ニヤッ
《スターリーランド / 一善サイド》
一善「(遠くに何か、マヂカラの気配を感じるような気がする...奥へ行ってみよう)」
つのキング「ウォーーーーーー!」
一善は、つのキングを連れて、更に奥へ走る。
《スターリーランド / 幸二サイド》
三太郎「よし!これでOK!」
幸二「今回は例外だ。今後こういう手段はよせ」
三太郎「ま、ケースバイケースで」
幸二「全員平等に救うなんて無理なんだ。分かってるな」
三太郎「おう...」
幸二「研究班の人を呼んだ。ヘリが着いたら、この人を預ける。恐らく、抑え込めるレベルではあるはずだ。魔者になって時間が浅いのが幸いしたな」
三太郎「俺も行こうか?」
幸二「ダメだ。わかるだろ?まだ辺りのマヂカラが消えてない。まだいるんだここに。そいつを倒すのに、他に人員を割いていられない」
三太郎「了解」
《スターリーランド / 一善サイド》
一善「(こっちじゃないか...一回戻ろう)」
一善は、幸二らの場所へ向かう。
デュマ「ん?あの少年は?」
デュマは、一善を遠巻きで見る。
デュマ「(虫の魔獣を連れてる...って!もしかして!!!)」
一善「...?!」
バッ!!!!!
一善に、攻撃が降り注ぐ!!!
一善「誰だ!!魔者か...!!」
つのキング「ウォーーーーーー!!」
スタッ...
デュマ「やぁ。僕はデュマ。君、強いよね?」
一善「デュマ...お前もノベルか?」
デュマ「ピンポーン。詳しいんだね。ねぇ、俺と戦おうよ」
一善「何で」
デュマ「強い人と戦いたい。それだけ!」
一善「いいよ。でも」
デュマ「?」
一善「死ぬよ?」
デュマ「へ?」
一善「魔者は殺すべきもの。だから殺す」
デュマ「...?!」
一善「戦っても殺す。戦わなくても殺す。だからお前は死ぬ。それだけだよ」
デュマ「...そうなんだぁ」
一善「...」
デュマ「でも俺はねぇ...!!」
ビュンッ!!!!
一善「!!」
デュマ「戦う相手が強ければ強いほど、強くなれるんだよ!!!」ゴゴゴゴゴ...!!!!
SOREMA -それ、魔!- 36へ続く。
第299話 「兄と妹」
第300話 「魔法使い」
第301話 「スターリーランド」
第302話 「残影」
第303話 「妙案」
第304話 「迷い」
第305話 「助けたい」
第306話 「デュマ」