SOREMA -それ、魔!- 1
SOREMA -それ、魔!- 1
「一日一善」
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第1話 「まほうのほん」
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魔法。それは、この世に存在しない概念。
魔法。それは、時に人々が渇望する概念。
魔法。それは、人々にとって夢のような概念。
の、はずだった──
現代から遡って約15年前──
《とある海辺の森》
ザパーン ザパーン...
ミーンミーン ミーンミーン...
一善「ハァハァ...おかあさーん!おかあさーん...」
シーン...
一善「どうしよう...もりのなかではぐれちゃった...」
この少年、油木一善。まだ6歳。彼は至ってどこにでもいる普通の少年である。母と二人で暮らしている。今日は、森に昆虫採集にやってきた所だった。
一善「あついなぁ...誰か、誰かいないかな...?」
ゴトッ
一善は、何かに足を取られた。
一善「うわぁっ!」バタッ
一善、その場に転んだ。
一善「いっててて...ん?」
一善は、足元の物体に目を凝らした。
一善「これ、なんだ?」
それは青く、少し古びた、本のようなものだった。
パッパッパッ
一善は、その本についた泥を払った。
一善「これ、えほんかな?なんか、かいてあるけど、よめないなぁ...」
一善は、その青く不気味な本をパラパラとめくった。すると、ある1ページに、カブトムシのような絵を見つけた。
一善「か、かっこいいー!でも、つのがさんぼんある。いろもへんだし、おかあさんのずかんとなんかちがうなぁ」
スンッ
その時、一善は見られているような気配を感じる。
一善が辺りを見回すと、少し離れた所に、一善と同じくらいの少女が佇んでいた。
一善「ん?」
すると、その少女は、一目散に走り出した。
一善「あ!まって!」
一善は、その本を片手に、彼女を追いかけた。
彼女は、真っ白いドレスのような服装で、長く綺麗な黒い髪を靡かせて走った。
一善「きみ!まって!ぼく、おかあさんとはぐれちゃって!」ダッダッダッ
少女「...」タッタッタッ
一善「ちょっと、まってよ!」
少女は、振り返ることなく、森の奥へと走って行った。そして、そのまま走っていると、少女は木造の小さな家へ駆け込んで行った。
一善「あのさ!おかあさんとはぐれちゃって大変なんだ!ここ、きみのいえ?たすけてくださーい!」
すると、少しして、少女は、二階の窓から一善を見下ろし、手招きをした。一善は、彼女に誘われるがまま、家へ入った。
一善「お、おじゃまします」
少女「...」
一善「きみ、なまえは?」
少女「...ヒメ」
一善「ヒメちゃんは、ここがいえなの?」
ヒメ「...そうよ」
一善「あのさ、ぼくおかあs..」
ヒメ「その本、どこで拾ったの?」ヒメは、一善をさえぎって、一善の持つ不気味な本を指して言った。
一善「あ、これは、さっき、ころんだときに...」
ヒメはじっと聞いている。
一善「もしかして、きみの?」
ヒメは答えず、一善に問いかけた。
ヒメ「それが何だかわかる?」
一善「んーなんだろう...ずかんかな...?でもなんかへんだし」
ヒメ「それは、”魔法の本”よ」
一善「...まほう?!」
────
第2話 「小さな魔法使い」
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一善「まほうって、あの、テレビでヒーローとかがつかうやつ?」
ヒメ「うん」
一善「あれって、ほんとにあるの?」
ヒメ「ある」
一善は目を丸くして、ヒメを見た。ヒメは冷静に続けた。
ヒメ「私、魔法、使える」
一善「え、えー!ほんとに!?」
ヒメ「見せてあげるわ。本を持ってついてきて」
一善は、ヒメの後を追って、家を出た。
ヒメは、1つの木に付いていたセミのぬけがらを手に取って、目を閉じた。
キュイイイイイン...!!!!
ヒメ「...このセミは、5日前、森の中で孵ったみたい」
一善「ん?ど、どうゆうこと?」
ヒメ「私は、記憶が読めるの」
一善「きおく?」
すると、ヒメはもう片方の手で、一善の手を握った。
ヒメ「貴方も目を閉じて」
一善「え、あ、うん...」
キュイイイイイン...!!!!
一善が目を閉じると、一善の中には、セミの生まれてから脱皮するまでの記憶が鮮明に浮かんできた。
一善「す、すごい、きみ、すごいね!」
ヒメ「貴方のその本、見せて」
一善「あ、うん」
一善は本をヒメに渡した。
ヒメは本をゆっくりとめくって、あるページで止めた。
ヒメ「ここに、手の絵があるわね。この通りに順番に同じ形を指で作るの。それで、ここに書いてある言葉を声にだして」
一善「こうして、こうして、こうかな」
ヒメ「そう、それで、ここを読んで」
一善「...ごめん...よめないな...」
ヒメ「操蟲ノ一・三剣黄金蟲」
一善「そう、ちゅうのいち、、さんけん、おうごんちゅう?」
ピカーン!!!!!!!!
その瞬間、眩い光が、2人を包んだ!
ヒメ「...!」
一善「うわぁぁ!!!!」
2人は強い光に飲まれ、目を閉じる!
一善「...うぅ」
少し経ち、2人が目を開けるとそこには、本の中に描いてあるの同じ、虫のような生き物が堂々と羽ばたいていた。
一善「ん?!ん?!」
一善は目を擦りながら、その光景を見る。
ヒメ「これが、魔法よ」
一善は、何度も見てみたが、目の前の光景は現実に起こりうるものとはかけ離れていた。
一善「...す、すごい...」
ヒメ「他にも、沢山の魔法があっt」
一善「うわぁー!!すごい!!!きんぴかだー!!かっこいい!!」
その虫は、空を飛び回って見せた。
ヒメ「はぁ...」
一善「すごい!すごい!!」
すると、どこからか、声が聞こえる。
冬美「一善〜?どこにいるの〜?お母さんよ〜」
油木冬美。
一善の母。目の下に、雪の結晶のような痣がある。子供の頃に、火傷で出来たものだ。
一善「あ!おかさあんのこえだ!」
ヒメ「!!私は帰るわ」
一善「もうちょっとあそぼうよ!」
ヒメ「大人には、ここにいること、見られちゃいけないのよ」
一善「え、どうして?」
ヒメ「とにかく、私と会ったことは忘れて。その本にはせいぜい気をつけてね」
一善「?」
ヒメ「貴方、下手すると呪われるわよ」
────
第3話 「新しい友達」
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《とある海辺の森》
一善「?!のろい?」
冬美「一善〜!!」
一善「あ、おかあさん!」
冬美が、一善の元へ駆け寄る。冬美が、一善を抱きしめる。
冬美「一善!!心配したんだから!!」
一善「ごめんなさいおかあさん...」
冬美「けがしてない?」
一善「うん、だいじょうぶ。いたいところはないよ」
冬美「それならよかったわ。ほんと、お母さんずーーーーーっと探してたのよ?」
一善「ごめんなさい...」
冬美「もういいわ。かえりましょ」
一善「うん!あ」
一善「(ヒメ、、ちゃん、、?)」
一善は、振り返ったが、ヒメの姿はもうなかった。
冬美「一善、その手に持っているものは何?」
一善「あ、うん、これね、あの、その...」
冬美「?」
一善「、、ともだちからもらったの!」
冬美「友達?」
一善「うん!もういないけど」
冬美「一善にも友達が出来たのね、、!よかったわ。いつも虫と遊んでばっかりなんだから」
一善「うん!それとね、あともうひとり、そらをみて!」
冬美「空?」
一善「あそこにとんでるのが、あたらしいともだち!」
一善は、空を飛びまわる黄金の虫を指さして言った。
冬美「...?」
一善「どう?かっこいいでしょ!」
冬美「うーん。お母さん目が悪くなったのかしら、、何も見えないわ」
一善「え?ほら!とんでるじゃん!ほら!」
冬美「(一善もおかしくなってしまったのかしら、、)どこかしら?雲しかみえないのだけれど」
すると、その虫はボンッと消えてしまった。
一善「ほらー...きえちゃったよ」
冬美「あらー残念ね、、とりあえず、車に戻りましもう」
一善「...はーい。ってあれ?」
一善は、さっきまで手に持っていたはずの本がなくなっていることに気がつく。
一善「おかあさん!えほんなくしちゃった!」
冬美「せっかく友達にもらったのに、だめじゃない、、一緒にさがすわよ」
2人は本を探す。
ーーーーー
辺りは暗くなり、夜が近づいていた。
冬美「お友達にはごめんなさいだけれど、今日はもう帰りましょう、きっとお友達が、見つけてくれるわ」
一善「...うん...」
冬美「さぁ、行こうね。晩御飯何にしようかしら...」
一善「カレーがいい!!」
冬美「よーし、今日は、一善の大好きなウインナーカレーだ!」
一善「やったー!ウインナーカレー!ウインナーカレー!♪」
ーーーーー
そして、時は現代──
《一善の自宅》
今日はクリスマス。お昼時。
TVニュースでは、街中のクリスマスイベントについての特集が組まれ、話題のスイーツや、デートスポットについての情報が行き交う。
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第4話「つのキング」
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《一善の自宅》
冬美「一善、今年もクリスマスは1人?」
一善「うるさいなー、そうだよ。悪いかよ」
冬美「あんた、寂しくないの?ここんところずーっと1人で」
一善「寂しくないさ、別に、つのキングもいるからな」
一善は、ソファに寝っ転がりながら、傍で寝ている黄金の虫を見ながら言った。つのキングというのは、一善がこの虫に付けたあだ名である。
冬美「またつのキング〜?ほんと、なんなの、昔から変わらないその妄想癖」
一善「妄想じゃないさ」
一善は、つのキングを撫で、片手で本のページをめくりながら答えた。
一善「それに、俺お母さんと過ごすクリスマス、別に嫌いじゃねえよ」
冬美「ふふふっ、、あんた!それでこそ私の息子よねぇ〜」
冬美は、一善の頭を撫でた。
一善「っやめろよ!髪がボサボサになる」
冬美「一日一善。それだけでいいの。私の自慢の息子だから」
一善「はぁ...またそれかよ」
冬美が調子がいい時によく言う口癖だった。
冬美「はい!私を上機嫌にした。今日の善行は、これで果たされし、よね!」
一善「あぁ、そだな」
冬美「あ、一善、そういえばさっき、こんなものが玄関先に落ちていたわよ?」
冬美は、本のような物を一善に渡した。
一善「...これは?!」
その本は、昔、一善が森で見つけた本と同じようなものだった。
一善「これ、そこに落ちてたの?」
冬美「うん、なんか」
一善は、その本を奪い取るようにして手に取った。
一善「母さんでかした!(これ、俺が昔拾った物と同じだな。あの時は三十七巻だったよな。あれ、なんでこんなに覚えてるんだ?確か落としたよな。まぁいいや、そしてこれは?四十九巻か、あれには続きがあったんだな。予知の書か。未来予知でもできるようになるのか?)」
冬美「そんなにこのボロボロな本が嬉しいの?もっといい本買ってあげるわよ?」
一善「いや、これはすごいぞ?」
冬美「なら、これが今年のクリスマスプレゼントってことで!」
一善「いや!それはちょっとまって!」
冬美「そういえば一善。あなた今日アルバイトって言ってたわよね」
一善「あ!ほんとだ、遅刻するかも!」
一善は、自室の部屋にある本でぎっしりの本棚に、冬美から受けとった本を詰めて、急いで支度をした。
一善「んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
冬美「帰ってきたら、ケーキあるんだから、あんまり賄い食べすぎないのよ?」
一善「わかってるって!」
一善は家を出た。
一善「遅刻したらまずいな...なら」
一善は、素早く手で印を組んだ。
一善「操蟲ノ一、三剣黄金蟲!!!お願い!!つのキング!!!!」
そういうと、つのキングが一善の目の前に現れた。
一善「お願いだ!つのキング!!バイト先まで飛んで!!!」
つのキングは、一善を乗せて、大空を飛んだ。一善にとっては、当たり前の現象となっていた。
ーーーーー
夜になる。
《一善の自宅》
一善「はぁー疲れた。ただいま〜」
玄関の電気は付いていなかった。一善は電気をつけて、リビングに向かう。
一善「お母さん?」
リビングには、クリスマスのケーキがぽつんと置かれているだけで、冬美の姿はなかった。
一善「へんだな...」
一善は、荷物を置きに、自室に向かった。
そこで一善は驚きの光景を目にする。
一善「...!!」
冬美は血を流して倒れていた。
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第5話「魔者(まもの)」
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《一善の自宅》
一善「お母さん!!!!」
一善は、血まみれの冬美の元へ駆け寄った。
一善「お母さん!!!お母さん!!!!」
冬美は、何も言葉を発しなかった。
一善「お母さん!何があったんだよ!しっかりしろって!今救急車呼ぶから!」
一善は、動転しながら、震える指先でスマートフォンを操作した。
するとそこに、魔法陣のような紋章が浮かび上がり、その中から1人の男性が現れた。彼は水色の明るい髪の毛に、紫色の澄んだ目、通った鼻筋に透き通るような白い素肌、身長はかなり高く、スラッとしていた。
一善「?!?!」
???「遅かったか、、」
一善は腰を抜かし、本棚に背中を着いた。
一善「あわわわわ.....あんた...な...なんだよ...なにものなんだよ!!」
???「君、俺が見えるのか?触ってないのに」
一善「み、見えるも何も、そこにいるだろ!!お前がやったのか!!」
???「すまない。土足で入り込んで。少しどいてくれるか?」
一善「は?今救急車を、」
???「それは必要ないだろう」
すると、その謎の男は、冬美に手をかざして、手から白い光のようなものを当てた。
一善「な、なにしてんだよ!」
???「凄いな。エレメントの流れまで見えてるのか」
一善「は?」
するとその男性は、一善に顔を近づけて言った。
???「君、人と違うこと、出来るか?」
一善は、つのキングのことが頭によぎった。
一善「どういう、ことだよ?」
一善「ま、ほう、つかい?」
ジャ「残念だが、君のお母さんは、もう...」
一善「...!!」
ジャ「俄には信じ難いかもしれないが、君のお母さんは...非科学的な暴力によって死んでいる。恐らく他殺」
一善「ちょ、ちょっと、なにを言ってるのか、わかんねぇよ」
ジャ「君の気配。マヂカラが流れている。只者ではないな。並の人じゃ今の俺のことは見えないんだ。魔法で覆っているからね」
一善「...?」
ジャ「悪いようにはしない。お母さんのご遺体、俺たちに預からせてくれないか?」
一善「.....」
ジャ「?」
一善「...さっきから黙って聞いてれば...他殺だの...遺体だの...俺のお母さんをもう死んだみたいに簡単に言うなよ!!!!さっきまで、ついさっきまで元気に生きてたんだよ!!!今日だって!!今だって!!本当ならただケーキ食ってテレビ見ながらくだらない話してた筈なんだよ!!!魔法使い?!くだらない冗談ばっか淡々と言いやがって!!本当に魔法が使えるなら!!!!お母さんを元気にしてくれよ!!!!ほら!!!やれよ!!!!」
ジャ「...」
一善「ハァ..ハァ...」
ジャ「...俺が悪かった。お母さんのこと、、残念だが、現実だ。君ももう分かっているだろう」
一善「......」
ジャ「1つだけ忠告だ。ここは危ない。マヂカラの強さが危険水域に達している」
一善「...なんだよそれ」
ジャ「説明は後だ。お母さんのことは俺の仲間に任せて。今はここから逃げるぞ。俺を信じてくれ」
一善「....もし断れば?」
ジャ「”魔者”(まもの)が来るぞ」
────
第6話「白のファンタジスタ」
────
《一善の自宅前》
一善「...まもの?」
ジャ「異形の化け物の事だよ。俺たちはとにかくここを去るぞ」
ジャスティンは、部屋に入って来た時と同じような魔法陣を出して、冬美を取り込んだ。
一善「お母さん!」
ジャ「今俺の仲間の元に転送させてもらった」
一善「...」
ジャ「俺達も行くぞ。俺にくっついて」
一善「!!」
ジャスティンは、一善を自分の体に抱き寄せた。
ジャスティンは右手で真ん中三本の指をくっつけて立て、唱えた。
ジャ「走(ソウ)!!」
すると、あっという間に2人は家の外に出ていた。
一善「...」
ジャ「あんまり驚かないんだな」
一善「...同じようなことが出来るから」
ジャ「やっぱりな」
ジャスティンは少し口角を緩ませた。
一善「これから、どうするの?」
ジャ「腹ごしらえでもしたい所...だが...」
一善「...?」
ジャ「言ってる側から来たぜ、、”魔者”が」
一善「!!」
そこに魔者は現れた。
四足歩行、顔が左右に2つ、腹の中心に大きな車輪がついている。
まさに魑魅魍魎と言わんばかりの醜い怪物。
一善は目を見開いて、顔を極限までこわばらせた。
一善「あ...あ...」
一善は、恐怖と絶望で足が震えた。
ジャ「大丈夫。大丈夫だから」
一善の鼓動は恐怖に駆られて加速していく。
ジャ「俺の近くにいてね」
一善「(バクン バクン バクン)」
ジャ「魔者よ」
怪物は今にも襲いかかってきそうだった。
ジャ「覚悟しろ...」
車輪の魔者「ギュルギュルルァァァ!!!!」
ジャスティンは、白いオーラに纏われ、ジャスティンの手のひらには光り輝く宝石のような光が現れた。
そしてジャスティンは、そのまま手を上に払うと、光が6つに分散し、怪物の周りに飛んだ。
ジャ「"白のエレメント...!スノウジェム"!!!」
キラキラキラーン!!!
車輪「ギュルルルルァァォァァァァァォ!!!!!」
ピカッ!!!!
ドッカーン!!!!!!
怪物の周りの6つの光から、怪物に向かって白い閃光と星屑のような光が差し込んだ。
一善「な、なんだよ...これ...?!」
ビュゥゥゥーー!!!
辺りには爆風が吹く。
魔者は消え、元いた場所には一輪車が1つ残った。
一善「(あんな化け物を、一瞬で、殺したのか?!)」
ジャ「魔導書のドロップはなし...か。ま、”あの強さ”ならそりゃそうか」
一善「あんた...マジで何者なんだよ」
ジャ「言っただろう?魔法使い。人呼んで...」
一善「...」
ジャ「”白のファンタジスタ”さ」
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第7話「騒がしい気配」
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《東京スカイツリー》
クリスマスの夜。展望台へ向かうエレベーター。
一善「...」
ジャ「...」
一善「あの、ここスカイツリーですよね。どこ向かってるんですか」
ジャ「俺たちの基地だよ」
一善「?」
展望デッキに着く。
ジャ「少し話をしようか」
一善「...」
ジャ「魔法については、もう信じて貰えるかな?」
一善「いや、あんなもん見せられたら、信じるもクソもないですよ」
ジャ「そうだよね」
一善「...」
ジャ「君も、魔法が使えるんだね?」
一善は、つのキングを呼んだ。
ジャ「おぉー!!かっこいー!!!なにこれ!!君の魔法?!おっもしろいねぇー!」
一善「...」
ジャ「なに?名前とか付けてんの?!」
一善「...つのキング」
ジャ「プッwwwつのキング?!なにそれ!だっさwww」
一善「文句ありますか?」
ジャ「ははっ(こっわ)」
ジャスティンは、デッキから電飾に溢れる街を見下ろして言った。
ジャ「さっき君が見たのが魔者。あの化け物はね、みんな見えないだけで、この街の様々なところに潜んでいる危険因子なんだ。君が普段小指をぶつけたり、持っているものを落とすのも、小さな魔者のせいかもしれないんだ」
一善「...」
ジャ「魔者は強い力を持つものだと、人を殺める程の者もいる。あまり知られてないだけで、魔者の被害は後を絶たない」
一善「...」
ジャ「そして、魔法を使って、その魔者を退治しているのが、僕達魔法使いってわけ」
一善「あんたも、俺みたいな術が使えるってこと?」
ジャ「グッドクエスチョーン!魔法にも色んな種類があってね、説明すると長くなるんだけど、先に言うと、君の魔法と僕の魔法は少し違う。とりあえず、上のフロアに移動しよう」
一善「...」
2人は更に高い天望回廊へ向かう。
ジャ「僕の魔法と君の魔法は、そもそもの出力源が違う。君、もう一度つのキング(笑)を出して貰えるかな」
一善「いちいち笑わないで下さい」
一善は、再びつのキングを呼んだ。
ジャ「君、この術、どう覚えた?」
一善「なんか、本で」
ジャ「そうだよね。それは、魔導書と言って──」
2人が話していると、遠くで外を見ていた学生らしい集団がざわつき始めた。
男A「おい!!お前ら!!!あれみろよあれ!!!カブトムシか?!!クソでかい!!ヤバくね?!」
男B「どこ?なんも見えねーけど?」
女A「三太郎、独り身の寂しさにとうとう頭いかれちゃった?笑」
女B「ハハッ!三ちゃんマジウケるし笑」
三太郎「いや!見えるだろ!カブトムシ!!!まっキンキンの!!!」
男B「見えねーよ笑 おい!あそこ電車はしってるぜ」
女A「わー!ほんとだー!」
三太郎「ぐぬぬぬぬ。わかったよ!とっ捕まえて見せてやる!お前らここで待ってろ!フン!」
────
第8話「魔裁組(まざいぐみ)」
────
《東京スカイツリー/天望回廊》
彼は佐藤三太郎。普通の大学生である。
三太郎は、話す一善とジャスティンの元へずかずかと歩いた。
三太郎「どう見てもいるじゃねえかカブトムシ。あいつらにもまじまじと見せてやる」
ジャ「ま、細かい話は中に入ってからにしようか」
一善「中?どこに」
ジャ「僕たちの基地だよ」
一善「だから、それは一体どこにあるんですか」
三太郎「ちょっとー!すみませーん」
2人に声は届かない。
ジャスティンは、回廊を登りきったところで、魔法陣のようなものを出した。
三太郎「ん?なんだ?あれ」
ジャスティンは、魔法陣の中に入り、振り返って一善に手を貸した。
一善「ここに入るんですか」
ジャ「はやく、カモーンヌ」
一善は、その手を取って中に入った。
三太郎「え!!ちょっと!ちょっと待って!無視すんなっつーの!!」
三太郎は、ダッシュし、消えかけた魔法陣に頭から突っ込んだ。
スポンッ!!!
一善「...ここは!!?!」
ジャ「ようこそ。魔裁組(まざいぐみ)第2支部へ」
気がつくとそこは、広大なホテルのような、はたまたお城のような、豪華な空間が辺り一面に広がっていた。
一善「俺たち、さっきまでスカイツリーにいましたよね?」
ジャ「魔法陣くぐったでしょ?あそこから移動してきたんだよ。これも魔法」
一善「...すごいですね」
???「お疲れ様です。ジャスティンさん」
ジャ「お疲れ!幸二!」
ジャスティンと一善に声をかけてきたのは、ジャスティンと同じくらいの背丈の、黒髪に、あっさりめの顔、紺色のコートのような服を着た若い男性だった。
ジャ「彼は、天堂幸二。俺のかわいい”先輩”!」
幸二「ちょっと、やめてくださいよ」
彼の名前は天堂幸二。魔法使い。一善とは同い年。
幸二「彼らは?」
ジャ「彼はー...って、名前、聞いてなかったっけ笑」
幸二「?」
ジャ「君、名前、なんて言うの?」
一善「...油木一善です」
ジャ「一善!よろしく一善!」
一善「...」
幸二「そして、その後ろの方は?」
ジャ「え?後ろ?」
ジャスティンと一善が振り返ると、そこには頭から突っ込んでのびていた三太郎の姿があった。
一善・ジャ「なんだコイツ!」
ーーーーー
三太郎「いってててて」
ジャ「おう少年。目、覚めた?」
三太郎「あれ、カブトムシは?」
幸二「?」
三太郎「てか、ここどこだ?」
一善「?」
ジャ「君、名前は?」
三太郎「俺は、佐藤三太郎!!!ぃよろしく!!」
ジャ「俺は神野ジャスティン護!!!ぃよろしく!!」
幸二「なんで2人も連れてきたんですか?」
ジャ「三太郎は連れてきてないよ。だから、うん、帰っていいよ」
三太郎「ひどすぎる!!」
ーーーーー
三太郎「いや、なんか、たまーに見るけどこういう変なモン。あんたら、何もん?宇宙人?」
ジャ「君、もしかして、魔法が使える?」
三太郎「魔法?使えるぜ!!みんなを元気にする魔法だ!!やってみるぜ!!フレーー!フレーー!みーーんーーなーー!」
一同「・・・」
三太郎「ちっなんだよ。のりわるー」
幸二「君、三太郎とか言ったな。職業は?」
三太郎「俺は普通の大学生だぜ?」
幸二「なら君はここにいるべきでは無い。帰れ」
三太郎「えー?何この人冷たくない?」
ジャ「ま、まぁまぁ、どんなに偶然でも、ここに来れたってことで縁でしょ。君も只者ではなさそうだし」
幸二「んで、こっちは?」
ジャ「あ、彼はね...」
────
第9話「差し伸べられた手」
────
《魔裁組第2支部》
ジャ「彼は...」
幸二「あんまり部外者を呼んでもらっても困ります。ここは遊びに来るようなところではない。生半可なただの人間に来てもらっても迷惑だ」
ジャ「幸二、これには事情が」
一善「...迷惑ですか」
ジャ「一善、ちがうよ」
一善「もういいです。帰らせてもらいます」
ジャ「一善!」
一善「俺をここから出してください」
ジャ「ちょっと待って。一善」
一善「俺に何か用ありますか?」
ジャ「まず幸二、聞いてくれ、彼は、今日お母様を亡くされたんだ」
一善「...」
幸二「...!」
三太郎「...え?」
ジャ「恐らく魔者、または”魔導師”の仕業だと考えている。そして彼には、マヂカラが流れている。戦闘経験はなさそうだが、術も使える。だから俺はここに連れてきた」
幸二「...そうですか」
一善「...」
幸二「すまなかった。何も知らずに...母親のことは気の毒だ。お悔やみ申し上げる」
一善「...」
幸二「だが、やはりここは君たちが来るべきところでは無い。俺たちがしていることは、決して遊びじゃないんだ。魔法が使えるんだってな。油木一善、いつか君にも、その魔法を”返却してもらう”日が来るかもしれないが、その時まで、普通に生活する権利が君にはある。魔法のことは隠して生きていけ。だから、俺たちの世界を知る必要は無い」
一善「...」
三太郎「...」
ジャ「俺は全く反対のことを言おうとしているが、いいか?幸二」
幸二「?なんですか」
ジャ「一善。俺たちと共に来ないか?」
一善「...は?」
ジャ「君には力がある。まだ未熟だが、素質はピカイチだ。そして、ここには君を活かせる環境がある。ここ、魔裁組で戦っている仲間は、みんな特殊な経歴の人間の集まりだ。身内を魔者に殺された者、魔法に偶然出会った者、みんなそれぞれ想いを抱えながら、魔者から人間を守ってきた」
一善「...」
ジャ「君にしかできないことがあるから、俺は君に頼んでいる」
一善「...」
ジャ「共に戦ってくれないか?一善」
一善は何も言わず、黙って下を見ていた。
幸二「...」
三太郎「...」
ジャ「ここで働くということは、嫌でも魔法と切り離せない人生を歩むということだ。これから魔法というものの光と闇の側面を沢山見ることになるだろう。自分の命も...時には危うい状況になるかもしれない」
三太郎「...!!」
一善「...!!」
ジャ「一善が仲間になってくれたら、幸二や俺、他の仲間たちにもいい刺激になる。どうだ?一善」
一善「...」
ジャ「共に戦おう」
────
第10話「一日一善」
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《魔裁組第2支部》
一善「今日1日で...」
ジャ「?」
一善「今日...1日で、魔法ってのを嫌って程見せつけられましたよ。なんか、俺が、昔思ってた魔法なんかと、全然違うんだなぁ...って。なんか、魔法って...」
ジャ「...」
一善「怖いなあ....」
ジャ「...」
幸二「...」
三太郎「...」
一善「俺、何かと戦うとか、化け物を退治するとか、全然やりたくない。でも、でもさ...こんな風に...こんな風に他に、誰かが泣くって考えたらさ...俺に出来ることがあるっていうなら...はいはいって逃げられるわけないじゃないか!!!」
ジャ「一善...」
一善「(本当に俺に、やれるんだろうか。お母さん。俺、できるかな。人のために、本当にやれるかな...?)」
冬美 ”一日一善。これだけでいいの。私の自慢の息子だから”
一善「お母さん...!」
一善の目から涙の粒がこぼれ落ちた。
一善「俺...やるよ」
ジャ「...!」
幸二「...!」
三太郎「!!」
一善「そんなに役に立たないかもしれないけど。お母さんの為にも。やるよ」
ジャ「...一善!」
幸二「...」
三太郎「!!!」
ジャ「決まりだな。幸二」
幸二「ジャスティンさんがいいなら」
ジャ「よし!!!ウェルカム!!!一善!!!」
三太郎「いえーい!!!!」
一善「...」
幸二「...」
ジャ「フー!!!」
幸二は肩を落とす一善に声をかける。
幸二「...あまり無理はするな」
一善「...はい」
幸二「階段登って右奥に空き部屋がある。そこで休むといい。頭も混乱しているだろう」
一善「ありがとうございます」
三太郎「なぁ!俺もやっていいか!?」
幸二「は?!」
ジャ「三太郎!!君も手伝ってくれるのかい?!」
三太郎「もちろんだぜ!!だって俺は、この星のスーパーヒーローになる男だからな!!!」フン!!
幸二「(だめだ...こいつバカだ)」
ジャ「ぃよ!スーパーヒーロー!!三太郎!!よろしくな!!」
三太郎「おう!!!!」
こうして、一善は、ジャスティンらをはじめとする魔裁組の新入生として、魔法使いとしての道を歩み始めるのであった。彼の行く先に待ち受けてるものとは、一体────
SOREMA -それ、魔!- 2に続く。
第1話 「まほうのほん」
第2話 「小さな魔法使い」
第3話 「新しい友達」
第4話 「つのキング」
第5話 「魔者」
第6話 「白のファンタジスタ」
第7話 「騒がしい気配」
第8話 「魔裁組」
第9話 「差し伸べられた手」
第10話 「一日一善」